(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記定量化工程では、前記算出された落屑割合が所定割合を下回る場合と上回る場合とにおいて、異なる式であって前記掛け合わせた値を用いた式により、肌状態を定量化する、
請求項2に記載の肌状態評価方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下に挙げる実施形態は例示であり、本発明は以下の実施形態の構成に限定されない。
【0012】
まず、後述する実施形態に係る肌状態評価方法の概要について
図1を用いて説明する。
図1は、肌状態評価方法の概要を示すフローチャートである。
本発明者らは、落屑の大きさが場所ごとに異なると、全体に均等な場合に比べ、見た目、触感、化粧のり、水分量などの肌状態に影響を及ぼすことに着目し、落屑の大きさのばらつきを指標とすることで、肌状態を適切に示すことができるとの着想を得た。
更に、本発明者らは、落屑の大きさのばらつき指標に落屑の大きさに関する他の指標を掛け合わせることで、更に精度よく肌状態を定量化できることに想到した。
本発明の実施形態に係る肌状態評価方法は、本発明者らにより見出された、肌画像における落屑領域の面積のばらつき度と落屑に関する他の指標とを掛け合わせた値と肌状態の評価スコアとの相関性を用いて、被験者の肌画像から被験者の肌状態の定量評価を可能とする。
即ち、当該肌状態評価方法は、
図1に示されるように、工程(S11)、工程(S12)、工程(S13)、工程(S14)、及び工程(S15)を含む。
【0013】
工程(S11)は、被験者の肌画像から落屑領域を抽出する工程である。
工程(S11)で用いられる肌画像は、被験者の評価対象となる部位の肌が撮像されて得られた画像であり、落屑が写り込み得る画像であればよい。この肌画像は、被験者の肌における所定の大きさの部分が所定の解像度で表されていることが望ましい。このように肌画像を正規化することで、正規化された肌状態指標値を得ることができる。
また、例えば、この肌画像は、肌表面の光沢成分を弱めた画像であることが望ましい。光沢成分は、肌画像上において肌表面の落屑と見分けることが難しいからである。後述の例では、この肌画像には、表面反射光成分を除去したS−P偏光画像が用いられる。
肌画像からの落屑領域の抽出手法については後述する。但し、この抽出手法には、上記特許文献1における乾燥落屑性変化の起こっている領域の検出手法など、公知の手法が用いられてもよい。
工程(S11)では、当該肌画像上の落屑を示す画素の塊が落屑領域として特定される。
【0014】
工程(S12)は、工程(S11)で抽出された落屑領域の面積を求める工程である。工程(S12)では、工程(S11)で抽出された落屑領域ごとに面積がそれぞれ取得される。落屑領域の面積は、例えば、画素数により示されてもよい。
【0015】
工程(S13)は、上記肌画像における落屑領域の面積のばらつき度を算出する工程である。工程(S13)では、工程(S12)で求められた落屑領域ごとの面積を用いて、被験者の肌画像における落屑領域の面積のばらつき度が算出される。
ここでの「落屑領域の面積のばらつき度」とは、言い換えれば、各落屑領域の面積の不均一性の程度であり、例えば、分散値、標準偏差値、変動係数(分散値を平均値で除算した値)などの少なくとも一つで示すことができる。
【0016】
工程(S14)は、上記肌画像における落屑領域の平均面積、中間面積、若しくは最頻面積、又は、上記肌画像の肌面積に対する落屑領域の面積の割合である落屑割合を取得する工程である。最頻面積を得る場合には、所定範囲で近似する面積どうしがグループ化されてもよい。
工程(S15)は、工程(S13)で算出されたばらつき度と、工程(S14)で取得された平均面積、中間面積、最頻面積、又は落屑割合とを掛け合わせた値を算出する定量化工程である。以降、工程(S15)で算出される値を「掛け合わせ取得値」と表記する場合もある。
