特許第6850088号(P6850088)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6850088
(24)【登録日】2021年3月9日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】電気掃除機
(51)【国際特許分類】
   A47L 9/28 20060101AFI20210322BHJP
【FI】
   A47L9/28 U
   A47L9/28 A
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-154464(P2016-154464)
(22)【出願日】2016年8月5日
(65)【公開番号】特開2018-19998(P2018-19998A)
(43)【公開日】2018年2月8日
【審査請求日】2019年7月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】特許業務法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇根 正道
(72)【発明者】
【氏名】矢嶋 陽介
【審査官】 永石 哲也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−056725(JP,A)
【文献】 特開2005−131110(JP,A)
【文献】 国際公開第2002/073770(WO,A1)
【文献】 特開2004−057367(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池と、
前記二次電池が蓄える電気を消費し負圧を発生させる電動送風機と、
前記電動送風機の駆動を制御し、かつ前記電動送風機が停止している状態の前記二次電池の端子電圧と前記電動送風機が始動して予め定める時間が経過した後の前記二次電池の端子電圧との差分、および前記電動送風機に流れる電流に基づいて前記二次電池の端子電圧が前記二次電池の放電終止電圧より大きくなるように前記二次電池の放電電流を変化させる制御部と、を備える電気掃除機。
【請求項2】
前記制御部は、前記電動送風機を始動するとき、前記二次電池の放電電流を前記電動送風機の運転モードに対応する入力値に設定し、かつ前記差分に応じて前記二次電池の放電電流を低下させる請求項1に記載の電気掃除機。
【請求項3】
前記制御部は、前記差分が予め定める閾値よりも大きい場合には、前記二次電池の放電電流を低下させ、前記差分が予め定める閾値以下の場合には、前記二次電池の放電電流を前記電動送風機の運転モードに対応する入力値に維持する請求項1に記載の電気掃除機。
【請求項4】
前記制御部は、前記電動送風機を始動するとき、前記二次電池の放電電流を前記二次電池の温度条件および前記二次電池の劣化状態に係わらず前記二次電池の端子電圧が前記二次電池の放電終止電圧より大きくなる値に設定し、かつ前記差分に応じて前記二次電池の放電電流を増加させる請求項1に記載の電気掃除機。
【請求項5】
前記制御部は、前記電動送風機を始動する度に前記差分に基づいて前記二次電池の放電電流を変化させる請求項1から4のいずれか1項に記載の電気掃除機。
【請求項6】
前記制御部は、前記電動送風機の停止から再始動までの経過時間が予め定める時間間隔以内の場合には、前記電動送風機の停止以前に算出済みの前記差分に基づいて前記二次電池の放電電流を変化させる請求項1から4のいずれか1項に記載の電気掃除機。
【請求項7】
前記制御部は、前記二次電池の端子電圧が放電終止電圧以下の場合であっても、前記時間よりも長い判断時間が経過するまで前記電動送風機の駆動を継続する請求項1からのいずれか1項に記載の電気掃除機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明に係る実施形態は電気掃除機に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池が蓄える電気を消費し電動送風機を駆動する電気掃除機が知られている。二次電池は、例えばリチウムイオン電池は、過放電状態になると寿命が短くなってしまう。端子電圧が放電終止電圧まで低下した場合には、電気掃除機を停止させ二次電池の充電を促す必要がある。
【0003】
また、吸い込む塵埃の多寡で電動送風機の通電量を変更する電気掃除機が知られている。
