(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6850363
(24)【登録日】2021年3月9日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】伝動アセンブリ及びリフティングコラム
(51)【国際特許分類】
F16H 25/20 20060101AFI20210322BHJP
F16H 25/24 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
F16H25/20 A
F16H25/24 G
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-557665(P2019-557665)
(86)(22)【出願日】2018年1月8日
(65)【公表番号】特表2020-505569(P2020-505569A)
(43)【公表日】2020年2月20日
(86)【国際出願番号】CN2018071763
(87)【国際公開番号】WO2018130127
(87)【国際公開日】20180719
【審査請求日】2019年8月20日
(31)【優先権主張番号】201710016583.0
(32)【優先日】2017年1月10日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519251519
【氏名又は名称】浙江捷昌線性駆動科技股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】胡仁昌
(72)【発明者】
【氏名】陸小健
(72)【発明者】
【氏名】李威強
【審査官】
小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】
中国実用新案第2268019(CN,Y)
【文献】
中国特許出願公開第101307817(CN,A)
【文献】
特表2017−519546(JP,A)
【文献】
特表2007−524041(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3200067(JP,U)
【文献】
実開昭63−141350(JP,U)
【文献】
特開2009−185907(JP,A)
【文献】
特開2015−014317(JP,A)
【文献】
実開平02−124352(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0108297(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 25/20
F16H 25/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁に雄ねじが設けられた中空の主軸と、
前記中空の主軸内に位置し、前記中空の主軸と同期して回転可能であるとともに、前記中空の主軸に対し軸方向において相対的に伸縮可能である送りねじと、
前記送りねじのねじ山に組み合わされる第1送りナットであって、前記中空の主軸が回転可能に前記第1送りナットに対し軸方向において位置決めされ、前記第1送りナットの外部に前記第1送りナットの回転を規制するロック構造が設けられている第1送りナットと、
前記中空の主軸のねじ山に組み合わされる第2送りナットと、
前記中空の主軸の外部に嵌装され、前記第2送りナットが固定接続されるスリーブと、
回転可能に前記スリーブ内に規制され、前記中空の主軸と同期して回転するとともに、前記中空の主軸に対し軸方向において相対的に伸縮可能である案内管、を含むことを特徴とする伝動アセンブリ。
【請求項2】
前記中空の主軸の下端には案内ロッドが固定接続されており、前記案内ロッドは非円柱構造をなしており、前記案内管は非円形の内孔を有し、前記中空の主軸と前記案内管が同期して回転するよう、非円柱構造と非円形の内孔が組み合わされることを特徴とする請求項1に記載の伝動アセンブリ。
【請求項3】
前記中空の主軸には第1軸受が嵌装されており、前記第1軸受は前記第1送りナットに固定装着されていることを特徴とする請求項1に記載の伝動アセンブリ。
【請求項4】
前記ロック構造は、前記第1送りナットの外壁に設けられる複数の突起と、前記第1送りナットの外周に位置する第1ロック片及び第2ロック片を含み、前記第1ロック片には第1収容凹溝が設けられ、前記第2ロック片には第2収容凹溝が設けられ、前記第1ロック片と前記第2ロック片を抱き合わせることで、前記第1収容凹溝と前記第2収容凹溝が接合されて収容空間が形成され、前記第1送りナットが前記収容空間内に位置し、前記第1収容凹溝の溝壁には第1係合溝が設けられ、前記第2収容凹溝の溝壁には第2係合溝が設けられ、前記第1係合溝と前記第2係合溝は、それぞれ対応する突起に係接して結合されることを特徴とする請求項1に記載の伝動アセンブリ。
