【実施例1】
【0011】
以下、
図1を参照して本実施例の装置が描画する仮想空間2の例を説明する。同図に示すように仮想空間2上には例えば、入場ゲート31、車路41、降車エリア51、車路42、駐車エリア52、車路43、一時待機エリア53、車路44、乗車エリア54、車路45、出場ゲート32、入庫車両61、出庫車両62、ドライバー(および同乗者)7などが設定され、描画される。同図に破線で第1〜第15のパラメータP
1〜P
15と関連する箇所を示した。以下、各エリアについて説明する。
【0012】
[入場ゲート31]
入場ゲート31は、駐車場の入場口として想定される仮想のエリアである。入場ゲート31には、第7のパラメータP
7(後述)に基づいて時刻毎に仮想の入庫車両61が発生する。
【0013】
[車路41]
車路41は、入場ゲート31と後述する降車エリア51とをつなぐ仮想の車路である。車路41の長さは第8のパラメータP
8に基づいて決定される。本実施例の装置のユーザは、実際の駐車場の設計図や計画図などを参照し、車路41に該当する経路を特定し、当該経路の長さを第8のパラメータP
8とし、予め設定すればよい。駐車場の広さや経路の長さを表す他のパラメータ(P
2,P
4,P
5,P
6,P
9,P
11,P
12,P
13)についても第8のパラメータP
8と同様、実際の駐車場の設計図や計画図などを参照することで予め設定可能である。
【0014】
[降車エリア51]
降車エリア51は、ドライバー(および同乗者)が車両から降車し、車両を駐車場に預けるエリアとして想定される仮想のエリアである。このエリア以降、車両は手動運転から自動運転に(あるいは有人自動運転から無人自動運転に)切り替わる。降車エリア51のキャパシティ(同時に入場可能な車両の台数)は第9のパラメータP
9に基づいて決定される。降車エリア51に入場した入庫車両61は、車両の平均停車時間を表す第10のパラメータP
10に基づいて一旦停車したあと、車路42に進む。
【0015】
降車エリア51における車両の停車時間とは、すなわちドライバー(および同乗者)が降車に要する時間と考えてよい。一般的には、同乗者が多い場合には降車に要する時間が増加する。また、車両から降ろす荷物が多いほど降車に要する時間が増加する。従って、第10のパラメータP
10は、その駐車場がどのような施設に付帯する駐車場であるかによって変動する。例えばその駐車場がショッピングモールや遊園地に付帯する駐車場であれば、他の駐車場と比較して同乗者が多くなる傾向があるため、第10のパラメータP
10を調整する必要が生じうる。また、その駐車場が空港に付帯する駐車場であるならば車両から降ろす荷物が多くなる傾向があるため、第10のパラメータP
10を調整する必要が生じうる。
【0016】
[車路42]
車路42は、降車エリア51と後述する駐車エリア52とをつなぐ仮想の車路である。車路42の長さは第11のパラメータP
11に基づいて決定される。
【0017】
[駐車エリア52]
駐車エリア52は、車両を駐車するエリアとして想定される仮想のエリアである。駐車エリア52には、時刻毎に発生した仮想の入庫車両61が、車路41、降車エリア51、車路42を経由して入場してくる。駐車エリア52内では、入庫車両61は、自動運転制御されているものとする。
【0018】
また駐車エリア52には、第1のパラメータP
1(後述)に基づいて時刻毎に仮想の出庫車両62が発生する。駐車エリア52には、各車室を想定した座標を設定してもよい。この場合、仮想の出庫車両62は、各車室を想定した座標のうち、何れかの座標にランダムに発生するようにしてもよい。
【0019】
また駐車エリア52には、そのキャパシティ(最大駐車台数)を示す第12のパラメータP
12が設定されていれば好適である。この場合、第12のパラメータP
12を超過しないという制約条件を加えたシミュレーションが実行される。この制約条件により、車路41、降車エリア51、車路42の混雑状況、空き状況のシミュレーション結果は影響を受ける。
【0020】
[車路43]
車路43は、駐車エリア52と後述する一時待機エリア53とをつなぐ仮想の車路である。車路43の長さは第6のパラメータP
6に基づいて決定される。
【0021】
[一時待機エリア53]
