(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6850286
(24)【登録日】2021年3月9日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】発泡体成形のための加工助剤、これを含む塩化ビニル樹脂系発泡体成形組成物、及び発泡体成形製品
(51)【国際特許分類】
C08L 33/10 20060101AFI20210322BHJP
C08L 27/06 20060101ALI20210322BHJP
C08F 20/16 20060101ALI20210322BHJP
C08J 9/06 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
C08L33/10
C08L27/06
C08F20/16
C08J9/06CEV
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-507666(P2018-507666)
(86)(22)【出願日】2016年8月31日
(65)【公表番号】特表2018-532002(P2018-532002A)
(43)【公表日】2018年11月1日
(86)【国際出願番号】US2016049719
(87)【国際公開番号】WO2017040677
(87)【国際公開日】20170309
【審査請求日】2019年7月22日
(31)【優先権主張番号】62/212,122
(32)【優先日】2015年8月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ティー・ペトロ
(72)【発明者】
【氏名】ポール・ヴァン・リーネン
【審査官】
藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】
特公昭52−049020(JP,B1)
【文献】
特開平04−296310(JP,A)
【文献】
特開昭61−133257(JP,A)
【文献】
特開平09−020834(JP,A)
【文献】
特許第3892226(JP,B2)
【文献】
国際公開第2011/065382(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0189837(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0094542(US,A1)
【文献】
国際公開第2015/045928(WO,A1)
【文献】
国際公開第2015/045930(WO,A1)
【文献】
中国特許出願公開第102791783(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 − 101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
いかなる他の共重合性モノマーも存在せずに、エチルメタクリレート80重量%〜100重量%と、メチルメタクリレート0〜20重量%との重合によって得られるポリマーを含む、発泡体成形のための加工助剤であって、前記ポリマーが、以下の特性、(a)ASTM D2857に準拠して、クロロホルム中1mg/mL、25℃で測定した、17dL/gを超える還元粘度、及び(b)77℃以下のTgを有する、加工助剤。
【請求項2】
塩化ビニル樹脂100重量部、及び請求項1に記載の、発泡体成形に用いるための加工助剤1〜25重量部を含む、塩化ビニル樹脂系発泡体成形組成物。
【請求項3】
前記組成物が、130%以上の発泡倍率を示す、請求項2に記載の塩化ビニル樹脂系発泡体成形組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の塩化ビニル樹脂系発泡体成形組成物から形成される発泡体成形製品。
【請求項5】
請求項3に記載の塩化ビニル樹脂系発泡体成形組成物を押出成形することを含む、塩化ビニル樹脂を発泡成形するプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡体成形のための加工助剤、加工助剤を使用する発泡体成形の方法、加工助剤を含む塩化ビニル樹脂系発泡体成形組成物、及び形成された発泡体成形製品に関する。
【背景技術】
【0002】
