【文献】
中嶋 勝己、他,幹細胞の自動培養システム,生物工学,2014年,第92巻、第9号,pp. 473-478
【文献】
キヤノンMJ、3Dマシンビジョンに2機種追加 - 10×10mmサイズも認識可能に,マイナビニュース, [online],2015年 7月16日,<http://news.mynavi.jp/news/2015/07/16/282/>, 検索日:2017年1月5日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
無菌状態に維持された内部空間を有し、該内部空間において細胞を処理するための処理室と、該処理室内で細胞を処理する際に使用する容器を位置決めした状態で収容するトレイと、該トレイに収容された少なくとも一種類の容器を前記処理室内で把持して移動させる把持機構と、を備えた細胞処理装置であって、
前記トレイに対する前記容器の位置及び所定の姿勢を予め記憶する記憶手段と、前記トレイに配置された容器を撮像する撮像手段と、前記記憶手段で記憶されているトレイに対する容器の位置及び姿勢と前記撮像手段で撮像されたトレイに対する容器の位置及び姿勢とが一致しているかどうかを判定する判定手段と、を有する容器の正誤判定装置を備え、
前記容器の正誤判定装置により前記記憶手段で記憶されている容器の位置及び姿勢と前記撮像手段で撮像した容器の位置及び姿勢とが一致していない場合には、作業者に報知する報知手段を備えていることを特徴とする細胞処理装置。
前記搬入手段が、前記パスボックス内のトレイを載置して前記アイソレータ内に搬入可能な可動部材を備え、前記アイソレータには、前記パスボックス内のトレイを前記可動部材で搬入するための開閉自在なアイソレータ用開口を備え、
前記容器の正誤判定装置は、前記把持機構に固定信号を出力する固定信号出力手段を備えており、前記判定手段で一致していると判定した場合に、前記アイソレータ用開口を開放して前記可動部材でトレイを前記アイソレータ内に搬入した後、前記把持機構が該トレイを該アイソレータ内で固定するよう前記固定信号を出力することを特徴とする請求項3に記載の細胞処理装置。
前記容器の正誤判定装置は、前記固定信号出力手段により前記把持機構がトレイを固定した後に前記可動部材を前記パスボックス側へ引き戻すことを許可する許可信号を出力する許可信号出力手段を備えていることを特徴とする請求項4に記載の細胞処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の細胞処理装置の一例である培養細胞製品の製造装置(以下、製造装置という)について説明する。尚、以下の説明における前後左右の説明は、左右に関しては
図1及び
図2に示された状態に対応しており、前後に関しては、
図2における下方が「前方」に対応し、同上方が「後方」に対応する(方向は
図2にも記載している)。
【0015】
図1〜
図3に、本実施形態の製造装置が示されている。この製造装置は、細胞培養容器(以下において培養容器という)1を収容する複数台のインキュベータ2と、無菌状態に維持された内部空間を有し、該内部空間においてインキュベータ2から送られた培養容器1に入った細胞を処理するための横長状のアイソレータ3と、培養容器1にて培養された細胞を小分けして投入するために必要となる物品(試薬が入った容器も含む)をアイソレータ3に搬入可能な複数(
図2では2台)のパスボックス4を備えている。培養容器1としては、例えば多層に細胞を培養することができるハイパーフラスコ(コーニングインターナショナル(株)製)を用いることができる。各部は
図1に概略的に示す制御装置Xによって制御される。制御装置Xは製造装置に一体的に備えられていてもよいし、製造装置とは別体でケーブルや無線によって接続されたもの(例えばパーソナルコンピュータ)であってもよい。また、制御装置Xが製造装置に一体的に備えられ、オペレータが操作する制御装置Xの操作部(例えばタブレット端末)だけを製造装置と別体にしてもよい。この実施形態では、細胞を処理するための処理室が、アイソレータ3と2台のパスボックス4,4とから構成されているが、2台のパスボックス4,4を省略して、アイソレータ3のみから構成されていてもよい。
【0016】
インキュベータ2は、
図1に示すように、上下2段に積み重ねた状態で設けられ、
図2に示すように、アイソレータ3の左端1箇所とアイソレータ3の後側の左端部2箇所の合計3箇所に設けられ、全部で6台備えられている。上段及び下段のインキュベータ2,2は、同一構成であり、各インキュベータ2は、ケーシング2A内に多数の培養容器1を収容可能なラック(図示せず)を備えている。ケーシング2Aは、一側面から培養容器1を出し入れすることができるように一側面が開放された箱型形状である。そのケーシング2Aの一側面の開口を閉じる2枚の扉2B,2Cが開閉自在にケーシング2Aに取り付けられている。例えば、内側の扉2Cを、透明な材料で構成することによって、外側の扉2Bを開放するだけで、収容されている培養容器1の収容数や細胞の培養状態を内側の扉2Cで開口を閉じた状態で確認することができる。また、インキュベータ2の内部には、培養雰囲気を調整するための二酸化炭素ガスが供給されるように構成されている。また、インキュベータ2内のラックに収容されている培養容器1は、図示していない送出し機構により、アイソレータ3内に設けられている複数の載置台5上へ送り出されるように構成されている。載置台5は、インキュベータ2に対応して同数の6個配置されている。
【0017】
前記のように、アイソレータ3は横長状(本実施形態では平面視長方形状)であって、アイソレータ3の短手側の側面(本実施形態では左側面)に1組(上下2台)のインキュベータ2が位置し、長手側の側面(本実施形態では後側面)に複数組(本実施形態では2組)のインキュベータ2が位置する。この構成により、培養細胞数を減らすことなく製造装置を小型化できる。
【0018】
アイソレータ3は、インキュベータ2から取り出した培養容器1の増殖度合いを確認すべく培養容器1を観察位置まで移動させるための、把持機構である2台の第1ロボットアーム6,7を備える観察部8と、観察部8に連設され観察部8で観察された培養容器1のうちの所定数の細胞を有する培養容器1内の細胞を、パスボックス4,4から搬入された多数の製品容器9(例えばバイアル瓶、
