(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のEGR付エンジンは、高温になるEGRパイプがエンジンの横外方を通して配管されるため、エンジン全長が長くなる不利があった。EGRパイプは高温になるので、周囲に放熱用の隙間を確保することからも、寸法増が避けられない。また、エンジンレイアウトの都合により、EGRパイプはエンジンのフライホイール側の横外方に通されるため、冷却風による空冷作用を享受し難い不利もあった。
【0006】
とりわけ、特許文献2において開示されるエンジンのように、直列多気筒エンジンのフライホイール側の横外方にEGRパイプより嵩張るEGRクーラ(15)が配置されている構造では、前述の各不利がさらに顕著になるものであった。
【0007】
本発明の目的は、エンジンケースの構造やEGRパイプの取り直しなど総合的に見直して工夫することにより、EGRパイプが冷却され易く、かつ、エンジン長の増大も抑制可能となるように改善されたEGR付エンジンを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、EGR付エンジンにおいて、
EGRガスgを吸気経路5に導くためのEGRパイプ6が、エンジンケースk内の冷却水路w臨む状態で前記エンジンケースkを通して配管され、
前記EGRパイプ6内をEGRガスgが螺旋状に流れるように案内する旋回流機構Bが
、前記EGRパイプ6に設けられ
、
前記旋回流機構Bは、前記EGRパイプ6の始端側及び/又は終端側が扁平に潰されてなる潰し部23を設けるとともに、前記潰し部23における断面形状変化部24に通孔22を形成することにより構成されていることを特徴とする。
【0009】
第2の本発明は、本発明のEGR付エンジンにおいて、
前記エンジンケースkの端部であるケース端部2Aが部分的に外方に膨出されており、前記ケース端部2Aの外方への膨出部分7に前記EGRパイプ6が通されていることを特徴とする。
【0010】
第3の本発明は、
本発明及び第2の本発明のEGR付エンジンにおいて、
前記エンジンケースkはシリンダヘッド2であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、EGRパイプをエンジンケース内部を通してあるので、外部に配管する場合に比べてエンジン長を短くすることができる。そして、EGRパイプはエンジンケース内の冷却水路に臨んでいるから、冷却水によるEGRパイプの冷却が可能となり、高温となるEGRパイプを既存の設備を用いて効率良く冷却できるようになる。
【0012】
加えて、旋回流機構によってEGRパイプ内をEGRガスが螺旋状に流れるので、EGRガスのEGRパイプへの接触機会や接触時間が増え、冷却水によるEGRガスの水冷作用が強化されるようになる。より効率よく冷却することができる
【0013】
その結果、エンジンケースの構造やEGRパイプの取り直しなど総合的に見直して工夫することにより、EGRガスが効率よく冷却され、かつ、エンジン長の増大も抑制可能となるように改善されたEGR付エンジンを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明によるEGR付エンジンの実施の形態を、産業用エンジンの場合について、図面を参照しながら説明する。なお、エンジンケースkとは、シリンダヘッド2やシリンダ部1Aなどを含む概念である。また、エンジンケースkの排気マニホルド4側を左、吸気マニホルド5側を右とする。
【0016】
図6に示されるように、立形の産業用エンジンEにおいて、シリンダブロック1の上部であるシリンダ部1Aの上にシリンダヘッド2が組付けられ、シリンダヘッド2の上にシリンダヘッドカバー3が組付けられている。シリンダヘッド2の左右の一端側には排気マニホルド4が組付けられ、他端側には吸気マニホルド5が組付けられている。
【0017】
この産業用エンジンEでは、排ガスの一部をEGRガスとして吸気経路に戻すEGR装置Aが装備されている。
図6に示されるように、EGR装置Aは、排気マニホルド4と吸気マニホルド5とを連通させる管路であるEGRパイプ6と、EGRパイプを冷却可能なEGR冷却機構rと、を有して構成されている。
【0018】
