(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6850387
(24)【登録日】2021年3月9日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/00 20060101AFI20210322BHJP
B23Q 11/08 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
B23Q11/00 N
B23Q11/08 Z
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2020-91783(P2020-91783)
(22)【出願日】2020年5月26日
【審査請求日】2020年12月10日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】特許業務法人河崎・橋本特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊賀 研次郎
【審査官】
村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−082759(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/060154(WO,A1)
【文献】
国際公開第01/068302(WO,A1)
【文献】
特開平9−295243(JP,A)
【文献】
国際公開第00/040366(WO,A1)
【文献】
国際公開第97/029882(WO,A1)
【文献】
特開平11−077475(JP,A)
【文献】
特開2002−059333(JP,A)
【文献】
特開平07−051981(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/00
B23Q 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを加工する加工空間を囲む囲み部材と、
前記加工空間への給気を行う給気部と、
前記加工空間からの排気を行う排気部と、
前記加工空間内に設けられた主軸と、
前記加工空間内にクーラントを供給するクーラント供給部と、
前記主軸の下方に設けられた流体回収部と、を具備し、
前記囲み部材は、
(1)前記給気部と前記排気部による前記加工空間への給気と前記加工空間からの排気により前記加工空間内に旋回流を生じさせる第1案内面と、
(2)前記旋回流の遠心力により前記第1案内面に付着した前記クーラントを前記回収部に導く第2案内面と、を具備し、
前記第1案内面と水平面との交線は、前記加工空間の外側に向けて凸となる曲線もしくは円弧を含む、工作機械。
【請求項2】
前記第2案内面が、前記第1案内面の下端部に隣接して設けられ、かつ前記流体回収部に向かって下方へ傾斜する斜面を有する、請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記囲み部材が、前記主軸の周囲を覆うプロテクタと、前記プロテクタと交差するとともに互いに対向する一対の側壁と、前記プロテクタと対向する対向壁と、天井壁と、を具備し、
前記排気部が、前記天井壁に設けられ、
前記給気部が、前記側壁の少なくとも一方に設けられている、請求項1または2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記一対の側壁が、前記第1案内面および前記第2案内面の少なくとも一方の一部となる曲面を有する、請求項3に記載の工作機械。
【請求項5】
前記排気部が、前記加工空間から空気を送り出す排気ファンを備える、請求項1〜4のいずれか1項に記載の工作機械。
【請求項6】
前記給気部が、前記加工空間に空気を送り込む給気ファンを備える、請求項1〜5の何れか1項に記載の工作機械。
【請求項7】
前記排気部から排気された空気を前記給気部に導入して空気を循環させる、請求項1〜6の何れか1項に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、加工機の加工室を塵埃の飛散防止用カバー(10)で覆い、この飛散防止用カバー内部に圧縮空気を送り込んで渦流(G)を発生させる渦流発生手段を備え、この渦流により前記飛散防止用カバーの壁面(W4)に設けられた排出口(32)から加工室内の塵埃を集塵する加工機の集塵装置において、前記飛散防止用カバー(10)は、前記加工室を囲む平面視矩形をなす壁面(W1・W2・W3・W4)を備え、前記渦流発生手段は、前記飛散防止用カバー内部に設けられた圧縮空気の吹き出し部(11〜14)を複数備え、これらの吹き出し部(11〜14)はそれぞれ前記飛散防止用カバーの角部に配置され、圧縮空気を前記飛散防止用カバー壁面の延在方向へ吹き出すものを含むとともに、前記複数の吹き出し部のうちの一部(13)を、吹き出し方向(C)が前記飛散防止用カバー壁面(W3)と平行せずに所定の角度を持って前記飛散防止用カバーの内部を指向するように設けたことを特徴とする加工機の集塵装置を教示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−82759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、飛散防止用カバーで囲まれた空間内へ送り込まれた圧縮空気により飛散防止用カバーで囲まれた空間内部に渦流が発生すると、加工室で発生した粉塵等の塵埃は飛散防止用カバーで囲まれた空間内の渦流に巻き込まれて飛散防止用カバーで囲まれた空間内の一部に滞留しにくくなり、塵埃の除去残りを低減させることができると述べられている。