特許第6850303号(P6850303)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6850303
(24)【登録日】2021年3月9日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】ポンプを備えたエアロゾル発生システム
(51)【国際特許分類】
   A24F 40/46 20200101AFI20210322BHJP
   A24F 40/465 20200101ALI20210322BHJP
【FI】
   A24F40/46
   A24F40/465
【請求項の数】13
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-549552(P2018-549552)
(86)(22)【出願日】2017年2月23日
(65)【公表番号】特表2019-513356(P2019-513356A)
(43)【公表日】2019年5月30日
(86)【国際出願番号】EP2017054253
(87)【国際公開番号】WO2017167509
(87)【国際公開日】20171005
【審査請求日】2020年2月18日
(31)【優先権主張番号】16163420.9
(32)【優先日】2016年3月31日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100167911
【弁理士】
【氏名又は名称】豊島 匠二
(72)【発明者】
【氏名】マンカ ローラン
(72)【発明者】
【氏名】バティスタ ルイ ヌーノ
【審査官】 竹中 辰利
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第2218760(EP,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/027456(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/263869(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2002/079309(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 47/00
A24F 40/46
A24F 40/465
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル発生システムであって、
ヒーター組立品と、
入口部分および出口部分を有する中空部材、ならびに可動要素を有する容積変更部を備え、前記容積変更部が前記中空部材の前記内容積を変化するように構成されている、手動操作ポンプと、を備え、
前記中空部材の前記入口部分が液体貯蔵部分と接続されるように構成されており、
前記液体エアロゾル形成をヒーター組立品の上へと分与するために、前記中空部材の前記出口部分が分与組立品と流体接続しており、
前記入口部分と前記出口部分が各々、一方向弁を備え、前記入口部分における前記一方向弁は、前記液体貯蔵部分から前記中空部材へのみ液体が流れることを可能にし、かつ前記出口部分における前記一方向弁は、前記中空部材から前記分与組立品へのみ液体が流れることを可能にし、
前記手動操作ポンプが、液体エアロゾル形成基体を前記液体貯蔵部分から前記分与組立品を経由して前記ヒーター組立品へと送るように動作可能である、エアロゾル発生システム。
【請求項2】
前記中空部材が少なくとも一つの壁を備え、かつ前記壁の少なくとも一部分が可撓性である、請求項1に記載のエアロゾル発生システム。
【請求項3】
前記容積変更部が、前記手動操作ポンプの前記中空部材の前記少なくとも一つの壁の前記可撓性部分に対して押されるように構成されており、
前記中空部材の圧縮に伴い、前記中空部材の前記内容積が減少され、かつ前記中空部材内に含まれた液体エアロゾル形成基体が前記中空部材の前記出口部分を通って吐き出され、
前記中空部材の延伸に伴い液体エアロゾル形成基体が、前記液体貯蔵部分から前記入口部分を経由して前記中空部材の前記内容積の中へと送られる、請求項2に記載のエアロゾル発生システム。
