特許第6850402号(P6850402)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6850402-SMN1遺伝子の検出又は定量方法 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6850402
(24)【登録日】2021年3月9日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】SMN1遺伝子の検出又は定量方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6883 20180101AFI20210322BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20210322BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   C12Q1/6883 Z
   C12Q1/686 Z
   C12N15/11 ZZNA
【請求項の数】2
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2020-558652(P2020-558652)
(86)(22)【出願日】2020年7月22日
(86)【国際出願番号】JP2020028374
【審査請求日】2020年10月21日
(31)【優先権主張番号】特願2019-137633(P2019-137633)
(32)【優先日】2019年7月26日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2020-54242(P2020-54242)
(32)【優先日】2020年3月25日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390037327
【氏名又は名称】積水メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】特許業務法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】海老沼 宏幸
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 郁美
【審査官】 水野 浩之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2016−526390(JP,A)
【文献】 国際公開第2018/117986(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第103555835(CN,A)
【文献】 特表2017−533722(JP,A)
【文献】 国際公開第2019/074004(WO,A1)
【文献】 FELDKOTTER, Markus et al.,Quantitative Analyses of SMN1 and SMN2 Based on Real-Time LightCycler PCR: Fast and Highly Reliable Carrier Testing and Prediction of Severity of Spinal Muscular Atrophy,The American Journal of Human Genetics,2001年12月21日,Vol. 70,pp. 358-368,特に第361頁左欄第1-4行
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
1/00− 7/10
C12Q 1/00− 3/00
C12M 1/00− 3/10
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥ろ紙血中のSMN1遺伝子をリアルタイムPCRにより検出する方法であって、下記(A)〜(D)の工程を含む、前記検出方法。
(A)PCR反応用チューブに前記乾燥ろ紙血を添加する工程
(B)PCR反応用のチューブにPCR試薬を添加する工程であって、PCR試薬は少なくとも以下の(1)のフォワードプライマー及び(2)のリバースプライマーからなる群から選ばれる1以上のプライマー、ポリメラーゼ、dNTP、及びインターカレーター若しくは蛍光標識プローブを含む前記工程
(C)PCR試薬と前記乾燥ろ紙血を添加したチューブ内でPCR反応を行う工程
(D)PCR反応により増幅されたSMN1遺伝子中の標的核酸を経時的に光学的に検出する工程
(1)配列番号1〜9のいずれかの塩基配列からなるフォワードプライマー
(2)配列番号16〜21のいずれかの塩基配列からなるリバースプライマー
【請求項2】
乾燥ろ紙血が、直径1.2mm〜2.0mmの円形のパンチ片又は全血を全反応溶液量に対して0.95v/v%〜6.6v/v%を含むパンチ片である、請求項1に記載の検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥ろ紙血から得られる一定サイズのパンチ片を用いて、直接リアルタイムPCRによりパンチ片に含まれるSMN1遺伝子を特異的に検出及び定量するための方法及びその方法に使用するプライマーに関する。