また、吹き出し部を飛散防止用カバーで囲まれた空間内の角部に配設して、圧縮空気を飛散防止用カバー壁面の延在方向に吹き出すようにしたので、飛散防止用カバーで囲まれた空間内に渦流を発生させることができると述べられている。更に、飛散防止用カバー壁面の延在方向に吹き出す圧縮空気の流れに対して、飛散防止用カバー壁面に沿わず飛散防止用カバー壁面と角度を持って飛散防止用カバーの内部へ向かう圧縮空気の流れが生じ、その結果、渦流を排出口へ押し込むので、より効率の良い集塵が可能となると述べられている。
【0005】
しかし、切削工具によりワークを加工する際には多量の摩擦熱が生じる。一般に、工作機械は、クーラント(切削液)を使用して切削工具を冷却する機能を備える。特許文献1の場合、圧縮空気の吹き出し部を飛散防止用カバーで囲まれた空間内の角部に配設しているため、その配設に相当のコストがかかる上、クーラントとともにワークの切削屑が吹き出し部に大量に付着するため、装置の維持管理の手間が大きくなる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面は、ワークを加工する加工空間を囲む囲み部材と、前記加工空間への給気を行う給気部と、前記加工空間からの排気を行う排気部と、前記加工空間内に設けられた主軸と、前記加工空間内にクーラントを供給するクーラント供給部と、前記主軸の下方に設けられた流体回収部と、を具備し、前記囲み部材は、(1)前記給気部と前記排気部による前記加工空間への給気と前記加工空間からの排気により前記加工空間内に旋回流を生じさせる第1案内面と、(2)前記旋回流の遠心力により前記第1案内面に付着した前記クーラントを前記回収部に導く第2案内面と、を具備し、前記第1案内面と水平面との交線は、前記加工空間の外側に向けて凸となる曲線もしくは円弧を含む、工作機械に関する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、クーラントとともに切削屑を効率的に回収し得る簡易な構造の工作機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】本発明の一実施形態に係る工作機械の一例の構造を模式的に示す上面図である。
【
図1B】同工作機械の第1案内面と水平面との交線で囲まれる形状Aを示す図である。
【
図2】同工作機械のII−II線における模式的な矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態に係る工作機械は、ワークを加工する加工空間を囲む囲み部材と、加工空間への給気を行う給気部と、加工空間からの排気を行う排気部と、加工空間内に設けられた主軸と、加工空間内にクーラントを供給するクーラント供給部と、主軸の下方に設けられた流体回収部とを具備する。
【0010】
囲み部材は、スプラッシュガードとも呼ばれ、クーラント、切削屑等が、加工空間外に飛散することを防止する。囲み部材は、通常、加工空間を囲む周側壁と天井壁とを有する。囲み部材は、囲み部材自身に対して相対的に移動するドアを備えてもよい。ドアは、例えば、囲み部材に形成された開口に沿ってスライド移動することにより開口を開放状態と閉鎖状態に切り替える。特定のドアの近傍には、ワークを搭載するパレットを準備する段取りステーションを備えてもよい。ドアの開放状態では作業者の加工空間へのアクセスが可能であり、閉鎖状態でワークの加工がおこなわれる。パレットの交換は、自動パレット交換装置(APC)で行ってもよい。
【0011】
主軸は、機械加工部の少なくとも一部を構成する。機械加工部とは、加工空間内に設けられた工作機械の要部をいう。機械加工部は、例えば、ワークを固定するワークテーブルと、コラムに装着された主軸と、主軸に固定された切削ツール(バイト)と、ワークテーブルとを備える。ワークは、パレットに載置されたイケールなどに固定されてもよい。もしくは、機械加工部は、ワークを固定する主軸台と、ワークを加工する切削ツールを固定する刃物台とを備えてもよい。
【0012】
なお、工作機械とは、例えば、旋盤、立形もしくは横形のマシニングセンタ、固定工具を用いた旋削機能と回転工具を用いたミーリング機能とを有する複合加工機、X軸、Y軸、Z軸に加え、2つ以上の旋回軸により制御される5軸加工機、金属付加加工が可能なAdditive Manufacturing(AM)機などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0013】
