(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、外郭ボトルの内部に内容物を収容する内容器体を配置し、該外郭ボトルと該内容器体との間に外気が導入されるようにした合成樹脂製のブロー成形多重ボトル(以下、「多重ボトル」ということがある)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
前記外郭ボトルは、円筒状の外口部と、該外口部に連接された肩部と、該肩部に連接された胴部と、該胴部に連接された底部とを備え、外圧に対して原形復帰可能に構成されている。前記内容器体は、前記外郭ボトルの前記外口部の内側に配設された円筒状の内口部と、該内口部に連接されて該外郭ボトルの内側に配設される内容器体本体とを備え、外圧により変形するように構成されている。
【0004】
前記外郭ボトルの前記外口部の外周面には、雄ねじ部が形成されている。該雄ねじ部には、逆止弁付きキャップの内周面に形成された雌ねじ部が螺合される。
【0005】
前記多重ボトルから内容物を吐出する際には、外口部及び内口部が下方となるように傾け、前記外郭ボトルの胴部を押圧すると、該外郭ボトル及び前記内容器体の変形に伴って、該内容器体から内容物が吐出される。このとき、該内容器体は、内容物の減少に伴って、その容積を減少させて変形する(以下、この変形を「減容変形」ということがある)。
【0006】
ところで、前記多重ボトルでは、前記外郭ボトルと前記内容器体との間に外気を導入するために、該外郭ボトルの前記外口部と該内容器体の前記内口部との間に、通気路が形成されている。
【0007】
そのため、内容物を吐出させるために行われた多重ボトルへの押圧が解除されると、前記外郭ボトルは、前記通気路を介して導入される外気の圧力と該外郭ボトルを形成している材料の復元力とによって原形復帰する。一方、前記内容器体は、前記逆止弁付きキャップによってその内部への外気の侵入が防止されるので、該減容変形が維持されたままとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記多重ボトルでは、前記内容器体に内容物を充填した後、前記外口部の雄ねじ部に逆止弁付きキャップ等が取り付けられる。その際、該キャップから前記外口部及び前記内口部の一方を他方よりも大きく引き回すような力が加わり、該外口部に対し該内口部が相対的に回転してしまうことがある。
【0010】
その結果、外口部を備える外郭ボトルと内口部を備える内容器体とが相対的に回転して、内容器体に損傷が起き、亀裂やピンホール等が発生する虞があるという不都合がある。
【0011】
本発明は、かかる不都合を解消して、キャップ等を取り付ける際に外口部を備える外郭ボトルと内口部を備える内容器体との相対的な回転を防止することができるブロー成形多重ボトル及びブロー成形多重ボトルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かかる目的を達成するために、本願発明1のブロー成形多重ボトルは、円筒状の外口部と、該外口部に連接された肩部と、該肩部に連接された胴部と、該胴部に連接された底部とを備えている外郭ボトルと、該外郭ボトルの該外口部の内側に配設された円筒状の内口部と、該内口部に連接されて該外郭ボトルの内側に配設される内容器体本体とを備えている内容器体と、該外口部と該内口部との間に形成されて、該外郭ボトルと該内容器体との間に外気を導入する通気路とを備えているブロー成形多重ボトルにおいて、該外郭ボトルの該外口部の該肩部に隣接する部分である第1部分の内表面と、該内容器体の該第1部分に対応する部分である第2部分の外表面とのいずれか一方に形成された凹部と、該凹部に対向する他方の表面に形成されて、該凹部に圧入されている圧入部とを備え
、該内容器体は、該第2部分から径方向外側に鍔状に張り出している鍔状部と、該通気路と該外郭ボトルと該内容器体との間とを連通する連通部とを備え、該連通部は、該内容器体の中心軸線方向に、該鍔状部の外周面を切り欠いて形成され、該凹部は、該内容器体の該鍔状部の外周面の該連通部の形成位置以外の部分、又は、該外郭ボトルの前記第1部分の該鍔状部の外周面の前記連通部の形成位置以外の部分に対向する部分に形成されていることを特徴とする。
【0013】