【背景技術】
【0002】
脊髄性筋萎縮症(Spinal Muscular Atrophy;SMA)は、脊髄の前角細胞の変性による筋委縮と進行性筋力低下を特徴とする下位運動ニューロン病で、難病指定されている。SMAでは、症状のあらわれる年齢やその程度によって、4つの型に分けられている。中でも生後6か月ごろまでに発症するI型は、新生児期ということもあり、診断が遅れやすくなるとともに、症状が重篤化に進展しやすく、I型SMA患者の90%以上が、2歳になる前に死亡するか、終身の人工呼吸器装着が必要となる。また、I型の有病率は、出生数2万人に1人程度と多く、治療開始が早いほど治療効果が期待されることがわかっており、原発性免疫不全に続き、新生児スクリーニング検査が要望されている。I型SMA患者の95%が、運動神経の働きを維持する役目のsurvival of motor neuron 1(SMN1)遺伝子のホモ欠失に起因していることがわかっていることから、スクリーニング対象の遺伝子はSMN1遺伝子となる。ところが、この遺伝子の代償的に働くSMN2遺伝子は、エクソン7の6番目の塩基がSMN1遺伝子のCからTに変更になっていることで、スプライシングの際にエクソン7のスキッピングが起こる要因配列となることから、この一塩基多型を特異的なターゲットとする方が好ましい。そこで、一塩基多型を特異的に測定する方法としては、しばしばアレル特異的なプライマーを設計することで、特異性を確保する試みが行われるが、対象とする一塩基多型周辺の塩基配列によっては、時として完全な特異性の確保は困難となることも少なくない。また、新生児スクリーニング用途でのSMN1遺伝子測定系開発においては、測定対象となる検体は、乾燥ろ紙血から切り出される紙片となることから、紙片からの血液の溶出性、妨害物質の溶出性などに対して様々な工夫が必要とされる。
【0003】
非特許文献1では、エクソン7ではなく、イントロン7に2箇所あるSMN2遺伝子の一塩基多型の内、110番目に対する蛍光標識LNA(Locked Nucleic Acid)プローブを設計し、SMN2遺伝子の増幅を特異的に阻害することで、SMN1遺伝子の特異性を確保している。
【0004】
非特許文献2では、エクソン7の6番目の塩基を挟むように設計されたプライマーを用いて、PCR反応を行い、増幅産物をMelting curve assay方法を利用した測定方法が報告されている。この方法は、SMN1遺伝子のみならず、SMN2遺伝子の増幅産物も生じることから、Melting curveが重なることで見にくくなり、スクリーニング検査としては適さない。
【0005】
非特許文献3では、エクソン7の6番目の塩基を挟むように設計されたプライマーを用いて第一のPCR反応をさせ、その反応液を一部とって、さらにSMN1遺伝子及びSMN2遺伝子にそれぞれ相補的な塩基をプライマーの真ん中に配置した短いプライマーを用いて、第二のPCR反応を行い、その増幅産物を電気泳動にて確認する方法が報告されている。この方法は、第一反応でのプライマーの特異性が不十分である場合に用いられる方法、いわゆるNested−PCR原理を用いる方法である。この方法の大きな欠点は、第一のPCR反応後に蓋を開けることによる、増幅産物の飛散による環境へのコンタミリスクの増大を招くことにある。さらに、増幅産物の検出が、電気泳動による増幅産物のバンドの確認であることから、測定効率の面からも、スクリーニング検査としては不向きである。
【0006】
非特許文献4では、エクソン7の6番目を挟むように設計されたプライマー及びエクソン7の6番目に相補な蛍光色素修飾プローブを用いて、リアルタイムPCR反応を行い、SMN1遺伝子を定量する方法が報告されている。この方法では、SMN2遺伝子由来の増幅産物も同時に生成される為、SMN2遺伝子のCNV(Copy Number Variation)が高い場合、プローブの特異性が確保出来なくなる懸念がある。
【0007】
非特許文献5及び6では、本発明と類似のプライマーが設計され、使用されているが、何れも精製したDNAを検体として用いているので、やはり測定効率の面からも、スクリーニング検査としては不向きである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Clinical Chemistry、61:2、412-419、2015
【非特許文献2】Clinical Chemistry、58:6、1033-1039、2012
【非特許文献3】Kobe J.Med.Sci.、63:2、E37-40、2017
【非特許文献4】Genet Med、8:7、428-437、2006
【非特許文献5】Neurogenetics 8、271-278、2007
【非特許文献6】Am.J.Hum.Genet. 70、358-368、2002
