(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ケースが、前記底壁、天壁、後壁及び一対の側壁を形成するケース本体と、前記前壁を形成し前記ケース本体の開口を封止する蓋板とを有する請求項1又は請求項2に記載の蓄電素子。
前記列間で対向する2つの前記後壁の一方の前記破裂弁と他方の前記破裂弁とは、前記底壁及び天壁の対向方向においてオーバーラップしていない請求項4に記載の蓄電モジュール。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一態様に係る蓄電素子は、底壁及び天壁と、それぞれ前記天壁より面積が小さい前壁及び後壁と、それぞれ前記天壁より面積が大きい一対の側壁とを有する、直方体形状のケースと、前記ケース内に収容され、セパレータを介して積層された板状の複数の正極板及び負極板、並びに前記正極板及び前記負極板から前記前壁に向けて延出する正極タブ及び負極タブを有する積層電極体と、前記前壁に設けられ、前記正極タブ又は前記負極タブと電気的に接続される外部端子と、前記後壁に設けられる破裂弁とを備え、前記底壁が設置面に設置され、前記前壁が前記底壁から立ち上がり、前記破裂弁は、前記底壁及び天壁の対向方向において前記後壁の中心からシフトした位置に設けられる。
【0017】
当該蓄電素子は、最も面積が小さい前壁と後壁とに外部端子と破裂弁とを別々に設けたことによって、積層電極体と外部端子との間の電気的接続のための構造が占有するスペースを比較的小さくすることができる。また、当該蓄電素子は、後壁に設けられる破裂弁が、後壁の中心から底壁及び天壁の対向方向にシフトして配置されるので、2つの当該蓄電素子を後壁同士を対向させて配置する際、破裂弁のシフト量を異ならせることによって、一方の蓄電素子の破裂弁が開放しても、開放した破裂弁から噴出するガスが他方の蓄電素子の破裂弁に当たらないようにすることができる。これによって、蓄電素子間の距離を小さくしても不必要な破裂弁の開放を防止することができるので、複数の蓄電素子を密に配置することができる。そのため、従来の構造の蓄電素子に比して蓄電モジュールのエネルギー密度を大きくすることができる。
【0018】
蓄電素子は、前記後壁の内面と前記積層電極体との間に配置されて前記破裂弁の内面を覆う多孔性シートをさらに備えてもよい。この構成によれば、破裂弁の開放時に電極板の破片等の固形物が外部に噴出することを抑制することができる。また、積層電極体と後壁との間隔を最低限度としつつ、蓄電素子に衝撃が作用した際に積層電極体に伝わる衝撃を緩和できる。
【0019】
蓄電素子において、前記ケースが、前記底壁、前記天壁、前記一対の側壁及び前記後壁を形成する有底筒状のケース本体と、前記前壁を形成し前記ケース本体の開口を封止する蓋板とを有してもよい。この構成によれば、底壁、天壁、一対の側壁及び後壁が一体に形成されることで後壁の変形が抑制されることで、破裂弁が変形して開放圧力が変動することが抑制される。
【0020】
本発明の別の態様に係る蓄電モジュールは、複数の前記蓄電素子と、前記複数の蓄電素子を2列に並べて保持する保持部材とを備え、前記各列内で隣接する前記蓄電素子が前記側壁同士を対向させ、前記列間で隣接する前記蓄電素子が前記後壁同士を対向させ、前記列間で対向する2つの前記後壁の一方の前記破裂弁のシフト位置と他方の前記破裂弁のシフト位置とが、前記底壁及び天壁の対向方向における前記後壁の中心に対して反対である。
【0021】
当該蓄電モジュールは、平面視において複数の蓄電素子を、後壁を内側に向け、外部端子が設けられる前壁を外側に向けて配置するので、外側に集中的に配置されている外部端子を用いて蓄電素子同士を容易に電気接続できる。ケースの前壁と後ろ壁との間隔を拡げ、収容する積層電極体の平面視における寸法を大きくして、高さが限られた空間に設置される場合でもエネルギー密度を大きくすることができる。また、当該蓄電モジュールは、列間で隣接する蓄電素子の破裂弁の配置が互いにずらされているので、一方の蓄電素子の破裂弁の開放により他方の蓄電素子の破裂弁に外圧が作用して不必要に他方の蓄電素子の破裂弁を開放させることが防止される。
【0022】
蓄電モジュールにおいて、前記列間で対向する2つの前記後壁の一方の前記破裂弁と他方の前記破裂弁とは、前記底壁及び天壁の対向方向においてオーバーラップしていないことが好ましい。この構成によれば、一方の蓄電素子の破裂弁の開放による噴出物が他方の蓄電素子の破裂弁に衝突することをより確実に防止できる。
