(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
A.実施形態:
A−1.静電チャック10の構成:
図1は、実施形態における静電チャック10の外観構成を概略的に示す斜視図であり、
図2は、実施形態における静電チャック10のXZ断面構成を概略的に示す説明図であり、
図3は、実施形態における静電チャック10のXY平面構成を概略的に示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向といい、Z軸負方向を下方向というものとするが、静電チャック10は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。
図2には、
図3のII−IIの位置における静電チャック10のXZ断面構成が示されており、
図3には、静電チャック10を上方から見たときのXY平面構成が示されている。
【0017】
静電チャック10は、対象物(例えばウェハW)を静電引力により吸着して保持する装置であり、例えば半導体製造装置の真空チャンバー内でウェハWを固定するために使用される。静電チャック10は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向(Z軸方向))に並べて配置されたセラミックス板100およびベース部材200を備える。セラミックス板100とベース部材200とは、セラミックス板100の下面S2(
図2参照)とベース部材200の上面S3とが上記配列方向に対向するように配置される。
【0018】
セラミックス板100は、上述した配列方向(Z軸方向)に略直交する略円形平面状の上面(以下、「吸着面」という)S1を有する板状部材であり、セラミックス(例えば、アルミナや窒化アルミニウム等)により形成されている。セラミックス板100の直径は例えば50mm〜500mm程度(通常は200mm〜350mm程度)であり、セラミックス板100の厚さは例えば1mm〜10mm程度である。セラミックス板100の吸着面S1は、特許請求の範囲における第1の表面に相当する。また、本明細書では、Z軸に直交する方向(すなわち、吸着面S1に平行な方向)を「面方向」という。また、
図3に示すように、面方向の内、吸着面S1の中心点P1を中心とする円周方向を「円周方向CD」といい、面方向の内、円周方向CDに直交する方向を「径方向RD」という。
【0019】
図2に示すように、セラミックス板100の内部には、導電性材料(例えば、タングステンやモリブデン等)により形成されたチャック電極400が設けられている。Z軸方向視でのチャック電極400の形状は、例えば略円形である。チャック電極400に電源(図示せず)から電圧が印加されると、静電引力が発生し、この静電引力によってウェハWがセラミックス板100の吸着面S1に吸着固定される。
【0020】
また、
図2に示すように、セラミックス板100の内部には、導電性材料(例えば、タングステンやモリブデン等)により形成された抵抗発熱体で構成された複数のヒータ電極500が設けられている。ヒータ電極500に電源(図示せず)から電圧が印加されると、ヒータ電極500が発熱することによってセラミックス板100が温められ、セラミックス板100の吸着面S1に保持されたウェハWが温められる。これにより、ウェハWの温度制御が実現される。ヒータ電極500の構成およびヒータ電極500への給電のための構成については、後に詳述する。
【0021】
ベース部材200は、例えばセラミックス板100と同径の、または、セラミックス板100より径が大きい円形平面の板状部材であり、例えば金属(アルミニウムやアルミニウム合金等)により形成されている。ベース部材200の直径は例えば220mm〜550mm程度(通常は220mm〜350mm)であり、ベース部材200の厚さは例えば20mm〜40mm程度である。
【0022】
ベース部材200の内部には冷媒流路210が形成されている。冷媒流路210に冷媒(例えば、フッ素系不活性液体や水等)が流されると、ベース部材200が冷却され、後述する接着層300を介したベース部材200とセラミックス板100との間の伝熱によりセラミックス板100が冷却され、セラミックス板100の吸着面S1に保持されたウェハWが冷却される。これにより、ウェハWの温度制御が実現される。
【0023】
セラミックス板100とベース部材200とは、セラミックス板100の下面S2とベース部材200の上面S3との間に配置された接着層300によって互いに接合されている。接着層300は、例えばシリコーン系樹脂やアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等の接着材により構成されている。接着層300の厚さは、例えば0.1mm〜1mm程度である。
【0024】
A−2.ヒータ電極500等の詳細構成:
次に、ヒータ電極500の構成およびヒータ電極500への給電のための構成について詳述する。