【0004】
しかしながら、電動送風機のような大きな負荷の通電量を変更すると、電池電圧が大幅に降下し、二次電池の端子電圧が放電終止電圧よりも低くなっていきなり電気掃除機が停止してしまう場合があった。
【0005】
そこで、二次電池の端子電圧が基準以下の場合には、電動送風機の通電量を小さくすることによって、電圧降下を抑え、いきなり電動送風機が停止することを防ぎ、電池容量を最後まで効率良く使い切る電気掃除機が知られている。
【0006】
従来の電気掃除機は、二次電池の端子電圧が放電終止電圧よりも低下した場合には、電動送風機を停止させて二次電池の過放電を防ぎ、二次電池の寿命の消耗を回避する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014−212826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、二次電池の内部抵抗は、二次電池の温度や劣化度に影響される。二次電池の温度が低下するほど、また二次電池の劣化が進むほど、二次電池の内部抵抗は増加する。
【0009】
二次電池の内部抵抗が通常よりも高い状態で二次電池の放電電流、つまり電動送風機の通電量を保ったまま電動送風機を始動させると、二次電池の電圧降下は通常時よりも増加する。電圧降下が増加すると、二次電池の端子電圧が放電終止電圧よりも低下する可能性がある。
【0010】
二次電池の内部抵抗の増加にともなう端子電圧の低下は、二次電池の充電率とは無関係に起きる。つまり、従来の電気掃除機は、二次電池の充電率が十分な状態であっても、二次電池の内部抵抗の増加にともなって二次電池の端子電圧が放電終止電圧よりも低下した場合には、始動直後に電動送風機を停止させてしまい、使用者の利便性を損なう。
【0011】
そこで、本発明は、二次電池の内部抵抗が増加している状態であっても、電動送風機の駆動を継続し、運転時間を確保可能な利便性の高い電気掃除機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の課題を解決するため本発明の実施形態に係る電気掃除機は、二次電池と、前記二次電池が蓄える電気を消費し負圧を発生させる電動送風機と、前記電動送風機の駆動を制御し、かつ前記電動送風機が停止している状態の前記二次電池の端子電圧と前記電動送風機が始動して予め定める時間が経過した後の前記二次電池の端子電圧との差分、および前記電動送風機に流れる電流に基づいて前記二次電池の端子電圧が前記二次電池の放電終止電圧より大きくなるように前記二次電池の放電電流を変化させる制御部と、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る電気掃除機の斜視図。
図2】本発明の実施形態に係る電気掃除機のブロック図。
図3】本実施形態に係る電気掃除機の放電電流調整制御のフローチャート。
図4】本実施形態に係る電気掃除機の放電電流調整制御の他の例におけるフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る電気掃除機の実施形態について、図1から図4を参照して説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る電気掃除機の斜視図である。
【0016】
図1に示すように、本実施形態に係る電気掃除機1は、いわゆるキャニスタ型である。電気掃除機1は、掃除機本体2と、掃除機本体2に着脱可能な管部3と、掃除機本体2に着脱可能な電源としての二次電池4と、を備えている。掃除機本体2と管部3とは、流体的に接続されている。
【0017】
二次電池4は、例えばリチウムイオン電池であり、過充電や過放電を避ける保護回路(図示省略)を備えている。
【0018】
掃除機本体2は、本体ケース5と、本体ケース5の左右両側方にそれぞれ設けられている一対の車輪6と、本体ケース5の前半部に配置されている着脱可能な塵埃分離集塵部7と、本体ケース5の後半部に収納されている電動送風機8と、主に電動送風機8を制御する制御部9と、二次電池4の充電に用いられる電源コード11と、を備えている。
【0019】
掃除機本体2は、二次電池4が蓄える電力で電動送風機8を駆動させ、電動送風機8の駆動によって発生する負圧を管部3に作用させる。電気掃除機1は、管部3を通じて被掃除面から塵埃を含んだ空気(以下、「含塵空気」と呼ぶ。)を吸い込み、含塵空気から塵埃を分離し、分離後の塵埃を捕集し、蓄積するとともに分離後の空気を排気する。
