(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記多官能アクリレート系化合物の含有量が、極性基含有ポリオレフィン系重合体100質量部に対して5〜30質量部である、請求項1に記載のプライマー層形成用硬化性組成物。
前記プライマー層形成用硬化性組成物が、さらに、ポリイソシアナート系架橋剤を含有するものであって、ポリイソシアナート系架橋剤の含有量が、極性基含有ポリオレフィン系重合体100質量部に対して1〜10質量部である、請求項1又は2に記載のプライマー層形成用硬化性組成物。
前記プライマー層形成用硬化性組成物が、さらに、シランカップリング剤を含有するものであって、シランカップリング剤の含有量が、極性基含有ポリオレフィン系重合体100質量部に対して0.01〜5質量部である、請求項1〜3のいずれかに記載のプライマー層形成用硬化性組成物。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を、1)プライマー層形成用硬化性組成物、2)ガスバリア性積層フィルム、及び、3)ガスバリア性積層体、に項分けして詳細に説明する。
【0012】
1)プライマー層形成用硬化性組成物
本発明のプライマー層形成用硬化性組成物は、少なくとも極性基含有ポリオレフィン系重合体と、多官能アクリレート系化合物を含有する、ガスバリア性積層フィルムのプライマー層形成用硬化性組成物である。
【0013】
プライマー層形成用硬化性組成物に含まれる極性基含有ポリオレフィン系重合体は、極性基を含むポリオレフィン系重合体である。極性基含有ポリオレフィン系重合体を用いることで、ガスバリア層との密着性に優れるプライマー層を効率よく形成することができる。
【0014】
ポリオレフィン系重合体は、エチレン由来の繰り返し単位、プロピレン由来の繰り返し単位等のオレフィン由来の繰り返し単位を含む重合体をいう。オレフィン由来の繰り返し単位の含有量は、全繰り返し単位に対して通常50モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上である。
【0015】
ポリオレフィン系重合体の具体例としては、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、超々低密度ポリエチレン、ポリメチルペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−1−ブテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体、プロピレンと炭素数5〜12のα−オレフィンとからなる共重合体、プロピレン−非共役ジエン共重合体、エチレン−非共役ジエン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体、ポリブテン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルトリメトキシシラン共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、及びその水素添加物等が挙げられる。
これらのポリオレフィン系重合体は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0016】
極性基としては、水酸基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、酸無水物基等が挙げられる。これらの中でも、極性基としては、カルボン酸基、酸無水物基又は水酸基が好ましく、水酸基がより好ましい。
【0017】
極性基含有ポリオレフィン系重合体は、ポリオレフィン系重合体に対して極性基を有する化合物を用いて変性処理を施したり、オレフィン系単量体と極性基を有する単量体を用いて共重合させたりすることにより得ることができる。これらの中でも、極性基含有ポリオレフィン系重合体としては、後述する酸変性ポリオレフィン系重合体や水酸基導入ポリオレフィン系重合体が好ましい。
【0018】
酸変性ポリオレフィン系重合体としては、ポリオレフィン樹脂を不飽和カルボン酸又はその無水物で変性して得られる重合体が挙げられる。
不飽和カルボン酸又はその無水物としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、テトラヒドロフタル酸、アコニット酸、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水グルタコン酸、無水シトラコン酸、無水アコニット酸、ノルボルネンジカルボン酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物等が挙げられる。これらは、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0019】
水酸基導入ポリオレフィン系重合体としては、ポリオレフィンを水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルや水酸基含有ビニルエーテルで末端変性したり、グラフト変性したりして得られる重合体が挙げられる。
水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸ヒドロキエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸グリセロール等が挙げられる。
水酸基含有ビニルエーテルとしては、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル等が挙げられる。
これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0020】
極性基含有ポリオレフィン系重合体の数平均分子量(Mn)は、好ましくは500〜500,000、より好ましくは1,000〜200,000、さらに好ましくは1,200〜150,000である。
【0021】
プライマー層形成用硬化性組成物に含まれる多官能アクリレート系化合物は、プライマー層形成用硬化性組成物を硬化させる役割を有する。多官能アクリレート系化合物を含有するプライマー層形成用硬化性組成物を用いることで、凝集破壊が生じにくいプライマー層を形成することができる。
【0022】
多官能アクリレート系化合物とは、重合反応に関与する不飽和結合を2以上有する、アクリル酸エステル化合物又はメタクリル酸エステル化合物をいう。
