(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6850474
(24)【登録日】2021年3月10日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】熱利用ユニット
(51)【国際特許分類】
F22B 27/00 20060101AFI20210322BHJP
【FI】
F22B27/00
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-22086(P2017-22086)
(22)【出願日】2017年2月9日
(65)【公開番号】特開2018-128204(P2018-128204A)
(43)【公開日】2018年8月16日
【審査請求日】2019年9月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000191881
【氏名又は名称】森松工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸毛 謙次
(72)【発明者】
【氏名】増井 龍也
(72)【発明者】
【氏名】名和 博之
【審査官】
西塚 祐斗
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−203351(JP,A)
【文献】
特開平03−210073(JP,A)
【文献】
特開2006−037849(JP,A)
【文献】
実開昭53−132505(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源の流体との熱交換によって熱媒体が熱エネルギーを受け取って利用する熱利用ユニット(1)であって、前記熱源の流体を受け入れて蒸気を発生するフラッシュタンク(2)と、前記フラッシュタンク(2)が発生させた蒸気と前記熱媒体との間で熱交換を行う熱交換器(3)と、熱交換後の熱水を受け入れて熱水から非凝縮性ガス及び蒸気を分離する非凝縮性ガス分離器(4)と、分離した前記熱水を貯留する熱水槽(5)と、前記熱源の流体を供給する流体供給配管(11)と、前記フラッシュタンク(2)から前記熱交換器(3)に蒸気を供給する蒸気配管(12)と、前記非凝縮性ガス分離器(4)と前記熱水槽とを接続する圧力逃し管(13)及び熱水回収配管(14)と、を備えており、
さらに、
前記蒸気配管(12)と前記非凝縮性ガス分離器(4)とを連通させて、前記蒸気配管(12)と非凝縮性ガス分離器(4)とを均圧にする均圧管(15)と、
前記圧力逃し管(13)と前記非凝縮性ガス分離器(4)の上部とを連通させて、前記非凝縮性ガス分離器(4)の非凝縮性ガスを前記圧力逃し管(13)に排出する、非凝縮性ガス逃し管(16)と、
を備えており、
前記蒸気配管(12)と、前記圧力逃し管(13)とが同一の口径を有しており、前記圧力逃し管(13)の前記非凝縮性ガス分離器(4)側の端部が、前記非凝縮性ガス分離器(4)内の熱水によって液封されていることを特徴とする熱利用ユニット。
【請求項2】
前記非凝縮性ガス分離器(4)の最大圧力が0.1013MPaA以上0.106MPaA以下であることを特徴とする請求項1記載の熱利用ユニット。
【請求項3】
前記熱源の流体が蒸気と熱水とからなる地熱流体であり、
前記流体供給配管(11)が地中の源泉(20)に連通していることを特徴とする請求項1または2に記載の熱利用ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を熱源として、その熱エネルギーを利用する熱利用ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギーの有効利用のために、比較的低温である50〜150℃の熱源を活用する技術が求められている。低温の熱源を活用する技術としては、これまでヒートポンプやバイナリ発電が実用化されている。バイナリ発電とは、熱源との熱交換によって媒体を加熱して媒体蒸気を発生させ、この媒体蒸気でタービンを回して発電する技術である。一般的なバイナリ発電装置は、地中から涌出する地熱流体や工場等の廃熱を熱源として利用する。
【0003】
