特許第6850253号(P6850253)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ メディチューナー アーベーの特許一覧

<>
  • 特許6850253-コンピュータ制御投与システム 図000002
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6850253
(24)【登録日】2021年3月9日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】コンピュータ制御投与システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 15/00 20060101AFI20210322BHJP
   A61B 5/083 20060101ALI20210322BHJP
   A61B 5/087 20060101ALI20210322BHJP
   A61B 5/091 20060101ALI20210322BHJP
   A61B 5/1455 20060101ALI20210322BHJP
   A61B 5/15 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   A61M15/00 Z
   A61B5/083
   A61B5/087
   A61B5/091
   A61B5/1455
   A61B5/15
【請求項の数】13
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-512052(P2017-512052)
(86)(22)【出願日】2014年9月16日
(65)【公表番号】特表2017-536141(P2017-536141A)
(43)【公表日】2017年12月7日
(86)【国際出願番号】EP2014069665
(87)【国際公開番号】WO2016041576
(87)【国際公開日】20160324
【審査請求日】2017年8月28日
【審判番号】不服2020-4018(P2020-4018/J1)
【審判請求日】2020年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】517065839
【氏名又は名称】メディチューナー アーベー
【氏名又は名称原語表記】MEDITUNER AB
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100192924
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 裕充
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリック リューンベルグ
【合議体】
【審判長】 高木 彰
【審判官】 宮崎 基樹
【審判官】 井上 哲男
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2005/087091(WO,A2)
【文献】 特開2005−196587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 15/00
A61B 5/00- 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物の投与分を送達するための携帯型のハンドヘルド型吸入器(10)に関しての投与量調整のためのコンピュータ制御投与システムであって、
少なくとも1つのパラメータ(24)を測定するための少なくとも1つの測定装置(20)と、
前記吸入器(10)とは別個のハンドヘルド型の携帯型コンピュータ(30)であって、該ハンドヘルド型の携帯型コンピュータ(30)は、前記少なくとも1つの測定装置(20)と、リモートメモリ(40)であって前記ハンドヘルド型の携帯型コンピュータ(30)のメモリ(36)内に格納するために前記リモートメモリ(40)の患者医療記録と情報(42)の送受信を行うリモートメモリと、電子的に通信するように構成されており、該ハンドヘルド型の携帯型コンピュータ(30)は前記ハンドヘルド型の携帯型コンピュータ(30)の前記メモリ(36)内に格納するために手動入力(50)を受信するように構成されている、ハンドヘルド型の携帯型コンピュータ(30)
とを備えるシステムであって、
前記ハンドヘルド型の携帯型コンピュータ(30)は、前記吸入器(10)によって使用される薬物と前記リモートメモリ(40)の前記患者医療記録からの前記情報(42)と前記手動入力(50)とに基づいて、薬物についての異なる投与量についての複数のレベル(321,322,323)を設定するデータセット(32)を作成するように構成されており、
前記ハンドヘルド型の携帯型コンピュータ(30)は、前記ハンドヘルド型の携帯型コンピュータ(30)の前記メモリ(36)内に前記データセット(32)を格納するようにさらに構成されており、
前記ハンドヘルド型の携帯型コンピュータ(30)は、前記少なくとも1つのパラメータ(24)と前記データセットの前記投与量についての前記複数のレベル(321,322,323)の内1つとに基づいて、前記吸入器(10)のための投与量調整を指示する指標(34)であって前記ハンドヘルド型の携帯型コンピュータ(30)のスクリーン(38)上のテキスト及び/又はグラフィックメッセージである指標(34)を生成するようにさらに構成されているのであって、前記指標(34)は前記データセット(32)の前記投与量についての前記複数のレベル(321,322,323)の内1つを前記吸入器(10)の前記投与量調整として指示する、
ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記コンピュータ(30)は自動入力(60)を受信するようにさらに構成されており、前記指標(34)を生成するための構成は前記自動入力(60)にさらに基づく、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記測定装置(20)は、肺活量計、加速度計、パルスオキシメータ、インパルスオシロメータ(IOS、impulse oscillometer)、血液採取装置、肺流量計、最大呼気流量計、炎症マーカをサンプリングする装置及び/又は吐き出された空気からの炎症マーカをサンプリングする装置からなる群の要素の1つ以上である、請求項1乃至のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項4】
前記指標(34)は下記の調整の1つによって行われる投与量調整であるか又は下記の調整の1つ以上の組み合わせによって行われる投与量調整である、請求項1乃至のいずれか1つに記載のシステム:
各吸入行為において送達される薬物の量を調整すること、
吸入行為の頻度を調整すること、
吸入行為の回数を調整すること、及び
さらなる薬物を追加することによって調整すること。
【請求項5】
前記コンピュータ(30)は携帯電話であり、前記コンピュータ(30)の構成は前記携帯電話のアプリケーション又はインターネットクラウド内のアプリケーションとしてもたらされる、請求項1乃至のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項6】
請求項2に記載のシステムであって、前記自動入力(60)は下記の群の要素の1つ以上である、システム:花粉レベル、大気汚染、気象条件、生物学的パラメータ、花粉インデックス、肺容量、肺への空気の出入り、血液サンプル、血糖値、体重、体表面積、環境的条件、湿度、気圧、海抜、GPS位置、最近の又は将来のユーザ活動、栄養摂取、又は、ユーザデータ。
【請求項7】
前記システムは投与分をいつ服用すべきかを伝達する注意喚起システムをさらに備える請求項1乃至のいずれか1つに記載のシステムであって、前記伝達は電話、携帯電話、スマートフォン、sms、又は電子メールを介して行われる、システム。
【請求項8】
請求項1乃至のいずれか1つに記載のシステムであって、前記パラメータは前記ユーザによって前記システムに手動で追加されるのであり、並びに/又は、前記システムはユーザの電子手帳から情報及び/若しくはパラメータを収集するように構成されており、前記ユーザの電子手帳からの情報は、ジムへの立ち寄り、エクササイズ、及び位置からなる群の要素の1つ以上に関しての過去、現在、及び将来の情報を含む、システム。
【請求項9】
前記少なくとも1つの測定装置(20)はユーザの気道からの呼気一酸化窒素濃度(FeNO、fraction of exhaled Nitric Oxide)を含む炎症マーカを測定するように構成されており、前記システムは該測定値を前記吸入器の前記投与量を調整するための前記パラメータとして用いるように構成されている、請求項1乃至のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項10】
前記コンピュータはユーザの状態に関するレポート又はログされた情報を前記少なくとも1つの測定されたパラメータに基づいて提供するようにさらに構成されている、請求項1乃至のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項11】
前記吸入器(10)は糖尿病の治療のためにインスリン投与分を提供するように構成されている、請求項1乃至10のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項12】
前記吸入器(10)は、粉体投与分計量吸入器、エアロゾル型吸入器、ネブライザ型吸入器、又は、任意の種類の投与分送達器具である、請求項1乃至11のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項13】
前記コンピュータ(30)は、投与量が危険な投与量又は効果的でない投与量に調整されないようにして不十分投薬又は過剰投薬を回避する目的で投与量を制限するようにさらに構成されている、請求項1乃至12のいずれか1つに記載のシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、投与装置に関する。より具体的には、本願は、薬学的化合物を投薬するためのコンピュータ制御投与システム及び同目的のための投与レジームに関する。投与装置は、吸入器であることができる。
【背景技術】
【0002】
近年においては吸入器に注目が集まっている。吸入器は通常、医師によって処方された態様で、患者によって使用される。日常生活においてはこの手法が満足のいく結果をもたらすものの、その都度に吸入投与量を調整することが望ましい。特定の条件下では、より高い投与量が望ましいものとなり得る。他の条件下では、より低い投与量が望ましいものとなり得る。患者の現在状況又は変化に従って吸入すべき投与量をどのように調整するかが課題となる。患者の環境に従って吸入投与量をどのように調整するかが課題となる。
【0003】
吸入器とは、固定された投与量の薬物を送達する装置である。必要に応じて投与量を調整することが課題となる。例えば、いつ投与量を調整すべきかは一般的な患者には分からない。投与量の調整を正当化するのがどのような条件であり、また、調整量がどの程度であるかは患者には分からない。どの程度投与量を増減させて調整すべきかは、一般的な患者には分からない。患者は、より多くの回数の吸入行為又はより少ない回数の吸入行為を行うことができるものの、投与量の調整値を患者は知らない。薬剤が過多に使用されないようにしつつ、他方で薬剤が過少に使用されないようにするために投与量を調整することが課題となる。多すぎる薬剤(過剰投薬)は長期的に良くなく、また、少なすぎる薬剤(不十分投薬)は患者に対して治療効果をもたらすには十分たり得ない。
【0004】
