(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記無機塩が、リン酸塩、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、ハロゲン化物、モリブデン酸塩、タングステン酸塩、スズ酸塩、アンチモン酸塩、それらの任意の組合せから選択される少なくとも1つから選択される、請求項1に記載の方法。
前記無機塩が、リン酸モノナトリウム、リン酸ジナトリウム、リン酸トリナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アルミニウムナトリウム、およびそれらの任意の組合せから選択される、請求項1に記載の方法。
前記多孔質アルミノシリケート材料が、ゼオライトA、ゼオライトB、ゼオライトL、ゼオライトX、ゼオライトY、ゼオライトZK-4、モルデナイト、ベータおよびゼオライトZSM-5から選択されるゼオライトである、請求項1に記載の方法。
脱水反応が、チタン、シラン処理されたステンレス鋼、石英、およびそれらの任意の組み合わせがから選択される少なくとも1つを含む反応材料を含む反応器中で行われる、請求項1に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
詳細な記載
本発明は、α-ヒドロキシカルボン酸、α-ヒドロキシカルボン酸エステル、β-ヒドロキシカルボン酸、β-ヒドロキシカルボン酸エステル、およびその環状エステルから選択される反応物を用いてα,β-不飽和カルボン酸および/またはそのエステルを触媒的に製造する方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、アクリル酸に対して非常に高い転化率および高レベルの選択率を有し、乳酸の気相脱水に有用である触媒を提供する。
【0019】
数値リストの最初に「約」が使用されている場合、「約」は数値リストの各数字を変更することに留意すべきである。いくつかの範囲の数値リストでは、列挙されているいくつかの下限値が、上に列挙した上限値よりも大きい可能性があることに留意すべきである。当業者であれば、選択されたサブセットが、選択された下限を超える上限の選択を必要とすることを認識するであろう
【0020】
本明細書で使用する「脱水反応」という用語は、反応物から水を除去することを意味する。「脱水反応」という用語は、当該分野において「脱ヒドロキシル化反応」としても知られている。
【0021】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載のα-ヒドロキシカルボン酸(たとえば、乳酸およびその誘導体)を、発酵ブロスから得ることができる。いくつかの実施態様では、本明細書中に記載される発酵ブロスは、商業規模での乳酸製造のために選択された大腸菌およびスポロ乳酸菌(バチルス・コアグランス)などの細菌種の培養物に由来しうる。いくつかの実施態様では、本明細書に記載される発酵ブロスは、乳酸製造のために選択された糸状菌種の培養液に由来しうる。いくつかの実施態様では、本明細書に記載される発酵ブロスは、工業規模で乳酸を生成することが知られている酵母種に由来しうる。いくつかの実施態様では、市販規模での乳酸の製造に適した微生物として、大腸菌(Escherichia coli)、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、ラクトバチルス・デルブリュッキー(Lactobacillus delbruckii)、ラクトバチルス・ブルガリカス(L. bulgaricus)、ラクトバチルス・サーモフィルス(L. thermophilus)、ラクトバチルス・ライヒマニ(L. leichmanni)、ラクトバチルス・カゼイ(L. casei)、ラクトバチルス・フェルメンチ(L. fermentii)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)、ストレプトコッカス・ラクチス(S. lactis)、ストレプトコッカス・ファエカリス(S. faecalils)、ペディオコッカス属、(Pediococcus sp)、ロイコノストック属(Leuconostoc sp)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium sp)、リゾプス・オリザエ(Rhizopus oryzae)および工業用の数多くの種類の酵母が挙げられる。本開示の恩恵を受ける当業者は、上記のいずれかの適切な組み合わせを認識すべきである。
【0022】
いくつかの実施態様では、乳酸などのα-ヒドロキシカルボン酸を製造するための発酵プロセスは、バッチプロセス、連続プロセス、またはそれらのハイブリッドであってもよい。天然資源に由来する多数の炭水化物材料は、本明細書に記載のα-ヒドロキシカルボン酸の発酵生産と関連して供給原料として使用されうる。たとえば、グルコース、ラクトースを含む乳清、加水分解デンプンからのマルトースおよびデキストロース、バイオディーゼル工業からのグリセロール、およびそれらの組み合わせは、本明細書に記載のα-ヒドロキシカルボン酸の発酵生産に適している可能性がある。微生物はまた、本明細書に記載されるα-ヒドロキシカルボン酸の製造におけるセルロース系バイオマスの加水分解に由来するペントース糖を使用する能力をもって創製されうる。いくつかの実施態様では、乳酸の製造において同時にグルコースなどの6-炭素含有糖およびキシロースなどの5-炭素含有糖の両方を利用する能力を有する微生物が、乳酸の発酵生産における好ましいバイオ触媒である。いくつかの実施態様では、C-5炭素およびC-6炭素糖の両方を含む安価に入手可能なセルロース材料から誘導された加水分解物および乳酸の製造において同時にC-5およびC-6炭素糖を利用することができるバイオ触媒は、安息香酸およびアルカリ酸エステルへの転化に適した低コストの乳酸の製造の点から非常に好ましい。
【0023】
いくつかの実施態様では、乳酸生産のための発酵ブロスには、耐酸性ホモ乳酸菌が含まれる。「ホモ乳酸」とは、細菌株が発酵産物として実質的に乳酸のみを産生することを意味する。耐酸性ホモ乳酸菌は、典型的には、市販のトウモロコシ粉砕施設のコーンスティープウォーターから単離される。いくつかの実施態様では、高温でも増殖することができる耐酸性微生物が好ましい場合がある。いくつかの好ましい実施態様では、発酵液の1リットル当たり少なくとも4gの乳酸(およびより好ましくは1リットルあたり50gの乳酸)を産生することができる微生物を、本明細書に記載の発酵手順で利用することができる。
【0024】
いくつかの実施態様では、発酵ブロスは、たとえば、濾過、酸性化、研磨、濃縮などのさまざまな単位操作が行われた後、または上記の単位操作の2つ以上によって処理された後、さまざまな製造地点で利用されうる。いくつかの実施態様では、発酵ブロスが重量/重量(w/w)基準で約6〜約20%の乳酸を含有する場合、乳酸は濃縮形態で回収されうる。発酵ブロスからの濃縮形態の乳酸の回収は、複数の方法または当技術分野で公知の方法の組み合わせによって達成されうる。
【0025】
本明細書に記載の発酵方法の実行中に、成長培地の中性付近のpHを維持するために、少なくとも1種のアルカリ性物質(たとえば、NaOH、CaCO
3、(NH
4)
2CO
3、NH
4HCO
3、NH
4OH、KOH、またはそれらの任意の組み合わせ)を利用することができる。発酵ブロスへのアルカリ性物質の添加は、無機塩の形態での乳酸の蓄積をもたらすことが多い。いくつかの実施態様では、アンモニウム水酸化物は、発酵ブロスの中性pHを維持するのに好ましいアルカリ性物質でありうる。発酵培地への水酸化アンモニウムの添加により、乳酸アンモニウムが発酵ブロス中に蓄積することがある。乳酸アンモニウムは、水溶液中で、より高い溶解性を有するので、発酵ブロス中の濃度を増加させることができる。乳酸アンモニウムを含有する発酵ブロスから乳酸を得る1つの方法として、発酵ブロスの精密濾過および限外濾過に続く、連続イオン交換(CIX)、疑似移動床クロマトグラフィー(SMB)、電気透析バイポーラ膜(EDBM)、固定床イオン交換、または液-液抽出が挙げられる。いくつかの実施態様では、次いで、固定床イオン交換から出るサンプルを、バイポーラ電気透析に付して、濃縮された遊離酸の形での乳酸を得る。
【0026】
いくつかの実施態様では、反応物(たとえば、乳酸および乳酸エステル)は、バイオ触媒を用いた発酵プロセスを伴わずに、化学触媒を使用する1つ以上の化学プロセスを介して生物資源(たとえば、グルコース、スクロースおよびグリセロール)から誘導されうる。たとえば、生物学的資源に由来する乳酸および乳酸エステルは、その後、脱水およびエステル化反応に付され、アクリル酸およびアクリル酸エステルが得られる。
【0027】
もう1つの例では、グリセロールを、発酵プロセスを伴わずに化学プロセスを使用して、乳酸、次いで、アクリル酸を生成するための出発材料として使用することができる。植物油由来の脂肪酸エステルのエステル交換による世界的バイオディーゼル生産は、過去10年間で数倍に増加してえ、化石由来のディーゼル燃料の使用を部分的に代替した。バイオディーゼル産業からの副生成物であるグリセロールは、本発明に記載される方法によるアクリル酸およびアクリル酸エステルの製造のための、適切であるか、または、いくつかの実施態様では、好ましい出発物質でありうる。
【0028】
たとえば、グリセロールから乳酸を生成する1つのアプローチは、グリセロールアルデヒド、2-ヒドロキシプロペナールおよびピルブアルデヒドなどの中間化合物を介して、約550℃より高い温度でグリセロールを乳酸に変換する熱化学変換プロセスを使用することができる。しかしながら、熱化学変換プロセスは、この高温でのピルブアルデヒドおよび乳酸の著しい分解を引き起こし、それによって乳酸産生の選択率が低下する可能性がある。場合によっては、乳酸の生成に関与する脱水反応を媒介する化学触媒の使用は、温度の低下を可能にし、それによって選択率を高め、分解を緩和することができる。場合によっては、不均一触媒は、回収し、複数回再使用することが可能であり、何らかの緩衝を必要とせず、そして、バッチプロセスモードの代わりに連続フロープロセスモードで稼動するように容易に変更して、スループットと回転時間を増やすことができるので、不均一触媒が好ましい。これらの利点は、運転コストおよび廃棄物処理の大幅な削減につながる可能性がある。
【0029】
本発明による気相脱水反応において有用な触媒は、2つの成分、すなわち支持体および活性無機塩を有する固体の不均一触媒である。一定レベルの表面酸性度を有する多孔質アルミノシリケート材料は、本発明による固体不均一触媒中の支持体として作用する。結晶性アルミノシリケート構造を有する天然および合成ゼオライトは、本発明の不均一触媒のための支持体として機能するために非常に適している。
【0030】
本明細書で使用する「ゼオライト」は、「分子篩」として知られている微孔質固体のファミリーのアルミノシリケートのメンバーを意味する。ゼオライトは、原子の3次元ネットワークで構成された結晶である。これらのネットワークは、さまざまなサイズの空洞およびチャネルを含む大部分が開いた構造である。ゼオライトネットワークは、主に酸素、ケイ素およびアルミニウムの3つの元素から作られている。これらの3つの元素は、SiO
4およびAlO
4の四面体単位で配置され、これらの単位は互いに結合して結晶のネットワークを形成する。ゼオライトは、一般的な分子式:Mx/n[(ALO
2)
x(SIO
2)
y]zH
2Oを有し、指揮中、nは金属カチオン(M)の電荷であり、Mは通常Na
+、K
+、またはCa
2+であり、zは、高度に変化する水和水のモル数である。ゼオライトの例は、式:Na
2Al
2Si
3O
10 2H
20を有するナトロライトであってもよい。本明細書中で使用される場合、用語「修飾ゼオライト」は、(1)無機塩および/または酸化物を含浸すること、および/または(2)イオン交換によって改質されたゼオライトを意味する。
【0031】
また、シリカ、アルミニウム、酸素、ゼオライトは、特定の非骨格成分を含む。ゼオライトが脱水されていない場合、ゼオライトは骨格の細孔内に一定量の水分を含む。さらに、ゼオライトは、非骨格成分として正に帯電したカチオンを含む。これらの非骨格カチオンは、ゼオライトの電気化学的中性を維持することが要求される。各酸素イオンは、形式電荷2を有する。アルミニウム原子を含まないゼオライトでは、酸素原子に対するケイ素原子の比は1対2である。正の4の形式電荷を有する各シリコン原子は、負の2の個々の形式電荷を有する2つの酸素原子と平衡をとる。その結果、シリカのみを有するゼオライトは電気化学的に中性である。ゼオライトのアルミニウム原子は正の3の形式電荷を持ち、1つのアルミニウム原子は2つの酸素原子からの電荷のバランスをとることができない。ゼオライトのすべてのアルミニウム原子の結果として、1つの正味負電荷が存在する。この正電荷の欠損を中和するために、骨格にアルミニウムを有するゼオライトは、非骨格カチオンと等しい数の正電荷を含む。天然のゼオライトでは、非骨格カチオンを、プロトンによって表すことができる。他方、合成ゼオライトでは、非骨格カチオンは、Na
