(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6850454
(24)【登録日】2021年3月10日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】耐湿性モレキュラーシーブベッド
(51)【国際特許分類】
B01D 53/047 20060101AFI20210322BHJP
B01D 53/26 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
B01D53/047
B01D53/26 231
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-555125(P2018-555125)
(86)(22)【出願日】2017年4月20日
(65)【公表番号】特表2019-514669(P2019-514669A)
(43)【公表日】2019年6月6日
(86)【国際出願番号】US2017028611
(87)【国際公開番号】WO2017184855
(87)【国際公開日】20171026
【審査請求日】2020年2月3日
(31)【優先権主張番号】62/325,172
(32)【優先日】2016年4月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505340881
【氏名又は名称】コブハム・ミッション・システムズ・ダベンポート・エルエスエス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100096725
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 明▲ひこ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100171697
【弁理士】
【氏名又は名称】原口 尚子
(72)【発明者】
【氏名】バード、ゲーリー
【審査官】
長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第04388086(US,A)
【文献】
特開昭55−125494(JP,A)
【文献】
特開昭51−110476(JP,A)
【文献】
特表平01−501529(JP,A)
【文献】
特表2010−502423(JP,A)
【文献】
特開2005−193696(JP,A)
【文献】
特開2004−000965(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/047
B01D 53/26
B64D 13/00
B64D 37/00
C01B 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿った吸入空気を受け取るための入口と、乾燥した生成ガスを排出するための出口とを有するハウジングを備え、前記ハウジングは、外側側壁と2つ以上の環状壁とを含み、それによって一連の同心環状ハウジング内のチェンバーとを備えるOBOGSのための空気分離ユニットであって、
a. 前記外側側壁と第1環状壁とによって画定され、入口に流体的に連結され、湿った吸入空気を受け入れて、乾燥空気を排出する乾燥剤材料を含む第1環状チェンバーと、
b. 前記第1環状壁と、第2環状壁とによって画定され、第1通路を介して前記第1環状チェンバーに流体結合される、未充填の第2環状チェンバーと、
c. 前記第2環状壁と、第3環状壁によって画定され、第1端部で第2通路を介して前記第2環状チェンバーに、第2端部で前記出口に流体的に結合される第3環状チェンバーと、
を含み、
前記第3環状チェンバーは前記乾燥空気から望ましくない成分を選択的に除去し、前記乾燥生成ガスを排出するために空気分離材料を収納する、ことを特徴とする空気分離ユニット。
【請求項2】
前記第3環状壁と、中央ポストによって画定され、第1端部で前記第3通路を介して前記第3環状チェンバーに、第2端部で前記出口に流体的に連結される第4環状チェンバーをさらに備え、
前記第4環状チェンバーは、前記乾燥空気から望ましくない成分を選択的に除去し、前記乾燥生成ガスを排出するために空気分離材料を収納する、ことを特徴とする、請求項1に記載の空気分離ユニット。