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、SMAの原因遺伝子であるSMN1遺伝子のホモ欠失を、乾燥ろ紙血を用いて検出及び定量する為のプライマー及びこれを用いたSMN1遺伝子の特異的な検出・定量に関する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
SMAに関しては、これまで不治の病とされてきたが、近年治療薬の開発が進み、臨床現場での治療が開始されており、QOLの向上が期待されている。特にI型に関しては、症状が重篤化しやすく、可能な限り早い段階での治療開始が望まれている。このような要望を踏まえ、新生児スクリーニングに応用可能なSMN1遺伝子に特異性が高く、かつ汎用で迅速な検出・定量系が望まれている。
本発明では、乾燥ろ紙血を用いて、直接リアルタイムPCRによりSMN1遺伝子を検出する方法において、SMN1遺伝子に特異性が高く、かつSMN2遺伝子に対する反応が、SMN1遺伝子に対する反応より極めて低くなるようなプライマーを設計し、これを用いることによりSMN1遺伝子の欠失の有無を検定可能なSMN1遺伝子検出及び定量方法を見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下の構成を有する。
<1>
乾燥ろ紙血中のSMN1遺伝子をリアルタイムPCRにより検出する方法であって、下記(A)〜(D)の工程を含む、前記検出方法。
(A)PCR反応用チューブに前記乾燥ろ紙血を添加する工程
(B)PCR反応用のチューブにPCR試薬を添加する工程であって、PCR試薬は少なくともSMN2遺伝子への反応がSMN1遺伝子の1%未満となるように設計されたプライマー、ポリメラーゼ、dNTP及びインターカレーター若しくは蛍光標識プローブを含む工程
(C)PCR試薬と前記乾燥ろ紙血を添加したチューブ内でPCR反応を行う工程
(D)PCR反応により増幅されたSMN1遺伝子中の標的核酸を経時的に光学的に検出する工程
<2>
SMN2遺伝子への反応が、SMN1遺伝子の1%未満となるように設計されたプライマーが以下の(1)のフォワードプライマー及び(2)のリバースプライマーからなる群から選ばれる1以上のプライマーである<1>に記載の検出方法。
(1)配列番号1〜9のいずれかの塩基配列からなるフォワードプライマー
(2)配列番号16〜21のいずれかの塩基配列からなるリバースプライマー
<3>
乾燥ろ紙血が、直径1.2mm〜2.0mmの円形のパンチ片又は全血を全反応溶液量に対して0.95v/v%〜6.6v/v%を含むパンチ片である、<1>又は<2>に記載の検出方法。
<4>
SMN1遺伝子を特異的に検出するためのプライマーであって、以下の(1)のフォワードプライマー及び(2)のリバースプライマーからなる群から選ばれる1以上のプライマー。
(1)配列番号1〜9のいずれかの塩基配列からなるフォワードプライマー
(2)配列番号16〜21のいずれかの塩基配列からなるリバースプライマー
<5>
乾燥ろ紙血中のSMN1遺伝子をリアルタイムPCRにより検出する方法における、SMN2遺伝子への反応性を弱める方法であって、以下の(1)のフォワードプライマー及び
(2)のリバースプライマーからなる群から選ばれる1以上のプライマーを用いる前記方法。
(1)配列番号1〜9のいずれかの塩基配列からなるフォワードプライマー
(2)配列番号16〜21のいずれかの塩基配列からなるリバースプライマー
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、乾燥ろ紙血を用いたリアルタイムPCRにおいて、SMN1遺伝子の特定領域を増幅し、SMN2遺伝子を増幅しにくい反応性の低いプライマーを提供することが可能となった。また、本プライマーを用いることで、乾燥ろ紙血中のSMN1遺伝子をリアルタイムPCRにより特異的に検出又は定量する方法を提供することが可能となった。
したがって、症状が重篤化しやすく早い段階での治療開始が望まれている新生児スクリーニングに応用可能なSMN1遺伝子の迅速な検出・定量系を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】検量線用のSMN1標準品を含有するPCR試薬の増幅反応曲線を示す。
図2】SMN2クロス試験用PCR試薬の増幅反応曲線のうち25〜40サイクルの部分を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(SMN1遺伝子特異的プライマー)
本発明のSMN1遺伝子特異的プライマーは、SMN1遺伝子を特異的に増幅し、SMN2遺伝子を増幅しにくいように設計されたプライマーである。すなわち、SMN2遺伝子への反応性が、SMN1遺伝子への反応性の1%未満となるように設計されたプライマーである。前記反応性は、次のように判定される。SMN1遺伝子とSMN2遺伝子の1反応当たりのコピー数が同じ場合のCq値が同じであることを反応性100%としたとき、SMN1遺伝子に比較してSMN2遺伝子の1反応当たりのコピー数が10倍多い場合のCq値が同じ時の反応性は10%となり、さらに100倍多い場合のCq値が同じ時の反応性は1%となる。この時、SMN1遺伝子のCq値の方が小さければ、反応性は1%未満と判定できる。なお、後述する実施例では、各プライマーと各増幅伸長温度との組み合わせ条件の中で、SMN1遺伝子100copy/反応のCq値から、SMN2遺伝子10、000copy/反応のCq値を差し引いた場合のΔCq値が−0.1未満の場合に、1%未満であると判定した。