図1の拡大図参照)に移し替えるための各種処理を行う、把持機構である3台の第2ロボットアーム10,11,12を備える処理部13と、移し替えた多数の製品容器9を取り出すための取出口14とを備えている。アイソレータ3の前後壁には、アイソレータ3内にオペレータが手を入れて作業をすることができる多数の作業用グローブ(図示せず)が取り付けられる。
図2に示すように、5台のロボットアーム6,7,10,11,12は、アイソレータ3の長手方向に沿い、左右方向に延びる一直線上に配置されている。
【0019】
左右方向基準で左側の第1ロボットアーム6は、アイソレータ3の短手側の側面(本実施形態では左側面)に位置する1組のインキュベータ2と、長手側の側面(本実施形態では後側面)に位置するうちで左側1組のインキュベータ2とに対応しており、これらインキュベータ2に収容される培養容器1を取り扱うことができる(各ロボットアームの届く範囲(平面視)を
図2に二点鎖線の円で示している)。また、右側の第1ロボットアーム7は、アイソレータ3の長手側の側面に位置するうちで右側1組のインキュベータ2に対応しており、このインキュベータ2に収容される培養容器1を取り扱うことができる。
【0020】
また、左右方向基準で左側の第2ロボットアーム10及び中側の第2ロボットアーム11は、アイソレータ3の長手側の側面(本実施形態では後側面)に位置するうちで左側のパスボックス4に対応しており、このパスボックス4に収容される(または収容されていた)物品及び試薬を取り扱うことができる。
【0021】
また、右側の第2ロボットアーム12は、アイソレータ3の長手側の側面(本実施形態では後側面)に位置するうちで右側のパスボックス4と、製品容器9の搬出用のボックス22とに対応しており、このパスボックス4に収容される(または収容されていた)物品及び試薬、ボックス22に収容される製品容器9を取り扱うことができる。
【0022】
更に、
図2に示した二点鎖線の円が重なり合っていることで示されるように、5台のロボットアーム6,7,10,11,12は、相互に物品の受け渡しが可能な位置関係に配置されている。
【0023】
このように、アイソレータ3内に各ロボットアーム6,7,10,11,12が位置することにより、各ロボットアーム6,7,10,11,12はインキュベータ2、アイソレータ3、パスボックス4、ボックス22の各々に対して、目的に適した動作が可能である。このため、作業効率を向上でき、培養細胞製品を大量生産することに資することができる。
【0024】
本実施形態における第1ロボットアーム6,7及び第2ロボットアーム10,11,12は、同一構成であるため、左端に位置する第1ロボットアーム6についてのみ説明する。第1ロボットアーム6は、多関節型のロボットアームからなり、アイソレータ3のベース部材15に固定される固定部6Aと、固定部6Aの先端部に縦軸回りで回動自在なベース部6Bと、このベース部6Bの先端部に横軸回りで揺動自在な第1アーム6Cと、第1アーム6Cの先端部に横軸回りで揺動自在な第2アーム6Dと、第2アーム6Dの先端部に横軸回りで揺動自在な第3アーム6Eと、第3アーム6Eの先端に対向して取り付けられた一対の把持部6F,6Fとを備えている。一対の把持部6F,6Fは、接近及び離間可能に構成されている。このように多関節型の第1ロボットアーム6,7は、インキュベータ2から送り出された培養容器1を一対の把持部6F,6Fで掴んで(
図1参照)観察位置にある顕微鏡16まで移動させる。第2ロボットアーム10,11,12は、前記培養容器1の他、
図1に示す遠沈管17、調合タンク18等を掴んで各種処理を行うことができるようになっている。
【0025】
観察位置にある顕微鏡16は、2台の第1ロボットアーム6,7の間に配置されている。このように顕微鏡16を配置することによって、左側の第1ロボットアーム6で培養容器1を顕微鏡16まで移動させて細胞を観察し、観察した結果、所定数の細胞を有すると判断された培養容器1を右側の第1ロボットアーム7で掴んで処理部13側へ迅速に移動させることができる。要するに、左側の第1ロボットアーム6は、主として顕微鏡16まで培養容器1を移動させる作業を行い、右側の第1ロボットアーム7は、所定数の細胞を有すると判断された培養容器1を処理部13側へ移動させる作業を行うことによって、作業の迅速化を図ることができる。所定数の細胞を有しているとの判断は、製造装置のオペレータ(人)が目視にて細胞数を数えることによって判断してもよいし、アイソレータ3に設けられたカメラで撮像した画像を解析して自動的に細胞数を算出し、その算出した細胞数によって制御装置Xが自動的に判断してもよい。尚、右側の第1ロボットアーム7に対向位置するインキュベータ2から送り出される培養容器1は、右側の第1ロボットアーム7で掴んで顕微鏡16まで移動させることになる。また、処理部13にも細胞を観察するための顕微鏡25が設置されている。この顕微鏡25の観察ステージに載せる血球計算盤等の対象物は、右端の第2ロボットアーム12が掴んで移動させることになる。
【0026】
また、観察後の培養容器1は、右側の第1ロボットアーム7から処理部13の左端に配置された第2ロボットアーム10に直接渡すことにより搬送されるだけでない。観察後の培養容器1は、例えば第2ロボットアーム10が処理作業中である場合に、搬送装置19によって処理部13の左端の第2ロボットアーム10又は処理部13の左右中央に配置された第2ロボットアーム11が把持できる位置まで搬送される。この搬送装置19は、アイソレータ3の前側壁に沿って設けられ、アイソレータ3の観察部8の右端部から処理部13の左右中央部まで搬送することができる搬送長さに設定されている。従って、右側の第1ロボットアーム7が観察後の培養容器1を搬送装置19の搬送始端部に渡すと、搬送装置19は、2台の第2ロボットアーム10又は11が把持できる位置まで培養容器1を搬送する。
【0027】