【0017】
この肌状態評価方法によれば、工程(S15)で算出された掛け合わせ取得値を肌状態の指標値として用いて、被験者の肌状態評価を行うことができる。このような肌状態評価方法は、定量化工程(S15)で算出された掛け合わせ取得値をそのまま肌状態の指標値として提示し、被験者自身又は被験者以外の評価者に評価させてもよい。この場合、肌状態の程度ごとの標準的な掛け合わせ取得値を予め算出しておき、それと被験者の掛け合わせ取得値とを比較させることで、被験者の肌状態が評価されてもよい。また、算出された掛け合わせ取得値を肌状態の評価スコアに変換し、その評価スコアが提示されてもよい。
このように本実施形態によれば、被験者の肌画像から得られる落屑領域の面積のばらつき度と、落屑領域に関する平均面積、中間面積、最頻面積又は落屑割合との掛け合わせ値を用いることで、被験者の肌状態を高精度に定量化することができ、ひいては、被験者の肌状態を客観的に評価する肌状態評価方法を実現することができる。
【0018】
本明細書でいう「定量化」とは、演算により数値化することだけでなく、対照表にあてはめて数値化するなど、状態を値とすること一切を意味する。また、「定量化」は、求めた値を数値として示すだけでなく、値に応じて画面に示す表示を変えたり、音響装置に発生させる音を変えるために値を求めることなども含む。
【0019】
上述の肌状態評価方法は、例えば、
図2及び
図3に例示される肌状態評価装置により実行可能である。
図2は、肌状態評価装置10のハードウェア構成例を概念的に示す図である。
肌状態評価装置10は、いわゆるコンピュータであり、例えば、バスで相互に接続される、CPU(Central Processing Unit)11、メモリ12、入出力インタフェース(I/F)13、通信ユニット14等を有する。肌状態評価装置10を形成する各ハードウェア要素の数はそれぞれ制限されず、これらハードウェア要素は情報処理回路と総称することもできる。また、肌状態評価装置10は、
図2に図示されないハードウェア要素を含んでもよく、そのハードウェア構成は制限されない。
【0020】
CPU11は、一般的なCPU以外に、特定用途向け集積回路(ASIC)、DSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphics Processing Unit)等で構成してもよい。
メモリ12は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、補助記憶装置(ハードディスク等)である。
入出力I/F13は、出力装置15、入力装置16等のユーザインタフェース装置と接続可能である。出力装置15は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイのような、CPU11等により処理された描画データに対応する画面を表示する装置、印刷装置などの少なくとも一つである。入力装置16は、キーボード、マウス等のようなユーザ操作の入力を受け付ける装置である。出力装置15及び入力装置16は一体化され、タッチパネルとして実現されてもよい。
通信ユニット14は、他のコンピュータとの通信網を介した通信や、他の機器との信号のやりとり等を行う。通信ユニット14には、可搬型記録媒体等も接続され得る。また、通信ユニット14には、被験者の肌画像を撮影するカメラ(図示せず)が接続されてもよい。
また、肌状態評価装置10は、カメラを内蔵する機器であってもよい。
【0021】
図3は、肌状態評価装置10の処理構成例を概念的に示す図である。
