特許第6850478号(P6850478)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6850478
(24)【登録日】2021年3月10日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】口金具の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 33/207 20060101AFI20210322BHJP
   F16L 33/00 20060101ALI20210322BHJP
   B21D 51/16 20060101ALI20210322BHJP
   B21D 39/04 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   F16L33/207
   F16L33/00 A
   B21D51/16 B
   B21D39/04 B
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-127094(P2017-127094)
(22)【出願日】2017年6月29日
(65)【公開番号】特開2019-11777(P2019-11777A)
(43)【公開日】2019年1月24日
【審査請求日】2020年6月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000233619
【氏名又は名称】株式会社ニチリン
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桝野 哲朗
(72)【発明者】
【氏名】橋本 典幸
【審査官】 黒田 正法
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−100892(JP,A)
【文献】 特開2012−92897(JP,A)
【文献】 特開平10−9466(JP,A)
【文献】 特開2004−197915(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 33/207
B21D 39/04
B21D 51/16
F16L 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステンレス鋼製の略筒形状を有する接続部材と、この接続部材と同心状に前記接続部材内で固定される鉄製の管状の金具本体と、からなる口金具の製造方法であって、
前記金具本体は、第1の管体部と、第2の管体部と、前記第1の管体部の他端側と前記第2の管体部の一端側との間に形成された、前記第1の管体部の外径および前記第2の管体部の外径よりも大きな外径を有した周状突出部と、からなり、
前記接続部材には肩かしめ部が設けられているとともに、
この肩かしめ部は、前記接続部材の一端側から軸心方向に順に、前記周状突出部が挿通可能な第1開孔部と、前記周状突出部の軸心方向の長さよりも長い軸心方向の長さを有した内周面と前記第1開孔部よりも大きな内径とを有した第2開孔部とが同心状に形成されたものであり、
さらに、前記接続部材の他端側には、前記第2開孔部よりも大きな内径を有した第3開孔部が前記第2開孔部と同心状に形成されており、
前記接続部材を前記金具本体に挿入し、前記第1開孔部の内周面を前記第1の管体部の外周面と対向させ、かつ、前記第2開孔部の内周面を前記周状突出部の外周面と対向するように位置決めする位置決め工程と、
前記第1開孔部の内径が前記周状突出部の外径よりも小さく、かつ、前記接続部材が前記金具本体に対して軸方向に移動可能となるように、前記位置決め工程で位置決めされた前記接続部材の第1開孔部が形成された肩かしめ部を径方向にかしめる肩かしめ工程と、
前記第2開孔部と前記第3開孔部の境界にある前記接続部材の軸心方向の端面を、前記接続部材の他端側から一端側へ軸心方向に塑性変形させて内周返り部を形成するとともに、前記肩かしめ工程後の第1開孔部と第2開孔部の境界にある前記接続部材の軸心方向の端面および第2開孔部の内周面並びに前記内周返り部によって、前記周状突出部を縦断面視コの字状に挟み込むようにかしめる接続部材と金具本体とのかしめ工程と、
を備えることを特徴とする口金具の製造方法。
【請求項2】
前記肩かしめ工程は、前記第1開孔部の内径が前記周状突出部の外径よりも小さく、かつ、前記接続部材が前記金具本体に対して軸方向に移動可能となるように、前記位置決め工程で位置決めされた前記接続部材の第1開孔部および第2開孔部が形成された肩かしめ部を径方向にかしめることを特徴とする請求項1に記載の口金具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ブレーキホース、クラッチホースまたはパワーステアリングホース等に用いられる口金具の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の口金具は、一端側にパイプ等を備えるとともに、他端側に円筒状のソケットを備え、このソケットの内側に、中心部にオイル通路を有するニップルが形成されたものが一般的である。
【0003】
上記口金具として、鉄製のパイプと鉄製のソケットが一体構造をなし、その一体構造の表面に電気めっきが施されているものが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、上記口金具として、鉄製のパイプと鉄製のソケットがろう付加工され、ろう付加工された後の口金具の表面に電気めっきが施されているものも知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