図3に示すように、本実施形態では、セラミックス板100に複数の仮想的な領域であるセグメントSEが設定されている。より詳細には、Z軸方向視で、セラミックス板100が、吸着面S1の中心点P1を中心とする同心円状の複数の第1の境界線BL1によって複数の仮想的な環状領域(ただし、中心点P1を含む領域のみは円状領域)に分割され、さらに各環状領域が、径方向RDに延びる複数の第2の境界線BL2によって円周方向CDに並ぶ複数の仮想的な領域であるセグメントSEに分割されている。このように、本実施形態では、セラミックス板100の一部(各環状領域)が、吸着面S1の中心点P1を中心とする円周方向CDに並ぶ複数のセグメントSEに分割されている。
【0025】
セラミックス板100に設定された複数のセグメントSEのそれぞれには、1つのヒータ電極500が配置されている(
図4参照)。各ヒータ電極500の構成については、後述する。
【0026】
図2に示すように、静電チャック10は、各ヒータ電極500への給電のための構成を備えている。具体的には、静電チャック10には、ベース部材200の下面S4からセラミックス板100の内部に至る一対の端子用孔11,12が形成されている。各端子用孔11,12は、ベース部材200を上下方向に貫通する貫通孔220と、接着層300を上下方向に貫通する貫通孔320と、セラミックス板100の下面S2側に形成された凹部120とが、互いに連通することにより構成された一体の孔である。
【0027】
一対の端子用孔11,12の一方である第1の端子用孔11には、柱状の第1の給電端子21が収容されている。また、第1の端子用孔11を構成するセラミックス板100の凹部120の底面には、第1の電極パッド31が設けられている。第1の給電端子21は、例えばろう付け等により第1の電極パッド31に接合されている。また、第1の電極パッド31は、第1の給電側ビア41を介して、ドライバ電極50における第1の導電領域51に導通している。ドライバ電極50の第1の導電領域51は、面方向に平行な所定の領域を有するパターンである。なお、第1の給電端子21、第1の電極パッド31、第1の給電側ビア41、および、第1の導電領域51は、すべて、導電性材料(例えば、タングステンやモリブデン等)により形成されている。
【0028】
同様に、一対の端子用孔11,12の他方である第2の端子用孔12には、柱状の第2の給電端子22が収容されている。また、第2の端子用孔12を構成するセラミックス板100の凹部120の底面には、第2の電極パッド32が設けられている。第2の給電端子22は、例えばろう付け等により第2の電極パッド32に接合されている。また、第2の電極パッド32は、第2の給電側ビア42を介して、ドライバ電極50における第2の導電領域52に導通している。ドライバ電極50の第2の導電領域52は、面方向に平行な所定の領域を有するパターンである。なお、第2の給電端子22、第2の電極パッド32、第2の給電側ビア42、および、第2の導電領域52は、すべて、導電性材料(例えば、タングステンやモリブデン等)により形成されている。
【0029】
各セグメントSEに配置された各ヒータ電極500は、上述したドライバ電極50における一対の導電領域(第1の導電領域51および第2の導電領域52)に対して、並列に接続されている。具体的には、各ヒータ電極500の一端(後述の第1のヒータパッド部501)は、導電性材料(例えば、タングステンやモリブデン等)により形成された第1のヒータ側ビア61を介して、第1の導電領域51に導通しており、各ヒータ電極500の他端(後述の第2のヒータパッド部502)は、導電性材料により形成された第2のヒータ側ビア62を介して、第2の導電領域52に導通している。
【0030】
一対の給電端子(第1の給電端子21および第2の給電端子22)は、電源(図示せず)に接続されている。電源からの電圧は、一対の給電端子(第1の給電端子21および第2の給電端子22)、一対の電極パッド(第1の電極パッド31および第2の電極パッド32)、および、一対の給電側ビア(第1の給電側ビア41および第2の給電側ビア42)を介してドライバ電極50の一対の導電領域(第1の導電領域51および第2の導電領域52)に供給され、さらに、各ヒータ電極500について設けられた一対のヒータ側ビア(第1のヒータ側ビア61および第2のヒータ側ビア62)を介してヒータ電極500に印加される。これにより、各ヒータ電極500が発熱する。
【0031】
なお、上述した各ヒータ電極500への給電のための構成において、第1のヒータ側ビア61は、各ヒータ電極500について設けられ、ヒータ電極500の一端(後述の第1のヒータパッド部501)と、一対の給電端子(第1の給電端子21および第2の給電端子22)の一方である第1の給電端子21とを、(ドライバ電極50の第1の導電領域51、第1の給電側ビア41、第1の電極パッド31を介して)電気的に接続するものであり、特許請求の範囲における第1のビアに相当する。また、第2のヒータ側ビア62は、各ヒータ電極500について設けられ、ヒータ電極500の他端(後述の第2のヒータパッド部502)と、一対の給電端子(第1の給電端子21および第2の給電端子22)の他方である第2の給電端子22とを、(ドライバ電極50の第2の導電領域52、第2の給電側ビア42、第2の電極パッド32を介して)電気的に接続するものであり、特許請求の範囲における第2のビアに相当する。