【0020】
本体ケース5の正面部には、本体接続口12が設けられている。本体接続口12は、掃除機本体2の流体的な入口であり、管部3と塵埃分離集塵部7とを流体的に接続している。本体ケース5の背面部には、二次電池4が機械的に接続される連結機構(図示省略)が設けられている。
【0021】
車輪6は、被掃除面に掃除機本体2を支える大径の走行輪である。
【0022】
塵埃分離集塵部7は、掃除機本体2に流れ込む含塵空気から塵埃を分離し、捕集し、蓄積する一方、塵埃が除去された清浄な空気を電動送風機8へ送る。塵埃分離集塵部7は、遠心分離方式であっても良いし、濾過分離方式であっても良い。
【0023】
電動送風機8は、二次電池4が蓄える電力を消費し負圧を発生させる。電動送風機8は、塵埃分離集塵部7から空気を吸い込んで負圧(吸込負圧)を発生させる。
【0024】
制御部9は、マイクロプロセッサ(図示省略)、およびマイクロプロセッサが実行する各種演算プログラム、パラメータなどを記憶する記憶装置(図示省略)を備えている。記憶装置は、予め設定される複数の運転モードに関連する種々の設定(引数)を記憶している。複数の運転モードは電動送風機8の出力に関連している。それぞれの運転モードには、相互に異なる入力値(電動送風機8の入力値、電動送風機8に流れる電流値)が設定されている。それぞれの運転モードは、管部3が受け付ける使用者の操作に対応している。制御部9は、管部3で受け付ける使用者の操作に対応する任意の運転モードを予め設定される複数の運転モードから択一的に選択して記憶部から読み出し、読み出した運転モードの設定にしたがって電動送風機8を制御する。
【0025】
電源コード11は、掃除機本体2に着脱可能であって、配線用差込接続器(図示省略、所謂コンセント)から二次電池4へ電力を導く。電源コード11の自由端部には、差込プラグ14が設けられている。二次電池4は、電源コード11を介して充電される。
【0026】
管部3は、掃除機本体2から作用する負圧によって、被掃除面から含塵空気を吸い込み掃除機本体2へ案内する。管部3は、掃除機本体2に着脱可能に接続されている継手としての接続管19と、接続管19に流体的に接続されている集塵ホース21と、集塵ホース21に流体的に接続されている手元操作管22と、手元操作管22から突出している把持部23と、把持部23に設けられている操作部24と、手元操作管22に着脱可能に接続されている延長管25と、延長管25に着脱可能に接続されている吸込口体26と、を備えている。
【0027】
接続管19は、本体接続口12へ着脱可能に接続される継手であり、本体接続口12を通じて塵埃分離集塵部7に流体的に接続されている。
【0028】
集塵ホース21は、長尺で可撓な略円筒形状のホースである。集塵ホース21の一方の端部(ここでは、後方の端部)は、接続管19に流体的に接続されている。集塵ホース21は、接続管19を通じて塵埃分離集塵部7に流体的に接続されている。
【0029】
手元操作管22は、集塵ホース21と延長管25とを中継している。手元操作管22の一方の端部(ここでは、後方の端部)は、集塵ホース21の他方の端部(ここでは、前方の端部)に流体的に接続されている。手元操作管22は、集塵ホース21および接続管19を通じて塵埃分離集塵部7に流体的に接続されている。
【0030】
把持部23は、電気掃除機1を操作するために使用者が手で把持する部分である。把持部23は、使用者が手で容易に把持できる適宜の形状で手元操作管22から突出している。
【0031】
操作部24は、それぞれの運転モードに対応するスイッチを含んでいる。具体的には、操作部24は、電動送風機8の運転停止操作に対応する停止スイッチ24aと、電動送風機8の運転開始操作に対応する起動スイッチ24bと、吸込口体26への電源供給に対応付するブラシスイッチ24cと、を備えている。停止スイッチ24aおよび起動スイッチ24bは、制御部9に電気的に接続されている。電気掃除機1の使用者は、操作部24を操作して電動送風機8の運転モードを択一的に選択できる。起動スイッチ24bは、電動送風機8の運転中に、運転モードの選択スイッチとしても機能している。この場合、制御部9は、起動スイッチ24bから操作信号が入力される度に運転モードを強→中→弱→強→中→弱→………の順に切り換える。なお、操作部24は、起動スイッチ24bに代えて、強モード運転スイッチ(図示省略)、中モード運転スイッチ(図示省略)、および弱モード運転スイッチ(図示省略)を個別に備えていても良い。
