(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6850250
(24)【登録日】2021年3月9日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】EGR付エンジン
(51)【国際特許分類】
F02M 26/41 20160101AFI20210322BHJP
F02M 26/11 20160101ALI20210322BHJP
F02M 26/32 20160101ALI20210322BHJP
F02F 1/36 20060101ALI20210322BHJP
F01P 3/02 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
F02M26/41 311
F02M26/41 321
F02M26/11 311
F02M26/32
F02F1/36 A
F01P3/02 G
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-253634(P2017-253634)
(22)【出願日】2017年12月28日
(65)【公開番号】特開2019-120147(P2019-120147A)
(43)【公開日】2019年7月22日
【審査請求日】2019年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】竹本 能和
(72)【発明者】
【氏名】後藤 英之
(72)【発明者】
【氏名】濱崎 貴人
(72)【発明者】
【氏名】長井 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】秋朝 智也
(72)【発明者】
【氏名】坂口 久美子
【審査官】
北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−224784(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/145163(WO,A1)
【文献】
欧州特許出願公開第02063097(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 26/41
F01P 3/02
F02F 1/36
F02M 26/11
F02M 26/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
EGRガスを吸気経路に導くためのEGRパイプをエンジンケースの内部を通して配管するとともに、前記EGRパイプにおける前記エンジンケース内部分は、前記エンジンケースの内部の冷却水路に臨む状態で設けられ、
前記エンジンケースに、前記冷却水路における前記EGRパイプの径外側部位に冷却水を導き案内するガイド部が設けられているEGR付エンジン。
【請求項2】
前記エンジンケースの端部であるケース端部が部分的に外方に膨出されており、前記ケース端部の外方への膨出部分に前記EGRパイプが通されている請求項1に記載のEGR付エンジン。
【請求項3】
前記冷却水路が、前記EGRパイプを囲繞する状態に形成されている請求項1又は2に記載のEGR付エンジン。
【請求項4】
前記EGRパイプはアルミ合金製のパイプである請求項1〜3の何れか一項に記載のEGR付エンジン。
【請求項5】
前記エンジンケースはシリンダヘッドである請求項1〜4の何れか一項に記載のEGR付エンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気再循環であるEGR(Exhaust Gas Recirculation)を備えたディーゼルエンジンなど、EGR付エンジンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
EGR付エンジンにおいては、排気ガス中の窒素酸化物の低減や部分負荷時の燃費向上のために、排気ガスの一部をEGRガスとして吸気マニホルドなどの吸気経路に戻して再度吸気させている。このEGR付エンジンとしては、特許文献1において開示されたものなどが知られている。
【0003】
従来のEGR付エンジンでは、EGRガスを流すEGRパイプを、エンジンケースにおけるシリンダヘッドの横外方を迂回させて吸気側に配管させる構造が採られていた。特許文献1のものでは、その
図3に示されるように、排気マニホルド(13)と吸気マニホルド(14)とを連通するEGRパイプ(15)は、シリンダヘッド(12)の横外方を通して迂回配管されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−190171号公報
【特許文献2】特開2010−236397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のEGR付エンジンは、高温になるEGRパイプがエンジンの横外方を通して配管されるため、エンジン全長が長くなる不利があった。EGRパイプは高温になるので、周囲に放熱用の隙間を確保することからも、寸法増が避けられない。また、エンジンレイアウトの都合により、EGRパイプはエンジンのフライホイール側の横外方に通されるため、冷却風による空冷作用を享受し難い不利もあった。
【0006】
とりわけ、特許文献2において開示されるエンジンのように、直列多気筒エンジンのフライホイール側の横外方にEGRパイプより嵩張るEGRクーラ(15)が配置されている構造では、前述の各不利がさらに顕著になるものであった。