【0032】
次に、各ヒータ電極500の構成について詳細に説明する。
図4は、1つのセグメントSE(
図3参照)に配置された1つのヒータ電極500のXY断面構成を示す説明図である。本実施形態では、各セグメントSEに同様の構成のヒータ電極500が配置されているため、1つのヒータ電極500の構成について代表して説明する。なお、以下に説明するヒータ電極500は、特許請求の範囲における特定ヒータ電極に相当する。
【0033】
図4に示すように、ヒータ電極500は、ヒータ電極500の両端を構成する一対のヒータパッド部501,502と、一対のヒータパッド部501,502の間を結ぶ線状のヒータ線部504とを備える。
【0034】
一対のヒータパッド部501,502の内の一方である第1のヒータパッド部501は、Z軸方向視で第1のヒータ側ビア61と重なる位置に配置され、第1のヒータ側ビア61に接続されている。第1のヒータパッド部501のZ軸方向視での断面積(すなわち、面方向の断面が円形である場合には、半径×半径×π)は、第1のヒータ側ビア61のZ軸方向視での断面積(すなわち、面方向の断面が円形である場合には、半径×半径×π)より大きい。同様に、一対のヒータパッド部501,502の内の他方である第2のヒータパッド部502は、Z軸方向視で第2のヒータ側ビア62と重なる位置に配置され、第2のヒータ側ビア62に接続されている。第2のヒータパッド部502のZ軸方向視での断面積(すなわち、面方向の断面が円形である場合には、半径×半径×π)は、第2のヒータ側ビア62のZ軸方向視での断面積(すなわち、面方向の断面が円形である場合には、半径×半径×π)より大きい。
【0035】
図4に示すように、各ヒータ電極500について設けられた一対のヒータ側ビア(第1のヒータ側ビア61および第2のヒータ側ビア62)は、円周方向CDにおいて互いに並ぶように配置されている。そのため、各ヒータ電極500の両端を構成する一対のヒータパッド部(第1のヒータパッド部501および第2のヒータパッド部502)も、円周方向CDにおいて互いに並ぶように配置されている。なお、以下の説明では、円周方向CDにおいて第1のヒータパッド部501(または第2のヒータパッド部502)と並ぶ(重なる)領域を「パッド重複領域R1」といい、円周方向CDにおいて第1のヒータパッド部501(または第2のヒータパッド部502)と並ばない(重ならない)領域を「パッド非重複領域R2」という。
【0036】
ヒータ線部504は、第1のヒータパッド部501との接続箇所から第2のヒータパッド部502との接続箇所まで一筆書きできるように延伸する線状のパターンである。面方向で見たときの、ヒータ線部504の断面積(すなわち、(面方向の内の延伸方向に直交する方向の幅)×(Z軸方向の厚さ))は、面方向で見たときの、第1のヒータパッド部501の断面積(すなわち、(面方向の幅)×(Z軸方向の厚さ))および第2のヒータパッド部502の断面積(すなわち、(面方向の幅)×(Z軸方向の厚さ))より小さい。
【0037】
ヒータ線部504は、
図4において一点鎖線で囲われた複数の部分から構成されている。具体的には、ヒータ線部504は、第1のビア側部分510と、第2のビア側部分520と、第1の接続部分530と、第2の接続部分540と、複数の(5つの)折り返し部分550とから構成されている。
【0038】
ヒータ線部504を構成する第1のビア側部分510は、第1のヒータパッド部501に接続された部分である。第1のビア側部分510は、主として、円周方向CDに略平行な複数の円周状部分511と、径方向RDに互いに隣り合う2つの円周状部分511の端部間をつなぐように径方向RDに略平行に延びる直線状部分512とから構成されている。なお、1つの円周状部分511に注目した場合に、該円周状部分511の一方の端部は、直線状部分512によって、径方向RDの一方側に隣り合う他の円周状部分511と接続されており、該円周状部分511の他方の端部は、他の直線状部分512によって、径方向RDの他方側に隣り合う他の円周状部分511と接続されている。
【0039】
本実施形態では、第1のビア側部分510を構成する複数の円周状部分511は、パッド非重複領域R2に配置されていると共に、パッド重複領域R1の内の第1のヒータパッド部501に対して第2のヒータパッド部502とは反対側の領域にも配置されている。以下、パッド重複領域R1の内の第1のヒータパッド部501に対して第2のヒータパッド部502とは反対側の領域に配置された円周状部分511を、第1の特定円周状部分513という。本実施形態では、第1のビア側部分510は、2つの第1の特定円周状部分513を含む。第1の特定円周状部分513は、特許請求の範囲における第1の円周状部分に相当する。
