(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
半導体チップを備えたパッケージと、半導体チップが搭載される位置に開口部を備えたインターポーザー基板がそれぞれの電極端子と電極パッドで交互に積層された液浸を前提とした三次元積層集積回路であって、
前記パッケージと前記インターポーザー基板は、
下面の電極端子によって積層方向と前記電極端子同士の間に空隙が生まれる形状であり、
前記パッケージと前記インターポーザー基板の
上面には前記電極端子が連結するための幾何学形状の電極パッドが設けられており、
前記パッケージと前記インターポーザー基板の
前記電極端子と前記電極パッドは上下に電気的に1:1で接続されており、
前記パッケージと前記インターポーザー基板には
積層する際に正確な位置決めをするためと連結を保持するためのガイド穴が設けられ、
前記パッケージと前記インターポーザー基板の連結により
前記電極端子と電極パッドで層間通信経路が形成され、
前記パッケージと前記インターポーザー基板の
前記電極端子同士の間に生じる空隙に冷却液が流れることによって液浸冷却を行う三次元積層集積回路。
前記パッケージの中に搭載される半導体チップが2層以上の積層三次元半導体(HBM:High Bandwidth MemoryあるいはWide I/O DRAM等)である請求項1乃至請求項2記載の三次元積層集積回路。
前記パッケージがクロスコネクトされたNUMA(Non−Uniform Memory Access)構成であって、前記パッケージの相互接続がバス接続となった請求項1から請求項3記載の三次元積層集積回路。
前記ガイド穴は前記パッケージに搭載される半導体チップへの給電のための陽極と陰極の電極としての機能を兼ね備え、さらに前記パッケージに搭載されるセラミックコンデンサに直接給電できるようにインピーダンスを下げるために前記ガイド穴は隣接して2個ずつ備えた請求項1から請求項4に記載の三次元積層集積回路。
前記電極端子と電極パッドで形成される前記層間通信経路のデータ伝送方式を、隣接する前記電極端子2つをペアとしてLVD(Low Voltage Differential)とした請求項1から請求項5に記載の三次元積層集積回路。
前記電極端子と電極パッドで形成される前記層間通信経路のデータ伝送方式を、隣接する前記電極端子2つをペアとしてPCI Expressとした請求項1から請求項5記載の三次元積層集積回路。
前記層間通信経路に流れる高周波信号の反射の悪影響を低減するために、双方向トライステートゲートドライバを前記パッケージの前記電極端子に隣接して搭載した請求項1から請求項8記載の三次元積層集積回路。
液浸冷却における間欠的な沸騰によるキャビテーションを防ぐため、前記パッケージに搭載された半導体チップに密着させたヒートスプレッダーが焼結金属あるいは酸化金属である請求項1から請求項9記載の三次元積層集積回路。
請求項1から請求項10記載の前記三次元積層集積回路の最下層の集積回路がバスドライバスイッチまたはページ単位でアドレスバススヌーピング付きバッファ付きDMAのバスドライババッファスイッチで構成される三次元積層集積回路。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そもそも、放熱板は積層半導体の間に挿入しても有効に機能しない。金属板を横方向に出して放熱するには熱抵抗が大きすぎる。金属とは言え、熱抵抗(Ψjt)は金属の熱伝導距離に比例し、Tj=Ψjt x P + Tcl(Tjはジャンクション温度、Ψjtは熱抵抗、Pは消費電力、Tdは環境温度)、Ψjtが大きくなると消費電力がかけられない。
【0005】
図15は発熱する半導体チップの上に放熱板を設置し、熱がどのように伝搬するかを模した断面図である。半導体チップはそれ全体が発熱体となるが、放熱板への熱の伝わり方の説明のために、発熱部分を発熱点A、B、Cの点熱源とする。熱は点熱源から放熱板に対して半球状(
図15は断面図のため、半円で示している)に広がっていく。
中央の発熱点Bからは同心円状に熱が伝搬していくが、左右にある発熱点A乃至発熱点Bからの熱があるため、左右方向には熱抵抗が大きくほとんど伝搬しない。一方、上方向は熱抵抗が低いため、放熱フィンB乃至その周辺の放熱フィンは有効に作用する。
他方、発熱点Aでは、中央の発熱点Bからの熱により、右方向は熱抵抗が大きいため、熱は上方と左方向に伝搬する。同様に発熱点Cでは、中央の発熱点Bからの熱により、左方向は熱抵抗が大きいため、熱は上方と右方向に伝搬する。