【請求項3】
前記第3環状チェンバー内の前記空気分離材料の少なくとも一部が、前記第4環状チェンバー内の前記空気分離材料の少なくとも一部とは異なる、請求項2に記載の空気分離ユニット。
【請求項4】
前記ハウジングは、前記第2環状チェンバーに流体的に結合された乾燥空気タップをさらに含み、
前記乾燥空気の一部は前記第3環状チェンバーに入る前に前記ハウジングから除去できる、請求項1に記載の空気分離ユニット。
【請求項5】
前記空気分離材料がゼオライトを含む、請求項1に記載の空気分離ユニット。
【請求項6】
前記ゼオライトが、窒素ガスを吸着して酸素生成ガスを出力するように選択される、請求項5に記載の空気分離ユニット。
【請求項7】
前記乾燥剤材料が、多孔質又は非多孔質のアルミナベースの粒状材料を含む、請求項1に記載の空気分離ユニット。
【請求項8】
前記第1通路は、前記第1環状壁内に画定されたオリフィスを備え、前記オリフィスは、前記乾燥剤材料の直径よりも小さい直径を有する、請求項1に記載の空気分離ユニット。
【請求項9】
OBOGSのための空気分離システムであって
a. 第1及び第2空気分離ユニットと、
ここで、各空気分離ユニットは、湿った吸入空気を受け入れるための入口と乾燥した生成ガスを排出するための出口とを有するハウジングであって、外側側壁と2つ以上の環状壁とを含み、それによりハウジング内に一連の同心の環状チェンバーを画定するハウジングを含み、
i. 第1環状チェンバーが、前記外側側壁と、第1環状壁とによって画定され、前記入口に流体連結され、湿った吸入空気を受け入れ、乾燥空気を排出する乾燥剤材料を含み、
ii. 未充填の第2環状チェンバーが、前記第1環状壁と、第2環状壁とによって画定され、第1通路を介して前記第1環状チェンバーに流体連結され、前記ハウジングは、前記乾燥空気の一部がハウジングから除去できるように、前記第2環状チェンバーに流体結合される乾燥空気タップを含み、
iii. 第3環状チェンバーが、第2環状壁と第3環状壁によって画定され、第1端部で第2通路を介して前記第2環状チェンバーに、第2端部で前記出口に流体結合され、前記乾燥空気から望ましくない成分を選択的に除去し、前記乾燥した生成ガスを排出し、
b. 前記湿った吸入空気を受け入れ、前記湿った吸入空気を第1状態にあるときに前記第1空気分離ユニットに、第2状態にあるとき第2空気分離ユニットに選択的に受け入れるための切り替え弁組立体と、
c. 第1端部で前記第1及び第2空気分離ユニットのそれぞれの乾燥空気タップに、さらに第2端部で前記切り替え弁組立体に流体結合されたプレナムと、
含み、
前記プレナムは、選択された前記第1又は第2空気分離ユニットから前記乾燥空気の一部を受け入れ、前記湿った吸入空気を受け入れる前記選択された空気分離ユニットから排出される前記乾燥空気の純度の関数で、前記切り替え弁組立体を選択的に循環させる空気分離ユニット。
【請求項10】
請求項9に記載の空気分離システムであって、
d. 前記プレナムに動作可能に結合された制御ユニットを更に含み、
前記プレナムは、前記制御ユニットから制御信号を受信すると、前記第1状態と前記第2状態との間で前記切り替え弁組立体を選択的に循環させる、ことを特徴とする空気分離システム。
【請求項11】
請求項10に記載の空気分離システムであって、
e. 前記第1及び第2空気分離ユニットのそれぞれの前記出口から下流にあり、前記乾燥した生成ガスの純度を測定するための出力ガスセンサを更に含み、
前記制御ユニットは、測定純度が限界値を下回るときに前記制御信号を前記プレナムに送ることを特徴とする空気分離システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、原料ガス中の気体成分を分離するためのモレキュラーシーブベッドに関し、より詳細には、ガスがモレキュラーシーブベッドによって分離される前に原料ガスから水分含有量を低減するための装置及び方法に関し、さらに詳細には、原料ガスから酸素を分離するためのオンボード酸素発生システム(OBOGS)のモレキュラーシーブベッドに関する。
【背景技術】
【0002】
