特許第6850240号(P6850240)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6850240発電計画策定装置、発電計画策定方法、および発電計画策定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6850240
(24)【登録日】2021年3月9日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】発電計画策定装置、発電計画策定方法、および発電計画策定プログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/00 20060101AFI20210322BHJP
   G06Q 50/06 20120101ALI20210322BHJP
【FI】
   H02J3/00 170
   G06Q50/06
   H02J3/00 180
【請求項の数】13
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-208554(P2017-208554)
(22)【出願日】2017年10月27日
(65)【公開番号】特開2019-83601(P2019-83601A)
(43)【公開日】2019年5月30日
【審査請求日】2020年2月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(72)【発明者】
【氏名】村井 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】松本 隼
(72)【発明者】
【氏名】村田 仁
(72)【発明者】
【氏名】村山 大
【審査官】 田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−159239(JP,A)
【文献】 特開2016−184377(JP,A)
【文献】 特開2010−114968(JP,A)
【文献】 特開2017−187966(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0035495(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第106127311(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00
G06Q 50/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電機の特性に関する第1データと、前記発電機の燃料に関する第2データと、前記発電機の定検に関する第3データと、電力需要の予測結果を示す第4データと、電力市場価格の予測結果を示す第5データとを記憶する記憶部と、
前記第1から第5データに基づいて、前記発電機について発生するコストを算出する演算部と、
前記コストを出力する出力部とを備え、
前記演算部は、前記第1から第5データと、前記記憶部に記憶されている前記発電機についての定検計画とに基づいて、前記コストを算出する、または、前記第1から第5データに基づいて、前記定検計画と前記コストとを作成または算出する、
発電計画策定装置。
【請求項2】
前記演算部はさらに、前記第1から第5データに基づいて、前記発電機についての発電計画と、前記発電機から出力される電力についての市場取引計画とを作成し、
前記出力部はさらに、前記発電計画と前記市場取引計画とを出力し、
前記演算部はさらに、前記第1から第5データと前記定検計画とに基づいて、前記発電計画と前記市場取引計画とを作成する、または、前記第1から第5データに基づいて、前記発電計画、前記市場取引計画、および前記定検計画を作成する、
請求項1に記載の発電計画策定装置。
【請求項3】
前記演算部は、前記発電機について限界コスト、増分単価、または発電単価を算出し、前記限界コスト、前記増分単価、または前記発電単価に基づいて前記市場取引計画を作成する、請求項2に記載の発電計画策定装置。
【請求項4】
前記演算部は、前記発電計画と前記市場取引計画とを作成し、前記発電計画と前記市場取引計画とに基づいて前記コストを算出する、請求項2または3に記載の発電計画策定装置。
【請求項5】
前記演算部は、前記発電計画と前記市場取引計画とを作成し、前記市場取引計画に基づいて前記発電計画を修正し、修正された前記発電計画と前記市場取引計画とに基づいて前記コストを算出する、請求項4に記載の発電計画策定装置。
【請求項6】
前記演算部は、前記発電機の定検に関する制約を満たすように、前記コストを算出する、請求項1に記載の発電計画策定装置。
【請求項7】
前記制約は、前記発電機の定検要員に関する要員制約を含む、請求項6に記載の発電計画策定装置。
【請求項8】
前記出力部は、前記演算部が前記第1から第5データに基づいて前記定検計画と前記コストとを作成または算出した場合に、前記演算部により作成または算出された前記定検計画と前記コストとを出力する、請求項1、6、または7に記載の発電計画策定装置。
【請求項9】
前記演算部により算出される前記コストは、前記発電機の発電により発生する発電コストと、前記発電機の定検により発生する定検コストとを含む、請求項1から8のいずれか1項に記載の発電計画策定装置。
