(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下において、植物栽培システムの構成の説明の便宜上、各図中に示す上下左右前後等の方向を共通に定義し適宜使用する場合がある。但し、植物栽培システムの各構成の位置関係を限定するものではない。
【0010】
<1.植物栽培システムの構成>
図1乃至
図4を参照しつつ、本実施形態に係る植物栽培システム1の全体構成の一例について説明する。なお
図1においては、図示の煩雑を避けるためにシステム全体の構成を概略的に示すだけとし、各部の詳細な構造については簡略化して模式的に示している。
【0011】
図1及び
図2に示すように、植物栽培システム1は、栽培対象である植物2を植物保持コマ3で保持し、当該植物保持コマ3を所定の期間をかけてレール4に沿って移動させることにより、植物を生育させるシステムである。植物栽培システム1は、積層栽培棚5と、搬送ロボット6と、搬入コンベア7と、搬出コンベア8と、多数の植物保持コマ3を有する。
【0012】
(1−1.積層栽培棚)
積層栽培棚5には、複数段(この例では8段)の栽培棚5aが上下方向に多段で積層するよう配置されている。なお、「上下方向」は厳密な鉛直方向である必要はなく、実質的な鉛直方向であればよい。したがって、「上下方向」には鉛直方向に対して若干傾斜した方向も含まれる。また、積層栽培棚5における栽培棚5aの積み重ね方向は、上下方向に限定されるものではなく、上下方向に対して所定の角度で傾斜した方向としてもよい。
【0013】
各栽培棚5aのそれぞれには、複数のレール4が前後方向に沿って水平に延設されている。なお、本実施形態でいう「前後方向」は各栽培棚5aにおける植物2の流れ方向(搬送方向)であり、レール4の長手方向あるいは延設方向でもある。また、「水平方向」は厳密な水平方向である必要はなく、実質的に水平方向であればよい。したがって、水平方向に対して若干傾斜した方向も含まれる。複数のレール4は、各栽培棚5aにおいて左右方向に並設されており、各レール4は実質的に平行に配置されている。なお、本実施形態でいう「左右方向」は上記上下方向及び前後方向と直交する方向である。
【0014】
詳細な構造については後述するが、レール4は、複数の植物保持コマ3を長手方向に沿って移動可能に支持する。そして、レール4においては、植物保持コマ3が前後方向における一方側から供給されることで、他の支持された複数の植物保持コマ3が前後方向における他方側に向けて押し出されてスライド移動するよう構成される。
【0015】
積層栽培棚5における栽培棚5aの段数は特に限定されるものではないが、本実施形態では8段である場合を一例として説明する。以下では、説明の便宜上、積層栽培棚5の栽培棚5aの段について適宜、最下段の1段をA段、最上段の1段をB段、上から2段目〜5段目をまとめてC段、上から6、7段目をまとめてD段という。すなわち、
図1乃至
図4に示すように、A段は1つの栽培棚5aを有し、B段は1つの栽培棚5aを有し、C段は4つの栽培棚5aを有し、D段は2つの栽培棚5aを有する。
図3に示す例では、A段の栽培棚5aには比較的多数(図示する例では8つ)のレール4が設置されている。B段の栽培棚5aには、A段よりも少ない数(図示する例では6つ)のレール4が設置されている。C段の栽培棚5aのそれぞれには、B段よりもさらに少ない数(この例では4つ)のレール4が設置されている。D段の栽培棚5aのそれぞれには、C段よりもさらに少ない数(この例では3つ)のレール4が設置されている。
【0016】
(1−2.搬送順序)
次に、植物栽培システム1における植物保持コマ3及び植物2の搬送順序の一例について説明する。搬入コンベア7は、この例では種子が播種されて発芽した状態の植物2を保持する植物保持コマ3(詳細は後述する)を、図示しないパレタイザからA段の後側から搬入供給する。また搬出コンベア8は、D段における各段の栽培棚5aの後側から、十分に生育した状態の植物2を保持した植物保持コマ3を搬出する。
【0017】
図1、
図3に、各栽培棚5aそれぞれにおける植物保持コマ3及び植物2の搬送方向を示す。なお、
図1中における破線矢印が各栽培棚5aでの植物保持コマ3及び植物2の搬送方向を示している。また、
図3中の記号101は、上記前後方向における前側から後側への植物保持コマ3及び植物2の搬送方向を示し、記号102は、反対に後側から前側への植物保持コマ3及び植物2の搬送方向を示している。
図1、
図3に示すように、A段では、各レール4において植物保持コマ3及び植物2が後側から前側へ向けて搬送される。B段では、各レール4において植物保持コマ3及び植物2が前側から後側へ向けて搬送される。C段では、各段とも、各レール4において植物保持コマ3及び植物2が後側から前側へ向けて搬送される。D段では、各段とも、各レール4において植物保持コマ3及び植物2が前側から後ろ側へ向けて搬送される。
【0018】
