特許第6850453号(P6850453)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6850453ジシアノピラジン化合物、発光材料、およびそれを用いた発光素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6850453
(24)【登録日】2021年3月10日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】ジシアノピラジン化合物、発光材料、およびそれを用いた発光素子
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/14 20060101AFI20210322BHJP
   C07D 403/14 20060101ALI20210322BHJP
   C07D 413/14 20060101ALI20210322BHJP
   C07D 417/14 20060101ALI20210322BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20210322BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   C07D401/14CSP
   C07D403/14
   C07D413/14
   C07D417/14
   C09K11/06 650
   C09K11/06 655
   H05B33/14 B
【請求項の数】4
【全頁数】90
(21)【出願番号】特願2017-550331(P2017-550331)
(86)(22)【出願日】2016年11月8日
(86)【国際出願番号】JP2016083095
(87)【国際公開番号】WO2017082246
(87)【国際公開日】20170518
【審査請求日】2019年8月9日
(31)【優先権主張番号】特願2015-220371(P2015-220371)
(32)【優先日】2015年11月10日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-242690(P2015-242690)
(32)【優先日】2015年12月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000004307
【氏名又は名称】日本曹達株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100194250
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 直志
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(72)【発明者】
【氏名】安田 琢麿
(72)【発明者】
【氏名】パク インソプ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ユソク
(72)【発明者】
【氏名】住谷 弘
(72)【発明者】
【氏名】福島 幸生
【審査官】 早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−188876(JP,A)
【文献】 特開平06−100566(JP,A)
【文献】 特開昭63−077864(JP,A)
【文献】 特開昭62−000071(JP,A)
【文献】 特開昭62−010183(JP,A)
【文献】 特開昭61−241727(JP,A)
【文献】 特開昭60−084273(JP,A)
【文献】 特開昭56−002973(JP,A)
【文献】 特開昭56−002971(JP,A)
【文献】 特開昭55−115874(JP,A)
【文献】 特開昭55−079307(JP,A)
【文献】 特開昭55−022609(JP,A)
【文献】 特開2006−241124(JP,A)
【文献】 特表2009−503052(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第104830320(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第102634333(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第101723907(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第101514262(CN,A)
【文献】 国際公開第2011/055911(WO,A1)
【文献】 韓国公開特許第10−2014−0027030(KR,A)
【文献】 特開2007−204443(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 401/14
C07D 403/14
C07D 413/14
C07D 417/14
C09K 11/06
H01L 51/50
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表される化合物。
【化1】
[この文献は図面を表示できません]
〔式(I)中の、R3は電子供与基を示し、R4は水素原子、置換若しくは無置換のアリール基または電子供与基を示し、L3は置換若しくは無置換のヘテロアリーレン基または置換若しくは無置換のアリーレン基を示し、L4は単結合、置換若しくは無置換のヘテロアリーレン基または置換若しくは無置換のアリーレン基を示す。前記電子供与基は、式(d1)〜式(d6)で表される基のいずれかひとつである。〕
【化2】
[この文献は図面を表示できません]
【化3】
[この文献は図面を表示できません]
【化4】
[この文献は図面を表示できません]
【化5】
[この文献は図面を表示できません]
【化6】
[この文献は図面を表示できません]
【化7】
[この文献は図面を表示できません]
(式(d1)〜(d6)中、Rは、ヒドロキシ基、ハロゲノ基、C1〜20アルキル基、C1〜20アルコキシ基、C1〜20アルキルチオ基、C1〜20アルキル置換アミノ基、C6〜40アリール置換アミノ基、C6〜40アリール基、5〜40員ヘテロアリール基、C2〜10アルケニル基、C2〜10アルキニル基、C2〜20アルキルアミド基、C6〜20アリールアミド基、またはトリC1〜10アルキルシリル基を示し、aおよびbはそれぞれ独立に括弧内のRの数を示し且つ0〜4のいずれかの整数である。cは括弧内のRの数を示し且つ0〜2のいずれかの整数である。dは括弧内のRの数を示し且つ0〜5のいずれかの整数である。Rが複数置換するときそれらは同じ置換基であっても異なる置換基であってもよい。隣接する2つのRが繋がって前記Rが結合する炭素原子とともに、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、イミダゾリン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、シクロヘキサジエン環、シクロヘキセン環、シクロペンテン環、シクロヘプタトリエン環、シクロヘプタジエン環、またはシクロヘプテン環を成してもよい。*は結合の手を示す。)
【請求項2】
3およびL4がそれぞれ独立に置換若しくは無置換のアリーレン基である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の化合物を含む発光材料。
【請求項4】
請求項3に記載の発光材料を含有する発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジシアノピラジン化合物、発光材料、それを用いた発光素子、および2,5−ジシアノ−3,6−ジハロゲノピラジンの製造方法に関する。
本願は、2015年11月10日に、日本に出願された特願2015−220371号、及び2015年12月11日に、日本に出願された特願2015−242690号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
電子供与基を有するジシアノピラジン骨格を含む化合物のいくつかは、電子輸送材料、電荷発生材料、光学記録材料、光電変換材料、発光材料などとして有用である。
【0003】
例えば、特許文献1は、後分光方式の反射率測定による固体における可視光領域の最大反射率が100%以上である式(1)で表されるN,N,N’,N’−テトラキス(2−メチルベンジル)−2,5−ジアミノ−3,6−ピラジンカルボニトリル結晶を含有する有機固体蛍光物質を開示している。
【化1】
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【0004】
特許文献2は、式(2)で表される1,4,5,8,9,11−ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリルに、式(3)で表されるキノキサリン骨格または式(4)で表される2,3−ジシアノピラジン骨格を含む化合物が添加された膜を開示している。前記膜は有機エレクトロルミネッセンス素子や有機薄膜太陽電池などの有機電子デバイスに用いることができるようである。
【化2】
[この文献は図面を表示できません]
【化3】
[この文献は図面を表示できません]
【化4】
[この文献は図面を表示できません]
【0005】
特許文献3は、対向する陽極と陰極の間に、式(5)で表されるジシアノピラジン系化合物を含む層を有する有機電界発光素子を開示している。
【化5】
[この文献は図面を表示できません]
式(5)中、R1およびR2は、各々独立に、置換基を有していてもよい複素環基または置換基を有していてもよい炭化水素環基を表す。)
【0006】
特許文献4は、式(6)などで表される化合物を開示している。前記化合物は電子輸送材料、電荷発生材料、光学記録材料、光電変換材料などに用いられるようである。
【化6】
[この文献は図面を表示できません]
【0007】
特許文献5および6は、式(7)や式(8)などで表される化合物を開示している。これらの化合物はエレクトロルミネッセンス、波長変換材料などの機能性材料に用いられ得るようである。
【化7】
[この文献は図面を表示できません]
【化8】
[この文献は図面を表示できません]
【0008】
特許文献7は、電子求引性部位としてのシアノピリジンと、電子供与性部位としてのヘテロアリール基が結合した化合物からなる発光材料を開示している。
【0009】
電子供与基を有するジシアノピラジン骨格を含む化合物を製造する方法は種々挙げられる。電子供与基を有するジシアノピラジン骨格を含む化合物を安価に且つ高い収率で得るために出発原料や中間体を検討する必要がある。出発原料又は中間体の候補が種々考えられる。例えば、6−アミノピラジン−2,3,5−トリカルボニトリル、5,6−ジアミノピラジン−2,3−ジカルボニトリル、3,5−ジアミノピラジン−2,6−ジカルボニトリル、3,6−ジアミノピラジン−2,5−ジカルボニトリルなどのアミノ基及びシアノ基を有するピラジン化合物はジアミノマレオニトリルまたはその同族体を出発原料として合成できる(非特許文献2、特許文献8、特許文献9など)。
アミノ基及びハロゲノ基を有するピラジン化合物として、例えば、2−アミノ−6−クロロピラジン、2−アミノ−5−クロロピラジン、2−アミノ−5−ブロモピラジンおよび2−アミノ−3,5−ジブロモピラジンは、市販されており、入手が容易である。2−アミノ−ブロモピラジン類は、溶媒中、脱臭化水素剤の存在下、少なくとも1つの水素原子をピラジン核に有する2−アミノピラジン類を臭素と反応させる方法によって合成できるようである(特許文献11)。この臭素化は水素から臭素への置換反応である。
シアノ基及びブロモ基を有するピラジン化合物として、例えば、2,5−ジシアノ−3,6−ジブロモピラジンは、2−シアノ−3−アミノピラジンから4段階の反応で、または2−シアノ−3−アミノ−6−ブロモピラジンから3段階の反応で得ることができる(非特許文献1)。2−シアノ−3−アミノピラジンは非特許文献3に記載の方法で得られる。シアノ基及びブロモ基を有するピラジン化合物の合成には多段階の反応が必要である。
【0010】
【化9】
[この文献は図面を表示できません]
【0011】
【化10】
[この文献は図面を表示できません]
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2007−204443号公報
【特許文献2】特開2015−153864号公報
【特許文献3】特開2001−261658号公報
【特許文献4】特開2001−2661号公報
【特許文献5】特開平5−32640号公報
【特許文献6】特開平11−138974号公報
【特許文献7】特開2015−172166号公報
【特許文献8】特願昭63−75909号
【特許文献9】WO 91/03469 A
【特許文献10】WO 88/01264 A
【特許文献11】特開2001−89460号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】N. Sato et al. "Synthesis of 3,6-Dibromopyrazine-2,5-dicarbonitrile" Journal of Heterocyclic Chemistry, Vol.49, May 2012, 675-
【非特許文献2】J.Org.Chem., Vol.39, 1235-(1974)
【非特許文献3】Journal of Heterocyclic Chemistry, Vol.26, 1989, 817-
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の課題は、新規なジシアノピラジン化合物および発光材料を提供すること、ならびに前記発光材料を用いた発光素子を提供することである。
【0015】
また、2,5−ジシアノ−3,6−ジブロモピラジンなどのハロゲノ基を有するジシアノピラジン骨格を含む化合物に電子供与基と成り得る化合物を反応させると、極めて高い収率で電子供与基を有するジシアノピラジン骨格を含む化合物を得ることができることを見出している。
【0016】
【化11】
[この文献は図面を表示できません]
【0017】
【化12】
[この文献は図面を表示できません]
【0018】