肌状態評価装置10は、抽出部21、面積算出部22、ばらつき算出部23、統計取得部24及び定量化部25を有する。これら処理モジュールは、ソフトウェア要素であり、例えば、メモリ12に格納されるプログラムがCPU11により実行されることにより実現される。このプログラムは、例えば、CD(Compact Disc)、メモリカード等のような可搬型記録媒体やネットワーク上の他のコンピュータから入出力I/F13又は通信ユニット14を介してインストールされ、メモリ12に格納されてもよい。
【0022】
抽出部21は、上述の工程(S11)を実行する。このとき、抽出部21は、被験者の肌画像を外部のコンピュータ、機器、可搬型記録媒体などから入出力I/F13又は通信ユニット14を介して取得することができる。また、肌状態評価装置10がカメラを内蔵する場合には、抽出部21は、カメラにより撮像された肌画像を取得してもよい。
また、肌状態評価装置10が被験者の肌画像であって肌表面の光沢成分を弱めた肌画像を取得する画像取得部(図示せず)を更に備えてもよい。例えば、画像取得部は、表面反射光成分を除去したS−P偏光画像を取得してもよい。この場合、抽出部21は、画像取得部により取得された肌画像に対して工程(S11)を実行すればよい。
【0023】
面積算出部22は、上述の工程(S12)を実行する。
ばらつき算出部23は、上述の工程(S13)を実行する。
統計取得部24は、上述の工程(S14)を実行する。
定量化部25は、上述の工程(S15)を実行する。
【0024】
肌状態評価装置10は、定量化部25により算出された掛け合わせ取得値をそのまま出力装置15に出力させてもよいし、その掛け合わせ取得値から変換された評価情報(スコアなど)を出力装置15に出力させてもよい。後者の場合、定量化部25は、掛け合わせ取得値を評価情報に変換するための相対表を予め保持しており、この相対表を参照することにより、掛け合わせ取得値に対応する評価情報を取得することもできる。また、定量化部25は、相対表に替えて変換式を予め保持していてもよい。
【0025】
以下、本発明の好適な実施形態を例示し、本実施形態を詳細に説明する。
以下の実施形態に係る肌状態評価方法は、ソフトウェアプログラムが
図4に示される肌診断システム30上で実行されることにより、肌を撮影した画像を用いて行う肌診断の一部として実現される。本実施形態に係る肌状態評価方法が実行されるとき、肌診断システム30の全体又はその一部は肌状態評価装置と呼ぶこともできる。
【0026】
図4は、本実施形態に係る肌診断システム30のハードウェア構成を示す概念図である。
肌診断システム30は、撮像装置31、投光器32、情報処理装置33、タッチパネル34等を有する。
撮像装置31は、被験者Sの顔などの肌表面を撮影する。撮像装置31には撮像する光を偏波面にて選択するための撮像用偏光フィルタ36が設けられている。
投光器32は、被験者Sの顔などの肌表面に撮影用の光を投光する。投光器32には、被験者Sに投光する光の偏波面を選択するための投光用偏光フィルタ37が設けられている。
情報処理装置33は、撮像装置31にて撮影された肌表面の画像を用いて肌診断のための各種演算などを行う。情報処理装置33は、パーソナルコンピュータなどの汎用のコンピュータ装置である。情報処理装置33には、
図2に例示されるような、各種プログラムや撮影された肌表面の画像を記憶するための外部記憶装置(メモリ12)や診断結果を印刷するための図示しないプリンタ(出力装置15)が設けられている。
タッチパネル34は、撮影された肌表面の画像や肌診断の結果などを表示する表示手段として機能するとともに肌診断システム30の利用者が情報処理装置33に対して各種の命令を入力する入力手段として機能する。タッチパネル34は、
図2における出力装置15及び入力装置16に相当する。
【0027】
このような肌診断システム30の情報処理装置33においてプログラムが起動され実行されることにより各種の公知の肌診断が実行されるとともに、本実施形態に係る肌状態評価方法が実行される。情報処理装置33は上述の肌状態評価装置10に相当する。
【0028】
以下、本実施形態に係る肌状態評価方法について