囲み部材の少なくとも一部、給気部、排気部、クーラント供給部および流体回収部は、協働して、機械加工部を冷却する冷却システムを構成している。冷却システムは、ワークおよび切削ツールを冷却するシステムである。例えば、クーラント供給部は、ワークおよび切削ツールに向けて大量の液状のクーラントを噴射するためのノズルを有する。ワークおよび切削ツールに噴射されたクーラントは、排気部および流体回収部から回収され、切削屑と分離された後、再利用される。
【0014】
囲み部材は、(1)給気部と排気部による加工空間への給気と加工空間からの排気により加工空間内に旋回流を生じさせる第1案内面と、(2)旋回流の遠心力により第1案内面に付着したクーラントを回収部に導く第2案内面とを具備する。ここで、第1案内面と水平面との交線は、加工空間の外側に向けて凸となる曲線もしくは円弧を含んでいる。
【0015】
例えば、加工空間を鉛直方向から見たとき、加工空間の4隅に、加工空間の外側に向けて凸となる曲面である第1案内面が設けられている。あるいは、加工空間を鉛直方向から見たとき、加工空間全体が、円形もしくは楕円形などの形状を有してもよい。このような加工空間内では、加工空間の中心付近を旋回の中心とする旋回流を容易に発生させることができる。旋回流に巻き込まれたクーラントのミストおよび切削屑は、遠心力によって周側壁に衝突し、クーラントのミストが凝集するとともに切削屑が重力によって落下する。凝集したクーラントは落下した切削屑とともに重力と第2案内面によって回収部へ導かれる。クーラントと切削屑が除去された空気は、旋回流により上昇気流を形成し、例えば天井壁に設けられた排気部から加工空間外に排出される。
【0016】
第1案内面は、通常、囲み部材の周側壁の一部を構成する。典型的には、囲み部材の周側壁の鉛直方向から見たときの全体的な形状を、円筒状もしくはこれに近い形状に形成してもよい。囲み部材は、複層構造でもよい。例えば、周側壁の少なくとも一部は、外壁と、当該外壁とは別に形成されて外壁の内側に配置された内壁とで構成してもよい。この場合、内壁が第1案内面を有し、加工空間を鉛直方向から見たときの形状が円筒形に近づくように加工空間の形状を規制する。
【0017】
第2案内面は、第1案内面の下端部に隣接して設けられ、かつ流体回収部に向かって下方へ傾斜する斜面を有してもよい。これにより、加工空間内に、鉛直方向下方が窄んだ円錐に近い形状の空間を形成することができる。円錐に近い形状の空間では、回転半径が次第に小さくなるため大きな遠心力が発生する。また、囲み部材に付着したクーラントや切削屑等を、第2案内面に沿って重力により鉛直方向下方に移動させやすくなり、回収部によるクーラントおよび切削屑の回収の効率を向上させることができる。
【0018】
囲み部材は、例えば、主軸の周囲を覆うプロテクタと、プロテクタと交差するとともに互いに対向する一対の側壁と、プロテクタと対向する対向壁と、天井壁とを具備してもよい。この場合、プロテクタと、一対の側壁と、対向壁とが周側壁を構成する。このとき、排気部は、天井壁に設けられることが、クーラントの回収効率を向上させ得る点で望ましい。また、給気部は、一対の側壁の少なくとも一方に設けられていることが、同様の観点から望ましい。なお、既に述べたように、プロテクタ、一対の側壁および対向壁のうちの少なくとも一つは複層構造でもよい。中でも、一対の側壁は、設計上、内壁を用いて複層構造にすることが容易である。
【0019】
好ましい一態様では、少なくとも、一対の側壁が、第1案内面および第2案内面の少なくとも一方の一部となる曲面を有する。このとき、側壁は、単層構造であってもよく、複層構造であってもよい。複層構造の場合、例えば、側壁は、外壁と内壁とを有し、内壁のみが第1案内面および/または第2案内面の少なくとも一方の一部となる曲面を有してもよい。このような内壁を設ける場合、従来と同様の工作機械のスプラッシュガードに内壁を付加するだけで、側壁に第1案内面および/または第2案内面の一部となる曲面を設けることができる。
【0020】
排気部は、例えば、加工空間から空気を送り出す排気ファンを備える。また、給気部は、例えば、加工空間に空気を送り込む給気ファンを備える。ファンの種類は、特に限定されない。排気部から回収された空気は、クーラントのミストや微細な切削屑を含んでいる。排気部および給気部のそれぞれに排気ファンおよび給気ファンを備える場合、加工空間内は第一種換気されるため、より効率的に加工空間内のクーラントのミストや切削屑等を回収し得るようになる。排気部から回収された空気は、例えば、清浄装置に導入して清浄装置でクーラントと切削屑を濾過してもよい。これにより清浄な空気が生成される。生成された清浄な空気は、外部に放出してもよく、給気部に循環させてもよい。
【0021】
清浄装置で清浄化された空気であっても、僅かにクーラントのミストや切削屑を含んでいるため、外部に開放するよりも、工作機械の系内で循環させることが望ましい。すなわち、排気部から排気された空気は、給気部に導入して空気を循環させることが望ましい。排気部と給気部との間に清浄装置を設ける場合、清浄装置としては、市販のミストコレクタなどを用い得る。
