【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成28年7月22日に発明者(株式会社清水合金製作所所属)が本願のソフトシール仕切弁を中島管材鋼機株式会社に販売した。
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
この種のソフトシール仕切弁の弁体は、一般に、金属製などの芯材の全面に、ゴム等の弾性材がライニングされることで構成される。通常、弁体芯金にゴム材料をライニングする場合には、上型と下型とからなる成形型が用いられ、その成形時には、上型と下型との間に芯金の全面が挟み込まれ、上型に設けられた注入口より未加硫のゴム(ライニング材料)が芯材の上面側から成形型内に大きな注入圧力で流し込まれる。その際、ゴムが上型と芯金との隙間から下型と芯金との隙間に流れ込み、芯金の下面側にもライニングが施される。
【0003】
この場合、下型には弁体支持用のピンが設けられ、この支持ピンにより芯金が支持されて、この芯金と下型との間の隙間が保持された状態になっている。上型側より注がれたゴムは、この隙間を通って芯金の下面側に流れ込み、この下面が上面とともにライニングされる。成形後には、支持ピンで支えられてゴムが到達していない部分に対して、手作業でゴム材料又は樹脂等が埋め込まれて補修される。このような成形方法では、ゴムの埋め込み部分の数や面積を少なくするために、支持ピンにより支えられる位置が数か所に抑えられ、その径も小さくなっていることが多い。
【0004】
さらに、このような弁体成形方法として、特許文献1における弁体ゴムライニング方法が開示されている。このライニング方法では、上型と下型とによる成形型に支持ピンで芯金が支持され、ライニング用の隙間が確保された状態でキャビティ内に大圧力でゴムが圧入され、続いて、支持ピンが隙間の外に下降され、キャビティと弁体との隙間から支持ピン跡部分に圧入ゴムが埋められて加硫がおこなわれる。このように、ライニングの途中で支持ピンを移動させることで、下型と弁体との隙間から流れ込むゴムを支持ピン跡まで到達させ、弁体全面をライニングしようとする方法も知られている。
【0005】
これらのライニング方法において、ゴム注入時には大きな圧力が芯金に作用する。この注入圧力に耐えうるために、一般に、ゴムライニング用の芯金は大きな肉厚に設けられ、リブが形成されて強度が確保されている。この場合、通常、芯金の材料としては、ダクタイル鋳鉄、ステンレス鋳鋼等の金属が使用され、これらの金属は、ゴム材料に比べて比重が大きく、弁体全体の質量のほとんどを占めるため、弁体全体の質量に与える影響が大きい。そのため、芯金を大きな肉厚にし、リブを形成すると、芯金の質量が増大して弁体全体の質量が大きくなる。弁体の質量が大きくなると、ライニング時や、製品組立て時の作業性が悪くなり、現場等においても、弁体を交換する際の作業性も悪化することから、これらを回避するために、芯金の軽量化が要求されている。
【0006】
これに加えて、ライニングゴムの薄肉化も要求されており、これによると、ゴム材料の使用量が減少して材料費も抑えられる。ゴムの加硫時間も短くなることから、ライニング成形にかかるコストも下げることが可能になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前述した弁体成形方法を用いて、肉厚が薄くリブの無い芯金にライニングを施して弁体の軽量化を図ろうとする場合、支持ピンで支える位置が数か所と少なく、支持ピンの径も小さいときには、芯金がゴムの注入圧力による影響を受けやすくなり、この圧力に耐えきれずに変形しやすくなる。これに対して、支持ピンを大径化し、個数を増加して芯金へのゴム注入圧力を緩和しようとすると、大型化した支持ピン同士の間隔が狭くなるためにこれらの間に加硫中のゴムが流れ込みにくくなり、その結果、均等なライニング厚を確保できなくなる可能性がある。さらに、支持ピンで支えられていた部分に別のゴム材料又は樹脂等を埋め込む際には、手作業であって、しかも埋め込み面積が多くなることで手間がかかる。加硫中のゴムを流し込んだ部分と性質が異なり、これらを均等な厚みに形成することも難しくなる。これらの理由により、バルブへの組込み後に埋め込み部分から水が浸入し、芯金がさびるなどの機能性の悪化にもつながる。