建築及び建設業界では、ポリ(塩化ビニル)(PVC)は、発泡形態でしばしば使用される。発泡体は、化学発泡剤と高分子量加工助剤との配合によって生成される。押出成形時に、発泡剤は、分解して高圧のPVC溶融物中に溶解するガスを生成する。ガスがダイを出て、圧力が低下すると、ガスは、PVCを元の体積の2〜3倍に膨張させる気泡を形成する。この時点で、PVCの気泡が破壊するので、高分子量加工助剤を添加して、溶融粘度を上昇させ、絡み合いを与えて、PVC溶融物が弛緩するのを防止し、かつ付加的なダイスウェル及びさらなる発泡倍率を提供する。市販の発泡加工助剤は、通常1〜20Mg/molの極端に高い分子量で、最大30%の他のポリアクリルを有するポリ(メタクリル酸メチル)コポリマーである。
【0003】
発泡加工助剤の効率に影響を及ぼす3つの主要な変数には、分子量、分子構造、及びガラス転移温度(T
g)がある。一般に、より高い分子量は、より高い溶融粘度を有し、より絡み合いを与えるので、より高い発泡倍率を生成し、より少ない分岐及び架橋は、ポリマーがPVCへさらによく混合し得るので、より高い発泡倍率を生成する。一方で、高溶融粘度を提供するが、押出成形中に依然絡み合いをほどくことができる最適なT
gが存在するようである。これらの特性を提供するために、典型的には、アクリル酸エチル(EA)またはアクリル酸ブチル(BA)のいずれか/両方の15〜20%が使用される。EAまたはBAのいずれかを用いると、結果として生じるコポリマーは、MMAのEAまたはBAに対する交差成長が非常に遅いため、任意の構成成分ホモポリマーよりも低い分子量を有する。BAは、ポリマー主鎖中の第三級水素が取り除かれやすいので、有意な架橋を促進する。したがって、改善された発泡助剤が、依然この分野において望まれている。
【発明の概要】
【0004】
第1の実施形態において、本開示は、エチルメタクリレート及びプロピルメタクリレートからなる群から選択される1つ以上のモノマーの総量50重量%〜100重量%と、他の共重合性モノマー0〜50重量%との重合によって得られるコポリマーを含む、発泡体成形のための加工助剤を提供し、該コポリマーは、以下の特性、(a)ASTM D2857に準拠して、クロロホルム中1mg/mL、25℃で測定した、8dL/gを超える還元粘度、及び(b)77℃以下のTgを有する。
【0005】
第2の実施形態において、本開示は、本明細書で開示されているいずれかの実施形態による、発泡成形用途に関して、塩化ビニル樹脂100重量部、及び加工助剤1〜25重量部を含む、塩化ビニル樹脂系発泡成形組成物を提供する。
【0006】
第3の実施形態において、本開示は、本明細書で開示されているいずれかの実施形態による、塩化ビニル樹脂系発泡成形組成物から形成される発泡成形製品を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
発泡体成形のための加工助剤は、エチルメタクリレート及びプロピルメタクリレートからなる群から選択される1つ以上のモノマーの総量50〜100重量%の重合によって得られるコポリマーを含む。50〜100重量%のすべての個々の値及び部分範囲は、本明細書に含まれ、開示される。例えば、エチルメタクリレート及びプロピルメタクリレートからなる群から選択される1つ以上のモノマーの総重量パーセントは、下限50、60、70、80、または90重量%から、上限55、65、75、85、95、または100重量%までの範囲であってもよい。発泡体成形のための加工助剤は、エチルメタクリレート及びプロピルメタクリレートからなる群から選択される1つ以上のモノマーの総量50重量%〜100重量%、または代替としてエチルメタクリレート及びプロピルメタクリレートからなる群から選択される1つ以上のモノマーの総量50重量%〜75重量%、または代替としてエチルメタクリレート及びプロピルメタクリレートからなる群から選択される1つ以上のモノマーの総量75重量%〜100重量%、または代替としてエチルメタクリレート及びプロピルメタクリレートからなる群から選択される1つ以上のモノマーの総量60重量%〜90重量%、または代替としてエチルメタクリレート及びプロピルメタクリレートからなる群から選択される1つ以上のモノマーの総量50重量%〜95重量%、または代替としてエチルメタクリレート及びプロピルメタクリレートからなる群から選択される1つ以上のモノマーの総量50重量%〜98重量%、または代替としてエチルメタクリレート及びプロピルメタクリレートからなる群から選択される1つ以上のモノマーの総量50重量%〜100重量%の重合によって得られるコポリマーを含む。
【0008】