【請求項5】
前記第1ロック片における前記第2ロック片との突き合せ側面には、第1固定スタッドと第1固定孔が設けられ、前記第2ロック片における前記第1ロック片との突き合せ側面には、第2固定スタッドと第2固定孔が設けられ、前記第1ロック片と前記第2ロック片を抱き合わせることで、前記第1固定スタッドが前記第2固定孔に挿接され、前記第2固定スタッドが前記第1固定孔に挿接されることを特徴とする請求項4に記載の伝動アセンブリ。
【請求項6】
前記送りねじには第2軸受が嵌装されており、前記第2軸受は軸受ハウジング内に固定されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の伝動アセンブリ。
【請求項7】
内側から外側に向かって順に嵌装される内管、中管、外管、内管の上端に固定接続されるボトムケース、前記ボトムケースに設けられる駆動装置、及び前記駆動装置に伝動結合される伝動アセンブリを含むリフティングコラムにおいて、
前記伝動アセンブリは請求項1〜6のいずれかに記載の伝動アセンブリであり、前記駆動装置は案内管の上端に伝動結合され、前記外管の下端には底板が設けられており、前記送りねじの下端は回転可能に底板に対し軸方向に位置決めされ、前記ロック構造は中管の下端に固定接続され、前記スリーブはボトムケースに固定接続されることを特徴とするリフティングコラム。
【請求項8】
前記駆動装置は、モータ、モータの出力軸に接続されるウォーム、ウォームに伝動結合されるウォームホイールを含み、前記ウォームホイールには異形孔が設けられており、前記案内管の内孔と異形孔が第1異形ロッド体を介して動力伝達を実現することを特徴とする請求項7に記載のリフティングコラム。
【請求項9】
内側から外側に向かって順に嵌装される内管、中管、外管、外管の上端に固定接続されるボトムケース、ボトムケースに設けられる駆動装置、及び駆動装置に伝動結合される伝動アセンブリを含むリフティングコラムにおいて、
前記伝動アセンブリは請求項1〜6のいずれかに記載の伝動アセンブリであり、前記駆動装置は送りねじの上端に伝動結合され、前記ロック構造は前記中管の上端に固定接続され、前記スリーブの下端は前記内管の下端面に当止することを特徴とするリフティングコラム。
【請求項10】
前記送りねじには第2軸受が嵌装されており、前記第2軸受は軸受ハウジング内に固定され、前記軸受ハウジングはボトムケースに固定接続されることを特徴とする請求項9に記載のリフティングコラム。
【請求項11】
前記駆動装置は、モータ、モータの出力軸に接続されるウォーム、ウォームに伝動結合されるウォームホイールを含み、前記ウォームホイールには異形孔が設けられており、前記送りねじと異形孔が第2異形ロッド体を介して動力伝達を実現することを特徴とする請求項9に記載のリフティングコラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は伝動装置の分野に属し、特に、伝動アセンブリ及びリフティングコラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電動リフティングコラムは、ホームファニシングや医療等の分野に幅広く応用されている。一般的に、従来の電動リフティングコラムの管体は、内側から外側に向かって順に嵌装される内管、中管、外管及びボトムケース、ボトムケースに設けられる駆動装置、駆動装置に伝動結合される伝動アセンブリを含む。電動リフティングコラムのストロークを可能な限り大きくするために、通常、伝動アセンブリは一体的に嵌装される送りねじ及び中空ねじとして設けられる。且つ、内管と中管に送りナットをそれぞれ設け、送りねじ及び中空ねじと組み合わせることで、内管、中管及び外管の相対的伸縮を実現している。
【0003】
また、現在の電動リフティングコラムには、実際の必要性に応じて正立と倒立の2種類の組み付け方式がある。正立のリフティングコラムとは、内管とボトムケースが接続されて、外管が地面に支持されるものをいう。一方、倒立のリフティングコラムとは、外管とボトムケースが接続されて、内管が地面に支持されるものをいう。ところが、従来技術において、正立のリフティングコラムと倒立のリフティングコラムは構造が異なっており、別々に生産してから組み付ける必要がある。即ち、正立のリフティングコラムと倒立のリフティングコラムは同一構造の伝動アセンブリを使用することができない。このことから、明らかに生産コストが増大している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする技術的課題は、従来のリフティングコラムでは同一の伝動アセンブリを用いて正立及び倒立とすることが不可能であるとの技術的課題を解決するリフティングコラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の技術的課題を解決するために、本発明は以下の技術方案を用いる。