多官能アクリレート系化合物としては、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、ジ(アクリロイロキシエチル)イソシアヌレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート等の2官能アクリレート系化合物;
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(2−アクリロイロキシエチル)イソシアヌレート等の3官能アクリレート系化合物;
ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の4官能アクリレート系化合物;
プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の5官能アクリレート系化合物;
ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の6官能アクリレート系化合物;等が挙げられる。
これらの多官能アクリレート系化合物は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
ここで、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0023】
プライマー層形成用硬化性組成物中の多官能アクリレート系化合物の含有量は、凝集破壊がより生じにくいプライマー層を形成することができる観点から、極性基含有ポリオレフィン系重合体100質量部に対して、通常5〜30質量部、好ましくは5〜20質量部である。
【0024】
プライマー層形成用硬化性組成物は、光重合開始剤を含有してもよい。光重合開始剤を含有するプライマー層形成用硬化性組成物を用いることで、紫外線や可視光線の照射により効率よく硬化反応を行い、プライマー層を形成することができる。
【0025】
光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン等のケトン系光重合開始剤;2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、エチル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィネート、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキサイド等のリン系光重合開始剤;ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス[2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル]チタニウム等のチタノセン系光重合開始剤;オキシムエステル系光重合開始剤;ベンゾフェノン、p−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン系光重合開始剤;チオキサントン等のチオキサントン系光重合開始剤;トリイソプロパノールアミン等のアミン系光重合開始剤;等が挙げられる。これらは、一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
プライマー層形成用硬化性組成物が光重合開始剤を含有する場合、その含有量は、多官能アクリレート系化合物100質量部に対して、通常0.01〜20質量部の範囲である。
【0027】
プライマー層形成用硬化性組成物は、ポリイソシアナート系架橋剤を含有してもよい。ポリイソシアナート系架橋剤を含有するプライマー層形成用硬化性組成物を用いることで、凝集破壊がより抑制されたプライマー層を形成することができる。
【0028】
ポリイソシアナート系架橋剤としては、特に限定されず、分子中に2個以上のイソシアナート基を有する化合物が用いられる。このようなポリイソシアナート系架橋剤としては、トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナート等の芳香族ポリイソシアナート;ヘキサメチレンジイソシアナート等の脂肪族ポリイソシアナート;イソホロンジイソシアナート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアナート等の脂環式ポリイソシアナート;、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体;等が挙げられる。これらは、一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
プライマー層形成用硬化性組成物がポリイソシアナート系架橋剤を含有する場合、凝集破壊がより生じにくいプライマー層を形成することができる観点から、その含有量は、極性基含有ポリオレフィン系重合体100質量部に対して、通常1〜10質量部、好ましくは2〜8質量部である。
【0030】
プライマー層形成用硬化性組成物は、シランカップリング剤を含有してもよい。シランカップリング剤を含有するプライマー層形成用硬化性組成物を用いることで、より層間密着性に優れたプライマー層を形成することができる。
【0031】
シランカップリング剤としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン,3−アミノプロピルトリエトキシシラン,3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン,3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン,3−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン,3−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン等のアミノシランカップリング剤;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン,3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等のエポキシシランカップリング剤;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン;3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン;特開2000−239447号公報、特開2001−40037号公報等に記載された高分子シランカップリング剤;等が挙げられる。これらは、一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