【0009】
特許文献1の場合には、大径化・個数を増加した支持ピンを下降したときに、支持ピン上面が大面積になることから、この上面と弁体の支持ピン跡との隙間も広くなる。このため、これらの間にゴムを充填するときの時間が増加し、支持ピンの下降前に流し込んだゴムと同時に加硫することが難しくなる。これにより、芯金全面への均等なライニングが難しくなり、芯金の一部が露出する可能性もある。このことから、下降する支持ピンを用いてライニング成形する場合、支持ピンの下降前のゴムが加硫する前に、支持ピン跡に迅速にゴムを流し込む必要がある。
【0010】
さらに、支持ピン下降後の支持ピン跡へのゴム充填に時間がかかると、弁体の自重とゴムの注入圧力によって弁体が下型方向に下降することがある。この場合、弁体上面側と弁体下面側とのゴム厚さに偏りが発生し、弁体上面に比較して下面のゴム厚さが薄くなり、弁体としての精度が低くなる。下型と弁体との隙間が小さくなることから、支持ピン跡への迅速なゴムの充填も一層難しくなる。
【0011】
これに加えて、支持ピンを大型化し、個数を増加すると、支持ピンの周辺のゴムが支持ピン跡に流れ込み、支持ピン周辺のゴム厚さが局部的に薄くなる問題も生じる。このため、支持ピンを押圧して下降させるために必要なゴムの量(厚み)が足りなくなり、支持ピンが下降しない場合がある。この場合、支持ピン跡にライニングできなくなり、芯金の露出につながる。
【0012】
上述のことから、成形型と芯金との隙間を小さくすることも難しくなり、仮に隙間を小さくした場合にはゴムの流路も細くなって芯金までゴムが流れにくくなる。特に、注入したゴムが支持ピン周辺に達するまでには、上型と芯金との隙間、下型と芯金との隙間を通過するという成形型の構成上、これらの隙間にゴムが流れにくくなり、芯金全体にゴムが充填されなくなる。このため、上述した弁体成形方法では、ライニングゴムの薄肉化も難しくなりコスト大となる。
【0013】
本発明は、上記の課題点を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、芯金を補強することなく薄肉化して弁体全体の軽量化を図りつつライニング可能であり、芯金の全面に均等の厚さでライニングしてバルブの機能性を維持でき、ライニング厚さを薄くすることもできるソフトシール仕切弁の
弁体成形方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、上型
と下型を有する成形型内にライニング用の隙間を設けた状態で仕切弁用弁体の
芯金の弁翼側を上昇状態の支持ピンの支受面で支持させ、上型から芯金の被ライニング面に未加硫状態のゴム材料を圧入すると共に、
支受面に対向する位置に芯金の表裏面を貫通する貫通穴が形成され、この貫通穴を含む周囲を支受面により支受可能に設け、芯金の表裏面に形成した隙間にゴム材料を圧入し、かつ貫通穴から圧入されるゴム材料の流入圧力で支持ピンの支受面を押圧して支持ピンを芯金の下面に生じる隙間まで下降させて支受面と芯金の下面との間に隙間を形成し、当該隙間にゴム材料を圧入することにより芯金の被ライニング面全体に均等の厚さのゴムライニングを形成するようにしたソフトシール仕切弁の弁体成形方法である。
【0015】
請求項2に係る発明は、支持ピン
の支受面を押圧して下降させる際に、さらに芯金の上部に形成された弁棒取付け部を支持ピンにより支持し、この支持ピン
の支受面に対向する位置に芯金の表裏面を貫通する貫通穴が形成され、この貫通穴を含む周囲を支受面により支受可能に設け、芯金の表裏面に形成した隙間にゴム材料を圧入し、かつ貫通穴から圧入されるゴム材料の流入圧力で支持ピンの支受面を押圧して支持ピンを芯金の下面に生じる隙間まで下降させて弁棒取付け部の下面に生じる隙間にゴム材料を圧入するようにしたソフトシール仕切弁の弁体成形方法である。
【0016】
請求項3に係る発明は、