【0040】
同様に、ヒータ線部504を構成する第2のビア側部分520は、第2のヒータパッド部502に接続された部分である。第2のビア側部分520は、主として、円周方向CDに略平行な複数の円周状部分521と、径方向RDに互いに隣り合う2つの円周状部分521の端部間をつなぐように径方向RDに略平行に延びる直線状部分522とから構成されている。なお、1つの円周状部分521に注目した場合に、該円周状部分521の一方の端部は、直線状部分522によって、径方向RDの一方側に隣り合う他の円周状部分521と接続されており、該円周状部分521の他方の端部は、他の直線状部分522によって、径方向RDの他方側に隣り合う他の円周状部分521と接続されている。
【0041】
本実施形態では、第2のビア側部分520を構成する複数の円周状部分521は、パッド非重複領域R2に配置されていると共に、パッド重複領域R1の内の第2のヒータパッド部502に対して第1のヒータパッド部501とは反対側の領域にも配置されている。以下、パッド重複領域R1の内の第2のヒータパッド部502に対して第1のヒータパッド部501とは反対側の領域に配置された円周状部分521を、第2の特定円周状部分523という。本実施形態では、第2のビア側部分520は、2つの第2の特定円周状部分523を含む。第2の特定円周状部分523は、特許請求の範囲における第2の円周状部分に相当する。
【0042】
ヒータ線部504を構成する複数の折り返し部分550は、円周方向CDにおいて第1のヒータパッド部501と第2のヒータパッド部502との間の領域に位置する。なお、円周方向CDにおいて第1のヒータパッド部501と第2のヒータパッド部502との間の領域とは、上述したパッド重複領域R1の内、第1のヒータパッド部501と第2のヒータパッド部502とに挟まれた領域である。また、折り返し部分550が、円周方向CDにおいて第1のヒータパッド部501と第2のヒータパッド部502との間の領域に位置するとは、該折り返し部分550の少なくとも一部分が、円周方向CDにおいて第1のヒータパッド部501と第2のヒータパッド部502との間の領域に位置することを意味する。また、本明細書において、「折り返し部分」とは、ヒータ線部504の延伸方向に沿ってヒータ線部504の一端(例えば第1のヒータパッド部501との接続位置)から他端(例えば第2のヒータパッド部502との接続位置)に向かう経路において、所定の仮想直線(例えば、
図4に示す仮想直線VL)を一方側から他方側に横切るように延びる部分と、該仮想直線VLを他方側から一方側に横切るように延びる部分と、の組合せを1つ含む線状の部分である。本実施形態では、各折り返し部分550は、円周方向CDに略平行な仮想直線VLを径方向RDの外周側から中心点P1側に横切るように延びる部分と、該仮想直線VLを径方向RDの中心点P1側から外周側に横切るように延びる部分と、の組合せを1つ含むように構成されている。
【0043】
ヒータ線部504を構成する第1の接続部分530は、第1のビア側部分510における第1のヒータパッド部501との接続箇所とは反対側の端部と、複数の折り返し部分550のグループの一方の端部と、を接続する部分である。第1の接続部分530は、第1の直線状部分531を含む。第1の直線状部分531は、径方向RDに略平行な(すなわち、円周方向CDに略直交する)直線状の部分であり、かつ、円周方向CDにおいて、第1のビア側部分510における複数の円周状部分511(ただし、パッド非重複領域R2にあるもの)と第2のビア側部分520における複数の円周状部分521(ただし、パッド非重複領域R2にあるもの)との間の領域に位置する部分である。
【0044】
同様に、ヒータ線部504を構成する第2の接続部分540は、第2のビア側部分520における第2のヒータパッド部502との接続箇所とは反対側の端部と、複数の折り返し部分550のグループの他方の端部と、を接続する部分である。第2の接続部分540は、第2の直線状部分542を含む。第2の直線状部分542は、径方向RDに略平行な(すなわち、円周方向CDに略直交する)直線状の部分であり、かつ、円周方向CDにおいて、第1のビア側部分510における複数の円周状部分511(ただし、パッド非重複領域R2にあるもの)と第2のビア側部分520における複数の円周状部分521(ただし、パッド非重複領域R2にあるもの)との間の領域に位置する部分である。
図4に示すように、第2の直線状部分542は、ヒータ電極500のヒータ線部504の他の部分を介さずに、第1の接続部分530の第1の直線状部分531と隣り合っている。
【0045】