【請求項4】
前記容積変更部が可動要素と固定要素を備え、
前記手動操作ポンプの前記中空部材が可撓性の管によって画定され、
前記可撓性の管が前記容積変更部の前記固定要素と前記可動要素の間に位置付けられ、その結果前記可動要素を前記固定要素に向かって移動することによって前記管の前記内容積が減少され、かつその逆も可である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のエアロゾル発生システム。
【請求項5】
前記容積変更部が、ユーザーによって解放された時に、前記可動要素をその当初の位置に戻すのを支援する弾性要素を備える、請求項4に記載のエアロゾル発生システム。
【請求項6】
前記分与組立品が、前記液体エアロゾル形成基体を前記ヒーター組立品の上へとスプレーするためのノズルを備える、請求項1〜5のいずれか一項に記載のエアロゾル発生システム。
【請求項7】
前記ポンプの起動に伴い、所定の量の液体エアロゾル形成基体が前記ヒーター組立品の上へと送達される、請求項1〜6のいずれか一項に記載のエアロゾル発生システム。
【請求項8】
前記ヒーター組立品が、電気抵抗性のある発熱体を備えるか、金属のメッシュを備えるか、または非伝導性耐熱基板の上に塗布された金属の薄膜被覆を備える、請求項1〜7のいずれか一項に記載のエアロゾル発生システム。
【請求項9】
前記可動要素が、前記容積変更部の動作時に電気信号を作り出す電子スイッチに連結されている、請求項1〜8のいずれか一項に記載のエアロゾル発生システム。
【請求項10】
前記電子スイッチが動的電子スイッチであり、かつ前記スイッチの起動からの信号がワイヤレス通信チャネルを介して前記制御ユニットに伝達される、請求項9に記載のエアロゾル発生システム。
【請求項11】
液体エアロゾル形成基体を送達する方法であって、
ヒーター組立品を提供することと、
入口部分および出口部分を有する中空部材と、可動要素を有する容積変更部とを備える手動操作ポンプを提供することであって、前記容積変更部が前記中空部材の前記内容積を変えるように構成されており、
前記中空部材の前記入口部分が液体貯蔵部分に接続されるように構成されており、かつ前記中空部材の前記出口部分が分与組立品と流体接続しており、前記入口部分および前記出口部分は各々、一方向弁を備え、前記入口部分における前記一方向弁は液体を前記液体貯蔵部分から前記中空部材の中へのみ流すことを可能にし、また前記出口部分における前記一方向弁は液体を前記中空部材から前記分与組立品へのみ流すことを可能にする、ことと、
液体エアロゾル形成基体を前記液体貯蔵部分から前記分与組立品を経由してヒーター組立品の上へと送るために、前記手動操作ポンプを動作することと、を含む方法。
【請求項12】
前記手動操作ポンプが可動要素を備える容積変更部の起動によって動作され、
前記容積変更部が起動された時はいつでも、前記可動要素が、電子信号を発生する電子スイッチに連結されている、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記電子スイッチが手動で給電される動的な電子スイッチであり、かつ前記発生された信号がワイヤレス通信チャネルを経由して制御ユニットに伝達される、請求項11または12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手持ち式の電気的に作動するエアロゾル発生システムなどの、エアロゾル発生システムで使用する液体エアロゾル形成基体の送達システムに関する。本発明はまた、こうした送達システムを備えるエアロゾル発生システム、およびエアロゾル発生システムでエアロゾルを発生する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電池および制御電子機器を備える装置部分と、液体貯蔵部分内に保持されるエアロゾル形成基体の供給を備えるカートリッジ部分と、電気的に作動する気化器と、マウスピース(ユーザーはここからエアロゾルを吸入する)とから成る手持ち式の電気的に作動するエアロゾル発生システムが周知である。気化器は典型的に、液体貯蔵部分内に保持された液体エアロゾル形成基体内に浸された細長い芯の周りに巻かれたヒーターワイヤーのコイルを備える。
【0003】