本発明の課題は、電子供与基を有するジシアノピラジン骨格を含む化合物の製造方法などに用いられる、2,5−ジシアノ−3,6−ジハロゲノピラジンを、安価な出発原料から少ない反応工程で且つ高い収率で製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するために鋭意検討した結果、以下の形態を包含する本発明を完成するに至った。
【0020】
すなわち、本発明は以下の形態を包含する。
〔1〕 式(I)または式(II)で表される化合物。
【化13】
[この文献は図面を表示できません]
〔式(I)中の、R3は電子供与基を示し、R4は水素原子、置換若しくは無置換のアリール基または電子供与基を示し、L3は置換若しくは無置換のヘテロアリーレン基または置換若しくは無置換のアリーレン基を示し、L4は単結合、置換若しくは無置換のヘテロアリーレン基または置換若しくは無置換のアリーレン基を示す。L3とL4が繋がってそれらが結合する炭素原子とともに環を形成してもよい。〕
【化14】
[この文献は図面を表示できません]
〔式(II)中の、R5は電子供与基を示し、R6は水素原子、置換若しくは無置換のアリール基または電子供与基を示し、L5は置換若しくは無置換のヘテロアリーレン基または置換若しくは無置換のアリーレン基を示し、L6は単結合、置換若しくは無置換のヘテロアリーレン基または置換若しくは無置換のアリーレン基を示す。〕
【0021】
〔2〕 R3およびR5が式(d1)〜式(d7)で表される基からなる群から選ばれる少なくともひとつである〔1〕に記載の化合物。
【化15】
[この文献は図面を表示できません]
【化16】
[この文献は図面を表示できません]
【化17】
[この文献は図面を表示できません]
【化18】
[この文献は図面を表示できません]
【化19】
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【化20】
[この文献は図面を表示できません]
【化21】
[この文献は図面を表示できません]
(式(d1)〜(d7)中、Rは置換基を示し、aおよびbはそれぞれ独立に括弧内のRの数を示し且つ0〜4のいずれかの整数である。cは括弧内のRの数を示し且つ0〜2のいずれかの整数である。dは括弧内のRの数を示し且つ0〜5のいずれかの整数である。Rが複数置換するときそれらは同じ置換基であっても異なる置換基であってもよい。隣接する2つのRが繋がって前記Rが結合する炭素原子とともに環を成してもよい。*は結合の手を示す。)
【0022】
〔3〕 R4およびR6が式(d1)〜式(d7)で表される基からなる群から選ばれる少なくともひとつである〔1〕または〔2〕に記載の化合物。
〔4〕 L3、L4、L5およびL6がそれぞれ独立に置換若しくは無置換のアリーレン基である〔1〕、〔2〕または〔3〕に記載の化合物。
〔5〕 前記〔1〕〜〔4〕のいずれかひとつに記載の化合物を含む発光材料。
〔6〕 前記〔5〕に記載の発光材料を含有する発光素子。
【0023】
〔7〕(2E)−2,3−ジアミノ−3−(置換スルファニル)−2−プロぺンニトリルを酸素の存在下、溶媒中、酸性条件で反応させて、2,5−ジシアノ−3,6−ジアミノピラジンを得、
2,5−ジシアノ−3,6−ジアミノピラジン(式(10))を、亜硝酸または亜硝酸塩の存在下、溶媒中でハロゲン化反応させることを含む、
2,5−ジシアノ−3,6−ジハロゲノピラジン(式(11))の製造方法。
【化22】
[この文献は図面を表示できません]
【化23】
[この文献は図面を表示できません]
式(11)中のXはハロゲン原子を示す。
【0024】
〔8〕(2E)−2,3−ジアミノ−3−(置換スルファニル)−2−プロぺンニトリルが、式(9)で表される化合物である、〔7〕に記載の製造方法。
【化24】
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(式(9)中、Rは、置換若しくは非置換アリール基、置換若しくは非置換アルキル基、置換若しくは非置換アラルキル基、または置換若しくは非置換アルケニル基を示す。)
【0025】
〔9〕2,5−ジシアノ−3,6−ジアミノピラジンを、亜硝酸または亜硝酸塩の存在下、溶媒中でハロゲン化反応させることを含む、2,5−ジシアノ−3,6−ジハロゲノピラジンの製造方法。
〔10〕ハロゲン化反応時の温度を30〜60℃にすることをさらに含む、〔7〕〜〔9〕のいずれかひとつに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係るジシアノピラジン化合物は、発光材料として有用である。本発明に係る発光材料には、遅延蛍光を放射するものがある。本発明に係る発光材料を含有する発光素子は、優れた発光効率を実現し得る。
【0027】
また、本発明の製造方法によれば、2,5−ジシアノ−3,6−ジハロゲノピラジンを、安価な出発原料から少ない反応工程で且つ高い収率で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】Ac−CNPトルエン溶液A、Ac−CNP有機フォトルミネッセンス素子BおよびAc−CNP有機フォトルミネッセンス素子Cの吸収発光スペクトルを示す図である。
図2】Ac−CNP有機フォトルミネッセンス素子Cの過渡減衰曲線を示す図である。
図3】Ac−CNP有機エレクトロルミネッセンス素子の膜構成を示す図である。
図4】Ac−CNP有機エレクトロルミネッセンス素子の発光スペクトルを示す図である。
図5】Ac−CNP有機エレクトロルミネッセンス素子の電圧−電流密度−発光強度特性を示す図である。
図6】Ac−CNP有機エレクトロルミネッセンス素子の電流密度−外部量子効率特性を示す図である。
図7】Px−CNP有機フォトルミネッセンス素子Cの過渡減衰曲線を示す図である。
図8】Px−CNP有機エレクトロルミネッセンス素子の膜構成を示す図である。
図9】Px−CNP有機エレクトロルミネッセンス素子の発光スペクトルを示す図である。
図10】Px−CNP有機エレクトロルミネッセンス素子の電圧−電流密度−発光強度特性を示す図である。
図11】Px−CNP有機エレクトロルミネッセンス素子の電流密度−外部量子効率特性を示す図である。
図12】BCz−CNP有機フォトルミネッセンス素子Cの過渡減衰曲線を示す図である。
図13】BCz−CNP有機エレクトロルミネッセンス素子の膜構成を示す図である。
図14】PCz−DCP有機フォトルミネッセンス素子BおよびPCz−DCP有機フォトルミネッセンス素子Cの吸収発光スペクトルを示す図である。
図15】PCz−DCP有機フォトルミネッセンス素子Cの過渡減衰曲線を示す図である。
図16】PCz−DCP有機エレクトロルミネッセンス素子(Device B)の膜構成を示す図である。
図17】PCz−DCP有機エレクトロルミネッセンス素子(Device A)の膜構成を示す図である。
図18】PCz−DCP有機エレクトロルミネッセンス素子(Device BおよびDevice A)の発光スペクトルを示す図である。
図19】PCz−DCP有機エレクトロルミネッセンス素子(Device BおよびDevice A)の電圧−電流密度−発光強度特性を示す図である。
図20】PCz−DCP有機エレクトロルミネッセンス素子(Device BおよびDevice A)の電流密度−外部量子効率特性を示す図である。
図21】PAc−DCP有機フォトルミネッセンス素子Cの過渡減衰曲線を示す図である。
図22】PAc−DCP有機エレクトロルミネッセンス素子(Device B)の膜構成を示す図である。
図23】PAc−DCP有機エレクトロルミネッセンス素子(Device A)の膜構成を示す図である。
図24】PAc−DCP有機エレクトロルミネッセンス素子(Device BおよびDevice A)の発光スペクトルを示す図である。
図25】PAc−DCP有機エレクトロルミネッセンス素子(Device BおよびDevice A)の電圧−電流密度−発光強度特性を示す図である。
図26】PAc−DCP有機エレクトロルミネッセンス素子(Device BおよびDevice A)の電流密度−外部量子効率特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明のジシアノピラジン化合物は、式(I)または式(II)で表される化合物である。
【化25】
[この文献は図面を表示できません]
〔式(I)中の、R3は電子供与基を示し、R4は水素原子、置換若しくは無置換のアリール基または電子供与基を示し、L3は置換若しくは無置換のヘテロアリーレン基または置換若しくは無置換のアリーレン基を示し、L4は単結合、置換若しくは無置換のヘテロアリーレン基または置換若しくは無置換のアリーレン基を示す。L3とL4が繋がってそれらが結合する炭素原子とともに環を形成してもよい。〕
【化26】
[この文献は図面を表示できません]
〔式(II)中の、R5は電子供与基を示し、R6は水素原子、置換若しくは無置換のアリール基または電子供与基を示し、L5は置換若しくは無置換のヘテロアリーレン基または置換若しくは無置換のアリーレン基を示し、L6は単結合、置換若しくは無置換のヘテロアリーレン基または置換若しくは無置換のアリーレン基を示す。〕
【0030】
本発明において、用語「無置換(unsubstituted)」は、母核となる基のみであることを意味する。母核となる基の名称のみで記載しているときは、別段の断りがない限り「無置換」の意味である。
一方、用語「置換(substituted)」は、母核となる基のいずれかの水素原子が、母核と同一または異なる構造の基で置換されていることを意味する。従って、「置換基」は、母核となる基に結合した他の基である。置換基は1個であってもよいし、2個以上であってもよい。2個以上の置換基は同一であってもよいし、異なるものであってもよい。
【0031】
「置換基」は化学的に許容され、本発明の効果を有する限りにおいて特に制限されない。
「置換基」となり得る基の具体例としては、以下の基を挙げることができる。
フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、イオド基などのハロゲノ基;
メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基などのC1〜6アルキル基;
ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−メチル−2−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、1−メチル−2−ブテニル基、2−メチル−2−ブテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、4−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基などのC2〜6アルケニル基;
【0032】
エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、1−メチル−2−プロピニル基、2−メチル−3−ブチニル基、1−ペンチニル基、2−ペンチニル基、3−ペンチニル基、4−ペンチニル基、1−メチル−2−ブチニル基、2−メチル−3−ペンチニル基、1−ヘキシニル基、1,1−ジメチル−2−ブチニル基などのC2〜6アルキニル基;
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、キュバニル基などのC3〜8シクロアルキル基;
2−シクロプロペニル基、2−シクロペンテニル基、3−シクロヘキセニル基、4−シクロオクテニル基などのC3〜8シクロアルケニル基;
フェニル基、ナフチル基などのC6〜10アリール基;
ピロリル基、フリル基、チエニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、トリアゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、テトラゾリル基などの5員環のヘテロアリール基;
ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基などの6員環のヘテロアリール基;
インドリル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリニル基などの縮合環のヘテロアリール基;
オキシラニル基、テトラヒドロフリル基、ジオキソラニル基、ジオキラニル基などの環状エーテル基;
アジリジニル基、ピロリジニル基、ピペリジル基、ピペラジニル基、モルホリニル基などの環状アミノ基;
【0033】
水酸基; オキソ基;
メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、i−ブトキシ基、t−ブトキシ基などのC1〜6アルコキシ基;
ビニルオキシ基、アリルオキシ基、プロペニルオキシ基、ブテニルオキシ基などのC2〜6アルケニルオキシ基;
エチニルオキシ基、プロパルギルオキシ基などのC2〜6アルキニルオキシ基;
フェノキシ基、ナフトキシ基などのC6〜10アリールオキシ基;
チアゾリルオキシ基、ピリジルオキシ基などの5〜6員環のヘテロアリールオキシ基;
【0034】
カルボキシル基;
ホルミル基; アセチル基、プロピオニル基などのC1〜6アルキルカルボニル基;
ホルミルオキシ基; アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基などのC1〜6アルキルカルボニルオキシ基;
メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、i−プロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基などのC1〜6アルコキシカルボニル基;
【0035】
クロロメチル基、クロロエチル基、トリフルオロメチル基、1,2−ジクロロ−n−プロピル基、1−フルオロ−n−ブチル基、パーフルオロ−n−ペンチル基などのC1〜6ハロアルキル基;
2−クロロ−1−プロペニル基、2−フルオロ−1−ブテニル基などのC2〜6ハロアルケニル基;
4,4−ジクロロ−1−ブチニル基、4−フルオロ−1−ペンチニル基、5−ブロモ−2−ペンチニル基などのC2〜6ハロアルキニル基;
3,3−ジフルオロシクロブチル基などのC3〜6ハロシクロアルキル基;
2−クロロ−n−プロポキシ基、2,3−ジクロロブトキシ基、トリフルオロメトキシ基、2,2,2−トリフルオロエトキシ基などのC1〜6ハロアルコキシ基;
