【実施例】
【0021】
実施例1
動物腫瘍モデル。胸腺欠損マウスのHTB−15 GBM異種移植モデルを用いて、INDに向けたPVS−RIPOの有効性試験を実施した。PVS−RIPO(臨床ロットのもの)を「マウス用に調整した」FDA承認最大開始用量[FDA承認最大開始用量(10e8 TCID)をマウスの小さい腫瘍サイズに合わせて(6.7×10e6 TCIDに)調製したもの]で投与した。送達は目的とする臨床経路、すなわち腫瘍内緩徐注入を模倣した。上記の条件下では、15日後、PVS−RIPOにより全個体の腫瘍が完全に消失した。第10日まで、治療した腫瘍からウイルスが回収されたが、そのレベルはそれほど高いものではなく、このことは、ウイルスによる直接的な腫瘍細胞殺作用のみで治療効果を説明することはできないことを示している。
【0022】
動物腫瘍モデルで得られた証拠から、PVS−RIPOの腫瘍内接種によって、ウイルスによる直接的な腫瘍細胞殺作用が引き起こされるほか、感染/死滅した腫瘍に対する強力な宿主免疫応答が誘発されることが示唆される(3、7、10)。ウイルス注入に対する応答は、強力で局所的な炎症性応答であることを特徴とし、腫瘍の免疫浸潤を引き起こす。最終的には、PVS−RIPO注入に対する緩徐な組織応答によって腫瘍塊が消滅し、瘢痕に置き換わる。
【0023】
実施例2
臨床試験。IND番号14,735の「再発性膠芽腫に対するPVSRIPOの用量探索および安全性試験」が、2011年6月19日にFDAによる承認を受け、2011年10月27日にIRBによる承認を受けた。現時点で、再発性膠芽腫(GBM)の患者を対象とする第I相/第II相臨床試験(NCT01491893)が患者を登録中である。
【0024】
これまでに、IRBに承認されたプロトコルに従ってヒト被験者2例をPVS−RIPOで治療した。第一の被験者から得た予備的所見を実施例3に記載する。
【0025】
実施例3
第一のヒト被験者に関する予備的所見。患者は右前頭部GBM(WHOグレードIV)と診断された21歳の女性看護学生である。同患者は重度の頭痛の既往歴の後、2011年6月、20歳で初めて診断を受け、副鼻腔感染症の疑いで治療を受けるも奏効しなかった。同年6月17日、脳撮像が得られ、右前頭部に約5×6cmの大きな塊が見られた。同年6月22日、右前頭部の塊の亜全切除を実施し、病理学的にGBM(WHOグレードIV)であることが確認された。患者の年齢が若いこと、一般状態が良好であることおよび腫瘍の亜全切除を実施したことを考慮し、6週間にわたる放射線療法およびTemodarを連日75mg/m
2経口投与する併用化学療法と、ベバシズマブ(抗血管新生剤)の隔週投与との併用療法で積極的に治療することにした。2011年9月18日、患者は6週間の治療が終了した。同年10月3日、ベバシズマブ10mg/kgの隔週投与に加え、患者は月1回、5日間のTemodar化学療法による補助療法を開始した。
【0026】
2012年4月16日、患者は睡眠中に最初の全身性痙攣を発現し、来院した。患者はそれまでに、6か月間のTemodarとベバシズマブの併用療法を終えていた。患者は、GBMと診断され化学療法を受けているにもかかわらず、小児腫瘍科の看護師になる課程を終えるところであったため、痙攣の原因は学校でのストレスの増大にあるとした。その日に得られた脳MRIでは、切除腔の内側面に沿う新たな結節性増強をみる腫瘍再発が認められた(
図12)。
【0027】
患者には複数の治療選択肢を提示したが、PVS−RIPO臨床試験の続行を選択した。患者は、最初の全身性痙攣ののちKeppraを開始したが、服用し忘れることがあり、それと上記の腫瘍再発とが原因となり、2012年5月6日、睡眠中に2回目の全身性痙攣を発現した。患者は治療前の神経学的病態に戻り、プロトコルに登録したいという気持ちを生じた。
【0028】
2012年5月9日にフォローアップMRIを得た(