【請求項10】
前記演算部により算出される前記定検コストは、前記発電機の定検要員に要するコストを含む、請求項9に記載の発電計画策定装置。
【請求項11】
前記演算部により算出される前記コストは、前記発電機から出力される電力を市場取引により売るための売上コストと、前記発電機から出力される電力を代替する電力を市場取引により買うための購入コストとを含む、請求項1から10のいずれか1項に記載の発電計画策定装置。
【請求項12】
発電機の特性に関する第1データと、前記発電機の燃料に関する第2データと、前記発電機の定検に関する第3データと、電力需要の予測結果を示す第4データと、電力市場価格の予測結果を示す第5データとを記憶部から取得し、
前記第1から第5データに基づいて、前記発電機について発生するコストを演算部により算出し、
前記コストを出力部により出力する、
ことを有する発電計画策定方法であって、
前記演算部は、前記第1から第5データと、前記記憶部に記憶されている前記発電機についての定検計画とに基づいて、前記コストを算出する、または、前記第1から第5データに基づいて、前記定検計画と前記コストとを作成または算出する、
発電計画策定方法。
【請求項13】
発電機の特性に関する第1データと、前記発電機の燃料に関する第2データと、前記発電機の定検に関する第3データと、電力需要の予測結果を示す第4データと、電力市場価格の予測結果を示す第5データとを記憶部から取得し、
前記第1から第5データに基づいて、前記発電機について発生するコストを演算部により算出し、
前記コストを出力部により出力する、
ことを有する発電計画策定方法をコンピュータに実行させる発電計画策定プログラムであって、
前記演算部は、前記第1から第5データと、前記記憶部に記憶されている前記発電機についての定検計画とに基づいて、前記コストを算出する、または、前記第1から第5データに基づいて、前記定検計画と前記コストとを作成または算出する、
発電計画策定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、発電計画策定装置、発電計画策定方法、および発電計画策定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
発電計画策定装置は、発電機の起動時期や発電出力などを定める発電計画の策定用に用いられる装置である。発電計画策定装置の中には、発電機を定期的に検査するための定検計画の作成支援機能を有するものもあり、例えば、発電コストと定検コストがより小さくなるような定検計画の作成を支援する。この場合、発電計画策定装置は例えば、人が作成した定検計画に基づいて、発電コストがより小さくなる発電計画を作成し、これにより発電コストと定検コストとを算出する。その結果、人が発電コストと定検コストとを見ながら定検計画を修正することで、発電コストと定検コストがより小さくなる定検計画を作成することができる。
【0003】
このような発電計画策定装置としては、需要予測情報と、発電ユニット情報と、定検計画とに基づいて発電計画を作成し、これにより発電コストと定検コストとを算出するものが知られている。しかし、この発電計画策定装置においては、電力取引市場での電力取引が考慮されていないため、電力取引市場での電力取引が将来増加した場合に、発電コストの誤差が大きくなることが問題となる。
【0004】
また、別の発電計画策定装置としては、電力市場価格予想情報に基づいて、各定検計画で定められた発電停止期間の売上予想額を売電機会損失額として算出し、複数の定検計画の売電機会損失額を比較することで、好ましい定検計画を1つ以上選択するものが知られている。しかし、この発電計画策定装置においては、各定検計画の機会損失額を算出する際に、需要に対する発電コストが最小となる発電計画が考慮されておらず、発電機の定格出力をすべて電力取引市場で売ることを前提に機会損失額を評価している。そのため、算出する機会損失額と実際の損失額との差が大きくなることが問題となる。
【0005】
また、これらの発電計画策定装置においては、定検計画の修正は人が行っており、発電コストと定検コストがより小さくなる定検計画を作成するために人が試行錯誤する手間が発生する。そのため、この手間を低減することができれば好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−114968号公報
【特許文献2】特開2016−184377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の実施形態は、発電計画の策定時に、発電コストや定検コストを高精度に算出することが可能な発電計画策定装置、発電計画策定方法、および発電計画策定プログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一の実施形態によれば、発電計画策定装置は、発電機の特性に関する第1データと、前記発電機の燃料に関する第2データと、前記発電機の定検に関する第3データと、電力需要の予測結果を示す第4データと、電力市場価格の予測結果を示す第5データとを記憶する記憶部を備える。前記装置はさらに、前記第1から第5データに基づいて、前記発電機について発生するコストを算出する演算部を備える。前記装置はさらに、前記コストを出力する出力部を備える。前記演算部は、前記第1から第5データと、前記記憶部に記憶されている前記発電機についての定検計画とに基づいて、前記コストを算出する、または、前記第1から第5データに基づいて、前記定検計画と前記コストとを作成または算出する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態の発電計画策定装置の構成を示すブロック図である。
