【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第一の態様によると、ヒーター組立品および手動で操作されるポンプを備えるエアロゾル発生システムが提供されている。手動操作ポンプは入口部分および出口部分を有するポンピング容積を画定する。手動操作ポンプの入口部分は、液体貯蔵部分に接続可能となるように構成されている。手動操作ポンプの出口部分は、液体エアロゾル形成基体をヒーター組立品の上へと分与するために、分与組立品と流体接続している。手動操作ポンプは液体エアロゾル形成基体を液体貯蔵部分から分与組立品を経由してヒーター組立品の上へと送るように動作可能である。
【0006】
本発明の実施例を用いて、いかなる電気的に駆動されるポンピングシステムも必要とすることなく、液体エアロゾル形成基体をヒーター組立品の上へと提供することができる。従って、電気機械的に故障する傾向のある電気構成要素または電子構成要素の数が減少される。さらに、こうした送達システムの配線スキームはあまり複雑ではなく、その結果エアロゾル発生システムの保守だけでなく、組立も単純化される。
【0007】
手動操作ポンプのポンピング容積は少なくとも一つの壁を有する中空部材によって画定されてもよく、またこの壁の少なくとも一部分は可撓性である。別の方法として、手動操作ポンプのポンピング容積は、少なくとも一つの壁と中空部材の中で移動可能なプランジャーとを有する中空部材によって画定されてもよい。本明細書で使用される「ポンピング容積」という用語は、中空部材の入口と出口の間に延びる中空部材の内容積であると定義される。一部の実施形態において、ポンピング容積を画定する中空部材は、中空の可撓性の管などの中空の可撓性の部材であってもよい。その二つの端部が入口部分と出口部分とを形成する中空の可撓性の管を使用して、コスト効果の高い方法で製造されてもよい、特に単純かつ信頼性のある設計がもたらされる。
【0008】
手動で起動されるポンプは、手動操作ポンプのポンピング容積を変えるように構成されている容積変更部を備えてもよい。容積変更部は、ユーザーによって手動で動作されるように構成されてもよい。容積変更部は、ポンピング容積の壁またはプランジャーのうちの少なくとも一つの可撓性部分と係合する可動要素を含んでもよい。ユーザーが容積変更部を動作する時、可動要素は、中空部材の内容積が変化するように、中空部材の少なくとも一つの可撓性部分またはプランジャーに対して押されてもよい。可動要素が中空部材の少なくとも一つの可撓性部分またはプランジャーに対して押された時、中空部材の内容積は減少され、ポンピング容積内に超過圧力を作り出す。この超過圧力に起因して、ポンピング容積内に収容された過剰の液体エアロゾル形成基体は、ポンプ容積の出口部分を通って排出される。中空部材の少なくとも一つの可撓性部分またはプランジャーから可動要素が開放された時、中空部材の内容積はその本来のサイズへと延伸し、これによってポンピング容積内で減圧を生じさせる。この減圧に起因して液体エアロゾル形成基体は液体貯蔵部分から中空部材のポンピング容積の中へと送られる。
【0009】
手動操作ポンプの中空部材の入口部分および出口部分は各々、一方向弁を備えてもよい。中空部材の入口部分における一方向弁は、液体が、接続された液体貯蔵部分からポンピング容積の中へのみ流れることを可能にしてもよい。中空部材の出口部分における一方向弁は、液体が、ポンピング容積から分与組立品へのみ流れることを可能にしてもよい。
【0010】
ミニおよびマイクロフラッター弁、ダックビル弁、または逆止め弁を含む、適切なサイズおよび液体流を有する任意の市販の一方向弁が使用されてもよい。弁は、例えば攻撃的な薬品に耐性のある材料、または食品業界用または医療用途用に使用されてもよい材料で作製されてもよい。
【0011】
本発明の一実施形態において、ポンピング容積は出口部分および入口部分を有する中空の可撓性の管によって画定され、これには各々、一方向弁が提供されている。容積変更部は可動要素と固定要素を備える。可撓性の管は、容積変更部の固定要素と可動要素の間に位置付けられ、その結果可動要素を固定要素に向かって移動することによって管の内容積が減少される。
【0012】
容積変更部の可動部材は、エアロゾル発生システムのハウジング内に提供されたボタンに接続されてもよく、その結果ユーザーは容積変更部を容易に操作することができる。
【0013】
弾力部材が提供されてもよく、これはユーザーが容積変更部を開放すると、可動部材がその本来の位置に戻ることを確実にする。
【0014】
中空要素のサイズ、およびポンピングユニット動作中のその折り畳み可能な比率は、エアロゾルの生成のためにヒーター組立品の上へと分与される液体の容積に直接関連し、また吐出パルス当たりの最大液体容積を特定するように制限される場合がある。可撓性中空管を採用する実施形態において、管の外径は2〜8ミリメートルの範囲であってもよく、また3〜5ミリメートルの範囲であることが好ましい。