EGRパイプ6は、エンジンケースkの一例であるシリンダヘッド2の内部を通して配管されている。シリンダヘッド2の前後の端部であるケース端部2Aには、EGRパイプ6を内蔵するため、外方に膨らんだ膨出ケース部(膨出部分の一例)7が形成されている。なお、
図6において、4Aは、排気マニホルド4の一部であって排気マニホルド4をシリンダヘッド2にボルト止めするための取付ベースである。
【0019】
図1〜
図3に示されるように、一例としてのEGRパイプ6は、本体パイプ6Aと、本体パイプ6Aに固着されている取付フランジ6Bとを有して構成されている。
本体パイプ6Aは、基本パイプ部8と、その基端側に形成される径が若干絞られた細径部9と、基本パイプ部8と細径部9との間に形成されるテーパ管部10とを備えている。基本パイプ部8は、その長手方向の両端部を除いた大部分が複雑な断面形状の異形管部8Aに形成されている。なお、EGRパイプ6が一般的なパイプで形成されてもよい。
【0020】
図3、
図4(a)に示されるように、異形管部8Aは、外周面を大きく凹ませてパイプ軸心P方向に延びる帯状の深溝部11が、周方向の複数個所(6箇所)に形成されて部分である。長さの長い深溝部11により、単純な円径のパイプに比べて、EGRパイプ6としての表面積を大きく増大させることができる。
深溝部11は、溝底面11aと、左右一対の溝側面11b、11bとを有しており、基本パイプ部8の径の約半分の径を持つ溝底面11aまで一定の溝幅dで凹まされている。
【0021】
図3、
図4(b)に示されるように、取付フランジ6Bは、6箇所の取付孔12a,12aを外周部に備える厚板製の本体フランジ12で形成されており、溶着などにより本体パイプ6Aの基本パイプ部8における開放側の端部に一体化されている。取付フランジ6Bは、
図3に示されるように、基本パイプ部8の端から若干内側に寄った箇所に取り付けられている。本体パイプ6A及び取付フランジ6Bは、比熱が小さく熱伝導性に優れて高強度のアルミ合金製が望ましいが、その他の金属製でもよい。アルミ合金製では、SUS材と同等の耐食性を有しながらSUS材よりも安価であるという利点もある。
【0022】
図1、
図2、
図5に示されるように、EGRパイプ6はシリンダヘッド2の膨出ケース部7の内部を通して配管されており、EGRパイプ6における膨出ケース部7内に収容されている殆どの部分は、シリンダヘッド2の内部の
路wに臨む状態で設けられている。なお、膨出ケース部7は、ケース端部2Aの下部(部分的の一例)に外方に半円弧状(
図5を参照)に膨出させることで形成されている。
【0023】
EGRパイプ6は、例えば、シリンダヘッド2の吸気マニホルド5側の側壁(右側壁)2Bに形成されている装着孔19より挿入されて、細径部9がシリンダヘッド2の排気マニホルド4側の側壁(左側壁)2Cに形成されている円孔であるガス取込口15に圧入又は密着内嵌され、かつ、取付フランジ6Bが2本のボルト(図示省略)によりシリンダヘッド2の吸気マニホルド側の側面2aに取り付けられている。この場合、装着孔19の径はガス取込口15の径より少し大きい。
【0024】
図1、
図2、
図5に示されるように、シリンダヘッド2内の冷却水路wは、シリンダヘッド2の下部に位置する下部水路w1、上部に位置する上部水路w2、及び端部に位置する端部水路w3を有するとともに、膨出ケース部7内におけるEGRパイプ6の外周側に形成される外周水路w4を有している。外周水路w4の存在により、冷却水路wはEGRパイプ6を囲繞する状態に形成されている。つまり、EGRパイプ6が冷却水路に臨む状態で設けられることでEGR冷却機構rが構成されている。
【0025】
図6に示されるように、EGR装置Aにより、燃焼室(図示省略)からの排気ガスGは、シリンダヘッド2の排気出口13から排気マニホルド4内に放出され、その一部がEGRガスgとなって出口孔14からシリンダヘッド2のガス取込口15(
図1,2を参照)に入り、それからEGRパイプ6を通って吸気マニホルド5内に還元される。EGRパイプ6のシリンダヘッド2内部分とは、
図1などからは、基本パイプ部8、テーパ管部10、及び細径部9の一部であるが、主に基本パイプ部8である。
【0026】
EGRパイプ6は膨出ケース部7に収容されているので、EGRパイプが別のものとしてシリンダヘッドの横外に配管されている従来のEGR装置に比べて、シリンダヘッド2の横外方への張出し量を軽減(抑制)させることができる。加えて、膨出ケース部7内にけるEGRパイプ6の張出し側の外周にも外周水路w4が存在しているので、