一時待機エリア53は、ドライバーへの引き渡しのタイミングが近づいた車両を一時的に待機させておくエリアとして想定される仮想のエリアである。一時待機エリア53は、後述する乗車場54の近傍に設けられることが好ましい。ドライバーへの引き渡しのタイミングは、例えば任意の場所からドライバーが携帯端末などで所定の出庫指定手続きまたは所定の出庫予約手続きを行った場合、あるいはドライバーが駐車場の受付または駐車場専用の端末装置に出向いて、所定の出庫指定手続きまたは所定の出庫予約手続きを行った場合に、これらの情報を基準として決定することができる。
【0022】
仮想空間2上では、前述の出庫車両62が発生した段階で、当該出庫車両62のドライバーが前述の手続きを行ったとみなすことができる。すなわち出庫車両62=ドライバーへの引き渡しのタイミングが近づいた車両と考えることができる。従って仮想空間2上の動作としては、駐車エリア52で発生した仮想の出庫車両62は、発生後すぐに一時待機エリア53に向かって自動運転を開始すればよいことになる。
【0023】
一時待機エリア53のキャパシティ(同時に入場可能な車両の台数)は第2のパラメータP
2に基づいて決定される。
【0024】
[車路44]
車路44は、一時待機エリア53と後述する乗車エリア54とをつなぐ仮想の車路である。車路44の長さは第4のパラメータP
4に基づいて決定される。
【0025】
[乗車エリア54]
乗車エリア54は、ドライバー(および同乗者)が自身の車両を受け取り、乗車するエリアとして想定される仮想のエリアである。乗車エリア54は、後述する出場ゲート32近傍に設けられることが好ましい。なお乗車エリア54のキャパシティ(同時に入場可能な車両の台数)は第5のパラメータP
5に基づいて決定される。
【0026】
仮想空間2上では、仮想のドライバー(および同乗者)7を描画してもよいし、描画しなくてもよい。仮想のドライバー(および同乗者)7は、出庫予約時刻に数分程度の正または負の遅延を加えた時刻に乗車エリア54に到着する。この遅延の大きさは、予め設定した第3のパラメータP
3に基づいて決定される。本シミュレーションでは、該当の出庫車両62の発生時刻と出庫予約時刻とを同時刻と考えてもよいし、該当の出庫車両62の発生時刻の数分後を出庫予約時刻と考えてもよい。
【0027】
なお第3のパラメータP
3とは別に、乗車エリア54における車両の平均停車時間(すなわち、ドライバーおよび同乗者が乗車に要する時間の平均)を表す第14のパラメータP
14を使用するのが好適である。この場合、ドライバー7が対応する出庫車両62に到達し、第14のパラメータP
14に基づく時間が経過したとき、乗車が完了したものとみなされる。以後の運転は自動運転から手動運転(あるいは無人自動運転から有人自動運転に)に切り替わる。なおドライバー(および同乗者)7の「遅延」という概念に、乗車エリア54到着から乗車までに要する時間を加えるのであれば、前述の第3のパラメータP
3と第14のパラメータP
14は統合可能である。
【0028】
ドライバー(および同乗者)7が出庫予約時刻よりも前に乗車エリア54に到着すると仮定した場合、または出庫予約時刻ぴったりに乗車エリア54に到着すると仮定した場合には、出庫車両62は多くの場合、滞りなく出場ゲート32に向かって流れていく。乗車エリア54での停車時間として考慮しなければならない時間が乗車に要する平均時間(前述のP
14)のみで済むからである。
【0029】
一方、ドライバー(および同乗者)が出庫予約時刻に遅れて乗車エリア54に到着すると仮定した場合、この遅れが大きくなるほど車路43、一時待機エリア53、車路44、乗車エリア54で混雑および渋滞が生じやすくなる。
【0030】
例えば本実施例の装置のユーザは、前述の第3のパラメータP
3に想定される遅延に基づく値を入力してシミュレーションを実行し、ドライバー(および同乗者)7の想定される遅延傾向に対する駐車場のキャパシティを測定してもよい。
【0031】
また本実施例の装置のユーザは、出庫予約時刻に遅刻した場合に追加料金が発生する(あるいは割増の駐車料金が発生する)などのペナルティを設けた場合のドライバー(および同乗者)7の挙動を事前に調査し、調査結果の平均値を第3のパラメータP
3として用いてもよい。
【0032】