欧州特許第0 957 959 B1号は、供給源からの液体材料を受けるための電気的に作動するエアロゾル発生器であって、開放端を有する管を通して供給源からの液体材料を計量された量で送るための電動ポンプを備える、エアロゾル発生器を開示する。管を囲む発熱体が提供されている。ヒーターの起動に伴い、管の中の液体材料は揮発される。揮発に伴い、液体材料は膨張し、気体の形態で管の開放端から出る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
維持管理にあまり手のかからない液体送達システムと、望ましい霧化効果とを有するエアロゾル発生システムを提供することが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第一の態様によると、ヒーター組立品および手動で操作されるポンプを備えるエアロゾル発生システムが提供されている。手動操作ポンプは入口部分および出口部分を有するポンピング容積を画定する。手動操作ポンプの入口部分は、液体貯蔵部分に接続可能となるように構成されている。手動操作ポンプの出口部分は、液体エアロゾル形成基体をヒーター組立品の上へと分与するために、分与組立品と流体接続している。手動操作ポンプは液体エアロゾル形成基体を液体貯蔵部分から分与組立品を経由してヒーター組立品の上へと送るように動作可能である。
【0006】
本発明の実施例を用いて、いかなる電気的に駆動されるポンピングシステムも必要とすることなく、液体エアロゾル形成基体をヒーター組立品の上へと提供することができる。従って、電気機械的に故障する傾向のある電気構成要素または電子構成要素の数が減少される。さらに、こうした送達システムの配線スキームはあまり複雑ではなく、その結果エアロゾル発生システムの保守だけでなく、組立も単純化される。
【0007】
手動操作ポンプのポンピング容積は少なくとも一つの壁を有する中空部材によって画定されてもよく、またこの壁の少なくとも一部分は可撓性である。別の方法として、手動操作ポンプのポンピング容積は、少なくとも一つの壁と中空部材の中で移動可能なプランジャーとを有する中空部材によって画定されてもよい。本明細書で使用される「ポンピング容積」という用語は、中空部材の入口と出口の間に延びる中空部材の内容積であると定義される。一部の実施形態において、ポンピング容積を画定する中空部材は、中空の可撓性の管などの中空の可撓性の部材であってもよい。その二つの端部が入口部分と出口部分とを形成する中空の可撓性の管を使用して、コスト効果の高い方法で製造されてもよい、特に単純かつ信頼性のある設計がもたらされる。
【0008】
手動で起動されるポンプは、手動操作ポンプのポンピング容積を変えるように構成されている容積変更部を備えてもよい。容積変更部は、ユーザーによって手動で動作されるように構成されてもよい。容積変更部は、ポンピング容積の壁またはプランジャーのうちの少なくとも一つの可撓性部分と係合する可動要素を含んでもよい。ユーザーが容積変更部を動作する時、可動要素は、中空部材の内容積が変化するように、中空部材の少なくとも一つの可撓性部分またはプランジャーに対して押されてもよい。可動要素が中空部材の少なくとも一つの可撓性部分またはプランジャーに対して押された時、中空部材の内容積は減少され、ポンピング容積内に超過圧力を作り出す。この超過圧力に起因して、ポンピング容積内に収容された過剰の液体エアロゾル形成基体は、ポンプ容積の出口部分を通って排出される。中空部材の少なくとも一つの可撓性部分またはプランジャーから可動要素が開放された時、中空部材の内容積はその本来のサイズへと延伸し、これによってポンピング容積内で減圧を生じさせる。この減圧に起因して液体エアロゾル形成基体は液体貯蔵部分から中空部材のポンピング容積の中へと送られる。
【0009】
手動操作ポンプの中空部材の入口部分および出口部分は各々、一方向弁を備えてもよい。中空部材の入口部分における一方向弁は、液体が、接続された液体貯蔵部分からポンピング容積の中へのみ流れることを可能にしてもよい。中空部材の出口部分における一方向弁は、液体が、ポンピング容積から分与組立品へのみ流れることを可能にしてもよい。
【0010】