図5を用いて説明する。
図5は、本実施形態に係る肌状態評価方法を示すフローチャートである。
本実施形態では、情報処理装置33において肌状態評価プログラムP0が実行されることで、次のような肌状態評価方法が実行される。
【0029】
本実施形態に係る肌状態評価方法は、
図5に示されるように、落屑部抽出ステップ(S51)、島ラベリングステップ(S52)、島面積演算ステップ(S53)、及び肌状態評価判定ステップ(S54)を含んでいる。
以下、本実施形態に係る肌状態評価方法を形成する各ステップについてより詳細に説明する。
【0030】
ステップ(S51)では、被験者Sの肌を撮像して得られた肌画像から落屑部が抽出される。
具体的には、撮像用偏光フィルタ36の偏光方向を、投光器32の投光用偏光フィルタ37の偏光方向に対し垂直にすることで得られる画像である所謂P偏光画像(S−P偏光画像とも表記される)が元画像として撮像装置31から取得される。この元画像は、偏光により表面反射光成分が除去された画像である。この元画像にガウシアンフィルタなどの低域濾過フィルタ(平滑化フィルタ)を施し得られた低周波画像と元画像との間で減算処理を行い差分画像が得られる。得られた差分画像が所定の閾値で二値化されることで、落屑位置を示す落屑マップ画像を得ることができる。この落屑マップ画像では、白い画素が落屑部とされる。
但し、このようなS−P偏光画像ではなく、紫外線環境下で撮像された紫外線肌画像が元画像として用いられてもよい。また、元画像から落屑部を抽出する手法は、上述の手法に限定されなくてもよく、公知の手法が用いられてもよい。
【0031】
ステップ(S52)では、ステップ(S51)で抽出された落屑部群の中の連続した落屑部を一つの塊とする島ラベリング処理が実行される。ここでは、上述の落屑マップ画像において、落屑部の塊が特定され、その塊ごとに番号が付される。具体的には、落屑部に相当する画素のうち連続した画素群が落屑部の塊として特定され、落屑部の塊に相当する連続した画素群に同じ番号が付され、他の塊に相当する連続した画素群には異なる番号が付される。
図6は、島ラベリング処理の島判定ルールの例を示す図である。例えば、
図6に示される「塊1」及び「塊2」のように、落屑部に相当する画素の中で縦方向又は横方向で隣接している画素群が落屑部の塊(島)として判定される。
図6の例では、斜めのみで隣接している画素どうしは塊(島)として判定されない。但し、斜めのみで隣接している画素であっても塊(島)として判定されてもよい。
図7は、島ラベリング処理の一例を示す図である。
図7では、個々の四角がそれぞれ画素を示す。
図7の上図は、落屑マップ画像(二値化画像)を示し、
図7の例では、図面の制約上、黒い画素が落屑部を示すものと仮定する。
図7の下図は、
図7の上部の画像に島ラベリング処理を施した結果を示す図であり、落屑部の塊ごとの各画素にユニークな番号が付されている。
図7の例では、12個の塊(島)が特定され、塊ごとに12個のユニークな番号(16進表記)が付されている。
なお、島ラベリング処理の具体的なアルゴリズムについては、特に制限されず、あらゆるアルゴリズムが利用可能である。
【0032】
ステップ(S51)により肌画像から落屑部が抽出され、ステップ(S52)により落屑部に相当する画素の中の連続した画素群が塊としてまとめられて、落屑領域が抽出される。即ち、ステップ(S51)及びステップ(S52)により、
図1に示される工程(S11)が実現される。
【0033】
ステップ(S53)では、ステップ(S52)で特定された島、即ち落屑領域ごとの面積が算出される。例えば、同一番号が付された画素の数をカウントすることで、落屑領域ごとの面積を得ることができる。ステップ(S53)で算出された落屑領域ごとの面積は、情報処理装置33の記憶領域上の落屑領域面積テーブルに格納される。
【0034】