通気性のある酸素濃縮生成ガスを生成するために、圧力揺動吸着(PSA)技術を利用したオンボード酸素発生システム(OBOGS)が当業界で知られている。PSAシステムは一般に、ゼオライトなどのモレキュラーシーブ材料を利用して、酸素を通過させながらブリード空気から窒素を吸着することによって、航空機のエンジンブリード空気などの空気源からの流入空気を分離する。呼吸可能なガスを提供するように分離された酸素は、その後、最終的に航空機の特定の領域(例えば、コックピット、キャビン)及び搭乗員(例えば、パイロット、乗組員、乗客)に向けることができる。吸着された窒素は、定期的に既知の方法で圧力スイング技術を使用して減圧下でゼオライトからパージすることができる。パージされた窒素は、機外に廃棄されるか、又は航空機の燃料タンクアレージを不活性化するなどの他の目的のために使用される。
【0003】
システム動作及び効率を改善するために、第1ベッドがエンジンブリード空気から酸素を能動的に分離し、第2ベッドが減圧下でゼオライトを再生するという二重ベッドシステムのような複数ベッドシステムを使用することができる。切り替え弁組立体が、エンジンブリード空気を受け入れ、再生されるベッドを指示してもよい。このようにして、第1ベッドの空気分離効率が、もはや所望の純度の酸素を有する酸素濃縮出力ガスを生成するにはもはや十分でない場合、切り替え弁組立体は、加圧されたエンジンブリード空気を、再生された第2ベッドに導くことができ、その間、汚染された第1ベッドは、そのゼオライトベッドを減圧下で再生することができる。
【0004】
OBOGS効率の問題は、加圧された吸入空気から汚染水分及び水/化学蒸気がモレキュラーシーブベッドに入り、ゼオライト活性部位と干渉し、それによってモレキュラーシーブベッドのガス分離効率を低下させる場合に、生じる可能性がある。一例として、水分は、ゼオライトの結晶構造を損傷する可能性がある。さらに、この水分は、特に水分がベッドの中心に深く移動した場合には、再生段階中にゼオライトベッドからの脱着を非常に困難にしかねない。その結果、ベッド内のゼオライト粒子が損傷を受けたり、液状水を吸着したりすると、モレキュラーシーブベッドの空気分離効率が損なわれ、窒素の吸着が効果的でなくなる。
【0005】
窒素がゼオライトに吸着されずにベッドを通過するとき(当該技術分野では「窒素突破」として知られている)、それは出力生成ガス内に取り込まれ、その酸素百分率を低下させるように作用する。より低い酸素濃度が望まれる場合(例えば、高度に応じて)など、窒素突破が時には望ましいときがある。これらの場合、所望の割合の酸素を有する生成ガスを生成するために、特定の濃度の窒素を、OBOGSを通過させることができる。しかしながら、意図しない及び/又は制御されていない窒素突破は、航空機の要員が所望の酸素パーセンテージを受けていない可能性があり、低酸素症又は低酸素血症などの重大で致命的な健康影響を被る可能性があるという悲惨な結果をもたらす可能性がある。したがって、窒素突破が望まれる場合、有害な健康影響を回避しながら、分離されたガス中の所望の酸素濃度を維持するために制御された方法で行わなければならない。
【0006】
OBOGSは、空気圧弁を(直接的に又は電動パイロットソレノイド弁を介して)駆動するために原料空気を使用することもできる。多重ベッドシステムでは、これらの弁を使用して、上述のようにモレキュラーシーブベッドを通る原料空気を選択的に循環させることができる。これらの弁は、オンボードの酸素センサの較正を支援することもできる。しかしながら、供給源空気中の水分は、空気圧弁及び/又はソレノイド弁を腐食し、損傷を与える可能性がある。湿った空気はまた、酸素センサの正確な較正を妨げるとともに、センサの内部回路を潜在的に腐食損傷するものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,681,807号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、原料空気中に水分及び水/化学蒸気を有することは望ましくないことは理解されよう。この問題に対処するためにいくつかの提案された解決策が開発されている。そのような提案された解決策の1つは、空気分離装置の前に空気分離装置内に1つ以上の合体フィルタを入れて、ゼオライトベッドに入る可能性のある水分を減らすことである。合体フィルタは、一般に、水分及び蒸気微粒子(例えば、液滴)をホウケイ酸ガラスフィルタ又はその等価物上で合体させることによって機能する。