また、かかる目的を達成するために、本願発明2のブロー成形多重ボトルは、円筒状の外口部と、該外口部に連接された肩部と、該肩部に連接された胴部と、該胴部に連接された底部とを備えている外郭ボトルと、該外郭ボトルの該外口部の内側に配設された円筒状の内口部と、該内口部に連接されて該外郭ボトルの内側に配設される内容器体本体とを備えている内容器体と、該外口部と該内口部との間に形成されて、該外郭ボトルと該内容器体との間に外気を導入する通気路とを備えているブロー成形多重ボトルにおいて、該外郭ボトルの該外口部の該肩部に隣接する部分である第1部分の内表面と、該内容器体の該第1部分に対応する部分である第2部分の外表面とのいずれか一方に形成された凸部と、該凸部に対向する他方の表面に形成されて、該凸部を包接している包接部とを備え
、該内容器体は、該第2部分から径方向外側に鍔状に張り出している鍔状部と、該通気路と該外郭ボトルと該内容器体との間とを連通する連通部とを備え、該連通部は、該内容器体の中心軸線方向に、該鍔状部の外周面を切り欠いて形成され、該凸部は、該内容器体の該鍔状部の外周面の該連通部の形成位置以外の部分、又は、該外郭ボトルの前記第1部分の該鍔状部の外周面の前記連通部の形成位置以外の部分に対向する部分に形成されていることを特徴とする。
【0014】
本発明のブロー成形多重ボトルでは、前記外郭ボトルの外口部の肩部に隣接する部分(外口部の下方部)を第1部分としている。この第1部分は、外郭ボトルの胴部、底部等と比べ、肉厚の部分である。そして、その第1部分又は該第1部分に対向する第2部分の表面のいずれか一方に、他方が圧入されている凹部又は他方によって包接されている凸部(すなわち、係止構造)を形成している。
【0015】
すなわち、前記ブロー成形多重ボトルでは、前記外郭ボトルと前記内容器体との係止構造を、形成の容易な肉厚の部分に設けている。そして、その肉厚の部分には、好ましい係止構造(例えば、径方向に大きく食い込んだ係止構造等)を容易に形成することができる。そのため、前記外郭ボトルと前記内容器体とは十分に係止された状態となり、相対的な回転が防止される。
【0016】
これにより、内容器体に内容物を充填した後、前記外口部のねじ部に逆止弁付きキャップ等を取り付ける際に、該キャップから前記外口部及び前記内口部の一方を他方よりも大きく引き回すような力が加わっても、外口部と内口部との相対的な回転を十分に防止することができる。従って、本発明のブロー成形多重ボトルによれば、外口部を備える外郭ボトルと内口部を備える内容器体とが相対的に回転してしまう不都合が生じることがない。
また、前記鍔状部は前記内容器体の他の部分に比べて肉厚である。そのため、前記凹部又は前記凸部を該鍔状部又は鍔状部に対向する部分に形成する(すなわち、該鍔状部又は鍔状部に対向する部分に係止構造を形成する)ようにすると、肉厚の該鍔状部は凹部に圧入される圧入部又は前記凸部を包接する包接部を形成しやすいので、さらに容易に係止構造を設けることができる。
【0017】
本発明のブロー成形多重ボトルにおいて、前記凹部又は前記凸部は、前記第1部分の内表面と前記第2部分の外表面とのいずれか一方に、周方向に間隔を存して、複数形成されていることが好ましい。
【0018】
前記凹部又は前記凸部を複数形成すると、前記外郭ボトルと前記内容器体とを相互に係止する部分が増える。従って、前記凹部又は前記凸部を複数備えている多重ボトルは、前記外郭ボトルと前記内容器体との係止状態をより強固なものとすることができる。
【0019】
なお、前記凹部又は前記凸部は第1部分(すなわち、外郭ボトル側)に形成することが特に好ましい。ブロー成形時には、第2部分(すなわち、内容器体)が第1部分に向かって拡張するように変形するので、第1部分に前記凹部又は前記凸部を形成することにより、容易に前記凹部に圧入部を圧入させる又は前記凸部を包接して包接部を形成することができる。
【0022】
本発明のブロー成形多重ボトルにおいて、前記凹部は、前記内口部及び前記外口部の軸線方向に延在する溝部、又は、前記凸部は、前記内口部及び前記外口部の軸線方向に延在する条部であることが好ましい。
【0023】
前記凹部又は前記凸部を前記内口部及び前記外口部の軸線方向(すなわち、相対的な回転の方向と交わる方向)に延在する形状とすると、前記圧入部の該凹部の縁部に当接する領域、又は、前記包接部の該凸部の縁部に当接する領域が大きくなる。その結果、前記外口部と前記内口部とが相対的に回転するような力を、該圧入部で効率的に受け止めることができるようになるので、効果的に相対的な回転を防止することができる。
【0024】
本願発明1のブロー成形多重ボトルは、該外郭ボトルの該外口部と同一形状の外プリフォーム口部と該外プリフォーム口部に連接する外有底筒状体とを備える外プリフォームの内周側に、該内容器体の該内口部と同一形状の内プリフォーム口部と該内プリフォーム口部に連接する内有底筒状体とを備える内プリフォームを配設し、ブロー成形により該内プリフォームから該内容器体を形成する際に、前記第1部分の内表面及び前記第2部分の外表面のいずれか一方に形成されている前記凹部に、該凹部に対向する他方の表面を圧入させて圧入部を形成することにより製造することができる。
