(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
さらに、前記シアン酸エステル化合物以外のシアン酸エステル化合物、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂及び重合可能な不飽和基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、請求項2又は3に記載の樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0012】
[シアン酸エステル化合物]
本実施形態のシアン酸エステル化合物は、下記式(1)で表される構造を有し、重量平均分子量が340〜2000である。このような構造を有するため、本実施形態のシアン酸エステル化合物は、耐熱性及び耐湿性に優れ、特に耐熱分解性に優れる。
【化2】
(式(1)中、nは繰り返し単位の平均値を表す。)
【0013】
上記のとおり、本実施形態のシアン酸エステル化合物は、式(1)中のnが同一のものであってもよいし、式(1)中のnが異なるものの混合物であってもよい。ここで、当該混合物中にはn=1のシアン酸化合物が包含されていてもよいが、本実施形態のシアン酸エステル化合物において、nは平均値として1よりも大きい。nの平均値としての値は、例えば、後述する実施例に記載の方法に基づいて算出することできる。
【0014】
本実施形態において、シアン酸エステル化合物の重量平均分子量は、耐熱性及び耐湿性をより向上させる観点、とりわけ耐熱分解性を向上させる観点から、好ましくは360〜1500である。重量平均分子量は、例えば、後述する実施例に記載の方法等により測定することができる。
【0015】
[シアン酸エステル化合物の製造方法]
本実施形態のシアン酸エステル化合物の製造方法としては、特に限定されるものではないが、下記式(2)で表されるヒドロキシ置換芳香族化合物をシアネート化して、上記式(1)で表されるシアン酸エステル化合物を得るシアネート化工程を有するものであることが好ましい。
【0016】
【化3】
(式(2)中、nは繰り返し単位の平均値を表す。)
【0017】
式(2)中、nは平均値として1より大きく、シアネート化して得られるシアン酸エステル化合物の重量平均分子量が340〜2000となるような値である。
【0018】
式(2)で表されるヒドロキシ置換芳香族化合物は、以下に限定されないが、例えば、特許第2808034号公報や特許第3351029号公報等の方法に従い、フェノールノボラック樹脂類のアリルエーテルをクライゼン転位させることにより合成することができる。
【0019】
次に、上記のようにして得られた式(2)で表されるヒドロキシ置換芳香族化合物をシアネート化する工程について述べる。
【0020】
<シアネート化工程>
シアネート化工程は、ヒドロキシ置換芳香族化合物をシアネート化して、上記式(1)で表される構造を有するシアン酸エステル化合物を得る工程である。具体的には、式(2)で表されるヒドロキシ置換芳香族化合物が有するヒドロキシ基をシアネート化して、上記式(1)で表される構造を有するシアン酸エステル化合物を得る工程である。
【0021】
シアネート化方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を適用することができる。具体的には、ヒドロキシ置換芳香族化合物とハロゲン化シアンを、溶媒中で、塩基性化合物存在下で反応させる方法、溶媒中、塩基の存在下で、ハロゲン化シアンが常に塩基より過剰に存在するようにして、ヒドロキシ置換芳香族化合物とハロゲン化シアンを反応させる方法(米国特許第3553244号明細書参照)や、塩基として3級アミンを用い、これをハロゲン化シアンよりも過剰に用いながら、溶媒の存在下、ヒドロキシ置換芳香族化合物に3級アミンを添加した後、ハロゲン化シアンを滴下する、或いは、ハロゲン化シアンと3級アミンを併注滴下する方法(特許第3319061号明細書参照)、連続プラグフロー方式で、ヒドロキシ置換芳香族化合物、トリアルキルアミン及びハロゲン化シアンを反応させる方法(特許第3905559号明細書参照)、ヒドロキシ置換芳香族化合物とハロゲン化シアンとを、4級アミンの存在下、非水溶液中で反応させる際に副生するtert−アンモニウムハライドを、カチオン及びアニオン交換対で処理する方法(特許第4055210号明細書参照)、ヒドロキシ置換芳香族化合物に対して、水と分液可能な溶媒の存在下で、3級アミンとハロゲン化シアンとを同時に添加して反応させた後、水洗分液し、得られた溶液から2級若しくは3級アルコール類又は炭化水素の貧溶媒を用いて沈殿精製する方法(特許第2991054号明細書参照)、更には、ヒドロキシ置換芳香族化合物、ハロゲン化シアン、及び3級アミンを、水と有機溶媒との二相系溶媒中、酸性条件下で反応させる方法(特許第5026727号明細書参照)等により、本実施形態のシアン酸エステル化合物を得ることができる。
【0022】
以下、ヒドロキシ置換芳香族化合物とハロゲン化シアンを、溶媒中で、塩基性化合物存在下で反応させる方法を例に説明する。この場合、反応基質であるヒドロキシ置換芳香族化合物を、ハロゲン化シアン溶液及び塩基性化合物溶液のいずれかに予め溶解させた後、ハロゲン化シアン溶液と塩基性化合物溶液とを接触させる。
【0023】
ハロゲン化シアン溶液と塩基性化合物溶液を接触させる方法(接触方法)としては、特に限定されないが、例えば、(A)撹拌混合させたハロゲン化シアン溶液に塩基性化合物溶液を注下していく方法、(B)撹拌混合させた塩基性化合物溶液にハロゲン化シアン溶液を注下していく方法、(C)ハロゲン化シアン溶液と塩基性化合物溶液を連続的に交互に又は同時に供給していく方法等が挙げられる。
前記(A)、(B)及び(C)の方法の中でも副反応を抑制し、より高純度のシアン酸エステル化合物を高収率で得ることができるため、(A)の方法が好ましい。
また、前記ハロゲン化シアン溶液と塩基性化合物溶液の接触方法は、半回分形式又は連続流通形式のいずれであってもよい。
特に(A)の方法を用いた場合、ヒドロキシ置換芳香族化合物が有するヒドロキシ基を残存させずに反応を完結させることができ、かつ、より高純度のシアン酸エステル化合物を高収率で得ることができることから、塩基性化合物を分割して注下するのが好ましい。分割回数は特に限定されないが、1〜5回が好ましい。また、塩基性化合物の種類としては、1分割ごとに同一でも異なるものでもよい。
【0024】
本実施形態で用いるハロゲン化シアンとしては、特に限定されないが、例えば、塩化シアン及び臭化シアンが挙げられる。ハロゲン化シアンは、シアン化水素又は金属シアニドとハロゲンとを反応させる方法等の公知の製造方法により得られたハロゲン化シアンを用いてもよいし、市販品を用いてもよい。また、シアン化水素又は金属シアニドとハロゲンとを反応させて得られたハロゲン化シアンを含有する反応液をそのまま用いることもできる。
【0025】
本実施形態におけるシアネート化工程におけるハロゲン化シアンのヒドロキシ置換芳香族化合物に対する使用量は、ヒドロキシ置換芳香族化合物のヒドロキシ基1モルに対して0.5〜5モルが好ましく、より好ましくは1.0〜3.5モルである。
上記範囲とする場合、シアン酸エステル化合物の収率が高まる傾向にある。
【0026】
ハロゲン化シアン溶液に用いる溶媒としては、特に限定されないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロぺンタノンなどのケトン系溶媒、n−ヘキサン、シクロヘキサン、イソオクタンなどの脂肪族炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、ジメチルセルソルブ、ジグライム、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、テトラエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン、ブロモベンゼンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、メチルソルソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリドン、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性溶媒、アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル系溶媒、ニトロメタン、ニトロベンゼンなどのニトロ系溶媒、酢酸エチル、安息香酸エチルなどのエステル系溶媒、水溶媒が挙げられる。これらは、反応基質に合わせて、1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
本実施形態におけるシアネート化工程に用いられる塩基性化合物としては、有機及び無機塩基のいずれでも用いることができ、それらのうち1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0028】