さらに、本発明のプライマーを用いてPCR反応を行った場合、乾燥ろ紙血を検体として用いた場合にSMN2遺伝子への反応性がよりいっそう弱まることも見出した。
【0014】
本発明のSMN1遺伝子特異的なフォワードプライマーは、具体的には、配9のいずれかの塩基配列からなるプライマーを挙げることができる。これらのフォワードプライマーは、その3’末端が、SMN1遺伝子のエクソン7の6番目のCを含むように設計されたものである。そして、当該6番目のCより5’側に連続して22〜30塩基の鎖長を有する。連続する塩基は、SMN1遺伝子の対応する塩基配列と完全に一致することが好ましいが、標的核酸の増幅に支障がない範囲で1又は数個の塩基がミスマッチであっても本発明のプライマーの範囲に含まれる。
【0015】
本発明のSMN1遺伝子特異的なリバースプライマーは、配列番号16〜21のいずれかの塩基配列からなるプライマーを挙げることができる。これらのリバースプライマーは、その3’末端が、SMN1遺伝子のエクソン7の6番目に相補的な配列をリバースプライマーの3’末端に含むように設計されたものであり、20〜25塩基の鎖長を有する。連続する塩基は、SMN1遺伝子の対応する相補鎖と完全に一致することが好ましいが、標的核酸の増幅に支障がない範囲で1又は数個の塩基がミスマッチであっても本発明のプライマーの範囲に含まれる。
【0016】
本発明のプライマーは、上記SMN1遺伝子特異的なフォワードプライマーとSMN1遺伝子特異的なリバースプライマーのいずれか1つを用いればよく、セットに使用されるリバースプライマーおよびフォワードプライマーは、リアルタイムPCRを行う場合は、蛍光標識プローブを両プライマーに挟まれた部分に設計する必要を考慮し、20bp以上離れていることが望ましい。
上記本発明のSMN1遺伝子特異的なフォワードプライマーとセットで用いられるリバースプライマーは、本発明のSMN1遺伝子特異的なリバースプライマーでもよく、また、上記20bp以上離れていることを条件にエキソン7やイントロン7の領域の一部と同一の塩基配列に相補的な配列を含むプライマーであってもよい。
【0017】
また、上記本発明のSMN1遺伝子特異的なリバースプライマーとセットで用いられるフォワードプライマーは、前述の本発明のSMN1遺伝子特異的なフォワードプライマーでもよく、また、イントロン6の領域の一部と同一の塩基配列を含むプライマーであってもよい。
【0018】
上記本発明のSMN1遺伝子特異的なフォワードプライマー又はSMN1遺伝子特異的なリバースプライマーを用いてPCRを行うと、SMN1遺伝子のエキソン7の6番目のCの配列を含む核酸は増幅される。一方、SMN2遺伝子の対応する核酸であるエキソン7の6番目はTであるため、本発明のSMN1遺伝子特異的なフォワードプライマーもSMN1遺伝子特異的なリバースプライマーもその3’末端が対応しておらず、ポリメラーゼによる増幅反応が起こりにくい。また、乾燥ろ紙血を検体として用いた場合に、さらにSMN2遺伝子の増幅反応が起きづらくなることで、SMN1遺伝子の特異的な検出が可能となる。
このように、本発明のSMN1遺伝子特異的なフォワードプライマー又はSMN1遺伝子特異的なリバースプライマーの少なくとも1種を用いてPCRを行う際に、乾燥ろ紙血を検体として用いることで効果をより奏することができる。すなわち、SMN1遺伝子のエキソン7の該当領域を特異的に増幅することができ、SMN2遺伝子の該当領域をほとんど増幅しないため、SMN1遺伝子を特異的に検出又は定量することができる。増幅された核酸は、電気泳動やリアルタイムPCRなどにより定性、定量することが可能である。
本発明のSMN1遺伝子特異的なフォワードプライマー又はSMN1遺伝子特異的なリバースプライマーを用いてPCRを行った場合、SMN2遺伝子に対する反応性は、SMN1遺伝子に対する反応性の1%未満であることが後述する実施例により実証されている。
【0019】
(PCR/リアルタイムPCR)
リアルタイムPCR法は、一般的に、PCRにおいて増幅産物の生成過程を経時的にモニタリングする方法を意味する。本発明において、リアルタイムPCRにより検出するとは、PCR反応の後に増幅されたSMN1遺伝子の標的核酸(以下、単に増幅産物ともいう)を光学的手段により検出することを意味する。なお、増幅産物の検出は、例えば、PCR反応終了時または終了後に行ってもよいし、PCR反応工程と並行して行ってもよい。並行して行う場合、増幅産物の検出は、例えば、経時的に行うことができる。経時的な検出(モニタリング)は、例えば、連続的であっても非連続的(断続的)であってもよい。