+、K
+、Mg
2+、Ca
2+、NH4
+またはプロトンH
+によって提供されうる。
【0032】
シリア対アルミナの比率を変えて、過去50年間に多くの合成ゼオライトが製造されている。たとえば、ゼオライトAは、1948年にUnion Carbideの科学者によって合成された。次の合成ゼオライト、ゼオライトXもUnion Carbideの科学者によって、シリカ対アルミナの比2で合成された。他の合成ゼオライト、ゼオライトYは、約4〜7のシリカ対アルミナ比を有する。ZK-4ゼオライトは、有機カチオンとしてテトラメチルアンモニウムを用いてMobilの科学者によって合成された。ゼオライトベータはまた、非骨格のカチオンとしてテトラエチルアンモニウムを用いてMobilの科学者によって合成された。ゼオライトベータは、非常に高いシリカ対アルミナ比5〜150で合成することができた。シリカの含有量が高いと、ゼオライトの熱安定性が向上する。ZSM-5ゼオライトは、非骨格カチオンとしてテトラプロピルアンモニウムを用いてMobilの科学者によって合成された。ZSM-5には、2方向のチャネルを有する。1つの方向では、チャネルは直線であり、他の方向では、チャネルは波状である。
【0033】
特定の反応における触媒としてのゼオライトの適合性は、(1)ゼオライトのトポロジーおよび(2)ゼオライトの組成という2つの因子に依存する。それらの多孔質構造に起因するゼオライトのトポロジーは、反応物を区別する。たとえば、特定のゼオライトの細孔直径が約5オングストロームである場合、5オングストロームを超える直径の反応物分子は、ゼオライト内のチャネルにアクセスすることができないので、その特定のゼオライトは、その反応物分子の触媒転化には適していない。ゼオライトのサイズに基づいて反応物分子を識別するこの能力は、形状選択性と呼ばれる。それらのチャンネルの寸法に基づいて、ゼオライトは、小、中および大孔ゼオライトの3つのカテゴリーに分けられる。サイズ制約インデックスに関するこの情報は、特定のゼオライトが触媒の支持体として機能できるかどうかを判断するのに役立つ。
【0034】
ゼオライトがそのサイズ選択性に基づいて触媒支持体として認定されると、次のステップは、選択されたゼオライト自身の化学組成が反応物分子に必要な触媒機能を果たすのに十分であるかどうかを決定することである。たとえば、本発明において、選択された触媒は、乳酸の脱カルボニル化、脱カルボキシル化、縮合および還元反応を触媒することなく、乳酸分子の脱水を触媒すると予想される。所望の触媒機能は、(1)ゼオライトそのものによって、または(2)ゼオライトとさらに別の化合物との組み合わせで提供されうる。所望の化学反応を触媒するために、ゼオライトの他に追加の化合物が必要である第2の場合において、ゼオライトは追加の化合物に対して物理的支持体を提供すると考えられる。所望の化学反応を触媒する際に、ゼオライトのアルミノシケート骨格の他に追加の化合物が必要とされる状況下では、化学反応は、追加の化合物によってのみ触媒され、ゼオライトは、追加の化合物に対して物理的な支持体のみを提供する。ゼオライトと追加の化合物が一緒に作用して、望ましくない化学反応を抑制しながら所望の化学反応を触媒することも可能である。追加の化合物がゼオライトとの化学的相互作用を確立し、それによってゼオライトの非骨格成分になる可能性もある。ゼオライト骨格と追加の化合物との間のそのような相互作用は、X線回折および核磁気共鳴分光法などの適切な物理的技術を使用することによって決定されうる。
【0035】
本発明において使用される「支持体」という用語は、追加の化合物との化学的相互作用または追加の化合物とゼオライトのアルミノシリケート骨格との間の相互作用を確立したかどうかにかかわらず、その多孔質アルミノシリケート骨格を有するゼオライトを意味し、ゼオライトのアルミノシリケート骨格は物理的なものである。
【0036】
本発明で使用されるように、ゼオライトに追加の化合物を添加するプロセスは「含浸」プロセスと呼ばれる。ゼオライト材料への追加の化合物の含浸は、費用効果の高い方法でゼオライト上に第2の化合物の適切な量を含浸させることを目的として、数種の異なる方法で行うことができる。本発明の1つの態様では、含浸プロセスが小規模で実施される場合、水溶液中の追加の化合物の所望の量が完全に脱水されたゼオライトに付加され、追加の化合物が毛管作用によってゼオライトのチャネルに入る。この含浸プロセスは、「初期含浸」と呼ばれる。本発明のもう1つの態様では、脱水したゼオライトを第2の化合物の水溶液に懸濁させ、第2の化合物がゼオライトのチャネルに入るように所定時間攪拌する。得られるゼオライトサンプルを室温で2時間放置し、空気中120℃で10時間乾燥する。乾燥したサンプルを300℃で3時間、仮焼する。第2の化合物をゼオライトに含浸させるこのプロセスは、「湿式含浸」法と呼ばれる。本発明のさらにもう1つの態様では、第2の化合物によるゼオライトの含浸を、回転ドラムおよびスプレーヘッドを用いて大規模に達成することができる。大量の脱水ゼオライト材料は、スプレーヘッドを備えた回転ドラム内で採取される。ドラムが回転モードにある間に、第2の化合物の水溶液がゼオライト材料上に噴霧され、所要レベルの含浸が達成される。
【0037】
一般に、無機塩は、含浸プロセスにおいて第2の化合物として使用されるので、この含浸プロセスは「塩含浸」とも呼ばれる。本発明の1つの態様において、塩含浸法は、リン酸塩、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、ハロゲン化物、モリブデン酸塩、タングステン酸塩、スズ酸塩、アンチモン酸塩、およびそれらの任意の組み合わせから選択される無機塩を用いて行われる。本発明の好ましい実施態様では、含浸プロセスに適した無機塩は、リン酸モノナトリウム、リン酸ジナトリウム、リン酸トリナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アルミニウムナトリウム、およびそれらの任意の組合せから選択される。
【0038】
選択されたゼオライトがその新しい形態で特定の化学反応を触媒することができない場合、選択されたゼオライトは、所望の化学反応を触媒することができるように、特定のの化学修飾を受けてもよい。同様に、選択されたゼオライトがその新鮮な形態で、望ましくない副生成物の生成をもたらす1つ以上の望ましくない化学反応を触媒する場合、選択されたゼオライトは、望ましくない副生成物の形成を防ぐために、特定のの化学修飾を受けてもよい。ゼオライトの触媒特性を変化させる目的のための化学修飾は、新鮮なゼオライトを用いて塩含浸プロセスにかける前に行われる。
【0039】
本発明の1つの態様では、ゼオライトの化学修飾は、アルミノシリケート結晶骨格からのアルミニウム原子の除去をおよびシリカ対アルミニウムの比の変化もたらす脱アルミニウム反応によって、あるいは骨格のアルミニウムまたはシリカ原子のP、Ga、Fe、Bもしくはその他の原子への置換によって行われる。
【0040】
本発明のもう1つの態様では、ゼオライトへの化学修飾は、既存の非骨格カチオンを新しいカチオンで置き換えることによって行われ、この化学修飾はイオン交換反応と呼ばれる。成功したイオン交換反応は、誘導結合プラズマ技術を含む元素分析によるNMR分光法のいずれかを用いてモニターすることができる。また、イオン交換反応は、ゼオライトの表面酸性度にも変化をもたらす。
【0041】
ゼオライトによって触媒される化学反応に依存して、表面酸性度はゼオライトの触媒特性に有意に寄与する。ゼオライトの表面には、2つの異なる表面酸性度、すなわちブレンステッド酸性度およびルイス酸性度が認められる。ブレンステッド理論の下では酸はプロトン供与体であり、ルイス理論の下では酸は電子受容体である。したがって、ブレンステッド酸はルイス酸ではない。しかしながら、プロトン自体は、塩基に結合する空軌道を有するため、酸である。同様に、ルイス塩基はまた、常にその非共有電子対をプロトンに供与することができるので、ブレンステッド塩基でもある。
【0042】
ゼオライトの表面上のブレンステッド酸性度およびルイス酸性度は、ゼオライトに対する特定の化学修飾によって変更されうる。たとえば、ゼオライト中の非骨格カチオンをプロトンで置換することにより、ブレンステッド酸性度をゼオライトに導入することができる。同様に、ゼオライト表面の非骨格カチオンをアンモニウムで置換し、高温でアンモニウム交換ゼオライトを仮焼することにより、アンモニウムカチオンをアンモニアに分解して、ゼオライトの表面に非骨格カチオンの代わりに陽子を残すことができる。同様に、多価カチオンとのイオン交換反応は、水分子の部分加水分解を介してプロトンを生成することができる。他方、ゼオライトの緩やかなストリーミングは、通常、脱ヒドロキシル化を引き起こし、ルイス酸部位を生成する間にブレンステッド部位の総数を減少させる。
【0043】
微小熱量測定、温度プログラム脱着(TPD)、マジック角回転核磁気共鳴(MAS-NMRおよび赤外線(IR)分光法)などの多くの物理的特徴決定法を、イオン交換反応および塩含浸プロセスなどの特定の修飾の前後に、ゼオライト分子の酸性度を決定するために用いることができる。ゼオライト材料の酸強度は、TPD技術により、プローブ分子を用いて間接的に測定される。
【0044】
ゼオライトは、カチオンおよび水分子によって占有されるチャネル(空隙または細孔としても知られる)を含むと考えられている。理論に制限されることなく、ゼオライトの存在下で行われる脱水反応は、ゼオライトのチャネル内で優先的に起こると考えられる。したがって、チャネルの寸法は、とりわけそこを通過する化学物質の拡散速度、結果として脱水反応の選択および転化効率に影響を与えると考えられている。いくつかの実施態様では、本明細書に開示される脱水反応と共に使用するのに適したゼオライト触媒中のチャネルの直径は、その間の任意のサブセットを含めて、約1〜約20オングストローム、またはより好ましくは約5〜約10オングストロームの範囲でありうる。
【0045】
本明細書に記載の脱水触媒として使用するのに適したゼオライトは、天然物質由来であってもよいし、化学合成されたものであってもよい。さらに、いくつかの実施態様では、本明細書に記載の脱水触媒として使用するのに適したゼオライトは、L型ゼオライト、Y型ゼオライト、X型ゼオライト、およびそれらの任意の組み合わせに相応する結晶構造を有していてもよい。A、X、YおよびLなどの異なるタイプのゼオライトは、それらの組成、細孔容積、またはチャネル構造の点で互いに異なる。A型およびX型ゼオライトは、Si対Alのモル比が約1であり、四面体のアルミノシリケート骨格を有する。Y型ゼオライトは、Si対Alのモル比が約1.5〜約3.0であり、X型ゼオライトの構造と同様の骨格構造を有する。L型ゼオライトは、約3.0のSi対Alのモル比を有し、約0.48nm×1.24nm×1.07nmの空洞につながる約0.71nmの開口の一次元細孔を有する。ZSM-5モレキュラーシーブゼオライトは、Si/Al比が10〜100またはそれ以上であり、孔径が0.6nmである。
【0046】
いくつかの実施態様では、ゼオライトでイオン交換を行うことにより修飾ゼオライトを製造することができる。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の脱ヒドロキシル化触媒として使用するのに適した修飾ゼオライトは、これれに限定されるものではないが、H+、Li+、Na+、K+、Cs+、Mg2+、Ca2+、La2+、La3+、Ce2+、Ce3+、Ce4+、Sm2+、Sm3+、Eu2+、Eu3+など、およびそれらの組み合わせを含むイオンを有することができる。本明細書で使用する「[イオン会合] -[結晶構造]-型ゼオライト」は、特定のゼオライトおよび/または修飾ゼオライトを略するために使用される。たとえば、それに付随するカリウムイオンを有するL型ゼオライトは、K-L型ゼオライトと略記される。もう1つの例では、カリオムとナトリウムイオンが混在したX型ゼオライトをNa/K-X型ゼオライトと略する。いくつかの実施態様では、L型ゼオライトは、仮焼、イオン交換、初期湿潤含浸、水蒸気による水処理、それらの任意の混成、およびそれらの任意の組み合わせなどの技術によって修飾されうる。