図13)後、同年5月11日、目的とする臨床送達法(造影剤Gd−DTPAを含有するウイルス懸濁液3mLを対流強化輸送法により6時間にわたって腫瘍内に注入する;実施例4を参照されたい)によりFDA承認最大開始用量(10e8)のPVS−RIPOを患者に注入したところ、これによる神経学的合併症をはじめとする合併症は一切認められなかった。
【0029】
注入終了直後に得たMRIから、注入液の分布がわかる(
図14)。
【0030】
本発明者らの研究チームは週1回の頻度で患者のフォローアップを実施し、患者は、注入から2週間後に来院したとき、神経学的症状、痙攣の再発、疲労、息切れ、脱力感のいずれも新たに訴えることはなかった。2012年6月7日、患者を診療所で再び評価したところ、生理学的状態および神経学的状態は正常であった。その来院時に得た脳MRIから、疾患が安定していることがわかった(
図15)。
【0031】
2012年7月9日、患者が来院した。今回も同じく、患者は新たな神経学的症状を訴えることはなく、PVS−RIPO注入前の2012年5月6日に痙攣が認められて以来、痙攣活動が再発することもなかった。患者はほかにも、気分が良好であること、看護学校での成果に満足しており、注入後の方がはるかに学業に専念できると思うことを報告した。このほか、2人のルームメイトと行動を共にできること、定期的な運動ができることに大きな喜びを感じていた。その日に得た患者の脳MRIには、腫瘤効果のわずかな増大および上方の線状増強のわずかな増大が見られ、疾患の進行が懸念された(
図16)。
【0032】
臨床的悪化はみられないがX線像の変化が懸念されることを考慮し、18−FDG PETスキャンを得ることにした。18−FDG PETスキャンでは、MRIで懸念された領域に低代謝活性が見られ、壊死過程が示唆された(治療反応効果;
図17)。7月9日のPETスキャンから、生存可能な腫瘍が存在しないことが示唆される。患者およびその母親と話し合った後、臨床およびX線像の観点から同患者の追跡を継続することにした。
【0033】
8月27日および10月22日の検査では、患者は新たな神経学的症状を訴えることはなく、2012年5月6日(PVS−RIPO注入前)の痙攣以来、痙攣活動も一切みられなかった。患者は、認知/記憶機能、運動機能(運動)の改善を報告している。10月26日の時点で、患者は神経学的に正常な状態である。
【0034】
8月27日、X線像が良好なものであったため、PETスキャンは指示しなかった。10月22日、患者に再びスキャンを実施したところ、定量化可能なX像での反応が認められた。
【0035】
MRI/PETのオーバーレイ画像から、腫瘍再発領域全体からのシグナルが見られないことがわかる。
【0036】
実施例4
対流注入。術前MRIから得られる情報を用いた分布予測に基づき、術前にBrainLab iPlan Flowシステムを用いてカテーテル挿入経路を計画する。
【0037】
本発明では、ポリオウイルスの分布を確認する代替トレーサーとして1mMのガドリニウムを用いる。これは他の薬物注入にも用いることが可能である。ガドリニウムをその薬物と同時注入し、様々なMRIシーケンスを用いて分布を定量化する。
【0038】
送達する薬剤を治験薬剤師がシリンジに予め全量充填し、手術室またはNICUで注入開始直前に無菌条件下でカテーテルに接続する。注入に必要な全構成要素(手術室にいる時間、調剤時間および放射線科の予約)について計画を立てるのは複雑な作業であるため、試験には被験薬注入のための時間枠が1日加えられている。つまり、生検/カテーテル留置の翌日に注入を開始することができるということである。プロトコルに関して言えば、これを「第0日」およびのちの事象のタイミングと見なす。ウイルス注入時、エピネフリンおよびジフェンヒドラミンを含めた緊急薬を使用可能な状態にしておき、神経学的状態、酸素飽和度および心リズムをモニターする。他のあらゆる緊急設備が使用できるように、神経外科集中治療室(NSCU)で薬物注入を実施する。患者をナフシリン、第二世代セファロスポリンまたはバンコマイシンなどの予防的抗生物質で処置し、麻酔を導入してカテーテルを留置する。