放熱板は発熱体より広い表面積にて外部に熱を放出するものであるため、半導体チップよりも十分に大きい。このため、発熱点Aよりも左側と発熱点Cの右側には熱源がなく、熱抵抗が小さいため放熱板そのものの表面積での放熱で充分な放熱ができ、放熱フィンA乃至放熱フィンC等の外縁部分の放熱フィンは有効に作用しない可能性がある。
また、放熱フィンBのように発熱体である半導体チップの直上にある放熱フィンを最大限有効にするには、
図16のように放熱板の厚みを薄くし、発熱点と放熱フィンを近づければ良いが、放熱板の厚みを薄くすれば、放熱板の熱抵抗が大きくなり、発熱点から直上部以外の放熱板への熱伝導が起きにくくなるため、本末転倒となる。
したがって、放熱板は厚くても薄くてもダメで、特に半導体チップをBGAパッケージ等に収容することなく三次元液浸を前提とした場合、半導体チップの間に放熱板を挟んでもその有効性は、いたって疑問がある。
【0006】
前述のTSVでの三次元化を行わない、半導体をパッケージした上での液浸した、表面に電極パッドを有するFC−BGAパッケージによる、液浸を前提とした、三次元半導体(CPUやGPU等の高発熱演算回路の三次元実装)の効率的な方法は、放熱フィンを取り付けることなく、直接液浸し、半導体基底部(半導体の回路実装部の反対側であって、極力薄くなるように削り出したもの)をそのまま、直接液浸するか(その場合は、アンダーフィルでFC部はシールしてあるとする)、コンパウンドを塗布して、熱伝導率の良い薄いパッケージ金属で覆って、液浸し、W=J / sなので、冷媒を、圧送してm
2/sを稼いで(半導体の表面積は1cm
2/ s 程度なので、例えば沸騰放熱を前提とすれば一平方センチの有効表面積が10倍不足するのであれば、10cm
2/sの流量を流せばよい)必要な有効表面積だけの、表面積流量を設定すればよい。
【0007】
例えば、冷媒が、フルオロケミカル リキッドであった場合、約0.5W/cm
2 ℃の熱伝導率であるが、前掲の式を変形するとP = (Tj - Tcl) x 1 / Ψjt であるので、Tjが85℃とすれば、フルオロケミカル リキッドの沸点が56℃の場合、Tj - Tclは29℃の温度差が得られるが、Pは58Wとなるが、例えば200Wの1cm
2 のCPUだった場合、約4cm / sの流量を圧送して、流せばよいというこことなる。
【0008】
半導体が、1kW の1cm
2のGPGPUだった場合は、約20 cm
/s程度の流量を、流して沸騰冷却すれば事足りる。これはむしろ画期的な話で、1kWのGPGPUを10層重ねて、スーパーコンピューターを形成する場合も、液浸して横から20 cm /s 程度の流量を全層に印加するに事足りる。これは、レーザー発振器等で普通に実用化していることで、特別ではない。
【0009】
本発明により、表面に電極パッドを有するFC−BGAパッケージを積層する際に、穴開きインターポーザー基板を挿入することにより表面に電極パッドを有するFC−BGAパッケージの半導体の裏面に(穴の部分に)積層セラミックコンデンサを収容するスペースを確保し、かつ前述の必要な流量を安定的に担保するスペースを確保することが可能になる。
【0010】
従来技術は三次元半導体を一つの塊ととらえて、その内部に半導体を冷却するための冷媒の流路に着目しているが、プロセッサ(Prossesser)とも呼ばれるCPU(Central Processing Unit)、GPGPU(General−purpose computing on graphics processing Unit、BBU(Base Band Unit)、スーパーコンピューターのコア等の大電流を消費する半導体チップを動作させるためセラミックコンデンサをどこに配置するかが考慮されていなかった。三次元半導体の最上面もしくは底面にセラミックコンデンサを配置することは考えられるが、中央の層の半導体チップに対しては、セラミックコンデンサから半導体チップまでの各層を貫く電力供給経路が長くなることによりインピーダンスが増大し、半導体チップに大電流給電ができなくなる。
本発明は、プロセッサが搭載された半導体パッケージ基板(FC−BGA(Flip Chip−Ball Grid Array)サブストレートともいう。)の各層からセラミックコンデンサまでの回路のBGA(Ball Grid Array)端子を取り除いて、半導体パッケージ基盤の各層にセラミックコンデンサを取り付けることで、回路のインピーダンスを下げて大電流給電を可能とし、且つ液浸して三次元冷却を実現する参考文献WO2019/146724の不具合を解消するための提案である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
