特許第6850319号(P6850319)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エルベ エレクトロメディジン ゲーエムベーハーの特許一覧

<>
  • 特許6850319-手術器具 図000002
  • 特許6850319-手術器具 図000003
  • 特許6850319-手術器具 図000004
  • 特許6850319-手術器具 図000005
  • 特許6850319-手術器具 図000006
  • 特許6850319-手術器具 図000007
  • 特許6850319-手術器具 図000008
  • 特許6850319-手術器具 図000009
  • 特許6850319-手術器具 図000010
  • 特許6850319-手術器具 図000011
  • 特許6850319-手術器具 図000012
  • 特許6850319-手術器具 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6850319
(24)【登録日】2021年3月9日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】手術器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20210322BHJP
【FI】
   A61B18/14
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-88910(P2019-88910)
(22)【出願日】2019年5月9日
(62)【分割の表示】特願2017-36220(P2017-36220)の分割
【原出願日】2015年2月12日
(65)【公開番号】特開2019-134970(P2019-134970A)
(43)【公開日】2019年8月15日
【審査請求日】2019年5月13日
(31)【優先権主張番号】14154832.1
(32)【優先日】2014年2月12日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】592245823
【氏名又は名称】エルベ エレクトロメディジン ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Erbe Elektromedizin GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】フォルカー・マイヤー
(72)【発明者】
【氏名】マルクス・シュミット
(72)【発明者】
【氏名】アヒム・ブロドベック
【審査官】 木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平6−30947(JP,A)
【文献】 特表平11−505163(JP,A)
【文献】 特開2000−51227(JP,A)
【文献】 特表2004−524924(JP,A)
【文献】 特表2004−527360(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0035685(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属部を有する分枝体を備え、
前記金属部は、前記分枝体のヒンジとなる貫通孔と、電極板を受ける電極受けと、を有し、
前記電極受けは、プラスチックカバーで少なくとも一部が被覆されており、
前記貫通孔は、前記貫通孔に延在し、前記プラスチックカバーと一体化されている軸受スリーブを有する
電気手術器具。
【請求項2】
前記軸受スリーブは、前記金属部の製造ばらつきを補うことで、前記貫通孔に挿入されるボルトを前記貫通孔の中心に位置付ける
請求項1に記載の電気手術器具。
【請求項3】
前記軸受スリーブは、前記金属部と前記ボルトとを絶縁する
請求項2に記載の電気手術器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気外科的に単極または双極で電流を生体組織に加える手術器具、特に、シール器具に関する。
【背景技術】
【0002】