プライマー層形成用硬化性組成物がシランカップリング剤を含有する場合、その含有量は、極性基含有ポリオレフィン系重合体100質量部に対して、通常0.01〜5質量部、好ましくは0.01〜3質量部である。
【0033】
プライマー層形成用硬化性組成物は、溶剤を含有していてもよい。
溶剤を含有するプライマー層形成用硬化性組成物は、プライマー層形成用塗工液として用いられる。
【0034】
溶剤としては、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ジクロロメタン、塩化エチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、モノクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶剤;1,3−ジオキソラン等のエーテル系溶媒;等が挙げられる。
【0035】
本発明のプライマー層形成用硬化性組成物は、極性基含有ポリオレフィン系重合体、多官能アクリレート系化合物、及び、光重合開始剤、ポリイソシアネート系架橋剤、シランカップリング剤等の他の成分を、常法に従って適宜混合・攪拌することにより調製することができる。
本発明のプライマー層形成用硬化性組成物を用いることで、ガスバリアフィルムのガスバリア層上に、有機化合物を含有する層との親和性が高いプライマー層を効率よく形成することができる。したがって、本発明のプライマー層形成用硬化性組成物は、層間密着性に優れるガスバリア性積層体を製造する際に好適に用いられる。
【0036】
2)ガスバリア性積層フィルム
本発明のガスバリア性積層フィルムは、ガスバリア層と、前記ガスバリア層と直接接するプライマー層とを有するガスバリア性積層フィルムであって、前記ガスバリア層が、ガスバリアフィルムを材料とするものであり、前記プライマー層が、本発明のプライマー層形成用硬化性組成物の硬化物からなるものであり、少なくとも一方の最外層が前記プライマー層であることを特徴とするものである。
【0037】
(ガスバリア層)
本発明のガスバリア性積層フィルムを構成するガスバリア層は、ガスバリアフィルムを材料として用いて形成されるものである。
本発明に用いるガスバリアフィルムは、酸素や水蒸気の透過を抑制する特性(以下、「ガスバリア性」という)を有するフィルムである。
本発明に用いるガスバリアフィルムは、水蒸気透過率が、40℃、相対湿度90%の雰囲気下で、5.0g/m
2/day以下のものが好ましく、0.5g/m
2/day以下のものがより好ましい。このようなガスバリア性を有するガスバリアフィルムを用いることで、よりガスバリア性に優れるガスバリア性積層フィルムを得ることができる。
また、ガスバリアフィルムのJIS K 7361−1に準拠して測定した全光線透過率は、80%以上が好ましく、85%以上がより好ましい。このような透明性に優れるガスバリアフィルムを用いることで、透明性に優れるガスバリア性積層フィルムを得ることができる。
【0038】
ガスバリアフィルムの厚みは特に限定されず、ガスバリア性積層フィルムの使用目的等に合わせて適宜決定すればよい。ガスバリアフィルムの厚みは、通常、0.5〜500μm、好ましくは1〜100μmである。
【0039】
ガスバリアフィルムとしては、合成樹脂製のフィルム;2種以上の合成樹脂製のフィルムからなる積層フィルム;合成樹脂フィルム表面を改質した表面改質フィルム(ただし、改質された層が、無機化合物及び/又は金属を含有する層であるものを除く);樹脂製基材と、無機化合物及び/又は金属を含有する層(以下、「無機化合物等含有層」ということがある。)を有する積層フィルム;等が挙げられる。
なかでも、ガスバリアフィルムとしては、樹脂製基材と、無機化合物等含有層を有する積層フィルムが好ましい。このようなガスバリアフィルムは、ガスバリア性により優れるものであるため、より薄く、軽く、耐屈曲性に優れるガスバリア性積層フィルムが得られ易くなる。
【0040】
樹脂製基材と、無機化合物等含有層を有する積層フィルムに用いる樹脂製基材の材質としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、アクリル系樹脂、シクロオレフィン系ポリマー、芳香族系重合体等が挙げられる。
【0041】
これらの中でも、透明性に優れ、かつ、汎用性があることから、ポリエステル、ポリアミド又はシクロオレフィン系ポリマーが好ましく、ポリエステル又はシクロオレフィン系ポリマーがより好ましい。
【0042】
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート等が挙げられ、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
ポリアミドとしては、全芳香族ポリアミド、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン共重合体等が挙げられる。
【0043】
シクロオレフィン系ポリマーとしては、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、及びこれらの水素化物が挙げられる。その具体例としては、アペル(三井化学社製のエチレン−シクロオレフィン共重合体)、アートン(JSR社製のノルボルネン系重合体)、ゼオノア(日本ゼオン社製のノルボルネン系重合体)等が挙げられる。
【0044】
樹脂製基材は、本発明の効果を妨げない範囲において、各種添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、紫外線吸収剤、帯電防止剤、安定剤、酸化防止剤、可塑剤、滑剤、着色顔料等が挙げられる。これらの添加剤の含有量は、目的に合わせて適宜決定すればよい。
【0045】
樹脂製基材の厚みは、通常0.4〜400μm、好ましくは0.5〜95μm、より好ましくは0.9〜90μmの範囲である。
【0046】
樹脂製基材は、樹脂成分及び所望により各種添加剤を含む樹脂組成物を調製し、これをフィルム状に成形することにより得ることができる。成形方法は特に限定されず、キャスト法や溶融押出法等の公知の方法を利用することができる。また、樹脂製フィルムとして市販されているものを樹脂製基材として用いることもできる。
【0047】
前記無機化合物等含有層はガスバリア性を有する層である。
無機化合物等含有層は、樹脂製基材の片面に形成されていても、樹脂製基材の両面に形成されていてもよい。また、無機化合物等含有層は単層であってもよく、複数層積層されたものであってもよい。
【0048】