2−クロロプロペニルオキシ基、3−ブロモブテニルオキシ基などのC2〜6ハロアルケニルオキシ基;
クロロアセチル基、トリフルオロアセチル基、トリクロロアセチル基などのC1〜6ハロアルキルカルボニル基;
【0036】
シアノ基; ニトロ基; アミノ基;
メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基などのC1〜6アルキルアミノ基;
アニリノ基、ナフチルアミノ基などのC6〜10アリールアミノ基;
ホルミルアミノ基; アセチルアミノ基、プロパノイルアミノ基、ブチリルアミノ基、i−プロピルカルボニルアミノ基などのC1〜6アルキルカルボニルアミノ基;
メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、n−プロポキシカルボニルアミノ基、i−プロポキシカルボニルアミノ基などのC1〜6アルコキシカルボニルアミノ基;
S,S−ジメチルスルホキシイミノ基などのC1〜6アルキルスルホキシイミノ基;
【0037】
アミノカルボニル基;
メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、エチルアミノカルボニル基、i−プロピルアミノカルボニル基などのC1〜6アルキルアミノカルボニル基;
イミノメチル基、(1−イミノ)エチル基、(1−イミノ)−n−プロピル基などのイミノC1〜6アルキル基;
ヒドロキシイミノメチル基、(1−ヒドロキシイミノ)エチル基、(1−ヒドロキシイミノ)プロピル基などのヒドロキシイミノC1〜6アルキル基;
メトキシイミノメチル基、(1−メトキシイミノ)エチル基などのC1〜6アルコキシイミノC1〜6アルキル基;
【0038】
メルカプト基;
メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、i−プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、i−ブチルチオ基、s−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基などのC1〜6アルキルチオ基;
トリフルオロメチルチオ基、2,2,2−トリフルオロエチルチオ基などのC1〜6ハロアルキルチオ基;
ビニルチオ基、アリルチオ基などのC2〜6アルケニルチオ基;
エチニルチオ基、プロパルギルチオ基などのC2〜6アルキニルチオ基;
メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、t−ブチルスルフィニル基などのC1〜6アルキルスルフィニル基;
トリフルオロメチルスルフィニル基、2,2,2−トリフルオロエチルスルフィニル基などのC1〜6ハロアルキルスルフィニル基;
アリルスルフィニル基などのC2〜6アルケニルスルフィニル基;
プロパルギルスルフィニル基などのC2〜6アルキニルスルフィニル基;
メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、t−ブチルスルホニル基などのC1〜6アルキルスルホニル基;
トリフルオロメチルスルホニル基、2,2,2−トリフルオロエチルスルホニル基などのC1〜6ハロアルキルスルホニル基;
アリルスルホニル基などのC2〜6アルケニルスルホニル基;
プロパルギルスルホニル基などのC2〜6アルキニルスルホニル基;
【0039】
トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基などのトリC1〜6アルキルシリル基;
トリフェニルシリル基などのトリC6〜10アリールシリル基;
また、これらの「置換基」は、前記置換基中のいずれかの水素原子が、異なる構造の基で置換されていてもよい。
【0040】
「C1〜6」などの用語は、母核となる基の炭素原子数が1〜6個などであることを表している。この炭素原子数には、置換基の中に在る炭素原子の数を含まない。例えば、エトキシブチル基は、母核となる基がブチル基であり、置換基がエトキシ基であるので、C2アルコキシC4アルキル基に分類する。
【0041】
式(I)または式(II)中のR3、R4、R5またはR6における電子供与基は、ピラジン環に電子を供与する性質を有する原子または原子団である。前記電子供与基はハメットのσp値が0未満であることが好ましい。ハメットのσp値は、パラ置換ベンゼン誘導体の反応速度または平衡に及ぼす置換基の影響を定量化した。ハメットのσp値は、具体的には式(h1)または(h2)のいずれか一つで定義される値である。
log(k/k0) = ρ・σp (h1)
log(K/K0) = ρ・σp (h2)
kは無置換ベンゼン誘導体の反応速度定数、k0は置換ベンゼン誘導体の反応速度定数、Kは無置換ベンゼン誘導体の平衡定数、K0は置換ベンゼン誘導体の平衡定数、ρは反応の種類と条件によって決まる反応定数である。ハメットのσp値に関する詳細な説明および各置換基の値については、J.A.Dean編"Lange's Handbook of Chemistry 第13版"、1985年、3-132〜3-137頁、McGrow-Hillを参照することができる。
【0042】
3、R4、R5またはR6における電子供与基としては、例えば、ヘテロ原子を含有し且つハメットのσp値が0未満であるものを挙げることができる。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ケイ素原子、リン原子などを挙げることができる。好ましい電子供与基は、ヘテロ原子に結合の手を有する基、またはヘテロ原子の少なくとも1つがsp2炭素原子に結合して前記sp2炭素原子を含むπ共役がピラジン環まで広がる構造を有する基である。
【0043】
ヘテロ原子に結合の手を有する基としては、置換若しくは無置換のジアリールアミノ基、置換若しくは無置換のジアルキルアミノ基、置換若しくは無置換のアルキルアリールアミノ基、置換若しくは無置換の環状アミノ基、置換若しくは無置換のアリールオキシ基、置換若しくは無置換のアルキルオキシ基、置換若しくは無置換のアリールチオ基、置換若しくは無置換のアルキルチオ基、置換若しくは無置換のトリアリールシリル基、置換若しくは無置換のアルキルジアリールシリル基、置換若しくは無置換のジアルキルアリールシリル基、置換若しくは無置換のトリアルキルシリル基、置換若しくは無置換の環状シリル基、置換若しくは無置換のジアリールホスフィノ基、置換若しくは無置換のジアルキルホスフィノ基、置換若しくは無置換の環状ホスフィノ基などを挙げることができる。
【0044】
ヘテロ原子の少なくとも1つがsp2炭素原子に結合して前記sp2炭素原子を含むπ共役がピラジン環まで広がる構造を有する基としては、ヘテロ原子に結合の手を有する基により置換されたアリール基、ヘテロ原子に結合の手を有する基により置換されたヘテロアリール基、ヘテロ原子がsp2炭素原子に結合している構造を有する基により置換されたアリール基であって前記sp2炭素原子を含むπ共役が前記アリール基を介してピラジン環まで広がる構造を有する基、ヘテロ原子がsp2炭素原子に結合している構造を有する基により置換されたヘテロアリール基であって前記sp2炭素原子を含むπ共役が前記ヘテロアリール基を介してピラジン環まで広がる構造を有する基、ヘテロ原子がsp2炭素原子に結合している構造を有する基により置換されたアルケニル基であって前記sp2炭素原子を含むπ共役が前記アルケニル基を介してピラジン環まで広がる構造を有する基、ヘテロ原子がsp2炭素原子に結合している構造を有する基により置換されたアルキニル基であって前記sp2炭素原子を含むπ共役が前記アルキニル基を介してピラジン環まで広がる構造を有する基などを挙げることができる。
【0045】
3、R4、R5またはR6における電子供与基として、好ましいものは、ヘテロ原子に結合の手を有する基、ヘテロ原子に結合の手を有する基により置換されたアリール基、ヘテロ原子に結合の手を有する基により置換されたヘテロアリール基、ヘテロ原子がsp2炭素原子に結合している構造を有する基により置換されたアリール基であって前記sp2炭素原子を含むπ共役が前記アリール基を介してピラジン環まで広がる構造を有する基、またはヘテロ原子がsp2炭素原子に結合している構造を有する基により置換されたヘテロアリール基であって前記sp2炭素原子を含むπ共役が前記ヘテロアリール基を介してピラジン環まで広がる構造を有する基であり、より好ましいものは、ヘテロ原子に結合の手を有する基、ヘテロ原子に結合の手を有する基により置換されたアリール基、またはヘテロ原子がsp2炭素原子に結合している構造を有する基により置換されたアリール基であって前記sp2炭素原子を含むπ共役が前記アリール基を介してピラジン環まで広がる構造を有する基である。
【0046】
電子供与基の構成要素であるアリール基は、単環または多環のいずれでもよい。多環アリール基は、少なくとも一つの環が芳香環であれば、残りの環が飽和環、不飽和環または芳香環のいずれであってもよい。無置換アリール基を構成する炭素原子の数は、6〜40が好ましく、6〜20がより好ましく、6〜14がさらに好ましい。
無置換アリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、アズレニル基、インダニル基、テトラリニル基などを挙げることができる。
置換アリール基としては、4−フルオロフェニル基、4−クロロフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基、3,4−ジクロロフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、2,6−ジフルオロフェニル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、3,4−ジメトキシフェニル基、3,4−メチレンジオキシフェニル基、4−トリフルオロメトキシフェニル基、4−メトキシ−1−ナフチル基などを挙げることができる。
【0047】
電子供与基の構成要素であるヘテロアリール基は、単環または多環のいずれでもよい。多環ヘテロアリール基は、少なくとも一つの環がヘテロ芳香環であれば、残りの環が飽和環、不飽和環または芳香環のいずれであってもよい。無置換ヘテロアリール基を構成する原子の数は、5〜40が好ましく、5〜20がより好ましく、5〜14がさらに好ましい。
無置換ヘテロアリール基としては、ピロリル基、フリル基、チエニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、トリアゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、テトラゾリル基などの5員環のヘテロアリール基;ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基などの6員環のヘテロアリール基;インドリル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリニル基などの縮合環のヘテロアリール基;などを挙げることができる。
【0048】
電子供与基の構成要素であるアルケニル基は、分子中に炭素−炭素二重結合を少なくとも一つ有する。アルケニル基としては、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−メチル−2−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、1−メチル−2−ブテニル基、2−メチル−2−ブテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、4−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基などを挙げることができる。
【0049】
電子供与基の構成要素であるアルキニル基は、分子中に炭素−炭素三重結合を少なくとも一つ有する。アルキニル基としては、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、1−メチル−2−プロピニル基、2−メチル−3−ブチニル基、1−ペンチニル基、2−ペンチニル基、3−ペンチニル基、4−ペンチニル基、1−メチル−2−ブチニル基、2−メチル−3−ペンチニル基、1−ヘキシニル基、1,1−ジメチル−2−ブチニル基などを挙げることができる。
【0050】
3、R4、R5またはR6における電子供与基は、式(d1)〜式(d7)で表される基からなる群から選ばれる少なくともひとつであることが好ましく、式(d2)、式(d3)、及び式(d6)で表される基からなる群から選ばれる少なくともひとつであることがより好ましい。
【化27】
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【化28】
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【化29】
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【化30】
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【化31】
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【化32】
[この文献は図面を表示できません]
【化33】
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(式(d1)〜(d7)中、Rは置換基を示し、aおよびbはそれぞれ独立に括弧内のRの数を示し且つ0〜4のいずれかの整数であり、0または1であることが好ましく、0であることがより好ましい。cは括弧内のRの数を示し且つ0〜2のいずれかの整数であり、0であることが好ましい。dは括弧内のRの数を示し且つ0〜5のいずれかの整数であり、0であることが好ましい。Rが複数置換するときそれらは同じ置換基であっても異なる置換基であってもよい。隣接する2つのRが繋がって前記Rが結合する炭素原子とともに環を成してもよい。*は結合の手を示す。)
【0051】
Rとしては、ヒドロキシ基、ハロゲノ基、C1〜20アルキル基、C1〜20アルコキシ基、C1〜20アルキルチオ基、C1〜20アルキル置換アミノ基、C6〜40アリール置換アミノ基、C6〜40アリール基、5〜40員ヘテロアリール基、C2〜10アルケニル基、C2〜10アルキニル基、C2〜20アルキルアミド基、C6〜20アリールアミド基、トリC1〜10アルキルシリル基が好ましく、C1〜20アルキル基、C1〜20アルコキシ基、C1〜20アルキルチオ基、C1〜20アルキル置換アミノ基、C6〜40アリール置換アミノ基、C6〜40アリール基、5〜40員ヘテロアリール基が好ましく、C6〜40アリール基がより好ましい。