有機塩基としては、特にトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリアミルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジエチル−n−ブチルアミン、メチルジ−n−ブチルアミン、メチルエチル−n−ブチルアミン、ドデシルジメチルアミン、トリベンジルアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、ジフェニルメチルアミン、ピリジン、ジエチルシクロヘキシルアミン、トリシクロヘキシルアミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン等の3級アミンが好ましい。これらの中でも、収率よく目的物が得られることなどから、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンがより好ましく、トリエチルアミンが特に好ましい。
【0029】
前記有機塩基の使用量は、ヒドロキシ置換芳香族化合物のヒドロキシ基1モルに対して、好ましくは0.1〜8モル、より好ましくは1.0〜3.5モルである。
上記範囲とする場合、シアン酸エステル化合物の収率が高まる傾向にある。
【0030】
無機塩基としては、アルカリ金属の水酸化物が好ましい。アルカリ金属の水酸化物としては、特に限定されないが工業的に一般的に用いられる水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等が挙げられる。安価に入手できる点から、水酸化ナトリウムが特に好ましい。
【0031】
前記無機塩基の使用量は、ヒドロキシ置換芳香族化合物のヒドロキシ基1モルに対して、好ましくは1.0〜5.0モル、より好ましくは1.0〜3.5モルである。
上記範囲とする場合、シアン酸エステル化合物の収率が高まる傾向にある。
【0032】
本実施形態の反応において、塩基性化合物は上述したとおり、溶媒に溶解させた溶液として用いることができる。溶媒としては、有機溶媒又は水を用いることができる。
【0033】
塩基性化合物溶液に用いる溶媒の使用量は、ヒドロキシ置換芳香族化合物を塩基性化合物溶液に溶解させる場合、ヒドロキシ置換芳香族化合物1質量部に対して、好ましくは0.1〜100質量部、より好ましくは0.5〜50質量部である。
ヒドロキシ置換芳香族化合物を塩基性化合物溶液に溶解させない場合、溶媒の使用量は、塩基性化合物1質量部に対して、好ましくは0.1〜100質量部、より好ましくは0.25〜50質量部である。
【0034】
塩基性化合物を溶解させる有機溶媒は、該塩基性化合物が有機塩基の場合に好ましく用いられ、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、ジメチルセルソルブ、ジグライム、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、テトラエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン、ブロモベンゼンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、メチルソルソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリドン、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性溶媒、アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル系溶媒、ニトロメタン、ニトロベンゼンなどのニトロ系溶媒、酢酸エチル、安息香酸エチルなどのエステル系溶媒、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素系溶媒が挙げられる。有機溶媒は、塩基性化合物、反応基質及び反応に用いられる溶媒に合わせて適宜選択することができる。これらは1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
塩基性化合物を溶解させる水は、該塩基性化合物が無機塩基の場合に好ましく用いられ、特に制約されず、水道水であっても、蒸留水であっても、脱イオン水であってもよい。効率良く目的とするシアン酸エステル化合物を得る観点から、不純物の少ない蒸留水及び脱イオン水が好ましい。
【0036】
塩基性化合物溶液に用いる溶媒が水の場合、界面活性剤として触媒量の有機塩基を用いることが、より十分な反応速度を確保する観点から好ましい。中でも副反応の少ない3級アミンが好ましい。3級アミンとしては、アルキルアミン、アリールアミン、シクロアルキルアミン何れであってもよく、具体的にはトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリアミルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジエチル−n−ブチルアミン、メチルジ−n−ブチルアミン、メチルエチル−n−ブチルアミン、ドデシルジメチルアミン、トリベンジルアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、ジフェニルメチルアミン、ピリジン、ジエチルシクロヘキシルアミン、トリシクロヘキシルアミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、及び、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネンが挙げられる。これらの中でも、水への溶解度の観点、及び、より収率よく目的物が得られる観点から、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、及び、ジイソプロピルエチルアミンがより好ましく、トリエチルアミンが特に好ましい。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0037】
本実施形態におけるシアネート化工程に用いられる溶媒の総量としては、ヒドロキシ置換芳香族化合物1質量部に対し、2.5〜100質量部であることがヒドロキシ置換芳香族化合物をより均一に溶解させ、シアン酸エステル化合物をより効率良く製造する観点から好ましい。
【0038】
本実施形態におけるシアネート化工程における反応温度は、イミドカーボネート、シアン酸エステル化合物の重合物、及びジアルキルシアノアミド等の副生物の生成、反応液の凝結、及び、ハロゲン化シアンとして塩化シアンを用いる場合は塩化シアンの揮発を抑制する観点から、好ましくは−20〜+50℃、より好ましくは−15〜15℃、更により好ましくは−10〜10℃である。
【0039】
本実施形態におけるシアネート化工程における反応圧力は常圧でも加圧でもよい。必要に応じて、反応系内に窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスを通気してもよい。
また、反応時間は特に限定されないが、前記接触方法が(A)及び(B)の場合の注下時間及び(C)の場合の接触時間は1分〜20時間が好ましく、3分〜10時間がより好ましい。更にその後10分〜10時間反応温度を保持しながら撹拌させることが好ましい。
【0040】
反応条件を上記のような範囲とすることで、目的とするシアン酸エステル化合物がより経済的に、かつより工業的に得られる。
【0041】
シアネート化工程における、反応の進行度は、液体クロマトグラフィー又はIRスペクトル法等で分析することができる。副生するジシアンやジアルキルシアノアミド等の揮発成分は、ガスクロマトグラフィーで分析することができる。
【0042】
反応終了後は、通常の後処理操作、及び所望により分離・精製操作を行うことにより、目的とするシアン酸エステル化合物を単離することができる。具体的には、反応液からシアン酸エステル化合物を含む有機溶媒相を分取し、水洗後、濃縮、沈殿化又は晶析、或いは、水洗後、溶媒置換すればよい。洗浄の際には、過剰のアミン類を除去するため、希薄塩酸などの酸性水溶液を用いる方法も採用できる。十分に洗浄された反応液から水分を除去するために、硫酸ナトリウムや硫酸マグネシウムなどを用いた一般的な方法により乾燥することができる。濃縮及び溶媒置換の際には、シアン酸エステル化合物の重合を抑えるため、減圧下、90℃以下の温度に加熱して有機溶媒を留去する。沈殿化又は晶析の際には、溶解度の低い溶媒を用いることができる。例えば、エーテル系の溶剤やヘキサン等の炭化水素系溶剤又はアルコール系溶剤を反応溶液に滴下、又は逆注下する方法を採用することができる。得られた粗生成物を洗浄するために、反応液の濃縮物や沈殿した結晶をエーテル系の溶剤やヘキサン等の炭化水素系溶剤、又はアルコール系の溶剤で洗浄する方法を採用することができる。反応溶液を濃縮して得られた結晶を再度溶解させた後、再結晶させることもできる。また、晶析は、反応液を単純に濃縮又は冷却することで行ってもよい。