ステップ(S54)では、落屑領域面積テーブルに格納される情報を用いて、肌状態評価値が取得される。本実施形態では、肌状態評価値を10段階に区分し、最も悪い状態を1、最も良い状態を10とした肌状態評価値がステップ(S54)によって算出される。
以下、肌状態評価判定ステップ(S54)の詳細について
図8を用いて説明する。
図8は、肌状態評価判定ステップ(S54)の詳細を示すフローチャートである。
【0035】
ステップ(S54)ではまず、ステップ(S51)で用いられた肌画像の肌面積に対する落屑領域の合計面積の割合、即ち落屑割合が算出される(ステップ(S81))。
落屑割合で対象とされる肌面積は、ステップ(S51)で用いられた肌画像の全領域(例えば、全画素数)とされてもよいし、当該肌画像の一部の領域(一部の画素数)とされてもよい。
次に、ステップ(S82)において、落屑領域面積テーブルを参照して、落屑領域の面積の分散値が算出される。また、ここで落屑割合を求めるのは、本発明者らにより、落屑割合の大小により、肌状態の評価値と高い相関を示す指標が異なることが見出されているからである。例えば、落屑割合が所定割合を下回る場合に、上述した掛け合わせ取得値と落屑割合との指標候補のうちのいずれか一方を用いて肌状態が定量化され、落屑割合が所定割合を上回る場合には、当該指標候補のうちの他方を用いて肌状態が定量化されてもよい。
【0036】
本実施形態では、
図8に示されるように、この所定割合が18%とされ、落屑割合が18%以上か18%より小さいかにより、次のようにして肌状態が定量化される。この所定割合の数値は制限されない。当該所定割合は、サンプル肌画像の解析により予め決められることが好ましく、そのため、選択されるサンプル肌画像に応じてその値は異なり得る。
ステップ(S83)では、落屑割合が所定割合(18%)以上か否かが判定される。落屑割合が所定割合(18%)以上である場合(S83;Y)、面積分散値評価1ステップ(S84)が実行され、落屑割合が所定割合未満である場合(S83;N)、面積分散値評価2ステップ(S85)が実行される。
【0037】
面積分散値評価1ステップ(S84)又は面積分散値評価2ステップ(S85)のいずれか一方において、ステップ(S81)で算出された落屑割合とステップ(S82)で算出された落屑領域の面積の分散値とを掛け合わせた値(掛け合わせ取得値)が算出される。そして、この掛け合わせ取得値を用いて、肌状態評価値が算出される。
面積分散値評価1ステップ(S84)又は面積分散値評価2ステップ(S85)の他方では、落屑割合を用いて、肌状態評価値が算出される。
このように、落屑割合が所定割合を下回る場合に、当該掛け合わせ取得値と落屑割合との指標候補のうちのいずれか一方を用いて肌状態が定量化され、落屑割合が所定割合を上回る場合に、当該指標候補のうちの他方を用いて肌状態が定量化される。
【0038】
更に言えば、落屑割合が所定割合を下回る場合と上回る場合とで異なる式であって、当該掛け合わせ取得値を用いた式により、肌状態が定量化(肌状態指標値が算出)されてもよい。肌状態評価値を求めるための評価式は、実施例の項で述べるように、サンプル肌画像から肌状態の評価スコアと当該掛け合わせ取得値との相関式が予め導出され、その相関式から予め生成されればよい。
このようにすれば、肌状態を高精度に定量化することができる。
また、
図8に示される肌状態評価判定ステップでは、落屑領域の面積のばらつき度として、落屑領域の面積の分散値が用いられたが、上述したとおり、分散値に替えて、標準偏差値、変動係数などの他のばらつき指標が用いられてもよい。
同様に、落屑領域の面積の分散値と掛け合わせる指標として、肌画像における落屑領域の平均面積、中間面積、又は最頻面積が用いられてもよい。
【0039】
被験者Sの肌を撮像して得られた肌画像は、ステップ(S54)において算出された肌状態評価値や当該掛け合わせ取得値、落屑割合、落屑領域の面積分散値などと共に情報処理装置33に接続されたタッチパネル34に表示される。