【0047】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載の脱水触媒として使用するのに適した修飾ゼオライトは、それに付随する1つ以上のカチオンを有することができる。特定の実施態様では、本明細書に記載の脱水触媒としての使用に適した修飾ゼオライトは、第1のカチオンと第2のカチオンを含み、第1のカチオン対第2のカチオンのモル比は、約1:1000、1:500、1:100、1:50、1:10、1:5、1:3、1:2、または 1:1の下から、約1000:1、500:1、100:1、50:1、10:1、5:1、3:1、2:1、または1:1の上限までの範囲であってもよく、該モル比は、任意の下限から任意の上限までの範囲で有りえ、その間の任意のサブセットを包含する。いくつかの実施態様では、非限定的な例として、本明細書に記載の脱水触媒として使用するのに適した修飾ゼオライトは、H/Na-L型ゼオライト、Li/Na-X型ゼオライト、Na/K-Y型ゼオライト、およびそれらの任意の組合せでありうる。いくつかの実施態様では、別の非限定的な例として、本明細書に記載された脱水触媒として使用するのに適した修飾ゼオライトは、Na/K-L型ゼオライト、Na/K-Y型ゼオライト、および/またはNa/K-X型ゼオライトでありうるが、カリウムイオンに対するナトリウムイオンの比は約1:10またはそれ以上である。
【0048】
理論に限定されるものではないが、ゼオライト上の少なくともいくつかのH
+イオンが交換される実施態様では、生成された修飾ゼオライトの酸性度が低下されうると考えられる。酸性度の低下の大きさを、適切な試験を用いて決定することができる。たとえば、ASTM(American Society for Testing and Materials)D4824を使用して、修飾ゼオライトの酸性度を測定することができる。簡単に説明すると、この試験では、アンモニア化学吸着を用いて修飾ゼオライトの酸性度が決定され、ここで、容積系を使用して化学吸着アンモニアの量が得られる。
【0049】
いくつかの実施態様では、修飾ゼオライトは、無機塩および/または無機酸化物を含浸したゼオライトであってもよい。いくつかの実施態様では、本明細書に記載されている変態ゼオライトの製造に使用するのに適した無機塩として、リン酸塩、硫酸塩、モリブデン酸塩、タングステン酸塩、スズ酸塩、アンチモン酸塩など、ならびにカルシウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、カリウムなど、およびそれらの任意の組み合わせ、との任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。非限定的な例として、いくつかの実施施様では、修飾ゼオライトは、リン酸ナトリウム化合物(たとえば、リン酸モノナトリウム(
NaH2PO4)、リン酸ジナトリウム(Na
2HPO
4)およびリン酸トリナトリウム(Na
3PO
4)、リン酸カリウム化合物、リン酸アルミニウムナトリウム化合物(たとえば、Na
8Al
2(OH)
2(PO
4)
4)、およびそれらの任意の組合せで製造されうる。
【0050】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載の脱水触媒として使用するのに適した修飾ゼオライトは、修飾ゼオライト1グラム当たり約0.1ミリモル、0.2ミリモル、または0.4ミリモルの下限から、修飾ゼオライト1グラム当たり約1.0ミリモル、0.8ミリモル、または0.6ミリモルの上限までの範囲の濃度で無機塩またはその酸化物を含浸させてもよく、ここで、濃度は任意の下限から任意の上限までの範囲であってもよく、その間の任意のサブセットであってもよい。非限定的例として、本明細書に記載の脱水反応とともに使用するのに適した含浸ZSM-5型ゼオライトは、リン酸ナトリウム化合物を含浸されたNa/KZSM-5型ゼオライトであり、ここで、ナトリウムイオン対カリウムイオンの比は、約1:10またはそれ以上である。ZSM-5型で開始するために、ゼオライトはテンプレート剤としてテトラプロピルアンモニウムカチオンを用いて合成され、加熱によりHZSM-5型ゼオライトが得られる。ナトリウム塩でイオン交換するとNAZSM-5ゼオライトが得られる。リン酸カリウムを含浸させると、Na/KZSM-5型ゼオライトが得られる。
【0051】
当業者は、イオン交換および/または含浸による修飾ゼオライトの調製のための追加の工程を認識すべきである。たとえば、乾燥および/または仮焼は、とりわけ、細孔から水を除去するために、または塩をその酸化物に変換するために必要でありうる。さらに、保存中に修飾ゼオライトが少なくとも部分的に不活性化されるのを防止するために、適切な貯蔵が必要でありうる。本明細書で使用する「仮焼」という用語は、ゼオライト触媒が、揮発性留分の除去のために空気の存在下で熱処理プロセスに供されるプロセスを意味する。
【0052】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載の脱水触媒としての使用に適した固体脱水触媒は、高い表面積を有することができる。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の脱水触媒としての使用に適した固体脱水触媒は、約100m
2/g以上の表面積を有することができる。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の脱水触媒としての使用に適した固体脱水化触媒は、約100 m
2/g、125 m
2/g、150 m
2/g、または200 m
2/gの下限から、500 m
2/g、400 m
2/g、300 m
2/g、または250 m
2/gの上限までの表面積を有し、ここで、表面積は任意の下限値から任意の上限値の範囲であってよく、その間の任意のサブセットを包含してもよい。
【0053】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載の脱水触媒は、本明細書に記載の脱水反応においては、約1:1000またはそれ以上の触媒 対 反応物/中間体のモル比で存在することができる。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の脱水触媒は、本明細書に記載の脱水反応においては、約1:1000、1:500、または1:250の下限から、1:1、1:10または1:100の上限までの触媒 対 反応物/中間体のモル比で存在することができ、ここで、モル比は、任意の下限値から任意の上限値の範囲であってよく、その間の任意のサブセットを包含してもよい。
【0054】
いくつかの実施態様では、脱水反応は、本明細書に記載される2つ以上のタイプの脱水触媒を利用することができる。いくつかの実施態様では、2つの脱水触媒の重量比は、約1:10またはそれ以上であってもよい。いくつかの実施態様では、2つの脱水触媒の重量比は、約1:10、1:5、1:3、または1:1の下限から、約10:1、5:1、3:1、または1:1の上限までの範囲であってよく、ここで、重量比は、任意の下限値から任意の上限値の範囲であってよく、その間の任意のサブセットを包含してもよい。本開示の利益を受ける当業者は、このような比の、本明細書に記載の3つ以上の脱水触媒への拡張を理解すべきである。
【0055】
いくつかの実施態様では、本発明の反応経路に有用な脱水反応は、約100℃、150℃、または200℃の下限から、約500℃、400℃、または350℃の上限までの温度にて行われてよく、ここで、温度は、任意の下限値から任意の上限値の範囲であってよく、その間の任意のサブセットを包含してもよい。
【0056】
反応経路に沿って生成されるα,β-不飽和カルボン酸またはそのエステルの重合を防止するために、本明細書に記載の脱水反応と併せて、重合禁止剤を利用することができる。いくつかの実施態様では、重合禁止剤は、本発明の反応経路、たとえば、出発組成物において、脱水反応中、エステル化反応中、およびそれらの任意の組み合わせ中に導入されうる。重合禁止剤の例としては、4-メトキシフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、立体障害フェノールなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
場合によっては、本発明の脱水反応は、本明細書に記載のゼオライト支持体が存在しない状態で、そして反応容器内に存在するガラス、セラミック、磁器、または金属材料などの材料に担持された追加の化合物の存在下でのみ行うことができ、 ゼオライト支持体の非存在下でのこのような脱水反応は、乳酸の転化率が低く、α,β-不飽和カルボン酸に対する特異度が低いことが予想される。
【0058】
いくつかの実施態様では、本発明の脱水反応は、約40%またはそれ以上、いくつかの実施態様では約50%またはそれ以上、いくつかの実施態様では約55%またはそれ以上、いくつかの実施態様では約60%またはそれ以上、いくつかの実施態様では約65%またはそれ以上、いくつかの実施態様では約70%またはそれ以上、いくつかの実施態様では約75%またはそれ以上、いくつかの実施態様では約80%またはそれ以上、いくつかの実施態様では約85%またはそれ以上、いくつかの実施態様では約90%またはそれ以上、いくつかの実施態様では約95%またはそれ以上、いくつかの実施態様では約98%またはそれ以上、あるいはいくつかの実施態様では約99%より大きい転化効率を有することができる。
【0059】
いくつかの実施態様では、本発明の脱水反応の選択率は、生成物の40 wt%またはそれ以上、いくつかの実施態様では生成物の50 wt%またはそれ以上、いくつかの実施態様では生成物の55 wt%またはそれ以上、いくつかの実施態様では生成物の60 wt% またはそれ以上、いくつかの実施態様では生成物の65 wt%またはそれ以上、いくつかの実施態様では生成物の70 wt%またはそれ以上、いくつかの実施態様では生成物の75 wt%またはそれ以上、いくつかの実施態様では生成物の80 wt%またはそれ以上、いくつかの実施態様では生成物の85 wt% またはそれ以上、いくつかの実施態様では生成物の90 wt%またはそれ以上、いくつかの実施態様では生成物の95 wt%またはそれ以上、いくつかの実施態様では生成物の98 wt%またはそれ以上、およびいくつかの実施態様では生成物の99 wt%またはそれ以上である量で、α,β-不飽和カルボン酸またはそのエステルの生成をもたらしうる。
【0060】
脱水反応の転化効率および/または選択率は、とりわけ、適用可能な場合、触媒を仮焼する温度、脱水触媒の組成、反応物および/または中間体の濃度、および/または反応物および/または中間体と脱水および/またはエステル化触媒の接触期間をコントロールすることに従属することを理解すべきである。
【0061】
場合によっては、反応器冶金が乳酸脱水反応におけるアリル酸選択率に悪影響を及ぼすことが観察されている。理論によって制限されることなく、乳酸原料は、反応器壁の腐食を引き起こし、反応器壁からの金属成分の浸出を引き起こすと考えられる。たとえば、脱水反応においてステンレス鋼反応器が使用される場合、ニッケル、クロムおよび鉄などの金属成分が生成物流中に溶出するかまたは脱水触媒上に蓄積することがあり、これは、たとえば、誘導結合プラズマ(ICP)分析によって検出されうる。浸出した金属は、副生成物を形成しうる触媒として作用することがある。たとえば、ステンレス鋼反応器の壁から放出されたニッケルは、水素化触媒として作用し、アクリル酸からプロピオン酸を生成する。同様に、ステンレス鋼製反応器の壁から放出された鉄は、脱カルボキシル化触媒として作用し、アセトアルデヒドの生成をもたらす。さらに、反応器の壁から浸出した成分の一部は、乳酸およびアクリル酸の重合を引き起こすことがある。したがって、いくちの実施態様では、反応物質は、供給物または触媒脱水反応によって形成された生成物のいずれかによって耐食性を有するように選択されうる。望ましくない触媒作用を緩和するのに適した反応器材料の例としては、チタン、シラン処理されたステンレス鋼、石英などが挙げられるが、これらに限定されない。低下した腐食レベルを有するそのような反応器は、アクリル酸の選択率を高め、副生成物形成を低下させることができる。
【0062】
本発明の脱水反応の実施に併せて、任意の適切なシステムを使用することができる。いくつかの実施態様では、本発明の反応経路を実施することと併せて使用するのに適したシステムは、反応器を含むことができ、場合により予熱器(たとえば、出発組成物、溶媒、反応物などを予熱するため)、ポンプ、熱交換器、凝縮器、材料処理装置など、およびこれらの任意の組み合わせの少なくとも1つを含むことができる。適切な反応器の例として、バッチ反応器、プラグフロー反応器、連続攪拌タンク反応器、充填床反応器、スラリー反応器、固定床反応器、流動床反応器などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施態様では、反応器は、単一段階または多段階であってもよい。いくつかの実施態様では、さらに、本発明の反応経路は、バッチ式、半連続式、連続式、またはそれらの任意の混成で行うことができる。