積層栽培棚5の前側に位置する搬送ロボット6は、A段からB段への植物保持コマ3及び植物2の上昇搬送と、C段からD段への植物保持コマ3及び植物2の下降搬送を行う。このとき、前側の搬送ロボット6は、左右方向の振り分けを行うとともに、異なる段数にあるC段とD段の間の上下方向の振り分けも行う。また、積層栽培棚5の後側に位置する搬送ロボット6は、搬入コンベア7からA段への植物保持コマ3及び植物2の水平搬送と、B段からC段への植物保持コマ3及び植物2の下降搬送と、D段から搬出コンベア8への植物保持コマ3及び植物2のまとめ搬送を行う。このとき、後側の搬送ロボット6は、左右方向の振り分けを行うとともに、異なる段数にあるB段とC段の間の上下方向の振り分けも行う。
【0019】
また、
図4に示すように、積層栽培棚5の栽培棚5aの上方には、植物2の葉2b(後述の
図8参照)に光を当てるための複数の光源15が設置されている。各光源15は、各栽培棚5aの上方にそれぞれ設けられた支持板11の下面に、左右方向に沿って延在するよう設置されている。各光源15は、前後方向に沿って所定の間隔で配置されている。なお、光源15は特に限定されるものではないが、植物の光合成を促進するため、例えばLEDや蛍光灯等が使用される。
【0020】
以上の搬送経路において、A段→B段→C段→D段の順で搬送されるに従い左右方向におけるレール間隔が次第に広くなる。これにより、植物2全体の大きさが植物保持コマ3よりも小さい育苗段階ではレール間隔が最も狭いA段で密集して栽培し、その後にレール間隔が広くなる順のB段→C段→D段で搬送することができる。すなわち、各植物2の全体が次第に大きく生育する段階に応じて配置間隔を広くでき、当該積層栽培棚5全体の設置面積に対して植物2の栽培面積を効率的に利用できるいわゆる定植が可能となる。
【0021】
また、
図1、
図4に示すように、各レール4における植物保持コマ3の搬送方向の下流側端部(上記の他方側)にはそれぞれ係止機構9が設けられている。なお、
図2においては図示の煩雑を回避するために係止機構9の図示を省略している。詳細は後述するが、搬送ロボット6は、所定の栽培棚5aにある各レール4の係止機構9からそこに係止されている植物保持コマ3を1つだけ取り出して他の栽培棚5aのレールにおける搬送方向の上流側端部(上記の一方側)に押し込むよう搬送する。
【0022】
<2.搬送ロボット>
次に、
図5及び
図6を用いて、搬送ロボット6の構成の一例について説明する。なお、
図5及び
図6においては積層栽培棚5の前側に配置される搬送ロボット6を斜視で示しており、X軸正の方向が右、X軸負の方向が左、Y軸正の方向が後、Y軸負の方向が前、Z軸正の方向が上、Z軸負の方向が下に対応する。また、積層栽培棚5の後側に配置される搬送ロボット6については、同じ構成のものをX軸、Y軸のそれぞれの正負方向を逆にしただけであるため、その図示を省略する。
【0023】
(2−1.全体構成)
搬送ロボット6は、植物保持コマ3及び植物2を一のレール4の端部から取り出して搬送し、他のレール4の端部へ押し込んで供給する。
図5に示すように、搬送ロボット6は、基台16と、基台16上に設置された門型の支持枠17と、支持枠17に設けられたアクチュエータ30と、ハンド21とを有する。
【0024】
支持枠17は、基台16上にX軸方向に対向するようにZ軸方向に沿って設置された一対の支柱17aと、一対の支柱17aの上端にX軸方向に沿って架け渡された略水平な梁17bとを有する。
【0025】
アクチュエータ30は、X軸ユニット18、Z軸ユニット19、及びY軸ユニット20を有する。X軸ユニット18は、ビーム18aと、スライダ18bと、X軸モータ18cとを有する。ビーム18aは、一対の支柱17a間にX軸方向に略水平に架設される。スライダ18bは、ビーム18aにX軸方向に沿って移動自在に支持される。X軸モータ18cは、ビーム18aの左端に取り付けられ、スライダ18bに装着された図示しないチェーン等を介してスライダ18bをX軸方向に駆動する。
【0026】
Z軸ユニット19は、ビーム19aと、スライダ19bと、Z軸モータ19cとを有する。ビーム19aは、上端が梁17bにX軸方向に移動自在に支持されるとともに、スライダ18bに固定される。スライダ19bは、ビーム19aにZ軸方向に沿って移動自在に支持される。Z軸モータ19cは、ビーム19aの下端に取り付けられ、スライダ19bに装着された図示しないチェーン等を介してスライダ19bをZ軸方向に駆動する。
【0027】
Y軸ユニット20は、ビーム20aと、スライダ20bと、Y軸モータ20cとを有する。スライダ20bは、スライダ19bに固定される。ビーム20aは、スライダ20bがY軸方向に沿って移動自在に支持される。Y軸モータ20cは、ビーム20aの前端に取り付けられ、スライダ20bに装着された図示しないチェーン等を介してスライダ20bをY軸方向に駆動する。
【0028】
アクチュエータ30では、X軸モータ18cによりスライダ18bがX軸方向に駆動すると、ビーム19aがX軸方向に移動し、スライダ19b及びスライダ20bを介してビーム20aがX軸方向に移動する。また、Z軸モータ19cによりスライダ19bがZ軸方向に駆動すると、スライダ19b及びスライダ20bを介してビーム20aがZ軸方向に移動する。また、Y軸モータ20cによりスライダ20bをY軸方向に駆動すると、スライダ20bを介してビーム20aがY軸方向に移動する。このようにして、アクチュエータ30は、ビーム20aをX軸、Y軸、Z軸の三軸方向に移動することができる。
【0029】