その微粒子は、ガラスフィルタの薄い外面上に結露として一緒に凝集し、十分な密度を有するとき、重力によってフィルタの下に位置する排水管に流入する。しかし、合体フィルタは、通常、特定の航空機用途に有効ではない。例えば、航空機内の周期的な圧力揺れは、微粒子がガラスフィルタから早々に落下し、続いて吸入空気の流れ内にあるモレキュラーシーブベッドに運ばれる傾向がある。合体フィルタは、PSA蒸気相の間にホウケイ酸ガラスフィルタを通過した水分及び蒸気微粒子を濾過することにおいても効果がなく、モレキュラーシーブ入口及びシーブベッドで凝縮をおこしかねない。さらに、合体フィルタは、対応する航空機を倒立状態に操縦を行う場合など、逆さまに配置する場合に一時的に無効にすることができる。
【0009】
別の提案された解決策は、遠心分離機の使用である。遠心分離機は、一般に、気流を分離器内で求心的に移動させることによって、汚染水分及び油の微粒子をブリード空気から分離する。遠心力は、密度の高い水及び/又は油の微粒子を分離器の外壁に移動させ、そこで微粒子が集められて排水口に移動させる。遠心分離機は、高密度汚染物を除去するのに有効であるが、排出される前に遠心分離器の外壁に強制させるには密度が不十分である場合、微粒子及び蒸気を除去するのに有効ではない。むしろ、これらの分離されていない汚染物は、湿気がシーブベッドに入るように吸入空気中に残る。
【0010】
さらにもう1つの提案された解決策はモレキュラーシーブベッド上に薄い乾燥剤材料層を組み込むことであり、その例はByrdによる米国特許第6,681,807号(’807特許)(特許文献1)に開示されており、その全体が本明細書に組み込まれる。’807特許に開示されているように、乾燥剤材料の層(例えば、活性アルミナ)をゼオライトベッドの表面上に堆積させることができ、ここで、乾燥剤材料は、モレキュラーシーブに吸入ガスが入る前に、吸入ガス空気流から水分及び蒸気微粒子を吸着する。しかしながら、このアプローチの欠点の1つは、モレキュラーシーブが乾燥剤材料と密接に接触しており、システムが作動していないときに乾燥剤材料よりも水分に対する親和性が高いシーブベッドのために乾燥剤材料から水分を引き出す可能性があることである。さらに、薄い乾燥剤材料層は、湿気の吸着を可能にするために、乾燥剤材料内に空気流滞留時間を十分には与えないことがある。乾燥剤材料層の厚さを増加させると、空気流滞留時間が増加するが、乾燥剤材料が周囲のモレキュラーシーブ成分を侵食する原因となる。
【0011】
さらなる提案された解決策は、モレキュラーシーブの上流に放射状ベッド構成の乾燥剤容器を組み込むことであった。このタイプのシステムでは、混合ベッド吸着器は、吸着ベッドと平行に配置された容器を含むことができる。動作中、湿った原料空気の加圧空気流が容器に入り、そこで気流がアルミナビーズのベッドによって乾燥される。乾燥した気流は、分離された気流が放出される前に、窒素及び二酸化炭素のような汚染ガスを除去する空気分離(ゼオライト)ベッドの吸収性材料を通過することができる。このようなシステムは、原料ガスの乾燥を可能にすることができるが、この設計は、加熱された再生ガスの連続的な向流を通してアルミナビーズの再生を必要とする。これは、原料空気が放射状ベッドに下流で接触する前に、再生空気と混合してしまう。その結果、原料ガスの気流からではなく、追加の汚染ガスの分離が必要となり、それによって分離効率が低下し、分離器の動作寿命が低下する。向流はまた、容器内に空気流抵抗を生じさせ、吸収器に追加の応力を生じさせる可能性がある。加熱された再生ガスの実施はまた、望ましくない量のエネルギーの使用をもたらす。さらに、容器と放射状吸収ベッドとの間の短い距離は、残留空気流が確実に吸収材料又は放射状吸収ベッドと接触しないようにするために十分大きな物理的隙間を提供しない。ベッドの厚さは一般に、汚染されたガスの最小滞留時間によって決定されるので、放射状ベッド吸収材は、通常、他のモレキュラーシーブ構成よりも大きな体積の吸収材を必要とする。このように、このシステムは、小型軽量化が重要な設計パラメータである航空用途には適していない可能性がある。
【0012】