この搬送装置19は、観察部8に位置する少なくとも1台のロボットアーム(本実施形態では第1ロボットアーム7)と処理部13に位置する複数のロボットアーム(本実施形態では2台の第2ロボットアーム10,11)とに対応して設けられる。第1ロボットアーム7は第2ロボットアーム10に対して直接物品の受け渡しが可能である。そして搬送装置19は、直接物品の受け渡しができない第1ロボットアーム7と第3ロボットアーム11とに対して物品の受け渡しを可能とする。このため、第2ロボットアーム10が作動中で、第1ロボットアーム7から第2ロボットアーム10を介して第3ロボットアーム11に物品の受け渡しが不可能な場合でも、第1ロボットアーム7から搬送装置19を介して第3ロボットアーム11に物品の受け渡しが可能である。このことから、アイソレータ3内で並行して(複数ルートで)物品を搬送できる。よって、アイソレータ3内での作業効率を向上できるので生産性を向上できる。
【0028】
処理部13には、3台の第2ロボットアーム10,11,12が同一間隔で配置され、その間隔は、2台の第1ロボットアーム6,7同士の間隔よりも小さい間隔に設定され、第2ロボットアーム10,11又は11,12同士で行う各種の処理スピードが速くなるように構成されている。
図4に示すように、各第2ロボットアーム10,11,12の近傍位置でかつ各第2ロボットアーム10,11,12よりも下方位置に、移動不能な固定型の補助アーム20が設置されている。補助アーム20は、固定部材21に固定された固定部20Aと、固定部20Aに接近及び離間可能に取り付けられた一対の把持部20B,20B(
図4では手前しか図示していない)とを備えている。
図4では、例えば、調合タンク18の上端部を第2ロボットアーム10,11,12で掴んでから、補助アーム20の一対の把持部20B,20Bで掴める位置まで移動して補助アーム20の一対の把持部20B,20Bで調合タンク18の下端部を掴むことになる。このようにすれば、一台の第2ロボットアーム10,11,12で、調合タンク18の蓋18Aを開けたり閉じたりすることができる。また、第2ロボットアーム10,11,12には、複数種の容器に備える回転式の蓋を開閉するためのプログラムが記憶されており、第2ロボットアーム10,11,12で複数種の容器に備える回転式の蓋を開閉することができる。このため、製造装置で用いる容器を同一種類の容器に統一しなくても済み、培養細胞製品の製造装置を容易に実現することができる。尚、第1ロボットアーム6,7においても前記プログラムを記憶しておいてもよい。
【0029】
また、処理部13の後側壁には、2つのパスボックス4,4が連設されている。一方(左側)のパスボックス4は、左端に位置する第2ロボットアーム10と中央に位置する第2ロボットアーム11との間から製品容器9、培養容器1、遠沈管17を含む複数種の容器や薬剤が入った容器である調合タンク18等の物品が搬入されるように配置されている。他方(右側)のパスボックス4は、右端に位置する第2ロボットアーム12へ前記物品が搬入されるように配置されている。左側のパスボックス4から搬入される物品(各種の容器)は、左端に位置する第2ロボットアーム10と中央に位置する第2ロボットアーム11とが取り扱うことになり、右側のパスボックス4から搬入される物品(容器)は、右端に位置する第2ロボットアーム12が取り扱うことになる。
【0030】
前記のようにアイソレータ3は横長状であって、アイソレータ3の長手側の側面(本実施形態では後側面)に複数(本実施形態では2つ)のパスボックス4が位置する。この構成により、アイソレータ3に搬入すべき物品量を制限することなく製造装置を小型化できる。
【0031】
取出口14の開口は、右端に位置する第2ロボットアーム12が容易に入り込むことができる程度の大きさに構成されている。取出口14には、開閉自在な電動シャッター(図示せず)が設けられるとともに、取出口14からアイソレータ3の外部へ移動された製品容器9を一旦置いておくための空間を形成するためのボックス22が連設されている。
【0032】
処理部13は、第2ロボットアーム10により、前記第1ロボットアーム7から受け取った培養容器1に収容されている細胞含有液体を遠沈管17に移し替える第1移し替え処理手段と、第2ロボットアーム10により、遠沈管17を遠心分離機26にかけて細胞と液体とを分離させる分離処理手段と、第2ロボットアーム10により、分離処理手段で分離された液体の少なくとも一部を遠沈管17から取り除いてから遠沈管17に保存液(凍結保存液)を投入した状態で遠沈管17内の所定数の細胞を多数の製品容器9に移し替える第2移し替え手段とを備えている。尚、本実施形態の説明における「細胞含有液体」は、単に「細胞を含有する液体」を意味しており、特定の状態の液体に限定されない。
【0033】
また、処理部13は、第1ロボットアーム7により、インキュベータ2から取り出された培養容器1内の培地を交換する培地交換処理手段を備え、培地交換処理手段は、第2ロボットアーム10が第1ロボットアーム7から受け取った培養容器1の蓋を開放して培養容器1内の培地を廃棄し、新たな培地を細胞培養容器1内に供給してから、蓋をして第1ロボットアーム7に戻すように構成されている。
【0034】
前記のような構成を備えている処理部13は、凍結している細胞を起眠して播種するための第1処理、細胞を回収して多数の培養容器に播種する第2処理(継代処理)、継代処理されて培養された培養容器の細胞を回収し回収した細胞を小分けして製品容器9に移し替えて取出口14から搬出する第3処理を行えるようになっている。
【0035】
観察部8の処理部13寄りの位置には、前述の各種処理中に不要になった細胞培養容器1の他、遠沈管17や調合タンク18等の蓋のできる(大きなものが多い)廃棄物を廃棄する第1廃棄部23を備えている。また、処理部13のボックス22寄りの位置には、不要になったピペットチップ(ピペットに取り付けられる吸い口、図示せず)等の蓋ができず液だれするような物品(小さなものが多いが、チップの中でもディスポチップのような大きなチップもある)を廃棄物として廃棄するための第2廃棄部24を備えている
【0036】
2つのパスボックス4は、同一構成であり、各パスボックス4は、
図2に示すように、外部から容器等の物品を搬入するためのクリーンベンチ室を構成する第1ボックス27と、クリーンベンチ室からアイソレータ3へ容器を搬入するための除染室を構成する第2ボックス28とを備えている。
図5に示すように、第2ボックス28,28(
図5では一方のみ図示)の対向する内側面のそれぞれには、オペレータが除染室R2内に手を入れて作業をすることができる多数(図では4つ)のグローブポートG1,G1,G2,G2を備えている。