【0052】
隣接する2つのRが繋がって形成される環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、イミダゾリン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、シクロヘキサジエン環、シクロヘキセン環、シクロペンテン環、シクロヘプタトリエン環、シクロヘプタジエン環、シクロヘプテン環などを挙げることができる。
【0053】
4またはR6における置換若しくは無置換のアリール基は、単環または多環のいずれでもよい。多環アリール基は、少なくとも一つの環が芳香環であれば、残りの環が飽和環、不飽和環または芳香環のいずれであってもよい。無置換アリール基を構成する炭素原子の数は、6〜40が好ましく、6〜20がより好ましく、6〜14がさらに好ましい。
無置換アリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、アズレニル基、インダニル基、テトラリニル基などを挙げることができる。
置換アリール基としては、4−フルオロフェニル基、4−クロロフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基、3,4−ジクロロフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、2,6−ジフルオロフェニル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、3,4−ジメトキシフェニル基、3,4−メチレンジオキシフェニル基、4−トリフルオロメトキシフェニル基、4−メトキシ−1−ナフチル基などを挙げることができる。
【0054】
3、L4、L5またはL6における置換若しくは無置換のアリーレン基は、単環または多環のいずれでもよい。多環アリーレン基は、少なくとも一つの環が芳香環であれば、残りの環が飽和環、不飽和環または芳香環のいずれであってもよい。無置換アリーレン基を構成する炭素原子の数は6〜40が好ましく、6〜20がより好ましく、6〜14がさらに好ましい。
アリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基、アズレニレン基、インダニレン基、テトラリニレン基などを挙げることができ、このうちフェニレン基が特に好ましい。
3、L4、L5またはL6における置換若しくは無置換のヘテロアリーレン基は単環または多環のいずれでもよい。多環ヘテロアリーレン基は、少なくとも一つの環がヘテロ芳香環であれば、残りの環が飽和環、不飽和環または芳香環のいずれであってもよい。無置換ヘテロアリーレン基を構成する原子の数は5〜40が好ましく、5〜20がより好ましく、5〜14がさらに好ましい。
ヘテロアリーレン基としては、ピロリレン基、フリレン基、チエニレン基、イミダゾリレン基、ピラゾリレン基、オキサゾリレン基、イソオキサゾリレン基、チアゾリレン基、イソチアゾリレン基、トリアゾリレン基、オキサジアゾリレン基、チアジアゾリレン基、テトラゾリレン基などの5員環のヘテロアリーレン基;ピリジレン基、ピラジニレン基、ピリミジニレン基、ピリダジニレン基、トリアジニレン基などの6員環のヘテロアリーレン基;インドリレン基、ベンゾフリレン基、ベンゾチエニレン基、ベンゾイミダゾリレン基、ベンゾオキサゾリレン基、ベンゾチアゾリレン基、キノリレン基、イソキノリレン基、キノキサリニレン基などの縮合環のヘテロアリーレン基;などを挙げることができる。
【0055】
3とL4が繋がって形成される環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、イミダゾリン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、シクロヘキサジエン環、シクロヘキセン環、シクロペンテン環、シクロヘプタトリエン環、シクロヘプタジエン環、シクロヘプテン環などを挙げることができる。
【0056】
本発明のジシアノピラジン化合物の具体例としては、次のようなものを挙げることができる。但し、これらは単なる例示であり、本発明はこれら例示した化合物(I-1)〜(I-13)および(II-1)〜(II-9)に限定されない。
【0057】
【化34】
[この文献は図面を表示できません]
【0058】
【化35】
[この文献は図面を表示できません]
【0059】
【化36】
[この文献は図面を表示できません]
【0060】
【化37】
[この文献は図面を表示できません]
【0061】
【化38】
[この文献は図面を表示できません]
【0062】
【化39】
[この文献は図面を表示できません]
【0063】
【化40】
[この文献は図面を表示できません]
【0064】
【化41】
[この文献は図面を表示できません]
【0065】
【化42】
[この文献は図面を表示できません]
【0066】
【化43】
[この文献は図面を表示できません]
【0067】
【化44】
[この文献は図面を表示できません]
【0068】
【化45】
[この文献は図面を表示できません]
【0069】
【化46】
[この文献は図面を表示できません]
【0070】
【化47】
[この文献は図面を表示できません]
【0071】
【化48】
[この文献は図面を表示できません]
【0072】
【化49】
[この文献は図面を表示できません]
【0073】
【化50】
[この文献は図面を表示できません]
【0074】
【化51】
[この文献は図面を表示できません]
【0075】
【化52】
[この文献は図面を表示できません]
【0076】
【化53】
[この文献は図面を表示できません]
【0077】
【化54】
[この文献は図面を表示できません]
【0078】
【化55】
[この文献は図面を表示できません]
【0079】
本発明のジシアノピラジン化合物は、公知の合成反応(例えば、カップリング反応、置換反応など)を組み合わせて行うことによって得ることができる。
【0080】
例えば、式(I)で表される化合物は、下式のように、ジアミノマレオニトリルに、ジアセチル化合物を反応させることによって得ることができる。
【0081】
(例I-1)
【化56】
[この文献は図面を表示できません]
ジアミノマレオニトリル(0.88g、8.2mmol)、1,2−ビス(4−ブロモフェニル)エタン−1,2−ジオン(3.0g、8.2mmol)および塩酸(36%、1.5g)を、エタノール60ml中にて、60℃、3時間、窒素雰囲気中で反応させた。室温に冷やした後、ジクロロメタン100mlおよび水100mlで抽出した。分離された有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、次いで濾過および蒸発させて、藤色固体の5,6−ビス(4−ブロモフェニル)ピラジン−2,3−ジカルボニトリル(3.2g、収率90%)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3, δ): 7.58 (dd, 4H), 7.46 (dd, 4H); MS (MALDI-TOF) m/z: [M]+ calcd for C18H8Br2N4, 437.91; found, 437.70.
【0082】
電子供与基などの置換基はベンゼン環上のハロゲノ基の置換反応などによって導入することができる。
【0083】
(例I-2)
【化57】
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5,6−ビス(4−ブロモフェニル)ピラジン−2,3−ジカルボニトリル(1.0g,2.3mmol)、9,9−ジメチル−9,10−ジヒドロアクリジン(1.05g,5.1mmol)、ビス(トリ−t−ブチルホスフィン)パラジウム(0)(0.012g,0.023mmol)および炭酸カリウム(0.95g,6.9mmol)をトルエン30ml中で撹拌しながら窒素雰囲気下72時間還流させた。室温に冷やし、セライト濾過し、溶媒を減圧下で除去した。シリカゲル−カラムクロマトグラフィーで精製して、橙色固体の5,6−ビス(4−(9,9−ジメチル−9,10−ジヒドロアクリジン−10−イル)−フェニル)ピラジン−2,3−ジカルボニトリル(0.60g,40%)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3, δ): 7.87 (dt, J = 8.5 Hz, 2 Hz, 4H), 7.47-7.43 (m, 8H), 6.97-6.90 (m, 8H), 6.35 (dd, J = 7.6 Hz, 1.3 Hz, 4H), 1.66 (s, 12H); 13C NMR (125 MHz, CDCl3, δ): 154.77, 144.69, 140.35, 134.21, 132.3, 131.42, 130.84, 130.16, 126.48, 125.28, 121.48, 114.64, 113.04, 36.18, 30.66; MS (MALDI-TOF) m/z: [M]+ calcd for C48H36N6,696.30; found, 696.49. Anal. calcd for C48H36N6: C, 82.73; H, 5.21; N, 12.06; found: C, 82.21; H, 5.16; N, 11.85.
【0084】
(例I-3)
【化58】
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5,6−ビス(4−ブロモフェニル)ピラジン−2,3−ジカルボニトリル(1.0g,2.3mmol)、10H−フェノキサジン(0.92g,5.1mmol)、ビス(トリ−t−ブチルホスフィン)パラジウム(0)(0.012g,0.023mmol)および炭酸カリウム(0.95g,6.9mmol)をトルエン30ml中で撹拌しながら窒素雰囲気下72時間還流させた。室温に冷やし、セライト濾過し、溶媒を減圧下で除去した。シリカゲル−カラムクロマトグラフィーで精製して、赤色固体の5,6−ビス(4−(10H−フェノキサジン−10−イル)−フェニル)ピラジン−2,3−ジカルボニトリル(1.03g,70%)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3, δ): 7.82 (dt, J = 8.5 Hz, 2 Hz, 4H), 7.45 (d, J = 8.5 Hz, 4H), 6.75-7.71 (m, 4H), 6.70 (td, J = 7.5 Hz, 1 Hz, 4H), 6.59 (td, J = 8.0 Hz, 1.5 Hz, 4H), 5.97 (dd, J = 8.0 Hz, 1Hz, 4H); 13C NMR (125 MHz, CDCl3, δ): 154.52, 144.15, 140.34, 134.21, 133.43, 132.48, 131.33, 123.38, 122.15, 115.91, 113.24, 122.85; MS (MALDI-TOF) m/z: [M]+ calcd for C42H24N6O2, 644.21; found, 644.43. Anal. calcd for C42H24N6O2: C, 78.25; H, 3.75; N, 13.04; O, 4.96; found: C, 78.33; H, 3.65; N, 13.13.
【0085】
(例I-4)
【化59】
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フェニルヒドラジン(10.0g,92.5mmol)、α−テトラロン(13.5g,92.5mmol)およびエタノール(100mL)を窒素雰囲気下、室温で撹拌し、次いで塩酸(35%,15mL)を加えた。得られた混合物を窒素雰囲気下60℃で3時間撹拌した。室温に冷まし、固形分を濾過した。白色固体の6,11−ジヒドロ−5H−ベンゾ[a]カルバゾール(18.2g,90%)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3): 8.20 (br s, 1H), 7.56 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.39 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.34 (d, J = 7.5 Hz, 1H), 7.28-7.25 (m, 2H), 7.20-7.15 (m, 2H), 7.14 (td, J = 8.0 Hz, 1.0 Hz, 1H), 3.09-2.97 (m, 4H). MS (MALDI-TOF): m/z 219.32 [M]+; calcd 219.10.
【0086】
6,11−ジヒドロ−5H−ベンゾ[a]カルバゾール(10.0g,45.6mmol)およびp−キシレン(100mL)を窒素雰囲気下、室温で撹拌した。これにカーボンに担持されたパラジウム(10wt%,0.49g,4.56mmol)を徐々に加えた。得られた混合物を窒素雰囲気下で24時間還流させた。室温に冷まし、セライト濾過し、溶媒を減圧下で除去した。メタノールで洗浄し、白色固体の11H−ベンゾ[a]カルバゾール(8.92g,90%)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3): 8.81 (br s, 1H), 8.16 (t, J = 8.5 Hz, 3H), 8.03 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.68 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.63 (td, J = 6.7 Hz, 1.25 Hz, 1H), 7.56 (td, J = 8.0 Hz, 1.25 Hz, 1H), 7.46 (td, J = 7.2 Hz, 1.25 Hz, 1.1H), 7.33 (td, J = 8.0 Hz, 1.25 Hz, 0.8H). MS (MALDI-TOF): m/z 217.57 [M]+; calcd 217.09.