【0020】
PCR反応における各ステップの温度変化は、例えば、サーマルサイクラー等を用いて自動的に制御すればよい。PCR反応により生成した増幅産物は、例えば、前記増幅産物から発生する蛍光強度を検出することにより検出できる。蛍光検出としては、特に制限されないが、従来公知のインターカレーター法、TaqMan(登録商標)プローブ法、ハイブリダイゼーション法、サイクリングプローブ法などがある。
【0021】
蛍光強度の検出は、例えば、蛍光光度計で行うことができる。また、一般に、PCR反応ユニット(例えば、サーマルサイクラー)と光学系ユニット(例えば、蛍光光度計)との両方を備える装置が使用される。具体例としては、市販のSMartCycler(商品名、タカラバイオ社製)、ライトサイクラー(商品名、ロシュ・ダイアグノスティック社製)、ABI PRISM7000(商品名、アプライド・バイオシステム社製)等があげられる。
【0022】
(標的核酸の定量方法)
本発明のSMN1遺伝子の定量方法は、試料中のSMN1遺伝子の標的核酸に相補的な増幅産物を生成させ、前記増幅産物を光学的手段により検出して、前記増幅産物を定量する方法である。前記増幅産物が所定量となったPCRサイクル数をカウントすることによって、試料中に含まれる標的核酸を定量する方法ことができる。また、後述する実施例のように、標準品から算出されたCq値の検量線から試料中の全血1μLのコピー数を換算して定量することもできる。
【0023】
(PCR試薬)
本発明に用いられるPCR試薬は、少なくとも、プライマーのセット、ポリメラーゼ、dNTP(デオキシヌクレオシド三リン酸)各種、インターカレーター若しくは蛍光標識プローブを含む。また、典型的には当該試薬にはバッファーも含まれている。バッファーとしては、生物の体液中に存在する正電荷物質(ある種のタンパク質など)や負電荷物質(ある種の糖、色素など)などのDNA増幅反応を阻害する物質の作用を抑制する働きを持つバッファーであれば特に限定されない。市販されているものとして、例えば、Ampdirect、Ampdirect plus(ともに(株)島津製作所製)等が挙げられる。本発明に用いられるPCR試薬の反応用チューブへの添加量は、20〜50μLである。
【0024】
(試料/乾燥ろ紙血)
本発明に用いられる試料は、乾燥ろ紙血とよばれる、ろ紙(フィルターペーパー)に血液を含ませた後に乾燥させたろ紙中の血液が好適である。乾燥ろ紙血は、穴あけパンチ工具によりパンチ穴形状の紙片(パンチ片)として取り出される。乾燥ろ紙血としては、例えば、新生児マス・スクリーニングなど新生児のかかとから採血したろ紙血、同時にオプショナルスクリーニングとして採血されたろ紙血などが用いられるがこれらに限定されない。乾燥ろ紙血から切り出されるパンチ片の大きさは、含まれる血液の量を適切な範囲とする必要があることから、一定サイズのパンチ片であることが望ましい。一定サイズのパンチ片としては直径は1.2〜2.0mmの円形のパンチ片が望ましく、1.5mm〜1.8mmの円形のパンチ片がよりいっそう望ましい。また、パンチ片に含まれる全血量としては、PCR全反応溶液量に対して0.95v/v%〜6.6v/v%が望ましく、1.4v/v%〜5.2v/v%がよりいっそう望ましい。なお、前記全血量は、直径1.2〜2.0mmの円形のパンチ片、直径1.5mm〜1.8mmのパンチ片を20〜50μLのPCR反応溶液に添加して血液を溶解した場合の割合を、実測値(全血30uLをパンチ片を切り取る前の濾紙に添加して乾燥させた時にできた円形血液部分の直径は9.5mmであった)をもとに算出した値として示している。
【0025】
(PCR反応用チューブ)
本発明に用いられるチューブは、PCR反応用のチューブであり、ろ紙血のパンチ片がスムーズに挿入でき、キャップにより密閉できる構造であればよい。また、チューブ上部の開口部が円形(例えば、内径2.5mm〜10mm程度)で底部が上部の開口部よりも狭くなっている形状が良く、逆円錐形などが好ましい。
上記チューブの容量は、PCR反応試薬を添加し、PCR反応による温度変化によっても反応溶液を十分に収容できる容量であればよく、0.1mL〜0.3mL容量が好ましく、さらに好ましくは0.15mL〜0.25mL容量、最も好ましくは0.2mL容量である。
本発明に用いるPCR反応用チューブは、チューブが96個連続しているPCR反応用96穴チューブ又は8個連続している8連チューブが好ましく、市販品としては、96ウェルPCRプレート、PCR8連チューブなどの名称で販売されているものを用いることができる。市販品としては、LightCycler (登録商標) 480 Multiwell Plate 96(ロッシュ社)、96-Well PCR Plate, Flat Top, Low Profile, Natural, Polypropylene, UltraFlux(Scientific Specialties, Inc.社)、エッペンドルフPCR プレート 96、スカートレス, 150 μL,カラーレス(エッペンドルフ社)、PCRプレート96well シンプレート0.1ml ナチュラル(BM機器社)、LightCycler 8-Tube Strips(ロッシュ社)などが挙げられる。