【0039】
本発明者ら自身の経験、既に公開されている報告(19)ならびに同様の注入技術を用いたIRB承認試験およびFDA承認試験(IRB番号4774−03−4R0)に基づけば、患者への注入は500μL/時の速度で実施する。Medfusion 3500注入ポンプであれば、予め送達速度500μL/時にプログラムしておく。注入が一切妨げられないように、開始時に薬剤(注入システムの「デッドスペース」3.3723mLを考慮して全量を10mLとする)を20mLシリンジに充填してシリンジポンプ内に注入する。患者に送達する接種量は計3mLとする。カテーテルそのもの(長さ30cm、内径1mm)には予めウイルス懸濁液を充填することができない。このため、注入の最初の約250μLは、留置カテーテルの「デッドスペース」内にあり保存剤を含まない生理食塩水となる。これを考慮に入れ、注入ポンプを3.250mL送達するようプログラムする。Medfusion 3500(Medex社、ダルース、ジョージア州)シリンジ注入ポンプを用いて注入を実施する。ウイルス注入処置は6.5時間以内に終了する。PVSRIPOの送達後、直ちにカテーテルを取り外す。
【0040】
注入カテーテル(PIC030)および注入チューブ(PIT400)はSophysa社(クラウンポイント、インディアナ州)製のものとする。Infusion Catheter Kitは、透明で開口部のある長さ30cmのカテーテル(内径1.0mm/外径2.0mm)であり、20cmの長さにわたって1cm刻みの目盛がある。このカテーテルは、30cmのステンレス鋼製スタイレットと、キャップ付きの反矢じりメス型ルアーロックと、ステンレス鋼製套管針とを備えている。Infusion Tubing Kitは、エアフィルタを備えた三方活栓コネクタと、アンチサイフォンバルブを備えた4mのマイクロボアチューブと、赤いベントキャップと、白いルアーロックキャプとからなる。カテーテル製品は無菌かつ無発熱性の状態で包装されており、単回(1回)のみ使用できるものである。注入はMedfusion 3500(Medex社、ダルース、ジョージア州)シリンジ注入ポンプを用いて実施する。
【0041】
実施例5−結果
免疫チェックポイント阻害剤の機序は、細胞傷害性T細胞のエフェクター機能を阻止する腫瘍が引き起こす事象から同細胞の機能を開放することである。腫瘍は、天然に存在し細胞傷害性T細胞を制御する「ブレーキ」のシステムを利用する。このことは腫瘍にとって、変異タンパク質を発現するため異質なシグナルを提示する腫瘍を免疫系が攻撃する可能性を抑えるという利点がある。免疫チェックポイント阻害剤はこの腫瘍の機序を逆転させ、免疫機能を開放する。
【0042】
本発明者らは、PVSRIPOが、腫瘍を攻撃する細胞傷害性T細胞(CTL)に依存する免疫応答を誘発することを明らかにしている。したがって、PVSRIPOとチェックポイント阻害剤との併用によって治療効果が増強される。以下に示すように、PVSRIPOは実際、CTL応答を誘導することによって腫瘍を治療するよう作用する。
【0043】
本発明者らは、メラノーマ細胞、乳房腫瘍細胞、脳腫瘍細胞、前立腺癌細胞にPVSRIPOを感染させ、死滅しつつある細胞/死滅細胞から上清を収集した。感染腫瘍細胞由来の上清を用いてヒト被験者由来の樹状細胞(CTLとのコミュニケーションおよびCTL活性化の調整を担う免疫細胞の集団)を曝露した。その結果、樹状細胞に炎症誘発活性化の強い徴候がみられた(すなわち、腫瘍細胞のウイルス感染によって、樹状細胞のCTL活性化機能を促進する可溶性因子が産生された)。
【0044】
次いで、活性化された樹状細胞と、樹状細胞を提供した同じヒト被験者のT細胞(CTLを含む)とを共培養した。次いで、共培養したT細胞(CTLを含む)と、感染段階に用いたのと同じ系列の未感染腫瘍細胞とを共培養した。
【0045】
本発明者らは、腫瘍細胞に対する活性化CTLの高レベルの細胞傷害性を観察した。