【0043】
得られたシアン酸エステル化合物は、NMR等の公知の方法により同定することができる。シアン酸エステル化合物の純度は、液体クロマトグラフィー又はIRスペクトル法等で分析することができる。シアン酸エステル化合物中のジアルキルシアノアミド等の副生物や残存溶媒等の揮発成分は、ガスクロマトグラフィーで定量分析することができる。シアン酸エステル化合物中に残存するハロゲン化合物は、液体クロマトグラフ質量分析計で同定することができ、また、硝酸銀溶液を用いた電位差滴定又は燃焼法による分解後イオンクロマトグラフィーで定量分析することができる。シアン酸エステル化合物の重合反応性は、熱板法又はトルク計測法によるゲル化時間で評価することができる。
【0044】
[樹脂組成物]
本実施形態の樹脂組成物は、本実施形態のシアン酸エステル化合物を含むものであり、耐熱性及び耐湿性に優れ、特に耐熱分解性に優れる。
シアン酸エステル化合物の含有量は、所望する特性に応じて適宜設定することができ、特に限定されない。
【0045】
(マレイミド化合物)
本実施形態において、特に耐熱分解性を向上させる観点から、本実施形態の樹脂組成物は、マレイミド化合物をさらに含むことが好ましい。マレイミド化合物としては、分子中に1個以上のマレイミド基を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、N−フェニルマレイミド、N−ヒドロキシフェニルマレイミド、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、2,2−ビス{4−(4−マレイミドフェノキシ)−フェニル}プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5−ジエチル−4−マレイミドフェニル)メタン、下記式(3)で表されるマレイミド化合物、これらマレイミド化合物のプレポリマー、若しくはマレイミド化合物とアミン化合物のプレポリマーが挙げられる。これらの中でも、2,2’−ビス{4−(4−マレイミドフェノキシ)−フェニル}プロパン、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン及び下記式(3)で表されるマレイミド化合物からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。このようなマレイミド化合物を含むことにより、得られる硬化物の熱膨張率がより低下し、ガラス転移温度がより優れたものとなる傾向にある。同様の観点から、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン及び下記式(3)で表されるマレイミド化合物からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。
【0047】
ここで、式(3)中、R
5は、各々独立して、水素原子又はメチル基を示し、好ましくは水素原子を示す。また、式(3)中、n
1は、1以上の整数を表し、好ましくは10以下の整数であり、より好ましくは7以下の整数である。
【0048】
本実施形態におけるマレイミド化合物の含有量は、樹脂固形分100質量部に対して、好ましくは5〜70質量部であり、より好ましくは10〜60質量部であり、更に好ましくは20〜50質量部である。マレイミド化合物(B)の含有量が上記範囲内であることにより、得られる硬化物の熱膨張率がより低下し、耐熱性がより向上する傾向にある。
なお、本実施形態において、「樹脂固形分」とは、特に断りのない限り、本実施形態の樹脂組成物における、溶剤を除いた成分をいい、「樹脂固形分100質量部」とは、本実施形態の樹脂組成物における溶剤を除いた成分の合計が100質量部であることをいうものとする。
【0049】
本実施形態の樹脂組成物は、さらに、本実施形態の(式1)で表されるシアン酸エステル化合物以外のシアン酸エステル化合物(以下、「他のシアン酸エステル化合物」ともいう。)、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、及び重合可能な不飽和基を有する化合物からなる群より選択される1種以上を含むことができる。以下、これらの各成分について説明する。
【0050】
(他のシアン酸エステル化合物)
他のシアン酸エステル化合物としては、シアナト基(シアン酸エステル基)で少なくとも1個置換された芳香族部分を分子内に有する化合物であれば、特に限定されない。
【0051】
他のシアン酸エステル化合物の例としては、以下に限定されないが、下記式(4)で表されるものが挙げられる。
【0053】
上記式(4)中、Ar
1は、芳香環を表す。複数ある場合は互いに同一であっても異なっていてもよい。上記芳香環としては、特に限定されないが、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、及び、2つのベンゼン環が単結合したものが挙げられる。Raは各々独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜4のアルコキシル基、炭素数1〜6のアルキル基と炭素数6〜12のアリール基とが結合された基を示す。Raにおける芳香環は置換基を有していてもよく、Ar
1及びRaにおける置換基は任意の位置を選択できる。pはAr
1に結合するシアナト基の数を示し、各々独立に1〜3の整数である。qはAr
1に結合するRaの数を示し、Ar
1がベンゼン環のときは4−p、ナフタレン環のときは6−p、2つのベンゼン環が単結合したもののときは8−pである。tは平均繰り返し数を示し、0〜50の範囲であり、他のシアン酸エステル化合物は、tが異なる化合物の混合物であってもよい。Xは、複数ある場合は各々独立に、単結合、炭素数1〜50の2価の有機基(水素原子がヘテロ原子に置換されていてもよい。)、窒素数1〜10の2価の有機基(例えば−N−R−N−(ここでRは有機基を示す。))、カルボニル基(−CO−)、カルボキシ基(−C(=O)O−)、カルボニルジオキサイド基(−OC(=O)O−)、スルホニル基(−SO
2−)、2価の硫黄原子又は2価の酸素原子のいずれかを示す。
【0054】
上記式(4)のRaにおけるアルキル基は、直鎖もしくは分枝の鎖状構造、及び、環状構造(例えばシクロアルキル基等)のいずれを有していてもよい。
また、上記式(4)におけるアルキル基及びRaにおけるアリール基中の水素原子は、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、メトキシ基、フェノキシ基等のアルコキシル基、又はシアノ基等で置換されていてもよい。
アルキル基の具体例としては、以下に限定されないが、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、1−エチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、及びトリフルオロメチル基が挙げられる。
アリール基の具体例としては、以下に限定されないが、フェニル基、キシリル基、メシチル基、ナフチル基、フェノキシフェニル基、エチルフェニル基、o−,m−又はp−フルオロフェニル基、ジクロロフェニル基、ジシアノフェニル基、トリフルオロフェニル基、メトキシフェニル基、及びo−,m−又はp−トリル基等が挙げられる。
アルコキシル基としては、以下に限定されないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、及びtert−ブトキシ基が挙げられる。
上記式(4)のXにおける炭素数1〜50の2価の有機基の具体例としては、以下に限定されないが、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、ジメチルメチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、トリメチルシクロヘキシレン基、ビフェニルイルメチレン基、ジメチルメチレン−フェニレン−ジメチルメチレン基、フルオレンジイル基、及びフタリドジイル基等が挙げられる。該2価の有機基中の水素原子は、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、メトキシ基、フェノキシ基等のアルコキシル基、シアノ基等で置換されていてもよい。
上記式(4)のXにおける窒素数1〜10の2価の有機基の例としては、以下に限定されないが、−N−R−N−で表される基、イミノ基、ポリイミド基等が挙げられる。
【0055】
また、上記式(4)中のXの有機基として、例えば、下記式(5)又は下記式(6)で表される構造であるものが挙げられる。
【0056】
【化6】
(上記式(5)中、Ar