無機化合物等含有層に含まれる無機化合物としては、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズ等の無機酸化物;窒化珪素等の無機窒化物;無機炭化物;無機硫化物;これらの複合体である無機酸化窒化物;無機酸化炭化物;無機窒化炭化物;無機酸化窒化炭化物;等が挙げられる。
【0049】
無機化合物等含有層に含まれる金属としては、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、スズ等が挙げられる。
【0050】
無機化合物等含有層の厚みは、特に制限されないが、通常20nmから50μm、好ましくは30nmから1μm、より好ましくは40nmから500nmである。
【0051】
無機化合物等含有層を形成する方法としては、特に限定されない。例えば、前記無機化合物や金属を、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、熱CVD法、プラズマCVD法等により樹脂製基材上に形成する方法(方法1)、前記無機化合物や金属を有機溶剤に溶解又は分散した液を、公知の塗布方法によって樹脂製基材上に塗布し、得られた塗膜を適度に乾燥して形成する方法(方法2)、樹脂製基材上に、直接又はその他の層を介して、ケイ素含有高分子化合物を含有する層(ケイ素含有高分子化合物層)を形成した後、該ケイ素含有高分子化合物層の表面を改質する方法(方法3)等が挙げられる。なお、方法3により無機化合物等含有層を形成する場合、「無機化合物等含有層」は、改質された表面部と改質されていない内部を合わせたものをいう。
【0052】
ケイ素含有高分子化合物としては、ポリシラザン系化合物、ポリカルボシラン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリオルガノシロキサン系化合物、ポリ(ジシラニレンフェニレン)系化合物、及びポリ(ジシラニレンエチニレン)系化合物等が挙げられる。
【0053】
前記ケイ素含有高分子化合物層は、ケイ素含有高分子化合物の他に、本発明の目的を阻害しない範囲で他の成分を含有してもよい。他の成分としては、硬化剤、老化防止剤、光安定剤、難燃剤等が挙げられる。
ケイ素含有高分子化合物層中のケイ素含有高分子化合物の含有量は、よりガスバリア性に優れるガスバリアフィルムが得られることから、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましい。
【0054】
ケイ素含有高分子化合物層の厚みは、特に制限されないが、通常20nmから50μm、好ましくは30nmから1μm、より好ましくは40nmから500nmである。
【0055】
ケイ素含有高分子化合物層は、例えば、高分子化合物を有機溶剤に溶解又は分散した液を、公知の塗布方法によって樹脂製基材上に塗布し、得られた塗膜を適度に乾燥することにより形成することができる。
【0056】
ケイ素含有高分子化合物層の表面を改質する方法としては、イオン注入処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、熱処理等が挙げられる。
イオン注入処理は、後述するように、加速させたイオンをケイ素含有高分子化合物層に注入して、ケイ素含有高分子化合物層を改質する方法である。
プラズマ処理は、ケイ素含有高分子化合物層をプラズマ中に晒して、ケイ素含有高分子化合物層を改質する方法である。例えば、特開2012−106421号公報に記載の方法に従って、プラズマ処理を行うことができる。
紫外線照射処理は、ケイ素含有高分子化合物層に紫外線を照射してケイ素含有高分子化合物層を改質する方法である。例えば、特開2013−226757号公報に記載の方法に従って、紫外線改質処理を行うことができる。
これらの中でも、ケイ素含有高分子化合物層の表面を荒らすことなく、その内部まで効率よく改質し、よりガスバリア性に優れるガスバリアフィルムが得られることから、ケイ素含有高分子化合物層表面を改質する方法としては、イオン注入処理が好ましい。
【0057】
方法3におけるより好ましい方法としては、樹脂製基材上に、直接又はその他の層を介して、ポリシラザン系化合物を含有する層(以下、「ポリシラザン層」ということがある。)を形成した後、このポリシラザン層の表面をイオン注入処理により改質するものが挙げられる。
【0058】
ポリシラザン層に含まれるポリシラザン系化合物は、分子内に−Si−N−結合(シラザン結合)を含む繰り返し単位を有する化合物である。具体的には、式(1)
【0060】
で表される繰り返し単位を有する化合物が好ましい。また、用いるポリシラザン系化合物の数平均分子量は、特に限定されないが、100〜50,000であるのが好ましい。
【0061】
前記式(1)中、nは任意の自然数を表す。Rx、Ry、Rzは、それぞれ独立して、水素原子、無置換若しくは置換基を有するアルキル基、無置換若しくは置換基を有するシクロアルキル基、無置換若しくは置換基を有するアルケニル基、無置換若しくは置換基を有するアリール基又はアルキルシリル基等の非加水分解性基を表す。
【0062】
前記無置換若しくは置換基を有するアルキル基のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−へキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等の炭素数1〜10のアルキル基が挙げられる。
【0063】
無置換若しくは置換基を有するシクロアルキル基のシクロアルキル基としては、例えば、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロへプチル基等の炭素数3〜10のシクロアルキル基が挙げられる。
【0064】
無置換若しくは置換基を有するアルケニル基のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基等の炭素数2〜10のアルケニル基が挙げられる。
【0065】
前記アルキル基、シクロアルキル基及びアルケニル基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;ヒドロキシル基;チオール基;エポキシ基;グリシドキシ基;(メタ)アクリロイルオキシ基;フェニル基、4−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基等の無置換若しくは置換基を有するアリール基;等が挙げられる。
【0066】
無置換又は置換基を有するアリール基のアリール基としては、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等の炭素数6〜15のアリール基が挙げられる。
【0067】