[車路45]
車路45は、乗車エリア54と後述する出場ゲート32とをつなぐ仮想の車路である。車路45の長さは第13のパラメータP
13に基づいて決定される。
【0033】
[出場ゲート32]
出場ゲート32は、駐車場の出場口として想定される仮想のエリアである。出場ゲート32を通過した出庫車両62は、以降のシミュレーションに関係しないものとして消滅させてしまってもよい。また出場ゲート32における出庫車両62の一時停止時間を第15のパラメータP
15として、考慮してもよい。第15のパラメータP
15を決定するにあたり、ゲートの開閉に伴う一時停止、一般道への合流に伴う一時停止などを考慮する。
【0034】
[第1のパラメータP
1、第7のパラメータP
7]
以下、
図2を参照して第1のパラメータP
1、第7のパラメータP
7について説明する。
図2はある駐車場の平日における時刻毎の入庫台数(同図の白い棒グラフ)および、時刻毎の出庫台数(同図のハッチングを施した棒グラフ)を表したグラフである。同図からは、入庫台数は午前中に最も多くなり、その後徐々に減少していくのに対し、出庫台数は夕方以降に最も多くなることが分かる。同図に示す出庫台数の分布を前述の第1のパラメータP
1とし、同図に示す入庫台数の分布を前述の第7のパラメータP
7として用いることができる。
【0035】
第1、第7のパラメータP
1、P
7の値をそれぞれ1つのみ設定できる実装とした場合、本実施例の装置のユーザは、シミュレーション結果を得たい時刻の入庫台数および出庫台数をグラフから参照し、これを第1、第7のパラメータP
1、P
7の値とすればよい。
【0036】
第1、第7のパラメータP
1、P
7の値をそれぞれ時刻別に複数個設定できる実装とした場合、本実施例の装置のユーザは、同図の分布に示された値を全て入力し、駐車場の一日の様子を一気にシミュレーションしてもよい。
【0037】
入庫台数の分布、出庫台数の分布は、同じ施設であっても平日と休日で異なる分布パターンとなる可能性がある。また特異日(商業施設であれば、例えばイベント開催日やセール開催期間)には平日とも休日とも異なる分布パターンとなる可能性がある。本実施例の装置のユーザは、シミュレーションしたい日の特徴を踏まえて、入庫台数の分布、出庫台数の分布を事前の調査結果から選択すればよい。特異日の分布パターンを事前に調べていない場合には、例えば通常の休日(平日)の分布パターンに1以上の補正係数を乗じて簡易的に特異日の分布パターンを生成してもよい。
【0038】
[自動バレーパーキングシミュレーション装置1]
以下、
図3を参照して本実施例の自動バレーパーキングシミュレーション装置1の構成について説明する。
図1に示すように本実施例の自動バレーパーキングシミュレーション装置1は、パラメータ取得部10と、パラメータ記憶部10aと、出庫車両発生部11と、一時待機エリア制御部12と、乗車エリア制御部13と、第1車路シミュレーション部14と、第2車路シミュレーション部15と、入庫車両発生部16と、第3車路シミュレーション部17と、第4車路シミュレーション部18と、描画部19を含む。
【0039】
<出庫側のシミュレーション動作>
以下、
図4を参照して出庫側のシミュレーション動作について説明する。まずパラメータ取得部10aは、ユーザ入力から前述のパラメータ(P
1〜P
15)を取得する(S10)。取得されたパラメータ(P
1〜P
15)は、パラメータ記憶部10aに記憶される。出庫車両発生部11は、時刻毎の出庫台数を表す第1のパラメータP
1に基づいて、時刻毎に出庫車両62を駐車エリア52に発生させる(S11)。ステップS11において出庫車両発生部11は、第1のパラメータP
1を平均とし、任意の値を分散とする正規分布を生成し、当該正規分布を確率分布として一時間あたりの出庫車両発生数を決定し、ランダムに出庫車両62を発生させてもよい。あるいは出庫車両発生部11は第1のパラメータP
1を固定とし、一時間あたりの出庫車両発生数が第1のパラメータP
1と等しくなるという制約条件の下、ランダムに出庫車両62を発生させてもよい。
【0040】
一時待機エリア制御部12は、一時待機エリア53に同時に入場可能な車両の台数を表す第2のパラメータP