【0023】
蓄電モジュールは、前記列間で対向する2つの前記後壁の一方と他方のとの間に、排気路が画定されていてもよい。この構成によれば、部品点数を増やすことなく、破裂弁の開放による噴出物をスムーズに蓄電モジュールの外部に放出し、蓄電素子の内圧を迅速に低下することができる。
【0024】
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を詳説する。
【0025】
図1乃至
図4に、本発明の一実施形態に係る蓄電素子1を示す。
【0026】
当該蓄電素子1は、直方体形状のケース2と、このケース2内に収容される積層電極体3と、ケース2に設けられる正極外部端子4及び負極外部端子5並びに破裂弁(Rupture Valve)6とを備える。ケース2内には、積層電極体3と共に電解液が封入される。
【0027】
ケース2は、対向して配設される大きさが略等しい長方形状の底壁7及び天壁8と、底壁7及び天壁8の短辺間を接続し、底壁7及び天壁8より面積が小さい長方形状の前壁9及び後壁10と、底壁7及び天壁8の長辺間を接続し、底壁7及び天壁8より面積が大きい長方形状の一対の側壁11とを有する。
【0028】
正極外部端子4及び負極外部端子5は、ケース2の前壁9に設けられる。破裂弁6は、前壁9に対向する後壁10に設けられる。
【0029】
積層電極体3は、積層された方形板状の複数の正極板12、負極板13及びセパレータ14、並びに正極板12及び負極板13から前壁9に向けて延出する正極タブ15及び負極タブ16を有する。より詳しくは、積層電極体3は複数の正極板12及び負極板13がセパレータ14を介して交互に積層されて概略直方体形状に形成される本体と、この本体から延びる正極タブ15及び負極タブ16とを有する。積層される正極板12の枚数は、当該蓄電素子を高容量化するために、例えば40乃至60枚とすることができる。負極板13の枚数も同様とすることができる。
【0030】
積層電極体3の正極タブ15は正極外部端子4に電気的に接続され、負極タブ16は負極外部端子5に電気的に接続される。具体的には、正極タブ15は、ケース2の内側で正極外部端子4から前壁9に沿って延びる板状の正極集電部材17に接続されている。負極タブ16は、ケース2の内側で負極外部端子5から前壁9に沿って延びる板状の負極集電部材18に接続されている。
【0031】
正極外部端子4及び負極外部端子5は、前壁9の外側に配置され、バスバーや配線が接続される板状の端子部と、この端子部から延び、前壁9を貫通する軸部とを有する。
【0032】
正極外部端子4及び負極外部端子5は、前壁9に電気的に接触せず、かつ電解液を漏出させないよう、絶縁性の外側ガスケット19及び内側ガスケット20を挟んで前壁9に気密に固定される。
【0033】
破裂弁6は、後壁10の中心から底壁7及び天壁8の対向方向(上下方向)にシフトした位置に設けられる。好ましくは、破裂弁6は、後壁10の底壁7側の半分の領域又は天壁8側の半分の領域内に全体が収まるよう配置される。
【0034】
破裂弁6は、当該蓄電素子を搭載する車両の衝突時等、通常予見される使用形態ではない特異な状況においてケース2の内部にガスが発生して内圧が一定の圧力に達したときに、開口を形成してケース2の内部のガスを放出して内圧を低下させる安全弁である。
【0035】
破裂弁6は、板厚を部分的に減じて形成される溝を有し、当該蓄電素子の内圧上昇時にこの溝に沿って破断して、フラップ状(舌片状)の部分を形成し、このフラップ状の部分を外側に跳ね上げることで後壁10に開口を形成する。
【0036】
破裂弁6は設けられる後壁10と積層電極体3との間には、クッション性を有する多孔性シート21が配置されることが好ましい。
【0037】
以下、当該蓄電素子の各構成要素について詳述する。
【0038】
ケース2は、積層電極体3を電解液に浸漬した状体で保持すると共に、積層電極体3を保護する。
【0039】
ケース2の材質としては、例えばアルミニウムやアルミニウム合金、ステンレス等の金属、樹脂などを用いることができる。
【0040】