【0006】
伝動アセンブリであって、外壁に雄ねじが設けられた中空の主軸と、中空の主軸内に位置し、中空の主軸と同期して回転可能であるとともに、中空の主軸に対し軸方向において相対的に伸縮可能である送りねじと、送りねじのねじ山に組み合わされる第1送りナットであって、前記中空の主軸が回転可能に第1送りナットに対し軸方向において位置決めされ、当該第1送りナットの外部に第1送りナットの回転を規制するロック構造が設けられている第1送りナットと、中空の主軸のねじ山に組み合わされる第2送りナットと、中空の主軸の外部に嵌装され、前記第2送りナットが固定接続されるスリーブと、回転可能にスリーブ内に規制され、中空の主軸と同期して回転するとともに、中空の主軸に対し軸方向において相対的に伸縮可能である案内管、を含む。
【0007】
更に、前記中空の主軸の下端には案内ロッドが固定接続されており、前記案内ロッドは非円柱構造をなしており、前記案内管は非円形の内孔を有し、中空の主軸と案内管が同期して回転するよう、非円柱構造と非円形の内孔が組み合わされる。
【0008】
更に、前記中空の主軸には第1軸受が嵌装されており、前記第1軸受は第1送りナットに固定装着されている。
【0009】
更に、前記ロック構造は、第1送りナットの外壁に設けられる複数の突起と、第1送りナットの外周に位置する第1ロック片及び第2ロック片を含み、前記第1ロック片には第1収容凹溝が設けられ、第2ロック片には第2収容凹溝が設けられ、前記第1ロック片と第2ロック片を抱き合わせることで、第1収容凹溝と第2収容凹溝が接合されて収容空間が形成され、前記第1送りナットが収容空間内に位置し、前記第1収容凹溝の溝壁には第1係合溝が設けられ、前記第2収容凹溝の溝壁には第2係合溝が設けられ、前記第1係合溝と第2係合溝は、それぞれ対応する突起に係接して結合される。
【0010】
更に、前記第1ロック片における第2ロック片との突き合せ側面には、第1固定スタッドと第1固定孔が設けられ、前記第2ロック片における第1ロック片との突き合せ側面には、第2固定スタッドと第2固定孔が設けられ、前記第1ロック片と第2ロック片を抱き合わせることで、第1固定スタッドが第2固定孔に挿接され、第2固定スタッドが第1固定孔に挿接される。
【0011】
更に、前記送りねじには第2軸受が嵌装されており、前記第2軸受は軸受ハウジング内に固定される。
【0012】
本発明は、更に、内側から外側に向かって順に嵌装される内管、中管、外管、内管の上端に固定接続されるボトムケース、ボトムケースに設けられる駆動装置、及び駆動装置に伝動結合される伝動アセンブリを含み、前記伝動アセンブリは上記いずれかの技術方案における伝動アセンブリであり、前記駆動装置は案内管の上端に伝動結合され、前記外管の下端には底板が設けられており、前記送りねじの下端は回転可能に底板に対し軸方向に位置決めされ、前記ロック構造は中管の下端に固定接続され、前記スリーブはボトムケースに固定接続されるリフティングコラムを開示する。
【0013】
更に、前記駆動装置は、モータ、モータの出力軸に接続されるウォーム、ウォームに伝動結合されるウォームホイールを含み、前記ウォームホイールには異形孔が設けられており、前記案内管の内孔と異形孔が第1異形ロッド体を介して動力伝達を実現する。
【0014】
本発明は、更に、内側から外側に向かって順に嵌装される内管、中管、外管、外管の上端に固定接続されるボトムケース、ボトムケースに設けられる駆動装置、及び駆動装置に伝動結合される伝動アセンブリを含み、前記伝動アセンブリは上記いずれかの技術方案に記載の伝動アセンブリであり、前記駆動装置は送りねじの上端に伝動結合され、前記ロック構造は中管の上端に固定接続され、前記スリーブの下端は内管の下端面に当止するその他のリフティングコラムを開示する。
【0015】
更に、前記駆動装置は、モータ、モータの出力軸に接続されるウォーム、ウォームに伝動結合されるウォームホイールを含み、前記ウォームホイールには異形孔が設けられており、前記送りねじと異形孔が第2異形ロッド体を介して動力伝達を実現する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、以下の有益な効果が得られる。
【0017】
1.本発明の送りねじ、中空の主軸及び案内管は同期して回転可能なことから、送りねじと案内管がいずれも動力の入力端となり得る。よって、伝動アセンブリは、上下を反転させるだけでリフティングコラムの正立装着及び倒立装着の要求に対応することが可能である。そのため、1種類の伝動アセンブリを生産するだけで、リフティングコラムの正立装着及び倒立装着工程に対応可能となり、生産コストが極めて大幅に抑えられる。