ゴム材料の加硫中に支持ピンを下降させた状態で、芯金の下面又は弁棒取付け部の下面に形成された隙間に向けて隙間の外方より回り込んで圧入されるゴム材料と貫通穴より圧入されて貫通穴の下部より隙間に放射方向に広がりながら圧入されるゴム材料とが隙間に充填されるようにしたソフトシール仕切弁の弁体成形方法である。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係る発明によると、成形型と芯金との隙間に加えて貫通穴からゴム材料を迅速に圧入し、芯金の上下面側に圧入したゴム材料が加硫する前に、被ライニング面全体にゴム材料を充填して均一に加硫できる。これにより、肉厚が薄くリブ等の補強を設けていない芯金のライニング用として、支持ピンを大型化したり個数を増加して支持ピン同士の間隔が狭くなった場合でも、芯金の被ライニング面全体に略均等の厚さでライニングを施すことができる。このことから、芯金を補強することなく薄肉にして弁体全体の軽量化を図りつつ、高精度にライニングして止水性などの機能性を確保できる。
しかも、芯金の貫通穴を含む周囲を支受面で支受することで、この支受面を大面積に設けてゴム材料の圧入時に芯金に加わる力を緩和させ、芯金の変形や破損を防止しつつ貫通穴から支受面と芯金の下面との間にライニングを施し、高品質のソフトシール仕切弁の弁体を成形できる。また、貫通穴から芯金と下型との隙間に容易にゴム材料を圧入できるため、成形型と芯金との隙間を小さくし、ライニング厚を薄くして更なる軽量化やコンパクト化、及び使用するゴム材料の削減も図ることも可能になる。
さらに、支持ピンは、貫通穴からのゴム材料が圧入されて支受面を押圧することにより、支持ピンの下降手段を別に設けることなく、貫通穴からのゴム材料の圧入により支持ピンが下降して支受面と芯金の下面との隙間が面一となることで、ライニング部の表面への凹凸が発生することなく、確実にライニングされる。
【0020】
請求項2に係る発明によると、
支持ピンの支受面を押圧して下降させる際に、弁棒取付け部の支持ピンの支受面を押圧して弁棒取付け部の下面に生じる隙間にゴム材料を圧入することができるので、弁翼側のライニングと同時に、弁棒取付け部にライニングを施し、芯金全体に均等な厚さによってゴム材料をライニング成形した弁体を設けることが可能となる。
【0021】
請求項3に係る発明によると、
支持ピンが下降した状態で、ゴム材料は、芯金下面から支受面に圧入されると共に、ゴム材料は、芯金上面で貫通穴に集まるように流れ、この貫通穴の短い距離を下降した後に、芯金下面に放射状に広がりながら芯金下面と支受面との間を通って隙間に充填され、芯金の表面を確実にライニングすることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明におけるソフトシール仕切弁の弁体成形方法とその弁体成形装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1においては、本発明の弁体成形方法により成形する仕切弁用弁体を有するソフトシール仕切弁の一例を示しており、先ず、このソフトシール仕切弁について述べる。
【0026】
図1のソフトシール仕切弁1は、弁体2、弁箱3、蓋体4、弁棒5を有している。弁体2は、内部に芯金10を有し、筒型の弁箱3内に設けられた流路3aに対して、弁棒5により交叉方向に昇降動自在に取付けられる。芯金10の表面の全周面には、本発明の弁体成形方法によりライニング部11が成形され、このライニング部11は、例えば、EPDM、フッ素ゴムなどのゴム材料12により設けられる。
【0027】
図1、
図2、
図4に示すように、芯金10は、弁棒5の挿通方向に対して対称形状に設けられ、芯金10の中央には弁棒挿入穴20が貫通して形成され、この弁棒挿入部20を挟んで両側に弁翼21、21が形成される。弁棒挿入穴20の上部には、枠形状に突出した弁棒取付け部22が設けられ、この弁棒取付け部22の内側には略立方形状のネジこま23が取付けられ、このネジこま23には雌ネジ部24が形成されている。雌ネジ部24には、弁棒5に形成された雄ネジ部25が螺着され、これらを介して弁棒5の回動により弁体2が弁箱3に対して上下動可能に設けられている。
【0028】