参考文献WO2019/146724では表面に電極パッドを有するFC−BGAパッケージを重ねることにより、パッケージ下部のセラミックコンデンサとパッケージの上部のヒートスプレッダーの間隔が狭まり液浸しても流量が期待できなくなる恐れがあった。
今回の発明ではあたかも五右衛門風呂の蓋がないとき下駄を履いて入るような感覚で半導体チップを搭載しない上下にパッドとBGAの電極の付いた、ヒートスプレッダー部分を四角く穴をあけたBGA電極を上下に電気的に貫通させるパッドとBGAつき基板(以下「穴開きインターポーザー基板」)を挿入することによりセラミックコンデンサとヒートスプレッダーの間隔を確保することにより液浸のフロリナート液の流量とセラミックコンデンサをBGAパッケージの下部に配置するスペースを確保し、既存のFC−BGAパッケージの在り方を大きく改めることなく液浸三次元演算装置を構築するための装置と方法を提案する。
【0012】
(1)半導体チップを備えたパッケージと、半導体チップが搭載される位置に開口部を備えたインターポーザー基板がそれぞれの電極端子と電極パッドで交互に積層された液浸を前提とした三次元積層集積回路であって、
前記パッケージと前記インターポーザー基板は、
下面の電極端子によって積層方向と前記電極端子同士の間に空隙が生まれる形状であり、
前記パッケージと前記インターポーザー基板の
上面には前記電極端子が連結するための幾何学形状の電極パッドが設けられており、
前記パッケージと前記インターポーザー基板の
前記電極端子と前記電極パッドは上下に電気的に1:1で接続されており、
前記パッケージと前記インターポーザー基板には
積層する際に正確な位置決めをするためと連結を保持するためのガイド穴が設けられ、
前記パッケージと前記インターポーザー基板の連結により
前記電極端子と電極パッドで層間通信経路が形成され、
前記パッケージと前記インターポーザー基板の
前記電極端子同士の間に生じる空隙に冷却液が流れることによって液浸冷却を行う三次元積層集積回路。
【0013】
(2)前記パッケージ間に挿入する前記インターポーザー基板が連続して複数枚挿入された上記(1)に記載の三次元積層集積回路。
【0014】
(3)前記パッケージの中に搭載される半導体チップが2層以上の積層三次元半導体(HBM:High Bandwidth MemoryあるいはWide I/O DRAM等)である上記(1)乃至上記(2)に記載の三次元積層集積回路。
【0015】
(4)前記パッケージがクロスコネクトされたNUMA(Non−Uniform Memory Access)構成であって、前記パッケージの相互接続がバス接続となった上記(1)から上記(3)に記載の三次元積層集積回路。
【0016】
(5)前記ガイド穴は前記パッケージに搭載される半導体チップへの給電のための陽極と陰極の電極としての機能を兼ね備え、さらに前記パッケージに搭載されるセラミックコンデンサに直接給電できるようにインピーダンスを下げるために前記ガイド穴は隣接して2個ずつ備えた上記(1)から上記(4)に記載の三次元積層集積回路。
【0017】
(6)前記電極端子と電極パッドで形成される前記層間通信経路のデータ伝送方式を、隣接する前記電極端子2つをペアとしてLVD(Low Voltage Differential)とした上記(1)から上記(5)に記載の三次元積層集積回路。
【0018】
(7)前記電極端子と電極パッドで形成される前記層間通信経路のデータ伝送方式を、隣接する前記電極端子2つをペアとしてPCI Expressとした上記(1)から上位(5)記載の三次元積層集積回路。
【0019】
(8)クロックアップしたPCI Expressを用いた上記(7)の三次元積層集積回路。
【0020】
(9)前記層間通信経路に流れる高周波信号の反射の悪影響を低減するために、双方向トライステートゲートドライバを前記パッケージの前記電極端子に隣接して搭載した上記(1)から上記(8)記載の三次元積層集積回路。
【0021】
(10)液浸冷却における間欠的な沸騰によるキャビテーションを防ぐため、前記パッケージに搭載された半導体チップに密着させたヒートスプレッダーが焼結金属あるいは酸化金属である上記(1)から上記(9)記載の三次元積層集積回路。
【0022】
(11)上記(1)から上記(10)記載の前記三次元積層集積回路の最下層の集積回路がバスドライバスイッチまたはページ単位でアドレスバススヌーピング付きバッファ付きDMAのバスドライババッファスイッチで構成される三次元積層集積回路。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、プロセッサが搭載された半導体パッケージ基板の各層の裏面に離隔を確保しセラミックコンデンサを取り付ける間隙を確保した上で、液浸冷却を可能としたので、回路のインピーダンスを下げて大電流給電を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本実施形態の一例である三次元積層集積回路において、3層を積層し、結合した斜視図である。