市場投入されている既存の吸入器の存在及びこれらの吸入器に適合可能なシステムを提供したいとの要求が、技術的な制約として挙げられる。さらに、薬物投与システムに関しての既に構築されているシステム及び国内法及び規制規則が、達成し得る事項に限定を付している。エビデンスに基づいた診療を向上させるためには、国家の衛生福祉局等に次の問題を検討させることも望ましい:詳細な経過観察及び規則的な症状監視、肺機能の規則的な測定、医療スタッフ及び患者に対しての強化した教育、及び全患者に対しての個別化した治療計画の提供。より多くの患者が推奨事項に基づく個別化治療計画を享受できるようにするためにこのことを如何に自動化するかが課題であり、加えて、彼等がこれを必要とする時にこれを身辺に置くことができるようにこれを如何にして提供するかも課題である。推奨される肺機能の規則的な測定は、多くの時間を要しまた費用が高くつく。なぜならば、該測定は訓練された看護師によってクリニックにて投薬の前後において複数回実行されることを要し、また、その結果が事後的に医師によって解釈されることを要するからである。
【0005】
本発明は、上述の1以上の課題を克服することに向けられている。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的としては、コンピュータ制御投与システムを提供することが挙げられる。この目的は、独立請求項によって規定される特徴によって達成されることができる。さらなる強化は、従属請求項によって特徴付けられる。
【0007】
本発明の目的としては、コンピュータ制御投与システムのための投与レジームを提供することが挙げられる。この目的は、独立請求項の特徴によって達成されることができる。さらなる強化は、従属請求項によって特徴付けられる。
【0008】
1つの実施形態によれば、薬物の投与分を送達するための携帯型のハンドヘルド型吸入器に関しての投与量調整のためのコンピュータ制御投与システムが提供される。システムは、少なくとも1つのパラメータを測定するための少なくとも1つの測定装置と、吸入器とは別個のハンドヘルド型の携帯型コンピュータとを備えるのであり、該コンピュータは少なくとも1つの測定装置とリモートメモリであってコンピュータのメモリ内に格納するためにリモートメモリの患者医療記録と情報の送受信を行うリモートメモリと通信するように構成されており、該コンピュータはコンピュータのメモリ内に格納するために手動入力を受信するように構成されている。該コンピュータは、吸入器によって使用される薬物とリモートメモリの患者医療記録からの情報と手動入力とに基づいて、薬物についての異なる投与量についての複数のレベルを設定するためのデータセットを作成するように構成されており、該コンピュータは、コンピュータのメモリ内にデータセットを格納するようにさらに構成されている。該コンピュータは、少なくとも1つのパラメータとデータセットの投与量についての複数のレベルの内1つとに基づいて、吸入器のための投与量調整を指示する指標を生成するようにさらに構成されているのであって、指標はデータセットの投与量についての複数のレベルの内1つを吸入器の投与量調整として指示する。
【0009】
1つの実施形態によれば、コンピュータは自動入力を受信するようにさらに構成されており、指標を生成するための構成は自動入力にさらに基づくことができる。自動入力は、次の群の要素の1つ以上であることができる:花粉レベル、大気汚染、気象条件、生物学的パラメータ、花粉インデックス、肺容量、肺への空気の出入り、血液サンプル、血糖値、体重、体表面積、環境的条件、湿度、気圧、海抜、GPS位置、最近の又は将来のユーザ活動、栄養摂取、又は、ユーザデータ。
【0010】
1つの実施形態によれば、測定装置は次の群の要素の1つ以上であることができる:肺活量計、加速度計、パルスオキシメータ、インパルスオシロメータ(IOS、impulse oscillometer)、血液採取装置、肺流量計、最大呼気流量計、炎症マーカをサンプリングする装置及び/又は吐き出された空気からの炎症マーカをサンプリングする装置。
【0011】
1つの実施形態によれば、指標はコンピュータのスクリーン上のテキスト及び/又はグラフィックメッセージとすることができる。指標は、下記の調整の1つによって行われる投与量調整であるか又は下記の調整の1つ以上の組み合わせによって行われる投与量調整であることができる:各吸入行為において送達される薬物の量を調整すること、吸入行為の頻度を調整すること、吸入行為の回数を調整すること、及び、さらなる薬物を追加することによって調整すること。
【0012】
コンピュータは携帯電話であり、コンピュータの構成は携帯電話のアプリケーション又はインターネットクラウド内のアプリケーションとしてもたらされる。
【0013】
1つの実施形態によれば、システムは投与分をいつ服用すべきかを伝達する注意喚起システムをさらに備えるのであって、好適には伝達は電話、携帯電話、スマートフォン、sms、又は電子メールを介して行われる。
【0014】
1つの実施形態によれば、パラメータはユーザによってシステムに手動で追加されるのであり、並びに/又は、システムはユーザの電子手帳から情報及び/若しくはパラメータを収集するように構成されており、ユーザの電子手帳からの情報は、ジムへの立ち寄り、エクササイズ、及び位置からなる群の要素の1つ以上に関しての過去、現在、及び将来の情報を含む。
【0015】
1つの実施形態によれば、少なくとも1つの測定装置はユーザの気道からの炎症マーカ、好適には呼気一酸化窒素濃度(FeNO、fraction of exhaled Nitric Oxide)、を測定するように構成されており、システムは該測定値を吸入器の投与量を調整するためのパラメータとして用いるように構成されている。
【0016】
1つの実施形態によれば、コンピュータはユーザの状態に関するレポート又はログされた情報を、投与量を調整するために少なくとも1つの測定されたパラメータに基づいて提供するようにさらに構成されている。
【0017】
1つの実施形態によれば、吸入器は糖尿病の治療のためにインスリン投与分を提供するように構成されている。
【0018】
1つの実施形態によれば、吸入器は、粉体投与分計量吸入器、エアロゾル型吸入器、ネブライザ型吸入器、又は、任意の種類の投与分送達器具である。