図1,5に示されるように、この外周水路w4、端部水路w3、下部水路w1を流れる冷却水20によって冷やされEGRクーラの機能を、効率よく発揮させることが可能になる。
【0027】
従って、シリンダヘッド2を少し膨らましてEGRパイプを内蔵させるという構造工夫によるEGR装置A及びEGR冷却機構rにより、既存の冷却水20を有効利用してEGRガスgを冷却しながらも、エンジンとしての横方向への嵩張りを低減できるEGR付エンジンEが実現できている。EGRパイプ6において効果的に冷却できるので、外付けEGRクーラ(図示省略)を不要に又は小型化することが可能となる利点もある。
【0028】
図1,2、及び
図5に示されるように、冷却水路wにおけるEGRパイプ6の径外側部位に冷却水20を導き案内するガイド部16(
図1,2では実線で、
図5では仮想線で示す)が設けられている構成とすれば好都合である。ガイド部16は、EGRパイプ6の下方において下部水路w1へ突出するように形成されるガイド本体17と、EGRパイプ6を半周で囲繞するように外周水路w4半分へ突出するように形成される周ガイド部18とを備えて構成されている。なおガイド部16はガイド本体17のみ有する構成でもよく、また、鋳抜きより形成されるものでもよい。
【0029】
ガイド部16を設けたことにより、冷却水路wを流れる冷却水20が外周水路w4に流れ込むことが促進されるようになり、殆どコストアップのない経済的な手段(ガイド部16)でありながら、冷却水によるEGRパイプ6(EGRガスg)の水冷作用を高めることができる利点がある。
【0030】
また、
図1に示されるように、シリンダブロック1の冷却水路(図示省略)からの冷却水は、左右の水路2L,2Rからシリンダヘッド2内の下部水路w1に送られてくる。従って、左の水路2Lと右の水路2Rの間に位置するガイド部16により、左右の水路2L,2Rからの冷却水が互いに衝突して干渉することなく円滑に外周水路w4へ分けて効率よく案内する、という好ましい作用効果も発揮される。
【0031】
〔旋回流機構について〕
本発明によるEGR付エンジンでは、EGRパイプ6内をEGRガスgが螺旋状に流れるように案内する旋回流機構Bが設けられている。以下に、種々の旋回流機構Bについて説明する。なお、EGRパイプ6としては、細径部9を有する段付パイプを用いてもよいし、径が一定な直管を用いてもよい。
なお、
図7〜
図10に示す各EGRパイプ6は、
図3などに示される「一例としてのEGRパイプ6」に代えて、必要に応じてガス取込口15と装着孔19とを互いに同径とするなどして、シリンダヘッド2に組み込むことができるものである。
【0032】
〔
参考実施形態1〕
図7(a),(b)に示されるように、旋回流機構BはEGRパイプ6に設けられており、詳しくは、EGRパイプ6の入口6aを、EGRパイプ6の軸心Pの径方向に偏らせることにより構成されている。
EGRパイプ6は、断面円形の本体パイプ6Aの入口側の開口が蓋板6Cで閉塞されるとともに、その蓋板6Cに、本体パイプ6Aの内径よりも小さい径の円孔でなる入口6aが開けられている。入口6aの中心6apとEGRパイプ6の軸心Pとは間隔aで位置ズレさせてあり、その結果、入口6aは軸心Pに対して偏心配置されている。
【0033】
この入口6aの偏心配置により、
図7(a)に示されるように、入口6aから入ったEGRガスgは、その本体パイプ6A内に侵入する時点で軸心Pに対して傾いた流れになり、その傾いた流れが本体パイプ6Aの内壁6nに沿って螺旋状に流れていくようになる。偏心配置の入口6aが案内なお、図示は省略するが、EGRパイプ6の出口6bを軸心Pに対して偏心させる構成でも良く、また、入口6aと出口6bとの双方を軸心Pに対して偏心させる構成でもよい。
【0034】
従って、この
参考実施形態1によるEGRパイプ6がシリンダヘッド2に装着された状態では、EGRガスgが本体パイプ6Aの内壁6n近くを螺旋状に流れて本体パイプ6Aへの接触機会が、EGRガスgが真っ直ぐ流れる場合に比べて増大するようになる。その結果、EGRパイプ6の周囲に存在する冷却水20による水冷作用が強化されるようになり、より効率よく冷却することができる利点がある。
【0035】
〔
参考実施形態2〕