図2】第1実施形態の発電ユニット情報の一例を示す図である。
図3】第1実施形態の燃料情報の一例を示す図である。
図4】第1実施形態の定検情報の一例を示す図である。
図5】第1実施形態の需要予測情報の一例を示す図である。
図6】第1実施形態の電力市場価格予測情報の一例を示す図である。
図7】第1実施形態の定検計画の一例を示す図である。
図8】第1実施形態の発電計画の一例を示す図である。
図9】第1実施形態の市場取引計画の一例を示す図である。
図10】第1実施形態のコスト情報の一例を示す図である。
図11】第1実施形態の発電計画策定装置の動作例を示すフローチャートである。
図12】第1実施形態の発電単価と増分単価について説明するための図である。
図13】第1実施形態の経済負荷配分について説明するための図である。
図14】第1実施形態の市場取引計画作成処理について説明するための図である。
図15】第2実施形態の発電計画策定装置の構成を示すブロック図である。
図16】第2実施形態の発電計画策定装置の動作例を示すフローチャートである。
図17】第2実施形態の制約条件について説明するための図である。
図18】第2実施形態の要員制約について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。図1図18では、同一または類似の構成に同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の発電計画策定装置1の構成を示すブロック図である。図1は、発電計画策定装置1と、入力装置2と、出力装置3とを含む発電計画策定システムを示している。
【0012】
発電計画策定装置1は、発電計画の策定用に用いられる情報処理装置である。発電計画策定装置1は例えば、発電計画の策定用のコンピュータプログラムがインストールされているPC(Personal Computer)である。このコンピュータプログラムは、発電計画策定プログラムの一例である。本実施形態の発電計画策定装置1は、後述のように、定検計画の作成支援機能を有している。
【0013】
入力装置2は、ユーザの入力操作を受け付ける装置である。入力装置2は例えば、キーボードやマウスである。
【0014】
表示装置3は、ユーザに情報を表示する装置である。表示装置3は例えば、液晶ディスプレイである。
【0015】
発電計画策定装置1は、入力部11と、記憶部12と、演算部13と、出力部14とを備えている。
【0016】
入力部11は、入力装置2から入力されたデータを取得するブロックである。記憶部12は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等からなるメモリやストレージである。上述のコンピュータプログラムは、このストレージにインストールされている。
【0017】
演算部13は、マイクロプロセッサ等からなる演算装置であり、発電計画策定装置1の種々の動作を制御する。出力部14は、記憶部12に記憶されたデータを表示装置3に出力するブロックである。
【0018】
記憶部12は、第1データの一例である発電ユニット情報21と、第2データの一例である燃料情報22と、第3データの一例である定検情報23と、第4データの一例である需要予測情報24と、第5データの一例である電力市場価格予測情報25と、定検計画26と、発電計画27と、市場取引計画28と、コスト情報29とを記憶する。
【0019】
演算部13は、発電計画作成部31と、市場取引計画作成部32と、コスト算出部33とを備えている。
【0020】
発電ユニット情報21は、発電事業者が所有または運用する発電ユニット(発電機)の特性に関する情報である。
【0021】
図2は、第1実施形態の発電ユニット情報21の一例を示す図である。図2に示すように、本実施形態の発電ユニット情報21は、各発電ユニットの定格出力と、最低出力と、ヒートレート特性と、燃料種別とを含んでいる。ヒートレート特性は例えば、各発電ユニットのヒートレートカーブを2次曲線y=ax+bx+cで近似した場合における係数a、b、cである。なお、yはヒートレート(MJ/h)を表し、xは発電出力(MW)を表す。
【0022】
燃料情報22は、上記の発電ユニットで使用する燃料に関する情報である。
【0023】
図3は、第1実施形態の燃料情報22の一例を示す図である。図3に示すように、本実施形態の燃料情報22は、燃料種別ごとの単位と、単位発熱量と、年度ごとの発電量単価とを含んでいる。
【0024】
定検情報23は、上記の発電ユニットの定検に関する情報である。
【0025】