【0019】
1つの実施形態によれば、コンピュータは、投与量が危険な投与量又は効果的でない投与量に調整されないようにして不十分投薬又は過剰投薬を回避する目的で投与量を制限するようにさらに構成されている。
【0020】
1つの実施形態によれば、本願明細書にて開示した投与システムのための投与レジームが開示されるのであり、薬物の投与量を、データセットの投与量についての複数のレベルに調整する。
【0021】
1つの実施形態によれば、投与量調整のためのコンピュータ制御吸入器システムは、薬物の投与分(一服)を送達するための吸入器と、少なくとも1つのパラメータを測定するための少なくとも1つの測定装置と、少なくとも1つの測定装置と通信するコンピュータとを備えるのであり、コンピュータは少なくとも1つのパラメータに基づいて吸入器のための投与量調整を指示する。
【0022】
1つの実施形態によれば、吸入器システムのための投与レジームは、少なくとも1つのパラメータに基づいて吸入器の薬物の投与量を調整することができる。
【0023】
上述の少なくとも1つの実施形態は、背景技術における課題及び短所に対して1以上の解決策を提供する。後述の詳細な説明及び特許請求の範囲を当業者が参照することによって、本願開示の他の技術的な利点が明らかとなろう。本願開示の様々な実施形態は、先述の利点のサブセットのみをもたらしているにすぎない。利点のどれ1つも、実施形態にとって必須とはならない。本願明細書にて権利付与請求がなされた及び/又は説明された実施形態は、他の任意の権利付与請求がなされた及び/又は説明された実施形態と共に技術的に組み合わされることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
添付の図面は、本願開示の現時点で好適とされる例示的実施形態を表しており、該図面は、上述した一般的説明及び後述する好適実施形態についての詳細な説明と共に本願開示の原理を例示するようにして説明する働きをなす。
【0025】
図1】本願開示のある例示的実施形態についての概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、例えばコンピュータ制御吸入器システム等のコンピュータ制御投与システムを示す。このシステムは、薬物の投与分を送達するための携帯型のハンドヘルド型吸入器(10)のための投与量調整に適している。吸入器(10)は、電子的コンポーネントを何ら有さない純粋に機械的な吸入器であることができる。システムは、少なくとも1つのパラメータ(24)を測定するための少なくとも1つの測定装置(20)を備える。該装置は、例えば、肺活量計であることができ、これによって肺機能についての測定を可能としてそのような測定値をパラメータ(24)としてシステムに提供することができる。
【0027】
システムは、ハンドヘルド型の携帯型コンピュータ(30)を備える。これは、例えば、携帯型のスマートフォンであることができる。コンピュータ(30)は、吸入器(10)とは別個のものである。投与分送達手段(10)たる吸入器(10)は、コンピュータを備えない。これによって、システムは任意の吸入器(10)と協働することができる。コンピュータ(30)は、少なくとも1つの測定装置(20)と通信するように構成されている。コンピュータ(30)は、リモートメモリ(40)であって該リモートメモリ(40)の患者医療記録について情報(42)の送受信を行うためのリモートメモリと通信するようにさらに構成されている。これによって、リモートメモリ(40)とコンピュータ(30)との間での双方向通信が可能となる。リモートメモリ(40)は、コンピュータ(30)又は吸入器(10)の一部ではなく、例えば患者データを含む大規模な中央データベースである。この情報(42)は、コンピュータ(30)のメモリ(36)内に格納されることができる。コンピュータ(30)は手動入力(50)を受信するようにも構成されていることができ、この入力(50)はコンピュータ(30)のメモリ(36)内に格納されることができる。
【0028】
コンピュータ(30)は、薬物についての異なる投与量についての複数のレベル(321,322,323)を設定するためのデータセット(32)を作成するように構成されている。このデータセット(32)は、国内要件又は国内法令に基づく治療計画であることができる。このデータセット(32)の構成は、吸入器(10)によって使用される薬物と、リモートメモリ(40)の患者医療記録からの情報(42)と、手動入力(50)とに基づいている。これによって、薬物についての異なる投与量についての複数の異なるレベル(例えば、グリーン(321)、イエロー(322)、及びレッド(323))を含むデータセットをコンピュータが作成できるようになるのであって、これはユーザに合わせてあるのみならず、患者の医療記録と、薬物及びコンピュータによって発問された質問への回答(手動入力)とに基づいているのであり、技術的には国内要件又は国内法令を満たすことができる。したがって、データセット(32)を作成するための構成は、国内基準又は国内規則等の既定条件とすることができる。薬物についての異なる投与量についての複数の異なるレベルは、任意の個数とすることができ、例えば、2,3,4,5,6,7,8,9又はそれより多くすることができる。コンピュータ(30)は、コンピュータ(30)のメモリ(36)内にデータセット(32)を格納するようにさらに構成されることができる。
【0029】
コンピュータ(30)は、指標(34)を生成するようにさらに構成されている。この指標(34)は、投与システムたる吸入器(10)についての投与量調整を指示しており、該投与量調整は少なくとも1つのパラメータ(24)とデータセットの投与量についての複数のレベル(321,322,323)の内の1つとに基づいている。指標(34)は、データセット(32)の投与量についての複数のレベル(321,322,323)の内1つを、吸入器(10)の投与量調整として指示する。
【0030】