【0063】
上述したように、脱水反応は、液相および/または気相で行なわれうる。したがって、本明細書に記載の脱水反応および/またはシステムと併せて、キャリアガス(たとえば、アルゴン、窒素、二酸化炭素など)を利用することができる。いくつかの実施態様では、液相および/または実質的に単一の不活性ガス(たとえば、単一キャリアガスの約90%より多いキャリアガス)または複数の不活性ガスの混合物であってもよい気相中で脱水反応を行うことができる。いくつかの実施態様では、液相および/または実質的に二酸化炭素(たとえば、約90%より多い二酸化炭素であるキャリアガス)である気相中で脱水反応を行うことができる。
【0064】
いくつかの実施態様では、本発明の脱水反応は、約0.2時間
-1〜約1.5時間
-1、またはより好ましくは約0.5時間
-1〜約1.2時間
-1の単位時間当りの重量空間速度(WHSV)で進行することができる。
【0065】
いくつかの実施態様では、本発明の脱水反応生成物は、α,β-不飽和カルボン酸またはそのエステルおよび他の成分(たとえば、溶媒、重合禁止剤、副生成物、未反応の反応物、脱ヒドロキシル化触媒、または/またはエステル化触媒)を含んでいてもよい。したがって、本発明の脱水反応の生成物を分離してもよく、または生成物の成分(成分の混合物を含む)に精製してもよい。いくつかの実施態様では、溶媒を本発明の脱水反応の生成物から分離し、再使用するためにリサイクルすることができる。溶媒のリサイクルは、有利には、より少ない廃棄物を生成し、α,β-不飽和カルボン酸またはそのエステルを製造するコストを低減化することができる。
【0066】
分離および/または精製のための適切な技術として、蒸留、抽出、反応抽出、吸着、吸収、ストリッピング、結晶化、蒸発、昇華、拡散分離、吸着性泡分離、膜分離、流体-粒子分離など、およびそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0067】
本開示の利益を受ける当業者であれば、本明細書に記載されたさまざまな脱水触媒の少なくともいくつかを、インサイチュまたはエキソサイチュのいずれかで再生できることをさらに認識すべきである。たとえば、いくつかの実施態様では、ゼオライトおよび/または修飾ゼオライトは、酸素(たとえば、不活性ガスで希釈された空気または酸素)の存在下で高温で再生され得る。
【0068】
本発明のより良い理解を容易にするために、好ましいまたは代表的な実施態様の以下の実施例を示す。以下の実施例は、本発明の範囲を限定する、または定義するものと解釈されるべきではない。
【0070】
第1表は、実施例のセクション全体で使用された数種の計算の式を示す。
【0071】
反応物の定量:
Archer Daniels Midland Company(米国イリノイ州シカゴ)から受け取ったバイオベース乳酸サンプル(ADM LA-FCCおよびADM LA-HS USP)の2つの異なるサンプルを、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)および核磁気共鳴 (NMR)分光法を用いて分析し、乳酸とその二量体(ラクチド)の相対百分率を測定した。Shimadzu 10A HPLCを、SPD-10A UV-Vis検出器(210nm)およびPhenimenex Synergi 4m Fusion-RP 80Å×4.6mmカラムで操作した。移動相は10mMのリン酸(ナトリウム)水溶液であった。サンプル(20%乳酸水溶液)1mLをカラムに注入した。HPLCプロファイルでは、保持時間1.92分と6.92分における2つのピークが観察された(
図2)。1.92分の最初のピークは乳酸分画に起因し、6.92分の第2のピークはラクチド分画に起因した。このHPLC分析に基づいて、ADM FCCサンプルは63.0%の乳酸、35.6%のラクチドおよび1.5%の未知の物質を含み、ADM HS-USPサンプルは63.4%の乳酸、34.8%のラクチドおよび1.8%の未知の物質を含んでいた。
【0072】
供給物調製:
市販されているバイオベースの乳酸は、その濃度が約88%である。しかしながら、乳酸モノマーとそのオリゴマーとの間の平衡制限のために、乳酸の約72%のみしかモノマー形態で利用できない。残りの炭素は大部分がラクチド形態であり、少量部分は、より高次のオリゴマーの形態である。ラクチドおよびより長い鎖のオリゴマーは、バイオベースの乳酸製造プロセスの最終的な蒸発工程中に形成される。本発明による触媒脱水反応を、市販の88%乳酸製品の希釈を必要とする、5-60%の乳酸供給物で行った。完全で正確な炭素収支を決定するために、希釈した供給物を加熱処理して、ラクチドおよび他のオリゴマーのすべてを単量体の乳酸に変換した。
【0073】
希釈した乳酸供給溶液を丸底フラスコに入れ、熱処理の間に磁気攪拌棒で攪拌した。温度が80℃に達したら、溶液をその温度で15時間保持した。15時間の熱処理後、ラクチド濃度はほとんど無視できるほどになった。この加熱処理した乳酸溶液を触媒脱水反応に使用してアクリル酸を生成した。大量の乳酸供給物を調製する目的で、希釈供給物溶液の熱処理をインキュベーターシェーカーで行うことができる。
図3は、ラクチドを含有するバイオベースの乳酸の市販サンプルのクロマトグラムと熱処理時のラクチドピークの消失を示す。この図には、Sigma Aldrich Chemicals(LT2%)からのラクチド水溶液のクロマトグラフも示されている。乳酸エナンチオマー[D(-)乳酸またはL(+)乳酸]のタイプまたはエナンチオマー純度は、アクリル酸に対する脱水反応選択率に影響を及ぼさない。
【0074】
バイオベース乳酸サンプルであるADM LA-FCCおよびAMD LA-HS USPのプロトン(
1H)NMRスペクトルを、Bruker AV-360分光計で取得した。サンプル(16回の走査)を、
1H核について360MHzで実行した。
図4Aおよび4Bは、それぞれ乳酸およびラクチドの
1Hスペクトルの例である。
【0075】
乳酸脱水反応の定量:
乳酸水和反応生成物中の2,3-ペンタンジオン、ヒドロキシアセトン、酢酸、プロピオン酸およびアクリル酸を定量するために、FFAPキャピラリーカラムを備えたガスクロマトグラフィー装置(GC System-Agilent 7890A)を用いた。GC装置を以下のパラメータを用いて操作した:注入温度:250℃;検出器温度:300℃;空気流量:400ml/分;H
2流量44ml/分;He流量:30ml/分;オーブン温度:40℃で2分、20℃/分で220℃まで、5分間保持;注入量:1mlおよびスプリット比25:1。この操作条件下では、アクリル酸、ヒドロキシルアセトン、プロピオン酸、2,3-ペンタンジンおよび酢酸を分離して検出することが可能であった(
図5)。アクリル酸および他の生成物のモル選択率を、以下のように計算した:選択率=生成物の面積/生成物の総面積。この面積は、まず、較正曲線を利用して決定された応答係数で補正される。アセトアルデヒド、2,3-ペンタンジン、ヒドロキシアセトン、酢酸、プロピオン酸およびアクリル酸の保持時間はそれぞれ2.0分、3.4分、4.9分、8.0分、8.6分および9.2分であると決定された。アセトアルデヒド、2,3-ペンタンジン、ヒドロキシルアセトン、酢酸、プロピオン酸およびアクリル酸の応答係数は、それぞれ1.23、1.14、1.54、1.00、1.62および1.34であると決定された。生成物の総面積を計算する際、12.2分および12.3分の2つの未知のピークは、乳酸に関連しているので除外された。
【0076】
触媒ローディング、反応器セットアップおよび反応運転:
メスシリンダーを用いて触媒の体積を測定し、その重量を重量法で決定した。フラスウール、磁器ビーズ、アルミナビーズおよびチタンウールなどの不活性材料を使用して、触媒床を支持した。同様の不活性材料を、液体供給物を気化させるための予熱ゾーンとして使用するために、触媒床の頂部にも使用した。最初に支持体を挿入し、触媒を支持体の上にゆっくりと注いだ。反応器を軽くたたいて、触媒床を充填した。触媒床を炉の中心に配置した。冷却水再循環を使用して2℃にてすべての凝縮物を回収するために、冷却水ラインの入口と出口を、反応器出口の下に位置するる凝縮ジャケットに接続した。液体入口を、供給物を触媒床の上の予熱ゾーンに供給することができるように調整した。熱電対を反応器の中央に配置して、反応温度をモニターした。反応器全体が炉内に固定され、反応器に入る前に液体供給物と不活性キャリアガスとが混合される「T」ジョイントで接続が結合される。熱損失を防止するために、炉の上部および底部の開口部を、断熱材で覆った。目標の反応温度に達したときに、液体供給物および不活性キャリアガス流を所望の値で開始した。凝縮物を集め、応生成物を1時間毎に集めながら、脱水反応のショートランを4時間行った。分析データを、反応物の転化率、生成物の選択率および炭素収支を推定するために使用した。
【0077】
反応器設置の簡略図を
図6に示す。反応器の素材は、ステンレス鋼、石英、チタン、または金属合金のような任意の構成の材料でありうる。官能化されていないステンレス鋼の表面は、反応を妨げ、プロピオン酸などの望ましくない副生成物の増加をもたらす可能性があるので、反応器がステンレス鋼でできている場合、ステンレス鋼反応器の内面をシランカップリング剤(SCA)である(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシランで改質することが好ましい。石英表面は、乳酸に対するある程度の反応性を有し、反応に対して完全に不活性ではないことが判明している。しかしながら、石英製の反応器を用いることが好ましい。
【0078】
接続を完了し、漏れを防ぐために、適切な接続金具およびと密封剤を使用する。反応器は、液体供給物の液滴が触媒床上に滴下される滴下供給モードで、あるいは液体供給物が触媒床に接触する前に予熱ゾーンで気化される蒸気供給物モードとして、運転可能である。
【0079】
本発明で用いられるゼオライト触媒:
本発明で使用されるゼオライト触媒は、数社の異なる供給業者から得られた。この研究で使用されたさまざまなゼオライトについての詳細を第2表に示す。いくつかの選択された市販のゼオライトの元素分析を第3表に示す。
【0080】
ゼオライト触媒修飾:
乳酸からのアクリル酸の生成をもたらす脱水反応に使用する前に、本発明に用いられる触媒を、イオン交換反応または塩含浸、またはイオン交換と塩含浸の両方のいずれかに付した。本明細書で使用されるさまざまなゼオライトの命名法は、ゼオライトに加えられた修飾に関する詳細を提供する。簡単に言えば、最初の1〜2文字は、ゼオライトに結合する非骨格元素を示す。たとえば、HZSM-5という名前は、それが非骨格元素としてプロトン(H
+)を有するZSM-5ゼオライトであることを示す。NaZSM-5という名前は、それが非骨格元素としてナトリウム(Na
+)を有するZSM-5ゼオライトであることを示す。3xNa-ZSM-5はナトリウム塩で3回イオン交換されたゼオライトである。イオン交換反応に使用される親ゼオライトは、HZSM-5(H
+がNa
+と交換される)またはKZSM-5(K
+がNa
+と交換される)でありうる。7.1 wt%
Na2HPO4−3xNa-ZSM-5 isゼオライトは、3回のイオン交換反応に続いて1.1 wt%のNa
2HPO
4による含浸に付されたものである。
【0081】
特徴付けツール:
新鮮なゼオライト、イオン交換ゼオライト、塩含浸ゼオライト、および新鮮なゼオライトおよび使用済みゼオライトを評価するために、本発明において多数の技術を利用した。これらのゼオライト特徴付け技術として、温度プログラム脱着(TPD)、核磁気共鳴(NMR)、X線回折(XRD)、熱重量分析(TGA)、および表面積および細孔容積分析(BET分析)および元素組成の決定のための誘導結合プラズマ(ICP)が挙げられる。
【0082】
温度プログラム脱着(TPD):
いくつかのゼオライトサンプルについて、Micromeritics Autochem 2920を用いてNH
3-TPD測定を行って酸性度プロファイルを調べた。典型的な測定では〜0.5gのサンプルを使用した。熱伝導率検出器(TCD)を用いてNH
3の記載を測定した。前処理および分析条件を以下にまとめる:(1)前処理/乾燥:温度を10℃/分の速度で450℃まで上昇させ、Heガス流(50cc/分)下で60分間保持する;(2)NH
3吸着:50℃に冷却した後、NH
3をサンプルチューブ(20cc/分)に60分間導入する;(3)前脱着:ガスをHeに切り替え、温度を10℃/分の速度で150℃に上げ、80分間保持して物理吸着したNH
3を除去する:および(4)TPD:5℃/分の速度で650℃まで温度を上昇させ、60分間保持する。
【0083】
