(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6850089
(24)【登録日】2021年3月9日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】エンドキャップ
(51)【国際特許分類】
F02M 55/02 20060101AFI20210322BHJP
【FI】
F02M55/02 360A
F02M55/02 340G
F02M55/02 330D
F02M55/02 360B
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-154971(P2016-154971)
(22)【出願日】2016年8月5日
(65)【公開番号】特開2018-21539(P2018-21539A)
(43)【公開日】2018年2月8日
【審査請求日】2019年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000120249
【氏名又は名称】臼井国際産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000501
【氏名又は名称】翠特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】室伏 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】神田 孝則
【審査官】
松永 謙一
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2015/0007796(US,A1)
【文献】
特開2016−020678(JP,A)
【文献】
韓国公開特許第10−2016−0069534(KR,A)
【文献】
特開昭58−065970(JP,A)
【文献】
特開平09−144624(JP,A)
【文献】
米国特許第4342419(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 55/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レール本体の端部内方に挿入配置されるとともに、このレール本体の内周にろう付け固定されるエンドキャップにおいて、一対の側面及び底面から成るとともにろう材製リングを係合可能とする係合凹溝が、レール本体への挿入部の外周に備えられているとともに、基端の外周は、レール本体の外方に突出配置されるとともにレール本体の端面に当接可能とする当接鍔が設けられ、上記挿入部の外周とレール本体の内周、及び上記当接鍔とレール本体の端面との間には、上記ろう材製リングからの溶けたろう材が流出可能な間隔が設けられるとともに、上記係合凹溝は、その断面形状を底面と両側面とからなるコ字型とし、当該係合凹溝の両側面のうち、上記当接鍔側の一側面がレール本体の内周面に当接するとともに他側面がレール本体の内周面に当接しない構成であることを特徴とするエンドキャップ。
【請求項2】
挿入部の先端面と外周面との間には、先端面側を径小としたテーパー形状のテーパー壁面を備えたことを特徴とする請求項1のエンドキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガソリン直噴エンジン用のフューエルレールの端部にろう付けにて固定配置するエンドキャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、特許文献1の
図2及び段落番号0004に示す如く、レール本体の端部にエンドキャップを挿入配置するとともにろう付け固定する方法が知られている。そして、このようにフューエルレールのレール本体両端にエンドキャップをろう付け固定する一例として、例えば
図5に示す如くレール本体(30)端部の内面を切削加工して段部(31)を設け、この段部(31)にろう材製リング(32)を挿入配置した後、このレール本体(30)の端部内にエンドキャップ(33)の挿入部(34)を挿入配置し、この状態でろう付けを行う方法が知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2016−37928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の如くレール本体端部の内面を切削加工して段部を設けた場合には
、切削箇所のレール本体の肉厚が薄くなることから、切削加工した段部が応力集中の起点
となり得るため、内圧負荷時に破損して漏れが生じるおそれがある。そのため、内圧負荷
時に破損が生じにくいものとするためにはレール本体を肉厚に形成しなければならずコス
トが高くつくものとなる。また、レール本体を切削加工する際に切粉が生じるため、この
切粉が異物となるおそれがあるとともに、切粉によりレール本体に傷が生じるおそれがあ
る。更に切削加工に切削油を使用した場合には、脱脂洗浄等の余分な工程が加わるものと
なるため製造が煩雑なものとなる。
【0005】
そこで、本発明は上記の如き課題を解決しようとするものであって、レール本体端部にエンドキャップの挿入部を挿入配置してろう材製リングによるろう付け固定を行う場合に、ろう材製リングを適正に配置してろう付けを確実に行うことのできるとともに、内圧負荷時にレール本体が破損するという事態が生じにくいものを得ようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明は上述の如き課題を解決したものであって、レール本体の端部内方に挿入配置されるとともに、このレール本体の内周にろう付け固定されるエンドキャップにおいて、一対の側面及び底面から成るとともにろう材製リングを係合可能とする係合凹溝が、レール本体への挿入部の外周に備えられているものである。
【0007】
このようにエンドキャップの挿入部に一対の側面及び底面から成る係合凹溝を備えることにより、ろう材製リングを係合凹溝内に配置することによってこのろう材製リングがエンドキャップから離脱困難なものとなる。そのため、エンドキャップの挿入部をレール本体に挿入配置する際に、ろう材製リングが位置ずれしたりエンドキャップから離脱することなく、適正な位置を保持した状態でレール本体内にろう材製リングを配置することが可能となり、エンドキャップとレール本体とのろう付けを確実に行うことができる。
【0008】
基端の外周は、レール本体の外方に突出配置されるとともにレール本体の端面に当接可能とする当接鍔を設けるとともに、上記挿入部の外周とレール本体の内周、及び上記当接鍔とレール本体の端面との間には、上記ろう材製リングからの溶けたろう材が流出可能な間隔が設けられたものである。