本願開示の全体に適用し得る1つの実施形態では、コンピュータ(30)はプロセッサを有していることができる。コンピュータに対する設定行為は、コンピュータ(30)のプロセッサを構成することによって行い得る。
【0031】
請求項1に記載したコンピュータ制御投与システムの技術的な効果は、次の事項によって決まる:どのように異なるコンポーネント(20,30)が配置されたか、及び、どのようにそれらが接続されたか、及び、どのようにコンピュータ(30)が構成されたか。これにより、システムは、データセット(32)を技術的に提供することができ、また、投与量についての異なるレベル(321,322,323)を技術的に定義することができる。この技術的構成によって、単に定義するだけではなくデータセットの生成を達成することができ、投与量調整に有用である。データセット(32)を国内法令及び他の既定の規則に順応するようにシステムを構成することができるということが重要であり、これによって、システムを実生活で用いることが技術的に可能となり、また、システムを国家的医療制度に統合することが技術的に可能となる。さらに、システムの異なるコンポーネント(20,30)の配置、即ちこれらがどのように接続されているか及びこれらがどのように通信できるか及びこれらがどのように構成されているかによって、システムが投与量について指示を提供できるようになり得る。この指示は、データセットからの投与量に関するレベルであることができる。単純な例を挙げれば、この指示は例えばテキストメッセージであることができ、指示によって、例えば吸入器等の投与システムが調整済み投与量を投薬するようにできるのであり、これによって過不足(過剰投薬又は不十分投薬)が回避される。
【0032】
1つの実施形態によれば、コンピュータ(30)は自動入力(60)を受信するようにさらに構成されていることができ、また、指標(34)を生成するための構成は自動入力(60)にさらに基づいていることができる。このような自動入力(60)は次の群の要素の1つ以上であることができる:花粉レベル、大気汚染、気象条件、生物学的パラメータ、花粉インデックス、肺容量、肺への空気の出入り、血液サンプル、血糖値、体重、体表面積、環境的条件、湿度、気圧、海抜、GPS位置、最近の又は将来のユーザ活動、栄養摂取、又は、ユーザデータ。コンピュータは、インターネット又は他の任意のアクセス可能なリモートデータから自動入力を取得するように構成されていることができる。
【0033】
1つの実施形態によれば、指標(34)は、コンピュータ(30)のスクリーン(38)上のテキスト及び/又はグラフィックメッセージであることができる。コンピュータ(30)は例えばスクリーン上で又は音響的に投与量への調整を指示することができ、そしてユーザは調整を行うことができる。指標(34)は次の調整の1つによって行われる投与量調整であるか又は次の調整の1つ以上の組み合わせによって行われる投与量調整であることができる:各吸入行為において送達される薬物の量を調整すること、吸入行為の頻度を調整すること、吸入行為の回数を調整すること、及びさらなる薬物を追加することによって調整すること。例えば、投与量に対する調整は、日々の朝晩において2回ずつ吸入をする第1のレベルから、日々の朝昼晩において3回ずつ吸入をする第2のレベルへ移行することを伴い得る。例えば、投与システムたる吸入器の事後的作動によって投与量調整を達成することができる。システムは、どのようにして吸入器の投与量を調整するのかについての情報を吸入器のユーザに提供するように構成されることができる。例えば、システムはユーザに対して、各回1吸入だけするのではなく、2吸入すべきであることを通知することができる。例えば、システムはユーザに対して、計4吸入ではなく、24時間内に計6吸入すべきであることを通知することができる。このようにしてユーザが正しい投与量を摂取できるようになるのであり、これによってユーザにとって最も効果的な態様で薬物の投与分を摂取することが可能となる。
【0034】
1つの実施形態によれば、測定装置(20)は、肺活量計、加速度計、パルスオキシメータ、インパルスオシロメータ(IOS、impulse oscillometer)、血液採取装置、肺流量計、最大呼気流量計、炎症マーカをサンプリングする装置及び/又は吐き出された空気からの炎症マーカをサンプリングする装置からなる群の要素の1つ以上であることができる。
【0035】
1つの実施形態によれば、コンピュータ(30)は携帯電話であり、コンピュータ(30)の構成は携帯電話のアプリケーション又はインターネットクラウド内のアプリケーションとしてもたらされる。コンピュータは、スマートフォン、タブレット、又はこれに類するものの一部であることができる。コンピュータに対する設定行為は、コンピュータ内のプロセッサを構成することによって行い得る。構成は、アプリケーションによってなされるか、又は、任意の必要なハードウェアを提供することによってなされる。
【0036】
1つの実施形態によれば、システムは投与分をいつ服用すべきかを伝達する注意喚起システムをさらに備えることができ、好適には伝達は電話、携帯電話、スマートフォン、sms、又は電子メールを介して行われる。これによって、投与分が実際に摂取されたことを担保するか少なくともそのことが認知されたことを担保することができる。
【0037】
1つの実施形態によれば、パラメータはユーザによってシステムに手動で追加されるのであり、並びに/又は、システムはユーザの電子手帳から情報及び/若しくはパラメータを収集するように構成されており、ユーザの電子手帳からの情報は、ジムへの立ち寄り、エクササイズ、及び位置からなる群の要素の1つ以上に関しての過去、現在、及び将来の情報を含む。例えば、ユーザがジムに立ち寄っており、これが日記に入力されているか手動でシステムに入力されている場合、投与量調整に関する指標を生成する際にその情報を考慮するようにシステムは構成されることができる。
【0038】