ハンド21は、アクチュエータ30のビーム20aの後側の先端に取り付けられ、植物保持コマ3を把持する。アクチュエータ30は、ビーム20aを三軸方向に移動することにより、ハンド21を三軸方向に移動することができる。すなわち、アクチュエータ30は、ハンド21を前後方向(レール4の長手方向)に沿って移動させる。またアクチュエータ30は、前後方向と垂直且つ互いに直交する2方向、すなわち左右方向(レール4の並設方向。略水平方向でもある)と上下方向(栽培棚5aの積み重ね方向。高さ方向でもある)の2方向に沿って移動させることができる。
【0030】
(2−2.ハンド)
図6に示すように、ハンド21は、ベース22と、一対のスライダ24と、一対の爪部材25と、駆動ブロック26とを有する。一対のスライダ24は、ベース22の前面下方部でX軸方向に延設された2対のレール部材23に対し、それらの延設方向に沿って摺動自在に嵌合されている。一対の爪部材25は、一対のスライダ24の下端にそれぞれ取り付けられ、X軸方向に略平行に配置されている。駆動ブロック26は、ベース22の前面上方部に設けられ、駆動機構(図示せず)を内蔵している。駆動機構は、例えばエアーコンプレッサ等の圧力源からの流体圧力でスライダ24を駆動し、一対の爪部材25をX軸方向に略平行な姿勢を保持しつつ互いに進退するように開閉させる。一対の爪部材25の先端の爪部28の内側には、植物保持コマ3の支持部35(後述の
図7参照)を支持する溝部28aが形成されている。溝部28aは、Y軸方向から見た形状が支持部35の形状に対応した形状(この例では等脚台形状)となっている。また各溝部28aの内部において当該爪部材25の先端から所定距離の位置に、互いに対向し近接する方向で突出した一対のストッパピン28bが設けられている。なお、図示する例では各ストッパピン28bは円柱形状で形成されているが、他に多角柱形状で形成されてもよい(図示省略)。
【0031】
ハンド21は、例えばレール4の端部に位置する植物保持コマ3を抜き出す際には、駆動機構の作動で一対の爪部材25を植物保持コマ3に対し閉じ、爪部材25の先端の爪部28で植物保持コマ3を両側から挟んで把持した後に抜き出す。また、ハンド21は、例えばレール4の端部へ植物保持コマ3を挿入する際には、把持した植物保持コマ3をアクチュエータ30の駆動により別のレール4の端部に移動させ、レール4に挿入する。そして、植物保持コマ3を把持したままY軸方向(前後方向)に1ピッチ分(植物保持部3の前後方向の長さ分)だけ押す。これにより、挿入した植物保持コマ3とレール4上に支持されている複数の植物保持コマ3を1ピッチ分スライドさせることができる。またこのとき、爪部28に把持された植物保持コマ3における押し込み方向と逆側(溝部28aの奥側、図中のY方向の後方側)の端面が各ストッパピン28bに当接することで、植物保持コマ3の寸法公差にバラツキがある場合でも、爪部28に対する当該植物保持コマ3の相対位置を規定位置に位置決めできる。これにより搬送ロボット6は、そのストッパピン28bの位置を基準として、その時点で把持している植物保持コマ3自体、及びその挿入先のレール4上に支持されている複数の植物保持コマ3の列全体の搬送方向に対する正確な位置決めが可能となる。以上の挿入操作の後、ハンド21は一対の爪部材25を開いて植物保持コマ3の把持を解除する。
【0032】
<3.植物保持コマ>
次に、
図7を用いて、植物保持コマ3の構成の一例について説明する。なお、
図7に示す方向は、実際に植物保持コマ3がレール4に支持されて使用される状態での方向を示す。
【0033】
植物保持コマ3は、植物栽培システム1の栽培対象である植物2を1株ごとに保持する部材である。なお、ここでいう「1株」とは、単一の種子から生育される1つの個体をいう。例えば後述の
図8に示す植物2のように、複数(単一でもよい)の葉2bが1本の茎2aによって支持されることで1つの個体としてまとまっているものは1株である。また、例えば茎が分岐等により複数ある場合でもその根2cがつながることで1つの個体としてまとまっているものは1株である。
【0034】
図7に示すように、植物保持コマ3は、左右方向、前後方向の各方向においてそれぞれ対称な形状を有する。したがって、植物保持コマ3はその長手方向である前後方向(つまり搬送方向)において正逆両方向で使用できる方向互換性を有した構成となっている。植物保持コマ3は、摺動性の高い材料(例えば樹脂。金属等でもよい)で一体成形されており、植物保持コマ3を支持するレール4に対してスライド可能に構成されている。植物保持コマ3は、その全体又は局部的な形状の部位として、主に本体部31、保持筒部32、誘導テーパ部33、ガイド板部34、及び被係止部39を有している。
【0035】
本体部31は、上下方向で厚み寸法tを有し、上方からの平面視で見て前後方向を長手方向とした略矩形形状の平板形状部であり、その上面と下面のそれぞれ四方の辺には傾斜の緩やかな(水平面に対して成す角度が小さい)面取り31aが形成されている。この本体部31のうち左右方向両側の縁部は、特に搬送ロボット6のハンド21(前述の