図4は、第1実施形態の定検情報23の一例を示す図である。図4に示すように、本実施形態の定検情報23は、定検間隔定義情報と、定検定義情報と、要員計画と、要員コストとを含んでいる。図4(a)に示す定検間隔定義情報は、定検種別ごとの定検間隔を含んでいる。図4(b)に示す定検定義情報は、発電ユニットごとおよび定検種別ごとの定検期間と、要員計画種別と、最終定検日時とを含んでいる。図4(c)に示す要員計画は、要員計画種別ごとに、作業種別と、各作業が定検期間の日ごとに要する人工とを含んでいる。図4(c)は、要員計画種別aの要員計画を示している。図4(d)に示す要員コストは、年度ごとおよび月ごとに、要員1人日にかかる費用を含んでいる。要員コストは、作業種別ごとに設定してもよい。
【0026】
需要予測情報24は、電力需要の予測結果を示す情報であり、例えば電気事業者が販売する電力の需要を予測した予測データである。
【0027】
図5は、第1実施形態の需要予測情報24の一例を示す図である。図5に示すように、本実施形態の需要予測情報24は、定検計画作成期間にわたる時刻ごとの電力需要の予測値を含んでいる。
【0028】
電力市場価格予測情報25は、電力市場価格の予測結果を示す情報であり、例えば日本卸電力取引所におけるスポット市場の価格予測に関する情報である。
【0029】
図6は、第1実施形態の電力市場価格予測情報25の一例を示す図である。図6に示すように、本実施形態の電力市場価格予測情報25は、定検計画作成期間にわたる時刻ごとの電力市場価格の予測値を含んでいる。
【0030】
定検計画26は、上記の発電ユニットの定検に関する実施計画である。
【0031】
図7は、第1実施形態の定検計画26の一例を示す図である。図7に示すように、本実施形態の定検計画26は、発電ユニットごとおよび定検種別ごとの定検開始時期と、定検終了時期とを含んでいる。
【0032】
発電計画27は、上記の発電ユニットの発電に関する計画であり、演算部13により出力される。
【0033】
図8は、第1実施形態の発電計画27の一例を示す図である。図8に示すように、本実施形態の発電計画27は、定検計画作成期間にわたる時刻ごとの各発電ユニットの出力を含んでいる。
【0034】
市場取引計画28は、上記の発電ユニットから出力される電力に関する市場取引の計画であり、演算部13により出力される。
【0035】
図9は、第1実施形態の市場取引計画28の一例を示す図である。図9に示すように、本実施形態の市場取引計画28は、定検計画作成期間にわたる時刻ごとの電力取引市場での売り電力量と買い電力量とを含んでいる。
【0036】
コスト情報29は、上記の発電ユニットについて発生するコストに関する情報であり、演算部13により出力される。
【0037】
図10は、第1実施形態のコスト情報29の一例を示す図である。本実施形態のコスト情報29は、定検計画作成期間にわたる時刻ごとの各発電ユニットの発電コストを含んでいる(図10(a))。また、本実施形態のコスト情報29は、定検計画作成期間にわたる月ごとの各発電ユニットの発電コストと、定検コストと、これらのコストの合計値とを含んでいる(図10(b))。
【0038】
演算部13は、発電ユニット情報21、燃料情報22、定検情報23、需要予測情報24、電力市場価格予測情報25、および定検計画26を記憶部12から読み込む。発電計画作成部31と、市場取引計画作成部32と、コスト算出部33は、読み込んだ発電ユニット情報21、燃料情報22、定検情報23、需要予測情報24、電力市場価格予測情報25、および定検計画26に基づいて、発電計画作成処理と、市場取引計画作成処理と、コスト算出処理とをそれぞれ行う。
【0039】
その結果、発電計画作成部31により発電計画27が作成され、記憶部12に保存される。また、市場取引計画作成部32により市場取引計画28が作成され、記憶部12に保存される。また、コスト算出処理部33により上記のコストが算出され、コスト情報29として記憶部12に保存される。出力部14は、記憶部12に保存された発電計画27、市場取引計画28、およびコスト情報29を表示装置3に出力し、発電計画策定装置1のユーザに提供する。
【0040】
図11は、第1実施形態の発電計画策定装置1の動作例を示すフローチャートである。具体的には、図11は、発電計画策定装置1により行われるコスト評価シミュレーション処理のフローを示している。以下、図11のフローを、図12図14も参照しつつ説明する。
【0041】
まず、演算部13は、発電ユニット情報21、燃料情報22、定検情報23、需要予測情報24、電力市場価格予測情報25、および定検計画26を記憶部12から読み込み、演算部13で使用するデータを用意する(ステップS1)。
【0042】
次に、発電計画作成部31は、読み込んだデータに基づいて、発電計画27を作成すると共に限界コストを算出する(ステップS2)。具体的には、発電計画作成部31は、発電ユニット情報21、燃料情報22、定検情報23、需要予測情報24、および定検計画26に基づいて、発電計画27を作成する。さらに、発電計画作成部31は、発電ユニット情報21、燃料情報22、定検情報23、需要予測情報24、および定検計画26に基づいて、限界コストを算出する。
【0043】
