特許第6850288号(P6850288)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6850288非可展形状を有するサンドイッチ金属部品を製造するための改良された方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6850288
(24)【登録日】2021年3月9日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】非可展形状を有するサンドイッチ金属部品を製造するための改良された方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 3/12 20060101AFI20210322BHJP
   B32B 15/01 20060101ALI20210322BHJP
   B21D 47/04 20060101ALI20210322BHJP
   B21D 53/88 20060101ALI20210322BHJP
   B61D 17/06 20060101ALI20210322BHJP
   B61D 33/00 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   B32B3/12 A
   B32B15/01 F
   B21D47/04
   B21D53/88 Z
   B61D17/06
   B61D33/00 A
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-512488(P2018-512488)
(86)(22)【出願日】2016年5月19日
(65)【公表番号】特表2018-519201(P2018-519201A)
(43)【公表日】2018年7月19日
(86)【国際出願番号】EP2016061206
(87)【国際公開番号】WO2016188834
(87)【国際公開日】20161201
【審査請求日】2019年3月18日
(31)【優先権主張番号】1554611
(32)【優先日】2015年5月22日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】517406032
【氏名又は名称】ハルシオン
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ピカウト グエナエル
【審査官】 伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−212477(JP,A)
【文献】 特開昭63−042863(JP,A)
【文献】 特開平07−016963(JP,A)
【文献】 特開平07−156319(JP,A)
【文献】 特開平09−206982(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B21D 47/00−55/00
B61D 17/00−49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ハニカムコア(2)と、前記コアの両側に配置された2つの金属スキン(4)とを備える、非可展形状を有するサンドイッチ型金属部品(1)を製造する方法であって、
両金属スキン(4)を得るために金属板(4’)を塑性変形させる工程と、
両スキン(4)を前記コア(2)に固定する工程と、
前記コア(2)を塑性変形させる工程と、を含み、
前記コア(2)を塑性変形させる工程が、前記両スキンを前記コアに固定する工程の前に実施され
前記両スキン(4)を前記コア(2)に固定する工程が、真空バッグ(10)を備えた金型(6)に前記スキンと前記コアを配置し、重合性接着剤を使用することによって行われることを特徴とする、
方法。
【請求項2】
前記コア(2)を塑性変形させる工程の間に、前記コアに弾性伸展が適用されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記両金属スキン(4)を得るために前記金属板(4’)を塑性変形させる工程が、板金加工、車体製作、インクリメンタルフォーミング、絞り加工、ラバーフォーミング、熱成形の少なくとも1つの技術を用いて行われることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記両スキン(4)がそれぞれ0.5〜3mmの厚さを有し、かつ/または前記コア(2)が3〜50mmの厚さを有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記両スキン(4)が、前記金型(6)内に配置される前に接着されることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記スキン(4)および前記コア(2)がそれぞれ、アルミニウムまたはその合金の1つでできていることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