ケース2は、底壁7、天壁8、後壁10及び一対の側壁11を形成する有底筒状のケース本体と、前壁9を形成しケース本体の開口を封止する蓋板とを有することが好ましい。このように、有底筒状のケース本体によって底壁7、天壁8、後壁10及び一対の側壁11を一体に形成することで、ケース2の強度を向上することができる。また、破裂弁6を有する後壁10が底壁7、天壁8、後壁10及び一対の側壁11と一体に形成されることで、後壁10の変形が抑制されるため、破裂弁6が開口する圧力のばらつきが小さくなる。
【0041】
前壁9の長辺の長さとしては、当該蓄電素子1に許容される高さ以下とされ、例えば7cm以上11cm以下とすることができる。一方、前壁9の短辺の長さとしては、積層電極体3の仕様に合わせて選択されるが、例えば2cm以上5cm以下とすることができる。また、底壁7の長辺の長さとしては、当該蓄電素子1に許容される長さ以下とされ、例えば10cm以上20cm以下とすることができる。
【0042】
前壁9の厚さとしては、材質や大きさにもよるが、例えば0.5mm以上2mm以下とすることができる。これに対して、後壁10の厚さとしては、例えば0.5mm以上1.8mm以下とすることができる。また、底壁7、天壁8、及び一対の側壁11の厚さとしては例えば0.5mm以上1.5mm以下とすることができる。このように、ケース2は、四角筒状に一体に形成することができる底壁7、天壁8、及び一対の側壁11の厚さよりも前壁9及び後壁10の厚さを大きくすることが好ましい。また、底壁7、天壁8、及び一対の側壁11と一体に形成することができる後壁10の厚さよりも最後に接合される前壁9の厚さを大きくすることが好ましい。
【0043】
正極板12は、導電性を有する箔状乃至シート状の正極集電体と、この正極集電体の両面に積層される正極活物質層とを有する。
【0044】
正極板12の正極集電体の材質としては、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル等の金属又はそれらの合金が用いられる。これらの中でも、導電性の高さとコストとのバランスからアルミニウム、アルミニウム合金、銅及び銅合金が好ましく、アルミニウム及びアルミニウム合金がより好ましい。また、正極集電体の形状としては、箔、蒸着膜等が挙げられ、コストの面から箔が好ましい。つまり、正極集電体としてはアルミニウム箔が好ましい。なお、アルミニウム又はアルミニウム合金としては、JIS−H4000(2014)に規定されるA1085P、A3003P等が例示できる。
【0045】
正極板12の正極活物質層は、正極活物質を含むいわゆる合材から形成される多孔性の層である。また、正極活物質層を形成する合材は、必要に応じて導電剤、結着剤(バインダ)、増粘剤、フィラー等の任意成分を含む。
【0046】
前記正極活物質としては、例えばLi
xMO
y(Mは少なくとも一種の遷移金属を表す)で表される複合酸化物(Li
xCoO
2、Li
xNiO
2、Li
xMn
2O
4、Li
xMnO
3、Li
xNi
αCo
(1−α)O
2、Li
xNi
αMn
βCo
(1−α−β)O
2、Li
xNi
αMn
(2−α)O
4等)、Li
wMe
x(XO
y)
z(Meは少なくとも一種の遷移金属を表し、Xは例えばP、Si、B、V等を表す)で表されるポリアニオン化合物(LiFePO
4、LiMnPO
4、LiNiPO
4、LiCoPO
4、Li
3V
2(PO
4)
3、Li
2MnSiO
4、Li
2CoPO
4F等)が挙げられる。これらの化合物中の元素又はポリアニオンは他の元素又はアニオン種で一部が置換されていてもよい。正極活物質層においては、これら化合物の一種を単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。また、正極活物質の結晶構造は、層状構造又はスピネル構造であることが好ましい。
【0047】
負極板13は、導電性を有する箔状乃至シート状の負極集電体と、この負極集電体の両面に積層される多孔性の負極活物質層とを有する。
【0048】
負極板13の負極集電体の材質としては、銅又は銅合金が好ましい。また、負極集電体の形状としては、箔が好ましい。つまり、負極板13の負極集電体としては銅箔が好ましい。負極集電体として用いられる銅箔としては、例えば圧延銅箔、電解銅箔等が例示される。
【0049】
負極活物質層は、負極活物質を含むいわゆる合材から形成される多孔性の層である。また、負極活物質層を形成する合材は、必要に応じて導電剤、結着剤(バインダ)、増粘剤、フィラー等の任意成分を含む。