図2を参照されたい。
【0046】
この実験は、患者に起こると考えられること、つまり、ウイルス感染が、最終的に腫瘍に対するCTL応答を生じさせる一連の事象を誘発することをin vitroで実証するものである。この一連の事象は、免疫チェックポイント阻害剤によって相乗的に増強され得るものである。
【0047】
天然に存在するT細胞機能に対する「ブレーキ」(免疫チェックポイント)の1つにPD1−PD−L1の関係がある。腫瘍内の樹状細胞は多くの場合、PD−L1を発現するよう誘導され、次いで、これがT細胞上のPD1と結合してT細胞の活性化を阻害する。
【0048】
本発明者らは、PVSRIPO/PVSRIPO−腫瘍溶解物に曝露した樹状細胞はPD−L1発現が増大することを明らかにした。系列的チェックポイント阻害剤であるPD−1阻害剤またはPD−L1阻害剤は、この効果を阻害し、PVSRIPOの腫瘍溶解作用によるCTL活性化を増大させる。
【0049】
実施例6−方法
10cmディッシュのコンフルーエントなSum149細胞、MDAMB231細胞、LNCaP細胞またはDM6細胞をAIMV培地中、モック(DMEM)またはPVSRIPO(MOI 0.1)に48時間感染させた。上清を収集し、遠心分離により細胞残屑を除去した。凍結PBMCを解凍し、PBSで洗浄し、T−150組織培養フラスコ中のAIM−V培地30mlに2×10
8細胞で再懸濁させた(3)。細胞を37℃で1時間インキュベートした。フラスコを左右に揺り動かすことによって非付着細胞を遊離させて回収した。800U/mlのヒトGM−CSFおよび500U/mlのヒトIL−4を添加したAIM−V 30mlを付着細胞に補充し、次いで37℃でインキュベートした。第6日、非付着細胞をすべて収集し、次いで冷PBSで洗浄することによりDCを回収した。なおも付着している細胞を細胞解離緩衝液で解離させた。DCをAIMV培地で洗浄し、カウントし、35mmディッシュに1ディッシュ当たり1×10
6細胞で播いた。DC培養物に腫瘍溶解物の上清を加え、24時間インキュベートした。次いで、上清を除去し、DCをAIMV培地で洗浄した。PBMCを解凍し、PBSに再懸濁させ、37℃で20分間、200U/mlのDNアーゼIで処理した。DNアーゼIで処理したPBMCを37℃で1時間インキュベートした。非付着細胞を回収し、25ng/mlのIL−7の存在下、応答細胞と刺激DCの比を10:1にして、ポリオウイルスによる腫瘍溶解物を負荷したDCで刺激した。刺激はいずれも、10%FCS、2mM L−グルタミン、20mM HEPES、1mMピルビン酸ナトリウム、0.1mM MEM非必須アミノ酸、100IU/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシンおよび5×10
−5M β−メルカプトエタノール(CTL刺激培地)を含むRPMI1640中で実施した。応答T細胞濃度は2×10
6細胞/mlであった。第3日のほか4〜5日毎に12〜14日間、100U/mlのIL−2を添加した。T細胞をCTL刺激培地中、1〜2×10
6細胞/mlで維持した。第12〜14日、T細胞を回収し、カウントし、ユウロピウム放出CTLアッセイにエフェクターT細胞として用いた。対照には、腫瘍抗原をコードするmRNAをトランスフェクトした自己DCを標的として用いた。DC標的対照には、mRNAをエレクトロポレートした標的細胞(
図2に示されるもの)を回収し、洗浄して培地を完全に除去し、ユウロピウム(Eu)で標識した。これとは別に、元の標的細胞(Sum149、MDAMB231、LNCaPまたはDM6)をEuで標識した。Eu標識緩衝液(1標的当たり1ml)には、HEPES緩衝液1ml(50mM HEPES、93mM NaCl、5mM KCl、2mM MgCl
2、pH7.4)、Eu 10μl(0.01N HCl中10mMのEuCl
3・6H