【0025】
また、本願発明2のブロー成形多重ボトルは、該外郭ボトルの該外口部と同一形状の外プリフォーム口部と該外プリフォーム口部に連接する外有底筒状体とを備える外プリフォームの内周側に、該内容器体の該内口部と同一形状の内プリフォーム口部と該内プリフォーム口部に連接する内有底筒状体とを備える内プリフォームを配設し、ブロー成形により該内プリフォームから該内容器体を形成する際に、前記第1部分の内表面及び前記第2部分の外表面のいずれか一方に形成されている前記凸部を、該凸部に対向する他方の表面で包接して包接部を形成することにより製造することができる。
【0026】
本発明の製造方法においては、ブロー成形の際には内プリフォームがブロー圧によりブロー変形して内プリフォームの内口部の下方部の第2部分が外プリフォームの第1部分に圧接してブロー成形が進行するという工程をとるため、前記凹部に圧入された圧入部又は前記凸部を包接する包接部を容易に形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0029】
図1及び
図2に示すように、本実施形態の合成樹脂製のブロー成形多重ボトル101(以下、「多重ボトル101」という)は、外圧に対して原形復帰可能な外郭ボトル102と、外郭ボトル102の内側に収容され外圧により変形する内容器体103とからなる。
【0030】
外郭ボトル102は、円筒状の外口部104と、外口部104に連接する肩部105と、肩部105に連接する胴部106と、胴部106に連接する底部107とを備えている。底部107は、内周側に外郭ボトル102の内側に膨出して多重ボトル101に自立性を付与する凹部108を備えており、底部107と凹部108との間が接地部109となっている。
【0031】
外口部104は、外周面に雄ねじ部110と、サポートリング111とを備えている。雄ねじ部110には、図示しない逆止弁付きキャップの内周面に形成されている雌ねじ部が螺合する。これにより、外口部104に逆止弁付きキャップが取り付けられる。
【0032】
肩部105の外口部104に接する部分は、四角錐状部112となっている。また、肩部105は、四角錐状部112の下方に四角錐状部112から胴部106に向かって次第に拡径するとともに四角錐の角が滑らかになり円筒状の胴部106につながる胴部上部113を備えている。
【0033】
胴部106は、段差部106aを介して肩部105に連接する一方、段差部106bを介して底部107に連接している。段差部106aは、肩部105から胴部106に向かって次第に縮径しており、段差部106bは、底部107から胴部106に向かって次第に縮径している。また、胴部106は、肩部105に連接する段差部106aの下端部から中央部106cに向かって次第に縮径し、中央部106cから底部107に連接する段差部106bの上端部に向かって次第に拡径する鼓状となっている。
【0034】
底部107の接地部109に連接する部分は、四角錐状部115となっている。また、底部107は、四角錐状部115の上方に四角錐状部115から胴部106に向かって次第に拡径するとともに四角錐の角が滑らかになり円筒状の胴部106につながる胴部下部116を備えている。
【0035】
四角錐状部112,115はそれぞれ軸に直交する断面が四角形状であってその頂点にはRが付されており、該頂点に稜線112a,115aを備えている。稜線115aは稜線112aの延長上に連なっている。
【0036】
一方、内容器体103は、外口部104の内周側に配設される円筒状の内口部117と、内口部117に連接し、外郭ボトル102の肩部105、胴部106、底部107、凹部108及び接地部109の内面形状に沿う形状の内容器体本体118とを備えている。
【0037】
内口部117は、上部に外口部104の上端よりも上方に延出された延出部119と、延出部119から径方向外方に張り出す鍔状係止部120とを備えており、鍔状係止部120により外口部104の上端縁に係止されている。内口部117の鍔状係止部120よりも下方の部分の外径は、外口部104の内径よりも小さくなっており、内口部117と外口部104との間には、間隙121が形成されている。
【0038】