請求項1からのいずれか一項に記載の方法を実施することによって得られる少なくとも1つの金属部品(1)を備えることを特徴とする、輸送車両。
【請求項8】
鉄道輸送車両であることを特徴とする、請求項に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複雑な非可展形状を有するサンドイッチ型部品の製造に関する。
【0002】
本発明は、複雑な形状の部品を必要とする全ての技術分野、特に道路、航空、鉄道および海上輸送の分野に適用可能である。
【背景技術】
【0003】
サンドイッチ型部品は一般に、ハニカムコアと、このコアの両側に配置されそのコアに接着された2つのスキンを有する。この構造型により、軽い総重量を有しながらも、大きな剛性が得られる。尚、この構造型に関しては、周知の形によると、中立軸の両側にスキンを引き離していることから、慣性モーメントが非常に大きくなりうる。これは、この慣性モーメントが中立軸までの距離の3乗に比例するからである。
【0004】
従来技術によると、いわゆる「金属」という解決策がある。この解決策は、どちらも金属材料、例えばアルミニウムまたはその合金のうちの1つなどからなるコアとスキンを製造することからなる。こういった解決策では通常、コアの両面に接着されたスキンを含んだ、形状がほぼ平面のパネルが得られる。任意選択で、このようにして得られたパネルがその後、折り曲げ加工、曲げ加工などにより成形される。ただし、こういった追加の再加工工程で得られるのは、複雑な形状の最終部品ではなく、単純な可展形状の部品にすぎない。
【0005】
複雑な非可展形状を有する金属部品を製造するために、その部品を単一部品として製造する、いわゆる「単体」の解決策を提供することが可能である。それによって絞り加工などの適当な技術により、その部品について複雑な形状が得られる。しかしながら、機械的耐性に対する要求により、通常は、大きな厚みを有する部品がもたらされ、その総重量が犠牲になる。したがってこの技術は、いくつかの用途、特に輸送分野に見られる運用要件に適合しないことが分かりうる。
【0006】
炭素繊維および/またはガラス繊維と樹脂との混合物などの複合材料からなるスキンを用いても、複雑な形状のサンドイッチ部品を得ることは可能である。しかしながら、この技術は、上述の金属サンドイッチの解決策に比して多くの欠点を有する。こういった欠点のうちの一部を挙げると、剛性と衝撃耐性が低いこと、工具によるひだ付けの労力が特に必要であることから製造コストが高くなること、複合サンドイッチ部品にインターフェース部材を埋め込むことが困難であること、複合要素のリサイクル性がないこと、火災煙に対する耐性の基準が低いことなどがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一目的は、従来技術の実施形態に関する上述の欠点を、少なくとも部分的に解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のため、本発明の一目的は、金属ハニカムコアと、上記コアの両側に配置された2つの金属スキンとを備える、非可展形状を有するサンドイッチ型金属部品を製造する方法であって、
両金属スキンを得るために金属板を塑性変形させる工程と、
両スキンを上記コアに固定する工程と、を含む方法である。
【0009】
したがって、本発明は、複雑な形状を有する金属スキンを得るために、金属板をコアに接着する前に塑性変形させることを考慮に入れている点で、現況技術とは完全に区別される。本発明に特有のこの技術により、平坦な金属サンドイッチパネルの再加工作業から得られる可能性よりはるかに拡張された最終的形状の可能性が、上記部品にもたらされる。さらに、上記部品は、その「サンドイッチ」という側面をもつため、従来技術の単体の解決策で得られるものよりもかなり満足のいく剛性対重量比を有する。輸送分野の特定の事例では、これにより、上記部品を組み込んだ輸送車両を推進させるためのエネルギーの節約になる。
【0010】
さらに、複合材料からなるスキンを組み込んだ製品に比して、本発明は多くの利点を提供する。こういった利点のうちの一部を挙げると、剛性と衝撃耐性が高くなること、主にひだ付けに関連する労力がなくなることにより製造コストが低減すること、金属サンドイッチ部品へのインターフェース部材の埋め込みが容易になること、金属要素のリサイクル性があること、あるいは、火災煙に対する耐性の基準が十分であること(これによって受動的安全性が向上する)などがある。また、上記部品を塗装する必要がある場合、塗装の手直しが、複合部品の多孔性に起因する塗装欠陥を有しうる複合解決策で認められるものよりも、はるかに少ない。
【0011】
本発明は、好ましくは、以下の任意選択の特徴のうちの少なくとも1つを、単独で、または組み合わせて含む。
【0012】