吸入気流の湿気を軽減するための別の提案された解決策は、空気流がOBOGSユニットに入る前に、少なくとも1つの熱交換器を通って入ってくる空気(高温エンジンブリード空気)を冷却することである。この方法によれば、湿った空気が冷却され、水及び/又は油の蒸気が液体に凝縮し、その後、その液体が空気流から分離されて排水される。しかし、水及び水/油の蒸気がいくらか除去されても、熱交換器から出るときに望ましくない蒸気で気流が飽和し続ける。すなわち、空気の相対湿度は、冷気が単に熱気よりも少ない水蒸気を保持するだけで変化しない。その結果、モレキュラーシーブ内に水/油蒸気が依然として運ばれ、そこでシーブベッド内で凝縮し、空気分離効率を低下させる可能性がある。
【0013】
したがって、OBOGSで使用するための原料空気のような原料空気から水分を除去するシステム及び方法が必要とされている。また、OBOGS内のモレキュラーシーブベッドを循環させるために使用される弁に、水分のない空気流を提供する必要がある。水分のない空気の流れはまた、酸素センサの較正に役立つ。本発明は、これら及び他のニーズを満たす。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、湿った吸入空気を受け入れる入口と、乾燥した生成ガスを排出するための出口とを有するハウジングを含むOBOGSのための空気分離ユニットを提供することによって、上記のニーズに応えるものである。ハウジングは、外側側壁と2つ以上の環状壁とを含み、それによってハウジング内に一連の同心環状チェンバーを画定する。第1環状チェンバーが、外側側壁と第1環状壁とによって画定され、入口に
流体結合される。第1環状チェンバーは、湿った吸入空気を受け入れ、乾燥空気を排出するように構成された乾燥剤材料を含む。未充填の第2環状チェンバーが、第1環状壁と第2環状壁とによって画定され、第1通路を介して第1環状チェンバーに
流体結合される。第3環状チェンバーが、第2環状壁と第3環状壁とによって画定され、第1端部で第2通路を介して第2環状チェンバーと、第2端部で出口と
流体結合される。第3環状チェンバーは、空気分離材料を受け入れて、乾燥空気から望ましくない成分を選択的に除去し、乾燥生成ガスを排出するように構成される。
【0015】
本発明の別の態様では、空気分離ユニットは、第3環状壁及び中央ポストによって画定され、第1端部で第3通路を介して第3環状チェンバーに、第2端部で出口に
流体結合される。第4環状チェンバーは、空気分離材料を受けて、乾燥空気から望ましくない成分を選択的に除去し、乾燥生成ガスを排出するように構成されてもよい。第3環状チェンバー内の空気分離材料の少なくとも一部分は、第4環状チェンバー内の空気分離材料の少なくとも一部と異なっていてもよい。
【0016】
本発明の別の態様では、空気分離ユニットは、第2環状チェンバーに流体的に連結された乾燥空気タップを含み、乾燥空気の一部がハウジングから除去されてから乾燥空気が第3環状チェンバーに入る。空気分離材料はまた、窒素ガスを吸着し、酸素生成ガスを出力するように選択されたゼオライトを含むことができる。乾燥剤材料は、多孔質又は非多孔質のアルミナベースの粒状材料を含むことができ、第1通路は、乾燥剤材料の直径よりも小さい直径を有するオリフィスを有する第1環状壁内に画定されるオリフィスを備えることができる。
【0017】
本発明のさらに別の態様では、OBOGSの空気分離システムは、第1及び第2空気分離ユニット、切り替え可能な弁組立体及びプレナムを備えてもよい。 各空気分離ユニットは、湿った入口空気を受け取るための入口と、乾燥した生成ガスを出力するための出口とを有するハウジングを備えることができる。ハウジングは、外側側壁と2つ以上の環状壁とを含み、それによってハウジング内に一連の同心環状チェンバーを画定する。第1環状チェンバーは、外側側壁及び第1環状壁によって画定され、入口に流体的に結合されてもよい。第1環状チェンバーは、湿った吸入空気を受け取り、乾燥空気を出力するように構成された乾燥剤材料を含むことができる。充填されていない第2環状チェンバーは、第1環状壁及び第2環状壁によって画定され、第1通路を介して第1環状チェンバーに流体的に結合され得る。ハウジングは、第2環状チェンバーに流体連結された乾燥空気タップをさらに含み、乾燥空気の一部をハウジングから除去することができる。第3環状チェンバーは、第2環状壁と第3環状壁とによって画定され、第1端部の第2通路と第2端部の出口とを介して第2環状チェンバーに流体的に結合され得る。第3環状チェンバーは、空気分離材料を収納し、乾燥空気から望ましくない成分を選択的に除去し、乾燥生成ガスを排出するように構成されてもよい。