【0009】
このように当接鍔を設けることにより、エンドキャップのレール本体を横にした状態でろう付け作業を行った際に、当接鍔とレール本体の端面との間までろう材が流れてくる。これにより、外観からろう材を視認することが可能となるため、レール本体とエンドキャップとの当接部分全域がろう付けされたことを間接的に確認することができる。
【0010】
また、上記挿入部の外周とレール本体の内周、及び上記当接鍔とレール本体の端面との間には、上
記ろう材製リングからの溶けたろう材が流出可能な間隔が設けられるとともに、上記係合凹溝は、その断面形状を底面と両側面とからなるコ字型とし、当該係合凹溝の両側面のうち、上記当接鍔側の一側面がレール本体の内周面に当接するとともに他側面がレール本体の内周面に当接しない構成としたものである。
【0011】
また、挿入部の先端面と外周面との間には、先端面側を径小としたテーパー形状のテーパー壁面を備えたものであっても良い。このように挿入部にテーパー壁面を設けることにより、挿入部の先端からろう材製リングを挿通した際に、ろう材製リングがテーパー壁面によって挿通部の外周に挿通配置しやすいものとなる。そのため、ろう材製リングの係合凹溝への配置作業を円滑に行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本願発明は上記の如く、エンドキャップの挿入部に一対の側面及び底面から成る係合凹溝を備えることにより、この係合凹溝内にろう材製リングを配置した際に、ろう材製リングがエンドキャップから離脱困難なものとなる。そのため、エンドキャップの挿入部をレール本体に挿入配置する際に、ろう材製リングが位置ずれしたりエンドキャップから離脱することなく、適正な位置を保持した状態でレール本体内にろう材製リングを配置することが可能となり、エンドキャップとレール本体とのろう付けを容易且つ確実に行うことができる。
【0013】
また、レール本体に切削加工を施す必要がないため、レール本体にろう材製リングを配置するための段部を切削加工にて形成した場合の如く、応力集中を引き起こして内圧負荷時に破損するおそれがないものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図4】(a)他の異なる実施例を示す断面図。 (b)他の異なる実施例を示す断面図。
【実施例1】
【0015】
本願の第1発明である実施例1について、
図1において以下に説明する。まず、(1)はエンドキャップであって、先端側をレール本体(2)への挿入部(3)としている。またこのエンドキャップ(1)の基端(4)外周には当接鍔(5)を設けている。そして上記挿入部(3)の外径をレール本体(2)の内径と略同一寸法に形成し、挿入部(3)をレール本体(2)内に挿入配置した際に、レール本体(2)の内周面(6)に挿入部(3)の外周面(7)とが当接した状態で配置される。
【0016】
また上記エンドキャップ(1)の挿入部(3)の先端側には、係合凹溝(10)を設けている。この係合凹溝(10)は、
図2に示す如く一対の側面(11)(12)と底面(13)とから成るものであって断面形状をコ字型としている。また、挿入部(3)の先端面(8)と外周面(7)との間には、先端面(8)側を径小としたテーパー形状のテーパー壁面(14)を設けている。
【0017】
上記の如くエンドキャップ(1)の挿入部(3)に一対の側面(11)(12)及び底面(13)から成る係合凹溝(10)を備えることにより、係合凹溝(10)内にろう材製リング(15)を配置した際に、このろう材製リング(15)がエンドキャップ(1)から離脱困難なものとなる。そのため、エンドキャップ(1)の挿入部(3)をレール本体(2)に挿入配置する際に、ろう材製リング(15)が位置ずれしたりエンドキャップ(1)から離脱することなく、適正な位置を保持した状態でレール本体(2)内にろう材製リング(15)を配置することが可能となり、エンドキャップ(1)とレール本体(2)とのろう付けを容易且つ確実に行うことができる。
【0018】
また、レール本体(2)に切削加工を施す必要がないため、レール本体(2)にろう材製リング(15)を配置するための段部を切削加工にて形成した場合の如く、応力集中を引き起こして内圧負荷時に破損するおそれがないものである。また、係合凹溝(10)の断面形状をコ字型としているため、ろう材製リング(15)を係合凹溝(10)内に離脱困難な状態で保持することができる。
【0019】
そして、上記の如く形成したエンドキャップ(1)の係合凹溝(10)にろう材製リング(15)を配置する。この時、上記の如く挿入部(3)の先端に、先端面(8)側を径小としたテーパー壁面(14)を設けていることから、このテーパー壁面(14)に沿ってろう材製リング(15)を挿入部(3)の先端から挿入部(3)の外周を通じて係合凹溝(10)内に円滑に挿通させることができるため、係合凹溝(10)内へのろう材製リング(15)の挿通作業を容易なものとすることができる。
【0020】
また上記の如く形成したエンドキャップ(1)の挿入部(3)をレール本体(2)に挿入配置す
ることにより、
図1に示す如くエンドキャップ(1)の基端(4)外周に設けた当接鍔(5)がレ
ール本体(2)の端面(16)に当接するものとなる。このようにエンドキャップ(1)を形成配置
することにより、エンドキャップ(1)のレール本体(2)を横にした状態でろう付け作業を行
った際に、
図1の矢印に示す方向に溶けたろう材が流れ出す。これにより、外観から
ろう材を視認することが可能となるため、レール本体(2)とエンドキャップ(1)との当接部
分全域がろう付けされたことを間接的に確認することができる。
【0021】
尚、本実施例では上記の如く、係合凹溝(10)をエンドキャップ(1)の1箇所のみ設けているが、他の異なる実施例ではこれに限らず、
図3に示す如く1つのエンドキャップ(1)に係合凹溝(20)(21)を2箇所設けることも可能である。
【0022】
また、本実施例ではエンドキャップ(1)の基端(4)側に当接鍔(5)を設けているが、他の異なる実施例ではこれに限らず、
図4(a)に示す如く基端(4)側に雄ねじ部品(22)を一体形成したり、
図4(b)に示す如く基端(4)側に雌ねじ部品(23)を一体形成したりすることも可能である。
【符号の説明】
【0023】
1 エンドキャップ
2 レール本体
3 挿入部
4 基端
5 当接鍔
7 外周面
8 先端面
10,20,21 係合凹溝
11,12 側面
13 底面
14 テーパー壁面
15 ろう材製リング
16 端面