1つの実施形態によれば、少なくとも1つの測定装置(20)は、ユーザの気道からの炎症マーカ、好適には呼気一酸化窒素濃度(FeNO、fraction of exhaled Nitric Oxide)、を測定するように構成されていることができる。追加的には、システムは、該測定値を吸入器の投与量を調整するためのパラメータとして用いるように構成されていることができる。
【0039】
1つの実施形態によれば、コンピュータは、ユーザの状態に関するレポート又はログされた情報を、少なくとも1つの測定されたパラメータ(24)に基づいて提供するようにさらに構成されていることができる。このレポートは、コンピュータ自体に(即ち、スクリーン(38)上に)表示されるか、及び/又は、リモートメモリ(40)へと送信されて他者、例えば、医療スタッフ等、によるアクセスのために供することができる。これによって、システムが国内法令に基づいて監査されるものとなることを可能とし得る。結果として、情報をシステムに送り返すことができ、投与システムに関して変更/改良を行うことができるのであり、例えば、変更されたデータセット(32)を生成して改良した投与量調整を可能とすることができる。
【0040】
1つの実施形態によれば、吸入器(10)は糖尿病の治療のためにインスリン投与分を提供するように構成されていることができる。このようにして、任意の種類の医薬に適するようにシステムを用いることができる。1つの実施形態によれば、吸入器(10)は、粉体投与分計量吸入器、エアロゾル型吸入器、ネブライザ型吸入器、又は、任意の種類の投与分送達器具であることができる。
【0041】
1つの実施形態によれば、コンピュータ(30)は、投与量が危険な投与量又は効果的でない投与量に調整されないようにして不十分投薬又は過剰投薬を回避する目的で投与量を制限するようにさらに構成されていることができる。この側面は使用される薬物に依存し得るのであり、使用される薬物は手動入力としてシステムに入力されることができ、このようにしてコンピュータがどの薬物が使用されるかについての手動入力を受け付けるように構成することができる。
【0042】
1つの実施形態によれば、いずれか1つの実施形態との関連で又はいくつかの実施形態の組み合わせとの関連で説明された投与システムに関しての投与レジームが開示されるのであり、薬物の投与量を、データセット(32)の投与量についての複数のレベル(321,322,323)に調整する。システムは、異なる投与量についての複数のレベル(321,322,323)を備えるデータセット(32)を生成する。投与レジームは、ユーザがどのレベルの投与量を服用すべきかを指示することを伴う。本願明細書にて説明及び開示するように、システムは、対象となるユーザ及び薬物に関しての投与レジームを生成する。このようにして、最も効果的な投与量をもってユーザに対して薬物の投与分を投薬することができるのであり、また、危険な投与量又は効果的でない投与量を回避することができる。
【0043】
実施形態によれば、システムは、投与量が危険な投与量又は効果的でない投与量に調整されないようにする目的で投与量を制限するように構成されていることができる。医療基準を遵守するため及び/又は吸入器の誤用の試みを妨げるために、このことを行うことができる。
【0044】
少なくとも1つの実施形態によれば、指標(34)は調整を全くしないことを指示することもでき、これによって現在の投与量を維持することができる。このことは、投与分が適切かつ効果的な投与量となっていることを表している。
【0045】
1つの実施形態によれば、少なくとも1つの測定装置(20)はユーザの気道からの炎症マーカ、好適には呼気一酸化窒素濃度(FeNO、fraction of exhaled Nitric Oxide)、を測定するように構成されており、システムは該測定値を吸入器の投与量を調整するためのパラメータとして用いるように構成されている。
【0046】
少なくとも1つの実施形態によれば、薬学的化合物を投薬する目的を有するコンピュータ制御吸入器システムが提供される。吸入器は、粉体の薬物(粉体投与分計量吸入器)、エアロゾル型の薬物、又はネブライザ型の薬物を含むことができる。投与量は調整することができ、吸入される薬物の投与量を増減してその具体的なユーザの要求に合わせることができる。投与量調整機能によって、必要とされる時に遅延なく投与量を増減して、治療の最適化がなされ得る。また、これによれば、投薬される薬物の総量の削減もなされる。システムは投薬装置(粉体投与分計量吸入器、エアロゾル型吸入器、又はネブライザ型吸入器)を備えることができ、これは吸入用薬物が適するあらゆる病状において使用されることができる。
【0047】
投与分は、投薬される薬物の量とするか、投与分単位での薬物の投薬とするか、及び/又は、投与分の回数若しくは頻度とすることができる。投与分は、所定の間隔でなされる薬剤又は作用物質の投薬とすることができる。投与分は、最適治療効果発揮投与量及び最適な投与間隔とすることができる。投与分は、少なくとも1つのパラメータに基づいて投薬される投与量を調整するソフトウェアを介して電子的に制御されることができるのであり、投与量を計算する際には様々な他の要素を考慮することができる。
【0048】
少なくとも1つの実施形態によれば、コンピュータ制御投与システムは、従来型の吸入器と共に使用することができ、ある日において何回の吸入を行うべきかをユーザに通知することができる。応用例としては喘息又は慢性閉塞性肺疾患(COPD)を患っているユーザが想定され、これらの疾患の特徴は可変性であり、投与量を迅速に増減する必要が生じ得る。吸入を介して投薬し得るまた別の薬剤としては、糖尿病の治療のためにインスリンが挙げられる。例えば、糖尿病の場合、投与量を摂取の都度調整することができる。
【0049】
システムソフトウェアの実施形態に関しては例えば次のような他の用途も与えられ得る:患者の治療担当医師又は看護師と通信して同人に対して患者の状態の悪化の有無について通知をなすこと;天気、湿度、スモッグ/微粒子レベル、花粉レベル等の環境状況に関する情報をインターネットや諸機関から収集してこれらを考慮の上投与量を算定すること。この情報はGPS又はスマートフォン位置情報によって特定されるユーザの地理的位置に関連付けられることができる。なぜならば、交通混雑へ近接したり、花粉レベルが上昇している田舎へ移動したりすることによって局所的な変動があるかもしれないからである。