これらの反応用チューブの材質は、反応溶液のコンタミが少なく、また、PCR反応の温度変化による内部圧力変動によっても形状が変化しない剛性を有することが望ましく、例えばポリプロピレン製が挙げられる。
【0026】
(キット)
本発明のキットは、SMN1遺伝子をリアルタイムPCRにより特異的に検出するためのキットであって、以下の(1)のフォワードプライマー及び(2)のリバースプライマーからなる群から選ばれる1以上のプライマーを含むものであればよい。
(1)配列番号1〜9のいずれかの塩基配列からなるフォワードプライマー
(2)配列番号16〜21のいずれかの塩基配列からなるリバースプライマー
上記以外にそれぞれのプライマーとセットとして使用されるリバースプライマー又はフォワードプライマーを含むことができる。また、プローブ、その他のPCR、リアルタイムPCRに使用される試薬や容器を含むこともできる。
【実施例】
【0027】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
本実施例は、設計したプライマーのSMN1遺伝子及びSMN2遺伝子配列に対する反応性を比較した例である。
【0028】
〔実施例1〕SMN1遺伝子特異的フォワードプライマーを用いたSMN1遺伝子定量系
(a)試験材料
(a−1)SMN1遺伝子増幅用フォワードプライマー
SMN1遺伝子増幅用のフォワードプライマー(表1;配列番号1〜9)及び共通リバースプライマー(表1;配列番号10)をシグマ-アルドリッチ社に合成依頼したものを用いた。
【0029】
【表1】
【0030】
(a−2)プラスミド
PCR反応の鋳型として、下記に示すSMN1遺伝子及びSMN2遺伝子のエクソン7を含む部分配列をベクターに組み込んだプラスミドを、ユーロフィン社に合成依頼したものを用いた。下記配列番号11の下線部は、SMN1遺伝子のエクソン7の配列(54bp)を示し、その上流がイントロン6の部分配列であり、下流はイントロン7の部分配列を示す。配列番号12の下線部は、SMN2遺伝子のエクソン7の配列(54bp)を示し、その上流がイントロン6の部分配列であり、下流はイントロン7の部分配列を示す。
SMN1遺伝子のエクソン7の6番目はCであり、SMN2遺伝子のエクソン7の6番目はTである。
【0031】
エクソン7を含むSMN1遺伝子部分配列(配列番号11)
CAACTTAATTTCTGATCATATTTTGTTGAATAAAATAAGTAAAATGTCTTGTGAAACAAAATGCTTTTTAACATCCATATAAAGCTATCTATATATAGCTATCTATGTCTATATAGCTATTTTTTTTAACTTCCTTTATTTTCCTTACAGGGTTTCAGACAAAATCAAAAAGAAGGAAGGTGCTCACATTCCTTAAATTAAGGAGTAAGTCTGCCAGCATTATGAAAGTGAATCTTACTTTTGTAAAACTTTATGGTTTGTGGAAAACAAATGTTTTTGAACATTTAAAAAGTTCAGATGTTAAAAAGTTGAAAGGTTAATGTAAAACAATCAATATTAAAGAATTTTGATGCCAAAACTATTAGATAAAAGGTTAATCTACATCCCTACTAGAATTCTC
【0032】
エクソン7を含むSMN2遺伝子部分配列(配列番号12)
CAACTTAATTTCTGATCATATTTTGTTGAATAAAATAAGTAAAATGTCTTGTGAAACAAAATGCTTTTTAACATCCATATAAAGCTATCTATATATAGCTATCTATATCTATATAGCTATTTTTTTTAACTTCCTTTATTTTCCTTACAGGGTTTTAGACAAAATCAAAAAGAAGGAAGGTGCTCACATTCCTTAAATTAAGGAGTAAGTCTGCCAGCATTATGAAAGTGAATCTTACTTTTGTAAAACTTTATGGTTTGTGGAAAACAAATGTTTTTGAACATTTAAAAAGTTCAGATGTTAGAAAGTTGAAAGGTTAATGTAAAACAATCAATATTAAAGAATTTTGATGCCAAAACTATTAGATAAAAGGTTAATCTACATCCCTACTAGAATTCTC
【0033】
(b)PCR試薬
PCR試薬の組成を以下に示す。
1×(終濃度)PCRバッファー(Ampdirect Plus;島津製作所社)
0.2μM(終濃度)SMN1遺伝子用フォワードプライマー(配列番号1〜9)
0.2μM(終濃度)共通リバースプライマー(配列番号10)
0.025U/μL(終濃度)BIOTAQ HSDNAポリメラーゼ
0.5×(終濃度) EvaGreen
【0034】
(c)プラスミド希釈系列
SMN1遺伝子プラスミド (終濃度)100,000copy/反応、10,000copy/反応、1,000copy/反応、100copy/反応