図6参照)により把持された際に爪部材25により支持される支持部35として機能する。この例の支持部35は、上記面取り31aにより前後方向から見て等脚台形状に形成されているが、三角形や円形等、他の形状としてもよい。またこの例では、左右方向両側の支持部35がそれぞれ前後方向に間隔を空けて2つ配置されており、その間においては支持部35を切り欠いた形状に形成されている。そして、この切り欠き形状部分において前後方向で対抗する一対の端面部分が、それぞれ後述するように上記係止機構9で係止される被係止部39となる。つまり、搬送方向に対する植物保持コマ3の側辺部(搬送方向と直交する左右方向の縁部)には、切り欠き形状の被係止部39が形成されている。
【0036】
保持筒部32は、上記本体部31の前後方向及び左右方向の中心位置で上下方向(鉛直方向)に貫通した円筒形状部であり、その上端開口部は本体部31の上面から突出せずに面一の状態(段差がなくフラットな状態)で形成され、下端開口部は本体部31の下面から下方に所定の寸法で突出するよう形成されている。この例では、保持筒部32は例えば内径が丸穴の円筒形状であるが、内径の軸直交断面が四角形等の他の多角形状である多角形筒形状としてもよい。
【0037】
誘導テーパ部33は、本体部31の下面から下方に突出して前後方向(搬送方向)の両端部からそれぞれ中央部へ向けて左右方向の寸法(幅方向寸法)が拡大するように形成されたテーパ形状部である。また本体部31の中央側におけるこの誘導テーパ部33の最大幅寸法は、後述するレール4の下レール溝43b(後述の
図8参照)に対して適宜のはめあい公差で嵌合可能な寸法であり、上記保持筒部32の近傍までその最大幅方向寸法部分36を延設している。
【0038】
ガイド板部34は、本体部31の上面から上方に突出して前後方向に延設された一対の平板形状部であり、保持筒部32の上端開口部を挟んだ左右方向の2箇所に並設されている。これら一対のガイド板部材34全体での幅方向寸法w1や左右方向位置は、上記誘導テーパ部33に続く最大幅方向寸法部分36と略一致する。
【0039】
そして、各図に示すように、誘導テーパ部33も含めた本体部31の全体は下方側が開口して中抜きされた中空構造で形成されており、このため植物保持コマ3全体の重量が軽量化されている。
【0040】
なお、以上説明した植物保持コマ3の構成は一例であり、上記以外の構成としてもよい。例えば、上記では植物保持コマ3を一体成形としたが、複数の部品で構成されてもよい。
【0041】
<4.レール>
次に、
図8を用いて、レール4の構成の一例について説明する。なお、
図8に示す方向は、レール4が栽培棚5aに設置された状態での方向を示しており、図中では前後方向におけるレール4の直交断面で示している。
【0042】
図8に示すように、レール4は、レール部40と、水槽部47とを有しており、摺動性の高い材料(例えば樹脂。金属等でもよい)で一体成形されている。レール部40は、それぞれ左右方向に所定の幅を有し前後方向に延設された左右一対の上レール板41aと、これら上レール板41aの下方位置で同じくそれぞれ左右方向に所定の幅を有し前後方向に延設された左右一対の下レール板42aが設けられている。また、一対の上レール板41aで互いに対向する側の縁部には、それぞれ同じ寸法で下方に突出する上レール突起部44が形成されている。これら上レール突起部44と下レール板42aとの間の上下方向の離間寸法は、上記植物保持コマ3の本体部31の上下厚み寸法tに対して適宜のはめあい公差で嵌合可能な寸法であり、この離間した空間に植物保持コマ3の本体部31が収容される。一対の上レール板41a(上レール突起部44)の間には、植物保持コマ3における一対のガイド板部34が収容される上レール溝43aが形成されている。一対の下レール板42aの間には、植物保持コマ3における誘導テーパ部33の最大幅方向寸法部36が収容される下レール溝43bが形成されている。
【0043】
水槽部47は、上記一対の下レール板42aのそれぞれ下方に突出して前後方向に延設された一対の側壁部47aと、それら一対の側壁部47aの下端に渡って前後方向に延設された底壁部47bとを有し、全体が上方を開放した断面略U字状の長尺の水槽であり、内部に培養液48が貯留される。培養液48は、例えばポンプ等の適宜の流動手段(図示省略)により前後方向に流動される。なお、この水槽部47の前後方向端部における構成については、後に詳述する(後述の
図12、
図13参照)。
【0044】
レール4に挿入された植物保持コマ3は、レール部40の空間46に収容される。このとき植物保持コマ3は、本体部31の下面が左右の下レール板42aの上面にスライド可能に接触するとともに、本体部31の上面が左右の上レール突起部44に当接する。このように上レール突起部44と下レール部42aにより植物保持コマ3を上下から挟み込む構成とすることで、植物保持コマ3の傾きや倒れを防止できる。このとき、植物保持コマ3の本体部31の下面(下レール板42aと接触する面)は、保持筒部32を含めた植物保持コマ3全体を支持する保持コマ支持面38として機能する。この例では、上述したように本体部31の下面が開口しているため、この保持コマ支持面38は下レール板42aの上面であるレール支持面45との接触面積(接触抵抗)が減少され、レール4との摺動性を向上できる。
【0045】
また植物保持コマ3は、本体部31の上方における一対のガイド板部34と、本体部31の下方における誘導テーパ部33の最大幅方向寸法部36が、それぞれ上下のレール溝43a,43bの間に適宜のはめあい公差で嵌合するよう収容される。このため植物保持コマ3は、左右方向の位置ずれや水平方向の向きのぶれを抑えつつレール4の長手方向に沿った移動が可能となる。