【0032】
複数の筒状体を重ね合わせたテレスコピック構造の延長管25は、伸縮可能な細長略円筒状の管である。延長管25の一方の端部(ここでは、後方の端部)には、手元操作管22の他方の端部(ここでは、前方の端部)に着脱可能な継手構造が設けられている。延長管25は、手元操作管22、集塵ホース21および接続管19を通じて塵埃分離集塵部7に流体的に接続されている。
【0033】
吸込口体26は、木床やカーペットなどの被掃除面上を走行可能または滑走可能であり、走行状態または滑走状態において被掃除面に対向する底面に吸込口28を有する。また、吸込口体26は、吸込口28に配置されている回転可能な回転清掃体29と、回転清掃体29を駆動させる電動機31と、を備えている。吸込口体26の一方の端部(ここでは、後方の端部)には、延長管25の他方の端部(ここでは、前方の端部)に着脱可能な継手構造が設けられている。吸込口体26は、延長管25、手元操作管22、集塵ホース21および接続管19を通じて塵埃分離集塵部7に流体的に接続されている。つまり、吸込口体26、延長管25、手元操作管22、集塵ホース21、接続管19、および塵埃分離集塵部7は、電動送風機8から吸込口28へ至る吸込風路である。電動機31は、ブラシスイッチ24cが操作される度に運転開始と停止とを交互に繰り返す。
【0034】
電気掃除機1は、起動スイッチ24bが操作されると電動送風機8を始動させる。例えば、電気掃除機1は、電動送風機8が停止している状態で起動スイッチ24bが操作されると、先ず電動送風機8を強運転モードで運転し、再び起動スイッチ24bが操作されると電動送風機8を中運転モードで運転し、三度、起動スイッチ24bが操作されると電動送風機8を弱運転モードで運転し、以下同様に繰り返す。強運転モード、中運転モードおよび弱運転モードは、予め設定される複数の運転モードであり、強運転モード、中運転モード、弱運転モードの順に電動送風機8に対する入力値が小さい。始動した電動送風機8は、塵埃分離集塵部7から空気を排気してその内部を負圧にする。
【0035】
塵埃分離集塵部7内の負圧は、本体接続口12、接続管19、集塵ホース21、手元操作管22、延長管25、および吸込口体26を順次に通じて吸込口28に作用する。電気掃除機1は、吸込口28に作用した負圧によって、被掃除面上の塵埃を空気とともに吸込口28に吸い込んで被掃除面を掃除する。塵埃分離集塵部7は、電気掃除機1に吸い込まれた含塵空気から塵埃を分離し、蓄積する一方、含塵空気から分離した空気を電動送風機8へ送る。電動送風機8は、塵埃分離集塵部7から吸い込んだ空気を掃除機本体2外へ排気する。
【0036】
図2は、本発明の実施形態に係る電気掃除機のブロック図である。
【0037】
図2に示すように、本実施形態に係る電気掃除機1は、二次電池4に電気的に接続される制御回路41を備えている。
【0038】
制御回路41は、二次電池4から電動送風機8に流れる電流を調整して電動送風機8の駆動を制御する。制御回路41は、二次電池4が蓄える電気を消費し負圧を発生させる電動送風機8と、電動送風機8の駆動を制御し、かつ電動送風機8が停止している状態の二次電池4の端子電圧V1と電動送風機8が始動して予め定める時間が経過した後の二次電池4の端子電圧V2との差分ΔVに基づいて二次電池4の放電電流を変化させる制御部9と、を備えている。また、制御回路41は、二次電池4と電動送風機8とを接続する電路43を開閉するスイッチング素子45と、二次電池4の端子電圧を制御用電圧に変換して制御部9へ電力を供給する制御用電源部46と、二次電池4の端子電圧を検知して制御部9へ出力する電圧検知部47と、電動送風機8を流れる電流を検知して制御部9へ出力する電流検知部48と、を備えている。
【0039】
二次電池4の端子電圧は、電池電圧とも呼ばれる。
【0040】
電動送風機8は、二次電池4に直列に接続されている。
【0041】
スイッチング素子45は、例えば電界効果トランジスタ(Field effect transistor、FET)であり、制御部9に接続されるゲートを備えている。スイッチング素子45は、ゲート電流の変化に応じて電動送風機8の入力を変える。
【0042】
制御用電源部46は、二次電池4の電圧を制御部9の駆動に適合する制御用電源電圧に変換する。