切換可能な弁組立体は、第1状態にあるときは湿った吸入空気を受け取り、第2状態にあるときには湿った吸入空気を第1空気分離ユニットに選択的に送るように構成することができる。プレナムは、第1端部で第1及び第2空気分離ユニットのそれぞれの乾燥空気タップに、さらに第2端部で切替え弁組立体に流体的に結合されてもよい。プレナムは、選択された第1又は第2空気分離ユニットから乾燥空気の一部を受け取り、出力される乾燥生成物ガスの純度の関数として、第1状態と第2状態との間で切替え弁組立体を選択的に循環させる選択された空気分離ユニットから湿った吸入空気を受け取る。
【0018】
本発明の別の態様では、空気分離システムは、プレナムに動作可能に結合された制御ユニットをさらに備え、プレナムは、制御ユニットからの制御信号を受信すると、切り替え可能な弁組立体を第1及び第2状態の間で選択的に循環させる。出力ガスセンサは、第1及び第2空気分離ユニットのそれぞれの出口から下流にあってもよく、乾燥ガス生成物の純度を測定するように構成されてもよい。制御ユニットは、測定された純度が閾値限界を下回ったときに制御信号をプレナムに送ることができる。
【0019】
本発明のさらなる目的、利点及び新規な態様は、以下の説明に部分的に記載され、添付の図面を参照して考察されるときに部分的に本発明の実施において明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、発明の一態様による空気分離ユニットの斜視図であって、内部構成要素を示すために、外壁が破線で示されている。
【
図2】
図2は、
図1に示された空気分離ユニット、2-2線に沿った略示断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の一態様による別の空気分離ユニットの断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の一態様による空気分離システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1及び2に、本発明の一態様によるオンボード酸素発生(OBOGS)空気分離ユニット10が示されている。空気分離ユニット10が、航空機(図示せず)内に設置されてよいもので、航空機のエンジンから排出される高圧ブリード空気又は空気圧縮機からの加圧空気のような空気源によって提供される吸入空気内の個々の気体成分(例えば、酸素及び窒素)を分離するために動作できる。空気分離ユニット10は、例えば約95体積%の酸素といった濃縮酸素濃度を有する航空機内における特別な領域(例えば、操縦室及び/又はキャビン)及び/又は人員(例えば、パイロット、乗客及び/又は乗組員)に、呼吸可能な空気を流すために、吸入空気を分離することができる。
【0022】
空気分離ユニット10は、一般に、外側側壁14、天板16及び底板18を有するハウジング12を含むベッドユニット11を備える。ハウジング12の境界内には、一連の同心環状チェンバー20、22、24及び26が画定される。第1環状壁21は、外側側壁14と第1環状壁21との間に第1環状チェンバー20を画定し、第2環状壁23は、第1環状壁21と第2環状壁23との間に第2環状チェンバー22を画定し、第3環状壁25は、第2環状壁23と第3環状壁25との間に第3環状チェンバー24を画定し、中央ポスト27が、第3環状25と中央ポスト27との間に第4環状チェンバー26を画定する。
図2は、長手方向軸線X-Xの左側の環状チェンバー20、22、24及び26を備えたハウジング12の断面図を示し、長手方向軸X-Xの右側に示されている同じ環状チェンバーは、説明を簡単にするために略記されている。
【0023】
図1及び