【0046】
また図示するように、植物保持コマ3の使用時には保持筒部32の内径部に培地50が充填され、保持筒部32は培地50に播種された種から生育した植物2の茎2aを保持する。植物2は、保持筒部32の下端開口部を介して根2cを下方に貫通させて水槽部47内の培養液48に浸しつつ、保持筒部32の上端開口部を介して葉2bをレール4の上方に膨出するよう成長させることができる。保持筒部32内に充填する培地50としては、例えば寒天等のゲル状培地を使用してもよいし、スポンジ、ウレタン、ロックウール等の固形培地を使用してもよい。
【0047】
なお、植物栽培システム1では、複数の植物保持コマ3の間に挿入されることで植物保持コマ3の前後方向の間隔を規定するスペーサが使用される(特に図示せず)。スペーサは、上記植物保持コマ3と共通の部品で構成される。すなわち、スペーサとして、保持筒部32の内径部に培地50を充填しない空の状態の植物保持コマ3が使用される。したがって、レール4では、複数の植物保持コマ3と共に複数のスペーサも前後方向に沿って整列し、それら全体が移動可能に支持される。そして、レール4の前後方向における一方側からスペーサが供給されるごとに、すでに支持されている植物保持コマ3及びスペーサの全体が他方側に向けて移動する。なお、スペーサは、レール4で移動可能に支持される点や後述する可動係止爪に係止される点で植物保持コマ3と同等の構成を有していればよく、保持筒部32の有無などの各部の構成で植物保持コマ3と相違していてもよい。なお、植物保持コマ3及びスペーサが、各請求項記載のコマに相当する。
【0048】
<5:本実施形態の特徴>
上記構成の植物栽培システム1では、栽培対象の植物を1株ごとに植物保持コマ3で保持し、その植物保持コマ3をレール4に沿って移動させることにより生育状態に応じた環境に移行させて植物を生育させることができる。このような植物栽培システム1では、例えばレール4上に複数の植物保持コマ3を一列に整列させた状態で、それらの搬送方向の下流側におけるレール4の端部から植物保持コマ3を1つ取り出した後、逆の上流側末端に新たな植物保持コマ3を1つ押し込むことで植物保持コマ3の列全体を搬送させる。
【0049】
しかしながら、レール4上での搬送中において各植物保持コマ3が保持する植物の生育が進むことにより、隣り合う配置の2つの植物どうしで根が絡み合う場合がある。そのため、レール4の下流側末端で植物保持コマ3を1つ取り出す作業を行った際に、根の絡みによって複数の植物(植物保持コマ3)が連なってレール4から外れてしまう場合があった。
【0050】
これに対して本実施形態の植物栽培システム1では、レール部40の搬送方向の下流側末端の植物保持コマ3を取り出すときに、下流側末端の植物保持コマ3の移動を許容し、その搬送方向で隣接する植物保持コマ3の移動を係止する係止機構9を有している。
【0051】
これにより、最も下流側末端の植物保持コマ3だけを取り出す作業を行っても、係止機構9が植物どうしの根の絡みによる引き込み力に抵抗して隣接する植物保持コマ3の移動を係止することができ、意図せずにレール4から植物が外れるのを防ぐことができる。以下、このような構成について順次、詳細に説明する。
【0052】
<6:係止機構の詳細構成>
図9は、上記
図4中のA部にある係止機構9を拡大して上方から見た平面図を示し、
図10は、上記
図9中の矢視X−Xで見た係止機構9の搬送方向直交断面図を示している。なお、各栽培棚における各レール4の下流側端部に配置されたいずれの係止機構9も、同じ構成となっている。これら
図9、
図10において、係止機構9は、脚部91と、滑走板92と、支柱部93と、抑え板94と、ベースブロック95と、圧縮バネ96と、可動係止爪97とを有している。なお
図9中において抑え板94は、その下方の構成を透視するよう輪郭形状のみを破線で示している。
【0053】
栽培棚5aの上面に脚部91が固定的に立設しており、その脚部91の上端に滑走板92が固定されている。その滑走板92の上面は、同じ栽培棚の上面に固定されたレール部40の下レール板42aの上面と面一(同じ高さ)の状態となるよう配置されている。図中で左右方向に並ぶ一対の滑走板92どうしは、それぞれ搬送方向に沿って形成された直線縁部を左右方向で対向させ、植物保持コマ3における上記幅方向寸法w1と略同じ離間距離で平行に配置されている。そしてこれら一対の滑走板92で対向する直線縁部の間の空間は、レール部40の下レール溝43bを搬送方向で延長するものとして配置されている。これにより、レール部40から外れた植物保持コマ3は、一対の滑走板92の間で移動可能に支持される。
【0054】
また、各滑走板92の上面には支柱部93を介して平行に抑え板94が固定されており、左右方向に並ぶ一対の抑え板94どうしの間においても、それぞれ搬送方向に沿って形成された直線縁部を左右方向で対向させ、植物保持コマ3における上記幅方向寸法w1と略同じ離間距離で平行に配置されている。そしてこれら一対の抑え板94で対向する直線縁部の間の空間は、レール部40の上レール溝43aを搬送方向で延長するものとして配置されている。そして上記支柱部93の高さ(つまり滑走板92と抑え板94の上下方向の離間距離)が、上記植物保持コマ3の本体部31の上下厚み寸法tと略一致しており、この離間した空間に植物保持コマ3の本体部31が収容される。