【0050】
少なくとも1つの実施形態によれば、ユーザは、手で情報を入力するか、又は、投与量を調整する必要が生じ得るジムへの立ち寄り及び/又はエクササイズに関するユーザの電子手帳上の情報を装置に収集させることによって、手動調整をなし得る。
【0051】
少なくとも1つの実施形態によれば、システムは、疾患のマーカを測定する他の装置から情報を収集することができる。これらの装置は、単純な在宅血液検査用の装置や、例えば呼気一酸化窒素濃度(FeNO、fraction of exhaled Nitric Oxide)等の気道における炎症マーカを測定する装置等ありとあらゆるものとすることができる。後者は、アレルギー性喘息を患う患者にとって有用となる。収集された情報及びパラメータは、投与量を調整するために使用することができる。
【0052】
少なくとも1つの実施形態によれば、システムは、治療に当たる医療スタッフ又はユーザ自身の便益に供するために、ユーザの状態や投薬治療の遵守に関するレポート又はログされた情報を提供することができる。
【0053】
少なくとも1つの実施形態によれば、システムはユーザの医療記録とリンクすることができ、ユーザの状態に関する情報を治療に当たる医療スタッフに提供することができ、また、治療を向上させる投与量調整を行い得る。
【0054】
より詳しい幾つかの実施形態に転じるに、疾患の自己管理を支援することによってコンピュータ制御システムは上述した課題の1以上を克服するのであり、患者と医療サービス主体との間での対話を向上させ、医療をより効率的にし、同時に臨床判断の質を向上させる。システムは携帯可能な肺活量計を伴った使用するのが簡単な自己管理アプリケーションとすることができ、これによって来院回数を増大させずにまた計画外の来院回数を削減しつつ、医療サービス主体はより良くガイドラインに従うことができるようになる。なぜならば、ユーザの投与プランを経時的に可変な要素(例えば、肺機能、健康状態、天候、花粉カウント等)に順応させることができるのであり、また、ユーザの治療に取り組むモチベーションが増大するからである。ユーザは疾患に対して主体的に対応することができ、生活の質が向上する。
【0055】
少なくとも1つの実施形態は、喘息/COPD患者及び介助者及び特化した肺クリニックを益することができる。これによってもたらされる効果には次のものが含まれ得る:よりタイムリーで正確な診断、より効率的な臨床業務編成、構造化された患者評価に対してのより集中した注力、医療プロフェッショナルとりわけ一般開業医における受け入れ規模の拡大及びコンピテンスの向上、並びに、強化されたユーザ教育及び自己管理プログラム。
【0056】
システムに関する少なくとも1つの実施形態は、自己監視の機会をユーザに提供して疾患を御することを可能ならしめる。ユーザは、アプリケーションを長時間操作することなく、可変要素に基づいた投与量に関する推奨提案を得ることになる。例えば喘息及びCOPDに関しては、投与システムは、国際的コンセンサスによる比較的明確なガイドラインに倣って構成されることができる。具体的には、症状・肺機能等に関しての収集済み情報を薬物の投与量(例えば、頻度)に関する情報に変換するステップが存在する。システムは、ユーザ又は医療従事者に対してどの投与量ステップを履践していくべきかを明確に知らせるのであり、それによって個別化されたケアが向上する。個別的に設定した投与量を用いることによって副作用のリスクが低減する。システムはまた、自己管理に関してユーザに対して教育を施すことができ、例えば喘息患者に関しては、彼等の特定のアレルギーに関する花粉カウントが上昇した際にはアレルギー薬を服用するように注意喚起することができる。最終的には、増大した生活の質を獲得した自信づけられておりかつモチベーションを強化されたユーザが誕生する可能性がある。向上した対話の機会によって、医療機関側及びユーザ側の双方が利する。医療機関は、システムからどの情報を収集したいか及びどの程度頻繁に収集を行いたいかを決定することができる。定期的に収集し得る最も基礎的な生物学的エンドマーカは1つ又は2つの肺機能パラメータである。肺機能に関して長期的な変化を認めることによって下される判断の質が向上し得るのであり、また、これは貴重な診断情報及び予測情報を含んでいる。必要とされるならば、ユーザは、主たる医療機関を訪問せずに、更新された個別的投与プランに容易にアクセスすることができ、これによって関係者全員の時間及び費用を節約する。
【0057】
1つの具体的な例示的実施形態によれば、システムは、小さな肺機能測定装置(肺活量計)を備えることができる。このコストは、家庭用の極めて単純な最大呼気流量計と比較できる程度である。肺活量計は、アプリケーションによって構成されるスマートフォンと共に用いられることができる。システムによって収集されたデータは、リモートメモリの患者医療記録内において可視化されたものとして存在することができる。リモートメモリは、国家的保健機関に直結しているか、又は、インターネットベースドポータルを介して間接的に接続されていることができる。このことを行うことによって、例えば、喘息又はCOPD、既往アレルギー、医薬品、体重、及び、身長等の情報をアプリに入力するのであり、そして、全ての患者について国内ガイドライン及び国際ガイドラインに準拠した治療プランを策定することができる。ユーザは自ら己の肺機能を測定することができるのであり、質問も受けることになる。この情報は、例えば、花粉カウント、大気汚染及びインフルエンザ流行等の情報と共にシステムによって収集され、投与量に関する指標が生成される。システムはデータを医療ケア提供者へと送信することができ、これによって、ユーザが医療ケア提供者に次回立ち寄った際に経時的な肺機能の推移を医療記録内で表示することができる。医療ケア制度と連絡する機会は、診察の予約、新たな処方の請求等の手続を自動化するために活用もされ得る。