SMN2遺伝子プラスミド (終濃度)100,000copy/反応、10,000copy/反応
【0035】
(d)PCR反応の条件
(i)95℃:15分
(ii)95℃:15秒、61〜65℃:80秒(45サイクル)
(iii)37℃:5分
【0036】
(e)インターカレーターによるリアルタイムPCR測定
(e−1)測定方法
以下の手順で測定した。
(i)PCR試薬とプラスミドを、上記終濃度となるように混ぜ、その40μLを分注したPCRチューブを用意した。
(ii)サーマルサイクラー装置(CFX96;バイオラッド社)を用いて、リアルタイムPCR測定を行い、各プラスミド濃度のCq値を算出した。
(e−2)測定結果
結果を表2に示す。各プライマーと各増幅伸長温度との組み合わせ条件の中で、SMN2遺伝子への反応が、SMN1遺伝子の1%未満である組み合わせ、即ちSMN1遺伝子 100copy/反応のCq値から、SMN2遺伝子 10、000copy/反応のCq値を差し引いた場合のΔCq値が−0.1未満を満たす組み合わせは、11通りとなり、フォワードプライマーの配列番号1〜9では適用可能であった。
【0037】
【表2】
【0038】
〔実施例2〕SMN1遺伝子特異的リバースプライマーを用いたSMN1遺伝子定量系
(f)試験材料
(f−1)SMN1遺伝子増幅用リバースプライマー
SMN1遺伝子増幅用のリバースプライマー(表3;配列番号14〜22)及び共通フォワードプライマー(表3;配列番号13)をシグマ-アルドリッチ社に合成依頼したものを用いた。
【0039】
【表3】
【0040】
(f−2)プラスミド
上記、(a−2)と同じプラスミドを用いた。
【0041】
(g)PCR試薬
PCR試薬の組成を以下に示す。
1×(終濃度)PCRバッファー(AMpdirect Plus;島津製作所社)
0.2μM(終濃度)共有フォワードプライマー(配列番号13)
0.2μM(終濃度)SMN1遺伝子用リバースプライマー(配列番号14〜22)
0.025U/μL(終濃度)BIOTAQ HSDNAポリメラーゼ
0.5×(終濃度) EvaGreen
【0042】
(h)プラスミド希釈系列
上記、(c)と同じプラスミド希釈系列を用いた。
【0043】
(i)PCR反応の条件
上記、(d)と同じ条件で実施した。
【0044】
(j)インターカレーターによるリアルタイムPCR測定
(j−1)測定方法
以下の手順で測定した。
(i)PCR試薬とプラスミドを、上記終濃度となるように混ぜ、その40μLを分注したPCRチューブを用意した。
(ii)サーマルサイクラー装置(CFX96;バイオラッド社)を用いて、リアルタイムPCR測定を行い、各プラスミド濃度のCq値を算出した。
(j−2)測定結果
結果を表4に示す。各プライマーと各増幅伸長温度との組み合わせ条件の中で、SMN2遺伝子への反応が、SMN1遺伝子の1%未満である組み合わせ、即ちSMN1遺伝子 100copy/反応のCq値から、SMN2遺伝子 10、000copy/反応のCq値を差し引いた場合のΔCq値が−0.1未満を満たす組み合わせは、8通りとなり、リバースプライマーの配列番号16〜21では適用可能であった。
【0045】
【表4】
【0046】
〔実施例3〕乾燥ろ紙血パンチ片が共存したSMN1遺伝子定量系のSMN2クロス増幅反応の検証
(a)試験材料
(a−1)SMN1遺伝子増幅用プライマー
SMN1増幅用のプライマーとして、下記のプライマーをシグマ-アルドリッチ社に合成依頼したものを用いた。
SMN1用特異的フォワードプライマー; 上記、表1の配列番号6
SMN1用共通リバースプライマー; 上記、表1の配列番号10
【0047】
(a−2)SMN1検出プローブ
SMN1のPCR増幅を確認するためのプローブとして、蛍光標識を施した下記の検出プローブを、プライムテック社に合成依頼して作成したものを用いた。
SMN1用検出プローブ
5‘−(Quasar670)−GGAAGGTGCTCACATTCCTTAAATTAAGGA−(BHQ3)−3’(塩基配列部分は配列番号23)
【0048】
(b)PCR試薬
PCR試薬の組成を以下に示す。
PCRバッファー(Ampdirect Plus;島津製作所社)
0.2μM (終濃度)SMN1用特異的フォワードプライマー
0.2μM (終濃度)SMN1用共通リバースプライマー
0.1μM (終濃度)SMN1用検出プローブ
0.025U/μL BIOTAQ HSDNAポリメラーゼ
【0049】
(c)検量線用標準品含有PCR試薬
上記(b)のPCR試薬にSMN1部分配列(配列番号11)が組み込まれたプラスミドを添加して、以下の標準品(希釈系列;STD1〜4)含有PCR試薬を調製した。かっこ内は、それぞれの遺伝子のPCR1反応あたりのコピー数を示す。本試薬は、乾燥ろ紙血に含ませることなく、溶液状態で用いられた。
STD1(SMN1 100,000copy/反応)、STD2(SMN1 10,000copy/反応)、STD3(SMN11000copy/反応)、STD4(SMN1100copy/反応)