2は芳香環を示し、uが2以上の場合、互いに同一であっても異なっていてもよい。上記芳香環としては、特に限定されないが、例えば、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基及びビフェニルテトライル基が挙げられる。Rb、Rc、Rf、及びRgは各々独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、トリフルオロメチル基、又はフェノール性ヒドロキシ基を少なくとも1個有するアリール基を示す。Rd及び、Reは各々独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜4のアルコキシル基、又はヒドロキシ基のいずれか一種から選択される。uは0〜5の整数を示す。)
【0057】
【化7】
(式(6)中、Ar
3はフェニレン基、ナフチレン基又はビフェニレン基を示し、vが2以上の場合、互いに同一であっても異なっていてもよい。Ri、及びRjは各々独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、ベンジル基、炭素数1〜4のアルコキシル基、ヒドロキシ基、トリフルオロメチル基、又はシアナト基が少なくとも1個置換されたアリール基を示す。vは0〜5の整数を示すが、vが異なる化合物の混合物であってもよい。)
【0058】
さらに、式(5)中のXとしては、下記式で表される2価の基が挙げられる。
【0059】
【化8】
(上記式中、zは4〜7の整数を示す。Rkは各々独立に、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。)
【0060】
式(5)のAr
2及び式(6)のAr
3の具体例としては、1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基、4,4’−ビフェニレン基、2,4’−ビフェニレン基、2,2’−ビフェニレン基、2,3’−ビフェニレン基、3,3’−ビフェニレン基、3,4’−ビフェニレン基、2,6−ナフチレン基、1,5−ナフチレン基、1,6−ナフチレン基、1,8−ナフチレン基、1,3−ナフチレン基、1,4−ナフチレン基、2,7−ナフチレン基が挙げられる。
式(5)のRb、Rc、Rd、Re、Rf及びRg、並びに式(6)のRi、Rjにおけるアルキル基及びアリール基は、上記式(4)におけるものと同義である。
【0061】
上記式(4)で表されるシアン酸エステル化合物の具体例としては、以下に限定されないが、シアナトベンゼン、1−シアナト−2−,1−シアナト−3−,又は1−シアナト−4−メチルベンゼン、1−シアナト−2−,1−シアナト−3−,又は1−シアナト−4−メトキシベンゼン、1−シアナト−2,3−,1−シアナト−2,4−,1−シアナト−2,5−,1−シアナト−2,6−,1−シアナト−3,4−又は1−シアナト−3,5−ジメチルベンゼン、シアナトエチルベンゼン、シアナトブチルベンゼン、シアナトオクチルベンゼン、シアナトノニルベンゼン、2−(4−シアナフェニル)−2−フェニルプロパン(4−α−クミルフェノールのシアネート)、1−シアナト−4−シクロヘキシルベンゼン、1−シアナト−4−ビニルベンゼン、1−シアナト−2−又は1−シアナト−3−クロロベンゼン、1−シアナト−2,6−ジクロロベンゼン、1−シアナト−2−メチル−3−クロロベンゼン、シアナトニトロベンゼン、1−シアナト−4−ニトロ−2−エチルベンゼン、1−シアナト−2−メトキシ−4−アリルベンゼン(オイゲノールのシアネート)、メチル(4−シアナトフェニル)スルフィド、1−シアナト−3−トリフルオロメチルベンゼン、4−シアナトビフェニル、1−シアナト−2−又は1−シアナト−4−アセチルベンゼン、4−シアナトベンズアルデヒド、4−シアナト安息香酸メチルエステル、4−シアナト安息香酸フェニルエステル、1−シアナト−4−アセトアミノベンゼン、4−シアナトベンゾフェノン、1−シアナト−2,6−ジ−tert−ブチルベンゼン、1,2−ジシアナトベンゼン、1,3−ジシアナトベンゼン、1,4−ジシアナトベンゼン、1,4−ジシアナト−2−tert−ブチルベンゼン、1,4−ジシアナト−2,4−ジメチルベンゼン、1,4−ジシアナト−2,3,4−ジメチルベンゼン、1,3−ジシアナト−2,4,6−トリメチルベンゼン、1,3−ジシアナト−5−メチルベンゼン、1−シアナト又は2−シアナトナフタレン、1−シアナト4−メトキシナフタレン、2−シアナト−6−メチルナフタレン、2−シアナト−7−メトキシナフタレン、2,2’−ジシアナト−1,1’−ビナフチル、1,3−,1,4−,1,5−,1,6−,1,7−,2,3−,2,6−又は2,7−ジシアナトシナフタレン、2,2’−又は4,4’−ジシアナトビフェニル、4,4’−ジシアナトオクタフルオロビフェニル、2,4’−又は4,4’−ジシアナトジフェニルメタン、ビス(4−シアナト−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)エタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−シアナト−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(2−シアナト−5−ビフェニルイル)プロパン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−シアナト−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)イソブタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)−3−メチルブタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)−2−メチルブタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)−2,2−ジメチルプロパン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)ヘキサン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−3,3−ジメチルブタン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)ヘキサン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)ヘプタン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)オクタン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)−2−メチルペンタン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)−2−メチルヘキサン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)−2,2−ジメチルペンタン、4,4−ビス(4−シアナトフェニル)−3−メチルヘプタン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)−2−メチルヘプタン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)−2,2−ジメチルヘキサン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)−2,4−ジメチルヘキサン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)−2,2,4−トリメチルペンタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−シアナトフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−シアナトフェニル)ビフェニルメタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−シアナト−3−イソプロピルフェニル)プロパン、1,1−ビス(3−シクロヘキシル−4−シアナトフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−シアナトフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4−シアナトフェニル)−2,2−ジクロロエチレン、1,3−ビス[2−(4−シアナトフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、1,4−ビス[2−(4−シアナトフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、4−[ビス(4−シアナトフェニル)メチル]ビフェニル、4,4−ジシアナトベンゾフェノン、1,3−ビス(4−シアナトフェニル)−2−プロペン−1−オン、ビス(4−シアナトフェニル)エーテル、ビス(4−シアナトフェニル)スルフィド、ビス(4−シアナトフェニル)スルホン、4−シアナト安息香酸−4−シアナトフェニルエステル(4−シアナトフェニル−4−シアナトベンゾエート)、ビス−(4−シアナトフェニル)カーボネート、1,3−ビス(4−シアナトフェニル)アダマンタン、1,3−ビス(4−シアナトフェニル)−5,7−ジメチルアダマンタン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)イソベンゾフラン−1(3H)−オン(フェノールフタレインのシアネート)、3,3−ビス(4−シアナト−3−メチルフェニル)イソベンゾフラン−1(3H)−オン(o−クレゾールフタレインのシアネート)、9,9’−ビス(4−シアナトフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−シアナト−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(2−シアナト−5−ビフェニルイル)フルオレン、トリス(4−シアナトフェニル)メタン、1,1,1−トリス(4−シアナトフェニル)エタン、1,1,3−トリス(4−シアナトフェニル)プロパン、α,α,α’−トリス(4−シアナトフェニル)−1−エチル−4−イソプロピルベンゼン、1,1,2,2−テトラキス(4−シアナトフェニル)エタン、テトラキス(4−シアナトフェニル)メタン、2,4,6−トリス(N−メチル−4−シアナトアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(N−メチル−4−シアナトアニリノ)−6−(N−メチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、ビス(N−4−シアナト−2−メチルフェニル)−4,4’−オキシジフタルイミド、ビス(N−3−シアナト−4−メチルフェニル)−4,4’−オキシジフタルイミド、ビス(N−4−シアナトフェニル)−4,4’−オキシジフタルイミド、ビス(N−4−シアナト−2−メチルフェニル)−4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタルイミド、トリス(3,5−ジメチル−4−シアナトベンジル)イソシアヌレート、2−フェニル−3,3−ビス(4−シアナトフェニル)フタルイミジン、2−(4−メチルフェニル)−3,3−ビス(4−シアナトフェニル)フタルイミジン、2−フェニル−3,3−ビス(4−シアナト−3−メチルフェニル)フタルイミジン、1−メチル−3,3−ビス(4−シアナトフェニル)インドリン−2−オン、及び、2−フェニル−3,3−ビス(4−シアナトフェニル)インドリン−2−オンが挙げられる。
【0062】
また、上記式(4)で表される化合物の別の具体例としては、以下に限定されないが、フェノールノボラック樹脂及びクレゾールノボラック樹脂(公知の方法により、フェノール、アルキル置換フェノール又はハロゲン置換フェノールと、ホルマリンやパラホルムアルデヒドなどのホルムアルデヒド化合物とを、酸性溶液中で反応させたもの)、トリスフェノールノボラック樹脂(ヒドロキシベンズアルデヒドとフェノールとを酸性触媒の存在下に反応させたもの)、フルオレンノボラック樹脂(フルオレノン化合物と9,9−ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類を酸性触媒の存在下に反応させたもの)、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂及びビフェニルアラルキル樹脂(公知の方法により、Ar’−(CH
2Y)
2(Ar’はフェニル基を示し、Yはハロゲン原子を示す。以下、この段落において同様。)で表されるようなビスハロゲノメチル化合物とフェノール化合物とを酸性触媒若しくは無触媒で反応させたもの、Ar’−(CH
2OR)
2で表されるようなビス(アルコキシメチル)化合物とフェノール化合物とを酸性触媒の存在下に反応させたもの、又は、Ar’−(CH
2OH)
2で表されるようなビス(ヒドロキシメチル)化合物とフェノール化合物を酸性触媒の存在下に反応させたもの、あるいは、芳香族アルデヒド化合物とアラルキル化合物とフェノール化合物とを重縮合させたもの)、フェノール変性キシレンホルムアルデヒド樹脂(公知の方法により、キシレンホルムアルデヒド樹脂とフェノール化合物とを酸性触媒の存在下に反応させたもの)、変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂(公知の方法により、ナフタレンホルムアルデヒド樹脂とヒドロキシ置換芳香族化合物を酸性触媒の存在下に反応させたもの)、フェノール変性ジシクロペンタジエン樹脂、ポリナフチレンエーテル構造を有するフェノール樹脂(公知の方法により、フェノール性ヒドロキシ基を1分子中に2つ以上有する多価ヒドロキシナフタレン化合物を、塩基性触媒の存在下に脱水縮合させたもの)等のフェノール樹脂を、上述と同様の方法によりシアネート化したもの等、並びにこれらのプレポリマー等が挙げられる。
【0063】
また、他のシアン酸エステル化合物の例としては、下記式(7)で表されるものも挙げられる。
【化9】
(式(7)中、Ar
4は芳香環を表し、複数ある場合は互いに同一であっても異なっていてもよい。R
1は各々独立にメチレン基、メチレンオキシ基、メチレンオキシメチレン基又はオキシメチレン基を表し、これらが連結していてもよい。R
2は一価の置換基を表し、各々独立に水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R
3は各々独立に水素原子、炭素数が1〜3のアルキル基、アリール基、ヒドロキシ基又はヒドロキシメチレン基を表し、mは1以上の整数を表し、nは0以上の整数を表す。m及びnが異なる化合物の混合物であってもよい。各繰り返し単位の配列は任意である。lはシアナト基の結合個数を表し、1〜3の整数である。xはR
2の結合個数を表し、Ar
4の置換可能基数から(l+2)を引いた数を表す。yはR
3の結合個数を表し、Ar
4の置換可能基数から2を引いた数を表す。)
【0064】
上記式(7)におけるAr
4としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等が例示されるが、これらに特に限定されない。
式(7)のR
2及びR
3におけるアルキル基は、直鎖若しくは分枝の鎖状構造、及び、環状構造(例えばシクロアルキル基等)の何れを有していてもよい。
また、式(7)のR
2及びR
3におけるアリール基中の水素原子は、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、メトキシ基、フェノキシ基等のアルコキシ基、シアノ基等で置換されていてもよい。
前記アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、1−エチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、トリフルオロメチル基等が挙げられる。
前記アリール基の具体例としては、フェニル基、キシリル基、メシチル基、ナフチル基、フェノキシフェニル基、エチルフェニル基、o−,m−又はp−フルオロフェニル基、ジクロロフェニル基、ジシアノフェニル基、トリフルオロフェニル基、メトキシフェニル基、o−,m−又はp−トリル基等が挙げられる。更にアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基等が挙げられる。
【0065】
式(7)で表されるシアン酸エステル化合物の具体例としては、フェノール変性キシレンホルムアルデヒド樹脂(公知の方法により、キシレンホルムアルデヒド樹脂とフェノール化合物を酸性触媒の存在下に反応させたもの)、変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂(公知の方法により、ナフタレンホルムアルデヒド樹脂とヒドロキシ置換芳香族化合物を酸性触媒の存在下に反応させたもの)等のフェノール樹脂を後述と同様の方法によりシアネート化したもの等が挙げられるが、特に制限されるものではない。これらのシアン酸エステル化合物は1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0066】
上記した他のシアン酸エステル化合物は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0067】
上記した中でも、フェノールノボラック型シアン酸エステル化合物、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物、ビフェニルアラルキル型シアン酸エステル化合物、ナフチレンエーテル型シアン酸エステル化合物、キシレン樹脂型シアン酸エステル化合物、アダマンタン骨格型シアン酸エステル化合物が好ましく、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物が特に好ましい。
【0068】
(フェノール樹脂)