【0055】
またレール部40の端部近傍において、それら滑走板92と抑え板94の間の空間にベースブロック95が固定されており、このベースブロック95には圧縮バネ96を介して可動係止爪97が連結されている。これらベースブロック95、圧縮バネ96、及び可動係止爪97からなる構造体は、植物保持コマ3の搬送路を挟んで左右対象に一対配置されており、そのうち一対の可動係止爪97どうしは左右方向で対向するよう配置されている。
図11は、この可動係止爪97の一つを拡大して示しており、
図11(a)は可動係止爪97を斜視で示し、
図11(b)は上記
図11(a)中の矢視XIb−XIbで見た水平断面を示し、
図11(c)は上記
図11(a)中の矢視XIcから見た側面を示し、
図11(d)は上記
図11(a)中の矢視XIdから見た側面を示している。なお、この
図11に示す可動係止爪97は、上記
図9、
図10中において植物保持コマ3の搬送路98に対し右側(各図中の左側)に位置するものを示しているが、逆の左側(各図中の右側)に位置するものは左右方向に関して対象となる形状のものであり、ここでは図示を省略している。
【0056】
可動係止爪97(係止爪)は、この例では植物保持コマ3と同等の材料(例えば樹脂。金属でもよい)で一体成形されたものであり、その上下方向の厚み寸法tが植物保持コマ3の本体部31と同じ略平板形状に形成されている。
図11(b)の平面で見た可動係止爪97の全体形状として、前後方向(搬送方向)に長い略矩形形状から搬送路側(左側;図中の右側)の前後両角部を大きく面取りするテーパ面97aが形成されているとともに、搬送路逆側(右側;図中の左側)の側辺部中央位置に上記圧縮バネ96を嵌合固定するための切り欠き形状部97bが形成されている。また、可動係止爪97の搬送路側の側辺部には、その搬送方向上流側から途中位置までの間の領域に上記ハンド21が有しているものと同等の形状(この例では等脚台形状)の溝部97cが形成されており、その溝部97cの下流側端面が係止部97dとなる。
【0057】
図9に戻り、左右方向で対向する配置の一対の可動係止爪97の間の離間距離は、植物保持コマ3の本体部31で切り欠き形状にある部分の左右方向の幅寸法w2(上記
図7参照)と略一致しており、それ以上に離間距離を広げようとする力に付勢するよう各可動係止爪97が圧縮バネ96に連結している。つまり各圧縮バネ96(付勢部材)は、植物保持コマ3の側辺部に対向する方向で可動係止爪97を付勢している。また、各圧縮バネ96は、その対向する方向を中心として各可動係止爪97を水平に揺動可能に支持している。そして
図9に示すように、各可動係止爪97で互いに対向する側の側辺部のうち上記溝部97cが形成されていない部分どうしが、植物保持コマ3の本体部31の切り欠き形状部分を左右方向で挟むことができる。その挟んだ状態のまま植物保持コマ3を最も搬送方向の下流側に位置させた際に、植物保持コマ3の左右の被係止部39(上記
図7参照)が各可動係止爪97の係止部97d(上記
図11参照)に係止される。以上により係止機構9の全体は、搬送方向に移動可能な植物保持コマ3の本体部31と水平方向に揺動可能な可動係止爪97の両方を、滑走板92(下板部)と抑え板94(上板部)で鉛直方向に挟む構成となっている。
【0058】
<7:係止機構がない場合の比較例>
ここで係止機構9がない場合における植物保持コマ3の取り出し作業工程の比較例を
図12に示す。
図12(a)〜
図12(c)の各図は、上記
図9におけるレール部40の端部近傍部分を拡大して示している。まず
図12(a)に示すように、レール部40から外れて滑走板92上に搬送された植物保持コマ3−1に対し、その搬送方向下流側の端部を搬送ロボット6のハンド21が備える一対の爪部材28が左右方向で挟むよう把持する。次に
図12(b)に示すように、植物保持コマ3−1を把持したハンド21が搬送方向下流側に向けて移動することで、当該植物保持コマ3−1をレール部40及び滑走板92から抜き出すことができる。
【0059】
しかしこのとき、
図12(c)に示すように、ハンド21が把持している植物保持コマ3−1とともにそれと搬送方向で隣接している他の植物保持コマ3−2も連なって移動してしまい、意図せずにレール部40や滑走板92から外れてしまう場合がある。これは、それまでのレール4上での搬送中において各植物保持コマ3−1,3−2が保持する植物2の生育が進んだことにより、隣り合う配置の2つの植物2どうしで根2cが絡み合ってしまい、それが隣接する植物保持コマ3どうしの間を連結させる牽引力を発生させるためである。
【0060】
このような隣接する植物保持コマ3−1,3−2間における連結態様について具体的には、例えば
図12に示す例において、下流側末端からの並び順で第1番目と第2番目の2つの植物保持コマ3−1,3−2が搬送方向で密接に並んでいたところ(
図12(a)参照)、第1番目3−1だけを移動させて第2番目3−2からある程度の離間距離まで引き離した際にそれぞれが保持している植物2の根部範囲2c(図中の破線領域)が伸びきって牽引力が生じる(