前記アリール基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基等の炭素数1〜6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;ニトロ基;シアノ基;ヒドロキシル基;チオール基;エポキシ基;グリシドキシ基;(メタ)アクリロイルオキシ基;フェニル基、4−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基等の無置換若しくは置換基を有するアリール基;等が挙げられる。
【0068】
アルキルシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリt-ブチルシリル基、メチルジエチルシリル基、ジメチルシリル基、ジエチルシリル基、メチルシリル基、エチルシリル基等が挙げられる。
【0069】
これらの中でも、Rx、Ry、Rzとしては、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はフェニル基が好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0070】
前記式(1)で表される繰り返し単位を有するポリシラザン系化合物としては、Rx、Ry、Rzが全て水素原子である無機ポリシラザン、Rx、Ry、Rzの少なくとも1つが水素原子ではない有機ポリシラザンのいずれであってもよい。
【0071】
また、本発明においては、ポリシラザン系化合物として、ポリシラザン変性物を用いることもできる。ポリシラザン変性物としては、例えば、特開昭62−195024号公報、特開平2−84437号公報、特開昭63−81122号公報、特開平1−138108号公報等、特開平2−175726号公報、特開平5−238827号公報、特開平5−238827号公報、特開平6−122852号公報、特開平6−306329号公報、特開平6−299118号公報、特開平9−31333号公報、特開平5−345826号公報、特開平4−63833号公報等に記載されているものが挙げられる。
これらの中でも、ポリシラザン系化合物としては、入手容易性、及び優れたガスバリア性を有するイオン注入層を形成できる観点から、Rx、Ry、Rzが全て水素原子であるペルヒドロポリシラザンが好ましい。
また、ポリシラザン系化合物としては、ガラスコーティング材等として市販されている市販品をそのまま使用することもできる。
ポリシラザン系化合物は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0072】
ポリシラザン層を形成する方法は特に限定されない。例えば、ポリシラザン系化合物の少なくとも一種、所望により他の成分、及び溶剤等を含有するポリシラザン層形成用溶液を調製し、次いで、このポリシラザン層形成用溶液を、公知の方法により塗工し、得られた塗膜を乾燥することにより、ポリシラザン層を形成することができる。
【0073】
ポリシラザン層形成用溶液に用いる溶媒としては、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタンなどの脂肪族炭化水素系溶媒;シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素系溶媒;等が挙げられる。
これらの溶媒は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0074】
ポリシラザン層形成用溶液の塗工方法としては、バーコート法、スピンコート法、ディッピング法、ロールコート法、グラビアコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、ロールナイフコート法、ダイコート法、スクリーン印刷法、スプレーコート法、グラビアオフセット法等が挙げられる。
【0075】
得られた塗膜を乾燥することで、ポリシラザン層を形成することができる。塗膜の乾燥方法は特に限定されない。例えば、熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線照射等、従来公知の乾燥方法が採用できる。加熱温度は、通常、80〜150℃であり、加熱時間は、通常、数十秒から数十分である。
【0076】
ポリシラザン層に注入するイオンとしては、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン等の希ガスのイオン;フルオロカーボン、水素、窒素、酸素、二酸化炭素、塩素、フッ素、硫黄等のイオン;メタン、エタン等のアルカン系ガス類のイオン;エチレン、プロピレン等のアルケン系ガス類のイオン;ペンタジエン、ブタジエン等のアルカジエン系ガス類のイオン;アセチレン等のアルキン系ガス類のイオン;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素系ガス類のイオン;シクロプロパン等のシクロアルカン系ガス類のイオン;シクロペンテン等のシクロアルケン系ガス類のイオン;金属のイオン;有機ケイ素化合物のイオン;等が挙げられる。
これらのイオンは1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、より簡便にイオンを注入することができ、より優れたガスバリア性を有するガスバリアフィルムが得られることから、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン等の希ガスのイオンが好ましい。
【0077】
イオンの注入量は、ガスバリア性積層フィルムの使用目的(必要なガスバリア性、透明性等)等に合わせて適宜決定することができる。
【0078】
イオンを注入する方法としては、電界により加速されたイオン(イオンビーム)を照射する方法、プラズマ中のイオンを注入する方法等が挙げられる。なかでも、簡便に目的のガスバリア層を形成できることから、後者のプラズマイオンを注入する方法(プラズマイオン注入法)が好ましい。
【0079】
プラズマイオン注入法は、例えば、希ガス等のプラズマ生成ガスを含む雰囲気下でプラズマを発生させ、ポリシラザン層に負の高電圧パルスを印加することにより、該プラズマ中のイオン(陽イオン)を、ポリシラザン層の表面部に注入して行うことができる。プラズマイオン注入法は、より具体的には、WO2010/107018号パンフレット等に記載された方法により実施することができる。
【0080】
イオン注入により、イオンが注入される領域の厚みは、イオンの種類や印加電圧、処理時間等の注入条件により制御することができ、ポリシラザン層の厚みやガスバリア性積層フィルムの使用目的等に応じて決定すればよいが、通常、10〜400nmである。
【0081】