【0087】
【化60】
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5,6−ビス(4−ブロモフェニル)ピラジン−2,3−ジカルボニトリル(1.0g,2.3mmol)、11H−ベンゾ[a]カルバゾール(1.11g,5.1mmol)、ビス(トリ−t−ブチルホスフィン)パラジウム(0)(0.012g,0.023mmol)および炭酸カリウム(0.95g,6.9mmol)をトルエン30ml中で撹拌しながら窒素雰囲気下72時間還流させた。室温に冷やし、セライト濾過し、溶媒を減圧下で除去した。シリカゲル−カラムクロマトグラフィーで精製して、橙色固体の5,6−ビス(4−(11H−ベンゾ[a]カルバゾール−11−イル)−フェニル)ピラジン−2,3−ジカルボニトリル(0.50g,31%)を得た。
Anal. calcd for C48H36N6: C, 84.25; H, 3.96; N, 11.79; found: C, 84.21; H, 3.96; N, 11.07.
【0088】
(例I-5)
式(I)で表される化合物は、下式のように、ジアミノマレオニトリルに、フェナントレン−9,10−ジオン化合物を反応させることによって得ることができる。
【0089】
【化61】
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【化62】
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【0090】
電子供与基などの置換基はベンゼン環上のハロゲノ基の置換反応などによって導入することができる。
【0091】
(例I-6)
【化63】
[この文献は図面を表示できません]
【0092】
(例I-7)
【化64】
[この文献は図面を表示できません]
【0093】
(例I-8)
【化65】
[この文献は図面を表示できません]
【0094】
(例II-1)
式(II)で表される化合物は、下式のように、2,5−ジシアノ−3,6−ジブロモピラジンに、電子供与基を有する化合物を反応させることによって得ることができる。2,5−ジシアノ−3,6−ジブロモピラジンは、例えば、非特許文献1に記載の方法などで得ることができる。
【0095】
【化66】
[この文献は図面を表示できません]
【0096】
(例II-2)
【化67】
[この文献は図面を表示できません]
【0097】
これらの化合物の精製は、カラムクロマトグラフによる精製、シリカゲル、活性炭、活性白土などによる吸着精製、溶媒による抽出法、再結晶や晶析法などによって行うことができる。化合物の構造は、IR、NMR、Massなどのスペクトルを既知の構造異性体と比較することにより決定することができる。
【0098】
本発明の2,5−ジシアノ−3,6−ジハロゲノピラジンの製造方法は、
(第一工程) (2E)−2,3−ジアミノ−3−(置換スルファニル)−2−プロぺンニトリルを酸素の存在下、溶媒中、酸性条件で反応させて、2,5−ジシアノ−3,6−ジアミノピラジンを得、
(第二工程) 2,5−ジシアノ−3,6−ジアミノピラジンを、亜硝酸または亜硝酸塩の存在下、溶媒中でハロゲン化反応させること
を含む。
【化68】
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式中のXはハロゲン原子を示し、Rは、置換若しくは非置換アリール基、置換若しくは非置換アルキル基、置換若しくは非置換アラルキル基、または置換若しくは非置換アルケニル基を示す。Rは、置換若しくは非置換アリール基であることが好ましく、フェニル基であることがより好ましい。
【0099】
原料となる(2E)−2,3−ジアミノ−3−(置換スルファニル)−2−プロぺンニトリル(例えば、式(9)で表される化合物)は、特許文献10などに記載の方法で容易に合成できる。(2E)−2,3−ジアミノ−3−(置換スルファニル)−2−プロぺンニトリルは酸性液中では、酸性塩の形態を成していることがある。
【0100】
よって、第一工程の反応は、(a)(2E)−2,3−ジアミノ−3−(置換スルファニル)−2−プロぺンニトリルを酸性溶液に溶解して反応させるか、または(b)(2E)−2,3−ジアミノ−3−(置換スルファニル)−2−プロぺンニトリルの酸性塩を溶媒に溶解して反応させる。
【0101】
(a)反応は、通常、有機溶媒中あるいは有機溶媒と水の混合系、pH調整用の酸または緩衝液の存在下必要により、空気を吹き込みながら、0〜30℃付近で、1時間から数時間、大気圧下で行うことができる。
【0102】
有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類、アセトニトリル等のニトリル類、クロロホルム、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素類、酢酸エチル等のエステル類、メタノール、エタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン(DME)等のエーテル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)を挙げることができる。これら有機溶媒は1種を単独でまたは2種以上を混ぜ合わせて使用することができる。
【0103】
酸性度の指標であるpHは、好ましくは1〜5、より好ましくは2〜4である。pH調整のため無機酸、有機酸等いかなる酸でも使用できるが、各種緩衝液を用いる方が好ましい。
また、第一工程の反応は酸化的二量化縮合反応と考えられる。従って、系を酸化的な雰囲気にすることが必要である。通常、大気の酸素と接触させるだけでよいが、積極的に空気、酸素等を反応系に吹き込んだ方が望ましい。
【0104】
(b)反応では、式(1)で表される化合物の酸性塩を溶かしうる溶媒、例えば、アセトニトリル、アルコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等のような極性溶媒もしくは、それらの混合溶媒を用いることができる。それらの溶媒は、水を含んでいても良い。反応は、室温で2〜12時間行うことができるが、(a)反応と同様に空気を吹き込むなどして反応系を酸化的雰囲気にすることが望ましい。
式(1)で表される化合物の酸性塩としては、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩等の無機酸塩、パラトルエンスルホン酸塩、シュウ酸塩、ピクリン酸塩、トリフルオル酢酸塩等の有機酸塩を挙げることができる。
【0105】
第一工程の反応によって、2,5−ジシアノ−3,6−ジアミノピラジンが生成する。第一工程の反応終了後は通常の後処理を行うことにより、2,5−ジシアノ−3,6−ジアミノピラジンを必要に応じて単離することができる。
【0106】
第二工程の反応に用いられる亜硝酸塩(nitrite)は、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウムなどの亜硝酸金属塩;亜硝酸n−ブチル、亜硝酸t−ブチル、亜硝酸イソブチル、亜硝酸アミル、亜硝酸イソアミル、亜硝酸ヘキシル、亜硝酸イソアミルなどの亜硝酸エステルなどを挙げることができる。精製の観点から、亜硝酸エステルが好ましい。一般に、亜硝酸または亜硝酸塩の作用によってアミノ基のジアゾ化が進行して、ジアゾニウム塩に成ると言われている。亜硝酸または亜硝酸塩の使用量は、特に制限されないが、2,5−ジシアノ−3,6−ジアミノピラジン1モルに対して、好ましくは2モル以上、より好ましくは2.5〜5モルである。
【0107】
ハロゲン化剤としては、テトラフルオロホウ酸、臭化銅(I)、臭化銅(II)、塩化銅(I)、塩化銅(II)、ヨウ化カリウムなどが挙げられる。ハロゲン化剤の使用量は、2,5−ジシアノ−3,6−ジアミノピラジン中のアミノ基2つを臭素化するのに十分な量であれば、特に限定されない。
【0108】
反応溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類、アセトニトリル等のニトリル類、クロロホルム、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素類、酢酸エチル等のエステル類、メタノール、エタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン(DME)等のエーテル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)が使用でき、また混合して使用してもよい。
【0109】
第二工程の反応においては、2,5−ジシアノ−3,6−ジアミノピラジンを、ハロゲン化剤と亜硝酸または亜硝酸塩とを含む液に添加してもよいし、2,5−ジシアノ−3,6−ジアミノピラジンとハロゲン化剤を含む液に亜硝酸または亜硝酸塩を添加してもよいし、または他の添加順序にしてもよいが、反応時の発熱および発泡を制御しやすいので、2,5−ジシアノ−3,6−ジアミノピラジンとハロゲン化剤を含む液に亜硝酸または亜硝酸塩を添加して反応させることが好ましい。添加は、急激な発熱または発泡を抑制するためにゆっくり行うことが好ましい。
【0110】
第二工程の反応時における温度は特に制限されないが、好ましくは10〜80℃、より好ましくは20〜70℃、さらに好ましくは30〜60℃である。第二工程の反応は、2,5−ジシアノ−3,6−ジアミノピラジンとハロゲン化剤と亜硝酸または亜硝酸塩とが一つの反応系内に共存する状態になったときに、具体的には添加終了時にほぼ完了している。反応完了後も高い温度の状態で保持していると生成物が分解することがある。よって、反応完了後、生成物の分解を抑制するために、室温以下に冷ますことが好ましい。
【0111】
第二工程の反応によって、2,5−ジシアノ−3,6−ジハロゲノピラジンが生成する。第二工程の反応終了後は通常の後処理を行うことにより2,5−ジシアノ−3,6−ジハロゲノピラジンを必要に応じて単離することができる。
【0112】
本発明の化合物は発光材料として用いることができる。本発明の発光材料は、有機フォトルミネッセンス素子、有機エレクトロルミネッセンス素子などの発光素子を提供することができる。本発明の化合物は、他の発光材料(ホスト材料)の発光をアシストする機能を有するので、他の発光材料にドープして用いることができる。
【0113】
本発明の有機フォトルミネッセンス素子は、基板上に本発明の発光材料を含有する発光層を設けてなる。発光層は、スピンコートなどのような塗布法、インクジェット印刷法などのような印刷法、蒸着法などによって得ることができる。
【0114】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は陽極と陰極との間に有機層を設けてなる。本発明における「有機層」とは、陽極と陰極の間に位置する、実質的に有機物からなる層を意味し、これらの層は本発明の発光素子の性能を損なわない範囲で無機物を含んでいてもよい。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の一実施形態における構造としては、基板上に順次に、陽極、正孔注入層、正孔輸送層、電子阻止層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層、陰極からなるもの、また、電子輸送層と陰極の間にさらに電子注入層を有するものを挙げることができる。これらの多層構造においては有機層を何層か省略することが可能であり、例えば基板上に順次に、陽極、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、陰極とすることや、陽極、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、陰極とすることもできる。本発明の発光材料は、発光層のみならず、正孔注入層、正孔輸送層、電子阻止層、正孔阻止層、電子輸送層、または電子注入層にドープさせてもよい。
【0115】
基板は発光素子の支持体となるものであり、シリコン板、石英板、ガラス板、金属板、金属箔、樹脂フィルム、樹脂シートなどが用いられる。特にガラス板や、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホンなどの透明な合成樹脂の板が好ましい。合成樹脂基板を使用する場合にはガスバリア性に留意する必要がある。基板のガスバリア性が低すぎると、基板を通過する外気により発光素子が劣化することがある。このため、合成樹脂基板のどちらか片側もしくは両側に緻密なシリコン酸化膜等を設けてガスバリア性を確保することが好ましい。
【0116】
基板上には陽極が設けられる。陽極には仕事関数の大きい材料が一般に用いられる。陽極用材料として、例えば、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属;インジウム酸化物、スズ酸化物、ITO、酸化亜鉛、In23−ZnO、IGZOなどの金属酸化物、ヨウ化銅などのハロゲン化金属、カーボンブラック、或は、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子などを挙げることができる。陽極の形成は、通常、スパッタリング法、真空蒸着法などにより行われることが多い。また、銀などの金属微粒子、ヨウ化銅などの微粒子、カーボンブラック、導電性の金属酸化物微粒子、導電性高分子微粉末などの場合には、適当なバインダー樹脂溶液に分散し、基板上に塗布することにより陽極を形成することもできる。さらに、導電性高分子の場合は電解重合により直接基板上に薄膜を形成したり、基板上に導電性高分子を塗布して陽極を形成したりすることもできる。
【0117】
陽極は異なる2種以上の物質を積層して形成することも可能である。陽極の厚さは、必要とする透明性により異なる。透明性が必要とされる場合は、可視光の透過率を、通常、60%以上、好ましくは80%以上とすることが望ましく、この場合、厚みは、通常、10〜1000nm、好ましくは10〜200nmである。不透明でよい場合、陽極は基板の厚みと同程度でもよい。陽極のシート抵抗は数百Ω/□以上であることが好ましい。
【0118】
必要に応じて設けられる正孔注入層として、銅フタロシアニンに代表されるポルフィリン化合物のほか、ナフタレンジアミン誘導体、スターバースト型のトリフェニルアミン誘導体、分子中にトリフェニルアミン構造を3個以上、単結合またはヘテロ原子を含まない2価基で連結した構造を有するアリールアミン化合物などのトリフェニルアミン3量体および4量体、ヘキサシアノアザトリフェニレンのようなアクセプター性の複素環化合物や塗布型の高分子材料を用いることができる。これらの材料は蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。
【0119】
必要に応じて設けられる正孔輸送層に用いられる正孔輸送材料としては、陽極からの正孔注入効率が高く、かつ、注入された正孔を効率よく輸送することができることが好ましい。そのためには、イオン化ポテンシャルが小さく、可視光の光に対して透明性が高く、しかも正孔移動度が大きく、さらに安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時や使用時に発生しにくいことが好ましい。上記の一般的要求以外に、車載表示用の応用を考えた場合、素子にはさらに耐熱性が高いことが好ましい。従って、Tgとして70℃以上の値を有する材料が望ましい。
必要に応じて設けられる正孔輸送層として、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、導電性高分子オリゴマーなどを挙げることができる。より具体的に、m−カルバゾリルフェニル基を含有する化合物、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(m−トリル)−ベンジジン(以後、TPDと略称する)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(α−ナフチル)−ベンジジン(以後、NPDと略称する)、N,N,N’,N’−テトラビフェニリルベンジジンなどのベンジジン誘導体、1,1−ビス[(ジ−4−トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(以後、TAPCと略称する)、種々のトリフェニルアミン3量体および4量体やカルバゾール誘導体などを挙げることができる。これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。正孔輸送層は、単層構造の膜であってもよいし、積層構造の膜であってもよい。また、正孔の注入・輸送層として、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(以後、PEDOTと略称する)/ポリ(スチレンスルフォネート)(以後、PSSと略称する)などの塗布型の高分子材料を用いることができる。これらの材料は蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。
【0120】
また、正孔注入層あるいは正孔輸送層において、前記層に通常使用される材料に対し、さらにトリスブロモフェニルアミンヘキサクロルアンチモンをPドーピングしたものや、PDの構造をその部分構造に有する高分子化合物などを用いることができる。正孔注入・輸送性のホスト材料として、CBPやTCTA、mCPなどのカルバゾール誘導体などを用いることができる。
【0121】
正孔注入材料として用いることができる好ましい化合物(hi1)〜(hi7)を以下に挙げる。
【0122】
【化69】
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【0123】