本実施形態の発電計画27は、例えば、優先順位法により決定された起動ユニットに対し、等ラムダ法による経済負荷配分を行うことにより決定される。具体的には、定格出力時の発電単価の小さい順に需要を賄える発電量を確保するように発電ユニットの起動停止を決定し、起動した発電ユニットの出力を、増分単価が等しく、かつ、需給バランスを満足するように設定する発電計画27が決定される。
【0044】
すなわち、以下の(1)式で表される各発電ユニットの定格出力時の発電単価の安い順に発電ユニットを起動する。さらに、以下の(2)式で表されるように、起動した発電ユニットの定格出力の合計が、各時刻における需要と必要予備力の合計を上回るように各発電ユニットの起動停止U(t)を決定する。
【数1】
【数2】
ただし、
max:発電ユニットiの定格出力
(P):発電ユニットiの発電出力Pにおける発電コスト
(F(P)=a+b+c
μmin:発電ユニットiの定格出力Pmaxでの発電単価
(t):時刻tにおける発電ユニットの起動停止を表す0−1変数
D(t):時刻tにおける需要予測値
R(t):時刻tにおける必要予備力
である。
【0045】
図12は、第1実施形態の発電単価と増分単価について説明するための図である。
【0046】
図12に示すように、発電ユニットの燃料費特性F(P)は、例えば発電出力Pの二次関数で表される。発電単価μ=F(P)/Pは、燃料費特性曲線上の1点と原点とを通る直線の傾きであり、一般に出力Pによって異なる。一般に、発電ユニットの発電単価は定格出力時に最も小さくなるため、コスト最小の発電計画27を得るために、定格出力時の発電単価μmin=F(Pmax)/Pmaxに基づきμminの小さい順に発電ユニットを起動する。
【0047】
また、図12に示すように、発電ユニットの増分単価λ=dF(P)/dPは、燃料費特性上の1点における接線の傾きである。例えば、F(P)が二次関数の場合には、λは発電出力Pの一次関数で表される。
【0048】
そして、各時刻における各発電ユニットの出力は、(3)式で表される等ラムダ則に従って、(4)式の需給バランス式と(5)式の出力上下限制約を満たすように決定される。
【数3】
【数4】
【数5】
ただし、
λ(t):時刻tにおける増分単価(変数)
(t):発電ユニットiの時刻tにおける発電出力(変数)
min:発電ユニットiの最低出力
である。
【0049】
このとき、各時刻における限界コストは、(3)〜(5)式を満たすλ(t)となる。
【0050】
図13は、第1実施形態の経済負荷配分について説明するための図であり、等ラムダ法による経済負荷配分の詳細を示している。
【0051】
図13は、G1、G2、G3の3つの発電ユニットの出力Pに対する増分コストを示している。ここでは、P1、P2、P3の合計がDとなるコスト最小の負荷配分を求める問題を考える。コスト最小の負荷配分では等ラムダ則が成り立つので、各発電ユニットの出力は、ある固定した増分コストλに対応する出力P1、P2、P3となる。
【0052】
そして、これらの合計がDとなるようにλを増減させ、収束計算によりP1+P2+P3=Dとなる負荷配分を求めることができる。また、図13において、(5)式の出力上下限制約は、増分コストの垂直方向の線分に対応し、λによらず発電出力が出力上下限制約範囲内の値になることを保証する。
【0053】
次に、市場取引計画作成部32は、記憶部12から読み込んだ電力市場価格予測情報25と、発電計画作成部31により算出された限界コストとに基づいて、市場取引計画28を作成する(ステップS3)。よって、市場取引計画28は、発電ユニット情報21、燃料情報22、定検情報23、需要予測情報24、電力市場価格予測情報25、および定検計画26に依存するものとなる。
【0054】
図14は、第1実施形態の市場取引計画作成処理について説明するための図である。
【0055】
図14に示すように、市場取引計画28は、電力市場価格予測値と、限界コストと、起動中の各発電ユニットの最大および最小出力と、電力需要値と、必要予備力とに基づいて、例えば以下の(6)式のように決定される。
【数6】
ただし、
xs(t)、Pxb(t):電力市場取引における売り電力、買い電力
(t):電力市場取引の価格予測値
Δu、Δd:電力市場取引における売買価格の判定閾値
xsmax、Pxbmax:電力市場取引における電力の売り上限値、買い上限値
(t):時刻tにおける必要下げ予備力
である。
【0056】
すなわち、各時刻において、電力市場取引価格予測値が、限界コスト+マージンを上回っている場合には、電力市場での売り取引を行う。逆に、各時刻において、電力市場取引価格予測値が、限界コスト−マージンを下回っている場合には、電力市場での買い取引を行う。売り取引の場合には、その取引量は、起動中の各発電ユニットの最大出力合計値から、需要予測値と必要上げ予備力を除いた値に、上限を設けたものである。買い取引の場合には、その取引量は、需要予測値と必要下げ予備力から、起動中の各発電ユニットの最大出力合計値を除いた値に、上限を設けたものである。
【0057】
図14は、電力市場価格予測値(以下「電力価格」と呼ぶ)と限界コストが時間と共に変動する様子を示している。限界コストは、需要があと1MW増えたらいくらのコストが掛かるかの値を示している。一般に、電力価格は、1年の中の季節の変化(夏と冬など)や、1日の中の時間帯の変化(昼と夜など)に応じて変化し、限界コストは、電力価格の影響を受けて変化する。よって、限界コストの変動周期は、電力価格の変動周期に一致することが多いが、電力価格の変動周期からずれることもある。例えば、朝における発電ユニットの立ち上げ時には、このようなずれが生じ得る。本実施形態では、電力価格や限界コストの変化を加味して市場取引計画28を決定する。