イオンが注入されたことは、X線光電子分光分析(XPS)を用いてポリシラザン層の表面から10nm付近の元素分析測定を行うことによって確認することができる。
【0082】
これまで説明してきた方法を行うことで、ポリシラザン層の表面をイオン注入処理により改質することができる。
また、同様の方法により、ポリシラザン層以外の前駆体層の表面をイオン注入処理により改質することができる。
【0083】
(プライマー層)
本発明のガスバリア性積層フィルムを構成するプライマー層は、前記ガスバリアフィルムからなるガスバリア層と直接接する層であって、本発明のプライマー層形成用硬化性組成物の硬化物からなるものである。
プライマー層は、本発明のガスバリア性積層フィルムにさらに有機化合物を含有する層を積層する際に、層間密着性の向上に寄与する。
【0084】
プライマー層の厚みは特に限定されず、ガスバリア性積層フィルムの使用目的等に合わせて適宜決定すればよい。プライマー層の厚みは、通常、0.05〜2.5μm、好ましくは0.10〜1.0μmである。
【0085】
プライマー層は、本発明のプライマー層形成用硬化性組成物(プライマー層形成用塗工液)をガスバリアフィルムの片面又は両面に塗付し、得られた塗膜を必要に応じて乾燥した後、塗膜を硬化させることにより形成することができる。
【0086】
プライマー層形成用塗工液を塗付する方法としては、通常の湿式コーティング方法を用いることができる。例えばディッピング法、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、エアナイフコート、ロールナイフコート、ダイコート、スクリーン印刷法、スプレーコート、グラビアオフセット法等が挙げられる。
【0087】
塗膜を乾燥する方法としては、熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線照射等、従来公知の乾燥方法が挙げられる。
【0088】
塗膜を硬化する方法としては、特に限定されず、公知の方法が採用できる。例えば、プライマー層形成用硬化性組成物が、光重合開始剤を含有するものである場合、塗膜に活性エネルギー線を照射することで塗膜を硬化することができる。活性エネルギー線は、高圧水銀ランプ、無電極ランプ、キセノンランプ等を用いて照射することができる。
【0089】
活性エネルギー線の波長は、200〜400nmが好ましく、350〜400nmがより好ましい。照射量は、通常、照度50〜1000mW/cm
2、光量50〜5000mJ/cm
2、好ましくは1000〜5000mJ/cm
2の範囲である。照射時間は、通常、0.1〜1000秒、好ましくは1〜500秒、より好ましくは10〜100秒である。光照射工程の熱負荷を考慮して前述の光量を満たすために、複数回照射しても構わない。
【0090】
また、塗膜層に電子線を照射することで、塗膜を硬化することもできる。電子線を照射する場合は、通常、光重合開始剤を利用しなくても、塗膜を硬化することができる。電子線を照射する場合は、電子線加速器等を用いることができる。照射量は、通常10〜1000kradの範囲である。照射時間は、通常、0.1〜1000秒、好ましくは1〜500秒、更に好ましくは10〜100秒である。
【0091】
(ガスバリア性積層フィルム)
本発明のガスバリア性積層フィルムは、前記ガスバリア層と、このガスバリア層と直接接するプライマー層とを有するものであり、少なくとも一方の最外層が前記プライマー層であることを特徴とする。
ガスバリア性積層フィルムの少なくとも一方の最外層が前記プライマー層であることで、その表面に有機化合物を含有する層を密着性よく形成することができる。
有機化合物を含有する層としては、保護層、粘着剤層、量子ドット層等が挙げられる。
これらの有機化合物を含有する層は、後述するガスバリア性積層体における有機化合物を含有する層と同様のものである。
【0092】
ガスバリア性積層フィルムは、プライマー層以外に、ガスバリア層と直接接する層を有していてもよい。この層としては、保護層、粘着剤層等が挙げられる。
【0093】
本発明のガスバリア性積層フィルムの層構成の例としては、次のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
(i)ガスバリア層/プライマー層
(ii)プライマー層(A)/ガスバリア層/プライマー層(B)
(iii)粘着剤層/ガスバリア層/プライマー層
(iv)ハードコート層/ガスバリア層/プライマー層
【0094】
本発明のガスバリア性積層フィルムの厚みは、特に限定されないが、好ましくは、1〜600μm、より好ましくは、5〜200μm、特に好ましくは20〜100μmである。
【0095】
本発明のガスバリア性積層フィルムの水蒸気透過率は、40℃、相対湿度90%の雰囲気下で、好ましくは5.0g/m
2/day以下、より好ましくは0.5g/m
2/day以下である。下限値は特になく、小さいほど好ましいが、通常は、1×10
−6g/m
2/day以上である。
水蒸気透過率は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0096】
本発明のガスバリア性積層フィルムは透明性に優れるものであることが好ましい。JIS K 7361−1に準拠して測定した、本発明のガスバリア性積層フィルムの全光線透過率は、80%以上が好ましく、85%以上がより好ましい。
【0097】
本発明のガスバリア性積層フィルムは、ガスバリア性に優れ、かつ、表面に有機化合物を含有する層を密着性よく形成することができるものである。したがって、本発明のガスバリア性積層フィルムはより高性能のガスバリア性積層体を製造する際の材料フィルムとして好適に用いることができる。
【0098】
2)ガスバリア性積層体
本発明のガスバリア性積層体は、本発明のガスバリア性積層フィルムの最外層を構成するプライマー層上に、有機化合物を含有する層が積層されてなるものである。
【0099】
プライマー層上に形成される有機化合物を含有する層としては、保護層、粘着剤層、量子ドット層等が挙げられる。
【0100】
保護層は、外部から衝撃が加わったときに、ガスバリア性積層体を保護する役割を有する層である。
保護層としては、透明性がよく、耐擦傷性が良好なものが好ましい。また、ガスバリア性積層体が電子デバイスや光学デバイスに組み込まれた際に保護層が最表面に配置される場合には、防汚性、耐指紋付着防止性、帯電防止性、撥水性、親水性などの機能を具備することが好ましい。
【0101】