発泡体成形のための加工助剤は、他の共重合性モノマー0〜50重量%の重合によって得られるコポリマーを含む。他の共重合性モノマー0〜50重量%のすべての個々の値及び部分範囲は、本明細書に含まれ、開示される。例えば、他の共重合性モノマーの重量パーセントは、下限0、10、20、30、または40重量%から、上限5、15、25、35、45、または50重量%までの範囲であってもよい。発泡体成形のための加工助剤は、他の共重合性モノマー0〜50重量%、または代替として他の共重合性モノマー0〜25重量%、または代替として他の共重合性モノマー25〜50重量%、または代替として他の共重合性モノマー10〜40重量%、または代替として他の共重合性モノマー5〜50重量%、または代替として他の共重合性モノマー2〜50重量%、または代替として他の共重合性モノマー0〜50重量%超の重合によって得られるコポリマーを含む。
【0009】
他の共重合性モノマーとしては、メタクリレートと共重合可能な任意のモノマーが挙げられる。このようなモノマーとしては、例えばアルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、架橋剤、及びグラフト結合剤が挙げられる。例示的なモノマーとしては、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチルヘキシル(EHA)、アクリル酸オクチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸エチルヘキシル(EHMA)、メタクリル酸オクチル、スチレン、酢酸ビニル、メタクリル酸アセトアセトキシエチル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、メタクリル酸グリシジル、無水マレイン酸が挙げられる。
【0010】
特定の実施形態において、本コポリマーは、いずれの他の共重合性モノマーの非存在下でも、プロピルメタクリレート50〜100重量%、及びメチルメタクリルレート0〜50重量%の重合によって得られる。
【0011】
特定の実施形態において、本コポリマーは、いずれの他の共重合性モノマーの非存在下でも、エチルメタクリレート80〜100重量%、及びメチルメタクリルレート0〜20重量%の重合によって得られる。
【0012】
さらに別の実施形態において、本開示は、エチルメタクリレート及びプロピルメタクリレートからなる群から選択される1つ以上のモノマーの総量50重量%〜100重量%と、他の共重合性モノマー0〜50重量%との重合によって得られるコポリマーで構成される、発泡体成形のための加工助剤を提供し、該コポリマーは、以下の特性、(a)ASTM D2857に準拠して、クロロホルム中1mg/mL、25℃で測定した、8dL/gを超える還元粘度、及び(b)77℃以下のTgを有する。
【0013】
さらに別の実施形態において、本開示は、エチルメタクリレート及びプロピルメタクリレートからなる群から選択される1つ以上のモノマーの総量50重量%〜100重量%と、他の共重合性モノマー0〜50重量%との重合によって得られるコポリマーで本質的に構成される、発泡体成形のための加工助剤を提供し、該コポリマーは、以下の特性、(a)ASTM D2857に準拠して、クロロホルム中1mg/mL、25℃で測定した、8dL/gを超える還元粘度、及び(b)77℃以下のTgを有する。
【0014】
発泡体成形のための結果として生じる加工助剤は、ASTM D2857に準拠して、クロロホルム中1mg/mL、25℃で測定した、8dL/gを超える還元粘度を示す。8dl/gを超えるすべての個々の値及び部分範囲は、本明細書に含まれ、開示される。例えば、発泡体成形のための加工助剤は、8dL/gを超える、または別の方法では9dL/gを超える、別の方法では10dL/gを超える、別の方法では11dL/gを超える、別の方法では14dL/gを超える、または別の方法では17dL/gを超える還元粘度を示すことができる。
【0015】
発泡体成形のための加工助剤は、任意の既知の乳化重合方法を使用して作ることができる。
【0016】
もっとも一般的な押出成形の実行は、ダイから自由に発泡し、続いて、ある種の較正、及びセルカまたは統合スキンプロセスを伴う。これらのPVC発泡プロセス、及び典型的な配合成分の記述は、Handbook of Polymeric Foams and Foam Technology,Ed.Klemper,D.,Sendijarevic,V.,2.sup.nd edition,Hanser Publishers,Munich,2004 chapter 9で見つけることができる。
【0017】