A−3.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の静電チャック10は、Z軸方向に略直交する略円形平面状の吸着面S1を有するセラミックス板100と、セラミックス板100の少なくとも一部を吸着面S1の中心点P1を中心とする円周方向CDに並ぶ複数のセグメントSEに分割したときの各セグメントSE内に配置された抵抗発熱体であるヒータ電極500と、一対の給電端子(第1の給電端子21および第2の給電端子22)とを備える。ヒータ電極500は、ヒータ電極500の両端を構成する一対のヒータパッド部501,502と、一対のヒータパッド部501,502の間を結ぶ線状のヒータ線部504とを備える。本実施形態の静電チャック10は、さらに、各ヒータ電極500について設けられ、ヒータ電極500の一端を構成する第1のヒータパッド部501と一方の給電端子(第1の給電端子21)とを電気的に接続する第1のヒータ側ビア61と、各ヒータ電極500について設けられ、円周方向CDにおいて第1のヒータ側ビア61と並ぶ位置に配置され、ヒータ電極500の他端を構成する第2のヒータパッド部502と他方の給電端子(第2の給電端子22)とを電気的に接続する第2のヒータ側ビア62とを備える。また、一対のヒータパッド部501,502の断面積は、ヒータ線部504の断面積よりも大きい。また、各ヒータ電極500のヒータ線部504は、円周方向CDにおいて第1のヒータパッド部501と第2のヒータパッド部502との間の領域に位置する複数の折り返し部分550を含む。
【0046】
本実施形態の静電チャック10は、上述した構成であるため、以下に説明するように、吸着面S1における温度分布の均一性の低下を抑制することができる。
【0047】
図5は、比較例の静電チャック10におけるヒータ電極500Xの構成を概略的に示す説明図である。
図5に示す比較例の静電チャック10におけるヒータ電極500Xは、円周方向CDにおいて第1のヒータパッド部501と第2のヒータパッド部502との間の領域に折り返し部分550が1つのみ存在する点が、同領域に折り返し部分550が複数存在する実施形態のヒータ電極500(
図4)と異なる。なお、比較例のヒータ電極500Xでは、第1の接続部分530は第1の直線状部分531のみから構成されており、該第1の直線状部分531が折り返し部分550の一部分と連続的な直線状部分を構成している。同様に、第2の接続部分540は第2の直線状部分542のみから構成されており、該第2の直線状部分542が折り返し部分550の他の一部分と連続的な直線状部分を構成している。
【0048】
このように、比較例の静電チャック10におけるヒータ電極500Xでは、円周方向CDにおいて第1のヒータパッド部501と第2のヒータパッド部502との間の領域に、折り返し部分550が1つのみ存在する。そのため、比較例の静電チャック10では、円周方向CDにおける第1のヒータパッド部501と第2のヒータパッド部502との間の距離が短くなると共に、第1のヒータパッド部501と第2のヒータパッド部502との間の領域におけるヒータ線部504の発熱量が小さくなる。ここで、上述したように、第1のヒータパッド部501および第2のヒータパッド部502の断面積は、ヒータ線部504の断面積よりも大きいことから、第1のヒータパッド部501および第2のヒータパッド部502における発熱量は、ヒータ線部504の発熱量より小さい。そのため、吸着面S1における第1のヒータパッド部501および第2のヒータパッド部502の直上の領域の温度は低くなりやすい。比較例の静電チャック10では、円周方向CDにおける第1のヒータパッド部501と第2のヒータパッド部502との間の距離が短いため、吸着面S1における温度が低くなりやすい領域が互いに近接することとなる。また、比較例の静電チャック10では、第1のヒータパッド部501と第2のヒータパッド部502との間の領域におけるヒータ線部504の発熱量が小さいため、吸着面S1における温度が低くなりやすい領域の付近における発熱量が十分に確保できない。そのため、比較例の静電チャック10では、各セグメントSEにおける第1のヒータパッド部501と第2のヒータパッド部502との間の領域の温度が過度に低くなることによってセグメントSE内の温度分布の均一性が低下し、ひいては、セラミックス板100の吸着面S1における温度分布の均一性が低下するおそれがある。
【0049】
これに対し、
図4に示すように、本実施形態の静電チャック10におけるヒータ電極500では、円周方向CDにおいて第1のヒータパッド部501と第2のヒータパッド部502との間の領域に、複数の折り返し部分550が存在する。そのため、本実施形態の静電チャック10では、第1のヒータパッド部501と第2のヒータパッド部502との間の距離を十分に取ることができると共に、第1のヒータパッド部501と第2のヒータパッド部502との間の領域におけるヒータ線部504の発熱量を十分に確保することができる。従って、本実施形態の静電チャック10では、各セグメントSEにおける第1のヒータパッド部501と第2のヒータパッド部502との間の領域の温度が過度に低くなることを抑制することができ、その結果、セグメントSE内の温度分布の均一性が低下することを抑制することができ、ひいては、セラミックス板100の吸着面S1における温度分布の均一性が低下することを抑制することができる。
【0050】