【0022】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る工作機械の実施形態を説明する。各実施形態の説明において、方向を表す用語(例えば「上下」、「左右」、および「X軸、Y軸、Z軸」等)を適宜用いるが、これらの用語は説明のためのものであって本発明を限定するものではない。また、各図面において、工作機械の各構成部品の形状または寸法は必ずしも同一の縮尺比で表したものではない。また、各図面において同一の構成部品には同一の符号を用いて示す。
【0023】
図1Aは、本発明の一実施形態に係る工作機械の一例の構造を模式的に示す上面図である。
図1Bは、同工作機械の加工空間の第1案内面と水平面との交線で囲まれる形状Aを示す図である。
図2は、同工作機械のII−II線における模式的な矢視図である。
図3は、同工作機械の模式的な側面図である。工作機械100は、例えば、少なくともX軸、Y軸、Z軸を制御して、被加工物であるワークWを多面加工することができる横形マシニングセンタである。
【0024】
工作機械100は、ワークを加工する加工空間Sを囲む囲み部材110と、加工空間Sへの給気を行う給気部120と、加工空間Sからの排気を行う排気部130と、加工空間S内に設けられた主軸161と、加工空間S内にクーラントCLを供給するクーラント供給部201と、主軸161の下方に設けられた流体回収部140hとを具備する。主軸161にはツール162が着脱自在に取り付けられている。ツール162は、切削、穿孔、研磨等の任意の加工が行えるように選択される。図示例では、クーラント供給部201は、ワークWおよび切削ツール162に向けてクーラントを噴射するためのノズルの形態を有するが、これに限定されない。他の例として、主軸内部を通ってツール先端からクーラントが噴射される形態、加工空間内の切削屑を洗い流すために天井からクーラントが噴射される形態などが挙げられる。
【0025】
工作機械100は、特に限定されないが、一般に加工空間Sの鉛直下方に配置されたベッド140を具備し、ベッド140を介して工場等のフロアに据え置かれる。工作機械100の機械加工部は、ベッド140からZ方向に延びるコラム150と、コラム150からX方向に延びる主軸頭160と、主軸頭160に固定された主軸161とを備える。
【0026】
ワークWは、ワークWを載置するパレット180とともに加工空間S内に設けられたテーブル170上に固定される。ワークWは、
図3に示すように、イケール183に固定してもよい。加工空間SへのワークWの導入は、加工空間Sに隣接する段取りステーション300からAPCアーム310により自動的に行えるようになっている。
【0027】
テーブル170は、第1リニアガイド175やボール螺子177によりZ方向に移動可能である。主軸頭160を支持するコラム150は、主軸頭160をY方向に移動させる第2リニアガイド151とともにプロテクタ113で覆われ、保護されている。コラム150は、第3リニアガイド152によってベッド140上をX方向に移動可能である。
【0028】
囲み部材110は、加工空間を囲む周側壁と天井壁116とを有する。周側壁は、主軸頭160の周囲を覆うプロテクタ113と、プロテクタ113と交差する一対の側壁111と、プロテクタ113と対向する対向壁112とを有する。一対の側壁111は、複層構造であり、外壁111aと、外壁111aとは別体の内壁であるカバー部材111bとで構成されている。カバー部材111bの内表面は、第1案内面101sであり、加工空間を鉛直方向から見たときの形状が円筒形に近づくように加工空間の形状を規制している。第1案内面101sは、加工空間Sの四隅に位置する曲面101rを有し、曲面101rの水平面との交線は、外側に向けて凸となる曲線もしくは円弧状である。また、カバー部材111bの下方端部は、加工空間の中心側に向けて、斜め下方に延びており、第2案内面102sを構成している。すなわち、第2案内面102sは、第1案内面101sの下端部に隣接して設けられている。結果として、加工空間Sは、鉛直方向下方が窄んだ円錐もしくは四角錐に近い形状となっている。
図1Bに、第1案内面101sと水平面との交線で囲まれる形状Aを示す。
【0029】
給気部120は、一対の側壁111の一方に設けられた開口を有し、排気部130は、天井壁116の概ね中央部に設けられた開口を有する。給気部120は、加工空間に空気を送り込む給気ファンを備えてもよく、排気部130は、加工空間から空気を送り出す排気ファンを備えてもよい。例えば、給気部120には給気ファンを設けず、排気部130のみに排気ファンを設ける場合には、加工空間Sの内部を負圧にすることができ、クーラントのミストが加工空間Sから漏れにくい点で好ましい。一方、給気部120に給気ファンを設け、かつ排気部130に排気ファンを設ける場合には、第一種換気による、より確実な給気と排気の制御が可能になる。
【0030】