このようにして、肌における落屑の状態が定量化され(面積分散値、落屑割合など)、定量化された落屑の状態評価(肌状態評価値)により、肌状態がよりよく理解される。その結果、肌のケアへの希望が高まったり、施すケアを変えたりすることができる。例えば、肌診断システム30を美容室に設置して肌状態を定量化し被術者に示すことで、ケアの必要性がよりよく理解されることに繋がる。また、施術者にとっては、落屑量や分散値に応じて使用する化粧料を異ならせたりマッサージの程度を変えたりするなど、それらをケアの方法を異ならせる判断の指標として使うことができる。
【0040】
情報処理装置33は、
図3に示される処理モジュールにより、
図5に示す肌状態評価方法を実現することができる。
例えば、抽出部21は、ステップ(S51)及び(S52)を実行する。
面積算出部22は、ステップ(S53)を実行する。
統計取得部24は、ステップ(S81)を実行する。
定量化部25は、ステップ(S82)、ステップ(S83)、ステップ(S84)及びステップ(S85)を実行する。
また、定量化部25は、上述の肌状態評価値を算出してもよい。この場合、例えば、定量化部25は、当該掛け合わせ取得値を用いて肌状態評価値を算出する式をあらかじめ保持する。
【0041】
[変形例]
落屑領域の面積情報に基づく肌状態評価は、上述の本実施形態の判定手法に限定されず、例えば、次のような判定手法を用いてもよい。
【0042】
図1に示される工程(S11)の落屑領域の抽出は、
図5に示されるステップ(S51)及び(S52)の手法でなくてもよく、肌を撮影した画像から落屑した部分を連続した領域として選び出す、種々の撮影方法や画像処理方法が採用可能である。
個々の落屑領域の面積の計算方法も、画素数を数え上げる方法以外に、形状や周長その他のパラメータを用いて近似する方法など、公知の計算方法を用いることができる。
また、落屑割合の大小によらず、一つの評価式により、肌状態評価値が算出されてもよい。このようにすれば、落屑割合の演算や式選択のための分岐処理が不要となる。逆に、精度をより上げるため、落屑割合と比較する所定割合の数を増やし、3つ以上の評価式により肌状態評価値が算出されてもよい。この場合、例えば、所定の落屑割合以上では、その落屑割合で肌状態評価値を算出すればよい。
【0043】
以下に実施例を挙げ、上述の実施形態を更に詳細に説明する。本発明は以下の実施例から何ら限定を受けない。以下の実施例によれば、上述の実施形態における肌状態の定量化の有効性が実証される。肌状態としては、肌の見た目の状態、肌への化粧のりの状態、肌の触感の状態及び測定器で測定される肌状態(肌性状)が確認された。
【実施例】
【0044】
図9は、落屑領域の面積に関する分散値と落屑割合との掛け合わせ値と落屑目視スコアとの相関を示すグラフである。
図10は、落屑割合と落屑目視スコアとの相関を示すグラフである。
ここでは、23名の被験者の左頬部(素肌)が撮像された23枚のS−P偏光画像がサンプル肌画像として用いられ、各サンプル肌画像の落屑の見た目の状態が専門家5名により評価された。この評価では、サンプル肌画像ごとに、落屑の目立ち度合が0.5点刻みの1点から4点までの7段階で点数付けされ、5名の専門家の平均点がそのサンプル肌画像の落屑目視スコアとして付与された。
一方で、各サンプル肌画像(S−P偏光画像)に関して落屑領域ごとの面積がそれぞれ算出され、落屑割合及び落屑領域の面積の分散値がそれぞれ算出された。
【0045】
図9及び
図10では、決定係数(R
2)が0.6503及び0.4586となっているため、
図9及び
図10の各グラフによれば、落屑領域の面積の分散値と落屑割合との掛け合わせ値(掛け合わせ取得値)及び落屑割合は、共に、落屑目視スコアと或る程度高い相関を示すことが認められる。ここで、落屑目視スコアは被験者の肌状態の見た目の印象(主観的評価の結果)を示す値である。この結果から、落屑領域の面積に関する当該掛け合わせ取得値又は落屑割合によれば、被験者の肌状態(肌荒れ)の見た目の印象の評価スコアを推定可能であることが明らかとなる。