少なくとも一方が可動な分枝体を備えたツールの2つの分枝体の間で生体組織を凝固させる器具は、技術水準から周知である。このため、欧州特許出願公開2554132号明細書には、分枝体それぞれが、電極受けと薄板状電極の両方を備えている器具が示されている。電極受けは、非結晶質金属部またはプラスチックコーティングされた金属部から構成されてもよい。電極は、複数の点状溶接によって電極受けに接合されている。これにより、機械的接合が確実になされる一方で、電極と電極受けとの間でわずかな熱伝導が生じてしまう。継ぎ目の直径がわずかだとしても、わずかな長さ(熱流方向の膨張)もあるので、遮熱層としての効果が限定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本目的は、手術器具、特に、請求項1に記載の電気手術器具により達成される。
【0004】
本発明に係る器具は、電極受けと電極板とが複数のウェブを介して継ぎ目なく互いに接合されて一体化している分枝体を備える。したがって、ウェブと、一方の電極受けとウェブとの境目と、他方の電極板とウェブとの境目とは、同じ組成および構造の材料から境目なく構成される。好適な材料は十分な電気伝導特性を有するので、電極板を用いて生体組織に電流を加えることができる。複数の個別部品から作られる場合、電極板または電極受けの部品を再溶融することによって継ぎ目は生成されるが、ここでは、継ぎ目が完全にない。この概念から、ウェブのサイズは電気的、機械的、かつ、製造に関して必要不可欠なものに最小化される。さらに、ウェブの長さも最小化される。ウェブの長さは、平均断面積の平方根と少なくとも同じであることが好ましい。また、ウェブの長さは、最小断面積の平方根と少なくとも同じであればより好ましい。これらの対策により、電極板から電極受けへの熱伝達抵抗を最大にすることができる。これは、電極受けと電極板との間のスリット内に注入されるプラスチックがウェブの機械的接合効果の助けとなる場合やかなりの部分を占める場合に、特に当てはまる。
【0005】
電極板と電極受けとの間にできるだけ大きな熱抵抗を用いると、電極板とは逆の分枝体側を動作中に可能な限り冷たいままにしておくことができる。電極間で生体組織をつまむと、それに接している電極板の温度は100度以上になる可能性があるが、電極受け、つまり、後側の分枝体の外側を、生体組織の損傷を防ぐか最低でも少なくする、電極板より低い温度に保つことができる。生体組織は、40度ですでに損傷し始めるが、例えば、少なくとも60度で損傷し始める。これにより、困難な手術の場合や神経組織などの繊細な組織のすぐ近傍であっても、かなり精密で特異な組織処置を提供できる。
【0006】
具体的な実施の形態の場合、ウェブは、スリットの開口から離れて設けられる。これにより、電極板から電極受けへのわずかな熱流は、電極受けのエッジから遠ざけられるので、分枝体のエッジ温度をさらに低くすることができる。
【0007】
また、電極受けのエッジ輪郭線からウェブまでの距離は、スリットの幅より大きくてもよい。これにより、上記効果が促進される。
【0008】
ウェブの断面は、円形でもよい。しかしながら、ウェブの断面は非円形でもよく、全てのウェブの断面が同じ形状で実装されてもよいし、異なる形状で実装されてもよい。また、ウェブの断面の向きは、例えば、電極受けで電極板を支える斜めの安定性が最大化されるように異なっていても同じでもよい。
【0009】
ウェブの最大直径は、スリット幅より小さくてもよい。ウェブはかなり繊細で、熱伝導率が小さい。電極受けの断面がボウル形状であれば、各ウェブの長さは最大化されてもよい。これにより、熱抵抗がさらに大きくなる。
【0010】
また、電極板は、一端で継ぎ目なく電極受けと一体化してもよい。電極板は、平坦、可能であれば、型形状でもよい。生体組織に対向する電極面のデザインは、適用内容に応じて自由に設計してもよい。具体的に、電極板は、スリットの開口でスリット幅が小さくなる周縁エッジを備えてもよい。
【0011】
電極受けと、ウェブと、電極板とは、積層造形方法または生成的な製造方法で製造されることが好ましい。そうすることにより、同質の材料から構成される。特に、積層造形方法としてレーザ積層造形法(SLM)が適しており、レーザ焼結またはレーザ溶融によって金属粉末から電極板と、ウェブと、電極受けとが作られる。したがって、電極板と、ウェブと、電極受けとは、同質の微細構造を有する。このような材料および方法によって、実現できる物質安定性は高く、鋳造法に匹敵する。アンダーカットをほとんど含まない構造の場合は、金属射出成形法(MIM法)も、さらなる製造方法として考えることができる。ウェブの表面と、電極受けの表面と、少なくとも、電極受けに面した側の電極板の表面とにおいて凸凹が増加すると、これらの表面にプラスチックが固体付着する。特に、電極板と電極受けとの間に形成されたスリットにプラスチックを注入すれば、また、妥当な場合は、電極受けをさらにプラスチックでインサート成形または被覆すれば、金属とプラスチックを強固に接合することができる。これは、特に、手術器具の衛生的な需要において、また、器具(特に分枝体)を高温や化学的ストレスにさらす洗浄・滅菌サイクルにおいて有利である。