【0037】
また、
図5に示すように、2つのクリーンベンチ室の対向する横一側に、上下方向にスライド可能なスライド式のシャッター34(図では一方のみ図示している)を備えており、シャッター34を上下動させることによって、下方に形成される開口34Kの大きさを変更できるようになっている。ここでは、シャッター34を全開にしたときの面積に対して略1/4程度の開口34Kの大きさにしている。この開口34Kを通して容器をクリーンベンチ室へ搬入し、アルコール除染等の処理を行うことになる。
【0038】
また、クリーンベンチ室に、除染室に容器を搬入するための開閉自在な除染室用開口35Aを備え、この除染室用開口35Aは、
図7に示すように、第1蓋体35で覆われており、エアシリンダ36で第1蓋体35を上下動することによって、除染室用開口35Aを開閉することができる。第1蓋体35は、略正方形状の板状部材からなり、第2ボックス28の後側壁28Aに上下動可能に図示していないガイド機構により支持されている。また、エアシリンダ36のシリンダチューブ36Bの基端部が上向きとなる状態で第2ボックス28の後側壁28Aに固定され、かつ、エアシリンダ36のピストンロッド36Aの先端が下向きとなる状態で第1蓋体35の下端部に連結されている。従って、エアシリンダ36のピストンロッド36Aを短縮作動させることによって、第1蓋体35を上方へスライドさせることで除染室用開口35Aを開放状態にし、短縮状態のエアシリンダ36のピストンロッド36Aを伸長作動させることによって、上方にスライドしている第1蓋体35を下方へスライドさせることで除染室用開口35Aを閉じ状態にすることができる。
【0039】
また、除染室に、クリーンベンチ室から搬入された容器をアイソレータ3に搬入するための開閉自在なアイソレータ用開口37Aを備えている。アイソレータ用開口37Aは、
図8〜
図10に示すように、第2蓋体37で覆われており、第2蓋体37を横方向にスライドすることによって、アイソレータ用開口37Aを開閉することができる。第2蓋体37は、略正方形状の板状部材からなり、スライド方向両端部に開閉操作用の取っ手37H,37Hを備え、上下端が上下一対のガイドレール38,39により支持されながら、横方向に移動することができるようになっている。上側のガイドレール38及び下側のガイドレール39は、上下方向で対向するように配置され、除染室R2を構成する第2ボックス28の隣り合う2つの側壁である前側壁28Bと左側壁28Cとに亘って固定されるL字状部材から構成されている。上側のガイドレール38は、2つの側壁28B,28Cに固定される4個(
図10では3個のみ図示)のブラケット40に固定される天板部38Aと、天板部38Aの幅方向両端から下方に垂下する一対の縦板部38B,38Bと、これら一対の縦板部38B,38Bの下端から互いに接近する側に延びる一対の水平板部38C,38Cとから構成されている。この上側のガイドレール38に移動自在に内設される一対の移動体41,41に第2蓋体37の上端を連結している。各移動体41は、一対の水平板部38C,38C上に載置され横軸42を介して連結される一対のベアリング43,43と、横軸42が貫通するとともにベアリング43,43間の間隔を保持するための間隔保持部材44と、間隔保持部材44に上下軸芯回りで回転自在に貫通して取り付けられるピン45とを備えている。そして、第2蓋体37の上端にビス止めされた逆L字状の上側枠体46を前記ピン45を介して間隔保持部材44に締め付け固定している。従って、第2蓋体37が一対のベアリング43,43の回転で上側のガイドレール38に沿ってスムーズに移動することができながらも、ピン45の軸芯回りで第2蓋体37が回転することで、上側のガイドレール38の湾曲部を通過する際に第2蓋体37が拗れることなくスムーズに向き変更できるようになっている。下側のガイドレール39は、上端が開放された略U字状に構成され、縦軸回りで回動可能な左右一対のローラ47,47が内設されている。これら左右一対のローラ47,47は、第2蓋体37の下端にビス止めされたL字状の下側枠体48に縦軸回りに回動自在に連結している。従って、左右一対のローラ47,47の回転で下側のガイドレール39に沿って第2蓋体37がスムーズに移動することによって、下側のガイドレール39の湾曲部を通過する際に第2蓋体37が拗れることなくスムーズに向き変更できるようになっている。
【0040】
図9に示す49は、第2蓋体37が閉塞位置に位置した時に当接するストッパー部材であり、また50は、第2蓋体37が開放位置に位置した時に当接するストッパー部材である。
【0041】
前記アイソレータ3内で使用する各種の容器である、培養容器1、遠沈管17、調合タンク18等は、左側のパスボックス4に入れた後、
図11A,
図11Bに示す第1トレイ29に収容した後、第1トレイ29をアイソレータ3内に搬入手段31を介して搬入する。第1トレイ29は、上方が開放された平面視長方形状の箱型の収容部本体29Aと、収容部本体29A内に各種の容器を位置決めした状態で収容するための着脱自在な仕切板29Bと、収容部本体29Aの前後方向(搬入方向)両端に幅方向に所定間隔を置いて取り付けられた前後一対の回転ローラ29C,29C、29D,29Dとから構成されている。仕切板29Bは、ボルトにより収容部本体29Aに対して着脱自在に構成できる他、係止構造によっても着脱自在に構成することができる。具体的には、
図11Aでは、1個の遠沈管17、1個の廃液タンク32、2個の培養容器1,1、1個のPBS(phosphate buffered saline)溶液タンク33が収容されている。これら各種容器の形状に合わせた孔(各種の容器が嵌り込んで位置決めできる孔)が仕切板29Bに形成されている。また、
図11Bでは、1個の遠沈管17、1個の廃液タンク32、2個の培養容器1,1が収容されている。これら各種容器の形状に合わせた孔(各種の容器が嵌り込んで位置決めできる孔)が仕切板29Bに形成されている。
図11A,
図11Bに示した第1トレイ29,29は、仕切板29Bに形成される孔の形状が少し異なるだけで、収容部本体29A及び前後一対の回転ローラ29C,29C、29D,29Dは同じ構成である。これらの第1トレイ29は、左側のパスボックス4からアイソレータ3内に搬入される。また、右側から搬入される第2トレイ30は、左側のパスボックス4からアイソレータ3に搬入される第1トレイ29よりも幅が小さなトレイ(