【0050】
負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵及び放出することができる材質が好適に用いられる。具体的な負極活物質としては、例えばリチウム、リチウム合金等の金属;金属酸化物;ポリリン酸化合物;黒鉛、非晶質炭素(易黒鉛化炭素又は難黒鉛化性炭素)等の炭素材料などが挙げられる。
【0051】
前記負極活物質の中でも、正極板12と負極板13との単位対向面積当たりの放電容量を好適な範囲とする観点から、Si、Si酸化物、Sn、Sn酸化物又はこれらの組み合わせを用いることが好ましく、Si酸化物を用いることが特に好ましい。なお、SiとSnとは、酸化物にした際に、黒鉛の3倍程度の放電容量を持つことができる。
【0052】
セパレータ14は、電解液が浸潤するシート状乃至フィルム状の材料から形成される。セパレータ14を形成する材料としては、例えば織布、不織布等を用いることもできるが、典型的には多孔性を有するシート状乃至フィルム状の樹脂が用いられる。このセパレータ14は、正極板12と負極板13とを隔離すると共に、正極板12と負極板13との間に電解液を保持する。
【0053】
このセパレータ14の主成分としては、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、塩素化ポリエチレン等のポリオレフィン誘導体、エチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレートや共重合ポリエステル等のポリエステルなどを採用することができる。中でも、セパレータ14の主成分としては、耐電解液性、耐久性及び溶着性に優れるポリエチレン及びポリプロピレンが好適に用いられる。
【0054】
セパレータ14は、両面又は片面(好ましくは正極板12に対向する面)に耐熱層を有することが好ましい。これにより、セパレータ14の熱による破損を防止して、正極板12と負極板13との短絡をより確実に防止することができる。
【0055】
セパレータ14の耐熱層又は対酸化層は、多数の無機粒子と、この無機粒子間を接続するバインダとを含む構成とすることができる。対酸化層は、耐熱層よりも薄いものであってもよい。耐酸化層は、高電圧環境下でセパレータを保護するが、セパレータに十分な耐熱性を与えないものであってもよい。
【0056】
無機粒子の主成分としては、例えばアルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、セリア、イットリア、酸化亜鉛、酸化鉄等の酸化物、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の窒化物、シリコンカーバイド、炭酸カルシウム、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、チタン酸カリウム、タルク、カオリンクレイ、カオリナイト、ハロイサイト、パイロフィライト、モンモリロナイト、セリサイト、マイカ、アメサイト、ベントナイト、アスベスト、ゼオライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウムなどが挙げられる。中でも、耐熱層の無機粒子の主成分としては、アルミナ、シリカ及びチタニアが特に好ましい。
【0057】
正極タブ15及び負極タブ16は、正極板12及び負極板13の正極集電体及び負極集電体を、活物質層が積層されている方形状の領域からそれぞれ帯状に突出するよう延長して形成することができる。
【0058】
正極タブ15と負極タブ16とは、積層電極体3の本体の一辺から積層方向視で互いに重ならないよう突出する。また、正極タブ15及び負極タブ16は、各正極板12及び負極板13から延び、それぞれ積層して1つに束ねられる。
【0059】
正極タブ15及び負極タブ16は、正極集電部材17及び負極集電部材18の正極外部端子4及び負極外部端子5への取り付け構造を避けて、正極集電部材17及び負極集電部材18の前壁9と略平行に延びる部分に接続することができる。このため、正極タブ15及び負極タブ16は、積層電極体3の正極外部端子4及び負極外部端子5の内側端部に正対しない領域から延び、先端部が前壁9と平行になるよう折り曲げられて正極集電部材17及び負極集電部材18に接続されるとよい。
【0060】