上記方法は、上記金属ハニカムコアを塑性変形させる工程をさらに含み、この工程は、両スキンを上記コアに固定する上記工程の前に実施される。ただし、サンドイッチ部品の所望の最終形状に応じて、この塑性変形工程は必ずしも必要ではない。実際、ハニカムコアが、所望の最終部品と同一または類似の輪郭をとるために、その弾性変形だけで十分であることが判明することがある。コアの弾性変形が所望の輪郭を得るのに十分でない場合は、塑性変形以外の技術が企図されうる。それは例えば、応力を緩和するためのコア内の1つまたは複数の切り欠きであり、あるいはそのコアに適当な機械加工を施すことである。いずれの場合も、ハニカムコアの弾性変形能力が増す。
【0013】
好ましくは、コアの塑性変形が実施される場合、その塑性変形中にこのコアに弾性伸展が適用される。この伸展により、ハニカムセルがその初期形状に対応する六角形よりも矩形に近い形状をとるように、それらのハニカムセルをある程度平坦化できる。さらに、応力のない中立状態で矩形のセルを有するハニカムコアを企図することも可能である。
【0014】
このセルのほぼ矩形の伸展形状のおかげで、コアはより大きな、複数の方向に変形する能力を有し、このことにより、複雑な非可展形状の輪郭を得ることが容易になる。
【0015】
好ましくは、2つの金属スキンを得るために上記金属板を塑性変形させる上記工程が、板金加工、車体製作、インクリメンタルフォーミング、絞り加工、ラバーフォーミング、熱成形の少なくとも1つの技術を用いて行われる。尚、この点に関して、小型の部品系列の製造には、インクリメンタルフォーミング技術が好ましく、中または大型の部品系列の製造には、絞り加工技術が好ましい。
【0016】
好ましくは、両スキンはそれぞれ0.5〜3mmの厚さを有し、かつ/または上記コアは3〜50mmの厚さを有する。
【0017】
好ましくは、両スキンを上記コアに固定する上記工程が、真空バッグを備えた金型に上記スキンと上記コアを配置し、重合性接着剤を使用することによって行われる。このとき好ましくは、両スキンは、上記金型内に配置される前に接着される。
【0018】
最後に、上記スキンおよびコアがそれぞれ、アルミニウムまたはその合金の1つでできているが、本発明の範囲から逸脱することなく、他の金属材料も企図されうる。
【0019】
本発明の他の目的は、上述の方法を実施することによって得られる少なくとも1つの金属部品を備える輸送車両を提供することである。
【0020】
好ましくは、上記車両は鉄道輸送車両であるが、道路、航空または海上輸送車両のように、他の用途も企図されうる。
【0021】
本発明の他の利点および特徴は、以下の非限定的な詳細説明に示す。
【0022】
この説明は添付の図面に関して行う。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明による方法によって得るよう意図された鉄道車両用の座席の斜視図である。
図2図1の線II−IIに沿った断面図である。
図3図2の線III−IIIに沿った断面図である。
図4】本発明の好ましい実施形態による製造方法の実施中において、金属板を塑性変形させる工程を示す図である。
図5図5a〜図5fは、ハニカムコアを塑性変形させる各工程を示す図である。
図6図6a〜図6dは、両方のスキンをハニカムコアに固定する各工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
まず図1を参照すると、本発明による製造方法によって得られるサンドイッチ型金属部品が示されている。この例では、鉄道車両用の座席であるが、本発明はこの分野に限定されない。本発明は、複雑な3D形状と呼ばれる複雑な非可展形状を有するサンドイッチ部品の製造に実際に適用可能である。この形状は、例えば、平坦な可展形状などのより単純な形状とは対照的に、歪んだ二重曲率の形状などでありうる。尚、本発明の文脈内では、可展形状/可展面の概念は、通常の定義、つまり接平面が母線に沿って同一であるような形状/面セットに対応する。これにより、円筒または円錐のように、かかる可展形状/可展面を平面上で「滑らせずに転がす」ことが可能となり、その接触は直線に沿って行われる。
【0025】
本発明は特に、輸送車両の構造または外装用の超軽量かつ超剛性の部品を製造することを対象に、道路、航空、鉄道および海上輸送の分野に適用可能である。例示的な用途を以下に記載する。
−座席(単一のサンドイッチ部品内にシェルと構造体が含まれる)、
−開口マスク(窓縁用のカバー部品)
−端部品:列車、路面電車またはバスの「ノーズ」
−バスの上に位置するエアコンのカウル
−自動車両のホイールリムの全部または一部。
【0026】
図1〜3を参照すると、鉄道車両の座席の形をした金属部品1が示されている。この部品1は本発明に特有の製造方法によって得られたものであり、これについて以下に詳細に説明する。部品1は、例えば5〜20mm程度の、ほぼ一定の厚さを有する。ただし、この厚さは、本発明の範囲から逸脱することなく、部品1の範囲内で変化しうる。部品1は、その部品1の任意の2点間の最大離間距離に対応する主寸法を有し、この主寸法はたとえば1m〜2mの範囲に及びうる。