【0050】
(d)SMN2クロス試験用PCR試薬
上記(b)のPCR試薬にSMN2の部分配列(配列番号12)が組み込まれたプラスミドを、50,000copy/反応となるように添加して、SMN2クロス試験用PCR試薬を調製した。
【0051】
(e)DNA不含乾燥ろ紙血
白血球を除去したヒト赤血球画分とヒト血漿(EDTA)を、6:4の割合で混合した血液を、採血用ろ紙(アドバンテック社)に40μL染み込ませ、そのまま乾燥させたものを、DNA不含乾燥ろ紙血とした。すなわち、本乾燥ろ紙血にはSMN1とSMN2は含まれていない。
【0052】
(f)PCR反応の条件
(i)95℃:15分
(ii)95℃:15秒、63℃:60秒(40サイクル)
(iii)37℃:5分
【0053】
(g)リアルタイムPCR測定
(g−1)測定方法
以下の手順で測定した。
(i)DNA不含乾燥ろ紙血から、パンチャーを用いて直径1.5mmの円形のパンチ片を採取した。対象として、採血用ろ紙(アドバンテック社)から、同じ大きさのパンチ片(空のパンチ片)を採取した。
(ii)PCR反応用のチューブ(ロッシュ社製:LightCycler8−TubeStrips、ポリプロピレン製)に上記それぞれのパンチ片を投入した。
(iii)前記PCR反応用のチューブに40μLのSMN2クロス試験用PCR試薬をそれぞれ加えた後、キャップ(前記チューブとセットになっているもの)をして密閉した。
(iv)検量線用標準品含有PCR試薬も、それぞれ40μLをチューブに分注したものを用意した(なおチューブにはパンチ片は含まれていない)。
(v)サーマルサイクラー装置(LightCycler96;ロッシュ社)を用いて、SMN1のリアルタイムPCR測定並びにSMN2へのクロス反応の検証を行った。
【0054】
(f−2)測定結果
(i)検量線用標準品含有PCR試薬の増幅反応曲線を図1に示す。
SMN1 100copy/反応までは、良好に増幅することが確認された。
(ii) SMN2クロス試験用PCR試薬の増幅反応曲線の25〜40サイクルの部分を図2に示す。
DNA不含乾燥ろ紙血のパンチ片を共存させると、興味深いことに、空のパンチ片(血液を含まないパンチ片)を共存させた場合(図中実線)と比較して、増幅の立ち上がりがCq値として1程度遅れていることが確認された(図中点線)。この条件では、SMN2に対するクロス反応が、コピー数に換算すると約50%低下することになる。即ち、本発明においてSMN2遺伝子への反応性が、SMN1遺伝子への反応性の1%未満となるように設計されたプライマーを、乾燥ろ紙血を検体として用いた場合に、SMN2遺伝子への反応性が弱まることがわかった。すなわち、本発明のプライマーを用いてPCR反応を行った場合に、乾燥ろ紙血のパンチ片が当該反応系に存在することで、SMN2遺伝子へのクロス反応が、より低下することを見出した。
したがって、本発明によれば新生児のスクリーニング検査において、SMN1ホモ欠損であるSMA患者の見逃しのリスク(偽陰性)を低下させることにつながる。
なお、SMN1についても上記同様に試験を行ったところ、乾燥ろ紙血による増幅阻害は認められなかった(結果図示せず)。したがって、上記の乾燥ろ紙血の共存による増幅の立ち上がりが遅れる現象は、SMN2遺伝子の増幅反応における特有の現象であることがわかった。したがって、本願発明は、乾燥ろ紙血中のSMN1遺伝子をリアルタイムPCRにより検出する方法において、特定プライマーを用いることによりSMN2遺伝子への反応性を弱める方法とも言える。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明によれば、本発明の特定のプライマーを用いることで乾燥ろ紙血中のSMN1遺伝子をリアルタイムPCRにより特異的に検出又は定量する方法を提供することが可能となった。したがって、症状が重篤化しやすく早い段階での治療開始が望まれている新生児スクリーニングに応用可能なSMN1遺伝子の迅速な検出・定量系を提供することができる。
【要約】
本発明は、SMAの原因遺伝子であるSMN1遺伝子のホモ欠失を、乾燥ろ紙血を用いて検出及び定量する為のプライマー及びこれを用いたSMN1遺伝子の特異的な検出・定量に関する方法を提供することを目的とする。
本発明は、乾燥ろ紙血中のSMN1遺伝子をリアルタイムPCRにより検出する方法であって、下記(A)〜(D)の工程を含む、前記検出方法。
(A)PCR反応用チューブに前記乾燥ろ紙血を添加する工程
(B)PCR反応用のチューブにPCR試薬を添加する工程であって、PCR試薬は少なくともSMN2遺伝子への反応がSMN1遺伝子の1%未満となるように設計されたプライマー、ポリメラーゼ、dNTP及びインターカレーター若しくは蛍光標識プローブを含む前記工程
(C)PCR試薬と前記乾燥ろ紙血を添加したチューブ内でPCR反応を行う工程
(D)PCR反応により増幅されたSMN1遺伝子中の標的核酸を経時的に光学的に検出する工程
図1
図2
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]