【0018】
2.案内管は非円形の内孔を有し、中空の主軸の下端には非円柱構造の案内ロッドが固定接続されている。そのため、案内ロッドは案内管と同期して回転する際に、非円形の内孔に沿って線形に伸縮運動することが可能である。案内管は動力の入力端となり得るだけでなく、中空の主軸を案内する役割も発揮できるため、伝動アセンブリの安定性が向上する。
【0019】
3.中空の主軸と第1送りナットの軸方向における位置決めが実現されるよう、中空の主軸は、上部に嵌装された第1軸受を介して第1送りナットに装着される。これにより、中空の主軸と第1スリーブが同期して昇降を実現する。且つ、第1送りナットの支持作用によって、中空の主軸のより安定的な回転を保証可能となる。また、第1軸受と第1送りナットの装着構造もいっそうコンパクトとなる。
【0020】
4.ロック構造は、第1ロック片及び第2ロック片上の凹溝と第1送りナットの突起を結合し、第1送りナットをロックすることで第1送りナットの回転を規制する。これにより、ロック構造と第1送りナットのねじを介さない装着が実現されるため、装着工程が簡略化される。
【0021】
5.本発明のリフティングコラムは、上記の利点を有する伝動アセンブリを採用している。ロック構造を中管の上端又は下端に固定接続し、駆動装置を案内管の上端又は送りねじの上端に伝動結合することで、同一構造の伝動アセンブリによってリフティングコラムの正立又は倒立を実現可能となる。また、装着構造が非常にコンパクトであり、装着過程がスピーディー且つ容易であるとともに、装着コストが抑えられる。
【0022】
6.本発明におけるリフティングコラムで使用する駆動装置は、ウォームホイールに設けられた異形孔と送りねじに設けられた異形ロッド体により動力伝達を実現する。そのため、駆動接続部材が最大限簡略化され、動力伝達の信頼性が著しく向上する。
【0023】
本発明の具体的な技術効果については、具体的実施形態のなかで更に説明する。
【0024】
以下に、図面と具体的実施形態を組み合わせて、本発明につき更に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施例における伝動アセンブリの断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1実施例における伝動アセンブリの構造を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の第2実施例におけるリフティングコラムの断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の第3実施例におけるリフティングコラムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、図面を組み合わせて、本発明の具体的実施形態につき詳細に説明する。
【実施例1】
【0027】
図1及び
図2に示すように、伝動アセンブリは、中空の主軸1、送りねじ2、第1送りナット3、第2送りナット4、スリーブ5及び案内管6を含む。中空の主軸1の外壁には雄ねじが設けられており、送りねじ2が中空の主軸1内に位置している。送りねじ2は中空の主軸1と同期して回転可能であり、且つ、送りねじ2と中空の主軸1は軸方向において相対的に伸縮可能である。第1送りナット3は送りねじ2のねじ山に組み合わされ、第2送りナット4は中空の主軸1のねじ山に組み合わされる。スリーブ5は中空の主軸1の外部に嵌装され、第2送りナット4がスリーブ5の上端に固定接続される。スリーブ5の底部には底蓋51が設けられている。案内管6は、スリーブ5の内部に収容されるとともに、第2送りナット4と底蓋51の間に規制されている。これにより、案内管6を回転可能にスリーブ5内に規制可能となる。案内管6は、中空の主軸1と同期して回転可能であり、且つ、案内管6と中空の主軸1は軸方向において相対的に伸縮可能である。
【0028】
送りねじ2の下端には伝動部材21が固定接続されており、中空の主軸1の下端には案内ロッド11が固定接続されている。案内ロッド11と伝動部材21はずれも非円柱構造をなしており、中空の主軸1と案内管6はいずれも非円形の内孔を有している。送りねじ2と中空の主軸1が同期して回転するよう、伝動部材21の非円柱構造と中空の主軸1における非円形の内孔が組み合わされる。また、中空の主軸1と案内管6が同期して回転するよう、案内ロッド11の非円柱構造と案内管6における非円形の内孔が組み合わされる。本実施例において、好ましくは、案内ロッド11及び伝動部材21に採用する非円柱構造は、いずれも円柱体と、円柱体の柱面に設けられるキーを含む。また、中空の主軸1及び案内管6における非円形の内孔は、いずれも円形の内孔と、円形の内孔の孔壁に設けられるキー溝を含む。