【
図2】本実施形態の一例である三次元積層集積回路において、3層積層する場合の表面に電極パッドを有するFC−BGAパッケージと穴開きインターポーザー基板の重なりを示した斜視図である。
【
図3】本実施形態の一例である表面に電極パッドを有するFC−BGAパッケージの表面の斜視図である。
【
図4】本実施形態の一例である表面に電極パッドを有するFC−BGAパッケージの裏面の斜視図である。
【
図5】本実施形態の一例である表面に電極パッドを有するFC−BGAパッケージの双方向トライステートゲートドライバと回路の概略図である。
【
図6】双方向トライステートゲートドライバ内部および外部の回路の概略図である。
【
図7】双方向トライステートゲートドライバ回路の概略図である。
【
図8】本実施形態の一例である表面に電極パッドを有するFC−BGAパッケージにおいて、半導体チップをヒートスプレッダーで覆う構成を示した斜視図である。
【
図9】本実施形態の一例である表面に電極パッドを有するFC−BGAパッケージにおいて、半導体チップをヒートスプレッダーで覆う構成を示した断面図である。
【
図10】本実施形態の一例である穴開きインターポーザー基板の表面の斜視図である。
【
図11】本実施形態の一例である穴開きインターポーザー基板の裏面の斜視図である。
【
図12】本実施形態の一例である三次元積層集積回路における層間通信経路の概念図である。
【
図13】本実施形態の一例である三次元積層集積回路の双方向トライステートゲートドライバが備えられた層間通信経路の概念図である。
【
図14】本実施形態の一例である三次元積層集積回路において厚みのある半導体チップ実装した図である。
【
図15】半導体チップの熱が放熱板に伝搬する模式図。
【
図16】半導体チップの熱が薄い放熱板に伝搬する模式図。
【
図17】本実施形態の一例である三次元積層集積回路において、2層を積層した側面図で双方向トライステートゲートドライバの搭載位置を示した図である。
【
図18】バス接続方式における通信経路の名称を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図で示す本実施形態の三次元積層集積回路は、表面に電極パッドを有するFC−BGAパッケージと、その上の一乃至複数枚の穴開きインターポーザー基板をまとめて1層とし、最上部の表面に電極パッドを有するFC−BGAパッケージは単独で1層とする。なお、FC−BGAパッケージは、下層の基板と連結した状態において積層方向と電極端子同士の間に空隙が生まれる形状の端子をもつパッケージの一例であり、電極パッドは幾何学形状のパッドの一例である。また、BGA電極等は積層方向と電極端子同士の間に空隙が生まれる形状の電極端子の一例である。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。
【0026】
図1及び
図2を参照して、本実施形態について説明する。
図1は本実施形態の斜視図である。
図2は本実施形態の積層構成を示す斜視図である。
【0027】
(BGAと下駄と層間通信経路と液浸冷却)
参考文献WO2019/146724では表面に電極パッドを有するFC−BGAパッケージを重ねることにより、パッケージ下部のセラミックコンデンサとパッケージの上部のヒートスプレッダーの間隔が狭まり液浸しても流量が期待できなくなる恐れがあった。あるいは、干渉して重ねられない虞もあった。
今回の発明ではあたかも五右衛門風呂の下駄のような感覚で半導体チップを搭載していない上下にパッドとBGAの電極の付いた、本来ならICとヒートスプレッダーを搭載する部分を四角く穴をあけた、BGA電極を上下に電気的に貫通させるパッドとBGAつきの基板(以下「穴開きインターポーザー基板」)を挿入することにより、セラミックコンデンサとヒートスプレッダーの間隔を確保することにより液浸のフロリナート液の流量とセラミックコンデンサをBGAパッケージの下部に配置するスペースを確保し、既存のFC−BGAパッケージの在り方を大きく改めることなく液浸三次元演算装置を構築するための装置と方法を提案する。
本実施形態では
図1に示すように半導体チップ100が搭載された表面に電極パッドを有するFC−BGAパッケージ110と穴開きインターポーザー基板120を積層することによって構成される。
【0028】
(下駄が複数枚連続してよい)
穴開きインターポーザー基板120は、冷媒の流量と上下層の離隔を調節するための物で、一ではなく複数を連続して積層してもよい。