【0012】
プラスチックで電極受けをインサート成形することにより、少なくとも電気絶縁が実現され、プラスチックの厚み次第では顕著な断熱も実現されて、有利である。
【0013】
さらに、プラスチックインサート成形を用いると、軸受け内径面領域など、電極受けを機械的に較正することができる。このため、電極受けは横断孔を備える。横断孔の精度は、製造の際に二次的に重要である。したがって、電極受けの横断開口部を抜けて延在し、プラスチックにおける軸受け内径面の位置を正確に決定する金型コアを用いたプラスチック射出成形において、プラスチックで電極受けをインサート成形すると、正確な軸受け内径面を実現できる。上記説明、下記説明、および、請求項で電気絶縁材料としてプラスチックまたはプラスチック材料について言及する場合は、プラスチック材料系に該当しない絶縁特性を有する材料も含まれる。
【0014】
本発明の実施の形態のさらなる効果は、図面、請求項、又は、図面の説明から明らかになる。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、観血的手術で利用するための改良分枝体を備えた、腹腔鏡および内視鏡手術用の改良手術器具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明に係る器具の概略斜視図である。
図2図2は、図1における器具のツールの概略斜視図である。
図3図3は、図2におけるツールの分枝体の側面図である。
図4図4は、図3における分枝体の上面図である。
図5図5は、図3および図4における分枝体の異なる実施形態における断面図である。
図6図6は、図3および図4における分枝体の異なる実施形態における断面図である。
図7図7は、異なる実施形態におけるウェブの断面図である。
図8図8は、異なる実施形態におけるウェブの断面図である。
図9図9は、中空ウェブの断面図である。
図10図10は、スペーサ部材を内部に有する中空ウェブの縦断面図である。
図11図11は、軸受け内径面領域がプラスチックコーティングされた、図3または図4における分枝体の水平断面図である。
図12図12は、本発明に係る分枝体の別の実施形態における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
例として、図1に示した器具10を観血的手術と腹腔鏡手術の少なくとも一方で用いるチューブ軸器具として説明する。この器具10は軸11を備え、その遠位端にツール12が配置されている。ハンドル14を備え、かつ、軸11の近位端につながっている筐体13は、器具10を操作するのに用いられる。しかしながら、器具10は、軸11だけでなくツール12も相応に小さくかつ繊細であり、軸11が可とう性を有する、フレキシブルな内視鏡器具として実装されてもよい。以下の説明はこのような実施の形態に対しても適用できる。
【0018】
図2は、ペンチのように動作し、基本デザインが原則同じ2つの分枝体15、16を有するツール12を示している。したがって、図3図6に示す分枝体16に関する以下の説明は、分枝体15にも適宜適用できる。
【0019】
図4の分枝体16は、プラスチックカバー17を省略して説明している。このプラスチックカバー17については、順に、図5でより詳しく説明する。
【0020】
図3および図4は、金属で構成される一部の分枝体16のみを示している。この金属部18は、薄い、できれば、シ―ト金属板形状の電極板19と、電極受け20と、それらの間に配置される複数の接合ウェブ21とに分けられる。電極板19と、電極受け20と、ウェブ21とは、同質の材料から継ぎ目なく一体化して実装される。図示のとおり、電極板19は、平坦になるように、図4によれば、真っ直ぐに伸びるように実装されてもよい。しかしながら、特定の利用において必要であれば、1方向または複数の方向に湾曲するように実装されてもよい。例えば、上面視において、電極19は、カーブに沿って図4とは異なるように実装されてもよい。さらに、電極19は、凹状または凸状のボウル形状になるように実装されてもよく、必要であれば、上記の各場合において型どおりの形状になるように実装されてもよい。この型形状は、歯形、クロスウェブ、エッジ輪郭線22に沿った縦方向リブなどから構成されてもよい。さらに、ブレードを収納するための、遠位端の上流側ですぐ終端となる連続スリットまたは単一スリットを電極板19に設けることも可能である。いずれの場合でも、電極板19のエッジ輪郭線22は、一方の側面に沿った後、遠位端をまたぎ、そして逆側に沿って延在する(図5も参照)。これは、電極受け20のエッジ輪郭線23と平行になるように実装されることが望ましい。