この手順は、ゼオライトの活性を特徴付けするために公開された文献に見出されるものの典型的なものである。典型的には、低温脱着ピークは、ルイス酸性度に関連し、高温ピークはブレンステッド酸性度と関連する。結果は、再吸着および他の充填床動力学の影響によっていくらか不明瞭になる可能性がある。したがって、結果は、典型的には、定量的な意味よりも定性的な意味で分析される
【0084】
核磁気共鳴(NMR):
すべての固体NMR実験を、Bruker AV300で行った。NMR技術は、ゼオライト中の非骨格カチオンとしての一方または他方のカチオンの取り込み、およびゼオライト材料に含浸されたアルカリ塩の相転移をモニターするのに有用である。
【0085】
X線回折(XRD):
下の段落は、インターネットおよびWikipediaからのXRDの一般的な説明である。X線粉末回折(XRD)は、結晶物質の相同定に主に使用される迅速分析技術であり、単位格子寸法に関する情報を提供することができる。分析した材料を細かく粉砕し、均質化し、平均バルク組成が決定される。これは、結晶の原子および分子構造を同定するために使用されるツールであり、ここで、結晶原子は、入射X線のビームを多くの特定の方向に回折させる。これらの回折ビームの角度および強度を測定することによって、結晶学者は結晶内の電子密度の3次元画像を生成することができる。この電子密度から、結晶中の原子の平均位置、ならびにそれらの化学結合、その障害およびさまざまな他の情報を決定することができる。単結晶X線結晶学の技術は、3つの基本ステップを有する。最初の、しばしば最も困難なステップは、研究中の材料の適切な結晶を得ることである。結晶は、十分に大きく(典型的には0.1mmより大きい)、組成が純粋で構造が規則的であるべきであり、クラックや双晶などの著しい内部欠陥を含むべきではない。
【0086】
第2のステップでは、結晶を通常は単一波長の強いX線ビーム(単色X線)中にに置き、規則的な反射パターンを生成させる。結晶が徐々に回転するにつれて、先の反射は消え、新たな反射が現れる;各スポットの強度は結晶のあらゆる方向において記録される。複数のデータセットを収集しなければならない場合があり、各セットは結晶の全回転の半分をわずかに上回り、典型的には数万の反射を含む。
【0087】
第3のステップでは、これらのデータは、相補的な化学情報とコンピュータで組み合わされて、結晶内の原子配列のモデルを生成し、改良する。原子配列の最終的な洗練されたモデル(現在は結晶構造と呼ばれる)は、通常、公開データベースに保管される。
【0088】
熱重量分析(TGA):
TA Instruments TGA2050を用いて、新鮮な触媒および使用済みの触媒のTGA分析を行った。新鮮なサンプルのTGAプロファイルは、新鮮な触媒の表面からの物理吸着された物質の脱着が200℃より低い温度で起こったことを示す。新鮮な触媒の場合、200℃後も質量損失はなかった。使用済みの触媒のTGAプロファイルは、200℃以上の温度での質量損失を伴う異なるプロファイルを示した。使用済みの触媒で発生する質量損失が炭素損失に起因すると仮定すると、使用済みの触媒の表面上の総炭素付着量を推定することができ、その値から、反応器に供給された総炭素を基準にして総炭素堆積物を計算することができた。
【0089】
表面積分析のためのブルナウアー、エメットおよびテラー(BET)法:
BET理論は、多孔質材料の外面および内面上のガスの物理的吸着という現象に基づく。特定の温度Tおよび相対蒸気圧P/Poを有する特定の気体によって取り囲まれ、平衡状態にある物質は、ある量の気体を物理的に吸着する。吸着される量は、その相対的な蒸気圧に依存し、材料の外面および内面の全体に比例する。BET表面積を得るために、真空を用いてサンプルを350℃で4時間脱気した後、Micrometrics ASAP 2020を用いて77Kで窒素吸着-脱着測定を行った。
【0090】
誘導結合プラズマ発光分析(ICP-OES)techniques:
本発明によるさまざまなプロセスから誘導されたサンプルは、誘導結合プラズマ発光分光分析法を用いて試験されうる。サンプルは、2%の微量金属グレードの硝酸を用いて5%未満の有機物に希釈される。ICP-OESは、0.05ppm〜10ppmの範囲の曲線を生成するので、標的分子濃度がこれらの濃度の間になるようにサンプルを希釈する。サンプルに複雑なマトリックスまたは不溶性の液体が含まれている場合、それらは、溶解される前に分解(digest)または灰化される。サンプルは、ICP-OESに接続されたオートサンプラーに配置され、最初、中間、最後の位置にて品質管理が行われる。次いで、ICP-OESは、標準を分析し、検量線を生成し、サンプルを分析する。ソフトウェアが、検出された各物質のppmを計算し、それらから、サンプルを調製したときの希釈係数に基づいて、物質の初期濃度を決定することができる。
【実施例1】
【0091】
ゼオライト触媒を修飾するためのイオン交換および塩含浸プロトコル
ゼオライトL触媒のK型は、非骨格カチオンとしてカリウムを有する。下記のイオン交換プロトコルに従って、非骨格カチオンとしてカリウムイオンをナトリウムイオンで置換することが可能である。ゼオライトK型15グラムを1M塩化ナトリウム溶液200mlに溶解し、室温で6時間攪拌した。このイオン交換プロトコルの変更版では、この撹拌工程を60℃で1時間、または6時間まで行うことが可能である。攪拌工程の終わりに、ゼオライトLを濾過し、このプロセスを3回繰り返す。3回目の濾過工程の終わりに、濾液を450℃まで2時間かけてゆっくりと上昇させ、450℃で2時間保持することによって仮焼した。仮焼した材料を、NMR分光法を用いて分析した。新鮮なゼオライトL-K型および1Xナトリウム交換(1XNa-ゼオライト-L)および3Xナトリウム交換(3XN-ゼオライト-L)型について、
27Alおよび
23Na固体NMRスペクトルNMRスペクトルを記録した。
図7に示す結果は、NaCl溶液を用いた3回のイオン交換反応の後でさえ、
27Al NMRシグナルがゼオライト中で同様のままであることを示す。一方、K型の新鮮なゼオライトでは、
23Na NMRシグナルは検出されなかった。しかしながら、ゼオライトL-K型と塩化ナトリウム溶液との1回のイオン交換または3回のイオン交換は、NMRスペクトルにおける
23Na特異的ピークの出現を示した(
図7)。この実施例1に記載されたイオン交換プロセスは、他のアルミノシリケート材料における非骨格カチオンの交換を達成するために、適切に変更されうる。変更されたイオン交換法は、イオン交換効率を向上させるための追加の中間熱処理工程を有する。これは、Zeolyst製のプロトン型のZSM-5材料をナトリウム型に変換し、それをTricat製のナトリウムZSM5と比較するために使用された。変更バージョンのイオン交換は、変更されたアクリル酸の選択率をもたらしたが、すでにナトリウム型になっていたため、これは決してTricat Na-ZSM5には適用されなかった。
【0092】
3XNa-ゼオライト-Lを7.1wt%Na
2HPO
4.7H
20によってさらに修飾し、450℃にて仮焼した。得られた7.1wt%Na
2HPO
4-3XNa-ゼオライト-Lを、300℃および350℃で反応物として乳酸を使用する気相脱水反応で使用し、
図8に示すように、乳酸脱水反応からの新鮮な触媒および使用済みの触媒について
31Pおよび
27Al NMRスペクトルを記録した。
【実施例2】
【0093】
ホウ素とのイオン交換反応
ゼオライトK-L型と呼ばれる、非骨格カチオンとしてカリウムを有するゼオライト-Lを、5% H
3BO
3溶液で処理するか、またはゼオライトK-L 1グラム当たり0.5ミリモルのH
3BO
3水溶液を含浸することにより、ホウ素でイオン交換した。イオン交換実験では、ゼオライトK-L型7.5gを、5%H
3BO
3水溶液に60℃で6時間懸濁させた。攪拌工程の終わりに、ゼオライトK-Lを濾過し、このプロセスを3回繰り返した。3回目の濾過工程の終わりに、濾液を2時間かけて450℃までゆっくりと上昇させ、450℃で2時間保持して仮焼した。得られるサンプルを1 X BゼオライトLと称した。この実施例のもう1つの態様では、1グラムのゼオライトK-L-型を0.5ミリモルの水性H
3BO
3溶液を含浸させ、得られる物質を室温で2時間保持し、次いで120℃で2時間熱処理した。最後に、ホウ酸含浸ゼオライトK-L型を450℃で2時間加熱し、450℃で2時間保持した。
11B固体NMRを用いて、元のゼオライトK-L型における非骨格カチオンとしてのホウ素の組み込みを行った。NMRスペクトルにおいて、前駆体であるH
3BO
3は、4.3ppm付近にブロードピークを示し、ホウ素が含浸されたゼオライトサンプルはで-3.6ppmのシフトが見られた。同様のNMRシグナルは、も1XBゼオライトLにも存在した(
図9)。
【実施例3】
【0094】
温度プログラム脱着分析
図10は、3種類の異なるゼオライトサンプル、すなわち、東ソーゼオライトY-330(H型)、NaY(Zeolyst製ゼオライトCC428)、および東ソーゼオライトL(K型)の温度プログラム脱着(TPD)プロファイルを示す。3種類の異なる非骨格元素(H
+、Na
+およびK
+)を有するこれらの3種の異なるゼオライトサンプルは、それらのTPDプロファイルで決定されるように、その表面酸性度において明確な差異を明らかに示した。ゼオライトY330は、非骨格元素としてプロトンを含んでいるため、総酸性度(弱と強)が最大になると期待される。Y330については、2つのタイプの酸性サイト(弱と強)が確認され、約250℃と370℃の2つのピークがほぼ同じ強度でほぼ重なり合っている。対照的に、NaYサンプルについては、第1のピーク(弱酸部位)は、第2のピークからの寄与がはるかに小さく、より顕著である。これは、ゼオライトYのH型に存在する強酸サイトが、NaYゼオライトのように、イオン交換によってNaを取り込むことで効果的に中和されうることを示す。ゼオライトL-K型は、弱酸サイトに対応する230℃付近に小さなピークを示し、強酸サイトの証拠は示さなかった。明らかに、カリウムとのイオン交換は、ゼオライトLの強酸基と弱酸基の両方を効果的に中和した。
【実施例4】
【0095】
ゼオライトのアンモニウム型の温度プログラム脱着プロファイル
図11は、3xNa交換の前後に記録されたアンモニウム型の341NHAゼオライトの温度プログラム脱着(TPD)プロファイルを示す。3xNa交換を、実施例1に記載したように行った。ナトリウム交換前後の341NHAゼオライトの元素分析を第4表に示す。341NHAのナトリウム含有量は、イオン交換後に60倍増加した。元のアンモニウム型の341NHAゼオライトは、広い温度範囲に及ぶ2つの広い、重なり合う脱着ピークを示した。3回のNa交換で、TPDプロファイルは〜300℃にて、より区別された単一ピークを示した。これは、ナトリウム交換により強い酸性部位は排除されるが、NaY(実施例3)またはNa-ZSM-5ゼオライト(実施例9)のように、弱〜中程度の酸部位は存在し続けることを実証する。
【実施例5】
【0096】
TPDプロファイルにおけるアルカリ含浸の影響
東ソー製の2種の新しいY型ゼオライト、すなわちHSZ300-320NAA(ゼオライトY、ナトリウム型)およびHSZ300-341341NHA(ゼオライトY、アンモニウム型)を、実施例1のような含浸プロセスにしたがってK
2HPO
4(mmolのK
2HPO
4/gのゼオライト)を含浸し、それらのTPDファイルを記録した。元のゼオライト320NAAおよびゼオライト341NHAのTPDプロファイルは、250〜300℃付近で同様の脱着ピークを示したが、ゼオライト341NHAでは、高温領域では脱着ピークがはるかに広かった(
図12)。これは、TPDプロファイルを記録する前に熱前処理中にアンモニウム基から形成されたはずの元のゼオライト341NHAの表面上のより強い酸部位の存在を確認する。1.0mmol/gのK
2HPO
4の含浸後、TPDプロファイル中の脱着ピークは実質的に弱く(ゼオライト320NAAで98%低下、およびゼオライト341NHAで約95%低下)、このことは、ゼオライトの表面酸性度に対するK
2HPO
4 のローディングの影響を実証した。
図12には、ゼオライトNaY441のTPDプロファイルも提供される。
【実施例6】
【0097】
モルデナイト(CBV-10A)ゼオライトおよびフォージャサイト(CC441)ゼオライトのTPDプロファイル
親CBV-10AおよびCC441ゼオライトからのNH
3脱着は、異なる温度でピークに達し、CBV-10Aについては350℃で、CC441については245℃でピークNH
3脱着が起こり、より強い酸性部位がCBV-10Aに存在することが示される(
図13)。さらに、CBV-10Aサンプルは、親ゼオライトおよびリン酸塩修飾サンプルの両方について、対応するCC441サンプルよりもはるかに大きな面積を有するピークを有していた。実施例1に記載のようにしてリン酸塩含浸を行った。相対的酸量は、単一であるとみなされたNaYCC441によるピークについての積分されたTPDシグナルに基づいて定義される。CBV-10Aの相対的な酸量は2.77と推定される。K