【0029】
(電極兼ガイド穴がある)
表面に電極パッドを有するFC−BGAパッケージ110と穴開きインターポーザー基板120は、セラミックコンデンサ350にインピーダンスが低い状態で電力供給するために、
図3と
図10に示すように、ガイドピンを立てるためのスルーホールであって、陽極の給電電極240と、ガイドピンを立てるためのスルーホールであって、陰極の給電電極250を隣接して備える。
【0030】
(層間通信がLVD)
本実施形態における三次元積層集積回路は、
図11に示すように電極パッド140と電極端子340が接合されることにより、層間通信経路を形成する。このうち、複数層にまたがって接続される通信経路をローカルバス420とする。ローカルバス420の通信方式を、隣接する2つの電極端子をペアで使用してLVD(Low Voltage Differential)で駆動することによって、信号反射の問題を緩和する。
【0031】
(層間通信がPCI Express)
前記ローカルバス420の通信方式に、隣接する2つの電極端子をペアで使用してPCI Express規格を採用してもよい。
【0032】
(層間通信がクロックアップしたPCI Express)
前記ローカルバス420の通信方式に、隣接する2つの電極端子をペアで使用してクロックアップしたPCI Express規格を採用してもよい。この場合は層間通信は本システムの中で閉じたものであるため、下記リストに関わらず自由にクロックチューンしてよい。
なお、参考として以下にPCI Expressのリビジョンと、1リンク幅・片方向あたりの物理層転送帯域(単位はギガトランスファ毎秒(GT/sec))を示す。
Gen1 2.5GT/sec
Gen2 5GT/sec
Gen3 8GT/sec
Gen4 16GT/sec
Gen5 32GT/sec
Gen6 64GT/sec
【0033】
(BGAボールで層間結合するローカルバスの横に双方向トライステートゲートドライバをつける)
前記ローカルバス420において、櫛状に成る各層内のリード線による反射による悪影響を防ぐために、双方向トライステートゲートドライバ130を
図17に示すように各層の電極端子340または電極パッド140に隣接して電極端子340同士の間隔内に備える。双方向トライステートゲートドライバにより層間通信信号の反射は縦にBGAボールをインターポーザーで構成される相互接続の範囲にとどまる。そのため、より一層のクロックチューンが期待できる。
【0034】
(沸騰冷却のためにヒートスプレッダーに焼結金属あるいは酸化金属を使用する)
半導体チップ100は、
図8と
図9に示すようにヒートスプレッダー260に覆われ、熱伝導率の高いコンパウンド等で密着させる。一般のVLSIはヒートスプレッダーの上に放熱フィンを持つが、前回の発明及び今回の発明は直接液浸するため、ヒートスプレッダー表面で間欠的な沸騰が起きないように配慮する必要がある。ヒートスプレッダー260は、間欠的な沸騰によるキャビテーションを防ぐために表面が酸化金属もしくは焼結金属であることを特徴とする。
【0035】
(最下層にバスドライバスイッチ)
本実施形態の最下層は、ローカルバス420と外部周辺機器等とを単純に中継するのではなく、バスドライバスイッチまたはページ単位でアドレスバススヌーピング付きバッファ付きDMAのバスドライババッファスイッチとなってもよい。
【0036】
(穴開きインターポーザー基板の特徴)
図10に示す穴開きインターポーザー基板120は、中央に開口部270と上面に積層される表面に電極パッドを有するFC−BGAパッケージ110乃至穴開きインターポーザー基板120の電極端子340を接合するための幾何学形状の電極パッド140と、
図11に示すように裏面に電極端子340を備える。表面の電極パッド140は裏面の電極端子340と電気的に1:1で接続される。さらにガイドピンを立てるためのスルーホールであって陽極の給電電極240とガイドピンを立てるためのスルーホールであって陰極の給電電極250を備える。
【0037】
(半導体チップの横に双方向トライステートゲートドライバをつける)
図5は、表面に電極パッドを有するFC−BGAパッケージ110の一部の内部回路を簡略的に示したものである。回路部分の説明のため、
図1乃至
図3の表面に電極パッドを有するFC−BGAパッケージ110に比べて一部表現を省いているが同じものを示している。表面に電極パッドを有するFC−BGAパッケージ110は、
図5に示すように双方向トライステートゲートドライバ130を電極パッド140乃至電極端子340付近に備える。
【0038】