図8(a),(b)に示されるように、旋回流機構Bは、EGRパイプ6の入口6a及び/又は出口6bをパイプ側壁に開けられた横向き孔(孔の一例)21で形成するとともに、横向き孔21が形成されている側のパイプ端を蓋板6Cで閉塞することにより構成されている。横向き孔21は、本体パイプ6Aの基端側端に、軸心Pに関して互いに点対象となる180度離れた位置に一対(2箇所)形成されている。
【0036】
図8(b)に示されるように、横向き孔21は、本体パイプ6Aの側壁を部分的に切り起してなる矩形孔(円孔や楕円孔などでもよい)であり、その切り起し片をパイプ内側曲げてなる案内壁25を有している。案内壁25の向きは、一対の案内壁25,25が互いに平行となる水平方向に曲げられているが、斜め上向きや斜め下向きでもよい。
【0037】
各横向き孔21,21から導入されてくるEGRガスg,gは、本体パイプ6A内に侵入する時点で互いに同方向で軸心Pに対して傾いた流れになり、その傾いた流れが本体パイプ6Aの内壁6nに沿って螺旋状に流れていくようになる。この
参考実施形態2の旋回流機構Bによる作用効果は、
参考実施形態1の旋回流機構Bの場合と同様に得られる。
【0038】
なお、
参考実施形態2の別構造として、
図10(b)に示されるように、本体パイプ6Aの始端又は終端に、小径の横向きパイプ26を取付けてその開口部を横向き孔21とした構成の旋回流機構Bでもよい。図示のように、軸心P周りで180度の間隔を空けて一対のパイプ製の横向き穴21,21を設ける構成とすれば、好都合である。その他の構成は、
図8に示されるものに準ずる。
【0039】
〔
実施形態〕
図9に示されるように、旋回流機構Bは、EGRパイプ6の始端側及び/又は終端側が扁平に潰されてなる潰し部23を設けるとともに、潰し部23における一対の断面形状変化部24,24に通孔22を形成することにより構成されている。潰し部23は、平らに潰れた扁平部23Aと、この扁平部23Aと円形の本体パイプ6Aとの間で形状が変化する箇所であり、一対の断面形状変化部24のそれぞれに円形の通孔(孔の一例)22が形成されている。
【0040】
断面形状変化部24は、EGRパイプ6の軸心Pに対して傾いた面となり、その傾斜面に開けられた通孔22からEGRガスgが侵入又は放出される際に旋回状の流れに変換されるようになる。EGRパイプ6の出口に通孔22が配置される場合は、出口で生じる螺旋流が時間の経過により次第に上流側に影響し、結果として、EGRパイプ6内においては、EGRガスgは旋回流になって流れる。この
実施形態の旋回流機構Bによる作用効果は、
参考実施形態1の旋回流機構Bの場合と同様に得られる。
【0041】
〔
参考実施形態3〕
図
10(a)に示されるように、旋回流機構Bは、EGRパイプ6をツイストパイプ製とすることにより構成されている。詳しくは、本体パイプ6Aがツイストパイプ27である。ツイストパイプ27の螺旋状の合せ箇所27aが案内作用を発揮して、パイプ内を流れるEGRガスgの流れが螺旋状の旋回流になる。
参考実施形態3の旋回流機構Bによる作用効果は、
参考実施形態1の旋回流機構Bの場合と同様に得られる。ツイストパイプはスパイラルパイプとも呼ばれる。
【0042】
〔
参考実施形態4〕
図11、図12に示されるように、旋回流機構Bは、EGRパイプ6の入口6a及び/又は出口6bをパイプ側壁に開けられた横向き孔21で形成し、横向き孔21が形成されている側のパイプ端を閉塞するとともに、シリンダケースkにおけるEGRガスgの導入孔又は導出孔28を、EGRパイプ6の軸心Pから横向き孔21の存在側にずらして形成することにより構成されている。導出孔28の軸心28aは、EGRパイプ6の軸心Pと同心ではなく、縦横の双方に離された位置に設けられている。つまり、シリンダヘッド2の導入孔28、つまりはエンジンケースk及びEGRパイプ6によりなる旋回流機構Bである。
【0043】
図
11,12においては、入口側に横向き孔21が形成され、シリンダヘッド2の入口側(排気マニホルド4の存在側)の導入孔28(
図1のガス取込口15に相当)は、EGRパイプ6の軸心Pから横へ(前へ)ずらして形成され、導入孔28に横向き孔21が臨む状態に構成されている。EGRパイプ6の入口側は蓋板6Cを設けて閉塞されているが、その他の手段(例:パイプ端の閉じ加工による一体のエンド壁)によるものでもよい。
参考実施形態4の旋回流機構Bによる作用効果も、
参考実施形態1の旋回流機構Bの場合と同様に得られる。