ミニおよびマイクロフラッター弁、ダックビル弁、または逆止め弁を含む、適切なサイズおよび液体流を有する任意の市販の一方向弁が使用されてもよい。弁は、例えば攻撃的な薬品に耐性のある材料、または食品業界用または医療用途用に使用されてもよい材料で作製されてもよい。
【0011】
本発明の一実施形態において、ポンピング容積は出口部分および入口部分を有する中空の可撓性の管によって画定され、これには各々、一方向弁が提供されている。容積変更部は可動要素と固定要素を備える。可撓性の管は、容積変更部の固定要素と可動要素の間に位置付けられ、その結果可動要素を固定要素に向かって移動することによって管の内容積が減少される。
【0012】
容積変更部の可動部材は、エアロゾル発生システムのハウジング内に提供されたボタンに接続されてもよく、その結果ユーザーは容積変更部を容易に操作することができる。
【0013】
弾力部材が提供されてもよく、これはユーザーが容積変更部を開放すると、可動部材がその本来の位置に戻ることを確実にする。
【0014】
中空要素のサイズ、およびポンピングユニット動作中のその折り畳み可能な比率は、エアロゾルの生成のためにヒーター組立品の上へと分与される液体の容積に直接関連し、また吐出パルス当たりの最大液体容積を特定するように制限される場合がある。可撓性中空管を採用する実施形態において、管の外径は2〜8ミリメートルの範囲であってもよく、また3〜5ミリメートルの範囲であることが好ましい。
【0015】
吸煙一回の用量としてポンプされる液体の最大量は、0.010〜0.060マイクロリットルという少量であってもよく、約0.0125マイクロリットルであることが好ましい。
【0016】
手動操作ポンプの中空部材を圧迫するために必要とされる力および変位は非常に小さい。従って、容積変更部を動作するために必要とされる最小限の力を画定するために弾力性のある部材も使用されてもよい。この力は概して自由に選択でき、ユーザーの習慣または期待に合わせられてもよい。力は、0.1〜1.0ニュートンの範囲に調節されてもよく、0.5〜0.8ニュートンの範囲に調節されることが好ましい。
【0017】
可動部材の変位も自由に選択でき、また特定の実施形態の設計に適合させてもよい。変位は0.4.〜5.0ミリメートルであるように調節されてもよく、0.7〜3.0ミリメートルであることが好ましい。
【0018】
手動操作ポンプの入口部分は、液体貯蔵部分への接続のために構成されている。手動操作ポンプと液体貯蔵部分の間の接続は、恒久的な接続であってもよく、または取り外し可能な接続であってもよい。一部の実施形態において、液体貯蔵部分は再充填可能であってもよい。一部の実施形態において、液体貯蔵部分は交換可能であってもよく、また空になった時に、またはユーザーがエアロゾル発生のために異なるタイプの液体を使用したい時に交換されてもよい。手動操作ポンプと液体貯蔵部分の間の取り外し可能な接続は、ルアーテーパー接続(ロッキングタイプまたはフィッティングタイプのいずれか)を含む、任意の適切な接続手段によって確立されてもよい。
【0019】
ポンプは、水と比較して相対的に高い粘度を特徴とする液体エアロゾル形成基体を送るように構成されてもよい。液体エアロゾル形成基体の粘度は、約10〜500ミリパスカル秒の範囲であってもよく、約17〜86ミリパスカル秒の範囲であることが好ましい。
【0020】
分与組立品の出口端にノズルが提供されてもよく、このノズルを経由して、液体エアロゾル形成基体が揮発およびエアロゾル生成のためにヒーター組立品の上へとスプレーされてもよい。ノズルは、液体エアロゾル形成基体の流れを複数の小さい液滴へと変換する。液滴のスプレーパターンは、ヒーター組立品の形状に適合されてもよい。
【0021】
送達装置は標準的なタイプのアトマイザースプレーノズルを備えてもよく、この場合に空気の流れはユーザーからの吸煙の行為によってノズルを通して供給され、液体と混合および作用してノズルの出口において霧化したスプレーを作り出す加圧された気流を作り出す。小さい携帯型装置に適合するための要件を満たすサイズの幾つかのシステム(少量の液体で機能するノズルを含む)が市場で入手可能である。使用されうる別のクラスのノズルとしてエアレススプレーノズルがあり、これはマイクロスプレーノズルと呼ばれることがある。こうしたノズルは、非常に小さいサイズのマイクロスプレーコーンを作り出す。このクラスのノズルを用いれば、装置の内側(特にマウスピースの内側)の気流管理はノズルおよび発熱体を囲み、ヒーター組立品をマウスピースの出口に向けて洗い流し、好ましくはマウスピースを出るエアロゾルの乱気流パターンを含む。