【0021】
図5に示すように、電極受け20は型どおりに実装されてもよく、図3によれば、電極板19との間隔は一定でも変化してもよい。電極受け20は、電気絶縁材料で少なくとも一部が被覆されている。電極板19と電極受け20との間でスリット24が規定され、その開口25は、エッジ輪郭線22と23との間でそれらに沿った全周に規定される。図から分かるように、エッジ輪郭線22と23間で計測される開口25の幅Wは全周において均一でもよい。図5によれば、エッジ輪郭線23は、エッジ輪郭線22よりさらに内側にずれていてもよい。ここでは、電極板19は電極受け20よりも突出している。しかしながら、その対比を入れ替えてもよい。電極板19の厚さDは、スリット24の開口25の幅W(図5)より小さくてもよい。
【0022】
図5に示すように、ウェブ21は、開口25から、つまり、エッジ輪郭線22、23から離間していることが好ましい。ウェブ21は、継ぎ目なく電極板19と一体化している。また、ウェブ21は、継ぎ目なく電極受け20とも一体化している。ウェブ21の長さは、開口25の幅と少なくとも同じであることが好ましい。
【0023】
図12に示すように、電極板19のエッジ輪郭線22は、凸部35形状の拡張部を備えてもよい。この拡張部35は、電極板19の平面に対して傾斜して、好ましくは90度で設けられ、スリット24の開口25よりも部分的または完全に突出していてもよい。凸部35の高さHは、電極板の厚さDより大きくてもよい。凸部35の高さHは、0.3mmから0.5mmの範囲内にあり、好ましくは0.4mmである。凸部35の厚さは、電極板19の厚さDと等しいことが好ましいが、わずかに大きくても小さくてもよい。凸部35はプラスチックカバー17より突出しているので、プラスチックカバー17の外側フランジ37は、凸部35の外側フランジ38から離れて設けられる。また、プラスチックカバー17の外側フランジ37は、凸部35の外側フランジ38よりも電極受け20の中心側に設けられる。プラスチックカバー17の外側フランジ37と凸部35の外側フランジ38との間隔は、凸部35の厚さDよりわずかに小さいほうが好ましい。凸部35から電極板19への遷移領域36は、生体組織を保護するように丸みを帯びて実装されることが好ましい。図12に示すように、(図面の右側の)位置において、分枝体16の凸部35付エッジ輪郭線22の形状は、電極板19の一方の側面に沿った後、遠位端をまたぎ、そして逆側に沿って延在することが望ましい。このエッジ輪郭線22の形状は、全体にわたって途切れなく同じ形状でもよい。また、へこみの形で途切れがあってもよい。上述したように、凸部35付エッジ輪郭線22は、信頼性のある血管閉鎖の助けとなる。
【0024】
電極板19と電極受け20とウェブ21から構成される上記金属体は、粉末冶金学的にレーザ焼結またはレーザ溶融(SLM)などの積層造形方法で製造されることが好ましい。したがって、ウェブ21は、電極板19および電極受け20と同じ物質構造を有し、同じ安定性も有する。ウェブ21の直径は、ウェブ21の長さより小さくてもよい。ウェブの断面は、例えば、図7に示すように円形または略環状になるよう実装されてもよいし、図8のように非円形になるよう実装されてもよい。このように機械的な安定性が高ければ、熱伝導率は低くなる。
【0025】
スリット24は、プラスチックで充填されることが好ましく、このプラスチックはプラスチックカバー17と外側で一体化する。したがって、スリット24は閉じられるので、液体、バクテリア、または、その他の生体物質の浸透を防ぐことができる。このプラスチックは、さらに、互いに対向し、かつ、スリット24を規定する表面にも固着している。また、プラスチックカバー17は、電極受け20の後側、つまり、図5における下側と良好に固着してもよい。プラスチックカバー17により、電極受け20と周囲の生体組織とが電気絶縁および断熱される。スリット24内のプラスチックにより、電極板19と電極受け20との間が遮熱されるだけでなく、電極板19が機械的に支持される。
【0026】
図6は、特に、ウェブ21と電極受け20との実施の形態に関する、分肢体16の断面の変形例である。図に示すように、電極受け20は略ボウル形状で実装されてもよい。そうすることにより、ウェブ21の長さとスリット24の内幅は大きくなる。ウェブ21は、円筒形状で実装されてもよいし、一端または両端で太くなるように実装されてもよい。その他については、同じ参照符号に基づき、上記説明を適宜適用できる。