2に基づいて、出庫車両62を駐車エリア52から一時待機エリア53に移動させる(S12)。より具体的には、一時待機エリア制御部12は、第2のパラメータP
2から一時待機エリア53内の現在の収容台数を差し引き、その差分に該当する台数だけ、出庫車両62を一時待機エリア53に入場させる処理を繰り返す。なお、一時待機エリア53内での車両の追い越しを可能とし、順番の変更を認めることもできる。
【0041】
乗車エリア制御部13は、ドライバー(および同乗者)7の乗車エリア54到着までの平均遅延時間を表す第3のパラメータP
3に基づき、出庫車両62を一時待機エリア53から乗車エリア54に移動させる(S13)。ステップS13において乗車エリア制御部13は、第3のパラメータP
3を平均とし、任意の値を分散とする正規分布を生成し、当該正規分布を確率分布としてランダムに発生させた値を各ドライバー(および同乗者)7の遅延時間として用いてもよい。より具体的には、乗車エリア制御部13は、第3のパラメータP
3に基づいて発生(または到着)するドライバー(および同乗者)7と同数の出庫車両62を一時待機エリア53から乗車エリア54に移動させる処理を繰り返す。
【0042】
第1車路シミュレーション部14は、一時待機エリア53と乗車エリア54とをつなぐ車路44の長さを表す第4のパラメータP
4と、乗車エリア54に同時に入場可能な車両の台数を表す第5のパラメータP
5に基づいて、車路44の混雑状況または乗車エリア54の空き状況をシミュレーションする(S14)。混雑状況を表す指標として、例えば車路で44内で乗車エリア54の空き待ちをしている車両の台数、車路44に入ってきた車両が乗車エリア54に入場するまでの平均時間、車路で44内の車両の行列の長さなどが考えられる。シミュレーションには、従来の車両シミュレーション技術を利用することができる。詳細な説明については割愛するが、車両ミクロシミュレータの従来技術として、例えばVissim(非特許文献2)が知られている。
【0043】
第2車路シミュレーション部15は、駐車エリア52と一時待機エリア53とをつなぐ車路43の長さを表す第6のパラメータP
6に基づいて、車路43の混雑状況または一時待機エリア53の空き状況をシミュレーションする(S15)。描画部19は、シミュレーション結果を描画する(S19)。以上が出庫側のシミュレーション動作である。
【0044】
<入庫側のシミュレーション動作>
以下、
図5を参照して入庫側のシミュレーション動作について説明する。まずパラメータ取得部10は、ユーザ入力から前述のパラメータ(P
1〜P
15)を取得する(S10)。取得されたパラメータ(P
1〜P
15)は、パラメータ記憶部10aに記憶される。入庫車両発生部16は、時刻毎の入庫台数を表す第7のパラメータP
7に基づいて、時刻毎に入庫車両61を入場ゲート31に発生させる(S16)。ステップS16において入庫車両発生部16は、第7のパラメータP
7を平均とし、任意の値を分散とする正規分布を生成し、当該正規分布を確率分布として一時間あたりの入庫車両発生数を決定し、ランダムに入庫車両61を発生させてもよい。あるいは入庫車両発生部16は第7のパラメータP
7を固定とし、一時間あたりの入庫車両発生数が第7のパラメータP
7と等しくなるという制約条件の下、ランダムに入庫車両61を発生させてもよい。
【0045】
第3車路シミュレーション部17は、入場ゲート31と降車エリア51とをつなぐ車路41の長さを表す第8のパラメータP
8と、降車エリア51に同時に入場可能な車両の台数を表す第9のパラメータP
9と、降車エリア51における車両の平均停車時間を表す第10のパラメータP
10に基づいて、車路41の混雑状況または降車エリア51の空き状況をシミュレーションする(S17)。第4車路シミュレーション部18は、降車エリア51と駐車エリア52とをつなぐ車路42の長さを表す第11のパラメータP
11に基づいて、車路42の混雑状況をシミュレーションする(S18)。描画部19は、シミュレーション結果を描画する(S19)。以上が入庫側のシミュレーション動作である。
【0046】
<想定される駐車場の例におけるエリアおよびパラメータ>
図6は想定される駐車場の例を示す平面図(概略)である。自動バレーパーキングサービスを実施できる駐車場の設計例として、乗車エリアと降車エリアの何れにも利用可能なエリアを設け、このエリアの一部を乗車エリアに割り当て、残りを降車エリアに割り当て、割り当ての比率を時間帯に応じて変動させるという設計例がある。例えば同図には、降車エリアと乗車エリアの何れにも利用可能なエリア(全16レーン)があり、同図の例では降車エリア51として10レーン、乗車エリア54として6レーンが割り当てられている。同図の例においてシミュレーションをする場合には、常にP
5+P
9=16となる制約条件を加え、第5のパラメータP
5、第9のパラメータP
9を変動させればよい。第8のパラメータP
8については、入場ゲート31から降車エリア51内の各レーンまでの距離の平均値を用いればよい。第13のパラメータP
13についても同様に、乗車エリア54内の各レーンから出場ゲート32までの距離の平均値を用いればよい。
【0047】
また同図の駐車場は、車室が存在するエリアを駐車エリア52と一時待機エリア53に分割する運用となっている。同図の駐車場の車室は全部で120車室であるから、P
2+P
12=120となる制約条件を加えて、第2のパラメータP
2、第12のパラメータP
12を変動させればよい。第11のパラメータP
11については、降車エリア51内の各レーンから駐車エリア52内の各車室までの距離の平均値を用いればよい。第6のパラメータP
6については、駐車エリア52内の各車室から一時待機エリア53内の各車室までの距離の平均値を用いればよい。第4のパラメータP
4については、一時待機エリア53内の各車室から乗車エリア54内の各レーンまでの距離の平均値を用いればよい。
【0048】
予約出庫方式とする場合には、想定されるドライバー(および同乗者)の遅延時間を考慮し、第3のパラメータP
3に反映する。予約出庫方式とせず、ドライバー(および同乗者)が乗車エリアについたタイミングで該当車両の出庫を開始する場合には、P
3=0とすればよい。この場合、一時待機エリア53も不要となる可能性が高い。一時待機エリア53が不要な場合には、第2のパラメータP
2=0、第12のパラメータP
12=120と設定すればよい。この場合車路43に該当する経路が存在しなくなるため、第6のパラメータP
6=0とすればよい。
【0049】
上述の実施例では、第1〜第15のパラメータP
1〜P
15を開示した。本実施例の装置は、P
1〜P
15以外のパラメータを用いてもよい。例えば車路41、42、43、44、45の車線数(幅員)、制限速度、勾配、車種を設定するパラメータを導入してもよい。
また計算コストを削減するための補正係数をパラメータとして導入してもよい。この補正係数は、一日の需要台数および駐車場のキャパシティに乗算される係数である。例えば計算コスト削減のために一日の需要台数を補正係数0.75で補正する場合、駐車場のキャパシティについても補正係数0.75で補正すればよい。
【0050】
また、入場ゲート31、出場ゲート32、車路41〜44、駐車エリア52、一時待機エリア53は複数個設定できるようにしてもよい。大規模な駐車場では、入場ゲートや出場ゲートが複数存在し、駐車エリア52は複数階層、複数区画に渡っている場合も多く、車路41〜44に該当する経路も複数パターン考えられる場合があるからである。また場内の交通整理の必要性から、一時待機エリア53を複数の領域に分割することが好ましい場合もあるからである。また本装置によるシミュレーションは、駐車場の一部の領域(混雑や渋滞が起きやすそうな領域)のみを抜き出し、部分的に実行されてもよい。
【実施例2】
【0051】
以下、
図7を参照して、出庫車両の発生方法について、他のバリエーションを採用した実施例2の自動バレーパーキングシミュレーション装置8の構成について説明する。
図7に示すように本実施例の自動バレーパーキングシミュレーション装置8は、パラメータ取得部10と、パラメータ記憶部10aと、出庫車両発生部81と、一時待機エリア制御部12と、乗車エリア制御部13と、第1車路シミュレーション部14と、第2車路シミュレーション部15と、入庫車両発生部16と、第3車路シミュレーション部17と、第4車路シミュレーション部18と、描画部19を含み、出庫車両発生部81以外の構成は実施例1と同様である。
【0052】