【0043】
電圧検知部47は、二次電池4に並列に接続されている。電圧検知部47は、二次電池4の端子電圧を測定し、計測結果を電気信号に変換して制御部9へ出力する。
【0044】
電流検知部48は、電動送風機8に直列に接続されている。電流検知部48は、電動送風機8に流れる電流を測定し、計測結果を電気信号に変換して制御部9へ出力する。電動送風機8に定電流を供給する場合、具体的にはスイッチング素子45をスイッチングして電動送風機8に定電流を供給する場合には、電流検知部48を用いることなく、この定電流の設定値を電流検知部48の測定値に代用しても良い。定電流の設定値は、運転モード、例えば強運転モード、中運転モード、弱運転モード毎に設定される電動送風機8の入力に対応している。
【0045】
ところで、二次電池4の内部抵抗は、二次電池4の温度や劣化度に影響される。二次電池4の温度が低下するほど、また二次電池4の劣化が進むほど、二次電池4の内部抵抗は増加する。
【0046】
二次電池4の内部抵抗が通常よりも高い状態で二次電池4の放電電流、ひいては電動送風機8に流れる電流を保ったまま電動送風機8を始動させると、二次電池4の電圧降下は、通常時よりも増加する。電圧降下が増加すると、二次電池4の端子電圧が放電終止電圧よりも低下する可能性がある。
【0047】
この端子電圧の低下は二次電池4の充電率とは無関係に起きるため、二次電池4の充電率が十分な状態であっても、二次電池4の端子電圧が放電終止電圧よりも低下したことをもって始動直後に電動送風機8を停止させてしまうと、使用者の利便性を損なう。
【0048】
そこで、制御部9は、電動送風機8が停止している状態の二次電池4の端子電圧V1と電動送風機8が始動して予め定める時間が経過した後の二次電池4の端子電圧V2との差分ΔVと電動送風機8に流れる電流とから二次電池4の内部抵抗を推定し、この二次電池4の内部抵抗において現在の二次電池4の端子電圧が二次電池4の放電終止電圧より大きくなるようスイッチング素子45を制御して電動送風機8に流れる電流、つまり二次電池4の放電電流を変化させる。この二次電池4の放電電流を変化させる制御を、放電電流調整制御と呼ぶ。
【0049】
なお、制御部9は、スイッチング素子45をスイッチングして電動送風機8に定電流を供給している場合には、放電電流調整制御の期間中、定電流制御を抑制する。
【0050】
制御部9が実行する放電電流調整制御について詳しく説明する。
【0051】
図3は、本実施形態に係る電気掃除機の放電電流調整制御のフローチャートである。
【0052】
図3に示すように、本実施形態に係る電気掃除機1の制御部9は、掃除機本体2に二次電池4が装着されている状態での制御部9を起動し、放電電流調整制御を開始する。制御部9は、操作部24の起動スイッチ24bを監視し(ステップS1 No)、操作部24の起動スイッチ24bが操作されると(ステップS1 Yes)、電動送風機8を始動する前に電動送風機8が停止している状態の二次電池4の端子電圧V1を測定する(ステップS2)。具体的には、制御部9は、電圧検知部47が出力する検知結果を取得し、これを端子電圧V1として一時的に記憶する。
【0053】
制御部9は、ステップS2において端子電圧V1を測定した後、スイッチング素子45を制御して電動送風機8を始動する(ステップS3)。制御部9は、電動送風機8を始動すると経過時間を計時する(ステップS4)。制御部9は、電動送風機8が始動して予め定める時間、例えば2秒が経過すると(ステップS5 Yes)、二次電池4の端子電圧V2を測定する(ステップS6)。具体的には、制御部9は、電圧検知部47が出力する検知結果を取得し、これを端子電圧V2として一時的に記憶する。
【0054】
制御部9は、(端子電圧V1)−(端子電圧V2)=(差分ΔV)を算出し(ステップS7)、この差分ΔVに応じて電動送風機8に流れる電流、つまり二次電池4の放電電流を変化させる(ステップS8)。
【0055】
制御部9は、電動送風機8を始動する度に放電電流調整制御を実行する。換言すると、制御部9は、電動送風機8を始動する度に差分ΔVに基づいて二次電池4の放電電流を変化させる。
【0056】
ステップS8において放電電流を変化させる方式には、大きく2つの方式が用いられる。
【0057】