フェノール樹脂としては、1分子中に2個以上のヒドロキシ基を有するフェノール樹脂であれば、一般に公知のものを使用できる。その具体例としては、ビスフェノールA型フェノール樹脂、ビスフェノールE型フェノール樹脂、ビスフェノールF型フェノール樹脂、ビスフェノールS型フェノール樹脂、フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック型フェノール樹脂、グリシジルエステル型フェノール樹脂、アラルキルノボラック型フェノール樹脂、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂、クレゾールノボラック型フェノール樹脂、多官能フェノール樹脂、ナフトール樹脂、ナフトールノボラック樹脂、多官能ナフトール樹脂、アントラセン型フェノール樹脂、ナフタレン骨格変性ノボラック型フェノール樹脂、フェノールアラルキル型フェノール樹脂、ナフトールアラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ビフェニル型フェノール樹脂、脂環式フェノール樹脂、ポリオール型フェノール樹脂、リン含有フェノール樹脂、水酸基含有シリコーン樹脂類等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これらのフェノール樹脂の中では、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂、ナフトールアラルキル型フェノール樹脂、リン含有フェノール樹脂、水酸基含有シリコーン樹脂が難燃性の点で好ましい。これらのフェノール樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0069】
(エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であれば、公知のものを適宜使用することができ、その種類は特に限定されない。具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、アラルキルノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、多官能フェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格変性ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ポリオール型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、グリシジルアミン、グリシジルエステル、ブタジエンなどの二重結合をエポキシ化した化合物、水酸基含有シリコーン樹脂類とエピクロルヒドリンとの反応により得られる化合物などが挙げられる。これらのエポキシ樹脂のなかでは、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、多官能フェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂が難燃性、耐熱性の面で好ましい。これらのエポキシ樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0070】
(オキセタン樹脂)
オキセタン樹脂としては、一般に公知のものを使用できる。例えば、オキセタン、2−メチルオキセタン、2,2−ジメチルオキセタン、3−メチルオキセタン、3,3−ジメチルオキセタン等のアルキルオキセタン、3−メチル−3−メトキシメチルオキセタン、3,3−ジ(トリフルオロメチル)パーフルオキセタン、2−クロロメチルオキセタン、3,3−ビス(クロロメチル)オキセタン、ビフェニル型オキセタン、OXT−101(東亞合成製商品名)、OXT−121(東亞合成製商品名)等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これらのオキセタン樹脂は、1種又は2種以上混合して用いることができる。
【0071】
(重合可能な不飽和基を有する化合物)
重合可能な不飽和基を有する化合物としては、一般に公知のものを使用できる。例えば、エチレン、プロピレン、スチレン、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル等のビニル化合物、メチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の1価又は多価アルコールの(メタ)アクリレート類、ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールF型エポキシ(メタ)アクリレート等のエポキシ(メタ)アクリレート類、及びベンゾシクロブテン樹脂、が挙げられるが、特に限定されるものではない。これらの不飽和基を有する化合物は、1種又は2種以上混合して用いることができる。なお、上記「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びそれに対応するメタクリレートを包含する概念である。
【0072】
(硬化促進剤)
また、本実施形態の樹脂組成物は、必要に応じて、硬化速度を適宜調節するための硬化促進剤を含有していてもよい。この硬化促進剤としては、シアン酸エステル化合物やエポキシ樹脂等の硬化促進剤として一般に使用されているものを好適に用いることができ、その種類は特に限定されない。硬化促進剤の具体例としては、オクチル酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸銅、アセチルアセトン鉄、オクチル酸ニッケル、オクチル酸マンガン等の有機金属塩類、フェノール、キシレノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、オクチルフェノール、ノニルフェノール等のフェノール化合物、1−ブタノール、2−エチルヘキサノール等のアルコール類、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール類及びこれらのイミダゾール類のカルボン酸若しくはその酸無水類の付加体等の誘導体、ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミン等のアミン類、ホスフィン系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、ホスホニウム塩系化合物、ダイホスフィン系化合物等のリン化合物、エポキシ−イミダゾールアダクト系化合物、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシカーボネート等の過酸化物、又はアゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物が挙げられる。硬化促進剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0073】
(他の添加剤)
さらに、本実施形態の樹脂組成物は、所期の特性が損なわれない範囲において、他の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂及びそのオリゴマー、エラストマー類などの種々の高分子化合物、難燃性化合物、並びに各種添加剤等を併用することができる。これらは一般に使用されているものであれば、特に限定されるものではない。難燃性化合物の具体例としては、以下に限定されないが、4,4’−ジブロモビフェニル等の臭素化合物、リン酸エステル、リン酸メラミン、リン含有エポキシ樹脂、メラミン及びベンゾグアナミンなどの窒素化合物、オキサジン環含有化合物、並びに、シリコーン系化合物等が挙げられる。また、各種添加剤としては、以下に限定されないが、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光重合開始剤、蛍光増白剤、光増感剤、染料、顔料、増粘剤、流動調整剤、滑剤、消泡剤、分散剤、レベリング剤、光沢剤、重合禁止剤等が挙げられる。これらは、所望に応じて1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0074】
(有機溶剤)
なお、本実施形態の樹脂組成物は、必要に応じて、有機溶剤を含有することができる。この場合、本実施形態の樹脂組成物は、上述した各種樹脂成分の少なくとも一部、好ましくは全部が有機溶剤に溶解又は相溶した態様(溶液又はワニス)として用いることができる。有機溶剤としては、上述した各種樹脂成分の少なくとも一部、好ましくは全部を溶解又は相溶可能なものであれば、公知のものを適宜用いることができ、その種類は特に限定されるものではない。有機溶剤の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のセロソルブ系溶媒、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソアミル、乳酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、ヒドロキシイソ酪酸メチル等のエステル系溶媒、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド類などの極性溶剤類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等の無極性溶剤が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0075】