本実施例では、実施例1で用いたパラメータに加え、駐車時間毎の出庫確率の確率分布を用いる。以下、
図8を参照して、駐車時間毎の出庫確率の確率分布について説明する。
【0053】
[駐車時間毎の出庫確率の確率分布]
駐車時間毎の出庫確率の確率分布は入庫時間帯に応じて異なる性質に変化する。確率分布の例を
図8に累積分布として示す。例えば、同図の累積分布の例では、早朝入庫(0時から5時59分59秒までに入庫、同図の二点鎖線で表すグラフ)の累積分布の上昇はなだらかになっており、駐車時間が長い傾向にある。早朝入庫の累積分布は、累積出庫確率が1に達するまでの駐車時間が20時間ほどとなっている。これは早朝の利用者は駐車場を出勤などに利用している可能性が高いこと、早朝から駐車する利用者に対し、駐車場側が割引料金を適用するなどの事情があるからである。
【0054】
同図の例では、入庫時間が遅くなるほど駐車時間は短くなる傾向がある。例えば、午前中入庫(6時から11時59分59秒までに入庫、同図の一点鎖線で表すグラフ)の累積分布は、累積出庫確率が1に達するまでの駐車時間が13時間ほどとなっている。同様に、午後入庫(正午から17時59分59秒までに入庫、同図の破線で表すグラフ)の累積分布は、累積出庫確率が1に達するまでの駐車時間が9時間ほどとなっている。また、夕方から夜の入庫(18時から23時59分59秒までに入庫、同図の実線で表すグラフ)の累積分布は、累積出庫確率が1に達するまでの駐車時間が4時間ほどとなっており、同図に示した4種類の累積分布の中で駐車時間が最も短くなっている。また、各累積分布の曲線の傾向も、入庫時間が早いものほど直線的な形状となり、入庫時間が遅いものほど対数関数のような形状となる。なお入庫時間帯は時間軸に沿って区別せずに,15分から30分程度の入庫時間帯ごとの駐車時間毎の出庫確率分布を算出し、傾向が類似した入庫時間帯を組み合わせても問題ない(例えば10時から10時30分と15時30分から16時の入庫時間帯の統合)。
【0055】
本実施例では、入庫時間帯に応じて異なる性質を有する駐車時間毎の出庫確率の確率分布を出庫車両の発生に用いる。具体的には、本実施例の出庫車両発生部81は、時刻毎の入庫台数を表す第7のパラメータP
7と、入庫時間帯に応じて異なる性質を有する駐車時間毎の出庫確率の確率分布に基づいて、時刻毎に出庫車両62を駐車エリア52に発生させる(S81)。具体的には、出庫車両発生部81は、ある時刻(時刻t1という)の第7のパラメータP
7と、対応する入庫時刻t1における出庫確率の確率分布との積を計算することにより、t1を基準とした駐車時間毎の出庫台数の期待値を計算し、当該計算処理を、時刻t2,…の第7のパラメータP
7に対しても同様に実行し、時刻t1,t2,…を基準とした駐車時間毎の出庫台数の期待値を、時刻を揃えて全て合計することで、各時刻の出庫車両62の台数の期待値を計算し、当該計算結果に基づいて、出庫車両62を駐車エリア52に発生させる。以下、ステップS12以降は実施例1と同様に実行される。
【0056】
<補記>
本発明の装置は、例えば単一のハードウェアエンティティとして、キーボードなどが接続可能な入力部、液晶ディスプレイなどが接続可能な出力部、ハードウェアエンティティの外部に通信可能な通信装置(例えば通信ケーブル)が接続可能な通信部、CPU(Central Processing Unit、キャッシュメモリやレジスタなどを備えていてもよい)、メモリであるRAMやROM、ハードディスクである外部記憶装置並びにこれらの入力部、出力部、通信部、CPU、RAM、ROM、外部記憶装置の間のデータのやり取りが可能なように接続するバスを有している。また必要に応じて、ハードウェアエンティティに、CD−ROMなどの記録媒体を読み書きできる装置(ドライブ)などを設けることとしてもよい。このようなハードウェア資源を備えた物理的実体としては、汎用コンピュータなどがある。
【0057】
ハードウェアエンティティの外部記憶装置には、上述の機能を実現するために必要となるプログラムおよびこのプログラムの処理において必要となるデータなどが記憶されている(外部記憶装置に限らず、例えばプログラムを読み出し専用記憶装置であるROMに記憶させておくこととしてもよい)。また、これらのプログラムの処理によって得られるデータなどは、RAMや外部記憶装置などに適宜に記憶される。