芯金10の弁翼21、21よりも両側にはプレート状のガイド部26が流路方向に並列するように設けられ、これらガイド部26、26の間にガイド溝27が形成される。芯金10の表裏側の突出部位には、円弧状の凹状溝部28が形成され、一方、芯金10の下部には、底面側に沿って表裏側に突出する円弧突起部29が形成される。
【0029】
芯金10は、ゴム材料14がライニングされる被ライニング面30を有し、この被ライニング面30は、芯金10の外形面(表裏面)、弁棒5の挿入面、ネジこま23の装着面、ガイド部26の表裏面を有している。
【0030】
これらの被ライニング面30のうち、芯金10の表裏面同士、後述する成形型40の上型41、下型42内に芯金10が支持されるときに、下部に位置するネジこま23の装着面の表裏面同士には、それぞれを貫通する貫通穴50が形成される。貫通穴50は、後述する支持ピン51による支持位置に設けられ、本実施形態では、
図2に示すように、合計9箇所の貫通穴50が設けられている。
【0031】
貫通穴50は、芯金10の各弁翼21側に少なくとも1つ以上であり、支持ピン51に対して最低1つ設けられ、本実施形態では各弁翼21に4つずつ、弁棒取付け部22に1つ形成される。この場合、円柱状の支持ピン51の略中央位置になるように配置されていることが望ましく、各支持ピン51同士が接触することの無い適度の間隔をもって配置されている。さらに、貫通穴50は、各弁翼21に対して略等間隔に配置されているとよい。貫通穴50の径は、任意の大きさに設定することができる。
【0032】
図1において、芯金10に施されるライニング部11は、ゴム弁座面11a、シール部11bを有し、ゴム弁座面11aは、芯金10表裏側の凹状溝部28に埋め込まれるように形成され、シール部11bは、円弧突起部29の下部に厚く形成される。ゴム弁座面11aが、弁箱3内に設けられた弁座部3b、シール部11bが弁箱3の底部側に設けられた止水面3cにそれぞれシールすることで、弁箱3の流路3aが開閉可能に設けられている。
【0033】
本発明の弁体成形方法は、例えば、上述したソフトシール仕切弁1の芯金10に、トランスファー成型によりゴム材料12でライニング部11を成形し、弁体2を設ける場合に用いられる。弁体2の成形時には、
図6に示す弁体成形装置が用いられ、この弁体成形装置は、成形型40と、芯金10と、芯金10支持用の支持ピン51とを有し、支持ピン51は、前述したように貫通穴50の下部に設けられる。
【0034】
図6〜
図9において、弁体成形装置における成形型40は、上型41、下型42、スライド型52を有している。上型41には、上型枠部60と押圧体61、下型42には、下型枠部62とダイプレート部63がそれぞれ備えられ、上型枠部60、下型枠部62は、互いに組合わせ可能に設けられて、これらの組合わせ後には内部にライニング用のキャビティCが形成される。キャビティCは、芯金10よりもやや大きく設けられ、このキャビティC内に芯金10が支持されたときに、芯金10の周囲にライニング部11を形成するための隙間Gが形成される。
【0035】
上型枠部60には、未加硫状態のゴム材料12の投入口64、この投入口64に続けてキャビティCに連通する複数の注入口65が設けられる。押圧体61は、投入口64に挿入可能な押圧部66を有し、この押圧部66が投入口64に挿入可能な状態で、押圧体61が上型枠部60の上部に装着される。押圧体61を下降したときには、押圧部66により投入口64内の未加硫状態のゴム材料12が押圧され、注入口65からキャビティC内に注入される。
【0036】
下型枠部62には、芯金10の貫通穴50に対応する位置に9箇所の挿通穴67が形成され、各挿通穴67に前述した支持ピン51が挿入される。
支持ピン51は、ダイプレート部63上に設けられ、このダイプレート部63と共に下型42の下型枠部62に対して昇降動可能に設けられ、下型枠部62に対して下降したときに、芯金10の貫通穴50が下型枠部62のキャビティCに連通するように設けられている。支持ピン51は、ダイプレート部63に固定されていてもよいが、固定されていない場合には、取り外し可能になり、清掃やメンテナンスが容易となる。