別の実施形態において、発泡体成形のための加工助剤は、多段階乳化重合プロセスを使用して作ることができる。このようなプロセスは、米国特許出願公開第2015/0183944号、及び同第2014/0371396号に開示されおり、これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0018】
発泡体成形のための加工助剤は、典型的には単離され、自由流動性粉末またはペレットを形成する。粉末粒子は、50〜500ミクロンの平均直径を有する。
【0019】
本明細書で開示されている塩化ビニル樹脂系発泡成形組成物は、本明細書で開示されているいずれかの実施形態による、発泡成形用途に関して、塩化ビニル樹脂100重量部、及び加工助剤1〜25重量部を含む。加工助剤の1〜25重量部のすべての個々の値及び部分範囲は、本明細書に開示され、含まれる、例えば、塩化ビニル系発泡体成形組成物中の加工助剤の量は、下限1、3、6、9、12、15、または18重量部から、上限2、5、8、11、14、17、20、または25重量部までの範囲であってもよい。例えば、塩化ビニル系発泡成形組成物中の加工助剤の量は、1〜25重量部、または代替として1〜12重量部、または代替として12〜25重量部、または代替として8〜18重量部であってもよい。
【0020】
代替的な実施形態において、塩化ビニル樹脂系発泡体成形組成物は、熱安定剤、潤滑剤、耐衝撃性改良剤、充填剤、顔料もしくは他の着色剤、または発泡以外の特性を付与するための他の加工助剤からなる群から選択される、1つ以上の添加剤を含むことができる。
【0021】
本開示はさらに、本明細書で開示されているいずれかの実施形態による、塩化ビニル樹脂系発泡成形組成物から形成される発泡成形製品を提供する。
【0022】
特定の実施形態において、発泡成形製品は、発泡構造部材である。
【0023】
別の実施形態において、本開示は、本明細書で開示されているいずれかの実施形態による、発泡成形用の加工助剤、塩化ビニル樹脂系発泡成形組成物、及び発泡成形製品を提供するが、塩化ビニル樹脂系発泡成形組成物が、130%以上の発泡倍率を示すことを除く。130%以上のすべての個々の値及び部分範囲は、本明細書に含まれ、開示される。例えば、塩化ビニル樹脂系発泡成形組成物は、130%以上、または代替として132%以上、または代替として135%以上、または代替として138%以上の発泡倍率を示すことができる。
【0024】
本開示はさらに、本明細書で開示されているいずれかの実施形態による、塩化ビニル樹脂100重量部、及び加工助剤1〜25重量部を含む、塩化ビニル樹脂系発泡成形組成物を押出成形することを含む、塩化ビニル樹脂を発泡成形するためのプロセスを提供する。
【実施例】
【0025】
以下の実施例は、本発明を例示するが、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【0026】
すべての実施例を、エラー!参照元見つからずの様々なモノマー組成物を使用して、以下のように調製した。
【0027】
乳化重合を使用して、発泡体加工助剤を作った。モノマーのエマルジョン、DOWFAX 2A1、及び水を混合し、反応フラスコに添加した。内容物を不活性化した後、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、及び鉄塩によって活性化される過硫酸ナトリウムレドックス開始剤系を用いて重合を開始した。重合の完了時に、ラテックスを冷却し、乾燥した。DOWFAX 2A1は、The Dow Chemical Company(Midland,MI,USA)から市販されている、アルキルジフェニルオキシドジスルホネート界面活性剤である。
【0028】
発明例1〜2及び比較例1〜5の発泡体成形のための加工助剤を、PCT公開WO2013/095876において記述されているポリ塩化ビニル樹脂の発泡成形において使用した。その開示は、参照により本明細書に完全に組み込まれる。加工助剤を、7.2phrの濃度で添加した。PCT公開WO2013/095876はさらに、本明細書で使用される発泡倍率を測定するための方法について記述している。表1はさらに、実施例の加工助剤のそれぞれに関して、発泡倍率結果を示す。還元粘度を、ASTM D2857に準拠して、クロロホルム中1mg/mL、25℃で測定した。表2は、特定の発明例及び比較例に関しての還元粘度測定値を示す。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】