【0046】
例えば、
図9に示される相関式から、以下の式を導出することができる。
見た目の肌状態の評価値(落屑目視スコア)=0.2189×(掛け合わせ取得値)+0.8087
上述の肌状態評価方法及び上述の肌状態評価装置10の定量化部25は、このような式を予め保持しておくことにより、当該掛け合わせ取得値から肌の見た目の状態の評価値を得ることができる。
また、
図9の決定係数(R
2)は、
図10の決定係数よりも約0.2の差で大きいため、落屑割合のみで肌状態を評価するよりも、当該掛け合わせ取得値を用いた肌状態評価のほうが高精度で評価できることが確認される。
【0047】
図11は、落屑領域の面積に関する分散値と落屑割合との掛け合わせ値とファンデーションのり(かさつきムラ)スコアとの相関を示すグラフである。
ここでは、ファンデーションを塗布した21名の被験者の左頬部が撮像された21枚のS−P偏光画像がサンプル肌画像として用いられ、各サンプル肌画像のかさつきムラが専門家1名により目視評価された。この目視評価では、サンプル肌画像ごとに、落屑由来の化粧ムラの目立ち度合が0.5点刻みの1点から4点までの7段階で点数付けされ、そのサンプル肌画像のFDのりスコアとして付与された。
一方で、各サンプル肌画像(S−P偏光画像)に関して落屑領域ごとの面積がそれぞれ算出され、落屑割合及び落屑領域の面積の分散値がそれぞれ算出された。
図11では、決定係数(R
2)が0.3049となっているため、
図11のグラフによれば、落屑領域の面積の分散値と落屑割合との掛け合わせ値(掛け合わせ取得値)は、ファンデーションのりスコアと或る程度の相関を示すことが認められる。
図11に示される相関式により化粧のりに関する肌状態の評価値の推定式を導出することができ、上述の肌状態評価方法及び上述の肌状態評価装置10の定量化部25は、このような式を予め保持しておくことにより、当該掛け合わせ取得値から化粧肌の化粧のり状態の評価値を得ることができる。
【0048】
図12は、落屑領域の面積に関する分散値と落屑割合との掛け合わせ値と肌の粗さ(触感)スコアとの相関を示すグラフである。
ここでは、35名の被験者の左頬部の素肌の粗さが専門家1名の触診により評価された。この触診評価では、被験者ごとに、肌の粗さが1点刻みの1点から5点までの5段階で点数付けされ、肌の粗さスコアとしてそれぞれ付与された。
一方で、各被験者の左頬部の素肌が撮像された35枚のS−P偏光画像がサンプル肌画像として用いられ、各サンプル肌画像(S−P偏光画像)に関して落屑領域ごとの面積がそれぞれ算出され、落屑割合及び落屑領域の面積の分散値がそれぞれ算出された。
図12では、決定係数(R
2)が0.2057となっているため、
図12のグラフによれば、落屑領域の面積の分散値と落屑割合との掛け合わせ値(掛け合わせ取得値)は、触診による肌の粗さスコアと或る程度の相関を示すことが認められる。
図12に示される相関式により肌の触感に関する肌状態の評価値の推定式を導出することができ、上述の肌状態評価方法及び上述の肌状態評価装置10の定量化部25は、このような式を予め保持しておくことにより、当該掛け合わせ取得値から肌の触感の状態の評価値を得ることができる。
【0049】
図13は、落屑領域の面積に関する分散値と落屑割合との掛け合わせ値と肌性状との相関を示すグラフである。
ここでは、23名の被験者の左頬部の水分量が皮表角層水分量測定装置により測定された。皮表角層水分量測定装置は、電気伝導度により表皮角層の水分量を測定可能な装置である。
一方で、各被験者の左頬部の素肌が撮像された23枚のS−P偏光画像がサンプル肌画像として用いられ、各サンプル肌画像(S−P偏光画像)に関して落屑領域ごとの面積がそれぞれ算出され、落屑割合及び落屑領域の面積の分散値がそれぞれ算出された。