【0037】
支持ピン51は、その上面側に支受面53を有し、この支受面53により芯金10が支持される。このとき、芯金10の貫通穴50を含む周囲を支受面51により支受可能になっている。
【0038】
スライド型52は、上型枠部60と下型枠部62との間の両弁翼側に、弁体2の左右方向にスライドされて取付け可能に設けられる。このスライド型52により、芯金10の凹状溝部28との間にライニング部11が施されたときに凹状ガイド溝68が形成される。凹状ガイド溝68に弁箱3の図示しない凸部が遊嵌されることにより、弁体2が弁箱3に対して昇降動可能に取付け可能になっている。
【0039】
続いて、本発明のソフトシール仕切弁の弁体成形方法を説明する。
図3に示すように、本発明の弁体成形方法は、芯金支持工程、ゴム圧入工程、支持ピン下降工程を有し、弁体成形装置を介して各工程を経ることにより、
図1における芯金10にライニング部11が設けられる。
【0040】
芯金支持工程においては、先ず、
図4、
図5において、芯金10を水平状態にして下型42にセットする。この場合、
図4において、破線で示した弁棒挿入穴20に、一点鎖線で示した長尺状の芯棒70が挿入され、この芯棒70の外周と弁棒挿入穴20との間に、ゴム材料12が圧入可能な隙間Gが設けられる。芯棒70との直交方向には、弁棒取付け部22が貫通するように長尺で断面矩形状のネジこま用型71が装着され、このネジこま用型71の外面と弁棒取付け部22の内側との間においても、ゴム材料12圧入用の隙間Gが設けられる。
【0041】
芯金10の装着時には、この芯金10が弁棒5を中心に概ね対称形状であるが、図示しない位置決め手段で金型にセットするため、上面80、下面81が決められている。このとき、ダイプレート部63が下型枠部62に対して上昇した状態になっており、支持ピン51の支受面53が下型枠部62の表面よりも上方に突出している。これにより、芯金10の下面81が支受面53によって支受され、支持ピン51が貫通穴50の下に配置された状態となる。芯金10は、両弁翼21側及び弁棒取付け部22の貫通穴50を含む周囲が支受面53に支受された状態で、支持ピン51によって支持される。
【0042】
なお、本実施形態において、芯金10の上面80とはこの芯金10を成形型40に取付けたときに上方に位置する面、芯金10の下面81とは下方に位置する面をいう。
【0043】
図6に示すように、下型42に上型41を組み合わせ、上型枠部60と下型枠部62との間にスライド型52を取付ける。これにより、支持ピン51で芯金10を下方から支持した状態で、成形型40内にライニング用のゴム材料12が流れるための隙間Gが設けられる。
【0044】
次いで、ゴム圧入工程において、
図6において、投入口64内に未加硫状態のゴム材料12を投入し、
図7に示すように、ゴム材料12を押圧体61の押圧により押圧部66で注入口65側に押し込み、注入口65からキャビティC内に配置した芯金10の被ライニング面30に未加硫状態のゴム材料12を圧入してその上下の隙間Gに充填させる。この場合、下型枠部62と芯金10との隙間Gにゴム材料12が流れるまで、支持ピン51を
図7の状態に保持するようにする。
【0045】
これにより、芯金10の被ライニング面30である、支持ピン51で支持されている部分以外の弁翼21を含む外形側(表裏面側)、弁棒挿入穴20、支持ピン51で支持されている部分以外の弁棒取付け部22の外面及びネジこま用型71との隙間、ガイド部26及びガイド溝27に対して、ゴム材料12によってライニング部11が成形される。このとき、凹状溝部28、円弧突起部29は、厚肉状にライニングされ、これにより、ソフトシール仕切弁1の組立て後の弁閉時のシール性が確保されるようになっている。
【0046】
続いて、支持ピン下降工程では、隙間Gにゴム材料12が流れ込んだ後、ゴム材料12の加硫中にダイプレート部63を下方に移動させることにより、
図8、