図6および
図7は、セラミックス板100の吸着面S1の温度分布のシミュレーション結果を示す説明図である。
図6には、セラミックス板100における1つのセグメントSEに配置された本実施形態のヒータ電極500に給電した場合の吸着面S1の温度分布のシミュレーション結果の一例が示されており、
図7には、同じく1つのセグメントSEに配置された比較例のヒータ電極500Xに給電した場合の吸着面S1の温度分布のシミュレーション結果の一例が示されている。
【0051】
図7に示すように、比較例のヒータ電極500Xを用いた場合には、最高温度Tmaxは132.8℃となり、最低温度Tminは127.6℃となり、最大温度差ΔTは5.2℃であった。なお、最低温度Tminは、第1のヒータパッド部501と第2のヒータパッド部502との中間地点付近で記録された。
【0052】
一方、
図6に示すように、本実施形態のヒータ電極500を用いた場合には、最高温度Tmaxは132.9℃となり、最低温度Tminは128.6℃となり、最大温度差ΔTは4.3℃であった。なお、最低温度Tminは、第1のヒータパッド部501および第2のヒータパッド部502の直上の位置で記録された。このように、本実施形態のヒータ電極500を用いた場合には、比較例のヒータ電極500Xを用いた場合と比較して、最大温度差ΔTを小さくすることができる、すなわち、吸着面S1の温度分布の均一性の低下を抑制することができることが確認された。
【0053】
また、本実施形態の静電チャック10におけるヒータ電極500は、円周方向CDに略平行な第1の特定円周状部分513を含む。第1の特定円周状部分513は、円周方向CDにおいて第1のヒータパッド部501と並び、かつ、第1のヒータパッド部501に対して第2のヒータパッド部502とは反対側の領域に位置する。そのため、本実施形態の静電チャック10では、第1のヒータパッド部501とセグメントSEの第2の境界線BL2(例えば、
図4に示すセグメントSEの左端を規定する第2の境界線BL2)との間の距離を十分に取ることができる。その結果、第1のヒータパッド部501が、該セグメントSEに隣接する他のセグメントSEのヒータパッド部(例えば、
図4に示すセグメントSEの左隣に位置する他のセグメントSE(図示せず)の第2のヒータパッド部502)に近付き過ぎることを抑制することができる。第1のヒータパッド部501と他のセグメントSEのヒータパッド部との間の距離が短いと、吸着面S1における温度が低くなりやすい領域が互いに近接することとなるため、吸着面S1の温度分布の均一性が低下しやすい。本実施形態の静電チャック10では、第1のヒータパッド部501が他のセグメントSEのヒータパッド部に近付き過ぎることを抑制することができるため、吸着面S1の温度分布の均一性の低下を効果的に抑制することができる。なお、本実施形態の静電チャック10では、ヒータ電極500のヒータ線部504が複数の(2つの)第1の特定円周状部分513を含んでいるため、第1のヒータパッド部501と他のセグメントSEのヒータパッド部との間の領域におけるヒータ電極500のヒータ線部504の発熱量を十分に確保することができ、吸着面S1の温度分布の均一性の低下をさらに効果的に抑制することができる。
【0054】
また、本実施形態の静電チャック10におけるヒータ電極500は、さらに、円周方向CDに略平行な第2の特定円周状部分523を含む。第2の特定円周状部分523は、円周方向CDにおいて第2のヒータパッド部502と並び、かつ、第2のヒータパッド部502に対して第1のヒータパッド部501とは反対側の領域に位置する。そのため、本実施形態の静電チャック10では、第2のヒータパッド部502とセグメントSEの第2の境界線BL2(例えば、
図4に示すセグメントSEの右端を規定する第2の境界線BL2)との間の距離を十分に取ることができる。その結果、第2のヒータパッド部502が、該セグメントSEに隣接する他のセグメントSEのヒータパッド部(例えば、
図4に示すセグメントSEの右隣に位置する他のセグメントSE(図示せず)の第1のヒータパッド部501)に近付き過ぎることを抑制することができる。第2のヒータパッド部502と他のセグメントSEのヒータパッド部との間の距離が短いと、吸着面S1における温度が低くなりやすい領域が互いに近接することとなるため、吸着面S1の温度分布の均一性が低下しやすい。本実施形態の静電チャック10では、第2のヒータパッド部502が他のセグメントSEのヒータパッド部に近付き過ぎることを抑制することができるため、吸着面S1の温度分布の均一性の低下を抑制することができる。なお、本実施形態の静電チャック10では、ヒータ電極500のヒータ線部504が複数の(2つの)第2の特定円周状部分523を含んでいるため、第2のヒータパッド部502と他のセグメントSEのヒータパッド部との間の領域におけるヒータ電極500のヒータ線部504の発熱量を十分に確保することができ、吸着面S1の温度分布の均一性の低下をさらに効果的に抑制することができる。
【0055】