【0007】
本発明の目的は、エンジンケースの構造やEGRパイプの取り直しなど総合的に見直して工夫することにより、EGRパイプが冷却され易く、かつ、エンジン長の増大も抑制可能となるように改善されたEGR付エンジンを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、EGR付エンジンにおいて、
EGRガスgを吸気経路5に導くためのEGRパイプ6をエンジンケースkの内部を通して配管するとともに、前記EGRパイプ6における前記エンジンケースk内部分は、前記エンジンケースkの内部の冷却水路wに臨む状態で設けられ
、
前記エンジンケースkに、前記冷却水路wにおける前記EGRパイプ6の径外側部位に冷却水を導き案内するガイド部16が設けられていることを特徴とする。
【0009】
第2の本発明は、本発明のEGR付エンジンにおいて、
前記エンジンケースkの端部であるケース端部2Aが部分的に外方に膨出されており、前記ケース端部2Aの外方への膨出部分7に前記EGRパイプ6が通されていることを特徴とする。
【0010】
第3の本発明は、本発明又は第2の本発明のEGR付エンジンにおいて、
前記冷却水路wが、前記EGRパイプ6を囲繞する状態に形成されていることを特徴とする。
【0011】
第4の本発明は、本発明〜第3の本発明のいずれかのEGR付エンジンにおいて、
前記EGRパイプ6はアルミ合金製のパイプであることを特徴とする。
【0012】
第5の本発明は、本発明〜第4の本発明のいずれかのEGR付エンジンにおいて、
前記エンジンケースkはシリンダヘッド2であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、EGRパイプをエンジンケース内部を通してあるので、外部に配管する場合に比べてエンジン長を短くすることができる。そして、EGRパイプはエンジンケース内の冷却水路に臨んでいるから、冷却水によるEGRパイプの冷却が可能となり、高温となるEGRパイプを既存の設備を用いて効率良く冷却できるようになる。
【0014】
その結果、エンジンケースの構造やEGRパイプの取り直しなど総合的に見直して工夫することにより、EGRパイプが冷却され易く、かつ、エンジン長の増大も抑制可能となるように改善されたEGR付エンジンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】EGRパイプ付近の構造を示すシリンダヘッド端部の横断断面図
【
図2】EGRパイプ付近の構造を示すシリンダヘッド端部の縦断断面図
【
図4】EGRパイプの各部を示し、(a)
図3の矢視Xによる正面図、(b)は
図3のY−Y線での断面図
【
図5】シリンダヘッド端部の断面構造を横方向から示す概略図
【
図6】EGRパイプを備えるシリンダヘッド端部を示す概略の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明によるEGR付エンジンの実施の形態を、産業用エンジンの場合について、図面を参照しながら説明する。なお、エンジンケースkとは、シリンダヘッド2やシリンダ部1Aなどを含む概念である。また、エンジンケースkの排気マニホルド4側を左、吸気マニホルド5側を右とする。
【0017】
図6に示されるように、立形の産業用エンジンEにおいて、シリンダブロック1の上部であるシリンダ部1Aの上にシリンダヘッド2が組付けられ、シリンダヘッド2の上にシリンダヘッドカバー3が組付けられている。シリンダヘッド2の左右の一端側には排気マニホルド4が組付けられ、他端側には吸気マニホルド5が組付けられている。
【0018】
この産業用エンジンEでは、排ガスの一部をEGRガスとして吸気経路に戻すEGR装置Aが装備されている。
図6に示されるように、EGR装置Aは、排気マニホルド4と吸気マニホルド5とを連通させる管路であるEGRパイプ6と、EGRパイプを冷却可能なEGR冷却機構rと、を有して構成されている。
【0019】
EGRパイプ6は、エンジンケースkの一例であるシリンダヘッド2の内部を通して配管されている。シリンダヘッド2の前後の端部であるケース端部2Aには、EGRパイプ6を内蔵するため、外方に膨らんだ膨出ケース部(膨出部分の一例)7が形成されている。なお、
図6において、4Aは、排気マニホルド4の一部であって排気マニホルド4をシリンダヘッド2にボルト止めするための取付ベースである。
【0020】
図1〜
図3に示されるように、EGRパイプ6は、本体パイプ6Aと、本体パイプ6Aに固着されている取付フランジ6Bとを有して構成されている。
本体パイプ6Aは、基本パイプ部8と、その基端側に形成される径が若干絞られた細径部9と、基本パイプ部8と細径部9との間に形成されるテーパ管部10とを備えている。基本パイプ部8は、その長手方向の両端部を除いた大部分が複雑な断面形状の異形管部8Aに形成されている。
【0021】
図3、
図4(a)に示されるように、異形管部8Aは、外周面を大きく凹ませてパイプ軸心P方向に延びる帯状の深溝部11が、周方向の複数個所(6箇所)に形成されて部分である。長さの長い深溝部11により、単純な円径のパイプに比べて、EGRパイプ6としての表面積を大きく増大させることができる。
深溝部11は、溝底面11aと、左右一対の溝側面11b、11bとを有しており、基本パイプ部8の径の約半分の径を持つ溝底面11aまで一定の溝幅dで凹まされている。
【0022】
図3、
図4(b)に示されるように、取付フランジ6Bは、6箇所の取付孔12a,12aを外周部に備える厚板製の本体フランジ12で形成されており、溶着などにより本体パイプ6Aの基本パイプ部8における開放側の端部に一体化されている。取付フランジ6Bは、