伝動部材21上のキーが中空の主軸1上のキー溝に係接して結合されることで、送りねじ2と中空の主軸1における動力伝達が実現される。また、案内ロッド11上のキーが案内管6上のキー溝に係接して結合されることで、中空の主軸1と案内管6における動力伝達が実現される。なお、非円柱構造と非円形の内孔は上記の構造に限らず、例えばD型ロッドとD型孔の係合や、多角形ロッドと多角形孔の係合等としてもよい。送りねじ2と中空の主軸1、及び、中空の主軸1と案内管6において動力伝達を実現可能な非円柱構造及び非円形の内孔であればいずれも実施可能なことから、本実施例において具体的構造を全て挙げることは不可能である。
【0029】
本実施例において、中空の主軸1には第1軸受12が嵌装されており、第1軸受12は第1送りナット3に固定装着されている。具体的には、中空の主軸1の上端の軸面に、中空の主軸1の上端面と平行な段差面を切り出して、第1軸受を段差面に装着する。中空の主軸1の上端に切り出した軸面には環状の係合溝が加工されており、環状の係合溝にサークリップ13が装着されている。サークリップ13が第1軸受12の上端面に当止することで、中空の主軸1が回転可能に第1送りナット3に対し軸方向において位置決めされる。中空の主軸1は、第1軸受12を設けることで安定的な回転が可能となり、且つ、中空の主軸1と第1軸受12との線形の同期運動が実現される。当該接続構造は非常にコンパクトなことから、伝動アセンブリの体積縮小に有利である。
【0030】
本実施例において、第1送りナット3の外部には、第1送りナット3の回転を規制するロック構造7が設けられている。ロック構造7は、第1送りナット3の外壁に設けられる複数の突起7aと、第1送りナット3の外周に位置する第1ロック片71及び第2ロック片72を含む。第1ロック片71には第1収容凹溝が設けられ、第2ロック片72には第2収容凹溝が設けられている。第1ロック片71と第2ロック片72を抱き合わせることで、第1収容凹溝と第2収容凹溝が接合されて収容空間が形成され、第1送りナット3が収容空間内に位置する。第1収容凹溝の溝壁には第1係合溝71aが設けられ、第2収容凹溝の溝壁には第2係合溝が設けられている。第1係合溝71aと第2係合溝は、それぞれ対応する突起7aに係接して結合される。
【0031】
本実施例において、第1ロック片71における第2ロック片72との突き合せ側面には、第1固定スタッド711と第1固定孔712が設けられている。また、第2ロック片72における第1ロック片71との突き合せ側面には、第2固定スタッドと第2固定孔が設けられている。第1ロック片71と第2ロック片72を抱き合わせ、第1固定スタッド711を第2固定孔に挿接するとともに、第2固定スタッドを第1固定孔712に挿接することで、伝動アセンブリの軸方向における第1ロック片71と第2ロック片72の移動規制が実現される。即ち、第1ロック片71及び第2ロック片72による第1送りナット3のロックが実現される。第1係合溝71aと第2係合溝72aは、それぞれ突起7aに係接して結合される。また、伝動アセンブリがリフティングコラムに装着されると、ロック構造7が固定装着されるため、ロック構造7の回転が規制されて、第1送りナット3の回転規制が実現される。これにより、中空の主軸1が回転する際に、ロック構造7が第1送りナット3とともに中空の主軸1に対し相対的に線形移動する。このとき、ロック構造7は、動力伝達部材としてリフティングコラムを昇降駆動する。
【実施例2】
【0032】
図1、
図3及び
図4に示すように、本実施例のリフティングコラムは、内側から外側に向かって順に嵌装される内管81、中管82、外管83、内管81の上端に固定接続されるボトムケース84、ボトムケース84に設けられる駆動装置9、及び駆動装置9に伝動結合される伝動アセンブリを含む。当該伝動アセンブリは実施例1の伝動アセンブリである。且つ、
図3の伝動アセンブリは
図1の伝動アセンブリを反転させて装着している。駆動装置9は、案内管6の上端に伝動結合される。外管83の下端には底板831が設けられており、ロック構造7が中管82の下端に固定接続されている。また、内管81の上端には天板811が設けられており、天板811がボルトを介してスリーブ5の上端面に固定されている。また、天板811はボトムケース84に対してもボルトを介して固定接続されている。これにより、スリーブ5とボトムケース84との固定接続が実現される。
【0033】