2HPO
4の含浸は、この値を2.77から0.17に実質的に減少させた。これは、塩含浸を含む修飾による酸性度の効果的な低下を確認する。しかし、それは、1.0mmol/gのK
2HPO
4/NaYCC441ゼオライト調製物の値(0.04)よりも依然として高く、NaYCBV-10Aゼオライト調製物中にK
2HPO
4をローディングした後でも残留酸性が残っていることを示唆する。
【0098】
図14は、さまざまなアルカリローディング(1.0 NaH
2PO
4、0.5 K
2HPO
4および1.0 K
2HPO
4)を有する修飾NaYCC441ゼオライトのTPDプロファイルを示す。アルカリローディングは、実施例1に記載したように行った。総アルカリローディングが増加するにつれて、350-400℃における肩部を有する150-350℃における脱着ピークは弱くなり、1.0 KH
2PO
4は顕著なピークをほとんど示さなかった。脱着率は、NaH
2PO
4では約270℃でピークに達したが、0.5 KH
2PO
4では〜230℃であり、総酸量に加えて、これらの修飾NaYゼオライトの酸強度にも若干の差があることを示した。
【0099】
図15は、酢酸セシウム単独またはK
2HPO
4と組み合わせたNaYCC441のTPDプロファイルにおけるローディング効果を示す。0.05mmolCsAc/gのゼオライトのローディングは、TPDプロファイルから決定されるように、NaYCC441の表面酸性度を大きく低下させた。ピーク面積に基づく相対的な酸量は、1.0(基準)から0.23に減少した。これは、元のNaYゼオライトの表面酸性度におけるセシウム修飾の有効性を証明する。CsAcとK
2HPO
4の共ローディング(co-loading)は、酸性度を0.01未満までさらに低下させたが、これは、1.0mmol/gのK
2HPO
4がローディングされたNaY441サンプルの表面酸性度に匹敵する。
【0100】
図16は、CaSO
4・2H
2OおよびBaSO
4とのイオン交換前後のNaY441ゼオライトのNH
3-TPDプロファイルを示す。4つのアルカリ硫酸塩(MgSO
4、CaSO
4・2H
2O、BaSO
4、およびK
2SO
4)を標準的な方法に従って含浸させた。CaSO
4・2H
20およびBaSO
4の両方が、NH
3-TPD技術によって測定されるように、NaY441ゼオライトの表面から酸性度を除去した。
【実施例7】
【0101】
浸漬および含浸後のNaY441ゼオライトのNH
3-TPDプロファイル
H
2O(〜20トール)で飽和した空気を650℃で6時間流すことにより、NaY(CC441)ゼオライトをチューブ炉内で蒸気処理した。サンプルの温度は、5℃/分で上昇した。650℃で蒸気処理したNaY(CC441)ゼオライトでNH
3-TPDを行ったところ、250℃のNH
3ピークがわずかに減少し、これは、ゼオライトの骨格からの脱アルミニウム反応によるゼオライトの酸性度の低下を示す。蒸気処理したNaYC441ゼオライトを1.0mmolのK
2HPO
4に含浸させると、NH
3-TPDプロファイルによって測定されるよに、蒸気処理したNaY441ゼオライトの酸性度は完全に排除された。
【実施例8】
【0102】
より高いSiO
2/Al
2O
3比を有するゼオライトのTPDプロファイル
ゼオライトHC1295は、〜10.8のSiO
2/Al
2O
3比を有し、ゼオライトHC1296は、〜23.2のSiO
2/Al
2O
3比を有する。より高いSiO
2/Al
2O
3比サンプルは、より小さなNH
3脱着ピークを与えるが、これは、骨格中のアルミニウムが、カチオン(たとえば、Na
+またはH
+)で補償されうる電荷欠損の起源であるので妥当である。一方、全体の酸量は少ないにもかかわらず、SiO
2/Al
2O
3比が高いこれらのゼオライトは、SiO
2/Al
2O
3比の低いゼオライトCC441よりも強い酸性サイトを有するように見える。CC441サンプルからの脱着は250℃でピークに達し、HC1295およびHC1296ゼオライトサンプルからの脱着は270℃でピークに達した。含浸後、SiO
2/Al
2O
3比が高いこれらのゼオライトでは、SiO
2/Al
2O
3比が低いゼオライトCC441と同様の酸性度の実質的な低下を示す有意なピークは見られなかった。
【実施例9】
【0103】
ZSM-5ゼオライトによるイオン交換および塩含浸試験
ZSM-5ゼオライトは、非骨格カチオンとしてテトラプロピルアンモニウムを用いて合成されるため、最初にアンモニウム型で合成され、続いてNaClでナトリウム型(Na-ZSM-5)にイオン交換される。NaZSM-5はTricatから市販されている。
【0104】
図19に示すように、元のNa-ZSM-5ゼオライトは、350℃で大きく広い脱着ピークを示し、これは、プローブ分子NH
3とNa-ZSM-5との強い相互作用を示す。商業的に入手可能なH-ZSM-5またはNH
4-ZSM-5のさらなる塩化ナトリウム処理を以下のように行った:Na-ZSM-5から得られた15gのゼオライトZSM-5を、200mlの1M塩化ナトリウム溶液に分散させ、室温で6時間撹拌した。このイオン交換プロトコルの変更版では、この撹拌工程を60℃で1時間または6時間まで行うことが可能である。このイオン交換プロトコルの変更版では、この撹拌工程を60℃で1時間、または6時間まで行うことが可能である。攪拌工程の終わりにゼオライトNa-ZSM-5を濾過し、塩化物を含まなくなるまで過剰量の水で洗浄した。固体物質を220℃で2時間乾燥させた。このイオン交換工程を合計3回繰り返す。最終濾過した固体を2時間かけて450℃までゆっくり昇温し、450℃で2時間保持して仮焼した。仮焼された物質は、 x Na Na-ZSM-5と称される。市販の供給者からのNa-ZSM-5をさらなる1 x Na交換に付しても、TPDプロファイルから測定されるように、その表面酸性度は低下されかった;実際、TPDプロファイルにおけるアンモニウム脱着ピークは、高温側に向かってわずかにシフトした。同様に、1回のバリウム交換では、TPDプロファイルは400℃以上の温度範囲でわずかに広くなった(
図21)。
【0105】
K
2HPO
4(1.0mmol K
2HPO
4/g 触媒)での市販の供給者から入手したNa-ZSM-5ゼオライトの含浸は、そのTPDプロファイルから決定されるように、Na-ZSM-5ゼオライトの表面酸性度を有意に低下させた。1.0mmol K
2HPO
4/g ゼオライトを含浸させた後、脱着が実質的に減少し、250℃付近にピークが見られ、非修飾Na-ZSM-5ゼオライトにおける350℃での脱着ピークとは対照的に、塩含浸後の弱酸部位の保持を示唆する。これは、塩含浸がNa-ZSM-5の表面の酸性度を抑制するのに有効であることを確認する。それにもかかわらず、Na-ZSM-5ゼオライトに対する塩含浸の影響は、Y型ゼオライトのナトリウム型であるNaY441の表面酸性度に及ぼす塩含浸の影響ほどではなく、1.0mmol K
2HPO
4/g ゼオライトのローディング後のTPDプロファイルでは、目立つピークがほとんど検出されなかった。含浸工程においてリン酸塩濃度をさらに増加させることにより、Na-ZSM-5の表面酸性度をさらに低下させることができた。したがって、含浸工程におけるリン酸塩濃度を1.5mmol K
2HPO
4/g ゼオライトに増加させることにより、Na-ZSM-5の表面酸性度は、1.0mmol K
2HPO
4/g ゼオライトのリン酸塩濃度で到達したレベルから低下された。含浸工程でのリン酸塩濃度を2.0mmol K
2HPO
4/g ゼオライトに増加させると、表面酸性度がほぼ完全に除去され、500℃未満のTPDプロファイルには著なピークが存在しなかった。しかしながら、2.0mmol K
2HPO
4/g ゼオライトの濃度のリン酸塩ローディングは、550℃付近で異常に大きなピークを示した。これは、500℃以上の温度での加熱時にK
2HPO
4が分解された結果である可能性が高い。
【0106】
Na-ZSM5ゼオライトを、以下のプロトコルを用いて塩化セシウム(CsCl)でイオン交換した:5gのNa-ZSM5を200mlの0.5M CsCl溶液に懸濁させ、一晩(>12時間)攪拌し、濾過した。濾液を水1.5Lで洗浄し、450℃で2時間仮焼した。450℃の仮焼温度は2時間のうちにゆっくりと達成された。これらの工程段階を3回繰り返した。Cs交換NaZSM-5ゼオライトのTPDプロファイルを
図20に示す。元のNa-ZSM-5は340℃付近で広い脱離ピークを示した。3回のCsCl処理後、顕著なピークは見られなかった。TPDプロファイルにおける脱着ピークの消失は、NaのCsへの置換に成功したことを反映するはずである。興味深いことに、3x Cs Na-ZSM-5上へのリン酸塩ローディング(4.0mmol KH
2PO
4/g ゼオライト)の後、KH
2PO
4とゼオライト支持体との相互作用を示唆しているように見える脱着ピークは、それでもなお非常に小さいが、NH
3吸着のためのいくつかの部位を誘発し、それにより、リン酸塩含浸後の3xCs Na-ZSM-5ゼオライトのTPDプロファイルにわずかな上昇を引き起こすかもしれない(
図20)。
【実施例10】
【0107】
元のNa-ZSM-CO
2-TPDのCO
2-TPDプロファイル
図22は、元のNa-ZSM-5、1.0および2.0mmol/g K
2HPO
4をローディングしたNa-ZSM-5サンプルならびに参照としてのMgOのCO
2-TPDプロファイルを提供する。Na-ZSM-5は、350℃付近ではっきりとした脱着ピークを示し、150℃ではもう1つのさらに小さなピークを示した。ゼオライト構造におけるカチオンは、強い静電相互作用のためにCO
2などの極性分子の吸着を高めることができることが報告されている。このピークは、K
2HPO
4塩のローディングにより低温領域(220-250℃)にシフトし、ピークは、より多いK
2HPO
4(2.0 mol/g)のローディングの増加とともに減少した。当初は、K
2HPO
4ローディングに起因するゼオライトの塩基性の増加は、脱着ピークの増加を可能にするか、またはそれをCO
2-TPDプロファイルにおいて高温にシフトさせると予想された。観察された結果はこの予想とは逆であり、これは塩ローディングによるゼオライトの表面上の物理的変化と関連している可能性がある。塩の濃度が高いほどゼオライトの測定可能な表面積が減少するかもしれない。
【実施例11】
【0108】
Na-ZSM-5および4.0K1/NaZSM-5触媒についてのフェノール-TPDプロファイル
ZSM-5ゼオライトの表面上の「酸-塩基」対を、フェノールをプローブとして用いる温度プログラム脱着技術により特徴付ける努力がなされた。フェノール-TPD実験における予備試験を、Autochem 2920装置を用いて行った。フェノールを加熱ジャケットに取り付けられたフラスコに導入し、装置の蒸気発生器を60℃に保った。フェノール蒸気圧は、アントワーヌ方程式に基づいて〜6mbar付近であると推定される。フェノール蒸気を充填したサンプルループを、サンプル0.3gを450℃で2時間脱気した後、50℃でサンプルセルに導入した。温度プログラム脱着を、温度を10℃/分の速度で650℃まで上昇させることによって行った。Na-ZSM-5および修飾Na-ZSM-5(4.0mmol KH
2PO
4/g Na-ZSM-5)を分析した。
【0109】
図23は、Na-ZSM-5および4.0mmol KH
2PO
4/g Na-ZSM-5ゼオライトについてのフェノール-TPDプロファイルを提供する。典型的なNH
3-TPDプロファイルと比較して、フェノール-TPDプロファイルのシグナルは10分の一の弱さであり、シグナル対雑音比が悪かった。この比は、フラスコ温度、脱着温度勾配、サンプルローディングなどの機器分析パラメータを調整することによって改善される可能性がある。非修飾Na-ZSM-5ゼオライトは、330℃〜470℃で最初の脱離ピークを示し、シグナルは、500℃〜650℃の範囲で上昇し続けた。一方、4.0mmol KH
2PO
4/g Na-ZSM-5ゼオライトにおいては、脱着は約220℃で開始し、400℃に達するまで常に増加し、650℃で分析が終了するまで安定したままであった。非修飾Na-ZSM-5は、初期脱着温度がより高く、4.0mmol KH
2PO
4/g Na-ZSM-5ゼオライトのものと比較して、フェノール表面種が、非修飾Na-ZSM-5において、より安定であることを示した。NH
3-TPDによる酸性度についてのさまざまな触媒の定量を第5表に示す。
【実施例12】
【0110】
さまざまなゼオライトにおけるBET表面積の測定