鍔状係止部120は、下面に横溝122を備えている。横溝122は、鍔状係止部120の外周縁で外部に開放されている。この結果、間隙121及び横溝122により、外郭ボトル102と内容器体103との間に外気を導入する通気路123が形成されている。
【0039】
次に、本実施形態の多重ボトル101の使用状態について説明する。
【0040】
本実施形態の多重ボトル101は、内容器体103に図示しない内容物が収容されており、図示しない逆止弁付きキャップが取り付けられて使用される。該内容物を多重ボトル101から注出するときには、外口部104及び内口部117を下方に向けて傾ける。そして、外郭ボトル102の胴部106を把持して押圧すると、内容器体本体118が減容変形することにより、前記内容物が注出される。
【0041】
多重ボトル101では、胴部106は、軸に直交する断面が円形であるので軸に対して任意の方向から押圧することができる。また、胴部106は、鼓状であり、軸方向に沿って形成された複数のリブ114を備えているので、その中央部106cを容易に把持して内容器体本体118を減容変形させることができる。
【0042】
外郭ボトル102の胴部106の押圧を解除すると、外郭ボトル102と内容器体本体118との間に通気路123から外気が導入される。このとき、該外郭ボトル102は、その外気の気圧と外郭ボトル102を形成している材料の復元力とにより原形に復帰する。一方、内容器体本体118は、図示しない逆止弁付きキャップによってその内部への外気の侵入が防止されるので、減容変形したままの状態が維持される。
【0043】
ところで、前記多重ボトル101では、外口部104に逆止弁付きキャップ等の取り付けを行う際等に、該キャップから内口部117に対し外口部104より大きく引き回すような力が加わり、外口部104を備える外郭ボトル102と内口部117を備える内容器体103とが相対的に回転しまうおそれがある。そして、この回転により、該内容器体103に損傷や破損、或いはピンホール等が発生する虞があるという不都合がある。
【0044】
そこで、本実施形態の多重ボトル101では、該不都合を解消するために、外口部104と内口部117との相対的な回転を防止する構造を備えている。該構造について、
図2及び
図3を参照して説明する。
【0045】
図2に示すように、外郭ボトル102は、サポートリング111の下方に、外口部104の肩部105に隣接する部分に、第1部分104aを備えている。一方、内容器体103の内容器体本体118は、該第1部分104aに対向する第2部分118aに、径方向外側に鍔状に張り出している鍔状部118bを備えている。
【0046】
第1部分104aは、サポートリング111の下方側で肩部105に隣接する部分であり、ブロー成形時において、金型321に固定されておらず、変形が生じる部分である(
図6参照)。また、第1部分104aは、外郭ボトル102の胴部106、底部107よりも肉厚の部分である。
【0047】
第1部分104aの内表面には、
図3に示すように、周方向に所定の間隔を存して、複数の凹部104bが形成されている。凹部104bは、外口部104及び内口部117の軸線方向に延在する溝部として形成されている。
【0048】
該凹部104bのうちの少なくとも1つ(本実施形態では4つ)には、鍔状部118bの外表面を圧入することによって、圧入部118cが形成されている。これにより、外郭ボトル102と内容器体103とは相互に係止され、相対的な回転が防止された状態となっている。
【0049】
ここで、前記外郭ボトル102の第1部分104aは、プリフォームから多重ボトル101を形成する際に、胴部106、底部107等に比べ変形量が少なく、肉厚な部分である。
【0050】
そのため、その部分には、凹部104bとその凹部104bに圧入されている圧入部118cとで形成された係止構造を、他の部分よりも容易に形成することができる(例えば、凹部104bの深さを十分なものに形成しやすい。)。その結果、外郭ボトル102と内容器体103との係止状態は十分に維持される。
【0051】
そのため、内容器体103に内容物を充填した後、前記外口部104の雄ねじ部110に図示しない逆止弁付きキャップを取り付ける際に、該キャップから前記外口部104及び前記内口部117の一方を他方よりも大きく引き回すような力が加わっても、外郭ボトル102と内容器体103との相対的な回転を十分に防止することができる。
【0052】
これにより、多重ボトル101では、外口部104を備える外郭ボトル102と内口部117を備える内容器体103とが相対的に回転してしまう不都合が生じることがない。
【0053】