特許文献1には、温泉井戸から取得した温泉水の蒸気を熱源とするバイナリ発電装置が開示されている。特許文献1は、熱源の温泉水に含まれる晶析物を除去することを目的として、熱水と蒸気とからなる地熱流体をフラッシュタンクで熱水と蒸気とに分離し、蒸気によって媒体を加熱している。
【0004】
従来の熱利用ユニットは、比較的低温であっても高圧の流体を熱源として、圧力を維持した状態で熱の利用を行っていた。高圧の流体の気液分離を行って蒸気のみを熱利用する場合は、フラッシュタンクを圧力容器で構成し、熱交換器も高圧に対応した仕様で熱利用を行う必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−203351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
熱利用ユニットで高圧の熱源を利用する場合、熱源の保管に用いる容器は十分な耐圧構造の圧力容器である必要があり、また維持管理に細心の注意が必要であった。このため熱利用ユニット全体が高価なものとなり、維持管理にも手間がかかっていた。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、比較的簡易で安価な構成によって、熱源の流体をより効率よく保管および利用する熱利用ユニットの提供を解決すべき課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、熱源の流体との熱交換によって熱媒体が熱エネルギーを受け取って利用する熱利用ユニットに関する。本発明の熱利用ユニットは、 熱源の流体を受け入れて蒸気を発生するフラッシュタンクと、フラッシュタンクにより発生した蒸気と前記熱媒体との間で熱交換を行う熱交換器と、熱交換後の熱水を受け入れて熱水から非凝縮性ガスを分離する非凝縮性ガス分離器と、分離した熱水を貯留する熱水槽と、を備えている。さらに本発明の熱利用ユニットは、熱源の流体を供給する流体供給配管と、フラッシュタンクから熱交換器に蒸気を供給する蒸気配管と、非凝縮性ガス分離器と熱水槽とを接続する圧力逃し管及び熱水回収配管と、を備えている。本発明の熱利用ユニットは、蒸気配管と非凝縮性ガス分離器とを連通させて、蒸気配管と非凝縮性ガス分離器とを均圧にする均圧管と、圧力逃し管と非凝縮性ガス分離器の上部とを連通させて、非凝縮性ガス分離器の非凝縮性ガスを圧力逃し管に排出する、非凝縮性ガス逃し管と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
本発明の熱利用ユニットは、蒸気配管と、圧力逃し管とが実質的に同一の口径を有しており、圧力逃し管の非凝縮性ガス分離器側の端部が、非凝縮性ガス分離器内の熱水によって液封されている。
【0010】
本発明の熱利用ユニットは、非凝縮性ガス分離器の最大圧力が0.1013MPaA(大気圧)以上0.106MPaA以下である。
【0011】
本発明の熱利用ユニットは、熱源の流体が蒸気と熱水とからなる地熱流体であり、流体供給配管が地中の源泉に連通していることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の熱利用ユニットは、均圧管と非凝縮性ガス逃し管とを設け、さらに蒸気配管と圧力逃し管とを実質的に同一の口径とすることによって、フラッシュタンクから非凝縮性ガス分離器を経由して熱水槽に至るユニット内の圧力を大気圧と同等の圧力とすることができる。それぞれの容器に耐圧特性が要求されないために、高価な安全弁や自動弁とこれらの制御手段を備える必要がなく、非凝縮性ガス分離器と配管とをより簡易な構成とすることができ、装置全体を安価に構成することができる。
【0013】
本発明の熱利用ユニットは、大気圧と同等の圧力に維持されるために、長期の信頼性が高く、維持管理が容易であり、また管理費用を低減することができる。
【0014】
本発明の熱利用ユニットは、従来の加圧条件で熱利用を行うシステムと比較すると、より多くの蒸気潜熱を利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態の熱利用ユニット1を模式的に示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明を実施するための形態として、本発明の熱利用ユニット1が、地中から高温高圧の熱水と蒸気からなる流体が供給される源泉20を利用する形態について説明する。