【0058】
なお、ここでは市場取引計画28を限界コストに基づいて決定したが、必ずしも限界コストに基づく必要はない。例えば、運転中の各発電ユニットの増分単価の最大値に基づいて市場取引計画28を決定してもよいし、運転中の各発電ユニットの発電単価の最大値に基づいて市場取引計画28を決定してもよい。
【0059】
次に、発電計画作成部31は、ステップS3で作成された市場取引計画28に基づいて需要予測値を修正し、次の(7)式の需要に対してステップS2と同様に発電計画27を作成する(ステップS4)。このようにして、発電計画27が市場取引計画28に基づいて修正される。よって、修正された発電計画27は、発電ユニット情報21、燃料情報22、定検情報23、需要予測情報24、電力市場価格予測情報25、および定検計画26に依存するものとなる。
【数7】
【0060】
そして、コスト算出部33は、記憶部12から読み込んだ定検情報23および定検計画26と、ステップS4で作成された発電計画27と、ステップS3で作成された市場取引計画28とに基づいて、定検コストと、発電コストと、市場取引コスト(市場取引損益)とを算出する(ステップS5)。よって、これらのコストは、発電ユニット情報21、燃料情報22、定検情報23、需要予測情報24、電力市場価格予測情報25、および定検計画26に依存するものとなる。
【0061】
ここで、定検コストは、発電事業者が所有または運用する発電ユニットの定検により発生するコストであり、以下の(8)式により算出される。発電コストは、上記の発電ユニットの発電により発生するコストであり、以下の(9)式により算出される。市場取引コストは、上記の発電ユニットから出力される電力を市場取引により売るための売上コストや、上記の発電ユニットから出力される電力を代替する電力を市場取引により買うための購入コストを含んでおり、以下の(10)式により算出される。本実施形態の市場取引コストは、市場取引による利益も含み得る概念である。
【数8】
【数9】
【数10】
ただし、
m:定検計画作成期間の開始年月からの経過月数
C(m):月mにおける要員単価
(m):発電ユニットiの月mにおける定検要員
である。
【0062】
最後に、演算部13は、発電計画作成部31により作成(修正)された発電計画27および限界コストと、市場取引計画作成部32により作成された市場取引計画28と、コスト算出部33により算出されたコスト情報29とを記憶部12に記憶し、出力部14は、記憶部12に記憶されたデータを表示装置3に出力する(ステップS6)。ここで、表示装置3に出力されるデータの一例は、図8に示す発電計画27と、図9に示す市場取引計画28と、図10に示すコスト情報29である。
【0063】
なお、出力部14は、記憶部12に記憶されたデータを、表示装置3以外の機器に出力してもよい。例えば、当該データを、発電計画策定装置1にネットワークを介して接続された情報処理装置に出力してもよい。この場合、この情報処理装置は、受信したデータを保存してもよいし、受信したデータを画面上に表示してもよい。
【0064】
以上のように、本実施形態の発電計画策定装置1は、電力市場取引を考慮して発電コストと定検コストとを評価する。これにより、発電計画27の策定時に、発電コストと定検コストとを高精度に算出することが可能となる。具体的には、電力取引市場での電力取引が増加した場合でも、発電コストの算出精度を高めることができ、よりコストの安い定検計画26の作成を支援することができる。その結果、ユーザは電力市場取引が考慮された発電コストと定検コストとを見ながら定検計画26を修正することで、発電コストと定検コストがより小さくなる定検計画26を作成することが可能となる。
【0065】
(第2実施形態)
図15は、第2実施形態の発電計画策定装置1の構成を示すブロック図である。図15は、図1と同様に、発電計画策定装置1と、入力装置2と、出力装置3とを含む発電計画策定システムを示している。
【0066】
第1実施形態の発電計画策定装置1は、定検計画26の作成支援機能を有しており、定検計画26を人が作成して発電計画策定装置1に入力することを想定している。一方、本実施形態の発電計画策定装置1は、定検計画26の作成機能を有しており、定検計画26を発電計画策定装置1が自動的に作成して出力する。
【0067】
具体的には、本実施形態の演算部13は、発電ユニット情報21、燃料情報22、定検情報23、需要予測情報24、および電力市場価格予測情報25を記憶部12から読み込む。本実施形態の演算部13は、計画作成・コスト算出部34を備えており、計画作成・コスト算出部34が、読み込んだ発電ユニット情報21、燃料情報22、定検情報23、需要予測情報24、および電力市場価格予測情報25に基づいて、発電計画作成処理と、市場取引計画作成処理と、コスト算出処理と、定検計画作成処理とを行う。
【0068】