図15に第2トレイ30を示している)であり、収容される容器も、第1トレイ29に収容される容器よりも小さいものが多い。第2トレイ30には、例えばセルカウンター(細胞計数盤)、マイクロプレート、ピペットチップ等が収容される。
【0042】
搬入手段31は、
図12A,
図12Bに示す左側のパスボックス4に設置された第1搬入手段51と、
図13A,
図13Bに示す右側のパスボックス4に設置された第2搬入手段52とを備えている。これら2つの搬入手段51,52は、幅寸法が前述した2種類の幅の異なるトレイ29,30に合わせた幅に構成されているだけで、基本的な構成は全く同じである。
図12A,
図12Bに示すように、第1搬入手段51は、第1トレイ29をパスボックス4内で載置してアイソレータ3側へ移動可能な第1可動部材53と、第1可動部材53を移動可能に支持するための第1支持部材54とを備えている。
【0043】
第1可動部材53は、第1トレイ29の後端部を除く略全域を載置する平面視長方形状で板状の第1載置部材53Aと、第1載置部材53Aの一端から延びるとともに第1トレイ29の後端部を載置する第1支持部材54側に連係される平面視長方形状で板状の第1連係部材53Bとを備えている。第1載置部材53A及び第1連係部材53Bには、気流を通過させるための多数の孔53a,53bが形成されている。また、第1連係部材53Bは、第1載置部材53Aよりも幅が少し大きくなっている。更にまた、第1連係部材53Bの第1載置部材53A側寄りに第1トレイ29の搬入方向後端に当接して第1トレイ29の搬入方向後方側への移動を阻止する第1縦板53Cが立設され、その第1縦板53Cの前後方向(搬入方向)後面の上部に第1取っ手53Dが取り付けられている。尚、第1可動部材53がアイソレータ3内に移動したときの第1可動部材53の直下方位置には、プレート55が配置されており、このプレート55には、気流を通過させるための多数の孔55Aが形成されている。
【0044】
第1支持部材54は、パスボックス4の基板56上に左右方向(幅方向)に間隔を置いて立設した一対の第1側板54A,54Aと、第1側板54A,54A間の上方のうちの前後方向後側半分及び第1側板54A,54A間の前後方向後端間を覆うためのL字型の第1カバー部材54Bと、パスボックス4の基板56から所定高さに支持され左右方向に所定間隔を置いて配置された棒状の一対の第1案内部材54C,54Cと、第1可動部材53の移動時に下面と接触して支持する回転自在な左右一対の第1回転ローラ54D,54Dとを備えている。一対の第1案内部材54C,54Cに移動可能に貫通された第1筒体53E,53Eが、第1可動部材53の前後方向後端部の下面に連結されている。第1側板54A,54A及び第1カバー部材54Bには、気流を通過させるための多数の孔54a,54bが形成されている。
【0045】
第2搬入手段52も同様に、
図13A及び
図13Bに示すように、第2トレイ30(
図15参照)をパスボックス4内で載置してアイソレータ3側へ移動可能な第2可動部材57と、第2可動部材57を移動可能に支持するための第2支持部材58とを備えている。
【0046】
第2可動部材57は、第2トレイ30の後端部を除く略全域を載置する平面視長方形状で板状の第2載置部材57Aと、第2載置部材57Aの一端から延びるとともに第2トレイ30の後端部を載置する第2支持部材58側に連係される平面視長方形状で板状の第2連係部材57Bとを備えている。第2載置部材57A及び第2連係部材57Bには、気流を通過させるための多数の孔57a,57bが形成されている。また、第2連係部材57Bは、第2載置部材57Aよりも左右幅が少し大きくなっている。更にまた、第2連係部材57Bの第2載置部材57A側に第2トレイ30の前後方向後端に当接して第2トレイ30の前後方向後方側への移動を阻止する第2縦板57Cが立設され、その第2縦板57Cの前後方向後面の上部に第2取っ手57Dが取り付けられている。尚、第2可動部材57がアイソレータ3内に移動したときの第2可動部材57の直下方位置には、プレート59が配置されており、このプレート59には、気流を通過させるための多数の孔59A(
図14A参照)が形成されている。
【0047】
第2支持部材58は、パスボックス4の基板56上に左右幅方向に所定間隔を置いて立設した左右一対の第2側板58A,58Aと、第2側板58A,58A間の上方のうちの前後方向後側半分及び第2側板58A,58A間の搬入方向後端間を覆うためのL字型の第2カバー部材58Bと、パスボックス4の基板56から所定高さに支持され左右方向に所定間隔を置いて配置された棒状の一対の第2案内部材58C,58Cと、第2可動部材57の移動時に下面に当接しながら支持する回転自在な左右一対の第2回転ローラ58D,58Dとを備えている。一対の第2案内部材58C,58Cに移動可能に貫通された第2筒体57E,57Eが、第2可動部材57の前後方向後端部の下面に連結されている。第2側板58A,58A及び第2カバー部材58Bには、気流を通過させるための多数の孔58a,58bが形成されている。
【0048】
このように構成された例えば第1可動部材57をアイソレータ3内に移動させるには、オペレータは、第1取っ手57DをグローブポートG1〜G2の任意のグローブポートを介して掴んで、アイソレータ3側へ人為力で引っ張ることによって第1可動部材57を移動させる。
図13A,
図13Bは、第2可動部材57がアイソレータ3側へ移動した状態を示している。このとき、第2可動部材57は、前述したように、左右一対の第2回転ローラ58D,58Dによって下面が支持されつつ、左右一対の第2筒体57E,57Eが左右一対の第2案内部材58C,58Cに移動案内されることによって、水平方向を維持しながらアイソレータ3側へスムーズに移動する。尚、
図12A,
図12B,
図13A及び
図13Bには、第2蓋体37を図示していないが、実際には、オペレータが、第2蓋体37の取っ手37Hを掴んで横方向にスライドさせて開放位置に操作することによって、開放されたアイソレータ用開口37Aを通して第1可動部材53又は第2可動部材57が移動可能となる。
【0049】
図11A,