【0015】
吸煙一回の用量としてポンプされる液体の最大量は、0.010〜0.060マイクロリットルという少量であってもよく、約0.0125マイクロリットルであることが好ましい。
【0016】
手動操作ポンプの中空部材を圧迫するために必要とされる力および変位は非常に小さい。従って、容積変更部を動作するために必要とされる最小限の力を画定するために弾力性のある部材も使用されてもよい。この力は概して自由に選択でき、ユーザーの習慣または期待に合わせられてもよい。力は、0.1〜1.0ニュートンの範囲に調節されてもよく、0.5〜0.8ニュートンの範囲に調節されることが好ましい。
【0017】
可動部材の変位も自由に選択でき、また特定の実施形態の設計に適合させてもよい。変位は0.4.〜5.0ミリメートルであるように調節されてもよく、0.7〜3.0ミリメートルであることが好ましい。
【0018】
手動操作ポンプの入口部分は、液体貯蔵部分への接続のために構成されている。手動操作ポンプと液体貯蔵部分の間の接続は、恒久的な接続であってもよく、または取り外し可能な接続であってもよい。一部の実施形態において、液体貯蔵部分は再充填可能であってもよい。一部の実施形態において、液体貯蔵部分は交換可能であってもよく、また空になった時に、またはユーザーがエアロゾル発生のために異なるタイプの液体を使用したい時に交換されてもよい。手動操作ポンプと液体貯蔵部分の間の取り外し可能な接続は、ルアーテーパー接続(ロッキングタイプまたはフィッティングタイプのいずれか)を含む、任意の適切な接続手段によって確立されてもよい。
【0019】
ポンプは、水と比較して相対的に高い粘度を特徴とする液体エアロゾル形成基体を送るように構成されてもよい。液体エアロゾル形成基体の粘度は、約10〜500ミリパスカル秒の範囲であってもよく、約17〜86ミリパスカル秒の範囲であることが好ましい。
【0020】
分与組立品の出口端にノズルが提供されてもよく、このノズルを経由して、液体エアロゾル形成基体が揮発およびエアロゾル生成のためにヒーター組立品の上へとスプレーされてもよい。ノズルは、液体エアロゾル形成基体の流れを複数の小さい液滴へと変換する。液滴のスプレーパターンは、ヒーター組立品の形状に適合されてもよい。
【0021】
送達装置は標準的なタイプのアトマイザースプレーノズルを備えてもよく、この場合に空気の流れはユーザーからの吸煙の行為によってノズルを通して供給され、液体と混合および作用してノズルの出口において霧化したスプレーを作り出す加圧された気流を作り出す。小さい携帯型装置に適合するための要件を満たすサイズの幾つかのシステム(少量の液体で機能するノズルを含む)が市場で入手可能である。使用されうる別のクラスのノズルとしてエアレススプレーノズルがあり、これはマイクロスプレーノズルと呼ばれることがある。こうしたノズルは、非常に小さいサイズのマイクロスプレーコーンを作り出す。このクラスのノズルを用いれば、装置の内側(特にマウスピースの内側)の気流管理はノズルおよび発熱体を囲み、ヒーター組立品をマウスピースの出口に向けて洗い流し、好ましくはマウスピースを出るエアロゾルの乱気流パターンを含む。
【0022】
どちらのクラスのノズルについても、送達装置とノズルに面したシートヒーター組立品との間の空気ギャップの距離は、好ましくは2〜10ミリメートルの範囲内であり、より好ましくは3〜7ミリメートルの範囲内である。任意のタイプの入手可能なスプレーノズルが利用されうる。メーカーの「The Lee Company」製のエアレスノズル 062 Minstacは、適切なスプレーノズルの一例である。
【0023】
ヒーター組立品は、液体エアロゾル形成基体を蒸発するために適切な任意のタイプの発熱体を備えてもよい。ヒーター組立品は一部の実施例において、実質的に平面であってもよく、任意の所望の形状を有してもよい。ヒーター組立品は、例えば長方形状、多角形状、円形状、または楕円形状を有してもよく、また3〜10ミリメートルの幅寸法および長さ寸法を有してもよい。
【0024】
発熱体は、エアロゾル発生システムで使用するためにエアロゾル形成基体を受け取りかつ加熱するために適切な、好ましくは実質的に平面の、薄い導電性材料(繊維のメッシュ、導電性膜、または加熱ストリップのアレイなど)を備えてもよい。
【0025】
発熱体は複数の開口部を備えてもよい。例えば、発熱体は繊維のメッシュを備えてもよく、それらの間には隙間がある。発熱体は、随意的に穿孔されていて小さい穴を有する薄膜または薄いプレートを備えてもよい。発熱体は、直列に接続された狭い加熱ストリップのアレイを備えてもよい。
【0026】
ヒーター組立品は、耐熱基板と、耐熱基板内または耐熱基板の表面上に提供された発熱体とを備えてもよい。ヒーター組立品の耐熱基板は、ガラス、耐熱ガラス、セラミック、シリコン、半導体、金属、または合金から作製されてもよい。
【0027】