【化70】
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【0124】
【化71】
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【0125】
【化72】
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【0126】
【化73】
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【0127】
【化74】
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【0128】
【化75】
[この文献は図面を表示できません]
【0129】
正孔輸送材料として用いることができる好ましい化合物(ht1)〜(ht38)を以下に挙げる。
【0130】
【化76】
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【0131】
【化77】
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【0132】
【化78】
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【0133】
【化79】
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【0134】
【化80】
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【0135】
【化81】
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【0136】
【化82】
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【0137】
【化83】
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【0138】
【化84】
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【0139】
【化85】
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【0140】
【化86】
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【0141】
【化87】
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【0142】
【化88】
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【0143】
【化89】
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【0144】
【化90】
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【0145】
【化91】
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【0146】
【化92】
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【0147】
【化93】
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【0148】
【化94】
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【0149】
【化95】
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【0150】
【化96】
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【0151】
【化97】
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【0152】
【化98】
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【0153】
【化99】
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【0154】
【化100】
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【0155】
【化101】
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【0156】
【化102】
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【0157】
【化103】
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【0158】
【化104】
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【0159】
【化105】
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【0160】
【化106】
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【0161】
【化107】
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【0162】
【化108】
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【0163】
【化109】
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【0164】
【化110】
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【0165】
【化111】
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【0166】
【化112】
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【0167】
【化113】
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【0168】
必要に応じて設けられる電子阻止層として、4,4’,4”−トリ(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(以後、TCTAと略称する)、9,9−ビス[4−(カルバゾール−9−イル)フェニル]フルオレン、1,3−ビス(カルバゾール−9−イル)ベンゼン(以後、mCPと略称する)、2,2−ビス(4−カルバゾール−9−イルフェニル)アダマンタン(以後、Ad−Czと略称する)などのカルバゾール誘導体、9−[4−(カルバゾール−9−イル)フェニル]−9−[4−(トリフェニルシリル)フェニル]−9H−フルオレンに代表されるトリフェニルシリル基とトリアリールアミン構造を有する化合物などの電子阻止作用を有する化合物を用いることができる。これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。電子阻止層は、単層構造の膜であってもよいし、積層構造の膜であってもよい。これらの材料は蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。
【0169】
電子阻止材料として用いることができる好ましい化合物(es1)〜(es5)を以下に挙げる。
【0170】
【化114】
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【0171】
【化115】
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【0172】
【化116】
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【0173】
【化117】
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【0174】
【化118】
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【0175】
発光層は、陽極および陰極のそれぞれから注入される正孔および電子が再結合することにより励起子が生成して、発光する機能を有する層である。発光層は本発明の発光材料単独で形成してもよいし、ホスト材料に本発明の発光材料をドープして形成してもよい。ホスト材料の例としては、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(以後、Alq3と略称する)などのキノリノール誘導体の金属錯体、アントラセン誘導体、ビススチリルベンゼン誘導体、ピレン誘導体、オキサゾール誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ビピリジル基とオルトターフェニル構造を有する化合物、mCP、チアゾール誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ポリジアルキルフルオレン誘導体などを挙げることができる。発光層には公知のドーパントが含まれていてもよい。ドーパントとしては、キナクリドン、クマリン、ルブレン、アントラセン、ペリレンおよびそれらの誘導体、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、アミノスチリル誘導体などを挙げることができる。また、Ir(ppy)3などの緑色の燐光発光体、FIrpic、FIr6などの青色の燐光発光体、Btp2Ir(acac)などの赤色の燐光発光体などの燐光性の発光体を用いてもよい。これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。発光層は、単層構造の膜であってもよいし、積層構造の膜であってもよい。これらの材料は蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。
ホスト材料を用いた場合、発光層に含有させることができる本発明の発光材料の量は、下限が、好ましくは0.1質量%、より好ましくは1質量%であり、上限が、好ましくは50質量%、より好ましくは20質量%、さらに好ましくは10質量%である。
【0176】
発光層のホスト材料として用いることができる好ましい化合物(el1)〜(el40)を以下に挙げる。
【0177】
【化119】
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【0178】
【化120】
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【0179】
【化121】
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【0180】
【化122】
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【0181】
【化123】
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【0182】
【化124】
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【0183】
【化125】
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【0184】
【化126】
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【0185】
【化127】
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【0186】
【化128】
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【0187】
【化129】
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【0188】
【化130】
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【0189】
【化131】
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【0190】
【化132】
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【0191】
【化133】
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【0192】
【化134】
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【0193】
【化135】
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【0194】
【化136】
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【0195】
【化137】
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【0196】
【化138】
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【0197】
【化139】
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【0198】
【化140】
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【0199】
【化141】
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【0200】
【化142】
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【0201】
【化143】
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【0202】
【化144】
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【0203】
【化145】
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【0204】
【化146】
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【0205】
【化147】
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【0206】
【化148】
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【0207】
【化149】
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【0208】
【化150】
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【0209】
【化151】
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【0210】
【化152】
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【0211】
【化153】
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【0212】
【化154】
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【0213】
【化155】
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【0214】
【化156】
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【0215】
【化157】
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【0216】
【化158】
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【0217】
必要に応じて設けられる正孔阻止層として、ビピリジル基とオルトターフェニル構造を有する化合物、バソクプロイン(以後、BCPと略称する)などのフェナントロリン誘導体や、アルミニウム(III)ビス(2−メチル−8−キノリナート)−4−フェニルフェノレート(以後、BAlqと略称する)などのキノリノール誘導体の金属錯体、各種の希土類錯体、オキサゾール誘導体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体など、正孔阻止作用を有する化合物を挙げることができる。これらの材料は電子輸送層の材料を兼ねてもよい。これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。正孔阻止層は、単層構造の膜であってもよいし、積層構造の膜であってもよい。これらの材料は蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。