この正極外部端子4及び負極外部端子5は、外部から積層電極体3に電力を供給又は積層電極体3から外部に電力を取り出すための端子であり、外部の電気回路に接続可能に構成される。
【0061】
このため、正極外部端子4及び負極外部端子5は、導電性を有する材料から形成される。また、正極外部端子4及び負極外部端子5は、少なくともケース2内に露出する部分の材質が正極集電体、負極集電体と同種の金属とされることが好ましい。
【0062】
正極集電部材17及び負極集電部材18は、正極外部端子4及び負極外部端子5を前壁9に固定するための構造と、正極タブ15及び負極タブ16を正極外部端子4及び負極外部端子5に電気的に接続するための構造とを分離することにより、これらの構造が占有する空間の前壁9の厚さ方向の大きさを小さくする。これにより、ケース2の中での積層電極体3の本体の容積を大きくして、当該蓄電素子1のエネルギー密度を大きくすることができる。
【0063】
また、前壁9と平行に延びる板状の正極集電部材17及び負極集電部材18を用いることによって、正極タブ15及び負極タブ16との接続面積を大きくすることが容易であり、正極外部端子4及び負極外部端子5と正極タブ15及び負極タブ16との間の電気抵抗を小さくすることができる。
【0064】
正極集電部材17及び負極集電部材18の正極外部端子4及び負極外部端子5への取り付けは、例えば正極集電部材17及び負極集電部材18を貫通する正極外部端子4及び負極外部端子5の端部を押し広げるかしめ等によって、正極外部端子4及び負極外部端子5の前壁9への固定と兼ねて行うことができる。
【0065】
正極集電部材17及び負極集電部材18に対する正極タブ15及び負極タブ16の接続は、例えば超音波溶接、レーザー溶接、かしめ等によって行うことができる。
【0066】
正極集電部材17は、正極集電体と同種の金属から形成されることが好ましく、負極集電部材18は、負極集電体と同種の金属から形成されることが好ましい。
【0067】
積層電極体3と共にケース2に封入される電解液としては、蓄電素子に通常用いられる公知の電解液が使用でき、例えばエチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)等の環状カーボネート、又はジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等の鎖状カーボネートを含有する溶媒に、リチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF
6)等を溶解した溶液を用いることができる。
【0068】
破裂弁6は、一定の圧力で開口を形成する公知の構成のものを使用することができる。また、破裂弁6は、後壁10を構成する材料に溝を設けることによって一体に形成してもよく、予め溝を設けて破裂弁6を形成した板状体を後壁10に形成した開口に溶接して取り付けもよい。
【0069】
多孔性シート(クッションシート)21は、破裂弁6の開口時に積層電極体3の破片等が外部に噴出することを抑制する。また、多孔性シート21は、例えば当該蓄電素子1の落下時等に、後壁10から積層電極体3に作用する衝撃を緩和し、積層電極体3の損傷を防止する。
【0070】
多孔性シート21としては、クッション性を有すると共に、破裂弁6の開口時に例えば破断又は溶解してガスが破裂弁6から外部に流出するための流路を形成できるものが使用される。
【0071】
多孔性シート21としては、樹脂発泡体を用いることができる。
【0072】
多孔性シート21の材質としては、例えばエチレンプロピレンゴムを主成分とする樹脂等を用いることができる。
【0073】
多孔性シート21の平均厚さとしては、例えば0.5mm以上2.0mm以下とすることができる。これにより、積層電極体3に作用する力を分散して積層電極体3の内部短絡をより確実に防止することができる。
【0074】
多孔性シート21のアスカーC硬度としては、5以上40以下が好ましい。また、多孔性シート21の見掛密度としては、0.09g/cm
3以上0.18g/cm
3以下が好ましい。
【0075】
具体的には、このような多孔性シート21として、例えばイノアックコーポレーション社のゴムスポンジ「E4088」、「E4488」等を用いることができる。
【0076】