【0022】
どちらのクラスのノズルについても、送達装置とノズルに面したシートヒーター組立品との間の空気ギャップの距離は、好ましくは2〜10ミリメートルの範囲内であり、より好ましくは3〜7ミリメートルの範囲内である。任意のタイプの入手可能なスプレーノズルが利用されうる。メーカーの「The Lee Company」製のエアレスノズル 062 Minstacは、適切なスプレーノズルの一例である。
【0023】
ヒーター組立品は、液体エアロゾル形成基体を蒸発するために適切な任意のタイプの発熱体を備えてもよい。ヒーター組立品は一部の実施例において、実質的に平面であってもよく、任意の所望の形状を有してもよい。ヒーター組立品は、例えば長方形状、多角形状、円形状、または楕円形状を有してもよく、また3〜10ミリメートルの幅寸法および長さ寸法を有してもよい。
【0024】
発熱体は、エアロゾル発生システムで使用するためにエアロゾル形成基体を受け取りかつ加熱するために適切な、好ましくは実質的に平面の、薄い導電性材料(繊維のメッシュ、導電性膜、または加熱ストリップのアレイなど)を備えてもよい。
【0025】
発熱体は複数の開口部を備えてもよい。例えば、発熱体は繊維のメッシュを備えてもよく、それらの間には隙間がある。発熱体は、随意的に穿孔されていて小さい穴を有する薄膜または薄いプレートを備えてもよい。発熱体は、直列に接続された狭い加熱ストリップのアレイを備えてもよい。
【0026】
ヒーター組立品は、耐熱基板と、耐熱基板内または耐熱基板の表面上に提供された発熱体とを備えてもよい。ヒーター組立品の耐熱基板は、ガラス、耐熱ガラス、セラミック、シリコン、半導体、金属、または合金から作製されてもよい。
【0027】
耐熱基板は実質的に平面であってもよく、また任意の所望の形状を有してもよい。耐熱基板は、例えば3〜10ミリメートルの幅寸法および長さ寸法を有する、長方形状、多角形状、円形状、または楕円形状を有してもよい。耐熱基板の厚さは、0.2〜2.5ミリメートルの範囲であってもよい。一部の実施形態において、耐熱基板は約7×6ミリメートルまたは5×5ミリメートル(長さ×幅)のサイズの長方形状を有してもよい。
【0028】
発熱体は、耐熱基板の表面に提供される薄膜被覆として提供されてもよい。発熱体を耐熱基板の表面に含浸、沈着、または印刷することができる。薄膜発熱体の材料は、好都合な電気的特性および耐熱基板への十分に高い接着性を有する任意の適切な材料とすることができる。
【0029】
発熱体は、耐熱基板の体積の中に提供されてもよく、耐熱基板の二つの要素の間に挟まれてもよく、または耐熱材料の保護層で覆われてもよい。
【0030】
一部の実施形態において、液体エアロゾル形成基体は、耐熱基板の表側に送達されてもよく、また発熱体は耐熱基板の裏側に提供されてもよい。
【0031】
ヒーター組立品は分与組立品から間隙を介してもよい。ヒーター組立品を送達組立品から間隙を介して提供することによって、送達組立品からヒーター組立品への液体エアロゾル形成基体の流れを搬送するための管セグメントを有する気化器と比較して、ヒーター組立品に送達される液体エアロゾル形成基体の量を、より良好に制御することができる。こうした管セグメントに起因する望ましくない毛細管作用を回避することができる。エアギャップを通過する時、送達される量の液体エアロゾル形成基体は、ヒーター組立品の表面に当たる前に液滴の噴流へと変形される。こうして、一部の実施例では、ヒーター組立品上に送達される液体エアロゾル形成基体の量の均一な分布を増強することができ、吸入サイクル当たり所定の量のベイパー化されたエアロゾル形成基体を用いたエアロゾルの発生の、より良好な制御可能性および再現性につながる。
【0032】
ヒーター組立品の作動温度は、摂氏120〜210度であってもよく、摂氏150〜180度であることが好ましい。一部の実施例では、動作温度は変化しうる。
【0033】