鍔状部118bの外周面には、圧入部118cの他に、複数の切欠部である連通部118dが形成されている。そのため、鍔状部118bが内口部117の内周面に接した状態であっても、外郭ボトル102と内容器体103との間に外気を導入する通気路123が閉塞されることがない。
【0054】
尚、本実施形態では、第1部分104aの内表面に形成されている凹部104bに、第2部分118aの一部である鍔状部118bの外表面を圧入して、圧入部118cを形成している。
【0055】
また、本実施形態では、凹部104bを外口部104及び内口部117の軸線方向に延在する溝部として形成して、圧入部118cが凹部104bの縁部に当接する領域を大きくしている。これにより、外口部104と内口部117とが相対的に回転する様な力を、圧入部118cと凹部104bとで効率的に受け止めて、該回転を効果的に防止している。
【0056】
しかし、凹部104bに圧入部118cが十分に圧入させることができる場合等には、凹部104bは必ずしも、外口部104及び内口部117の軸線方向に延在する溝とする必要はない。例えば、半球状の窪みとして形成してもよいし、周方向に延びる溝として形成してもよい。
【0057】
また、
図3では圧入部118c周辺部分のみではなく、全周に亘って、第1部分104aと第2部分118aとが密着した状態となっているが、圧入部118c周辺部分のみが密着している場合等、若干の空隙があっても圧入部118cが形成されている限り回転を防止する効果は発揮される。
【0058】
次に、
図4〜
図6を参照して、多重ボトル101の製造方法について説明する。
【0059】
図4に示すように、本実施形態のブロー成形多重ボトル用プリフォーム(以下、単に「プリフォーム」という)は、外プリフォーム201と、外プリフォーム201の内側に配設される内プリフォーム202とからなる。
【0060】
外プリフォーム201は、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系合成樹脂を材料として射出成形により形成されている。外プリフォーム201は、外プリフォーム口部203と、外プリフォーム口部203に連接される外有底筒状体204とを備えている。外プリフォーム口部203の外周面には、ねじ部205及びサポートリング206が形成されている。
【0061】
内プリフォーム202は、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系合成樹脂を材料として射出成形により形成されている。内プリフォーム202は、外プリフォーム口部203の内側に配設される円筒状の内プリフォーム口部207と、内プリフォーム口部207に連接された内有底筒状体208とを備えている。
【0062】
内有底筒状体208は、内プリフォーム口部207より外径が小さく形成されている。内プリフォーム口部207と内有底筒状体208との境界には、鍔状部209が形成されている。鍔状部209は、内プリフォーム202の外表面から径方向外方へ向かって形成されている。
【0063】
後述するように、外プリフォーム201は、ブロー成形されることにより、外プリフォーム口部203以外の部分が延伸されて外郭ボトル102を形成する。このとき、外プリフォーム201は、サポートリング206がブロー成形装置により支持されてブロー成形される。
【0064】
外プリフォーム201は、サポートリング206の下方に径方向に変形し始める変形開始部分210を含む延伸開始領域を備えており、内プリフォーム202の鍔状部209は、変形開始部分210に臨む位置に備えられている。変形開始部分210は、多重ボトル101を形成したときに、外郭ボトル102の第1部分104aとなる。
【0065】
内プリフォーム202は、内プリフォーム口部207の上端に、径方向外側に鍔状に張り出す鍔状係止部211を備えている。鍔状係止部211の下面には、横溝212が形成されている。横溝212は鍔状係止部211に開口している。
【0066】
また、内プリフォーム口部207の鍔状係止部211よりも下方の部分の外径は、外プリフォーム口部203の内径よりも小さくなっており、内プリフォーム口部207と外プリフォーム口部203との間には、間隙213が形成されている。
【0067】
内プリフォーム口部207の鍔状部209の径は、外プリフォーム201のサポートリング206の下方部分の内径とほぼ一致している。鍔状部209の外周面には、複数の連通部209aが形成されている。
【0068】