図2に示されているように、入口28が、空気源(図示せず)から第1環状チェンバー20に、吸入空気30を向けるように構成される。第1環状チェンバー20は、吸入空気30内の特定の汚染物質を吸収するように選択された乾燥剤材料32(限定的ではないが、例えば、液状水、水蒸気、又は油又は燃料などの化学蒸気)を充填するように構成される。適切な乾燥剤材料32の非限定的な例として、例えば約5mm内資〜約12mmの直径を有する多孔質又は非多孔質アルミナ系微粒子又は球体であってよい。従って、吸入空気30が例えば、入口28を介して第1環状チェンバー20に入った後に、乾燥剤材料32を通って流れ、これにより、乾燥空気34が第1環状壁20から、第2環状チェンバー22へと(第1環状壁21内に画定された第1通路36を介して)送り出される前に、吸入空気30内の液状の水及び/又は化学物質の蒸気が、吸入空気30から実質的に除去される。第1通路36は、第1環状壁21内の1つ以上のオリフィスによって画定され、各オリフィスは、第1環状チェンバー20内の乾燥材材料32の直径よりも小さい直径を有して、乾燥剤材料が第1環状チェンバー20から流出し、第2環状チェンバー22に流入することを防止する。本明細書で使用される用語「乾燥空気」は、約5パーセント(5%)未満の相対湿度を有するなど、実質的に水分を含まない空気を意味する。
【0024】
第2環状チェンバー22は、第3環状チェンバー24内の空気分離材料40(例えば、ゼオライト)から第1環状チェンバー20内の乾燥剤材料32を分離するギャップを提供するように構成された開放(未充填)通路38を画定する。ハウジング12は、第2環状チェンバー22の排出端48と連通する乾燥空気タップ42を含むことができ、それによって、システム使用者(例えば、航空機乗務員)は、下述するように、第3環状チェンバー24と第4環状チェンバー26内の乾燥空気34の気体成分を分離する前にハウジング12から乾燥空気44を廃棄することができる。次に、廃棄された乾燥空気44は、酸素センサ46を較正するために使用されるだけでなく、以下に詳細に説明するようにOBOGS性能を監視するようにシステム内に含まれ得るシステム弁を作動させるために使用される。
【0025】
第2通路50は、第2環状チェンバー22の排出端48に位置し、それにより、乾燥空気34は、第3環状チェンバー24に流入することができる。第3環状チェンバー24は、モレキュラーシーブ材料40(ゼオライト微粒子などであるが、これに限定されない)を収納し、パックされたシーブベッド54を形成するように構成される。本発明の態様によれば、パックされたシーブベッド54は、乾燥空気34の空気流から窒素ガスを選択的に吸着して酸素濃縮空気(OEA)56を排出するゼオライト剤でパックされる。
【0026】
空気分離ユニット10内でより長い流路を形成し、窒素吸着を増加させるために、第3通路58を配置し、第3環状チェンバー24と第4環状チェンバー26との間を流体連通させることができる。上述の第3環状チェンバー24と同様に、第4環状チェンバー26は、一般に、モレキュラーシーブ材料52を収納し、パックされたシーブベッド60を形成する。パックされたシーブベッド60は、第3環状チェンバー24から受け取ったOEA56内の残留窒素ガスを除去して、実質的に純粋な(例えば> 95%)酸素生成ガス62を出口64から排出することができる。当業者であれば、第4環状チェンバー26が、吸入ガス組成及び出口64で出力される所望の生成ガスに依存して、第3環状チェンバー24とは異なるモレキュラーシーブ材料でパックされてもよいことを理解されるであろう。
【0027】
図3及び
図4に示されているとおり、本発明の他の実施形態によれば、OBOGS空気分離ユニット10’は、一般に、互いに隣接して配置された一対のベッドユニット13a/13bのそれぞれを含むように構成されたハウジング12’を含んでよい。空気分離ユニット10に関連して記述のように、各ベッドユニット13a、13bは、ハウジング12及び関連する一連の環状チェンバー20、22、24及び26と同様のそれぞれの一連の同心環状チェンバー20a/ 20b、22a/22b、24a/24b及び26a/26bを画定することができる。上述のように、第1環状チェンバー20a/20bは、乾燥剤材料32で実質的にパックされてよく、第2環状チェンバー22a/22bは、それぞれの第1環状チェンバー20a/20bとそれぞれの第3環状チェンバーチェンバー24a/24bとの間の間隙を形成するように、それぞれ開放通路38a/38bを画定してよい。第3環状チェンバー24a/24bはモレキュラーシーブ材料40を収納し、それぞれのパックされたシーブベッド54a/54bを形成し、一方で第4環状チェンバー26a/26bはモレキュラーシーブ材料52を収納し、それぞれのパックされたシーブベッド60a/60bを形成する。各ベッドユニット13a / 13bはまた、OEA生成物ガス62を下流位置(例えば、航空機の操縦席、キャビン、特定の乗務員(例えば、パイロット))に搬送するために、分離されていない乾燥空気44及びそれぞれの排出空気64a/64bを排出することを可能にする乾燥空気タップ42a/42bを含むことができる。