保護層の材料は特に制限されず、公知のものが使用できる。例えば、ケイ素含有化合物;光重合性モノマー及び/又は光重合性プレポリマーからなる光重合性化合物、及び少なくとも可視光域の光でラジカルを発生する重合開始剤を含む重合性組成物;ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂(特にポリアクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等とイソシアネート化合物との2液硬化型樹脂)、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール系樹脂、ニトロセルロース系樹脂等の樹脂類;アルキルチタネート;エチレンイミン;等が挙げられる。
これらは一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
活性エネルギー線硬化型化合物及び光重合開始剤等を用いることができる。
【0102】
保護層は、前記材料を適当な溶剤に溶解又は分散させてなる保護層形成用塗工液を、公知の方法によりプライマー層上に塗布し、得られた塗膜を必要に応じて乾燥した後、塗膜を硬化させることにより形成することができる。
保護層形成用塗工液の塗布方法や、塗膜の乾燥、硬化方法としては、プライマー層の形成方法として説明したものと同様のものが挙げられる。
【0103】
保護層の厚みは、特に制限はなく適宜選定される。保護層の厚みは通常0.05〜10μm、好ましくは0.1〜8.0μm、より好ましくは0.2〜5μmである。
【0104】
粘着剤層は、ガスバリア性積層体に粘着性を付与するものである。
粘着剤層構成する粘着剤の種類は特に限定されない。粘着剤層としては、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤等が挙げられる。
粘着剤層の厚みは、特に制限はなく適宜選定される。粘着剤層の厚みは、通常0.5〜100μm、好ましくは1〜60μm、より好ましくは3〜40μmである。
【0105】
量子ドット層は、量子ドットが高分子化合物中に分散してなる層である。
量子ドットは、直径が数nmの金属化合物であり、特有の光吸収性等を有する。
量子ドット層を有することで、ガスバリア性積層体は光学部材等の材料フィルムとして好適に用いられる。
【0106】
量子ドット層の厚みは、特に制限はなく適宜選定される。量子ドット層の厚みは通常1〜500μm、好ましくは10〜400μm、より好ましくは5〜200μmである。
【0107】
本発明のガスバリア性積層体の層構成の例としては、次のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
(i)ガスバリア層/プライマー層/保護層
(ii)ガスバリア層/プライマー層/粘着剤層
(iii)ガスバリア層/プライマー層/量子ドット層
(iv)プライマー層(A)/ガスバリア層/プライマー層(B)/保護層
(v)プライマー層(A)/ガスバリア層/プライマー層(B)/粘着剤層
(vi)プライマー層(A)/ガスバリア層/プライマー層(B)/量子ドット層
(vii)粘着剤層/ガスバリア層/プライマー層/保護層
(viii)粘着剤層/ガスバリア層/プライマー層/粘着剤層
(ix)粘着剤層/ガスバリア層/プライマー層/量子ドット層
(x)ハードコート層/ガスバリア層/プライマー層/保護層
(xi)ハードコート層/ガスバリア層/プライマー層/粘着剤層
(xii)ハードコート層/ガスバリア層/プライマー層/量子ドット層
【0108】
本発明のガスバリア性積層体は、ガスバリア性に優れ、かつ、層間密着性に優れるものである。したがって、本発明のガスバリア性積層体は、電子デバイス用部材として好適に用いられる。
【実施例】
【0109】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施例になんら限定されるものではない。
各例中の部及び%は、特に断りのない限り、質量基準である。
【0110】
[製造例1]ガスバリアフィルム(1)の製造
厚みが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、「PETフィルム(1)」という。)(東洋紡社製、PET50A4300)上に、スピンコーター(ミカサ社製、MS−A200、回転数:3000rpm、回転時間:30秒)を用いて、ペルヒドロポリシラザンを主成分とするコーティング剤(AZエレクトロニックマテリアルズ社製、アクアミカNL110−20、溶媒:キシレン、濃度:10%)を塗布して塗膜を形成し、得られた塗膜付PETフィルム(1)を120℃で2分間加熱することにより、PETフィルム(1)上に、厚みが150nmのポリシラザン層を形成した。
次いで、上記のポリシラザン層に、プラズマイオン注入装置を用いて、下記条件にてプラズマイオン注入を行い、ポリシラザン層の表面を改質することにより、ガスバリアフィルム(1)を得た。
【0111】
[プラズマイオン注入の処理条件]
プラズマ生成ガス:アルゴン
ガス流量:100sccm
Duty比:0.5%
繰り返し周波数:1000Hz
印加電圧:−10kV
RF出力:1000W
RF電源:(周波数)13.56MHz、(印加電力)1000W
チャンバー内圧:0.2Pa
パルス幅:5μsec
処理時間(イオン注入時間):5分間
搬送速度:0.2m/min
【0112】
[製造例2]ガスバリアフィルム(2)の製造
真空蒸着法により、PETフィルム(1)上に膜厚50nmの酸化ケイ素膜を形成し、ガスバリアフィルム(2)を得た。
【0113】
[製造例3]ガスバリアフィルム(3)の製造
真空蒸着法により、PETフィルム(1)上に膜厚20nmの酸化アルミニウム膜を形成し、ガスバリアフィルム(3)を得た。
【0114】
[実施例1]プライマー層形成用塗工液(1)の調製
極性基含有ポリオレフィン系重合体(1)(三井化学社製、ユニストールP−801)100部、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(新中村化学工業社製、A−DCP)(多官能アクリレート系化合物(1))5部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学工業社製、A−DPH)(多官能アクリレート系化合物(2))5部、光重合開始剤(1)(BASF社製 イルガキュア184)0.3部、トルエン846部を混合し、プライマー層形成用塗工液(1)を得た。
【0115】
[実施例2]プライマー層形成用塗工液(2)の調製
極性基含有ポリオレフィン系重合体(1)100部、多官能アクリレート系化合物(1)5部、多官能アクリレート系化合物(2)5部、光重合開始剤(1)0.3部、ポリイソシアナート系架橋剤(1)(日本ポリウレタン工業社製、コロネートHX)5部、シランカップリング剤(1)(信越化学工業社製、KBM−403)0.3部、トルエン846部を混合し、プライマー層形成用塗工液(2)を得た。