表面に電極パッドを有するFC−BGAパッケージ110は、半導体100の他、双方向トライステートゲートドライバ130と、電極パッド141乃至145と、ゲート制御信号線600と、データ信号線610乃至611とを備える。なお、
図5において、本実施形態は7つの電極端子および1つのゲート制御信号線と2つのデータ制御信号線を例に示しているが、これに限定されず、電極端子は1以上であればよく、また、ゲート制御信号線も1以上あればよく、データ信号線も2以上あればよい。
【0039】
双方向トライステートゲートドライバ130は半導体チップ100からのゲート制御信号線600の信号により、データ信号線610とデータ信号線611に流れる信号の方向を制御する。
【0040】
図6は、双方向トライステートゲートドライバ130を説明する回路の概略図である。双方向トライステートゲートドライバ130はスリーステート・バッファで構成される。双方向トライステートゲートドライバは、
図7に示す回路構成になっている。ゲート制御信号線710が"1"のとき、スリーステート・バッファ731はデータ信号線720の信号をデータ信号線721の方向に信号を流す。このとき、スリーステート・バッファ732にはNOT回路730によって"0"が伝えられるため、ハイ・インピーダンスとなる。これにより、データ信号は左から右向きに流れる。逆にゲート制御信号線710が"0"のとき、スリーステート・バッファ731がハイ・インピーダンスとなり、スリーステート・バッファ732にはNOT回路730によって"1"が伝えられるため、データ信号はデータ信号線721からデータ信号線720の方向(右から左向き)に流れる。
【0041】
(表面に電極パッドを有するFC−BGAパッケージの特徴:電極兼ガイド穴がある)
表面に電極パッドを有するFC−BGAパッケージ110は、
図3に示すように半導体チップ100と、上面に積層される表面に電極パッドを有するFC−BGAパッケージ110乃至穴開きインターポーザー基板120の電極端子340を接合するための幾何学形状の電極パッド140と、ガイドピンを立てるためのスルーホールであって陽極の給電電極240と、ガイドピンを立てるためのスルーホールであって陰極の給電電極250を備える。
【0042】
表面に電極パッドを有するFC−BGAパッケージ110は、
図4に示すように今回の発明で示す穴あきインターポーザー基盤を間に挿入することにより、従来通り、セラミックコンデンサ350を表面に電極パッドを有するFC−BGAパッケージ110の裏面に備えることができる。
【0043】
(冷却方式は液浸の沸騰冷却で行う)
本実施形態では、フロリナートなどを使った液浸の沸騰冷却を行うことで、100W級の半導体の冷却にも対応できるようにする。
【0044】
(本実施形態の効果:ガイドピンで積層時のアライメントを精緻化する)
図1に示すように本実施形態では、積層される表面に電極パッドを有するFC−BGAパッケージ110乃至穴開きインターポーザー基板120の電極端子340と電極パッド140を正確に位置決めして結合する必要がある。このため、表面に電極パッドを有するFC−BGAパッケージ110乃至穴開きインターポーザー基板120に備えられた、ガイドピンを立てるためのスルーホールであって陽極の給電電極240とガイドピンを立てるためのスルーホールであって陰極の給電電極250に、ガイドピンであって陽極の給電電極280とガイドピンであって陰極の給電電極290を挿入することで、積層する際に、電極パッド140と電極端子340が正確に位置決めできる。
【0045】
(本実施形態の効果:セラミックコンデンサを各層に備えることで、半導体チップに大電流給電ができる)
図4に示すように表面に電極パッドを有するFC−BGAパッケージ110は、セラミックコンデンサ350を表面に電極パッドを有するFC−BGAパッケージ110の半導体の裏面に備えることができる。これによりCPU、GPGPU、BBU、スーパーコンピューターのコア等の大電流を消費する半導体チップを動作させるときに必要なセラミックコンデンサを各層毎に備えることで、電力供給経路に電極端子340を使用することなく最短となり、インピーダンスを抑えて大電流給電が可能となる。
【0046】
(本実施形態の効果:穴開きインターポーザー基板の開口部と複数積層で十分な冷媒を確保できる)
図10に示すように、本実施形態における穴開きインターポーザー基板120は、開口部270を備え、電極端子340を装着し、これを表面に電極パッドを有するFC−BGAパッケージ110の上に積層することよって半導体チップ100の上方乃至周辺の空間を確保することができる。これにより電極端子340同士の隙間から流れ込む冷媒が半導体チップ100の冷却に必要な容量を確保することができる。