【0218】
正孔阻止材料として用いることができる好ましい化合物(hs1)〜(hs11)を以下に挙げる。
【化159】
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【0219】
【化160】
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【0220】
【化161】
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【0221】
【化162】
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【0222】
【化163】
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【0223】
【化164】
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【0224】
【化165】
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【0225】
【化166】
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【0226】
【化167】
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【0227】
【化168】
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【0228】
【化169】
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【0229】
必要に応じて設けられる電子輸送層として、Alq3、BAlqをはじめとするキノリノール誘導体の金属錯体のほか、各種金属錯体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、カルボジイミド誘導体、キノキサリン誘導体、フェナントロリン誘導体、シロール誘導体などを用いることができる。これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。電子輸送層は、単層構造の膜であってもよいし、積層構造の膜であってもよい。これらの材料は蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。
【0230】
必要に応じて設けられる電子注入層として、フッ化リチウム、フッ化セシウムなどのアルカリ金属塩、フッ化マグネシウムなどのアルカリ土類金属塩、酸化アルミニウムなどの__金属酸化物などを用いることができるが、電子輸送層と陰極の好ましい選択においては、これを省略することができる。
【0231】
電子注入層あるいは電子輸送層において、前記層に通常使用される材料に対し、さらにセシウムなどの金属をNドーピングしたものを用いることができる。
【0232】
電子輸送材料として用いることができる好ましい化合物(et1)〜(et30)を以下に挙げる。
【0233】
【化170】
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【0234】
【化171】
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【0235】
【化172】
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【0236】
【化173】
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【0237】
【化174】
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【0238】
【化175】
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【0239】
【化176】
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【0240】
【化177】
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【0241】
【化178】
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【0242】
【化179】
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【0243】
【化180】
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【0244】
【化181】
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【0245】
【化182】
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【0246】
【化183】
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【0247】
【化184】
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【0248】
【化185】
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【0249】
【化186】
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【0250】
【化187】
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【0251】
【化188】
[この文献は図面を表示できません]
【0252】
【化189】
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【0253】
【化190】
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【0254】
【化191】
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【0255】
【化192】
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【0256】
【化193】
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【0257】
【化194】
[この文献は図面を表示できません]
【0258】
【化195】
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【0259】
【化196】
[この文献は図面を表示できません]
【0260】
【化197】
[この文献は図面を表示できません]
【0261】
【化198】
[この文献は図面を表示できません]
【0262】
【化199】
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【0263】
電子注入材料として用いることができる好ましい化合物(ei1)〜(ei4)を以下に挙げる。
【0264】
【化200】
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【0265】
【化201】
[この文献は図面を表示できません]
【0266】
【化202】
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【0267】
【化203】
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【0268】
安定化材料として用いることができる好ましい化合物(st1)〜(st5)を以下に挙げる。
【0269】
【化204】
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【0270】
【化205】
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【0271】
【化206】
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【0272】
【化207】
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【0273】
【化208】
[この文献は図面を表示できません]
【0274】
陰極には仕事関数の小さい材料が一般に用いられる。陰極用材料として、例えば、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム、スズ、マグネシウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム混合物、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀、リチウム/アルミニウム混合物、マグネシウム銀合金、マグネシウムインジウム合金、アルミニウムマグネシウム合金などが用いられる。透明導電性材料を用いることによって透明または半透明な陰極を得ることができる。陰極の厚さは、通常、10〜5000nm、好ましくは50〜200nmである。陰極のシート抵抗は数百Ω/□以上であることが好ましい。
【0275】
低仕事関数金属から成る陰極を保護する目的で、この上にさらに、アルミニウム、銀、ニッケル、クロム、金、白金等の、仕事関数が高く大気に対して安定な金属層を積層すると、素子の安定性を増すため好ましい。また、陰極と、隣接する有機層(例えば電子輸送層や、電子注入層)とのコンタクトを向上させるために、両者の間に陰極界面層を設けてもよい。陰極界面層に用いられる材料としては、芳香族ジアミン化合物、キナクリドン化合物、ナフタセン誘導体、有機シリコン化合物、有機リン化合物、N−フェニルカルバゾール骨格を有する化合物、N−ビニルカルバゾール重合体などを挙げることができる。
【0276】
本発明の発光素子は、単一の素子、アレイ状に配置された構造からなる素子、陽極と陰極がX−Yマトリックス状に配置された構造のいずれにおいても適用することができる。
【0277】
以下、本発明の実施の形態について、その効果を示す。
本発明の発光材料を用いて、有機フォトルミネッセンス素子および有機エレクトロルミネッセンス素子を作製し、発光特性を評価した。
発光特性の評価は、ソースメータ(ケースレー社製:2400シリーズ)、半導体パラメータ・アナライザ(アジレント・テクノロジー社製:E5273A),光パワーメータ測定装置(ニューポート社製:1930C)、光学分光器(オーシャンオプティクス社製:USB2000)、分光放射計(トプコン社製:SR−3)、およびストリークカメラ(浜松ホトニクス社製:C4334型)を用いて行った。
【0278】
次に、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明する。これら実施例によって本発明が制限されるわけではない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
【実施例1】
【0279】
アルゴン雰囲気のグローブボックス中でAc−CNPのトルエン溶液A(濃度10-4モル/l)を調製した。
蒸着源としてAc−CNPを用い、真空度10-4Pa以下の条件にて、石英基板上に蒸着させて、厚さ100nmの薄膜を有する有機フォトルミネッセンス素子Bを得た。
蒸着源としてAc−CNPとmCBPとをそれぞれ用い、10-4Pa以下の条件にて、石英基板上に蒸着させて、Ac−CNP濃度6.0重量%、厚さ100nmの薄膜を有する有機フォトルミネッセンス素子Cを得た。
トルエン溶液A、有機フォトルミネッセンス素子Bおよび有機フォトルミネッセンス素子Cについて310nm励起光による発光スペクトルおよび吸収スペクトルを測定した。結果を図1に示す。
フォトルミネッセンス量子効率は、窒素バブリングしたトルエン溶液Aで20.4%、窒素バブリングしないトルエン溶液Aで9.3%、有機フォトルミネッセンス素子Cで67.4%であった。
有機フォトルミネッセンス素子Cの5K、50K、100K、150K、200K、250K、および300Kにおける過渡減衰曲線を図2に示す。この過渡減衰曲線は、初期に直線的成分(蛍光成分)が観測されるが、数μ病以降には直線性から外れる成分(遅延成分)が観測される。この結果から、Ac−CNPは蛍光成分の他に遅延成分を含む発光体(τprompt=45ナノ秒、τdelayed=71マイクロ秒)であることがわかる。また、温度によって遅延成分の寿命に変化があることからAc−CNPは熱活性型遅延蛍光材料(TADF)であることがわかる。
【0280】
膜圧110nmのインジウム・スズ酸化物(ITO)からなる陽極が形成されたガラス基板上に40nm厚の正孔輸送層、10nm厚の電子阻止層、20nm厚の発光層、10nm厚の正孔阻止層、および30nm厚の電子輸送層をこの順で真空蒸着法(5.0×10-4Pa以下)によって積層させた(図3参照)。
正孔輸送層の材料としてα−NPDを用いた。
【化209】
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電子阻止層の材料としてmCPを用いた。
【化210】
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発光層のホスト材料としてmCBPを用いた。
【化211】
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発光層のドープ材料としてAc−CNPを用いた。Ac−CNP濃度を6.0重量%に設定した。
【化212】
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正孔阻止層の材料としてPPFを用いた。
【化213】
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電子輸送層の材料としてTPBiを用いた。
【化214】
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次いで、0.8nm厚のフッ化リチウム膜、および80nm厚のアルミニウム膜をこの順で真空蒸着法にて積層させることにより陰極を形成させて、有機エレクトロルミネッセンス素子を得た。
有機エレクトロルミネッセンス素子の特性を測定した。図4に発光スペクトルを示す。発光スペクトルは、約500nm〜約700nmの範囲にあった。図5に電圧−電流密度−発光強度特性を示す。左向きの矢印で示されているデータは電圧−電流密度特性を示し、右向きの矢印で示されているデータは電圧−発光強度特性を示す。図6に電流密度−外部量子効率特性を示す。最大外部量子効率は13.3%であった。蛍光材料を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子の外部量子効率の理論限界値は5〜7.5%であるので、Ac−CNPを用いて得られる本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は理論限界値を超える高い外部量子効率を実現している。
【実施例2】
【0281】
Ac−CNPの代わりにPx−CNPを用いた以外は実施例1と同じ方法で特性評価を行った。トルエン溶液では可視域の発光を観察できなかった。フォトルミネッセンス量子効率は、有機フォトルミネッセンス素子Cで15.1%であった。過渡減衰曲線から、Px−CNPは蛍光成分の他に遅延成分を含む発光体(τprompt=21ナノ秒、τdelayed=1.5マイクロ秒)であることがわかる(図7参照)。また、温度によって遅延成分の寿命に変化があることからPx−CNPは熱活性型遅延蛍光材料(TADF)であることがわかる。
有機エレクトロルミネッセンス素子(図8)の特性を測定した。図9に発光スペクトルを示す。実施例1と同様に、発光スペクトルは、約500nm〜約700nmの範囲にあった。図10に電圧−電流密度−発光強度特性を示す。左向きの矢印で示されているデータは電圧−電流密度特性を示し、右向きの矢印で示されているデータは電圧−発光強度特性を示す。図11に電流密度−外部量子効率特性を示す。最大外部量子効率は3.0%であった。
【化215】
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【実施例3】
【0282】
Ac−CNPの代わりにBCz−CNPを用いた以外は実施例1と同じ方法で特性評価を行った。フォトルミネッセンス量子効率は、窒素バブリングしたトルエン溶液Aで15.6%、窒素バブリングしないトルエン溶液Aで10.8%、有機フォトルミネッセンス素子Cで54.7%であった。過渡減衰曲線から、BCz−CNPは蛍光成分の他に遅延成分を含む発光体(τprompt=35ナノ秒、τdelayed=135マイクロ秒)であることがわかる(図12参照)。また、温度によって遅延成分の寿命に変化があることからBCz−CNPは熱活性型遅延蛍光材料(TADF)であることがわかる。
有機エレクトロルミネッセンス素子(図13)の特性を測定した。実施例1と同様に、発光スペクトルは、約500nm〜約700nmの範囲にあった。最大外部量子効率は11.9%であった。
【化216】