図3に示されるように、基本パイプ部8の端から若干内側に寄った箇所に取り付けられている。本体パイプ6A及び取付フランジ6Bは、比熱が小さく熱伝導性に優れて高強度のアルミ合金製が望ましいが、その他の金属製でもよい。アルミ合金製では、SUS材と同等の耐食性を有しながらSUS材よりも安価であるという利点もある。
【0023】
図1、
図2、
図5に示されるように、EGRパイプ6はシリンダヘッド2の膨出ケース部7の内部を通して配管されており、EGRパイプ6における膨出ケース部7内に収容されている殆どの部分は、シリンダヘッド2の内部の
路wに臨む状態で設けられている。なお、膨出ケース部7は、ケース端部2Aの下部(部分的の一例)に外方に半円弧状(
図5を参照)に膨出させることで形成されている。
【0024】
EGRパイプ6は、例えば、シリンダヘッド2の吸気マニホルド5側の側壁(右側壁)2Bに形成されている装着孔19より挿入されて、細径部9がシリンダヘッド2の排気マニホルド4側の側壁(左側壁)2Cに形成されている円孔であるガス取込口15に圧入又は密着内嵌され、かつ、取付フランジ6Bが2本のボルト(図示省略)によりシリンダヘッド2の吸気マニホルド側の側面2aに取り付けられている。この場合、装着孔19の径はガス取込口15の径より少し大きい。
【0025】
図1、
図2、
図5に示されるように、シリンダヘッド2内の冷却水路wは、シリンダヘッド2の下部に位置する下部水路w1、上部に位置する上部水路w2、及び端部に位置する端部水路w3を有するとともに、膨出ケース部7内におけるEGRパイプ6の外周側に形成される外周水路w4を有している。外周水路w4の存在により、冷却水路wはEGRパイプ6を囲繞する状態に形成されている。つまり、EGRパイプ6が冷却水路に臨む状態で設けられることでEGR冷却機構rが構成されている。
【0026】
図6に示されるように、EGR装置Aにより、燃焼室(図示省略)からの排気ガスGは、シリンダヘッド2の排気出口13から排気マニホルド4内に放出され、その一部がEGRガスgとなって出口孔14からシリンダヘッド2のガス取込口15(
図1,2を参照)に入り、それからEGRパイプ6を通って吸気マニホルド5内に還元される。EGRパイプ6のシリンダヘッド2内部分とは、
図1などからは、基本パイプ部8、テーパ管部10、及び細径部9の一部であるが、主に基本パイプ部8である。
【0027】
EGRパイプ6は膨出ケース部7に収容されているので、EGRパイプが別のものとしてシリンダヘッドの横外に配管されている従来のEGR装置に比べて、シリンダヘッド2の横外方への張出し量を軽減(抑制)させることができる。加えて、膨出ケース部7内にけるEGRパイプ6の張出し側の外周にも外周水路w4が存在しているので、
図1,5に示されるように、この外周水路w4、端部水路w3、下部水路w1を流れる冷却水20によって冷やされEGRクーラの機能を、効率よく発揮させることが可能になる。
【0028】
従って、シリンダヘッド2を少し膨らましてEGRパイプを内蔵させるという構造工夫によるEGR装置A及びEGR冷却機構rにより、既存の冷却水20を有効利用してEGRガスgを冷却しながらも、エンジンとしての横方向への嵩張りを低減できるEGR付エンジンEが実現できている。EGRパイプ6において効果的に冷却できるので、外付けEGRクーラ(図示省略)を不要にすることが可能となる利点もある。
【0029】
図1,2、及び
図5に示されるように、冷却水路wにおけるEGRパイプ6の径外側部位に冷却水20を導き案内するガイド部16(
図1,2では実線で、
図5では仮想線で示す)が設けられている構成とすれば好都合である。ガイド部16は、EGRパイプ6の下方において下部水路w1へ突出するように形成されるガイド本体17と、EGRパイプ6を半周で囲繞するように外周水路w4半分へ突出するように形成される周ガイド部18とを備えて構成されている。なおガイド部16はガイド本体17のみ有する構成でもよく、また、鋳抜きより形成されるものでもよい。
【0030】
ガイド部16を設けたことにより、冷却水路wを流れる冷却水20が外周水路w4に流れ込むことが促進されるようになり、殆どコストアップのない経済的な手段(ガイド部16)でありながら、冷却水によるEGRパイプ6(EGRガスg)の水冷作用を高めることができる利点がある。
【0031】
〔別実施形態〕
EGR付エンジンとしては、次の(1)〜
(4)のような構成を有するものでもよい。(1)EGRパイプ6は、深溝部11が無く、単純な円形や角形の断面を有する一般的なパイプでもよい。この場合、シリンダヘッド2のガス取込口15と装着孔19とを互いに同径とすることは可能である。
【0032】
(2)冷却水路wが接するEGRパイプ6の外周面は、その外周全部(360度)ではなく、3/4(270度)や半分(180度)など、部分的なものでもよく、冷却水路wに臨む状態であればよい。
【0033】
(3)EGRパイプ6は、シリンダ部1Aの上端部に内蔵される構成のEGR装置Aでもよい。この場合、EGRパイプ6は、シリンダ部1Aの冷却水路によって水冷作用を受ける構造になる。
【0034】
(4)吸気経路5は、吸気マニホルド5のほか、エアクリーナや過給器の吸気側など、種々の変更設定が可能であ
る。
【符号の説明】
【0035】
2 シリンダヘッド
2A ケース端部
6 EGRパイプ
7 膨出部分
16 ガイド部
g EGRガス
k エンジンケース
w 冷却水路