【0017】
図1は、本実施形態の熱利用ユニット1の構成を模式的に示した図である。熱利用ユニットは、フラッシュタンク2と、熱交換器3と、非凝縮性ガス分離器4と、熱水槽5とを備えている。また本発明の熱利用ユニット1の主要な配管は、流体供給配管11と、蒸気配管12と、圧力逃し管13と、熱水回収配管14と、均圧管15と、非凝縮性ガス逃し管16である。
【0018】
フラッシュタンク2には、流体供給配管11が接続されている。流体供給配管11の一端部は地中の源泉20に連通しており、他端部がフラッシュタンク2の上部に接続される。流体供給配管11を経由して、源泉20から熱水と蒸気からなる地熱流体が供給される。フラッシュタンク2は、タンク内で流体の圧力を低減することで蒸気量を増大させて蒸気配管12に導出する。またフラッシュタンク2は、底部にドレン口を備えており、側壁面に熱水槽5と連通する熱水排出配管18が接続されている。熱水排出配管18は、フラッシュタンク2の液位を一定に保ち、且つ熱水排出配管18からの蒸気の流出と空気の流入を防止するために液封されている。フラッシュタンク2は、以下に述べる構成によって、その圧力が0.1013MPaA(大気圧)以上0.106MPaA以下に維持される。
【0019】
フラッシュタンク2と熱交換器3との間は蒸気配管12で接続されており、熱交換器3に蒸気が供給される。熱交換器3は、フラッシュタンク2から供給される蒸気と、熱媒体循環配管30の中を循環する熱媒体との熱交換を行う。熱交換器3を通過した蒸気は、熱交換によって凝縮して熱水となった状態で、非凝縮性ガス分離器4に導入される。
【0020】
非凝縮性ガス分離器4は、熱交換後の熱水を受け入れて熱水から非凝縮性ガス及び蒸気を分離する。非凝縮性ガス分離器4と熱水槽5との間には、圧力逃し管13および熱水回収配管14が接続されている。非凝縮性ガス分離器4で非凝縮性ガス等を分離された熱水は、熱水回収配管14を通過して熱水槽5に一次貯留される。
【0021】
非凝縮性ガス分離器4と蒸気配管12との間に、均圧管15が接続され、非凝縮性ガス分離器4と蒸気配管12とは連通している。均圧管15によって、蒸気配管12と非凝縮性ガス分離器4とが均圧になる。
【0022】
非凝縮性ガス分離器4と熱水槽5との間を接続する圧力逃し管13の一端部は、非凝縮性ガス分離器4内部の液面よりも下方に開口している。他端部は、熱水槽5の内部に開口している。圧力逃し管13は、一端部と他端部との間に上方へ屈曲した屈曲部が設けられており、屈曲部の最上部の位置は非凝縮性ガス分離器4の上面よりもさらに上部に位置する。通常の稼働状態で、圧力逃し管13の一端部は非凝縮性ガス分離器4の内部で液封されている。熱交換器3で熱交換が行われず蒸気が凝縮しない場合には、非凝縮性ガス分離器4の液封が解除されて、圧力逃し管13から蒸気が排出される。
【0023】
熱水回収配管14の一端部は、非凝縮性ガス分離器4内部の液面の位置に開口している。熱水回収配管14の流路の途中には流量計6が配置され、また液封されている。熱水回収配管14は、非凝縮性ガス分離器4内の設定量を超えた熱水を排出して液面を一定高さに維持する。熱水回収配管14においては、途中が液封されているため、蒸気の排出と空気の流入が発生しない。
【0024】
非凝縮性ガス分離器4と蒸気配管12との間に配置された均圧管15は、非凝縮性ガス分離器4と蒸気配管12との圧力を均圧とし、若干加圧に維持する。
【0025】
さらに、熱利用ユニット1には、圧力逃し管13と非凝縮性ガス分離器4の液面よりも上部とを連通させる非凝縮性ガス逃し管16が配置されている。非凝縮性ガス逃し管16の管路の途中には、逆止弁17が設けられている。非凝縮性ガス分離器4の内部の非凝縮性ガスの圧力が規定の値を超えた場合には、非凝縮性ガス逃し管16から圧力逃し管13を経由して、非凝縮性ガス分離器4のガスの排出が行われる。
【0026】