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【実施例4】
【0283】
蒸着源としてPCz−DCPを用い、真空度10-4Pa以下の条件にて、石英基板上に蒸着させて、厚さ100nmの薄膜を有する有機フォトルミネッセンス素子Bを得た。
蒸着源としてPCz−DCPとCBPとをそれぞれ用い、10-4Pa以下の条件にて、石英基板上に蒸着させて、PCz−DCP濃度6.0重量%、厚さ100nmの薄膜を有する有機フォトルミネッセンス素子Cを得た。
有機フォトルミネッセンス素子Bおよび有機フォトルミネッセンス素子Cについて310nm励起光による発光スペクトルおよび吸収スペクトルを測定した。結果を図14に示す。
フォトルミネッセンス量子効率は、有機フォトルミネッセンス素子Cで36.5%であった。
【0284】
有機フォトルミネッセンス素子Cの5K、50K、100K、150K、200K、250K、および300Kにおける過渡減衰曲線を図15に示す。この過渡減衰曲線は、初期に直線的成分(蛍光成分)が観測されるが、数μ病以降には直線性から外れる成分(遅延成分)が観測される。この結果から、PCz−DCPは蛍光成分の他に遅延成分を含む発光体(τprompt=28ナノ秒、τdelayed=147マイクロ秒)であることがわかる。また、温度によって遅延成分の寿命に変化があることからPCz−DCPは熱活性型遅延蛍光材料(TADF)であることがわかる。
【0285】
膜圧110nmのインジウム・スズ酸化物(ITO)からなる陽極が形成されたガラス基板上に35nm厚の正孔輸送層、15nm厚の発光層、10nm厚の正孔阻止層、および40nm厚の電子輸送層をこの順で真空蒸着法(5.0×10-4Pa以下)で積層させた。
正孔輸送層の材料としてTAPCを用いた。
【化217】
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発光層のホスト材料としてCBPを用いた。
【化218】
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発光層のドープ材料としてPCz−DCPを用いた。PCz−DCP濃度を6.0重量%に設定した。
【化219】
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正孔阻止層の材料としてPPFを用いた。
電子輸送層の材料としてB3PyPBを用いた。
【化220】
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次いで、0.8nm厚のフッ化リチウム膜、および80nm厚のアルミニウム膜をこの順で真空蒸着法にて積層させることにより陰極を形成させて、有機エレクトロルミネッセンス素子(Device B)を得た(図16参照)。
有機エレクトロルミネッセンス素子(Device B)の特性を測定した。図18に発光スペクトルを示す。実施例1と同様に、発光スペクトルは、約500nm〜約700nmの範囲にあった。図19に電圧−電流密度−発光強度特性を示す。左向きの矢印で示されているデータは電圧−電流密度特性を示し、右向きの矢印で示されているデータは電圧−発光強度特性を示す。図20に電流密度−外部量子効率特性を示す。最大外部量子効率は7.8%であった。
【実施例5】
【0286】
CBPの代わりに26mCPyを用いた以外は実施例4と同じ方法で有機エレクトロルミネッセンス素子(Device A)を得た(図17参照)。
有機エレクトロルミネッセンス素子(Device A)の特性を測定した。図18に発光スペクトルを示す。実施例1と同様に、発光スペクトルは、約500nm〜約700nmの範囲にあった。図19に電圧−電流密度−発光強度特性を示す。左向きの矢印で示されているデータは電圧−電流密度特性を示し、右向きの矢印で示されているデータは電圧−発光強度特性を示す。図20に電流密度−外部量子効率特性を示す。最大外部量子効率は6.4%であった。
【化221】
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【実施例6】
【0287】
PCz−DCPの代わりにPAc−DCPを用いた以外は実施例4と同じ方法で特性評価を行った。トルエン溶液では可視域の発光を観察できなかった。フォトルミネッセンス量子効率は、有機フォトルミネッセンス素子Cで31.9%であった。過渡減衰曲線から、PAc−DCPは蛍光成分の他に遅延成分を含む発光体(τprompt=19ナノ秒、τdelayed=2.6マイクロ秒)であることがわかる(図21)。また、温度によって遅延成分の寿命に変化があることからPAc−DCPは熱活性型遅延蛍光材料(TADF)であることがわかる。
有機エレクトロルミネッセンス素子(Device B:図22)の特性を測定した。図24に発光スペクトルを示す。実施例1と同様に、発光スペクトルは、約500nm〜約700nmの範囲にあった。図25に電圧−電流密度−発光強度特性を示す。左向きの矢印で示されているデータは電圧−電流密度特性を示し、右向きの矢印で示されているデータは電圧−発光強度特性を示す。図26に電流密度−外部量子効率特性を示す。最大外部量子効率は6.9%であった。
【化222】
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【実施例7】
【0288】
TAPCの代わりにα―NPDを用い、CBPの代わりに26mCPyを用い、且つB3PyPBの代わりにTPBiを用いた以外は実施例6と同じ方法で有機エレクトロルミネッセンス素子(Device A)を得た(図23参照)。
有機エレクトロルミネッセンス素子(Device A)の特性を測定した。図24に発光スペクトルを示す。実施例1と同様に、発光スペクトルは、約500nm〜約700nmの範囲にあった。図25に電圧−電流密度−発光強度特性を示す。左向きの矢印で示されているデータは電圧−電流密度特性を示し、右向きの矢印で示されているデータは電圧−発光強度特性を示す。図26に電流密度−外部量子効率特性を示す。最大外部量子効率は2.4%であった。
【0289】
2,3−ジシアノピラジンを中心骨格に有する化合物(式(I)で表される化合物)を合成して得られる発光材料は、TADFに基づく評価で、高いEL発光特性が得られた。また、通常の蛍光分子の外部量子効率(EQE)の理論限界値(5%)に比べて遥かに高いEQE値を実現できた。式(I)で表される化合物はTADF発光材料として極めて有望な材料である。
2,5−ジシアノピラジンを中心骨格に有する式(II)で表される化合物を合成して得られる発光材料は、TADFに基づく評価で、高いEL発光特性が得られた。また、通常の蛍光分子の外部量子効率(EQE)の理論限界値(5%)に比べて高いEQE値を実現できた。式(II)で表される化合物はTADF発光材料として有望な材料である。
【0290】
参考例
2,3−ジアミノ−3−(フェニルチオ)アクリロニトリル400mgを1,2−ジメトキシエタン45mlに溶解し、得られた溶液を0.1Mクエン酸−クエン酸ナトリウム緩衝液(pH=3.0)150ml及び水150mlを含む溶液に加え室温で5時間放置した。析出した赤色針状結晶を濾過しn−ヘキサン−酢酸エチル(3:1)3mlで洗浄した。3,6−ジアミノ−2,5−ジシアノピラジン7.5mg(収率45%)が得られた。
13C-NMR (d6-DMSO):149.730,115.115,113.251ppm
【実施例8】
【0291】
臭化銅(II)23.73g(106.2ミリモル)および亜硝酸t−ブチル10.95g(118.0ミリモル)を乾燥アセトニトリル100mlに溶解させた。得られた溶液に、60℃で、3,6−ジアミノ−2,5−ジシアノピラジン3.40g(21.2ミリモル)を徐々に添加した。3,6−ジアミノ−2,5−ジシアノピラジンを添加した時に発泡した。添加終了後、70℃で5時間撹拌して反応させた(反応率69.1%)。反応液を室温まで冷まし、水に注ぎ入れ、次いでクロロホルムで3回抽出し、有機相と水相とに分液した。有機相を水で洗浄し、次いで無水硫酸ナトリウムで脱水し、さらにろ過および濃縮を行った。粗生成物をシリカゲルクロマトフィーで精製し、真空下で乾燥させて、2,5−ジシアノ−3,6−ジブロモピラジン(4.1g、収率67.0モル%)を得た。
13C-NMR (125MHz、CDCl3): δ 140.78,134.25,112.62. MS: m/z 287.01[M]+
【実施例9】
【0292】
3,6−ジアミノ−2,5−ジシアノピラジン40.0g(217.4ミリモル)にアセトニトリル(水含有量:約250ppm)522mlを添加し撹拌して均一な液にした。この液に、臭化銅(II)145.7g(652.3ミリモル)を加えた。次いで、液を40℃に維持して、純度90%亜硝酸t−ブチル87.20g(101ml、761.0ミリモル)を90分間かけて滴加した。滴加終了後、40℃で30分間撹拌して反応させた(反応率(Gross Yield)80.1%)。40℃の反応液をろ過して不溶物を除いた。ろ液を水に注ぎ入れて固形分を10℃で析出させ、次いでろ過した。固形分をトルエンに40℃で溶解させた。得られた溶液を濾過して不溶物を除いた。ろ液を55℃減圧下で濃縮した。濃縮液にn−ヘキサンを25℃で滴加し、滴加終了後、10℃に冷やし、ろ過した。濾布上の淡黄色固形物を乾燥させて、2,5−ジシアノ−3,6−ジブロモピラジン45.34g(収率(Net Yield)70.3モル%、純度97%)を得た。
【実施例10】
【0293】
3,6−ジアミノ−2,5−ジシアノピラジン2.25g(14.1ミリモル)に乾燥アセトニトリル68mlを添加し撹拌して均一な液にした。この液に、臭化銅(II)15.53g(69.5ミリモル)を加えた。次いで、液を40℃に維持して、純度90%亜硝酸t−ブチル8.00g(9.2ml、69.8ミリモル)および乾燥アセトニトリル9.2mlの混合液を40分間かけて滴加した。滴加終了後、40℃で4時間撹拌して反応させた(反応率(Gross Yield)79.4%)。40℃の反応液をろ過して不溶物を除いた。ろ液を水に注ぎ入れて固形分を10℃で析出させ、次いでろ過した。固形分をクロロホルムに40℃で溶解させた。得られた溶液を濾過して不溶物を除いた。ろ液を40℃減圧下で濃縮した。濃縮液にn−ヘキサンを25℃で滴加し、滴加終了後、10℃に冷やし、ろ過した。濾布上の淡黄色固形物を乾燥させて、2,5−ジシアノ−3,6−ジブロモピラジン2.97g(収率(Net Yield)72モル%、純度98%)を得た。
【実施例11】
【0294】
3,6−ジアミノ−2,5−ジシアノピラジン2.0g(12.5ミリモル)に乾燥アセトニトリル60mlを添加し撹拌して均一な液にした。この液に、臭化銅(II)13.96g(62.5ミリモル)を加えた。次いで、液を40℃に維持して、純度90%亜硝酸n−ブチル7.21g(8.1ml、62.9ミリモル)および乾燥アセトニトリル8.1mlの混合液を85分間かけて滴加した。滴加終了後、40℃で2時間撹拌して反応させた(反応率(Gross Yield)79.2%)。40℃の反応液をろ過して不溶物を除いた。ろ液を水に注ぎ入れて固形分を10℃で析出させ、次いでろ過した。固形分をクロロホルムに40℃で溶解させた。得られた溶液を濾過して不溶物を除いた。ろ液を40℃減圧下で濃縮した。濃縮液にn−ヘキサンを25℃で滴加し、滴加終了後、10℃に冷やし、ろ過した。濾布上の淡黄色固形物を乾燥させて、2,5−ジシアノ−3,6−ジブロモピラジン2.66g(収率(Net Yield)69.9モル%、純度94.6%)を得た。
【実施例12】
【0295】
純度90%亜硝酸n−ブチル7.21gおよび乾燥アセトニトリル8.1mlの混合液を純度95%亜硝酸イソブチル6.79g(7.8ml)および乾燥アセトニトリル7.8mlの混合液に変えた以外は実施例4と同じ方法で2,5−ジシアノ−3,6−ジブロモピラジンを得た。反応率79.5%、収率70.0モル%、純度95.4%であった。
【実施例13】
【0296】
純度90%亜硝酸n−ブチル7.21gおよび乾燥アセトニトリル8.1mlの混合液を純度95%亜硝酸イソアミル7.74g(8.8ml)および乾燥アセトニトリル8.8mlの混合液に変え、滴加時間を90分間に変えた以外は実施例4と同じ方法で2,5−ジシアノ−3,6−ジブロモピラジンを得た。反応率78.8%、収率69.6モル%、純度95.3%であった。
【実施例14】
【0297】
3,6−ジアミノ−2,5−ジシアノピラジンの量を2.0g、臭化銅(II)の量を13.96g、アセトニトリルの量を60ml、純度90%亜硝酸t−ブチルの量を7.13gに変え、反応時の温度を30℃に変え、滴加時間を30分間に変え、滴加終了後の撹拌を4時間に変えた以外は実施例4と同じ方法で2,5−ジシアノ−3,6−ジブロモピラジンを得た。反応率76.4%であった。
【実施例15】
【0298】
3,6−ジアミノ−2,5−ジシアノピラジンの量を2.0g、臭化銅(II)の量を13.98g、アセトニトリルの量を60ml、純度90%亜硝酸t−ブチルの量を7.13gに変え、反応時の温度を60℃に変え、滴加時間を20分間に変え、滴加終了後の撹拌を3時間に変えた以外は実施例4と同じ方法で2,5−ジシアノ−3,6−ジブロモピラジンを得た。反応率76.3%であった。
【実施例16】
【0299】
3,6−ジアミノ−2,5−ジシアノピラジンの量を2.0g、臭化銅(II)の量を13.96g、アセトニトリルの量を60ml、純度90%亜硝酸t−ブチルの量を7.22gに変え、滴加終了後の撹拌を3時間に変えた以外は実施例1と同じ方法で2,5−ジシアノ−3,6−ジブロモピラジンを得た。反応率72.4%であった。
【実施例17】
【0300】
3,6−ジアミノ−2,5−ジシアノピラジンの量を2.0g、臭化銅(II)の量を13.96g、アセトニトリルの量を60ml、純度90%亜硝酸t−ブチルの量を7.22gに変え、滴加終了後の撹拌を行わなかった以外は実施例1と同じ方法で2,5−ジシアノ−3,6−ジブロモピラジンを得た。反応率77.8%であった。
【産業上の利用可能性】
【0301】
本発明は、新規なジシアノピラジン化合物および発光材料を提供すること、ならびに前記発光材料を用いた発光素子を提供することができる。
また、電子供与基を有するジシアノピラジン骨格を含む化合物の製造方法などに用いられる、2,5−ジシアノ−3,6−ジハロゲノピラジンを、安価な出発原料から少ない反応工程で且つ高い収率で製造する方法を提供することができる。
図1
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図2
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図3
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図4
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図5
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図6
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図7
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図8
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図9
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図10
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図11
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図12
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図13
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図14
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図15
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図16
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図17
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図18
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図19
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図20
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図21
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図22
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図23
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図24
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図25
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図26
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