耐熱基板は実質的に平面であってもよく、また任意の所望の形状を有してもよい。耐熱基板は、例えば3〜10ミリメートルの幅寸法および長さ寸法を有する、長方形状、多角形状、円形状、または楕円形状を有してもよい。耐熱基板の厚さは、0.2〜2.5ミリメートルの範囲であってもよい。一部の実施形態において、耐熱基板は約7×6ミリメートルまたは5×5ミリメートル(長さ×幅)のサイズの長方形状を有してもよい。
【0028】
発熱体は、耐熱基板の表面に提供される薄膜被覆として提供されてもよい。発熱体を耐熱基板の表面に含浸、沈着、または印刷することができる。薄膜発熱体の材料は、好都合な電気的特性および耐熱基板への十分に高い接着性を有する任意の適切な材料とすることができる。
【0029】
発熱体は、耐熱基板の体積の中に提供されてもよく、耐熱基板の二つの要素の間に挟まれてもよく、または耐熱材料の保護層で覆われてもよい。
【0030】
一部の実施形態において、液体エアロゾル形成基体は、耐熱基板の表側に送達されてもよく、また発熱体は耐熱基板の裏側に提供されてもよい。
【0031】
ヒーター組立品は分与組立品から間隙を介してもよい。ヒーター組立品を送達組立品から間隙を介して提供することによって、送達組立品からヒーター組立品への液体エアロゾル形成基体の流れを搬送するための管セグメントを有する気化器と比較して、ヒーター組立品に送達される液体エアロゾル形成基体の量を、より良好に制御することができる。こうした管セグメントに起因する望ましくない毛細管作用を回避することができる。エアギャップを通過する時、送達される量の液体エアロゾル形成基体は、ヒーター組立品の表面に当たる前に液滴の噴流へと変形される。こうして、一部の実施例では、ヒーター組立品上に送達される液体エアロゾル形成基体の量の均一な分布を増強することができ、吸入サイクル当たり所定の量のベイパー化されたエアロゾル形成基体を用いたエアロゾルの発生の、より良好な制御可能性および再現性につながる。
【0032】
ヒーター組立品の作動温度は、摂氏120〜210度であってもよく、摂氏150〜180度であることが好ましい。一部の実施例では、動作温度は変化しうる。
【0033】
エアロゾル発生システムは、ユーザーによるポンピングユニットの起動に伴い、電気信号が発生されかつ制御ユニットに伝達されるように構成されてもよい。この目的のために、容積変更部の可動部材は、制御ユニットと電気的に通信する電気機械的スイッチに接続されてもよい。従って、ポンピングユニットの起動は制御ユニットも同時にトリガして、ヒーター組立品を起動してもよい。
【0034】
制御ユニットとの電気的通信は、スイッチと制御ユニットの間の対応する配線を介して確立することができる。制御ユニットとの電気的通信はまた、遠隔で信号を制御ユニットに送信するスイッチなどのワイヤレスインターフェースを経由して確立されてもよく、これは、例えば装置のスイッチの位置に対してもう一方の端部に配置することができる。
【0035】
スイッチは動的な電源内蔵型電子構成要素として設計されてもよい。こうした動的電子スイッチは、信号を生成しかつ送信するために必要とされる電気エネルギーがスイッチボタンを押す行為によって発生されるので、制御ユニットおよび電源への配線接続の必要がない。遠隔信号の単一のボタン起動のため動的な電子スイッチは市販されている。市場で存在する適用可能な解決策としては、非常にコンパクトで、小さく、かつ薄い電子機器(薄膜可撓性電子機器を含む)が挙げられる。電線および電気接点を除去するまたは減らすことは、エアロゾル発生システムの設計および組立を単純化し、全体的な信頼性を改善する。
【0036】
動的電子構成要素はまた、さらなる周囲の装置と通信してもよく、また特にエアロゾル発生システムで使用されるセンサーなどのさらなる電子構成要素とも通信してもよい。
【0037】
エアロゾル発生システムは、電気的に作動するエアロゾル発生システムであってもよい。エアロゾル発生システムは携帯型であることが好ましい。エアロゾル発生システムは従来型の葉巻たばこまたは紙巻たばこに匹敵するサイズであってもよい。エアロゾル発生システムの全長は、およそ30ミリメートル〜およそ150ミリメートルであってもよい。エアロゾル発生システムの外径は、およそ5ミリメートル〜およそ30ミリメートルであってもよい。
【0038】
本発明の第二の態様によると、ヒーター組立品を提供する工程と、入口部分および出口部分を有する中空部材を備える手動操作ポンプを提供する工程とを含むエアロゾルを発生するための方法が提供されている。中空部材の入口部分は、液体貯蔵部分に接続されるように構成されており、また中空部材の出口部分は、分与組立品と流体接続している。方法は、液体エアロゾル形成基体を液体貯蔵部分から分与組立品を経由してヒーター組立品の上へと送るために、手動操作ポンプを動作することをさらに含む。
【0039】
一態様に関して説明される特徴は、本発明の他の態様にも等しく適用されてもよい。
ここで本発明の実施形態を、以下の添付図面を参照しながら、例証としてのみであるが説明する。