BET表面積を得るために、真空を用いて350℃で4時間20-60メッシュサンプルを脱気した後、77KでMicromeritics ASAP 2020を用いて窒素吸着-脱着測定を行った。第6表に示すように、リンドーピング後の全てのゼオライトサンプルにおいて表面積の減少が観察され、このリン酸塩ドーピング後にゼオライトの細孔の実質的な部分がブロックされることが示唆された。
【実施例13】
【0111】
修飾NaZSM-5ゼオライトを用いる乳酸の触媒脱水
NaZSM-5は、Tricat製の市販ゼオライトである。この一連の実験では、第1表で説明されているように、転化効率および選択率の点から、修飾NaZSM-5ゼオライトの気相脱水反応における効率を決定した。
【0112】
実験の最初のセットでは、NaZSM-5ゼオライトを、第7表に示す5つの異なるリン酸カリウム化合物の1つを含浸させることにより修飾し、修飾NaZSM-5ゼオライトのそれぞれを、気相脱水反応における効率について試験した。反応物質として乳酸を使用した気相脱水反応を、以下の実験パラメータを用いて行った:ガス流速:55cc/分;供給物:加熱処理した20% USP乳酸;供給物流速:0.1 cc/分;温度:330℃;触媒体積:3 cc。
表7に示す結果は、試験した5つの異なるリン酸カリウム化合物のうち、2mmol/g ゼオライトでの一塩基性リン酸カリウム(KH
2PO
4)が、アクリル酸生成のための乳酸を用いた気相脱水反応における唯一の主要な副生成物としてアセトアルデヒドの生成をもたらすという点で効率的なドーピング剤であることが判明した。
【0113】
NaZSM-5ゼオライトの修飾において試験された5つの異なるリン酸カリウム化合物のうち、KH
2PO
4が望ましいドーピング剤であることが確立されたので、次の一連の実験において、NaZSM-5ゼオライトにKH
2PO
4の異なる量を含浸させて、KH
2PO
4ローディングの適切な量を決定した。修飾
NaZSM-5を用いる気相乳酸脱水反応を、以下のプロセスパラメータを用いて行った:ガス流速:55cc/分;供給物:加熱処理した20% USP乳酸;供給物流速:0.1 cc/分;温度:330℃;触媒体積:3 cc。第8表に示す結果から、4mmol/g ゼオライトの濃度のKH
2PO
4で修飾したNaZSM-5触媒は、アセトアルデヒドに対する選択率を低下させ、アクリル酸に対する選択率を比例的に増加させ、アセトアルデヒド以外の副生成物を排除する点で非常に有効であることが見出された。
【0114】
第9表は、次のプロセスパラメータを使用する、4mmol KH
2PO
4/g NaZSM-5による修飾ゼオライトを用いる乳酸供給物の蒸気脱水効率における供給物濃度の影響を示す:ガス流速:55cc/分;供給物:加熱処理したUSP乳酸;供給物流速:0.1 cc/分;温度:330℃;触媒体積:3 cc。予熱ゾーンなしでチタンウールを触媒床の支持体として使用する滴下床モードにおける1/2”チタン反応器でのアクリル酸選択率のための脱水反応において、さまざまなバイオベース水性乳酸濃度(15重量%、20重量%および25重量%)を有する3つの異なる水溶液を試験した。供給物を、フルモノマー転化のための熱処理に付した。Tricatから入手したNaZSM5触媒を、初期含浸技術によって修飾し、脱水反応に用いた。4.0ミリモルのKH
2PO
4を含有する水溶液を、滴下により1グラムのNaZSM-5触媒に含浸させた。KH
2PO
4含浸NaZSM-5触媒を250℃で仮焼し、続いて、乳酸脱水反応器で用いた。
【0115】
第10表は、修飾NaZSM-5触媒によって触媒される脱水反応における温度の影響を示す。
【0116】
第11表は、修飾NaZSM-5触媒によって触媒される脱水反応におけるキャリアガス流速の影響を示す。
【0117】
第12表は、修飾NaZSM-5触媒によって触媒される脱水反応におけるキャリアガスタイプの影響を示す。
【0118】
第13表は、修飾NaZSM-5触媒によって触媒される脱水反応における仮焼温度の影響を示す。
【0119】
図24は、Na-ZSM-5触媒1g当たり4mm KH
2PO
4の濃度でKH
2PO
4を含浸させたNa-ZSM-5触媒についての主要生成物のLA転化および正規化重量選択率の経時変化を示す。
【実施例14】
【0120】
修飾NaZSM-5ゼオライトのX線回折パターン
図25は、商業供給者から入手したNaZSM5ゼオライト、KH
2PO
4含浸後の新鮮なNaZSM-5触媒および乳酸脱水反応器中での4時間の使用後の使用済み触媒のX線回折パターンを示す。X線回折パターンが示すように、KH
2PO
4含浸の結果として、または高温での仮焼に続いての乳酸脱水反応器内での4時間の使用の結果としてのNa-ZSM-5触媒の結晶相の損失はない。新鮮および使用済みの両方の触媒は、MFIゼオライトフ骨格のパターンのみを示し、X線回折パターンには他の大きなピークは見られなかった。新鮮な触媒では、1つの小さなピークが39.6°で見出され、反応の実行後に消失した。それはいくつかのカリウムまたはリン酸種に起因する可能性ggるが、我々はデータベースにおいて合理的な一致を見つけることができなかった。
【0121】
実施例14
脱水反応の生成物におけるリン分析
乳酸脱水反応器からの反応物流において1時間ごとに元素分析を行って、NaZSM-5ゼオライトにローディングされたリンが反応期間中に生成物流に浸出するかどうかを決定した。このリン分析の結果を第14表に示す。8つのサンプルの中で、3つのサンプルには検出可能なリン量は含まれていなかった。他の5つのサンプルについては、低濃度(0.1-0.3mg/L)のリンが検出された。脱水反応の4時間の間に浸出したこのリンは、触媒中に最初に存在するリンの<0.002%(製造条件に基づいて1グラム当たり約4mmol)しか占めなかった。したがって、触媒からのリンの浸出が、触媒脱水反応中に起こった;しかしながら、観察されたリン浸出は、実験が実施された時間スケールでは重要ではない。
【実施例15】
【0122】
修飾NaNH4CZP27ゼオライトを用いる乳酸の触媒脱水
〜27のSiO
2/Al
2O
3比を有するClariant製のNH4CZP27ゼオライトは、アンモニウム型である。このゼオライトでイオン交換を行って、以下のプロトコルを用いてナトリウム型に転化した:10gのNH
4CZP27を200mlの1.0M NaCl溶液に溶解し、60℃で一晩(>12時間)攪拌し、濾過した。濾液を1.5Lの水で洗浄し、温度を2時間450℃までゆっくりと上げ、その温度で2時間保持して仮焼した。このプロセスを3回繰り返し、得られた3X Na-NH
4CZP27を、濃度4.0mmolKH
2PO
4/g 3X Na-NH4CZP27ゼオライトのモノリン酸カリウムを含浸させた。反応物として乳酸を用いる気相脱水反応における修飾3X Na-NH
4CZP27の転化効率および選択率を第15表に示す。
【実施例16】
【0123】
脱水反応におけるZSM5触媒中のシリカ対アルミナ比の影響
異なるシリカ(SiO
2)対アルミナ(Al
2O
3)r比のZSM5ゼオライトを、乳酸脱水反応における効率について評価した。異なるSi/Al比を有する5つの異なるZSM-5触媒を、その商業的供給源から入手した(第16表)。上記「実験セクション」に記載のイオン交換手順に従って、これらのZSM-5ゼオライトをナトリウム型に変換し、ICP分析によって完全な転化を確実にした。
図26は、乳酸脱水反応中の、アクリル酸(AA)、ヒドロキシアセトン(HydAce)、アセトアルデヒド(AceAld)、2,3-ペンタンジオン(23P)およびプロピオン酸(PropAc)に対する乳酸転化率および選択率における、異なるSi/Al比を有するこれらのゼオライトの有効性を提供する。提示されたデータは、各実験について4時間の稼動中の平均である。
【実施例17】
【0124】
新鮮および使用済みの3XNゼオライトLのTGAプロファイル
TGA分析を行って、ゼオライト触媒中の炭素質堆積物を脱水反応器中で特定の時間使用した後に定量した。新鮮および使用済みの3 X NゼオライトL サンプルの予備的TGA分析を、TA Instruments TGA 2050を用いて行った。約15mgのサンプルをプラチナパンに置き、空気中で10℃/分の速度で900℃に加熱した。結果を
図27に示す。新鮮なサンプルのプロファイルは、200℃未満での表面に物理吸着されたものの脱着を示す。200℃より後の質量損失はない。使用済みの3x NaゼオライトL触媒については、減量プロファイルは、新鮮なサンプルとはかなり異なる。定常状態の重量比が炭素の損失のみを表すと仮定すると、炭素の重量は初期触媒重量の〜11%であると推定される。堆積物の実際の質量は70.4mgと推定され、これは、堆積物が純粋な炭素であると仮定して、4時間の反応中に供給された炭素の3.8%を占める。
【0125】
図28に、新鮮および使用済み触媒4.0mmol
KH2PO4/g-Na-ZSM-5のTGA分析を提供する。4.0mmolのKH
2PO
4/g-Na-ZSM-5触媒が、毎時総炭素収支の4.8%を占める炭素堆積(3.2wt%; 32mg/g-触媒)を含むことが見出された。4.0mmolのKH
2PO
4/g-Na-ZSM-5触媒の10時間の稼動後の堆積は、4.2重量%のみであった。
【実施例18】
【0126】
4mmol KH
2PO
4に対する支持体の比較
この実験では、シリカゲル(Sigma-Aldrich:236810)、メソ多孔質シリカゲル(SBA-15)、NaYCC441ゼオライトおよびNa-ZSM-5ゼオライトを支持体材料としての使用について評価した。初期含浸法に従い、サンプルを300℃で3時間仮焼した。脱水反応を、USP 20%LA供給物溶液を用いて330℃で4時間行った。
図29に示すように、アクリル酸に対する乳酸の転化率および正規化乳酸選択率を決定した
【実施例19】
【0127】
NaY441およびNaZSM5触媒の特徴付け
図30は、異なる温度で仮焼された4.0mmKH
2PO
4/g -Na-ZSM-5触媒および200℃で仮焼された使用済み触媒の
31P固体NMRスペクトルを示す。
【0128】
〜1ppmのピークは、支持されたサンプル中の最も弱いピークである骨格アルミニウムと反応しなかった過剰のリン化合物と関連する。-7ppmのピークは、ピロリン酸(またはポリリン酸種中の末端 [PO4]3-)のリン原子に起因する。-7ppmのピークは、仮焼温度が200℃から300℃に上昇したとき、-19ppmのピークに比して強度が減少し、次いで、400℃および使用済み触媒で増加する。-19ppmでの残ている広い共鳴は、より長いポリマーリン酸鎖および過剰な骨格リン酸アルミニウムならびに高縮合ポリホスフェート種のシグナルを含む。これは、リンがケイ素サイトを占有して(SiO)
xAl(PO)
4-x種を形成するように四面体配位骨格Al種におけるSi-O-Al結合の一部が破壊されたことを示唆している可能性がある。
【0129】
図31は、3つの異なる新鮮および使用済みの触媒の写真を提供する。1.0mmolのK
2HPO
4/gを含浸させたNaY 441ゼオライトの場合、新鮮な触媒と比較して、使用済みの触媒はわずかに褐色であった。さらに、1.0mmolのK
2HPO
4/gを含浸させたNaY 441ゼオライトを使用して乳酸を気相脱水して得られる生成物はわずかに濁っており、黄色であった。1.25mmolのK
2HPO
4/gを含浸されたNaZSM-5ゼオライトおよび4.0mmolのKH
2PO
4/gを含浸されたNaZSM-5ゼオライトの場合、使用済みの触媒は元の白色を維持した。さらに、1.25mmolK
2HPO
4/gを含浸させたNaZSM-5ゼオライトおよび4.0mmol KH
2PO
4/gを含浸させたNaZSM-5ゼオライトを用いて乳酸を気相脱水して得られる生成物は、透明で無色の外観であった。
【0130】
したがって、本発明は、上述した目的および利点ならびにその中に内在する利点を達成するためによく適合する。上述した特定の実施態様は、本発明の教示の利益を有する当業者には明らかであるところの、相違するが同等である様式で本発明を修正し実施することができるため、例示的なものに過ぎない。さらに、以下の特許請求の範囲に記載されたもの以外に、本明細書に示された構成または設計の詳細に治して、制限は意図されていない。したがって、上に開示された特定の例示的な実施態様は、変更、組み合わせ、または修飾されてもよく、そのような変更はすべて本発明の範囲および趣旨内にあると考えられることは明らかである。本明細書に例示的に開示された本発明は、本明細書に具体的に開示されていない任意の要素および/または本明細書に開示される任意の要素が存在しない場合でも実施することができる。組成物および方法は、「含む」、「含有する」、または「包含する」という用語で記載されているが、組成物および方法は、さざまな成分およびステップを「本質的に、からなる」または「からなる」こともできる。上に開示された全ての数および範囲は、いくらかの量だけ変化し得る。下限および上限を有する数値範囲が開示されるときはいつでも、範囲内の任意の数および包含範囲が具体的に開示される。特に、本明細書に開示される値のあらゆる範囲(「約a〜約b」または同等に「約a〜b」または同等に「約a-b」の形態)の範囲は、より広範な値に包含されるすべての数値および範囲を明記するものと理解されるべきである。また、特許請求の範囲中の用語は、特許権者によって特に明白かつ明確に定義されていない限り、平易で通常の意味を有する。さらに、特許請求の範囲で使用されるような不定冠詞「a」または「an」は、本明細書において、それが導入する1つまたは複数の要素を意味すると定義される。本明細書および本明細書に参考として援用され得る1つまたは複数の特許または他の文書の中で単語または用語の使用に何らかの矛盾がある場合、本明細書と一致する定義が採用されるべきである。