エアロゾル発生システムは、ユーザーによるポンピングユニットの起動に伴い、電気信号が発生されかつ制御ユニットに伝達されるように構成されてもよい。この目的のために、容積変更部の可動部材は、制御ユニットと電気的に通信する電気機械的スイッチに接続されてもよい。従って、ポンピングユニットの起動は制御ユニットも同時にトリガして、ヒーター組立品を起動してもよい。
【0034】
制御ユニットとの電気的通信は、スイッチと制御ユニットの間の対応する配線を介して確立することができる。制御ユニットとの電気的通信はまた、遠隔で信号を制御ユニットに送信するスイッチなどのワイヤレスインターフェースを経由して確立されてもよく、これは、例えば装置のスイッチの位置に対してもう一方の端部に配置することができる。
【0035】
スイッチは動的な電源内蔵型電子構成要素として設計されてもよい。こうした動的電子スイッチは、信号を生成しかつ送信するために必要とされる電気エネルギーがスイッチボタンを押す行為によって発生されるので、制御ユニットおよび電源への配線接続の必要がない。遠隔信号の単一のボタン起動のため動的な電子スイッチは市販されている。市場で存在する適用可能な解決策としては、非常にコンパクトで、小さく、かつ薄い電子機器(薄膜可撓性電子機器を含む)が挙げられる。電線および電気接点を除去するまたは減らすことは、エアロゾル発生システムの設計および組立を単純化し、全体的な信頼性を改善する。
【0036】
動的電子構成要素はまた、さらなる周囲の装置と通信してもよく、また特にエアロゾル発生システムで使用されるセンサーなどのさらなる電子構成要素とも通信してもよい。
【0037】
エアロゾル発生システムは、電気的に作動するエアロゾル発生システムであってもよい。エアロゾル発生システムは携帯型であることが好ましい。エアロゾル発生システムは従来型の葉巻たばこまたは紙巻たばこに匹敵するサイズであってもよい。エアロゾル発生システムの全長は、およそ30ミリメートル〜およそ150ミリメートルであってもよい。エアロゾル発生システムの外径は、およそ5ミリメートル〜およそ30ミリメートルであってもよい。
【0038】
本発明の第二の態様によると、ヒーター組立品を提供する工程と、入口部分および出口部分を有する中空部材を備える手動操作ポンプを提供する工程とを含むエアロゾルを発生するための方法が提供されている。中空部材の入口部分は、液体貯蔵部分に接続されるように構成されており、また中空部材の出口部分は、分与組立品と流体接続している。方法は、液体エアロゾル形成基体を液体貯蔵部分から分与組立品を経由してヒーター組立品の上へと送るために、手動操作ポンプを動作することをさらに含む。
【0039】
一態様に関して説明される特徴は、本発明の他の態様にも等しく適用されてもよい。
ここで本発明の実施形態を、以下の添付図面を参照しながら、例証としてのみであるが説明する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】スタンバイモードのエアロゾル発生システムの例示的な実施形態の側面図である。
図2】容積変更部の手動動作中の図2の送達システムを示す。
図3】容積変更部の手動起動後の図2の送達システムを示す。
図4】中空部材の内容積を変更するための代替的な機構の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、初期モードまたはスタンバイモードの本発明のエアロゾル発生システムの構成要素を示す。エアロゾル発生システム10は、ハウジング12、電源14、制御ユニット16、液体貯蔵部分18、手動操作ポンプ20、分与組立品22、ヒーター組立品24を備える。ハウジングは、その近位端で空気吸込み口26とマウスピース28を備える。使用時にユーザーは、マウスピースを吸ってまたは吸煙して、空気吸込み口26からヒーター組立品24を経由してマウスピース28へ向かう気流を作り出す。
【0042】