【0027】
部品1は、シート部1aと背もたれ1bとを有する。例えばアームレスト、ねじ、ブレースなどを取り付けるためのインサートのように、図示されていない他の要素は、この部品1に後で組み付けられるよう意図されている。
【0028】
金属部品1はサンドイッチ型であり、すなわち、ハニカムコア2と、このコアの両側に配置され、それに接着された2つの金属スキン4とを有している。これらの3つの構成要素2、4は、アルミニウムまたはその合金の1つでできている。各スキン4は0.5mm〜3mmの厚さを有し、コア2は例えば3mm〜50mmの厚さを有する。これらの3つの要素2、4はそれぞれ、より薄い厚さを有しながらも、最終部品1の全体形状と同一または類似の全体形状をとることによって、その最終部品1の表面全体に広がる。したがって、これら3つの要素2、4の重ね合わせによって、金属サンドイッチ部品1を得ることが可能になる。
【0029】
図4および以下の図は、部品1の製造方法の好ましい実施形態を示している。ただし、図を理解しやすくするために、図1に示している座席よりも単純な形状で部品1を表現している。しかしながら、上述したように、本発明による方法によって得るよう意図された部品は、実際には、歪んだ形状や二重曲率の形状のように、複雑な3D非可展面であることを理解されたい。
【0030】
上記方法の第1の工程が図4に示されている。この工程は、両スキン4のそれぞれについて、平面の金属板4’から、その金属板4’を、最終部品の形状とほぼ同一の形状をとるように塑性変形するものである。ただし金属板4’は、必然的に最終部品より薄い厚さを有する。この塑性変形を行うために、いくつかの技術が企図されうる。好ましい技法の1つはインクリメンタルフォーミングであり、これは小型の部品系列を製造するために選択される。このラピッドプロトタイピング技術は、周知の形で、金属板を徐々に成形するように局所的に塑性変形していく原理に基づいている。中または大型の部品系列を製造するには、より一般的な絞り加工の解決策が優先的に選択される。
【0031】
次に、金属ハニカムコアを塑性変形させる工程が実施され、図5a〜図5fに示されている。
【0032】
この工程は、平坦なハニカム要素から、その平坦なハニカム要素を、最終部品の形状とほぼ同一の形状をとるように塑性変形するものである。このハニカム要素もやはり、必然的に最終部品より薄い厚さを有する。この変形を行うために、平坦なハニカム要素2’が、図5a〜5dに示されているように、この要素の平面内で伸展される。つまり、要素2’の伸展は、図5cに示されている六角形のセルを得た後、これらのセルが図5dに示されているほぼ矩形の形状になるまで継続される。この伸展された形状のおかげで、要素2’は、破断することなく複数の方向に変形する能力がより大きくなり、それによって複雑な非可展形状の輪郭を実現することが容易になる。この工程では続いて、図5eに示されているように、伸展された要素2’を、例えば適当な工具11を使用した絞り加工などによって塑性変形させる。この絞り加工の結果、ハニカム要素2’のいくつかの壁が折り曲げ加工され、それによって図5fに示されている、所望の最終部品の全体形状と同一または類似の全体形状を有するコア2が得られる。折り曲げ加工の大きさは、所望の曲率に応じて増減する。
【0033】
サンドイッチ部品1を構成するための3つの要素2、4が得られると、最後の固定工程が実施される。この工程は、変形されたコア2に変形されたスキン4を取り付けることを目的とする。この工程は図6a〜6dに示されている。
【0034】
この目的のために、両スキン4がまず、例えばエポキシ接着剤などの重合性接着剤を用いて接着させられる。図6aに示されているように、次に、両スキン4とハニカムコア2が、金型6に重ねて配置される。金型6の金型キャビティ8は、この積層物の下に位置するスキン4の外側表面の形状に対応する形状を有する。図6bに示すように、この工程では続いて、上記金型の上部に真空バッグ10を、上記積層物の上に位置するスキン4の外側表面とぴったり合うように配置する。
【0035】
次に、図6cに、バッグ10が要素2、4の積層物に均一な圧力を加えるように、金型の本体とそのバッグ10との間に位置する空間に減圧が適用されることが示されている。適用される減圧は約0.9barであり、これにより約9t/mの圧力が得られる。
【0036】
接着剤が重合したら、図6dに示されているように、完成した部品1が金型から取り出されうる。
【0037】
当然のことながら、当業者によって本発明に対し様々な変更が行われうる。本発明の説明は、非限定的な例として行った。
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図5c
図5d
図5e
図5f
図6a
図6b
図6c
図6d