第一の方式は、差分ΔVに応じて二次電池4の放電電流を減少させる方式である。これを減少モードと呼ぶ。減少モードは、ステップS3において電動送風機8を始動するとき、二次電池4の放電電流を電動送風機8の通常の駆動制御と同じ値に設定する。ステップS8において、制御部9は、差分ΔVに応じてスイッチング素子45のデューティ比を下げ、電動送風機8に流れる電流、つまり二次電池4の放電電流を低下させる。
【0058】
なお、減少モードでは、差分ΔVに応じて二次電池4の放電電流を必ず低下させる必要はない。例えば、制御部9は、差分ΔVが予め定める閾値よりも大きい場合には、二次電池4の放電電流を変化させて電動送風機8を駆動させ、他方、差分ΔVが予め定める閾値以下の場合には、二次電池4の放電電流を変化させることなく、通常通り、例えば定電流制御で予定している定電流、つまり選択された運転モードにおける設定どおりの入力値で電動送風機8を駆動するものであっても良い。この閾値は、二次電池4の温度低下の程度や、二次電池4の劣化の進み具合を考慮し、二次電池4の端子電圧が二次電池4の放電終止電圧よりも低くならないことを予め見込むことができる範囲に設定することが好ましい。
【0059】
第二の方式は、差分ΔVに応じて二次電池4の放電電流を増加させる方式である。これを増加モードと呼ぶ。増加モードは、ステップS3において電動送風機8を始動するとき、二次電池4の温度条件や劣化状態に係わらず二次電池4の端子電圧が二次電池4の放電終止電圧より大きくなるよう二次電池4の放電電流を極力低い値に設定する。ステップS8において、制御部9は、差分ΔVに応じてスイッチング素子45のデューティ比を上げ、電動送風機8に流れる電流、つまり二次電池4の放電電流を増加させる。
【0060】
減少モード、および増加モードのいずれであっても、制御部9は、差分ΔVと電動送風機8に流れる電流とから二次電池4の内部抵抗を推定し、この二次電池4の内部抵抗において現在の二次電池4の端子電圧が二次電池4の放電終止電圧より大きくなるようスイッチング素子45を制御して電動送風機8に流れる電流、つまり二次電池4の放電電流を変化させる。この二次電池4の内部抵抗の推定、および推定した内部抵抗において二次電池4の端子電圧が二次電池4の放電終止電圧より大きくなる二次電池4の放電電流の値は、制御部9で逐次的に演算して設定しても良いし、差分ΔVにおいて好適な二次電池4の放電電流を実験によって予め確認し、予め制御部9の記憶装置に記憶しておいても良い。
【0061】
制御部9は、二次電池4の端子電圧が二次電池4の放電終止電圧以下であっても、電動送風機8が始動して予め定める時間、例えば2秒が経過するまで(ステップS5 No)、かつ経過後にステップS8の処理が終了し、二次電池4の端子電圧が安定するまでの判断時間、例えば5秒が経過するまで電動送風機8の駆動を継続させ、電動送風機8の停止を抑制する。電動送風機8の始動時に電圧降下を増大させる主な要因が二次電池4の低温状態、または二次電池4の劣化の進行であるところ、この停止抑制によって二次電池4の寿命を大幅に損なうことはない。
【0062】
図4は、本実施形態に係る電気掃除機の放電電流調整制御の他の例におけるフローチャートである。
【0063】
なお、図4のステップS1からステップS8は、図3のステップS1からステップS8と同じ処理である。説明が繰り返しになるため、ステップS1からステップS8の説明は省略する。
【0064】
図4に示すように、本実施形態に係る電気掃除機1の制御部9は、電動送風機8の停止から再始動までの経過時間が予め定める時間間隔以内の場合には、電動送風機8の停止以前に算出済みの差分ΔVに基づいて二次電池4の放電電流を変化させる。この時間間隔は、使用者が掃除している最中、電気掃除機1を一時的に停止させか否かを判断できる程度の時間、例えば1分に設定される。また、電気掃除機1の一時停止とは、放電にともなって発熱した二次電池4が雰囲気温度程度に冷却される時間間隔や、1日の温度変化(昼夜の温度変化)にともなって二次電池4が雰囲気温度に追従する時間間隔よりも短く設定される。
【0065】
具体的には、制御部9は、二次電池4の放電電流を変化させ(ステップS8)電動送風機8を駆動させている最中、操作部24の停止スイッチ24aが操作されると(ステップS9 Yes)、電動送風機8を停止させ、かつ実質的に同時に計時処理を実行し(ステップS10)、ステップS1に戻る。
【0066】
次いで、制御部9は、操作部24の起動スイッチ24bが再び操作されると(ステップS1 Yes)、電動送風機8を始動させる前にステップS10で開始した計時処理の経過時間と予め定める時間間隔(一時停止と判断できる時間間隔、例えば1分)とを比較する(ステップS11)。