内プリフォーム202は、外プリフォーム201の内部に配設されたときに、鍔状係止部211の下面が外プリフォーム口部203の上端面に当接して係止される。この結果、内プリフォーム口部207が外プリフォーム口部203の内側に配設されたときに、外プリフォーム口部203と内プリフォーム口部207との間に、横溝212と間隙213と連通部209aとで通気路214が形成される。
【0069】
図5に示すように、外プリフォーム201は、内プリフォーム202の鍔状部209に対応する位置に、周方向に所定の間隔を存して、複数の凹部210aを備えている。
【0070】
次に、
図6を参照して、プリフォーム201を用いてブロー成形により多重ボトル101を製造する方法について説明する。
【0071】
前記ブロー成形に用いるブロー成形装置は周知のものであり、
図6において要部を示すように、金型321と、ブローノズル322と、ストレッチロッド323とを備えている。
【0072】
金型321は、外郭ボトル102の外口部104から下の胴部106の外形に沿う形状の成形部327と、外プリフォーム201の外プリフォーム口部203のサポートリング206の上方を露出させて支持する支持開口部328とを備えている。金型321は図示しない割型構造とされており、左右側と底部側とで分割することによって成形後の多重ボトル101が脱型できるようになっている。
【0073】
ブローノズル322は、図示しない昇降手段により昇降され、Oリング330を介して内プリフォーム202の鍔状係止部211の上端面に気密に当接する。ブローノズル322にはストレッチロッド323が挿通され、ストレッチロッド323の外周面とブローノズル322の内周面との間には、図示しない高圧気体供給手段に接続された気体通路331が形成されている。
【0074】
ストレッチロッド323は、図示しない進退駆動手段によってブロー成形時に前進される。尚、
図6Aにおいては、ストレッチロッド323がブローノズル322の先端から突出しているが、ストレッチロッド323は未使用時には後退されてブローノズル322の内方(図中上方)に収納されている。
【0075】
上述の構成のブロー成形装置によって、多重ボトル101を製造するときには、まず、
図6Aに示すように、内プリフォーム202が内側に配設された外プリフォーム201を金型321にセットした後、内プリフォーム202の内プリフォーム口部207にブローノズル322を接続する。尚、外プリフォーム201及び内プリフォーム202は、金型321にセットされるに先立ってブロー成形可能な温度に加熱される。
【0076】
次いで、ブローノズル322の気体通路331から内プリフォーム303内に加圧空気を導入し、同時にストレッチロッド323を下方に伸長させる。これにより、内プリフォーム202が膨張して未膨張状態の外プリフォーム201の内面に密着する。
【0077】
その後、更に内プリフォーム202内に加圧空気を導入しつつ、ストレッチロッド323を下方に伸長させると、膨張した内プリフォーム202の内有底筒状体208により外プリフォーム201の外有底筒状体204が広げられる。このとき、金型321の支持開口部328の形状に沿って径方向に変形し始めたこの部分が、変形開始部分210となる。
【0078】
そして、
図6Bに示すように、外プリフォーム201の外有底筒状体204が、金型321の成形部327により外郭ボトル102の外口部104から下の胴部106の形状に成形され、外郭ボトル102が形成される。また、内プリフォーム202の内有底筒状体208は、外郭ボトル102の胴部106の内面形状に沿う形状に成形され、内口部117と内容器体本体118とを備える内容器体103が形成される。この結果、
図1に示す多重ボトル101が得られる。
【0079】
このように、本実施形態のブロー性多重ボトルの製造方法では、ブロー成形により内プリフォーム202の内有底筒状体208から、多重ボトル101の内容器体103が形成される。
【0080】
このとき、ブロー成形前の状態を表す
図4B及びブロー成形後の状態を表す
図3に示すように、内容器体103の第2部分118aは、内プリフォーム202の鍔状部209が、変形開始部分210(すなわち、ブロー成形後において多重ボトル101の外郭ボトル102の外口部104の第1部分104aとなる部分)に向かって、膨らむように変形して形成される。
【0081】
ここで、変形開始部分210の内表面には、周方向に相互に間隔を存して、複数の凹部210a(すなわち、多重ボトル101の外郭ボトル102の外口部104の凹部104bとなる凹部)が形成されている。
【0082】