以上の構成を有する当該蓄電素子1は、正極外部端子4及び負極外部端子5が設けられる前壁9の面積が小さいため、正極集電部材17及び負極集電部材18を含む正極タブ15及び負極タブ16を正極外部端子4及び負極外部端子5に接続するための構造が占有するスペースが比較的小さい。
【0077】
また、当該蓄電素子1は、高さが制限される車両用の蓄電モジュールに用いられる場合、容量を大きくするには、前壁9の高さは大きくされず、底壁7、天壁8、及び一対の側壁11の長さ(前壁9と後壁10との間隔)が大きくされる。当該蓄電素子1は、その容量を大きくしても、積層電極体3の正極タブ15及び負極タブ16を正極外部端子4及び負極外部端子5に接続するための構造が占有するスペースが大きくならない。
【0078】
このように、当該蓄電素子1は、容量を大きくするほど内部の電気的接続のための構造が占有するスペースが相対的に小さくなるので、従来の構造に比してエネルギー密度をより大きくすることができる。つまり、当該蓄電素子1を用いることによって、大容量を確保しつつ、高さが限られた空間に設置することに適した蓄電モジュールを形成することができる。
【0079】
当該蓄電素子1は、正極外部端子4及び負極外部端子5が設けられる前壁9と対向する後壁10に破裂弁6を設けるため、正極外部端子4及び負極外部端子5が破裂弁6に干渉しない。このため、当該蓄電素子1は、破裂弁6の開口面積を大きくすることができる。この結果、当該蓄電素子1は、通常予見される使用形態ではない特異な状況においてケース2の内圧が一定の圧力に達したときに確実且つ迅速に破裂弁6が開口し、速やかに内圧を下げることができるので、エネルギー密度を大きくしても安全性を保つことができる。
【0080】
当該蓄電素子1は、破裂弁6が後壁10の中心から底壁7及び天壁8の対向方向にシフトした位置に設けられているので、後壁10が他の蓄電素子の後壁に対向するよう配置した場合に、当該蓄電素子1の破裂弁6が他の蓄電素子の破裂弁に対向しない。これによって、当該蓄電素子1の内圧だけが上昇してその破裂弁6が開放されたときに噴出するガスが衝突して他の蓄電素子の破裂弁を不必要に開放させたり、他の蓄電素子の内圧だけが上昇してその破裂弁が開放されたときに噴出するガスが衝突して当該蓄電素子1の破裂弁6を不必要に開放させたりすることを防止できる。
【0081】
つまり、当該蓄電素子1は、他の蓄電素子と破裂弁6の開放時にガスを噴出させる空間を共有することができるので、実質的に占有するスペースが小さく、ケース2ひいては積層電極体3の容積を大きくしてエネルギー密度を大きくすることができる。
【0082】
図5及び
図6に、本発明の別の態様に係る蓄電モジュールの一実施形態を示す。
【0083】
当該蓄電モジュールは、複数の蓄電素子と、この複数の蓄電素子を2列に並べて保持する保持部材31とを備える。
【0084】
当該蓄電モジュールの複数の蓄電素子は、前記実施形態に係る複数の第1の蓄電素子1と、第1の蓄電素子1とは、前壁9における正極外部端子4及び負極外部端子5の配置ひいては積層電極体3の配置が反対であり、且つ後壁10における破裂弁6のオフセット方向が上下反対に形成された複数の第2の蓄電素子1aとを含む。
【0085】
第2の蓄電素子1aの構成は、この上下関係の違いを除いて第1の蓄電素子1の構成と同様である。このため、同じ構成要素には同じ符号を付して重複する説明を省略する。又、第1の蓄電素子1aの底壁7と天壁8とを同じ構成とすれば、第1の蓄電素子1aの上下を逆転することで第2の蓄電素子1aとして使用することができる。
【0086】
当該蓄電モジュールは、複数の蓄電素子1,1aを電気的に接続するバスバー32をさらに備える。当該蓄電モジュールは、複数の蓄電素子1,1aを載置する設置面を形成する冷却部材33をさらに備えることが好ましい。
【0087】
保持部材31は、複数の蓄電素子1,1aを保持するフレームや箱体によって構成することができる。保持部材31は、隣接する蓄電素子1,1aの側壁11同士が密接するよう押圧する機構や、保持する複数の蓄電素子1,1aを冷却部材33に密接するよう押圧する機構を有してもよい。
【0088】
保持部材31は、各列内において第1の蓄電素子1と第2の蓄電素子1aとを交互に配置し、隣接する第1の蓄電素子1及び第2の蓄電素子1aが側壁11同士を対向させるよう、複数の蓄電素子1,1aを保持する。また、保持部材31は、列間で第1の蓄電素子1と第2の蓄電素子1aとが隣接し、後壁10同士を対向させるよう、第1の蓄電素子1,1a保持する。