図13では、決定係数(R2)が0.3443となっているため、
図13のグラフによれば、落屑領域の面積の分散値と落屑割合との掛け合わせ値(掛け合わせ取得値)は、肌の水分量と或る程度の相関を示すことが認められる。
図13に示される相関式により測定器で測定される肌性状(水分量)の推定式を導出することができ、上述の肌状態評価方法及び上述の肌状態評価装置10の定量化部25は、このような式を予め保持しておくことにより、当該掛け合わせ取得値から、専用の測定器を用いることなく、肌性状の測定値を推定することができる。
【0050】
上記の実施形態及び変形例の一部又は全部は、次のようにも特定され得る。但し、上述の実施形態及び変形例が以下の記載に制限されるものではない。
【0051】
<1>被験者の肌画像から落屑領域を抽出する工程と、
前記抽出された落屑領域の面積を求める工程と、
前記肌画像における落屑領域の面積のばらつき度を算出する工程と、
前記肌画像における落屑領域の平均面積、中間面積、若しくは最頻面積、又は、前記肌画像の肌面積に対する落屑領域の面積の割合である落屑割合を取得する工程と、
前記算出されたばらつき度と、前記平均面積、前記中間面積、前記最頻面積、又は前記落屑割合とを掛け合わせた値を算出する定量化工程と、
を含む肌状態評価方法。
【0052】
<2>前記定量化工程では、
前記算出された落屑割合が所定割合を下回る場合に、前記掛け合わせた値と前記落屑割合との指標候補のうちのいずれか一方を用いて肌状態を定量化し、
前記算出された落屑割合が所定割合を上回る場合に、前記指標候補のうちの他方を用いて肌状態を定量化する、
<1>に記載の肌状態評価方法。
<3>前記定量化工程では、前記算出された落屑割合が所定割合を下回る場合と上回る場合とにおいて、異なる式であって前記掛け合わせた値を用いた式により、肌状態を定量化する、
<2>に記載の肌状態評価方法。
<4>前記定量化工程では、前記掛け合わせた値を用いて、前記被験者の肌の見た目、触感、化粧のり、又は肌性状を評価する、
<1>から<3>のいずれか一つに記載の肌状態評価方法。
<5>前記肌画像は、肌表面の光沢成分を弱めた肌画像である、
<1>から<4>のいずれか一つに記載の肌状態評価方法。
<6>被験者の肌画像から落屑領域を抽出する抽出手段と、
前記抽出された落屑領域の面積を求める面積算出手段と、
前記肌画像における落屑領域の面積のばらつき度を算出するばらつき算出手段と、
前記肌画像における落屑領域の平均面積、中間面積、若しくは最頻面積、又は、前記肌画像の肌面積に対する落屑領域の面積の割合である落屑割合を取得する統計取得手段と、
前記算出されたばらつき度と、前記平均面積、前記中間面積、前記最頻面積、又は前記落屑割合とを掛け合わせた値を算出する定量化手段と、
を備える肌状態評価装置。
<7>前記定量化手段は、
前記算出された落屑割合が所定割合を下回る場合に、前記掛け合わせた値と前記落屑割合との指標候補のうちのいずれか一方を用いて肌状態を定量化し、
前記算出された落屑割合が所定割合を上回る場合に、前記指標候補のうちの他方を用いて肌状態を定量化する、
<6>に記載の肌状態評価装置。
<8>前記定量化手段は、前記算出された落屑割合が所定割合を下回る場合と上回る場合とで異なる式であって、前記掛け合わせた値を用いた式により、肌状態を定量化する、
<7>に記載の肌状態評価装置。
<9>前記定量化手段は、前記掛け合わせた値を用いて、前記被験者の肌の見た目、触感、化粧のり、又は肌性状の評価情報を生成する、
<6>から<8>のいずれか一つに記載の肌状態評価装置。
<10>被験者の肌画像であって、肌表面の光沢成分を弱めた肌画像を取得する画像取得手段、
を更に備え、
前記抽出手段は、前記画像取得手段により取得された前記肌画像から落屑領域を抽出する、
<6>から<9>のいずれか一つに記載の肌状態評価装置。