本実施形態の樹脂組成物は、常法にしたがって調製することができ、本実施形態におけるシアン酸エステル化合物と、必要に応じ上述した各成分とを均一に含有する樹脂組成物が得られる方法であれば、その調製方法は特に限定されない。例えば、本実施形態におけるシアン酸エステル化合物、マレイミド化合物及び上述したその他の任意成分を溶剤に順次配合し、十分に撹拌することで本実施形態の樹脂組成物を容易に調製することができる。
【0076】
〔硬化物〕
本実施形態の硬化物は、本実施形態の樹脂組成物を硬化させてなるものである。硬化物の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、樹脂組成物を溶融又は溶媒に溶解させた後、型内に流し込み、熱や光などを用いて通常の条件で硬化させることにより得ることができる。熱硬化の場合、硬化温度は、特に限定されないが、硬化が効率的に進み、かつ得られる硬化物の劣化を防止する観点から、120℃から300℃の範囲内が好ましい。光硬化の場合、光の波長領域は、特に限定されないが、光重合開始剤等により効率的に硬化が進む100nmから500nmの範囲で硬化させることが好ましい。
【0077】
〔構造材料用プリプレグ〕
本実施形態の構造材料用プリプレグは、基材と、その基材に含浸又は塗布された、本実施形態の樹脂組成物と、を有するものである。
基材としては、特に限定されないが、例えば、ガラス織布及びガラス不織布等のガラス繊維基材などの無機繊維機材、ポリアミド樹脂繊維、芳香族ポリアミド樹脂繊維及び全芳香族ポリアミド樹脂繊維等のポリアミド系樹脂繊維、ポリエステル樹脂繊維、芳香族ポリエステル樹脂繊維及び全芳香族ポリエステル樹脂繊維等のポリエステル系樹脂繊維、ポリイミド樹脂繊維、フッ素樹脂繊維等を主成分とする織布又は不織布で構成される合成繊維基材、クラフト紙、コットンリンター紙、リンターとクラフトパルプの混抄紙等を主成分とする紙基材等の有機繊維基材が挙げられる。プリプレグに要求される性能、例えば、強度、吸水率及び熱膨張係数等に応じて、これら公知のものを適宜選択して用いることができる。また、上記ガラス繊維基材を構成するガラスは、特に限定されないが、例えば、Eガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、Dガラス、NEガラス、Tガラス及びHガラスが挙げられる。
【0078】
構造材料用プリプレグを製造する方法は、一般に公知のものを適宜適用でき、特に限定されない。例えば、前述した樹脂組成物を用いて樹脂ワニスを調製し、基材を樹脂ワニスに浸漬する方法、基材に樹脂ワニスを各種コーターにより塗布する方法、スプレーにより吹き付ける方法等を適用して、プリプレグを製造することができる。これらの中でも、基材を樹脂ワニスに浸漬する方法が好ましい。これにより、基材に対する樹脂組成物の含浸性を向上させることができる。なお、基材を樹脂ワニスに浸漬する場合、通常の含浸塗布設備を使用することができる。例えば、樹脂組成物ワニスを無機及び/又は有機繊維基材に含浸させて乾燥し、Bステージ化してプリプレグを製造する方法が適用できる。
【0079】
本実施形態の封止用材料は、本実施形態の樹脂組成物を含むものであり、その樹脂組成物を用いて製造することができる。封止用材料の製造方法は、一般に公知のものを適宜適用でき、特に限定されない。例えば、上記樹脂組成物と、封止用材料を製造する際に用いられることが知られている各種の添加剤又は溶媒等とを、公知のミキサーを用いて混合することで封止用材料を製造することができる。なお、混合の際の、樹脂組成物、各種添加剤及び溶媒の添加方法は、一般に公知のものを適宜適用でき、特に限定されない。
【0080】
本実施形態の繊維強化複合材料は、本実施形態の樹脂組成物を含むものであり、その樹脂組成物及び強化繊維を用いて製造することができる。繊維強化複合材料に含まれる強化繊維としては、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、PBO繊維、高強力ポリエチレン繊維、アルミナ繊維、及び炭化ケイ素繊維などの繊維を用いることができる。強化繊維の形態や配列については、特に限定されず、織物、不織布、マット、ニット、組み紐、一方向ストランド、ロービング及びチョップド等から適宜選択できる。また、強化繊維の形態としてプリフォーム(強化繊維からなる織物基布を積層したもの、またはこれをステッチ糸により縫合一体化したもの、あるいは立体織物・編組物などの繊維構造物)を適用することもできる。これら繊維強化複合材料の製造方法として、具体的には、リキッド・コンポジット・モールディング法、レジン・フィルム・インフュージョン法、フィラメント・ワインディング法、ハンド・レイアップ法、及びプルトルージョン法が挙げられる。これらのなかでも、リキッド・コンポジット・モールディング法の一つであるレジン・トランスファー・モールディング法は、金属板、フォームコア及びハニカムコア等、プリフォーム以外の素材を成形型内に予めセットしておくことができることから、種々の用途に対応可能である。そのため、レジン・トランスファー・モールディング法は、比較的、形状が複雑な複合材料を短時間で大量生産する場合に好ましく用いられる。
【0081】
〔接着剤〕
本実施形態の接着剤は、本実施形態の樹脂組成物を含む。接着剤の製造方法としては、一般に公知の方法を適宜適用でき、特に限定されない。例えば、上記した樹脂組成物と、接着剤用途で一般的に用いられる各種公知の添加剤或いは溶媒等を、公知のミキサーを用いて混合することで接着剤を製造することができる。なお、混合の際の、シアン酸エステル化合物、各種添加剤、溶媒の添加方法は、一般に公知の方法を適宜適用でき、特に限定されない。
【実施例】
【0082】
以下、本実施形態を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本実施形態は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0083】
(水酸基含有芳香族化合物のOH基(g/eq.)当量の測定)
JIS−K0070に準拠して、ピリジン−塩化アセチル法によりOH基当量(g/eq.)を求めた。
【0084】
(シアン酸エステル化合物の重量平均分子量Mwの測定)
シアン酸エステル化合物1gを100gのテトラヒドロフラン(溶媒)に溶解させた溶液10μLを高速液体クロマトグラフィー(株式会社日立ハイテクノロジーズ社製高速液体クロマトグラフLachromElite)に注入し分析を実施した。カラムは東ソー株式会社製TSKgel GMHHR−M(長さ30cm×内径7.8mm)2本、移動相はテトラヒドロフラン、流速は1mL/min.、検出器はRIとした。重量平均分子量Mwは、GPC法によりポリスチレンを標準物質として求めた。
【0085】
(繰り返し数nの算出方法)
繰り返し数nが自然数(1,2,3,4,・・・)の場合の各成分iにつき分子量Miを計算し、繰り返し数nと分子量Miとの一次関係式を得た。前述のとおりに測定した重量平均分子量Mwを前記一次関係式にあてはめ、繰り返し数nを求めた。
【0086】
(合成例1)アリル基含有ノボラック型シアン酸エステル化合物1(下記式(1−1);以下、「XPLCN」と略記する。)の合成
下記式(2−1)で表されるアリル基含有フェノールノボラック樹脂700g(群栄化学工業株式会社製「XPL−4437E」;OH基当量148g/eq.;OH基換算4.73mol;重量平均分子量Mw555(GPCチャートを
図1に示す。))及びトリエチルアミン478.6g(4.73mol;ヒドロキシ基1モルに対して1.0モル)をジクロロメタン2100gに溶解させ、これを溶液1とした。
塩化シアン450.6g(7.33mol;ヒドロキシ基1モルに対して1.55モル)、ジクロロメタン1050g、36%塩酸693.6g(6.85mol;ヒドロキシ基1モルに対して1.45モル)、水3468.2gを、撹拌下、液温−2〜−0.5℃に保ちながら、溶液1を70分かけて注下した。溶液1注下終了後、同温度にて30分撹拌した後、トリエチルアミン622.2g(6.15mol;ヒドロキシ基1モルに対して1.3モル)をジクロロメタン622.2gに溶解させた溶液(溶液2)を30分かけて注下した。溶液2注下終了後、同温度にて30分撹拌して反応を完結させた。
その後反応液を静置して有機相と水相を分離した。得られた有機相を、0.1N塩酸2Lにより洗浄した後、水2000gで6回洗浄した。水洗6回目の廃水の電気伝導度は20μS/cmであり、水による洗浄により、除けるイオン性化合物は十分に除けられたことを確認した。
水洗後の有機相を減圧下で濃縮し、最終的に90℃で1時間濃縮乾固させて目的とするシアン酸エステル化合物XPLCN(褐色粘性物)を802g得た。得られたシアン酸エステル化合物XPLCNの重量平均分子量Mwは700であった。GPCチャートを