図11Bに示したように、複数種類の容器をトレイ(図では第1トレイ29)に収容することによって、容器をトレイ内に効率的に収容することができる。これによって、アイソレータ3内に容器を搬入する搬入回数を減らすことができ、その分、容器の搬入時間を短縮することができる。しかも、トレイを第2蓋体37が開けられて開放された小さな開口37Aを通してアイソレータ3内に直ちに搬入することができるので、パスボックス4内の空気がアイソレータ3内に大量に入り込んで汚染されることを抑制することができる。
【0050】
前記のようにアイソレータ3内は、その内部に、第1可動部材53又は第2可動部材57によって搬入される第1トレイ29又は第2トレイ30を搬入方向(前後方向)と直交する(又は交差する)方向(左右方向)に移動案内するための案内手段60,60を備えている。各案内手段60は、
図14A,
図14B及び
図15に示すように、アイソレータ3内に前後方向に所定間隔を置いて左右方向に延びる前後一対の棒状部材61,62と、これら前後一対の棒状部材61,62に係合すべく第1トレイ29又は第2トレイ30の前後端の左右一対の回転ローラ29C,29C、29D,29D(
図11A参照)又は30C,30C、30D,30D(
図15参照)とから構成されている。
【0051】
前側の棒状部材61は、例えば第1トレイ29が第1搬入手段51でアイソレータ3内に搬入された時に第1トレイ29の前端の左右一対の回転ローラ29C,29Cが係合可能となるように、前記開口37Aに対応する部分から左右方向に延びる一本の棒状部材から構成されている。また、後側の棒状部材62は、例えば第1トレイ29が第1搬入手段51でアイソレータ3内に搬入された時に、第1トレイ29の通過を許容できるように前記開口37Aに対応する部分が省略され、開口37Aの左端付近から左側へ延びる左側棒状部材62Aと、開口37Aの右端付近から右側に延びる右側棒状部材62Bとから構成されている。従って、
図15において、右側のパスボックス4から、第2トレイ30をアイソレータ3内に搬入した場合には、前側の棒状部材61に、第2トレイ30の前端の左右一対の回転ローラ30C,30Cが上方から係合する。この係合状態で第2ロボットアーム12が第2トレイ30を掴んで左右方向一方側に移動させることによって、後側の左側の棒状部材62A又は後側の右側の棒状部材62Bに第2トレイ30の後端の左右一対の回転ローラ30D,30Dを係合させる。これによって、前後端の回転ローラ30C,30C、30D,30Dを前後の棒状部材61,62に沿って回転させながら、左右方向所定位置まで第2トレイ30をスムーズに移動させることができる。尚、開口37Aから遠い位置、例えば左端の位置まで第2トレイ30を移動させる場合には、右端の第2ロボットアーム12から中央位置の他の第2ロボットアーム11に引き継いで移動させることができる。
図15では、左側のパスボックス4からアイソレータ3内に順次第1トレイ29を搬入し、合計5個(この実施形態では、5個であるが、2個以上の任意の個数になる)のトレイ29を左右方向の特定位置に配置した状態を示している。また、右側のパスボックス4からの第2トレイ30も、左右方向に5個整列した状態で配置することができる。また、前側の棒状部材61には、回転ローラのピッチと同じピッチで一対の溝61Mが5箇所形成されている。また、後側の棒状部材62には、回転ローラのピッチと同じピッチで一対の溝62Mが4箇所形成されている。前側の溝61Mに回転ローラ29C,29C又は30C,30Cが嵌り込み、後側の溝62Mに回転ローラ29D,29D又は30D,30Dが嵌り込むことによって、左右方向において第1トレイ29及び第2トレイ30が左右方向に不測に動かないように位置決めが行えるようになっている。
図15の5個の第1トレイ29のそれぞれが溝61M,62Mに嵌り込んだ位置になっている。但し、開口37Aに対応する中央に位置する第1トレイ29及び第2トレイ30は、後側に棒状部材がないため、後側の回転ローラ29D,29D、30D,30Dが溝に嵌合できない。そのため、中央に形成される前側の一対の溝61M,61Mを他の残りの4組の溝61M,61Mよりも深い溝にして嵌合力を高めて左右方向への不測の移動を確実に阻止するようにしている。尚、
図15では、第1トレイ29及び第2トレイ30の内部に収容する容器及び仕切板を省略した図にしている。
【0052】
前記のように、第1トレイ29に予め決められた容器を位置決めした状態で収容してから(
図11A,
図11B参照)、第1搬入手段51でアイソレータ3内に搬入する前に、パスボックス4内において容器の正誤判定装置63で第1トレイ29内の容器の正誤判定を行い、その判定結果をオペレータである作業者(第3者)に報知するように構成されている。尚、第2トレイ30も同様であり、ここでは、第1トレイ29側のみを説明する。前記容器は、市販で販売されている容器であり、ロボットアームが把持し易いように手を加えた容器ではない。
【0053】
容器の正誤判定装置63は、第1トレイ29に必要となる容器が収容されているかどうかの正誤判定し、容器が収容されている第1トレイ29の位置(収容位置)と予め記憶されている第1トレイ29の位置(収容位置)とが正しいかどうかを正誤判定する。更に、第1トレイ29に対する姿勢(収容姿勢)と予め記憶されている第1トレイ29に対する収容姿勢(向き)とが正しいかどうかを正誤判定することになる。
【0054】
容器の正誤判定装置63は、具体的には、
図17に示すように、第1トレイ29に対する容器の位置及び所定の姿勢(向き)を予め記憶する記憶手段64と、第1トレイ29に配置された容器を撮像する撮像手段65(
図16にも図示している)と、記憶手段64で記憶されている第1トレイ29に対する容器の位置及び姿勢と撮像手段65で撮像された第1トレイ29に対する容器の位置及び姿勢とが一致しているかどうかを判定する判定手段66と、判定手段66で一致していると判定した場合に、アイソレータ用開口37Aを開放して第1可動部材53で第1トレイ29をアイソレータ3内に搬入した後、第2ロボットアーム10又は11が第1トレイ29をアイソレータ3内で固定するよう、第2ロボットアーム10又は11に固定信号を出力する固定信号出力手段67と、固定信号出力手段67により第2ロボットアーム10又は11が第1トレイ29を固定した後に第1可動部材53をパスボックス4側へ引き戻すことを許可する許可信号を出力する許可信号出力手段68と、を備えている。