その結果、計画作成・コスト算出部34により定検計画26、発電計画27、市場取引計画28、およびコスト情報29が作成または算出され、記憶部12に保存される。出力部14は、記憶部12に保存された定検計画26、発電計画27、市場取引計画28、およびコスト情報29を表示装置3に出力し、発電計画策定装置1のユーザに提供する。
【0069】
例えば、定検計画26は、図4(a)に示す定検間隔定義情報、図4(b)に示す定検定義情報、図4(c)に示す要員計画、図4(d)に示す要員コストなどを利用して作成され、具体的には、図4(b)に示す最終定検日時などを利用して作成される。定検計画26、発電計画27、市場取引計画28、およびコスト情報29の作成・算出の詳細は、図16のステップS12や(11)〜(20)式を参照して後述する。
【0070】
図16は、第2実施形態の発電計画策定装置1の動作例を示すフローチャートである。具体的には、図16は、発電計画策定装置1により行われる定検計画作成処理等のフローを示している。以下、図16のフローを、図17および図18も参照しつつ説明する。
【0071】
まず、演算部13は、発電ユニット情報21、燃料情報22、定検情報23、需要予測情報24、および電力市場価格予測情報25を記憶部12から読み込み、演算部13で使用するデータを用意する(ステップS11)。
【0072】
次に、計画作成・コスト算出部34は、読み込んだデータに基づいて、定検計画26、発電計画27、市場取引計画28、およびコスト情報29を作成または算出する(ステップS12)。
【0073】
具体的には、(11)式の目的関数の変数を、(5)式および(12)〜(20)式の制約条件下でより小さくなるように決定する。変数の決定は例えば、混合整数計画法などの数理計画法や、遺伝的アルゴリズムのようなメタヒューリスティクスの手法を用いて実行可能である。
【0074】
以下に、これらの目的関数および制約条件を示す。(11)〜(20)式中の記号の意味は、本文の末尾にまとめて示す。
【0075】
(11)式の目的関数は、定検コストと発電コストとの和から、電力市場取引による売上げを除いたものである。
【数11】
ただし、F(P(t),U(t))=a(t)+b(t)+c(t)である。
【0076】
定検期間に関する制約である定検期間制約を(12)式に示す。
【数12】
【0077】
連続定検に関する制約である連続定検制約を(13)式に示す。
【数13】
【0078】
図17は、第2実施形態の制約条件について説明するための図である。
【0079】
図17に示すように、ある定検計画作成期間の開始日より前の定検計画の開始日と終了日が既知であるとして、この定検計画作成期間の開始後の定検計画を作成する。定検状態Mi,k(d)は、定検中であるかどうかを示す0−1変数であり、定検中を1で示す。定検開始状態Si,k(d)は、定検の開始を示す0−1変数であり、定検開始日を1で示す。定検終了状態Ei,k(d)は、定検の終了を示す0−1変数であり、定検終了日(定検最終日の次の日)を1で示す。
【0080】
(12)式の定検期間制約は、前回の定検終了日から定検周期内に定検を実施しなければならない制約を表す。日にちdが定検終了日であれば、左辺はEi,k(d)=1であり、右辺は1以上でなければならない。すなわち、d日からd+CTi,k日までの間に定検開始Si,k(d’)=1が1回以上なければならない(図17の符号「1」に対応)。また、日にちdが定検終了日でなければ、左辺はEi,k(d)=0であり、右辺が0以上という条件は自動的に満たされ、制約条件として意味を持たない。
【0081】
(13)式の連続定検制約は、定検開始後のMTi,k日間は定検を実施しなければならない制約を示し、これは、日にちdが定検実施日であれば、日にちdからMTi,k日前までに定検を開始していなければならないことを意味する。このとき、左辺はMi,k(d)=1であり、右辺は1以上でなければならない。すなわち、d−MTi,k日からd日までの間に定検開始Si,k(d’)=1が1回以上なければならない(図17の符号「2」に対応)。また、日にちdが定検実施日でなければ、左辺はMi,k(d)=0であり、右辺が0以上という条件は自動的に満たされ、制約条件として意味を持たない(図17の符号「3」に対応)。
【0082】
定検開始終了日の間隔に関する制約を(14)式に示す。(14)式は、日にちdが定検終了日であれば、Ei,k(d)=1であり、日にちd−MTi,kが定検開始日であることを意味し、逆に、日にちdが定検終了日でなければ、日にちd−MTi,kは定検開始日ではないことを意味する。
【数14】
【0083】
定検実施変数間の制約を(15)式に示す。(15)式は、日にちdが定検開始日であれば、Mi,k(d−1)−Mi,k(d)=−1であり、Si,k(d)=1、Ei,k(d)=0である。日にちdが定検終了日であれば、Mi,k(d−1)−Mi,k(d)=1であり、Si,k(d)=0、Ei,k(d)=1である。日にちdが定検開始日でも定検終了日でもなければ、Mi,k(d−1)−Mi,k(d)=0、Si,k(d)=Ei,k(d)=0である。
【数15】
【0084】
定検要員に関する制約である要員制約を(16)式に示す。
【数16】
【0085】
図18は、第2実施形態の要員制約について説明するための図である。
【0086】