なお、1つのセグメントSEに注目して温度分布の均一性の低下を抑制する点と、隣接する2つのセグメントSEにわたって温度分布の均一性の低下を抑制する点と、の両方の観点から、第1のヒータパッド部501は、セグメントSEを円周方向CDに沿って第1領域から第4領域の4つの仮想領域に分割したときの、第1領域と第2領域との境界に近い位置に配置されることが好ましく、第2のヒータパッド部502は、第3領域と第4領域との境界に近い位置に配置されることが好ましい。
【0056】
また、本実施形態の静電チャック10におけるヒータ電極500のヒータ線部504は、第1のヒータパッド部501に接続された第1のビア側部分510と、第2のヒータパッド部502に接続された第2のビア側部分520とを含む。第1のビア側部分510は、円周方向CDにおいて第1のヒータパッド部501と重ならない領域(パッド非重複領域R2)に、円周方向CDに略平行な複数の円周状部分511を含む。同様に、第2のビア側部分520は、円周方向CDにおいて第2のヒータパッド部502と重ならない領域(パッド非重複領域R2)に、円周方向CDに略平行な複数の円周状部分521を含む。ヒータ電極500のヒータ線部504は、さらに、第1のビア側部分510と複数の折り返し部分550とを接続する第1の接続部分530と、第2のビア側部分520と複数の折り返し部分550とを接続する第2の接続部分540とを含む。第1の接続部分530は、円周方向CDにおいて第1のビア側部分510に含まれる上記複数の円周状部分511(ただし、パッド非重複領域R2に位置するもの)と第2のビア側部分520に含まれる上記複数の円周状部分521(ただし、パッド非重複領域R2に位置するもの)との間の領域に、円周方向CDに略直交する(すなわち、径方向RDに略平行な)第1の直線状部分531を含む。また、第2の接続部分540は、円周方向CDにおいて第1のビア側部分510に含まれる上記複数の円周状部分511(ただし、パッド非重複領域R2に位置するもの)と第2のビア側部分520に含まれる上記複数の円周状部分521(ただし、パッド非重複領域R2に位置するもの)との間の領域に、円周方向CDに略直交する(すなわち、径方向RDに略平行な)第2の直線状部分542を含む。第2の直線状部分542は、ヒータ電極500のヒータ線部504の他の部分を介さずに第1の直線状部分531と隣り合っている。
【0057】
ここで、第1の直線状部分531と第2の直線状部分542との間にヒータ電極500のヒータ線部504の他の部分(例えば、径方向RDに略平行な他の直線状部分)が配置されている構成では、セラミックス板100に形成される貫通孔(例えば、ピン挿通孔やガス供給孔)が、第1の直線状部分531と第2の直線状部分542との間の領域に配置される可能性が高くなる。その結果、貫通孔が第1の直線状部分531や第2の直線状部分542と干渉する可能性が高くなる。貫通孔と第1の直線状部分531または第2の直線状部分542との干渉を避けるために、第1の直線状部分531または第2の直線状部分542の形状を変更しようとすると、変更後の第1の直線状部分531または第2の直線状部分542がヒータ電極500のヒータ線部504を構成する他の部分(第1のビア側部分510や第2のビア側部分520等)に干渉するおそれがある。そのため、そのような構成では、ある大きさのセグメントSEにおいてヒータ電極500のヒータ線部504のパターンの微細化を実現しつつ、貫通孔等の配置の自由度を確保することができないおそれがある。
【0058】
これに対し、本実施形態の静電チャック10では、第2の直線状部分542がヒータ電極500のヒータ線部504の他の部分を介さずに第1の直線状部分531と隣り合っているため、セラミックス板100に形成される貫通孔が、第1の直線状部分531より第1のビア側部分510の側の領域や第2の直線状部分542より第2のビア側部分520側の領域に配置される可能性が高くなる。貫通孔が第1の直線状部分531より第1のビア側部分510の側の領域や第2の直線状部分542より第2のビア側部分520の側の領域に配置されると、貫通孔が第1のビア側部分510や第2のビア側部分520と干渉する可能性が高くなる。貫通孔と第1のビア側部分510または第2のビア側部分520との干渉を避けることは、第1のビア側部分510または第2のビア側部分520を構成する円周状部分511,521の長さを短くするなどして比較的簡単に実現することができる。従って、本実施形態の静電チャック10では、ヒータ電極500のヒータ線部504のパターンの微細化を実現しつつ、貫通孔等の配置の自由度を確保することができる。
【0059】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0060】
上記実施形態における静電チャック10の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態において、ヒータ電極500のヒータ線部504を構成する各折り返し部分550の折り返し方向は、任意に変更可能である。