【0089】
保持部材31は、列間で対向する第1の蓄電素子1の後壁10と第2の蓄電素子1aの後壁10との間に隙間を形成し、この隙間によりいずれかの破裂弁6が開放した場合に噴出するガスを当該蓄電モジュールの外部に放出する排気路を画定する。これにより、当該蓄電モジュールは、蓄電素子1,1aのいずれかの内圧が上昇して破裂弁が開放6した場合に、破裂弁6から噴出するガスを当該蓄電モジュールの外部にスムーズに排出して、蓄電素子1,1aの内圧を迅速に低下することができる。
【0090】
このために、保持部材31は、第1の蓄電素子1と第2の蓄電素子1aとの間に部分的に配置される突出部を有することが好ましい。代案として、当該蓄電モジュールは、保持部材31とは別に、列間で対向する蓄電素子1,1a間に配置されて排気路を画定するスペーサーをさらに備えてもよい。
【0091】
当該蓄電モジュールでは、列間で第1の蓄電素子1と第2の蓄電素子1aとが隣接するため、列間で対向する蓄電素子1,1aの破裂弁6の後壁10の中心からのシフト位置が互いに反対になっている。これにより、一方の破裂弁6が開放してガスを噴出した場合に、他方の破裂弁6にガスが衝突することが防止されるので、ガスの衝突によって不必要に破裂弁6が開放されることがない。従って、当該蓄電モジュールでは、蓄電素子1,1aの列間に形成される排気路の幅をガスを逃がすための必要最小限とすることができるので、エネルギー密度をより大きくすることができる。
【0092】
当該蓄電モジュールにおいて、第1の蓄電素子1の破裂弁6と第2の蓄電素子1aの破裂弁6とが、底壁7及び天壁8の対向方向にオーバーラップしていないことが好ましい。つまり、列間で隣接する蓄電素子1,1aの破裂弁6は、前壁9及び後壁10の対向方向から見て互いに重なり合わないことが好ましい。このような配置は、先に述べたように、破裂弁6が後壁10の底壁7側の半分の領域又は天壁8側の半分の領域内に全体が収まるよう配置されることで実現される。列間で隣接する蓄電素子1,1aの破裂弁6同士がオーバーラップしないことで、一方の破裂弁6が開放した場合に噴出物が他方の破裂弁6に衝突することをより確実に防止することができる。
【0093】
バスバー32は、蓄電素子1,1aの正極外部端子4と負極外部端子5とを接続し、蓄電素子1,1aを電気的に直列に接続する。
【0094】
このバスバー32は、例えば金属板等を用いて形成することができる。
【0095】
冷却部材33は、蓄電素子1,1aが載置される載置面を有し蓄電素子1,1aの底壁7に当接して底壁7から熱を奪う。この冷却部材33は、外形が板状で、内部に冷媒が挿通される流路を備える構成とすることができる。
【0096】
冷却部材33と蓄電素子1,1aの底壁7との間には、両者の間に微細な隙間ができることによる熱伝達効率の低下を防止するために、例えばエラストマー、高分子ゲル等からなる伝熱シートなどが配置されてもよい。
【0097】
また、当該蓄電モジュールは、底壁7に当接する冷却部材33を備えるため、蓄電素子1,1aを効率よく冷却することができるので、発熱を伴う比較的大きい入出力を許容することができる。
【0098】
[その他の実施形態]
前記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。従って、前記実施形態は、本明細書の記載及び技術常識に基づいて前記実施形態各部の構成要素の省略、置換又は追加が可能であり、それらは全て本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
【0099】
前壁には正極外部端子又は負極外部端子のみが設けられ、積層電極体の負極タブ又は正極タブが前壁に接続されていてもよい。この場合、ケースの電位が負極板又は正極板と等しくなり、ケースの外壁(典型的には前壁)が外部の回路に接続するための負極外部端子又は正極外部端子として利用される。
【0100】
集電部材を介してタブを外部端子に接続される構成に限定されず、積層電極体の正極タブ及び負極タブを正極外部端子及び負極外部端子に直接接続してもよい。
【0101】
ケースは、有底筒状のケース本体と蓋体とによって構成されるものに限定されない。例として、本発明に係る蓄電素子のケースは、底壁、天壁及び一対の側壁を形成する筒状体と、この筒状体の両端を封止して前壁及び底壁をそれぞれ形成する一対の蓋体とを有するものであってもよい。