送りねじ2の下端には第2軸受22が嵌装されている。第2軸受22は軸受ハウジング23内に固定されている。軸受ハウジング23は収容溝を備え、第2軸受22は収容溝に装着されている。当該軸受ハウジング23は底板831の上端面に固定接続されており、且つ、底板831が収容溝の開口を覆っている。これにより、第2軸受22が底板831によって抜け落ちないよう収容溝内に規制されるため、送りねじ2の下端が回転可能に底板831に対し軸方向に位置決めされる。送りねじ2と第2軸受22を安定的に組み付けるために、送りねじ2の下端にはねじ孔24が設けられており、且つ、送りねじ2の下端には押圧片25が嵌装されている。また、底板831には、押圧片25を挿通するための貫通孔831aが設けられている。ボルト26を押圧片25に挿通し、ねじ孔24に接続することで、押圧片25によって第2軸受22を軸受ハウジング23にしっかりと押圧する。
【0034】
図2及び
図4に示すように、本実施例において、駆動装置9は、モータ91、モータ91の出力軸に接続されるウォーム92、ウォーム92に伝動結合されるウォームホイール93を含む。ウォームホイール93には異形孔931が設けられており、案内管6の内孔と異形孔931が第1異形ロッド体61を介して動力伝達を実現する。第1異形ロッド体61は、第1入力端611と第1出力端612を含む。第1入力端611と第1出力端612はいずれも非円柱構造をなしており、好ましくは、六角ロッド体構造をなしている。また、異形孔931と案内管6の内孔には六角孔を採用することが好ましい。第1入力端611が異形孔931に組み合わされ、第1出力端612が案内管6の内孔に組み合わされることで、ウォームホイール93と案内管6における動力伝達が実現される。
【0035】
本実施例におけるリフティングコラムの動作過程は次の通りである。即ち、駆動装置9のモータ91がウォーム92を回転させる。ウォーム92はウォームホイール93を回転駆動し、ウォームホイール93が第1異形ロッド体61を介して案内管6を回転させる。案内管6は案内ロッド11を介して中空の主軸1を動作させ、中空の主軸1は伝動部材21を介して送りねじ2を回転させる。これにより、案内管6、中空の主軸1及び送りねじ2がウォームホイール93に伴われて同期回転する。送りねじ2は底板831に対し軸方向において位置規制されているため、第1送りナット3は送りねじ2の軸方向に沿って昇降する。第1送りナット3はロック構造7を介して中管82を昇降させ、中空の主軸1は回転しながら第1送りナット3に従って昇降する。また、第2送りナット4が中空の主軸1の軸方向に沿って昇降する。第2送りナット4は、案内管6を介して駆動装置9を昇降させる。そして、駆動装置9が、ボトムケース84と、ボトムケース84に接続される外管83を昇降させることで、リフティングコラムの昇降が実現される。この過程において、案内ロッド11は案内管6の内孔に沿って線形に変位する。案内管6は中空の主軸1を案内する役割を果たすため、伝動アセンブリは径方向へのぐらつきが生じにくい。これにより、伝動アセンブリの動作がより安定的となる。
【実施例3】
【0036】
図2、
図5及び
図6に示すように、本実施例は実施例2と以下の点において異なる。即ち、リフティングコラムのボトムケース84が外管83の上端に固定接続され、駆動装置9が送りねじ2の上端に伝動結合される。また、ロック構造7は中管82の上端に固定接続される。伝動アセンブリは
図2の伝動アセンブリであるが、装着方向が実施例2とは逆向きである。実施例3の底板831は外管83の上端に位置し、当該底板831がボルトを介してボトムケース84に固定接続されている。また、実施例3の天板811は内管81の下端に位置し、スリーブ5の下端がボルトを介して当該天板811に固定接続される。これにより、スリーブ5の下端を内管81の下端面に当止可能としている。
【0037】
本実施例では、送りねじ2と異形孔931が第2異形ロッド体27を介して動力伝達を実現する。第2異形ロッド体27は、第2入力端271及び第2出力端272を含む。第2入力端271と第2出力端272はいずれも非円柱構造をなしており、好ましくは六角ロッド体構造をなしている。また、異形孔931には六角孔を採用することが好ましい。第2入力端271と異形孔931が組み合わされ、第2出力端272と送りねじ2がボルトを介して固定接続されることで、ウォームホイール93と送りねじ2における動力伝達が実現される。
【0038】
本実施例におけるリフティングコラムの動作原理は実施例2とほぼ同じであるが、異なる点として、ウォームホイール93が第2異形ロッド体27を介して送りねじ2を回転させる。このとき、送りねじ2が駆動回転部材となり、案内管6が従動回転部材となる。
【0039】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、これにより特許請求の範囲が制限されると解釈すべきではない。本発明は上記の実施例に限らず、具体的構造を変化させてもよい。当業者であれば、本発明を元に各種の変更や変形が可能であって、本発明の精神を逸脱しない限り、いずれも本発明に添付の請求の範囲に属する。