図9に示すように支持ピン51を下降させる。これによって、支持ピン51による支持部位の弁翼21側と弁棒取付け部22側に設けた各貫通穴50を貫通状態にし、これら貫通穴50を介して支持ピン51と弁翼21側の下面の8箇所と、支持ピン51と弁棒取付け部22の下面の1箇所とのそれぞれの隙間Gにゴム材料12を圧入する。このとき、弁棒取付け部22側では、ネジこま用型71底面側の貫通穴50からゴム材料12が圧入され、支持ピン51との間に充填される。これにより、芯金10の上面80、下面81側に略均等な厚さでゴム材料12を充填してライニング部11を成形する。
【0047】
この場合、支持ピン51は、貫通穴50からのゴム材料12を圧入することによっても、このゴム材料12が支受面53を押圧することで下降する。支持ピン51の移動時には、支受面53が下型42の表面と面一になることで、ライニング部11の表面への凹凸の発生を防止できる。
【0048】
なお、上記実施形態では、貫通穴50が、芯金10の各弁翼21側と弁棒取付け部22とにそれぞれ設けられ、これらが支持ピン51により下方から支持されているが、芯金10全体に略均等な厚さでライニング部11を成形可能であれば、貫通穴50や支持ピン51は、少なくとも弁翼21側に設けられていればよい。このため、貫通穴50は1箇所であってもよく、また、貫通穴50の個数をバルブの呼び径等に応じて適宜増加することも可能である。貫通穴50は、支持ピン51の略中央位置に配置されているが、この位置を変えてもよく、さらに、1つの支持ピン51に対して、芯金10の貫通穴50を複数設けるようにしてもよい。貫通穴50の位置に対応して、支持ピン51の個数や外径寸法、配設位置等を変更することも可能である。
【0049】
次に、本発明におけるソフトシール仕切弁の弁体成形方法並びに弁体成形装置の上記実施形態における作用を述べる。
上述したように、本発明のソフトシール仕切弁の弁体成形方法において、弁体成形装置による芯金支持工程、ゴム圧入工程、支持ピン下降工程を経て、芯金10にライニング部11を成形することにより、
図1、
図2、
図5に示すように、肉厚が薄くリブの無い強度的に弱い芯金10の場合であっても、支持ピン51の個数を増やして外径を大きくして芯金10を強固に保持し、その変形を防止しながら上面80、下面81に略均等な厚さのライニング部11を施すことができる。
【0050】
このとき、支持ピン51の個数及び太さは、弁体2の呼び径による芯金10の大きさ等に合わせて適宜配置するようにし、特に、弁翼21(肉厚の薄い部分)に均等にバランスよく配置することが望ましい。
【0051】
未加硫状態のゴム材料12が注入されるときには、芯金10の表面からのゴム材料12の流れに加えて、貫通穴50を通してもゴム材料12が弁翼21側、弁棒取付け部22側の下面側に流れるため、芯金10の表面から芯金10と下型枠部62との隙間のみをゴム材料12が流れる場合と比較して、支持ピン51付近へのゴム材料12の圧入にかかる時間を大幅に短縮できる。
【0052】
これを詳述すると、
図10(a)、
図10(b)において、矢印は、支持ピン51が太い矢印に示す方向に下降したときのゴム材料12の流れを示しており、ゴム材料12は、二点鎖線で示した支受面53と芯金下面81との隙間Gに流れ込むようになっている。その際、芯金10と下型枠部62との隙間Gを通過したゴム材料12は、芯金下面81と支受面53との間を通って破線の矢印の方向に圧入される。これに加えて、ゴム材料12は、実線の矢印に示すように、芯金上面80で貫通穴50に集まるように流れ、この貫通穴50の短い距離を下降した後に、芯金下面81に放射状に広がりながらこの芯金下面81と支受面53との隙間Gに充填される。
【0053】
一方、
図11(a)、
図11(b)においては比較例を示しており、この比較例の芯金には、貫通穴が設けられていない。この場合、図に示すように、支持ピン51が太い矢印に示す方向に下降したときに、ゴム材料12が破線の矢印に示した芯金下面81と支受面53との間のみを通りながら、芯金下面81と支受面53との隙間Gに充填される。
【0054】
上記のことから、