【0055】
図16に、パスボックス4内に設置された撮像手段65であるカメラで真下の第1トレイ29内に収容されている容器を撮像している状態を示している。例えば
図11Aに示す容器の位置及び姿勢が正しいものとして記憶手段64に予め記憶されている。これに対して、
図18に示すように容器を収納した後、カメラで撮像し、その撮像した容器の位置及び姿勢と、記憶手段64に記憶されている容器の位置及び姿勢とを比較する。比較すると、記憶されている容器が、
図11Aに示す1個の遠沈管17、1個の廃液タンク32、2個の培養容器1,1、1個のPBS溶液タンク33であり、撮像された容器が、
図18に示す1個の遠沈管17、1個の廃液タンク32、2個の培養容器1,1、1個のPBS溶液タンク33であり、容器の個数及び位置は、一致しているものの、2個の培養容器1,1の姿勢(向き)が
図11Aと
図18とでは異なっている。つまり、培養容器1,1の蓋1A,1Aが、
図11Aでは、いずれも下側に位置しているのであるが、
図18では、いずれも上側に位置しており、一致していない。この
図18の状態でアイソレータ3に第1トレイ29を搬入すると、第2ロボットアーム10又は11は、2個の培養容器1,1を認識することができない。そのため、第2ロボットアーム10又は11は、2個の培養容器1,1を把持することができない。
【0056】
従って、パスボックス4内で第1トレイ29内の容器を撮像し、その撮像した容器の位置及び姿勢と記憶手段64に記憶されている容器の位置及び姿勢とが一致しているかどうかを判定手段66にて判定した結果、一致していない場合には、ブザーを鳴らす又は表示部の点灯ランプを点滅させることによって、オペレータである作業者(第3者)に報知する。作業者は、モニター等で一致していない容器を確認し、その容器の姿勢(向き)を修正する。つまり、
図18の2個の培養容器1,1の姿勢(向き)を
図11Aの2個の培養容器1,1の姿勢(向き)になるように修正する。修正後は、再度カメラで撮像し、判定手段66で一致していると判定された場合には、OK信号が出力され、モニター等に表示される。これにより、作業者が、アイソレータ用開口37Aを開放して第1可動部材53で第1トレイ29をアイソレータ3内に移送した後、図示していないスイッチを押すことによって、第1トレイ29がアイソレータ3内に移動したことが確認され、固定信号出力手段67から第2ロボットアーム10又は11に固定信号が出力される(第1トレイ29がアイソレータ3内に移動したことをセンサ等で検出し、その検出信号が出力されることにより、固定信号出力手段67から第2ロボットアーム10又は11に固定信号が出力されるようにしてもよい)。固定信号が出力されると、第2ロボットアーム10又は11が第1トレイ29をアイソレータ3内で固定する。これにより、第1トレイ29を固定するための特別な機構を備える必要がなく、装置の大型化を抑制することができる。前記第2ロボットアーム10又は11が第1トレイ29をアイソレータ3内で固定した後は、許可信号出力手段68から許可信号が出力され、作業者は第1可動部材53をパスボックス4側へ引き戻すことが許可され、第1可動部材53をパスボックス4側へ引き戻すことを的確に行うことができる。尚、第1可動部材53をパスボックス4側へ引き戻した後は、アイソレータ用開口37Aを閉じて次の第1トレイ29のアイソレータ3内への搬入に備える。尚、右側のパスボックス4も同様であるため、説明を省略する。尚、アイソレータ用開口37Aを開放して第1可動部材53で第1トレイ29をアイソレータ3内に移送したことをリミットスイッチや光センサ等の検出手段で検出し、その検出手段からの検出信号に基づいて固定信号出力手段67から第2ロボットアーム10又は11に固定信号が出力されるように構成してもよい。また、アイソレータ用開口37Aを図示していない各種のアクチュエータの動力を用いて開閉するようにしてもよい。また、第1可動部材53を図示していない各種のアクチュエータの動力を用いて移動させる構成にしてもよい。このように構成することによって、例えば、判定手段66で一致していると判定されて、OK信号が出力されると、第1トレイ29をアイソレータ3内へ搬入して、第2ロボットアーム10又は11が搬入された第1トレイ29をアイソレータ3内で固定し、固定後に、第1可動部材53をパスボックス4側へ引き戻す一連の動作を作業者を介在させることなく、自動的に行えるように構成して実施することができる。
【0057】
アイソレータ用開口37A及び除染室用開口35Aは、最大寸法を有する容器、ここでは細胞を培養することができるハイパーフラスコ(コーニングインターナショナル(株)製)が通過できる高さに設定している。また、アイソレータ用開口37A及び除染室用開口35Aの左右幅寸法は、第1トレイ29及び第2トレイ30が通過できるように、第1トレイ29及び第2トレイ30の左右幅よりも少し大きい寸法に設定することが好ましい。尚、クリーンベンチ室の開口34Kの高さも同様に、最大寸法を有する容器、ここでは細胞を培養することができるハイパーフラスコ(コーニングインターナショナル(株)製)が通過できる高さに設定している。このように設定することによって、全ての容器を搬入することができながらも、開口を必要最小限に抑えることで、空気の流れを所望通りに制御することができ、アイソレータ3内が汚染する等のトラブル発生をより一層回避することができる。
【0058】
尚、本発明に係る細胞処理装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0059】
前記実施形態では、観察部8に2台のロボットアーム6,7を設け、処理部13に3台のロボットアーム10,11,12を設けたが、観察部8に少なくとも1台のロボットアームを設け、処理部13にも少なくとも1台のロボットアームを設けて実施することができる。
【0060】
また、前記実施形態では、アイソレータ3を横長状のものから構成したが、正方形状や円形状のものから構成してもよい。また、屈曲した形状で構成してもよい。
【0061】
また、前記実施形態では、第1蓋体35を上下方向に移動させる構成とし、第2蓋体37を横方向に移動させる構成としたが、これに限らず、第1蓋体35及び第2蓋体37の移動方向はどのような方向に設定してもよい。