【0058】
ハードウェアエンティティでは、外部記憶装置(あるいはROMなど)に記憶された各プログラムとこの各プログラムの処理に必要なデータが必要に応じてメモリに読み込まれて、適宜にCPUで解釈実行・処理される。その結果、CPUが所定の機能(上記、…部、…手段などと表した各構成要件)を実現する。
【0059】
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。また、上記実施形態において説明した処理は、記載の順に従って時系列に実行されるのみならず、処理を実行する装置の処理能力あるいは必要に応じて並列的にあるいは個別に実行されるとしてもよい。
【0060】
既述のように、上記実施形態において説明したハードウェアエンティティ(本発明の装置)における処理機能をコンピュータによって実現する場合、ハードウェアエンティティが有すべき機能の処理内容はプログラムによって記述される。そして、このプログラムをコンピュータで実行することにより、上記ハードウェアエンティティにおける処理機能がコンピュータ上で実現される。
【0061】
この処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピュータで読み取り可能な記録媒体としては、例えば、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、半導体メモリ等どのようなものでもよい。具体的には、例えば、磁気記録装置として、ハードディスク装置、フレキシブルディスク、磁気テープ等を、光ディスクとして、DVD(Digital Versatile Disc)、DVD−RAM(Random Access Memory)、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、CD−R(Recordable)/RW(ReWritable)等を、光磁気記録媒体として、MO(Magneto-Optical disc)等を、半導体メモリとしてEEP−ROM(Electronically Erasable and Programmable-Read Only Memory)等を用いることができる。
【0062】
また、このプログラムの流通は、例えば、そのプログラムを記録したDVD、CD−ROM等の可搬型記録媒体を販売、譲渡、貸与等することによって行う。さらに、このプログラムをサーバコンピュータの記憶装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することにより、このプログラムを流通させる構成としてもよい。
【0063】
このようなプログラムを実行するコンピュータは、例えば、まず、可搬型記録媒体に記録されたプログラムもしくはサーバコンピュータから転送されたプログラムを、一旦、自己の記憶装置に格納する。そして、処理の実行時、このコンピュータは、自己の記録媒体に格納されたプログラムを読み取り、読み取ったプログラムに従った処理を実行する。また、このプログラムの別の実行形態として、コンピュータが可搬型記録媒体から直接プログラムを読み取り、そのプログラムに従った処理を実行することとしてもよく、さらに、このコンピュータにサーバコンピュータからプログラムが転送されるたびに、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行することとしてもよい。また、サーバコンピュータから、このコンピュータへのプログラムの転送は行わず、その実行指示と結果取得のみによって処理機能を実現する、いわゆるASP(Application Service Provider)型のサービスによって、上述の処理を実行する構成としてもよい。なお、本形態におけるプログラムには、電子計算機による処理の用に供する情報であってプログラムに準ずるもの(コンピュータに対する直接の指令ではないがコンピュータの処理を規定する性質を有するデータ等)を含むものとする。
【0064】
また、この形態では、コンピュータ上で所定のプログラムを実行させることにより、ハードウェアエンティティを構成することとしたが、これらの処理内容の少なくとも一部をハードウェア的に実現することとしてもよい。