給気部120の開口の最大幅(もしくは最大径)をLとするとき、第1案内面(ここでは、曲面101r)の最小の曲率半径は、例えば、Lと同等以上であり、具体的には100mm以上であってもよく、150mm以上であってもよい。このような円弧を形成する第1案内面を設けることで、加工空間内に旋回流が発生しやすくなる。給気部120から加工空間S内に空気が流れ込むとき、気流は概ね給気部120の開口の大きさの範囲で発生する。そのような気流は、給気部120の開口以上の曲率半径を有する第1案内面によってなだらかに曲げられるため旋回流が発生しやすくなる。
【0031】
給気された空気の流れ方向は、第1案内面101s(特に曲面101r)によって周側壁に沿うように導かれるため、旋回流を妨げるような気流の乱れが生じにくい。加工空間S内に旋回流が生成すると、旋回流に巻き込まれたクーラントCLのミストおよび切削屑Chは、遠心力によって周側壁に衝突し、クーラントCLのミストが凝集するとともに切削屑が重力によって落下する。凝集したクーラントCLは落下した切削屑Chとともに重力と第2案内面102sによって流体回収部140hへ導かれる。
【0032】
カバー部材111bの第2案内面102sは、流体回収部140hに向けて斜め下方に延び、その下端部は、同様に流体回収部140hに向けて斜め下方に延びる第2のプロテクタ115の上端部と重ねられている。第2のプロテクタ115は、テーブル170を移動させる第1リニアガイド175、ボール螺子177などを保護するとともに、第2案内面102sの一部を構成している。流体回収部140hは、第2案内面102sで囲まれた開口通路を有する。開口通路によって、加工空間Sはクーラントを貯留するクーラントタンク200と連通している。第1案内面101sから第2案内面102sに達したクーラントCLは、開口通路からクーラントタンク200内に流入する。
【0033】
クーラント供給部201には、クーラントタンク200内に貯留されたクーラントCLがポンプPで吸い上げられて供給される。クーラントタンク200内には、搬送ベルトが水平方向に移動する第1チップコンベア210と、斜め上方に移動する第2チップコンベア220とが備えられ、第2チップコンベア220はトンネル状の筐体231で覆われている。流体回収部140hから回収された切削屑Chの一部は、クーラントタンク200内で第1チップコンベア210を利用して分離される仕組みになっている。第1チップコンベア210で分離された切削屑Chは、第2チップコンベア220により放出部232まで搬送され、放出部232の下方に設けられた開口から落下してチップバケット240に回収される。
【0034】
排気部130から排気された空気は、僅かにクーラントのミストを含有しているため、図示しない市販のミストコレクタなどの浄化装置に導いて浄化してもよい。また、浄化装置で浄化された空気を給気部に導入して空気を循環させてもよい。もしくは、浄化装置を用いずに排気部130から排気された空気をダイレクトに給気部120に導入してもよい。
【0035】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形および変更が適宜可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変更が含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、クーラントとともに切削屑を回収してクーラントを再利用する場合に有用な工作機械を提供し得る。
【符号の説明】
【0037】
100:工作機械、101s:第1案内面、101r:曲面、102s:第2案内面、110:囲み部材、111:側壁、111a:外壁、111b:カバー部材、112:対向壁、113:プロテクタ、115:第2のプロテクタ、116:天井壁、120:給気部、130:排気部、140:ベッド、140h:流体回収部、150:コラム、151:第2リニアガイド、152:第3リニアガイド、160:主軸頭、161:主軸、162:ツール、170:テーブル、175:第1リニアガイド、177:ボール螺子、180:パレット、183:イケール、200:クーラントタンク、201:クーラント供給部、210:第1チップコンベア、220:第2チップコンベア、231:筐体、232:放出部、240:チップバケット、300:段取りステーション、310:APCアーム、CL:クーラント、Ch:切削屑、W:ワーク、S:加工空間、P:ポンプ
【要約】 (修正有)
【課題】クーラントと切削屑を効率的に回収し得る簡易な構造の工作機械を提供する。
【解決手段】ワークを加工する加工空間Sを囲む囲み部材と、加工空間Sへの給気を行う給気部120と、加工空間Sからの排気を行う排気部130と、加工空間S内に設けられた主軸161と、加工空間内Sにクーラントを供給するクーラント供給部201と、主軸161の下方に設けられた流体回収部140hとを具備し、囲み部材は、(1)給気部120と排気部130による加工空間Sへの給気と加工空間Sからの排気により加工空間S内に旋回流を生じさせる第1案内面101sと、(2)旋回流の遠心力により第1案内面101sに付着したクーラントを流体回収部140hに導く第2案内面102sとを具備し、第1案内面101sと水平面との交線は、加工空間Sの外側に向けて凸となる曲線もしくは円弧を含む、工作機械。
【選択図】
図3