図8は、変形例におけるヒータ電極500aの構成を概略的に示す説明図である。
図8に示す変形例のヒータ電極500aでは、上記実施形態のヒータ電極500(
図4)と同様に、円周方向CDにおいて第1のヒータパッド部501と第2のヒータパッド部502との間の領域に、複数の(8つの)折り返し部分550が存在する。ただし、上記実施形態では、各折り返し部分550は、円周方向CDに略平行な仮想直線VLを径方向RDの外周側から中心点P1側に横切るように延びる部分と、該仮想直線VLを径方向RDの中心点P1側から外周側に横切るように延びる部分と、の組合せを1つ含むように構成されているのに対し、
図8に示す変形例のヒータ電極500aでは、各折り返し部分550が、径方向RDに略平行な仮想直線VLを円周方向CDの一方側から他方側に横切るように延びる部分と、該仮想直線VLを円周方向CDの他方側から一方側に横切るように延びる部分と、の組合せを1つ含むように構成されている。このような構成の変形例のヒータ電極500aにおいても、上記実施形態のヒータ電極500と同様に、円周方向CDにおいて第1のヒータパッド部501と第2のヒータパッド部502との間の領域に複数の折り返し部分550が存在するため、第1のヒータパッド部501と第2のヒータパッド部502との間の距離を十分に取ることができると共に、第1のヒータパッド部501と第2のヒータパッド部502との間の領域におけるヒータ電極500aのヒータ線部504の発熱量を十分に確保することができ、セラミックス板100の吸着面S1における温度分布の均一性が低下することを抑制することができる。
【0061】
また、上記実施形態では、ヒータ電極500のヒータ線部504が第1の特定円周状部分513や第2の特定円周状部分523を含んでいるが、ヒータ電極500のヒータ線部504が第1の特定円周状部分513と第2の特定円周状部分523との少なくとも一方を含まないとしてもよい。また、上記実施形態では、第2の直線状部分542がヒータ電極500のヒータ線部504の他の部分を介さずに第1の直線状部分531と隣り合うとしているが、必ずしもこのような構成である必要はない。
【0062】
また、上記実施形態において、各ヒータパッド部のすべてについて、第1のヒータパッド部501の断面積および第2のヒータパッド部502の断面積がヒータ線部504の断面積より大きい必要はなく、ヒータパッド部の断面積がヒータ線部504の断面積より大きい箇所が少なくとも1つあればよい。
【0063】
また、上記実施形態では、各ヒータ電極500がドライバ電極50における一対の導電領域(第1の導電領域51および第2の導電領域52)を介して一対の給電端子(第1の給電端子21および第2の給電端子22)に接続されているが、各ヒータ電極500がドライバ電極50を介さずに一対の給電端子に接続されていてもよい。すなわち、静電チャック10がドライバ電極50や給電側ビア41,42を備えないとしてもよい。また、ドライバ電極50が、それぞれ一対の給電端子21,22に導通する複数対の導電領域を備え、複数のヒータ電極500の一部が一対の導電領域に導通し、複数のヒータ電極500の他の一部が他の一対の導電領域に導通するとしてもよい。
【0064】
また、上記実施形態において、第1のヒータ側ビア61、第2のヒータ側ビア62、第1の給電側ビア41、および、第2の給電側ビア42は、それぞれ、単数のビアにより構成してもよいし、複数のビアのグループにより構成してもよい。
図9は、変形例におけるヒータ電極500bの構成を概略的に示す説明図である。
図9に示す変形例のヒータ電極500bでは、第1のヒータ側ビア61および第2のヒータ側ビア62が、それぞれ、3つのビアのグループにより構成されている。
【0065】
また、上記実施形態におけるセグメントSEの設定態様は、任意に変更可能である。また、上述したヒータ電極500の構成は、静電チャック10が備えるすべてのヒータ電極500において実現されている必要はなく、少なくとも1つのヒータ電極500において実現されていればよい。
【0066】
また、上記実施形態では、各ヒータ電極500がセラミックス板100の内部に配置されているが、各ヒータ電極500がセラミックス板100とベース部材200との間に配置されるとしてもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、セラミックス板100の内部に1つのチャック電極400が設けられた単極方式が採用されているが、セラミックス板100の内部に一対のチャック電極400が設けられた双極方式が採用されてもよい。また、上記実施形態の静電チャック10における各部材を形成する材料は、あくまで例示であり、各部材が他の材料により形成されてもよい。
【0068】
また、本発明は、静電引力を利用してウェハWを保持する静電チャック10に限らず、セラミックス板の表面上に対象物を保持する他の保持装置(例えば、CVDヒータ等のヒータ装置や真空チャック等)にも適用可能である。