図10の場合には、支持ピン51同士の間隔が狭かったり、支受面53の総面積が広い場合であっても、芯金10と下型枠部62との隙間Gから圧入したゴム材料12が支持ピン51の周囲に到達する際に、貫通穴50から短い距離でゴム材料12を圧入してこれらを同時に加硫させることができ、厚みが一定で均質なライニング部11の成形が可能となる。これにより、ライニング部11を高精度に成形し、成形後の弁体2の機能性を向上して止水性能を高めることが可能になる。芯金下面81側にゴム材料12を手作業で埋め込むなどの補修作業を行う必要もない。
【0055】
一方、
図11の比較例の場合には、支持ピン51を下降してから芯金下面81と支受面53との隙間Gにゴム材料12が流れ込むまでに時間がかかるため、支持ピン51の下降前に圧入したゴム材料12が先に加硫してしまい、芯金下面81付近では、ライニング部11の厚みや性質が均一でなくなる可能性がある。
【0056】
上記に加えて、本発明の弁体成形方法においては、支持ピン51の大径化や個数の増加により、芯金上面80に圧入されるゴム材料12の圧力や芯金10の自重でこの芯金10が下方に移動し、その位置が偏ることを防止している。これによって、芯金10の上下面80、81の隙間Gを均等に保持し、芯金10の全面に均等な厚さのライニング部11を成形可能となる。
【0057】
さらには、支持ピン51は、ゴム材料12の貫通穴50への圧入を利用して下降するため、支受面53が下型枠部62の表面と面一になるまで確実に支持ピン51を下降でき、下面側のライニング部11の段差の発生を防いで滑らかな表面に仕上げることができる。
【0058】
上記のことから、ライニング部11を薄くすることも可能になるため、ゴム材料12の使用量を削減でき、ライニング成形時にはゴム材料12の加硫時間を短縮することが可能になる。
【実施例】
【0059】
次に、本発明のソフトシール仕切弁の弁体成形方法により芯金を支持する場合において、呼び径による支持ピンの外径寸法と個数との違いを、実施品と比較品とを用いて比較した。表1においては、
図10に示した本発明の弁体成形方法による実施品、及び、
図11に示した弁体成形方法により成形する場合の比較品について、バルブの呼び径が異なる場合の支持ピンの外径寸法と個数をそれぞれ示している。
【0060】
【表1】
【0061】
表1の結果より、バルブの呼び径350の比較的小径の場合、実施品は、比較品に対して支持ピン51の外径寸法を大きくしながら総個数を少なくできる。具体的には、φ50の支持ピン51を4箇所、φ30の支持ピン51を1箇所に設けることで芯金下面81の支持面積を広くできるため、ゴム材料12注入時の高圧力に対し、芯金10を薄肉にしてリブ等の補強を設けない場合であっても、その変形を防ぐことができる。
【0062】
バルブ呼び径450の比較的大径の場合には、これら呼び径の違いに応じて支持ピン51の外径寸法や個数を変更し、芯金下面81への支持面積を調節可能になる。すなわち、呼び径の拡大に伴って芯金下面81の面積が増加する場合に、支受面53の面積を増やした状態で支持できる。これによって、上下面80、81の面積の広い芯金(呼び径の大きい芯金)10に対して、ゴム材料12の圧入により高圧力が加わった場合にも、芯金10の一部や全体の変形を防ぎながらその上下面80、81に適切にライニング処理できる。
【0063】
何れの呼び径の場合にも、実施品の場合には、支持ピン51の下降により貫通穴50を介して支持ピン51跡にゴム材料12を充填して均等な厚さのライニング部11を成形でき、しかも、ゴム材料12を均質な状態で加硫して高品質の弁体2を成形可能となる。
【0064】
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明は、前記実施の形態記載に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲に記載されている発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の変更ができるものである。例えば、支持ピンを下降させるためのダイプレートの動作方法にこだわることはなく、ダイプレート以外の手段で支持ピンを下降させることも可能である。さらには、芯金支持工程、ゴム圧入工程、支持ピン下降工程を経るものであれば、トランスファー成型以外の各種の成形手段を用いることもできる。