【0067】
制御部9は、電動送風機8が停止してから再始動するまでの時間、つまりステップS10で開始した計時処理の経過時間が予め定める時間間隔以内の場合には(ステップS11 Yes)、電動送風機8の停止以前に算出済みの差分ΔVを記憶装置から読み出す(ステップS12)。制御部9は、ステップS12において算出済みの差分ΔVを記憶装置から読み出した後、ステップS2からステップS7を迂回し、電動送風機8の停止以前に算出済みの差分ΔVに基づいて二次電池4の放電電流を変化させる(ステップS8)。換言すると、電動送風機8の複数回再始動され、その都度、停止から再始動までの経過時間が予め定める時間間隔以内の場合には、制御部9は、ステップS7において最後に算出された差分ΔVに基づいてステップS8を処理する。
【0068】
他方、制御部9は、ステップS10で開始した計時処理の経過時間が予め定める時間間隔を超えている場合(つまり一時停止ではなく、二次電池4の温度が雰囲気温度程度である場合)には(ステップS11 No)、ステップS2へ進み、それ以後の処理を実行する。
【0069】
このように構成される本実施形態に係る電気掃除機1は、電動送風機8が停止している状態の二次電池4の端子電圧V1と電動送風機8が始動して予め定める時間が経過した後の二次電池4の端子電圧V2との差分ΔVに基づいて二次電池4の放電電流を変化させるため、二次電池4の温度が低下したり、二次電池4の劣化が進んだりして二次電池4の内部抵抗が増加し、電動送風機8の始動によって電圧降下が増加する状況であっても、電動送風機8が始動直後に停止することを防ぎ、電動送風機8の駆動を継続させることができる。
【0070】
また、本実施形態に係る電気掃除機1は、差分ΔVが予め定める閾値よりも大きい場合に二次電池4の放電電流を変化させるため、二次電池4の温度低下や劣化がない、理想的な運転状況の下では、電動送風機8を通常どおりに駆動することができる。
【0071】
さらに、本実施形態に係る電気掃除機1は、電動送風機8を始動する度に差分ΔVに基づいて二次電池4の放電電流を変化させるため、電動送風機8の始動の都度、二次電池4の放電電流を適正にすることができる。
【0072】
また、本実施形態に係る電気掃除機1は、電動送風機8の停止から再始動までの経過時間が予め定める時間間隔以内の場合には、電動送風機8の停止以前に算出済みの差分ΔVに基づいて二次電池4の放電電流を変化させるため、短時間のうちに何度も電動送風機8が再起動される状況であっても、二次電池4の放電電流を適正にすることができる。
【0073】
さらに、本実施形態に係る電気掃除機1は、二次電池4の端子電圧が放電終止電圧以下の場合であっても、電動送風機8が始動して予め定める時間より長い判断時間が経過し、二次電池4の端子電圧V2を測定するまでは電動送風機8の駆動を継続するため、二次電池4の残量にかかわらず、電圧降下の増加にともない二次電池4の端子電圧が放電終止電圧以下になっても、電動送風機8を停止させることなく、電動送風機8の駆動を継続することができる。
【0074】
したがって、本発明に係る電気掃除機1によれば、二次電池4の内部抵抗が増加している状態であっても、電動送風機8の駆動を継続し、運転時間を確保可能であり、使用者の利便性を高めることができる。
【0075】
なお、本実施形態に係る電気掃除機1は、二次電池4を電動送風機8の電源に使用する限り、キャニスタ型のものに限らず、アップライト型、スティック型、あるいはハンディ型などいずれの形式の電気掃除機であってもよい。
【0076】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0077】
1…電気掃除機、2…掃除機本体、3…管部、4…二次電池、5…本体ケース、6…車輪、7…塵埃分離集塵部、8…電動送風機、9…制御部、11…電源コード、12…本体接続口、14…差込プラグ、19…接続管、21…集塵ホース、22…手元操作管、23…把持部、24…操作部、24a…停止スイッチ、24b…起動スイッチ、24c…ブラシスイッチ、25…延長管、26…吸込口体、28…吸込口、29…回転清掃体、31…電動機、41…制御回路、43…電路、45…スイッチング素子、46…制御用電源部、47…電圧検知部、48…電流検知部。
図1
図2
図3
図4