穴開きインターポーザー基板120が1枚のときに半導体チップ110周辺の冷却容量が不足する場合は、穴開きインターポーザー基板120を2枚3枚と複数積層することにより半導体チップ100の上方乃至周辺の空間をより多く確保できる。
【0047】
(層内の2層化)
電極パッドを有するFC−BGAパッケージ110の中に入れる半導体チップ100は単層ではなく、2層以上であってもよい。本実施形態の三次元積層集積回路の各パッケージ内はクロスコネクトされたNUMA(Non−Uniform Memory Access)構成であってもよい。層間の相互接続はピン数の制約からバス接続となる。
【0048】
(本実施形態の効果を説明するために、2種類の層間通信経路を説明)
本実施形態における三次元積層集積回路は、
図2に示す電極パッド140と電極端子340が接合されることにより、
図12に示すように、とある層が積層された他の層と通信を行うための層間通信経路を形成する。層間通信経路はとある層からその隣接する層まで1:1で接続される通信経路(以下、「メゾネットコネクション」)と、
図13に示すように、とある層から櫛状に分岐し、各層まで接続される通信経路(以下、「ローカルバス」)の2種類を備える。
【0049】
(1:1のメゾネットコネクションには問題はない)
図12に示すメゾネットコネクション430(隣接する2レイヤのCPU、GPGPUとレベル2、あるいはレベル3キャッシュ、あるいはローカルメモリとを結ぶローカルコネクション)は、水平方向には
図5に示す表面に電極パッドを有するFC−BGAパッケージ110内のデータ信号線640と、垂直方向には
図2に示す電極パッド140と電極端子340の結合で構成される。メゾネットコネクション430は経路がP2P(Point to Point)であり、分岐は存在せず、始点と終点が1:1であるため反射は起きるが、反射波が微妙に重なるなど特別な信号反射上の問題は生じない。
【0050】
(ローカルバスには信号の反射問題がある)
他方、
図12及び
図13に示すローカルバス420については、多層間を並列に結合するため、水平方向には
図5に示す表面に電極パッドを有するFC−BGAパッケージ110内のデータ信号線610と双方向トライステートゲートドライバ130、垂直方向には
図2に示す電極パッド140と電極端子340で構成される。このとき、通信経路は電極パッド140と電極端子で垂直方向に結合しているだけでなく、半導体チップ110内に水平方向につなぐ各FC−BGAパッケージ内の信号線もあるため、櫛状の回路を形成し複雑な信号の反射パターンが発生して問題である。
【0051】
(反射の悪影響が低減する理由)
図18は一般的なバス回路の概略図である。櫛状のバス回路のうち中心となるメイン・バスは、本実施形態の
図13において、電極端子と電極パッドで構成される垂直方向の通信経路である。そしてメイン・バスから水平方向に延び、信号を受ける素子(本実施形態では双方向トライステートゲートドライバ130)までの通信経路はスタブ(stub)と呼ばれる。双方向トライステートゲートドライバ130がない場合、
図13に示すメイン・バスを流れる高周波信号は、各々の通信経路の端点で反射する特性があるが、スタブ内で反射した信号はメイン・バスに戻り、本来の信号と混ざってしまう。スタブが多いほど反射の回数が多くなり、多くのスタブからの反射波が都合悪く重なった場合には信号波が大きくなりすぎ、誤動作を生じさせる恐れがある。そのため双方向トライステートゲートドライバ130を電極端子に隣接させることでスタブを極力短くし、櫛状ではなく1本の通信経路に近づけることで反射の影響による問題を抑える。
【0052】
(本実施形態の効果:双方向トライステートゲートドライバで駆動することで櫛状の乱反射の問題を解決)
そこで、
図5に示すように双方向トライステートゲートドライバ130を設けて信号の反射を垂直方向のみに抑え、水平方向の通信経路に影響を及ぼさないようにし、かつ、電極パッド141と電極パッド142のように隣接する2つの端子のペアを使用してLVD(Low Voltage Differential)で駆動し、ペア毎の非同期伝送をすることによって、信号反射の問題を軽減する。このことにより本実施形態を利用したシステムは、層間通信経路の線長を揃えておくだけで深刻な誤動作をすることなく高速動作できる。また層間通信にPCI Express規格を採用してもよい。通信速度が不足する場合はクロックアップしたPCI Express規格を採用してもよい。
【0053】
(本実施形態の効果:層間通信経路のまとめ:高速な通信が可能となる)