2O)、DTPA 5μl(HEPES緩衝液中100mMのジエチレントリアミン五酢酸)およびDS 4μl(1%デキストラン硫酸)が含まれていた(4)。5×10
6個の標的細胞をユウロピウム標的緩衝液1mlにごく穏やかに再懸濁させ、氷上で20分間インキュベートした。次いで、標識した細胞にCaCl
2溶液(100mM)30μlを加えてかき混ぜ、細胞を氷上でさらに5分間インキュベートした。細胞に修復緩衝液(10mMグルコース、2mM CaCl
2を含むHEPES緩衝液)30mlを加え、細胞を1000rpmで10分間遠心分離した。細胞をカウントし、細胞5×10
6個を修復緩衝液で4回洗浄した。最後の洗浄の後、ペニシリン−ストレプトマイシンを含まないCTL刺激培地に細胞を10
5細胞/mlで再懸濁させた。ユウロピウム標識標的(T)10,000個とエフェクター細胞(E)の段階希釈物を様々なE:T比で、96ウェルV字底プレートのペニシリン−ストレプトマイシンを含まないCTL刺激培地200μl中でインキュベートした。プレートを500×gで3分間遠心分離し、37℃で4時間インキュベートした。上清50μlを回収し、96ウェル平底プレートの増強溶液(Wallac、Perkin−Elmer社)150μlに加え、VICTOR3 Multilabel Counter(Perkin−Elmer社)を用いて、ユウロピウム放出を時間分解蛍光により測定した。式:%特異的放出=[(実験による放出量−自発的放出量)/(総放出量−自発的放出量)]×100を用いて特異的細胞傷害活性を求めた。標的細胞の自発的放出量は、界面活性剤による総放出量の25%未満であった。標的細胞の自発的放出量は、T細胞を含まない培地で標的細胞をインキュベートすることにより求めたものである。アッセイはいずれも三重反復で実施したものであり、バーは平均%溶解を表し、エラーバーはSEMを表す。
【0050】
実施例7
PVSRIPOの抗腫瘍効果は、感染した腫瘍細胞および感染した抗原提示細胞(樹状細胞、マクロファージ、ミクログリア)に免疫原性の強い1型インターフェロン(IFN)応答を誘発するというウイルスの能力によって支えられていると思われる。しかし、1型IFN応答は免疫療法のメディエーターとして極めて望ましいものではあるが、同時に、PVSRIPOによって誘発される抗腫瘍免疫応答を抑制し得る既知の免疫チェックポイント、例えばPD−L1を巻き込む。このため、PVSRIPOによる免疫療法を最大限に活用するには、免疫チェックポイント遮断剤と併用するのが望ましいものと思われる。このことは、免疫適格性で同系の神経膠腫モデル(例えば、CT2A)を用いたアッセイで明らかである。Martinez−Murilloら,Histol.Histopathol.12:1309−26(2007)を参照されたい。
【0051】
本発明者らは、ポリオウイルス受容体CD155遺伝子導入C57Bl6マウスに皮下CT2A神経膠腫を移植した。腫瘍のイニシエーションに用いるCT2A細胞には、(ヒト細胞に類似したPVSRIPO感染が起こるよう)予めCD155を形質導入した。担腫瘍個体(n=10)からなる4つのグループに以下の処置を実施した:グループI:DMEM(ウイルスの対照となる溶媒)+IgG(抗PD1の対照);グループII:PVSRIPO+IgGの単回腫瘍内注射;グループIII:DMEM+抗PD1の単回腫瘍内注射;グループIV:PVSRIPO+抗PD1の単回腫瘍内注射。抗PD1は3回分(第3日、第6日、第9日)を腹腔内注射により投与した。結果を
図3に示す。上パネルはグループの結果を示し、下パネルは個々のマウスの結果を示している。
【0052】
PVSRIPO、抗PD1ともに個別に有意な抗腫瘍効果を示した(上パネル)。2剤を併用すると治療効果が増大し、機構的な相乗効果が示唆された(上パネル)。重要なのは、併用療法のみで持続的な腫瘍寛解(腫瘍応答曲線が腫瘍体積の極めて小さい位置で平坦な直線になっていることからわかる)が得られたことである。
【0053】
(参考文献)
引用される各参考文献の開示は、本明細書に明示的に組み込まれる。