【0131】
【表1】
【0132】
【表2】
【表3】
【0133】
【表4】
【0134】
【表5】
【0135】
【表6】
【0136】
【表7】
【0137】
【表9】
【0138】
【表10】
【表11】
【0139】
【表12】
【0140】
【表13】
【表14】
【0141】
【表15】
【0142】
【表16】
【0143】
【表17】
【0144】
【表18】
【0145】
【表19】
【0146】
【表20】
【0147】
参考文献
すべての参考文献は、読者の便宜のために記載されている。各参考文献は、その全体が参照することにより援用される。
米国特許第Re. 29,857号
米国特許第2,183,357号
米国特許第2,464,364号
米国特許第2,859,240号
米国特許第2,881,205号
米国特許第2,882,243号
米国特許第2,882,244号
米国特許第2,962,525号
米国特許第3,012,853号
米国特許第3,022,336号
米国特許第3,087,962号
米国特許第3,130,007号
米国特許第3,702,886号
米国特許第4,631,264号
米国特許第4,657,749号
米国特許第4,729,978号
米国特許第4,786,756号
米国特許第4,995,963号
米国特許第5,068,399号
米国特許第5,071,754号
米国特許第5,250,729号
米国特許第5,252,473号
米国特許第5,268,506号
米国特許第5,294,579号
米国特許第5,371,273号
米国特許第6,096,936号
米国特許第6,545,175号
米国特許第6,992,209号
米国特許第7,238,636号
米国特許第7,538,247号
米国特許第7,629,162号
米国特許第7,687,661号
米国特許第7,696,375号
米国特許第7,851,188号
米国特許第7,910,342号
米国特許第7,993,889号
米国特許第9,012686号
米国特許公開第US20040158113号
米国特許公開第US2010195505号
米国特許公開第US20100129886号
米国特許公開第US20100221801号
米国特許公開第US20100062505号
米国特許公開第US20110183392号
米国特許公開第US20110159558号
米国特許公開第US20110195505号
米国特許公開第US 20110112334号
欧州特許公開第0,614,983号 A2
日本特許公開2003-284580要約
日本特許公開2004-315411要約
国際公開公報 WO/2011/040700
Aida, T. K., Ikarashi, A., Saito, Y., Watanabe, M., Smith Jr., R. L., and Arai, K. (2009) J. Supercritical Fluids 50: 257-264.
Alvarez, M. E. T., Moraes, E. B., Machado, A. B., Filho, R. M., Wolf-Maciel, M. R. (2007) Evaluation of liquid-liquid extraction process for separating acrylic acid produced from renewable sugars. App. Biochem. Biotech. 136-140: 451-462..
Danner, H., Urmos, M., Gartner, M., and Braun, R. (1998) Biotechnological production of acrylic acid from biomass. App. Biochem. Biotechnol. 70-72: 887-894.
Fan, Y., Zhou, C., and Zhu, X. (2009) Selective catalysis of lactic acid to produce commodity chemicals. Catalysis Review 51(3): 293-324)
Glauser, J., Blagoev, M., and Kumamoto, T. (2011) CEH Marketing Research Report. Acrylic acid, acrylate esters and superabsorbent polymers.
Gunter, G. C., Langford, R. H., Jackson, J. E., Miller, D. J. (1995) Catalysts and supports for conversion of alctic acid to acrylic acid and 2,3-pentanedione. Ind. Eng. Chem. Res. 34: 974-980.
Iizuka, T., Fujie, S., Ushikubo, T., Chen, Z-h., Tanabe, K. (1986) Esterification of acrylic acid with methanol over niobic acid catalyst. App. Catal. 28: 1-5.
Jiang, X., Meng, X. and Xian, M. (2009) Biosynthetic pathway for 3-hydroxy propionic acid production. Appl. Microbiol. Biotechnol. 82: 995-10030.
Jinfeng, Z., Jianping, L., Xiaobo, X. and Peilin, C. (2008) Evaluation of catalysts and optimization of reaction conditions for the dehydration of methyl lactate to acrylates. Chin. J. Chem. Eng. 16: 263-269.
Lira, C. T and McCrackin, P. J. (1993) Ind. Eng. Chem. Res. 32: 2608-2613
Lunelli, B. H., Rivera, E. C., Vasco de Toledo, E. C., Macial, M. R. W., and Filho, R. M. (2008) Appl. Biochem. Biotechnol. 148: 175-187
Mok, W. S-L., and Antal Jr. M. J. (1989) Formation of acrylic acid from lactic acid in supercritical water. J. Org. Chem. 54: 4596-4602.
Shi, H. F., Hu, Y. C., Wang, Y., Huang, H. (2007) KNaY-zeolite catalyzed dehydration of methyl lactate. Chin. Chem. Lett. 18: 476-478.
Straathof, A. J. J., Sie, S., Franco, T. T. (2005) Feasibility of acrylic acid production by fermentation. Appl. Microbiol. Biotechnol. 67: 727-734.
Sun, P., Yu, D., Fu, K., Gu, M., Wang, Y., Huang, H. and Ying, H. (2009) Potassium modified NaY: A selective and durable catalyst for dehydration of lactic acid to acrylic acid. Catal. Comm. 10: 1345-1349.
Wadley, D. C., Tam. M. S. Kokitkar, P. B., Jackson, J. E., Miller, D. J. (1997) Lactic acid conversion to 2,3-pentanedione and acrylic acid over silica-supported sodium nitrate: Reaction optimization and identification of sodium lactate as the active catalyst. J. Catal. 165: 162-171.
Wang, H., Yu, D., Sun, P., Yan, J. Wang, Y. and Huang, H. (2008) Rare earth metal modified NaY: Structure and catalytic performance for lactic acid dehydration to acrylic acid. Catal. Comm. 9: 1799-1803.
Yang, Jung-II, Cho, S-H., Kim, H-J., Joo, H., Jung, H., Lee, K-Y. (2007) Production of 4-hydroxybutyl acrylate and its reaction kinetics over amberlyst 15 catalyst. Can. J. Chem Eng. 85: 83-91.
Zhang, J., Lin, J., Cen, P. (2008) Catalytic dehydration of lactic acid to acrylic acid over sulfate catalysts. Can. J. Chem. Eng. 86:1047-1053.
Zahng, Z., Qu, Y. Wang, S. and Wang, J. (2009) Catalytic performance and characterization of silica supported sodium phosphates for the dehydration of methyl lactate to methyl acrylate and acrylic acid. Ind. Eng. Chem. Res. 48: 9083-9089.
Xhang, Z., Qu, Y., Wang, S., Wang, J. (2010) Theoretical study on the mechanisms of the conversion of methyl lactate over sodium polyphosphate catalysts. J. Mol. Catal. A: Chem. 323: 91-100.
Xu, X., Lin, J. and Cen, P. (2006) Advances in the research and development of acrylic acid production from biomass. Chinese J. Chem. Eng. 14: 419-427.
B.Q. Xu, T. Yamaguchi, K. Tanabe, Mater. Basedonthe literature on phenol TPD on silica alumina, MgO and ZrO2Chem. Phys 1988 19, 291-297.
Zhang, J., Zhao, Y., Pan, M., Feng, X., Ji, W., Au, C-T. (2011) Efficient acrylic acid production through bio lactic acid dehydration over NaY Zeolite modified by alkali phosphates. ACS Catal. 1: 32-41.