【0028】
図4は、本発明の別の態様による空気分離ユニット10’を組み込むことができるOBOGS80の概略図を示す。空気分離ユニット10’は、吸入空気30をベッドユニット13a又はベッドユニット13bのいずれかに選択的に循環して入力させることができるスライド弁82などの切り替え可能な弁組立体に結合することができる。一例として、ベッドユニット13aはOEA生成ガス62を排出するように入口空気30で充填され、他方、ベッドユニット13bは減圧され、続く分離サイクルに際して、窒素ガスを脱着し、シーブベッド54b、60b並びに乾燥材31を再生する。
【0029】
図4に戻り、上記例の説明が続く。分離されていない乾燥空気44は、乾燥空気タップ42aから二重逆止め弁組立体86の動作を介してプレナム84に導くことができる。OBOGS80内の制御ユニット47(
図4参照)と通信する酸素センサ46などにより、出力OEA生成ガス62の酸素パーセントを監視することができる。ベッドユニット13aによって生成された酸素生成ガス62が所定のパーセント酸素閾値を下回った場合、プレナム84は、制御ユニット47によってトリガされ、スライド弁82を作動させるように構成された乾燥空気のパルスを放出する。スライド弁83の作動により、吸入空気30が再生されたベッドユニット13bに方向転換され、一方汚れたベッドユニット13aは、シーブベッド54a、60a内の窒素を脱着し、第1環状チェンバー20a内の乾燥剤材料32を脱着する。このように、ベッドユニット13a又は13bの一方は、窒素ガスを選択的に吸着して実質的に純粋な酸素生成ガス62(例えば、> 95%)を排出するように、吸入空気30で充填され、一方ベッドユニット13a又は13bの他方は減圧され、これによりゼオライトから窒素が脱着してシーブベッド54(a又はb)、60(a又はb)内のゼオライト活性部位が再生され、第1環状チェンバー20a/20b内の乾燥剤材料32が乾燥する。理解されるように、吸入空気30の入力は、スライド弁82を介してベッドユニット13a及び13bとの間で循環することができ、結果として、実質的に純粋な酸素生成ガスのほぼ一定の出力が達成され得る。本発明の一態様によれば、スライド弁82を駆動するために分離されていない乾燥空気44の一部を抽出することにより、当該技術分野において知られているように、湿式吸入空気を使用するスライド弁作動と比較して、スライド弁の動作寿命を延ばすことができる。
【0030】
パックされたシーブベッド54/54a/54b、60/60a/60bは、OEAを生成するように窒素ガスを選択的に吸着するものとして記載されているが、当業者であれば、空気分離ユニット10、10’は、気流から窒素以外のガスを分離するように選択されたモレキュラーシーブ材料を含むパックされたシーブベッドを含むことができることは理解されよう。例えば、空気分離ユニット10、10’は、空気流から酸素ガスを吸着するように選択されたモレキュラーシーブ材料を含み、燃料タンク不活性化及び他の同様の用途のための窒素濃縮空気(NEA)の出力ガスを生成する。さらに、空気分離ユニット10’は、単一の一体型ユニットとして示され説明されているが、2ベッドシステムが、適切な配管及び制御経路を介して互いに近接して配置された2つの個別の空気分離ユニット10を使用することができることは当該分野では公知である。
【0031】
本発明の好ましい実施形態の前述の説明は、例示及び説明のために提示されたものである。包括的であることを意図するものでもなく、本発明を開示された正確な形態に限定することも意図していない。開示された実施形態は上記教示に照らして変更されてもよいことは、当業者には明らかであろう。記載された実施形態は、当業者が様々な実施形態において、また企図される特定の用途に適した様々な変更を伴って本発明を利用することを可能にするために、本発明の原理の説明及びその実際の適用を提供するように選択される。したがって、上記の説明は、限定ではなく例示的なものとみなされるべきであり、本発明の真の範囲は、特許請求の範囲に記載されたものである。