(16)式は、日にちdにおける全発電ユニットの全定検種別の要員合計が上限値W(d)を超えないことを示している。左辺では、d−MTi,k日以前に開始された定検は終了しているため、それよりも後の定検のみを考えればよい。また、左辺は、定検開始日Si,k(d’)=1のときのみ意味を持つ。そのときの要員は、図18に示すように、定検開始からΔd=d−d’日目の定検要員wi,k(d−d’)を必要とすることを意味する。
【0087】
定検時における発電ユニットの停止に関する制約を(17)式に示す。これは、定検時には発電ユニットが停止していなければならないことを意味する。
【数17】
【0088】
電力の需給バランスに関する需給バランス制約を(18)式に示す。これは、各時刻tにおいて、発電の合計が、取引を考慮した需要と一致しなければならないことを意味する。
【数18】
【0089】
予備力に関する制約である予備力制約を(19)式に示す。これは、各時刻tにおいて、起動中の発電ユニットの最大出力の合計が、取引を考慮した需要と必要予備力の合計以上でなければならないことを意味する。
【数19】
【0090】
市場取引電力の上下限制約を(20)式に示す。
【数20】
【0091】
なお、(11)〜(20)式中の変数の意味は、以下の通りである。
i,k(d):発電ユニットiの定検種別kの日にちdにおける定検状態{0,1}
i,k(d):発電ユニットiの定検種別kの日にちdにおける定検開始状態{0,1}
i,k(d):発電ユニットiの定検種別kの日にちdにおける定検終了状態{0,1}
【0092】
また、(11)〜(20)式中のパラメータの意味は、以下の通りである。
MTi,k:発電ユニットiの定検種別kの定検期間
CTi,k:発電ユニットiの定検種別kの定検周期
i,k(d):発電ユニットiの定検種別kが日にちdに開始した時の要員コスト合計
i,k(Δd):発電ユニットiの定検種別kの定検開始からΔd日目の必要要員(図4の要員計画に対応)
W(d):日にちdにおける総要員上限
T(d):日にちdに対応する時刻tの集合
【0093】
本実施形態の計画作成・コスト算出部34は、これらの式に基づいて、定検計画26、発電計画27、市場取引計画28、およびコスト情報29を作成または算出する。その結果、これらの式の制約を満たす定検計画26、発電計画27、市場取引計画28、およびコスト情報29が得られる。
【0094】
最後に、演算部13は、計画作成・コスト算出部34により作成または算出された定検計画26、発電計画27、市場取引計画28、およびコスト情報29を記憶部12に記憶し、出力部14は、記憶部12に記憶されたデータを表示装置3に出力する(ステップS13)。ここで、表示装置3に出力されるデータの一例は、図7に示す定検計画26と、図8に示す発電計画27と、図9に示す市場取引計画28と、図10に示すコスト情報29である。
【0095】
以上のように、本実施形態の発電計画策定装置1は、電力市場取引を考慮して発電コストと定検コストとを評価する。これにより、発電計画27の策定時に、発電コストと定検コストとを高精度に算出することが可能となる。
【0096】
また、本実施形態の発電計画策定装置1は、電力市場取引を考慮して、定検コストや発電コストがより小さくなるような定検計画26を、人手による試行錯誤なしに自動で作成する。これにより、人手による試行錯誤により定検計画26を作成する手間を低減することが可能となる。例えば、定検周期等の制約を守りながら、定検コストと発電コストの和が小さくなるような定検計画26を自動で作成することが可能となる。
【0097】
なお、第1および第2実施形態の発電計画策定装置1の処理は、例えば、記憶部12に格納された発電計画策定プログラムを演算部13により実行することで実現可能である。これらの実施形態では、発電計画策定プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を発電計画策定装置1に挿入して、記憶部12にこのプログラムをインストールしてもよい。また、発電計画策定プログラムをネットワーク上から発電計画策定装置1にダウンロードして、記憶部12にこのプログラムをインストールしてもよい。
【0098】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規な装置、方法、およびプログラムは、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明した装置、方法、およびプログラムの形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲およびこれに均等な範囲は、発明の範囲や要旨に含まれるこのような形態や変形例を含むように意図されている。
【符号の説明】
【0099】
1:発電計画策定装置、2:入力装置、3:表示装置、
11:入力部、12:記憶部、13:演算部、14:出力部、
21:発電ユニット情報、22:燃料情報、23:定検情報、
24:需要予測情報、25:電力市場価格予測情報、26:定検計画、
27:発電計画、28:市場取引計画、29:コスト情報、
31:発電計画作成部、32:市場取引計画作成部、
33:コスト算出部、34:計画作成・コスト算出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18