図2に示す。また、XPLCNのIRスペクトルは2270cm
-1(シアン酸エステル基)の吸収を示し、且つ、ヒドロキシ基の吸収は示さなかった。IRチャートを
図3に示す。
【化10】
(式中、nは平均値として3.16。)
【化11】
(式中、nは平均値として2.88。)
【0087】
(合成例2)アリル基含有ノボラック型シアン酸エステル化合物2(下記式(1−2);以下、「APG1CN」と略記する。)の合成
下記式(2−2)で表されるアリル基含有フェノールノボラック樹脂700g(群栄化学工業株式会社製「APG1」;OH基当量146g/eq.;OH基換算4.79mol;重量平均分子量Mw295(GPCチャートを
図4に示す。))及びトリエチルアミン485.2g(4.79mol;ヒドロキシ基1モルに対して1.0モル)をジクロロメタン2100gに溶解させ、これを溶液3とした。
塩化シアン456.8g(7.43mol;ヒドロキシ基1モルに対して1.55モル)、ジクロロメタン1074g、36%塩酸704.1g(6.95mol;ヒドロキシ基1モルに対して1.45モル)、水3520.4gを、撹拌下、液温−2〜−0.5℃に保ちながら、溶液3を50分かけて注下した。溶液3注下終了後、同温度にて30分撹拌した後、トリエチルアミン630.7g(6.23mol;ヒドロキシ基1モルに対して1.3モル)をジクロロメタン630.7gに溶解させた溶液(溶液4)を30分かけて注下した。溶液4注下終了後、同温度にて30分撹拌して反応を完結させた。
その後反応液を静置して有機相と水相を分離した。得られた有機相を、0.1N塩酸2Lにより洗浄した後、水2000gで7回洗浄した。水洗7回目の廃水の電気伝導度は20μS/cmであり、水による洗浄により、除けるイオン性化合物は十分に除けられたことを確認した。
水洗後の有機相を減圧下で濃縮し、最終的に90℃で1時間濃縮乾固させて目的とするシアン酸エステル化合物APG1CN(薄黄色粘性物)を803g得た。得られたシアン酸エステル化合物APG1CNの重量平均分子量Mwは350であった。GPCチャートを
図5に示す。また、APG1CNのIRスペクトルは2263cm
-1(シアン酸エステル基)の吸収を示し、且つ、ヒドロキシ基の吸収は示さなかった。IRチャートを
図6に示す。
【化12】
(式中、nは平均値として1.11。)
【化13】
(式中、nは平均値として1.10。)
【0088】
(合成例3)フェノールノボラック型シアン酸エステル化合物3(以下、「NVCN」と略記する。)の合成
フェノールノボラック樹脂300.2g(群栄化学工業株式会社製「PS4271」;OH基当量105g/eq.;OH基換算2.86mol;重量平均分子量Mw464(GPCチャートを
図7に示す。))及びトリエチルアミン288.9g(2.85mol;ヒドロキシ基1モルに対して1.0モル)をジクロロメタン1503.2gに溶解させ、これを溶液5とした。
塩化シアン281.3g(4.58mol;ヒドロキシ基1モルに対して1.6モル)、ジクロロメタン655・8g、36%塩酸448.9g(4.43mol;ヒドロキシ基1モルに対して1.55モル)、水2783.7gを、撹拌下、液温−2〜−0.5℃に保ちながら、溶液5を50分かけて注下した。溶液5注下終了後、同温度にて30分撹拌した後、トリエチルアミン463.2g(4.58mol;ヒドロキシ基1モルに対して1.6モル)をジクロロメタン468.7に溶解させた溶液(溶液6)を88分かけて注下した。溶液6注下終了後、同温度にて30分撹拌して反応を完結させた。
その後反応液を静置して有機相と水相を分離した。得られた有機相を、0.1N塩酸2Lにより洗浄した後、水2000gで7回洗浄した。水洗7回目の廃水の電気伝導度は20μS/cmであり、水による洗浄により、除けるイオン性化合物は十分に除けられたことを確認した。
水洗後の有機相を減圧下で濃縮し、最終的に90℃で1時間濃縮乾固させて目的とするシアン酸エステル化合物NVCN(薄黄色粘性物)を405g得た。得られたシアン酸エステル化合物NVの重量平均分子量Mwは658であった。GPCチャートを
図8に示す。また、NVCNのIRスペクトルは2235cm
-1及び2261cm
-1(シアン酸エステル基)の吸収を示し、且つ、ヒドロキシ基の吸収は示さなかった。IRチャートを
図9に示す。
【0089】
(実施例1)
合成例1で得られたXPLCN100質量部及びオクチル酸亜鉛(日本化学産業(株)製)0.05質量部の混合物を得た。得られた混合物を金型に充填し、加熱条件として、150℃3時間、180℃5時間及び250℃3時間の条件で硬化させ、硬化物を得た。
得られた硬化物を、後述するDMA法によるTg評価及びTMA法によるTg評価に供した。得られた結果を「初期耐熱性」として表1に示す。
次いで、かかる硬化物を下記の加熱試験又は吸湿試験に供し、各試験後の耐熱性を評価した。
【0090】
(加熱試験)
熱風オーブン中にて硬化物を空気雰囲気下300℃24時間加熱し、当該加熱後の硬化物を後述するTMA法によるTg評価及び熱重量減少率測定に供した。得られた結果を「加熱後の耐熱性」として表1に示す。
【0091】
(吸湿試験)
硬化物を85℃85%RHの雰囲気下に168時間静置した後、後述するTMA法によるTg評価に供した。得られた結果を「吸湿後の耐熱性」として表1に示す。
【0092】
(実施例2)
合成例1で得られたXPLCNを合成例2で得られたAPG1CNに変更したこと以外は、実施例1と同様にして硬化物を得た。得られた硬化物を、実施例1と同様にして評価した。
【0093】
(比較例1)
合成例1で得られたXPLCNを合成例3で得られたNVCNに変更したこと以外は、実施例1と同様にして硬化物を得た。得られた硬化物を、実施例1と同様にして評価した。
【0094】
(比較例2)
合成例1で得られたXPLCNを2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン(三菱ガス化学株式会社製、「TA」と略記)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして硬化物を得た。得られた硬化物を、実施例1と同様にして評価した。
【0095】
(実施例3)
合成例1で得られたXPLCN60質量部、マレイミド化合物(ケイ・アイ化成(株)製「BMI−70」;ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、マレイミド当量:221g/eq.)40質量部及びオクチル酸亜鉛(日本化学産業(株)製、商標ニッカオクチック酸亜鉛、金属含有量18%))0.03質量部の混合物を得た。得られた混合物を金型に充填し、加熱条件として、150℃3時間、180℃5時間、230℃5時間及び250℃3時間の条件で硬化させ、硬化物を得た。得られた硬化物を、実施例1と同様にして評価した。初期耐熱性、加熱後の耐熱性及び吸湿試験後の耐熱性の全てにおいて、十分に良好な結果が得られた。
【0096】
(実施例4)
実施例3のBMI−70を下記式(3)で表されるマレイミド化合物(BMI−2300、大和化成工業(株)製)に変更したこと以外は、実施例3と同様にして硬化物を得た。得られた硬化物を、実施例1と同様にして評価した。初期耐熱性、加熱後の耐熱性及び吸湿試験後の耐熱性の全てにおいて、十分に良好な結果が得られた。
【化14】
(式(3)中、n
1は平均として1.7。)
【0097】
(実施例5)
実施例3のXPLCNをAPG1CNに変更したこと以外は、実施例3と同様にして硬化物を得た。得られた硬化物を、実施例1と同様にして評価した。初期耐熱性は実施例3〜4と同等であったが、加熱後の耐熱性及び吸湿試験後の耐熱性は実施例3〜4の方が優れる結果となった。
【0098】
[測定方法及び評価方法]
(DMA法によるTg評価)
JIS C6481に準拠して動的粘弾性分析装置(TAインスツルメント製)でDMA法により、貯蔵弾性率E’、損失弾性率E’’を測定し、得られるtanδ(=E’’/E’)のピークの値をTgとして耐熱性を評価した。
【0099】
(TMA法によるTg評価)
熱機械分析装置(TAインスツルメント製)を用い、JlS C6481に規定されるTMA法により、厚さ方向の熱膨張係数を測定した。温度及び熱膨張係数のプロットより、変曲点が認められた場合はその際の温度をTgとして耐熱性を評価した。変曲点が認められない場合は、測定限界である400℃超のTgを有すると推定され、その旨を「変曲点無」と記載した。
【0100】
(熱重量減少率)
JIS K7120−1987に準拠し、示差熱熱重量同時測定装置TG/DTA6200(エス・アイ・アイ・ナノテクノロジー(株)製)により、試験片3mm×3mm×0.8mmを、窒素流通下、開始温度30℃、昇温速度10℃/分で昇温した際の500℃到達時点における熱重量減少率(熱分解量(%))を、下記式に基づき求めた。
熱重量減少率(%)=(I−J)/I×100
(Iは開始温度での重量を、Jは500℃における重量を表す。)
【0101】
【表1】