手動操作ポンプ20は、液体貯蔵部分18から液体を回収し、これをヒーター組立品24の上へと制御された方法で送るように構成されている。ポンプ20は、入口部分32および出口部分34を有し、かつそれらの間にポンピング容積36を画定する可撓性中空管30を備える。管30の両端において一方向弁38、40が提供され、入口部分32における一方向弁38は液体エアロゾル形成基体がポンピング容積36の中へと入ることを可能にし、また出口部分34における一方向弁40は液体エアロゾル形成基体がポンピング容積36から出ることを可能にする。固定要素44および可動要素46を備える容積変更部は、可撓性中空管30の反対側に提供されている。可動要素46は、エアロゾル発生システム10のハウジング12内に提供されるボタン48に接続される。
【0043】
図1では、手動操作ポンプは、ポンピング容積が液体エアロゾル形成基体で完全に充填されている当初の位置で描かれている。
【0044】
図2に示すように、ユーザーがボタン48を押す時、中空管30は可動要素46と固定要素44の間で圧迫される。これによってポンピング容積36は減少され、ポンピング容積36内に超過圧力が作り出される。超過圧力を補正するために、液体エアロゾル形成基体の一部分が中空管30の出口部分34を通って排出される。これは図2で矢印50によって示されている。出口部分34は分与組立品22と流体接続している。分与組立品22は管52およびスプレーノズル54を備える。スプレーノズル54は、ヒーター組立品24に均一に送達される液体エアロゾル形成基体の小さい液滴のスプレーコーン56を作り出すエアレススプレーノズルである。
【0045】
ヒーター組立品24は、配線58を経由して電源14と電気的に接続され、制御ユニット16によって制御される。制御ユニット16は配線60を経由して、ボタン48と連結された電気スイッチ62と連通している。こうして、ボタン48を介して手動操作ポンプを起動するのと同時にユーザーは、送達された液体エアロゾル形成基体の揮発のために制御ユニット16がヒーター組立品24を起動するとすぐに、電気スイッチ62を介して電気信号を作り出す。
【0046】
ボタン48を押す一方で、ユーザーはマウスピース28を吸って吸煙し、空気吸込み口26とマウスピース28の間に気流を作り出す。揮発した液体エアロゾル形成基体は、気流と混合してユーザーによって吸い込まれるエアロゾルを作り出す。
【0047】
図3に示されるように、ボタン48が解除された時、可動要素46は弾力性のあるバネ部材64によってその本来の位置に戻る。中空管30はその本来のサイズを回復し、ポンピング容積36内に減圧を作り出す。減圧を補正するために、液体貯蔵部分18から入口弁38を経由してポンピング容積36の中へと新鮮な液体エアロゾル形成基体が送られる。これは図3で矢印66によって示されている。この実施形態において、液体貯蔵部分18は折り畳み式の袋を備える。液体エアロゾル形成基体が液体貯蔵部分18からポンプで送り出されると、折り畳み式の袋の容積は減少する。
【0048】
上述の実施形態は、中空部材の内容積を変更することを可能にする可撓性壁に依存する。しかし、中空部材の容積を変更する他のやり方も可能である。
【0049】
図4は、手動操作ポンプの中空部材の内容積を変更するための代替的な機構の概略図である。中空部材100は、ある容積の液体を収容する剛直な壁105を備える。中空部材100は、図1図3を参照して説明される方法で、入口弁110を通して液体貯蔵部分に接続、および出口弁115を通してヒーター組立品に接続される。プランジャー120は中空部材100の中で移動可能であり、動くため、剛直な壁105との液密封止を維持する。中空部材の内容積108は、剛直な壁105と、入口弁110と、出口弁115と、プランジャー120との間で画定される。中空部材の中でのプランジャーの動きは内容積を変える。プランジャーは、ユーザーがプランジャーを動かして中空部材の内容積を減らすために押すことのできるボタン125に固定されている。ボタンが解除された時に、プランジャーを当初の位置に戻すために、ボタンと剛直な壁105の間に戻しバネ130が提供されている。ユーザーによってボタンが押された時に、中空部内の液体は出口弁115を通って押し出され、またボタンが解除された時に、プランジャーはその当初の位置に戻り、かつ液体は入口弁110を通って中空部材の中へと引き出される。
【0050】
上述の例示的な実施形態は例証するが限定はしない。上記で考察した例示的な実施形態に照らすことにより、上記の例示的な実施形態と一貫したその他の実施形態も当業者には明らかとなろう。
図1
図2
図3
図4