図12(b)参照)。さらに第1番目3−1の移動を継続することで、この牽引力は第2番目3−2と第3番目3−3の間(及びそれ以降の間)においても連鎖的に発生することになる(
図12(c)参照)。また、隣接する植物保持コマ3間が離間してそれぞれの植物2の根部範囲2cが一旦伸びた後には、逆にそれら植物保持コマ3間の離間距離を縮めるよう押し込む際に反発力が生じる。このときの各植物2の根部範囲2cの大きさや、発生する牽引力と反発力は、各栽培棚5aでの生育状態やスペーサの挿入有無などで大きく相違する。
【0061】
<8:係止機構を備える本実施形態の場合>
以上に対して、係止機構9を備えた本実施形態の場合における植物保持コマ3の取り出し作業工程を、上記
図12に対応する
図13に示す。まず
図13(a)において、一対の可動係止爪97は、第1番目の植物保持コマ3−1における切り欠き形状部分を左右方向で挟むよう配置されており、この状態で各可動係止爪97の係止部97d(上記
図11参照)が植物保持コマ3−1の左右後方側の被係止部39(上記
図7参照)を係止している。これにより、この第1番目の植物保持コマ3−1は、搬送方向への移動が圧縮バネ96の弾性力による所定の係止力で係止されている。
【0062】
この第1番目の植物保持コマ3−1に対して、
図13(b)に示すように搬送ロボット6のハンド21が把持して搬送方向下流側に向けて引き込んだ際には、左右一対の可動係止爪97が圧縮バネ96の弾性変形により下流側へ揺動することで上記の係止状態が解除され、第1番目の植物保持コマ3−1がレール部40及び滑走板92から抜き出る移動が許容される。その後に、上述した植物2間の牽引力により第2番目の植物保持コマ3−2も下流側へ移動するが、その牽引移動の結果、
図13(c)に示すように一対の可動係止爪97の揺動位置が対向方向に復帰する。このように一対の可動係止爪97が第2番目の植物保持コマ3−2における左右上流側の各被係止部39に係止した際には、植物2間の牽引力に抵抗して第2番目3−2の移動が係止され、最終的に第1番目3−1と第2番目3−2が引き離されて完全に分離する。
【0063】
またこのとき、第2番目3−2と第3番目3−3の間も離間して各植物2の根部範囲2cが伸びた状態となるが、その後にレール部40の搬送方向の上流側末端に植物保持コマ3(またはスペーサ)を1つだけ押し込んだ際にも、これら第2番目3−2と第3番目3−3の各植物2間における根部範囲2cどうしの間で作用する反発力に抵抗して一対の可動係止爪97が第2番目3−2の移動を係止し固定する。その結果、第2番目3−2と第3番目3−3の植物保持コマ3は、
図13(a)に示すように接触して整列し、新たな第1番目(元の第2番目3−2)は元の第1番目3−1と同じ正しい搬送方向位置99(搬送方向の所定位置)で位置決めされる。
【0064】
なお、特に図示していないが、一対の可動係止爪97が第2番目の植物保持コマ3−2の下流側端部に係止した状態となった場合でも、第1番目3−1との間の牽引力に抵抗して第2番目3−2を分離させることは可能である。また、その後にレール部40の上流側末端に植物保持コマ3(またはスペーサ)を1つだけ押し込むことで、一対の可動係止爪97が下流側への揺動と復帰を1サイクル分だけ行い、
図13(a)に示すように各可動係止爪97が第2番目の植物保持コマ3−2における左右上流側の各被係止部39に係止してレール部40上の全ての植物保持コマ3の列全体を正しい搬送位置に位置決めできる。
【0065】
ここで搬送ロボット6による植物保持コマ3の取り出し作業と押し込み作業の各作業力は、隣接する植物2の根部範囲2cどうしの間に生じる牽引力と反発力より十分大きく設定すればよい。また、一対の可動係止爪97の揺動可否(係止解除の可否)を決める圧縮バネ96の弾性力は、上記搬送ロボット6の抜き出し動作力及び押し込み動作力より弱く、植物2間に生じる牽引力と反発力より大きく設定すればよい。
【0066】
<9.実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態の植物栽培システム1は、レール部40の搬送方向の下流側末端の植物保持コマ3を取り出すときに、下流側末端の植物保持コマ3の移動を許容し、その搬送方向で隣接する植物保持コマ3の移動を係止する係止機構9を有している。これにより、最も下流側に位置する第1番目の植物保持コマ3−1だけを取り出す作業を行っても、係止機構9が植物2どうしの根部範囲2cの絡みによる牽引力に抵抗して第2番目の植物保持コマ3−2の移動を係止することができ、意図せずにレール部40から植物2が外れるのを防ぐことができる。この結果、植物2の搬送機能を向上できる。
【0067】
また、本実施形態では特に、レール部40に移動可能に支持されるコマとして栽培対象の植物2を保持しないスペーサが含まれる。これにより、生育が進んで葉部2bが大きくなった植物2を保持する植物保持コマ3をレール部40に複数個整列させる場合でも、それら複数の植物保持コマ3の間にスペーサを挿入することで植物保持コマ3の前後方向の間隔を適切に規定でき、隣接する植物2間での葉部2bの接触を回避できる。
【0068】