これらによって層間通信経路における信号反射の影響は最小化して、高速で安定的にローカルバスコネクションを実現できる。詳細については、一般的なプロセッサ間コモンバス技術を活用する。
【0054】
(半導体はCPUのほかにもHBMもある)
電極パッドを有するFC−BGAパッケージ110に搭載される半導体100はCPU、GPGPUなどの演算装置だけではなく、メモリー素子を垂直スタッキングするHBM(High Bandwidth Memory)やWide I/O DRAMであってもよい。
HBM内部で縦に積み上げてあるが、
図14に示すように更に本発明で低遅延結合させて縦に電極パッドを有するFC−BGAパッケージ110に搭載して縦に積み上げることができる。これは最下層だけではなく、いずれの層であってもよい。メゾネット接続したHBMやWide I/O DRAMはローカルメモリとして使ってNUMA構成となる。上に書いたメゾネット接続されたローカルメモリは三次元集積回路の内部バスではローカルバスと集積回路(CPUやGPGPU)経由でNUMA接続する。NUMA構成となったローカルメモリはキャッシュメモリを退避させるフェージングエリアとして使うことによりスループットが向上する。キャッシュがフォルトしたときワーキングセットとして使う。2次キャッシュとして使う。メゾネットの用途としてはHBMによるキャッシュエリアの退避領域。NUMA構成として。マルチプロセッサでページバッファがいっぱいあったとき、そのバッファをNUMAメモリーにおいておけば非常にスループットが向上する。
【0055】
(本実施形態の効果:最下層を外部バスドライバスイッチにすることで高速化動作できる)
本実施形態の最下層は、ローカルバス420と外部周辺機器等とを単純に中継するのではなく、ページ単位でアドレスバススヌーピング付きバッファ付きDMAとなってもよい。
本実施形態を採用したシステムを構築する場合には、外部に主記憶装置や周辺機器等との外部バス接続が必要になるが、本実施形態の最下層を表面に電極パッドを有するFC−BGAパッケージ110は外部バスドライバスイッチとしておけば、外部バスを電気的に切り離すことができる。外部バスドライバスイッチをハイ・インピーダンスにすることで、本実施形態からつながる外部バスを切り離せば、信号伝搬距離が極めて短くなるため、本実施形態の高速なクロック動作が可能となる。また信号は非終端接続であるため、PCIバス同様に信号反射を考慮した動作形態となる。
【0056】
(本実施形態の効果:半導体チップの表面を酸化金属か焼結金属とすることで冷却効率を上げる)
沸騰冷却は冷媒が液体から気体に相変化することにより冷却を行う。沸騰冷却においては冷媒の中に発生する気体(気泡)ができるだけ数多く発生し、周囲の冷媒を激しく拡販することが冷却効率の向上につながる。気泡がどの場所で発生するかは予測が難しいが、熱源表面の微細な傷から発生する確率が大きいため、多孔質な焼結金属や酸化金属で覆うことが望ましい。そのため、
図8と
図9に示すように、半導体チップ100を覆うヒートスプレッダー260の表面を酸化金属か焼結金属とすることで冷却効率を向上させる。
【0057】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【0058】
特許請求の範囲、明細書、及び図面中において示した装置、システム、プログラム、及び方法における動作、手順、ステップ、及び段階などの各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」などと明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、及び図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」などを用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【課題】中央演算装置等の半導体は集積度が上がっても大幅な処理性能の向上が実現できず、既存の製造プロセス、デザイン方法を大幅に逸脱しない新たな三次元への拡張方法、冷却方法ならびにシステムの構成方法の確立が急務課題であった。
【解決手段】半導体チップを備えたパッケージと、開口部を備えたインターポーザー基板がそれぞれの電極端子と電極パッドで交互に積層され、前記パッケージと前記インターポーザー基板は、積層された状態において積層方向と前記電極端子同士の間に空隙が生まれる形状の電極端子と前記電極端子が連結するための電極パッドと積層時の正確な位置決めと連結を保持するためのガイド穴を備え、前記パッケージと前記インターポーザー基板の連結により層間通信経路が形成され、前記空隙に冷却液が流れることによって液浸冷却を行う三次元積層集積回路を構成する。