圧力逃し管13の口径は、蒸気配管12の口径と実質的に同一となっている。圧力逃し管13のこの口径の特徴と、非凝縮性ガス逃し管16及び均圧管15を設けたことによって、非凝縮性ガス分離器4の内部の圧力は大気圧または若干加圧となり、結果として、熱利用ユニット1全体が大気圧または若干加圧となる。好ましい実施形態として、非凝縮性ガス分離器4の最大圧力は0.1013MPaA(大気圧)以上0.106MPaA以下となる。
【実施例】
【0027】
本発明の熱利用ユニット1を具現化した実施例を、以下に示す。以下の実施例では、坑口圧力0.04MPaGの源泉(熱水と蒸気からなる109.3℃の地熱流体)を利用する熱利用ユニット1の構成を説明する。
【0028】
本実施例では、直径1200mmフラッシュタンク2を用いており、フラッシュタンクの圧力は0.1013MPaA(大気圧)以上0.1018MPaA以下に維持されている。フラッシュタンク2は、100℃、1.6t/hrの蒸気を蒸気配管12に供給し、同時に、100℃、6.5t/hrの熱水を熱水排出配管18に排出する。蒸気配管12は200Aであり、熱水排出配管18には500mm液封がされている。熱交換器3には、150Aの蒸気配管で100℃の蒸気が供給されて、熱交換により熱水となって非凝縮性ガス分離器4に導入される。一方、熱媒体循環配管30を循環して蒸気から熱を受け取る65.3t/hrの熱媒体は、81.9℃から95℃に昇温される。
【0029】
非凝縮性ガス分離器4と熱水槽5との間を接続する圧力逃し管13は蒸気配管12と実質的に同一の口径となっており、蒸気流速が20m/sから30m/sの範囲となる口径とする。本実施例では200Aとした。
【0030】
圧力逃し管13の一端部は非収縮性ガス分離器4内で、熱水により50mm液封がなされている。50mm液封によって、熱利用システム1の内部は、最大0.1018MPaAに維持された。圧力逃し管13と非凝縮性ガス分離器4の液面よりも上部とを連通させる非凝縮性ガス逃し管16には、圧力逃し管13からの空気の逆流を遮断するための逆止弁17が設けられている。非凝縮性ガス逃し管16は、15Aであり、稼働時にユニット内の圧力を0.1018MPaAに維持された。
【0031】
熱水回収配管14は、流路上に流量計を備えた立上管50Aであり、液封200mmが設けられている。100℃、1.6t/hrの熱水が流れる。熱水回収配管14は、非凝縮性ガス分離器4内の液位を一定に保ち、液封により蒸気の排出と空気の流入を遮断する。
【0032】
非凝縮性ガス分離器4と蒸気配管12との間に、均圧管15が接続され、非凝縮性ガス分離器4と蒸気配管12とは連通している。
【0033】
このような、圧力逃し管13、均圧管15、および非凝縮性ガス逃し管16の構成により、熱利用ユニット1の内圧は、0.1013MPaA(大気圧)以上0.1018MPaAに維持される。
【0034】
本実施例の熱利用ユニット1が利用した蒸気の熱量と、同一の源泉から従来の高圧の熱利用ユニットが利用可能な蒸気の熱量の比較を、以下の表1に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
表1に示したとおり、容器及び配管が高圧である従来の熱利用ユニットと比較すると、本実施例の熱利用ユニットは、利用できる蒸気の熱量が約9%多く、より有効に熱エネルギーを利用していることは明らかである。
【0037】
以上、実施例において本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、それぞれの配管の配置、接続箇所、管の径、またフラッシュタンクや熱交換器の容量などは、本来の機能を損なわない範囲で自由に変更が可能である。また、実施例では地熱流体を利用する場合について詳細な説明を行ったが、工場等の排水、廃液からの熱を利用する場合でも、本発明の熱利用ユニットを適用することが可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 熱利用ユニット
2 フラッシュタンク
3 熱交換器
4 非凝縮性ガス分離器
5 熱水槽
11 流体供給配管
12 蒸気配管
13 圧力逃し管
14 熱水配管
15 均圧管
16 非凝縮性ガス逃し管
17 逆止弁
18 熱水排出配管
20 源泉
30 熱媒体循環配管