また、本実施形態では特に、係止機構9は、レール部40の搬送方向の上流から植物保持コマ3を押し込んだあと、下流側末端の植物保持コマ3の搬送方向の移動を係止する。これにより、レール部40の上流側末端に新たな植物保持コマ3を1つだけ押し込む作業を行っても、係止機構9が植物2どうしの根部範囲2cの接触による反発力に抵抗して下流側末端から第1番目の植物2の移動を係止し、意図せずにレールから植物が外れるのを防ぐことができる。
【0069】
また、本実施形態では特に、係止機構9は、搬送方向の所定位置で植物保持コマ3の移動を係止する。これにより、次に下流側末端の第1番目の植物保持コマ3−1を取り出す際に、その把持位置を高い精度で位置決めできる。また、上流側末端に植物保持コマ3を押し込んだ際にも、下流側末端の第2番目の植物保持コマ3−2も含めてレール部40上の植物保持コマ3の列全体を高い精度で位置決めできる。
【0070】
また、本実施形態では特に、植物保持コマ3は、搬送方向に対する側辺部に切り欠き形状の被係止部39を有し、係止機構9は、被係止部39に係止可能な可動係止爪97を有している。これにより、植物保持コマ3に対する高い位置決め精度での係止が可能な係止機構9を、簡易な構成かつ狭い設置面積で実現できる。
【0071】
また、本実施形態では特に、係止機構9は、植物保持コマ3の側辺部に対向する方向で可動係止爪97を付勢する付勢部材(圧縮バネ96)を有している。これにより、例えば電力を必要とするモータなどの駆動源を利用せずとも、植物保持コマ3の自動的な係止が可能な係止機構9を簡易に構成できる。
【0072】
また、本実施形態では特に、上記付勢部材は、植物保持コマ3の側辺部に対向する方向に揺動可能な圧縮バネ96である。これにより、圧縮バネ96は、可動係止爪97が水平方向で揺動する動作を付勢しつつ許容できるため、植物保持コマ3の側辺部における多様な形状に柔軟に対応しながら被係止部39への自動的な係止が可能となる。
【0073】
また、本実施形態では特に、可動係止爪97は、植物保持コマ3の本体部31と厚み寸法tが同じであり、係止機構9は、植物保持コマ3と可動係止爪97を鉛直方向で挟む配置の抑え板94と滑走板92を有している。これにより、可動係止爪97及び植物保持コマ3の両方に対して鉛直方向の移動を拘束できるため、乗り上げなどによる鉛直方向の位置ズレを抑えて係止動作をより確実に実現できる。
【0074】
また、本実施形態では特に、レール部40に対して植物保持コマ3の取り出し作業と押し込み作業を行う搬送ロボット6をさらに有している。これにより、レール部40に対する植物保持コマ3の取り出し作業と押し込み作業を人の手作業によらず自動的に行うことができる。また、その際の取り出し力や押し込み力を高い精度で一様に制御できることから、圧縮バネ96の揺動方向の弾性強度として、搬送ロボットの取り出し力や押し込み力に対して可動係止爪97の係止を解除できる程度に弱く、また植物2間の根2cがらみによる牽引力や反発力に抵抗して可動係止爪97の係止を維持できる程度に強く設定することで、係止機構9に要求される係止と解除の安定した切り替え機能を実現できる。
【0075】
なお、上記実施形態の係止機構9では、圧縮バネ96による付勢と揺動によって可動係止爪97を植物保持コマ3の被係止部39に自動的に係止させる構成としていたが、これに限られない。他にも、例えば光センサでの検知情報やカメラでの撮像画像に基づいてレール部40上の植物保持コマ3の搬送位置をリアルタイムに検出し、その搬送位置情報に対応してソレノイド等のアクチュエータを用いた係止爪の係止動作を制御してもよい。この場合でも、植物保持コマ3の1回の取り出し作業に対して搬送方向の下流側末端から第1番目の植物保持コマ3−1の移動だけを許容し、第2番目の植物保持コマ3−2の移動を係止することで、レール部40から植物保持コマ3が意図せず外れるのを防ぐことができる。また、植物保持コマ3の1回の押し込み作業に対して搬送方向の下流側末端の第1番目の植物保持コマ3−1の移動を係止することで、レール部40から植物保持コマ3が意図せず外れるのを防ぐことができる。
【0076】
なお、以上の説明において、「垂直」「平行」「平面」等の記載がある場合には、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「垂直」「平行」「平面」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に垂直」「実質的に平行」「実質的に平面」という意味である。
【0077】
また、以上の説明において、外観上の寸法や大きさが「同一」「等しい」「異なる」等の記載がある場合は、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「同一」「等しい」「異なる」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に同一」「実質的に等しい」「実質的に異なる」という意味である。
【0078】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0079】
その他、一々例示はしないが、上記実施形態や各変形例は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。