【0116】
[実施例3]プライマー層形成用塗工液(3)の調製
実施例1において、極性基含有ポリオレフィン系重合体(1)に代えて、極性基含有ポリオレフィン系重合体(2)(三井化学社製、ユニストールP−901)を使用したこと以外は製造例2と同様にしてプライマー層形成用塗工液(3)を得た。
【0117】
[実施例4]プライマー層形成用塗工液(4)の調製
極性基含有ポリオレフィン系重合体(1)100部、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート(新中村化学工業社製、A−9300)(多官能アクリレート系化合物(3))10部、光重合開始剤(1)0.3部、トルエン846部を混合し、プライマー層形成用塗工液(4)を得た。
【0118】
[比較例1]プライマー層形成用塗工液(5)の調製
極性基含有ポリオレフィン系重合体(3)(日本製紙ケミカル社製、アウローレン353S)70部、テルペンフェノール樹脂(1)(ヤスハラケミカル社製、YSポリスターTH130)30部、トルエン900部を混合し、プライマー層形成用塗工液(5)を得た。
【0119】
[実施例5]
製造例1で得たガスバリアフィルム(1)の改質処理面に、実施例1で得たプライマー層形成用塗工液(1)を、マイヤーバーを用いて膜厚150nmとなるように塗工した。
得られた塗膜を110℃で1分間乾燥した後、得られた塗膜に、無電極UVランプシステム(ヘレウス社製)を用いて、照度140mW/cm
2、光量300mJ/cm
2でUV照射することでプライマー層を形成し、ガスバリア性積層フィルム(α1)を得た。
【0120】
次いで、このガスバリア性積層フィルム(α1)のプライマー層上に、UV硬化系アクリレート樹脂(1)(JSR社製 オプスターZ7530)を膜厚が10μmになるように積層した後、得られた積層物に、無電極UVランプシステム(ヘレウス社製)を用いて、照度140mW/cm
2、光量800mJ/cm
2でUV照射することで硬化させ、ガスバリア性積層体(β1)を得た。
【0121】
[実施例6]
実施例5において、プライマー層形成用塗工液(1)に代えて、実施例2で得たプライマー層形成用塗工液(2)を使用したことを除き、実施例5と同様にして、ガスバリア性積層フィルム(α2)及びガスバリア性積層体(β2)を得た。
[実施例7]
実施例5において、プライマー層形成用塗工液(1)に代えて、実施例3で得たプライマー層形成用塗工液(3)を使用したことを除き、実施例5と同様にして、ガスバリア性積層フィルム(α3)及びガスバリア性積層体(β3)を得た。
【0122】
[実施例8]
実施例5において、プライマー層形成用塗工液(1)に代えて、実施例4で得たプライマー層形成用塗工液(4)を使用したことを除き、実施例5と同様にして、ガスバリア性積層フィルム(α4)及びガスバリア性積層体(β4)を得た。
【0123】
[実施例9]
実施例5において、ガスバリアフィルム(1)に代えて、製造例2で得たガスバリアフィルム(2)を使用したことを除き、実施例5と同様にして、ガスバリア性積層フィルム(α5)及びガスバリア性積層体(β5)を得た。
【0124】
[実施例10]
実施例5において、ガスバリアフィルム(1)に代えて、製造例3で得たガスバリアフィルム(3)を使用したことを除き、実施例5と同様にして、ガスバリア性積層フィルム(α6)及びガスバリア性積層体(β6)を得た。
【0125】
[比較例2]
実施例5において、プライマー層を形成することなく、ガスバリアフィルム(1)上に直接UV硬化系アクリレート樹脂(1)を膜厚が10μmになるように積層した後、得られた積層物に、無電極UVランプシステム(ヘレウス社製)を用いて、照度140mW/cm
2、光量800mJ/cm
2でUV照射することで硬化させ、ガスバリア性積層フィルム(7)を得た。
【0126】
[比較例3]
実施例5において、プライマー層形成用塗工液(1)を用いてプライマー層を形成する代わりに、有機無機ハイブリッド樹脂(JSR社製、オプスターZ7530)をガスバリフィルム(1)上に塗布し、乾燥して得られた塗膜にUV照射することにより、膜厚150nmのプライマー層を形成したこと以外は、実施例5と同様にしてガスバリア性積層フィルム(α8)及びガスバリア性積層体(β8)を得た。
【0127】
[比較例4]
実施例5において、プライマー層形成用塗工液(1)に代えて、比較例1で得たプライマー層形成用塗工液(5)を使用したことを除き、実施例5と同様にしてガスバリア性積層フィルム(α9)及びガスバリア性積層体(β9)を得た。
【0128】
実施例5〜10及び比較例2〜4で得られたガスバリア性積層体について、以下の評価を行った。結果を第1表に示す。
【0129】
[層間密着性評価]
(層間密着性評価1)
ガスバリア性積層フィルム(7)、ガスバリア性積層体(β1)〜(β6)、(β8)、及び(β9)を試験片として用いてJIS K 5600−5−6に準じてクロスカット試験を行い、以下の基準で層間密着性を評価した。
○:100マス中、剥がれたマスの数が0
△:100マス中、剥がれたマスの数が1〜49
×:100マス中、剥がれたマスの数が50〜100
【0130】
(層間密着性評価2)
試験片を60℃、相対湿度90%雰囲気下に250時間静置したことを除き、層間密着性試験1と同様の試験を行った。
【0131】
[ガスバリア性評価]
ガスバリア性積層フィルム(α1)〜(α6)、(7)、(α8)、及び(α9)を測定試料として、その水蒸気透過率を、水蒸気透過率測定装置(mocon社製、PERMATRAN)を用いて測定した。測定は40℃、相対湿度90%雰囲気下で行った。
【0132】
[透明性評価]
ガスバリア性積層フィルム(α1)〜(α6)、(7)、(α8)、及び(α9)を測定試料として用いて、JIS K 7361−1に準拠して全光線透過率を測定し、以下の基準で透明性を評価した。
○:全光線透過率が80%以上
×:全光線透過率が80%未満
【0133】
【表1】
【0134】
第1表から、以下のことが分かる。
実施例5〜10のガスバリア性積層体(β1)〜(β6)は良好な層間密着性及び水蒸気遮断性を有している。
特に、実施例6のガスバリア性積層体(β2)は、層間密着性と水蒸気遮断性のいずれも優れている。
比較例2のガスバリア性積層フィルム(7)は、プライマー層を有しないため、層間密着性に劣っている。
また、比較例3、4のガスバリア性積層体(β8)、(β9)は、一般的な組成のプライマー層を有するものであり、これらにおいても層間密着性に劣っている。