そのため、ブロー成形後には、その凹部104bに、内容器体103の外表面の一部が、圧入部118cとして圧入された状態となる。これにより、本実施形態のブロー成形多重ボトルの製造方法で製造された多重ボトル101は、外郭ボトル102と内容器体103とが相互に係止された状態となる。
【0083】
従って、本実施形態のブロー成形多重ボトルの製造方法によれば、外郭ボトル102と内容器体103とが係止した状態であり、外郭ボトル102と内容器体103との相対的な回転が防止されている多重ボトル101を得ることができる。
【0084】
ところで、本実施形態の多重ボトル101では、外郭ボトル102と内容器体103との間に外気を導入する通気路123が形成されている。この通気路123は、ブロー成形により多重ボトル101となるプリフォーム201の通気路214に対応するものである。
【0085】
該通気路214は、鍔状係止部211の下面に形成された横溝212と、内プリフォーム口部207と外プリフォーム口部203との間に形成された間隙213と、鍔状部209の外周面に形成された連通部209aとで形成されている。
【0086】
そのため、外郭ボトル102を形成する外プリフォーム201に対する内容器体103を形成する内プリフォーム202の配設位置によっては、凹部210aと連通部209aとが対向した状態になるおそれがある。
【0087】
このとき、仮に、外プリフォーム201の内表面に形成された凹部210aが1つだけであった場合には、製造された多重ボトル101は、凹部210aに対応する凹部104bに内容器体103の内口部117の外表面が到達せず、凹部104bに内口部117の外表面が圧入されず、外郭ボトル102と内容器体103とを係止状態にできなくなってしまうおそれがある。
【0088】
そこで、本実施形態のプリフォーム201では、外プリフォーム201の内表面に、凹部210aを複数形成している。また、その複数の凹部210aは、外プリフォーム201の内周側に内プリフォーム202を配設したときに、通気路214(具体的には、連通部209a)が形成されていない部分に少なくとも1つの凹部210aが対応するように、周方向に相互に間隔を存して形成されている。
【0089】
これにより、本実施形態のプリフォーム201は、外プリフォーム201に対してどのような位相で内プリフォーム202を配設したとしても、形成された多重ボトル101は、外郭ボトル102と内容器体103とを係止状態とすることができるようになっている。
【0090】
本実施形態では、そのために、凹部210aの数と通気路214の数とを異ならせているが、凹部210aの数と通気路214の数とを同じとして、一方の間隔を等間隔とし、他方の間隔を不規則なものしてもよい。
【0091】
尚、本実施形態の本実施形態のブロー成形多重ボトルの製造方法では、外プリフォーム201から外郭ボトル102を形成すると同時に、内プリフォーム202から内容器体103を形成している。しかし、予め形成されている外郭ボトル102の内周側に内プリフォーム202を配設した後、内プリフォーム202から内容器体103を形成するようにしてもよい。
【0092】
以上、本発明について、外プリフォーム201の第1部分104aとなる部分に形成されている凹部210aに、内プリフォーム202の鍔状部118bとなる部分を圧入させて、係止構造を構成した実施形態について説明した。
【0093】
しかし、本発明はそのような実施形態に限定されるものではなく、第1部分104aとなる部分に凸部を形成しておき、該凸部を第2部分118aの鍔状部118bとなる部分で包接して包接部を形成して、係止構造を構成するようにしてもよい。
【0094】
尚、その場合には、凹部210aを前記内口部117及び前記外口部104の軸線方向に延在する溝部としたように、凸部も前記内口部117及び前記外口部104の軸線方向に延在する条部とするとよい。
【0095】
また、外プリフォーム201の第1部分104aとなる部分ではなく、内プリフォーム202の鍔状部118bとなる部分に凹部を形成し、該凹部に外プリフォーム201の第1部分104aとなる部分を圧入させて圧入部を形成して、係止構造を構成してもよい。
【0096】
また、外プリフォーム201の第1部分104aとなる部分ではなく、内プリフォーム202の鍔状部118bとなる部分に凸部を形成し、該凸部を外プリフォーム201の第1部分104aとなる部分で包接して包接部を形成して、係止構造を構成してもよい。
【0097】
尚、本発明の圧入部を備えた多重ボトル或いは包接部を備えた多重ボトルは、外殻ボトルを形成後、該ボトル内周面に内容器体を形成するための内プリフォームを配設し、内プリフォームをブロー成形する方法で製造することもできる。