【0062】
また、前記実施形態では、細胞を培養し、培養した細胞を小分けして製品化するための培養細胞製品の製造装置を示したが、細胞の培養のみを行う細胞培養装置であってもよいし、培養された細胞を小分けして製品化する製品製造装置であってもよい。
【0063】
また、前記実施形態では、2つのパスボックス4,4を設けたが、1つのパスボックス又は3つ以上のパスボックスを設けて実施してもよい。
【0064】
また、前記実施形態では、トレイ29,30を平面視長方形状に構成したが、正方形状又は多角形状あるいは円形状や楕円形状等、どのような形状であってもよい。
【0065】
また、前記実施形態では、撮像手段としてのカメラでトレイ29を真上から撮像したが、撮像する角度は、反射光等を考慮して自由に変更することができる。
【0066】
また、前記実施形態では、可動部材53,57を人為力で移動させるようにしたが、電動モータや流体圧シリンダ等の各種のアクチュエータを用いて可動部材53,57を移動させる構成であってもよい。
【0067】
前記実施形態に関する構成と作用につき、以下にまとめて記載する。前記実施形態に係る細胞処理装置は、無菌状態に維持された内部空間を有し、該内部空間において細胞を処理するための処理室と、該処理室内で細胞を処理する際に使用する容器を位置決めした状態で収容するトレイ29,30と、該トレイ29,30に収容された少なくとも一種類の容器を前記処理室内で把持して移動させる把持機構10,11,12と、を備えた細胞処理装置であって、前記トレイ29,30に対する前記容器の所定の姿勢を予め記憶する記憶手段64と、前記トレイ29,30に配置された容器を撮像する撮像手段65と、前記記憶手段64で記憶されているトレイ29,30に対する容器の姿勢と前記撮像手段65で撮像されたトレイ29.30に対する容器の姿勢とが一致しているかどうかを判定する判定手段66と、を有する容器の正誤判定装置63を備えていることを特徴とする。
【0068】
かかる構成によれば、判定手段66で、記憶手段64で記憶されているトレイ29に対する容器の姿勢と撮像手段65で撮像されたトレイ29に対する容器の姿勢とが一致しているかどうかを判定することによって、例えば左右の形状が非対称な形状の容器であっても、把持機構10,11,12が容器を認識できるかどうかを判定することができる。そして、一致していないと判定された場合には、トレイ29に対する容器の姿勢を修正して一致させることによって、把持機構10,11,12が容器を確実に認識できる。よって、把持機構10,11,12がトレイ29内に収容されている容器を確実に把持することができる。
【0069】
また、前記実施形態に係る細胞処理装置においては、前記トレイ29は、複数種類の容器1,17,32,33を収容しうるように構成されていてもよい。
【0070】
かかる構成によれば、複数種類の容器1,17,32,33をトレイ29に収容することによって、容器1,17,32,33をトレイ29内に効率的に収容することができる。これによって、アイソレータ3内に容器を搬入する搬入回数を減らすことができ、その分、容器の搬入時間を短縮することができる。また、前記実施形態に係る細胞処理装置においては、複数種類の容器をトレイ29に収容した場合においても、間違いの発生を確実に阻止することができる。
【0071】
また、前記実施形態に係る細胞処理装置においては、前記処理室が、細胞を処理するためのアイソレータ3と、前記容器が収容されたトレイ29を前記アイソレータ3内に搬入する搬入手段51を有するパスボックス4と、を備え、前記撮像手段65が、前記パスボックス4内に配置され、前記把持機構10,11,12が、前記アイソレータ3内に配置されていてもよい。
【0072】
かかる構成によれば、パスボックス4内で撮像手段65により撮像したトレイ29に対する容器の姿勢と記憶されているトレイ29に対する容器の姿勢とが一致しているかどうかを判定することにより、一致していない場合に、アイソレータ3内に移送する前に、パスボックス4内でトレイ29に対する容器の姿勢を修正することができる。
【0073】
また、前記実施形態に係る細胞処理装置においては、前記搬入手段51が、前記パスボックス4内のトレイ29を載置して前記アイソレータ3内に搬入可能な可動部材53を備え、前記アイソレータ3は、前記パスボックス4内のトレイ29を前記可動部材53で搬入するための開閉自在なアイソレータ用開口37Aを備え、前記容器の正誤判定装置63は、前記把持機構10,11,12に固定信号を出力する固定信号出力手段67を備えており、前記判定手段66で一致していると判定した場合に、前記アイソレータ用開口37Aを開放して前記可動部材53でトレイ29を前記アイソレータ3内に搬入した後、前記把持機構10又は11又は12が該トレイ29を該アイソレータ3内で固定するよう前記固定信号を出力してもよい。
【0074】
かかる構成によれば、判定手段66で一致していると判定した場合に、固定信号出力手段67から固定信号が出力される。これにより、アイソレータ用開口37Aを開放して可動部材53でトレイ29をアイソレータ3内に搬入した後、把持機構10、11又は12がトレイ29をアイソレータ3内で固定するので、トレイ29を固定するための特別な機構を備える必要がなく、装置の大型化を抑制することができる。
【0075】
また、前記実施形態に係る細胞処理装置においては、前記容器の正誤判定装置63は、前記固定信号出力手段67により把持機構10、11又は12がトレイ29を固定した後に前記可動部材53を前記パスボックス4側へ引き戻すことを許可する許可信号を出力する許可信号出力手段68を備えていてもよい。
【0076】
かかる構成によれば、把持機構10、11又は12がトレイ29をアイソレータ3内で固定した後は、許可信号出力手段68から許可信号が出力され、可動部材53をパスボックス4側へ引き戻すことが許可されるので、可動部材53をパスボックス4側へ引き戻すことを的確に行うことができる。
【0077】
以上の如く、前記実施形態では、判定手段66で、トレイ29に収容されている容器の姿勢の正誤判定を行うことによって、把持機構10、11又は12が容器を確実に把持することができる細胞処理装置を提供することができる。