【0027】
繊細なウェブ21の代わりに、図9および図10に係る中空ウェブ26を1以上の箇所で用いてもよい。これらの中空ウェブ26は、内側にチャネル27があってもよい。このチャネル27は、例えば、電極板19の上側に開口したものであり、例えば、プラスチックやセラミックなどで構成されるスペーサ28を取り付けるのに適している。図10によると、中空ウェブ26により、電極板19と電極受け20が接合されてもよい。しかしながら、中空ウェブ26は、ブラインドピンとして実装されてもよい。つまり、電極受け20の上流側に離れて終端となってもよい。この場合、電極板19と電極受け20との間の電気的かつ機械的な接合には役立たない。したがって、接合は、スリット24に設けられたプラスチックと他のウェブ21との少なくとも一方によって完全または部分的になされる。
【0028】
プラスチックカバー17は、電極受け20を超えてジョイント部29(図3)まで、妥当な場合は、さらに動作連結部30まで延在してもよい。ジョイント部29は、ペンチのように分枝体15、16を開閉できるようなピボット結合を実装するのに用いられる。このために、ジョイント部29には貫通孔31が設けられる。この貫通孔31は、ジョイント部29全域に延在し、円形または非円形になるよう実装されてもよく、その直径は、支えるために設けられるボルト32の外径より大きいことが好ましい(図11)。また、プラスチックカバー17は、貫通孔31全体に延在し、そこで軸受スリーブ33を形成することが好ましい。この軸受スリーブ33(軸受け内径面)は、プラスチックカバー17と一体化されている。軸受スリーブ33は、金属部18とボルト32とを絶縁すると同時に、ボルト32を貫通孔31の中心に位置付ける。つまり、金属部18の製造ばらつきに大きく依存しない。
【0029】
上記器具10は、以下のように動作する。
【0030】
2つの分枝体15、16の電極板19を、軸11を貫通する配線と接続ケーブル34とを介して高周波発生器などの電源に接続する。起動すると電圧が生じるため、分枝体15、16でつまんだ生体組織に電力が加えられる。このために、ハンドル14のハンドレバーを操作して、分枝体15、16を閉じ、それらの間で生体組織をつまむ。電力供給により、生体組織の温度は上昇して凝固する。また、電極板19の温度も部分的に沸点を超えて上昇する。しかしながら、熱は、主に電極板19にとどめられる。スリット24に設けられたプラスチックの熱伝導率は、電極板19の熱伝導率よりも小さい。ウェブ21の断面積は小さいので、わずかな熱エネルギーしかさらに伝達しない。そのため、電極受け20は大部分が冷たいままである。電極受け20の熱容量は大きいほうが好ましいので、小さな伝達熱量をわずかな温度上昇だけで受け入れる。熱緩衝材、特に、ワックスなどの潜在的な蓄熱材を、プラスチックと電極受け20の少なくとも一方の1以上の中空チャンバに設けると、効果を高めることができる。蓄熱温度は、生体組織を損傷しない、例えば60度以下の低温範囲に規定されることが好ましい。したがって、長時間使用したとしても、分枝体15、16の外側を十分冷たく保つことができる。
【0031】
器具10の新規な分枝体16は、電極板19と電極受け20と接合ウェブ21とを有する、継ぎ目なしに一体化された金属部18を備える。この金属部18は、レーザ積層造形法(SLM)などの積層造形方法で製造されることが好ましい。電極板19と電極受け20との間の溶接部または継ぎ目をなくすことにより、熱をほとんど伝導しない機械的に非常に安定した接合がウェブ21を用いて確立できる。新規な分枝体は、可とう性を有する内視鏡器具や腹腔鏡器具だけでなく観血的手術用の器具にも適している。
【符号の説明】
【0032】
10 器具
11 軸
12 ツール
13 筐体
14 ハンドル
15 第1分枝体
16 第2分枝体
17 プラスチックカバー
18 金属部
19 電極板
20 電極受け
21 ウェブ
22 電極板のエッジ輪郭線
23 電極受けのエッジ輪郭線
24 スリット
25 開口
26 中空ウェブ
27 チャネル
28 スペーサ
29 ジョイント部
30 動作連結部
31 貫通孔
32 ボルト
33 軸受スリーブ
34 接続ケーブル
35 凸部
36 遷移領域
37 17の外側フランジ
38 35の外側フランジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12