【0058】
1つの例示的実施形態によれば、システムは、スマートフォンとコンピュータとを備えることができ、該コンピュータは、手動データ入力(例えば、年齢、性別、人体測定事項、併存疾患、インフォームドコンセント、回答の負担となる症状及び投与分の摂取、投与分の摂取に関する注意喚起スケジュール、投与量遵守の度合い、自動データ入力において収集された情報に基づくアラートの設定)と、自動データ入力(例えば、花粉レベル、大気汚染、気象条件、GPS位置、追加的装置からの情報)と、追加の装置からのデータ(例えば、ブルートゥース(登録商標)を介して接続された、肺活量計、加速度計、睡眠期間及び活動期間)と、国家的サービスポータルからリモートメモリへと向けられた実践的なガイダンス(例えば、医師への質問、処方、投与量の調整、診察予約、例えば症状及び肺機能等の個別の情報の移管)とを受信するように構成されている。コンピュータはグラフ及び統計並びに視覚的投与プランを表示することができる。
【0059】
1つの実施形態によれば、上述のように、コンピュータは、次の3つのモジュールを備えるように構成されている:手動データ入力、自動データ入力、及び実践的ガイダンス。手動データ入力モジュールは、各ユーザに関する個人データ及び個別化された設定を含むことができる。さらに、システムは、認証された問診票を用いて、周期的な間隔で(毎日〜毎月)、ユーザに対して、症状を登録するように求めることができる。自動データ入力モジュールは、外部ウェブサービスからの関連性を有する背景情報と共に、ユーザ生成データを携帯型肺活量計から収集することができる。ウェブサービスは、花粉レベル、気象条件、及び粒子濃度等の空気の質に関する情報を、GPS位置又は他の選択された位置に基づいて、提供することができる。手動データ入力では、空気の質が悪い場合に関連して随意的なアラートが設定される。重大な条件下においては、実践的ガイダンスモジュールのセキュアアクセスを介してクリニックへとアラートを送信すべきであるとシステムが提案することができる。
【0060】
1つの実施形態によれば、実践的ガイダンスモジュールは、任意の国家的ポータルを介して任意の国家的医療ケアシステムへと向かう態様で、ユーザに対して情報及び自己管理支援を提供することができる。このようなサービスによってユーザと医療ケアプロフェッショナルとの間での双方向意思伝達が可能とされ得る。実践的ガイダンスを使用する方法を例示する:ユーザの投与プランを第1次的ソース(医療記録)からシステムへと自動的に転送する。これは国家の衛生福祉局によって提供された国家的プラン及び規則に基づいた治療プランであることができるのであり;(例えば、手動データ入力に基づいて)ユーザの医療的遵守度をフォローするのであり;弱体化の場合に備えて臨床的アラートを設定し得るのであり(症状、肺機能、環境的要因又は薬物の増量を必要とする場合やアラートや悪化の兆候);問い合わせを通じて医療ケア提供者と連絡する機会;生物学的エンドマーカについての収集済み情報を臨床的評価のためのシステムから転送することができる。
【0061】
1つの実施形態によれば、システムは、より詳細な態様で肺機能を測定するように構成され、また、即時的な視覚的フィードバック及び投与量調整提案をユーザに与えるように構成される。また、システムは、情報を医療ケア提供者へ転送することができるようにも構成されることができる。システムは投与プランを自動化することを支援し得るのであり、これによってより多くのユーザが各々の推奨提案に基づいた個人的投与プランを持つに至るのであり、また、これが電子的な態様で彼等の携帯電話内に提供されるため、彼等はこれを必要とされるどんなところにでも持ち歩くことができる。
【0062】
少なくとも1つの実施形態によれば、ユーザによる自己管理が成功するか否かは、専属の医療ケア提供者又は治療担当医師と密接に協働して要となる人物の存在にかかっている。換言すれば、ユーザを放置すべきではなく、また、自己管理それ自体を目的化して医療ケアプロフェッショナルによる積極的な介入の代替としてはならない。権利付与請求がなされるシステムは、次の事項に関する評価を可能とし得る:ユーザの症状;肺機能;摂取される日々の薬物量;ユーザ投与量プランに関する自動的データ入力;粒子濃度、花粉状態、及び天候状態に基づく大気品質。該概念によれば、ユーザは、問い合わせをクリニックに送信することができ、診察を予約することができ、また、実践的な指導を受けるために収集された情報をクリニックへと転送することができる。さらに、システムは、薬物及び投与量調整に関しての選択肢を提示することができる。システムによって個人及び社会に及ぶ疾患の負担を軽減することができ、緊急の外来も削減される。
【0063】
少なくとも1つの実施形態によれば、疾患の自己管理を支援することによってシステムは上述した課題の1以上を克服するのであり、患者と医療サービス主体との間での対話を向上させ、医療をより効率的にし、同時に臨床判断の質を向上させる。携帯可能な肺活量計を伴った使用するのが簡単な自己管理アプリケーションを用いれば、来院回数を増大させずにまた計画外の来院回数を削減しつつ、医療サービス主体はより良くガイドラインに従うことができるようになる。なぜならば、ユーザの投与プランを経時的に可変な要素(例えば、肺機能、健康状態、天候、花粉カウント等)に順応させることができるのであり、また、ユーザの治療に取り組むモチベーションが増大するからである。
【0064】
当業者にとっては、本システム及び投与レジームに関して様々な変更及びバリエーションを着想し得ることが明らかである。殊更にいえば、上述した1以上の実施形態を互いに組み合わせてシステムにおける全般的目的を達成することができる。明細書を検討すること及び開示されたシステム及び投与レジームを実践することによって、他の実施形態が当業者にとって明らかとなる。明細書及び例示事項は例示的なものとしてのみ解釈されることが意図されており、真の範囲は添付の請求項及びそれらの均等物によって示されることとなる。
図1