また、上記口金具として、電気めっきが施された鉄製のパイプの一端側をニップルとし、このニップルの軸方向のかしめ溝と、電気めっきが施された鉄製のソケットの有孔底部との位置合わせをして、このソケットの外周から肩かしめを行ない一体化させた構成も知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−7241号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2002/0096877号明細書
【特許文献3】特開2012−225510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1や特許文献2に開示された技術は、ソケットとニップルとの間に挿入されたホースの締結に際して、ソケットを外周からかしめるため、ソケットの表面に施された電気めっきがダメージを受けてしまう。したがって、顧客から要求される耐食性を満足することができないという問題点があった。また、ダメージを受けたソケット全体をゴム製や樹脂製等の被覆部材で覆う方法もあるが、コスト高となるばかりか、外観性も劣る欠点がある。
【0007】
また、上記特許文献3に開示された技術においても、上記特許文献1や特許文献2と同様な問題点がある。そこで、鉄製のソケットをステンレス鋼製のソケットに代えることで、前記問題点を回避する(顧客から要求される耐食性を満足する)ことは可能になる。しかし、経年劣化等により、ニップルとホースとの間にオイルが伝わり、肩かしめされたソケットとパイプとの固定部からオイルが漏れることがある。特に、鉄製のパイプの他端側は、車両毎の取付レイアウトに対応するため、多くの種類があり、この鉄製のパイプの他端側には、アイジョイント金具等がろう付加工されている。そのため、ろう付け後の鉄製のパイプは軟化しており、従来の周方向からの肩かしめでは、ステンレス鋼製のソケットのスプリングバック量が、前記パイプのスプリングバック量に比べて、より大きくなってしまう。このようなスプリングバック量の差異があると、肩かしめされたソケットとパイプとの固定部に隙間ができ、オイル漏れが発生する虞がある。また、パイプ側のスプリングバック量を改善した材質にする方法もあるが、一般的にコスト高となってしまうという欠点がある。
【0008】
本発明の目的は、安価であり、外観性を損なうこともない構成でありながら、耐食性に優れるとともに、オイル漏れが防止できる口金具の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために、第1発明に係る口金具の製造方法は、ステンレス鋼製の略筒形状を有する接続部材と、この接続部材と同心状に前記接続部材内で固定される鉄製の管状の金具本体と、からなる口金具の製造方法であって、
前記金具本体は、第1の管体部と、第2の管体部と、前記第1の管体部の他端側と前記第2の管体部の一端側との間に形成された、前記第1の管体部の外径および前記第2の管体部の外径よりも大きな外径を有した周状突出部と、からなり、
前記接続部材には肩かしめ部が設けられているとともに、
この肩かしめ部は、前記接続部材の一端側から軸心方向に順に、前記周状突出部が挿通可能な第1開孔部と、前記周状突出部の軸心方向の長さよりも長い軸心方向の長さを有した内周面と前記第1開孔部よりも大きな内径とを有した第2開孔部とが同心状に形成されたものであり、
さらに、前記接続部材の他端側には、前記第2開孔部よりも大きな内径を有した第3開孔部が前記第2開孔部と同心状に形成されており、
前記接続部材を前記金具本体に挿入し、前記第1開孔部の内周面を前記第1の管体部の外周面と対向させ、かつ、前記第2開孔部の内周面を前記周状突出部の外周面と対向するように位置決めする位置決め工程と、
前記第1開孔部の内径が前記周状突出部の外径よりも小さく、かつ、前記接続部材が前記金具本体に対して軸方向に移動可能となるように、前記位置決め工程で位置決めされた前記接続部材の第1開孔部が形成された肩かしめ部を径方向にかしめる肩かしめ工程と、
前記第2開孔部と前記第3開孔部の境界にある前記接続部材の軸心方向の端面を、前記接続部材の他端側から一端側へ軸心方向に塑性変形させて内周返り部を形成するとともに、前記肩かしめ工程後の第1開孔部と第2開孔部の境界にある前記接続部材の軸心方向の端面および第2開孔部の内周面並びに前記内周返り部によって、前記周状突出部を縦断面視コの字状に挟み込むようにかしめる接続部材と金具本体とのかしめ工程と、
を備えることを特徴とする。
【0010】
また、第2発明に係る口金具の製造方法は、第1発明に係る口金具の製造方法において、前記肩かしめ工程は、前記第1開孔部の内径が前記周状突出部の外径よりも小さく、かつ、前記接続部材が前記金具本体に対して軸方向に移動可能となるように、前記位置決め工程で位置決めされた前記接続部材の第1開孔部および第2開孔部が形成された肩かしめ部を径方向にかしめることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
上記第1発明に係る口金具の製造方法の構成によれば、ステンレス鋼製の略筒形状を有する接続部材を採用しているため、接続部材全体を被覆部材で覆う必要もなく、コスト高となることがないばかりか、外観性を損なうこともなく、かつ、耐食性にも優れる(すなわち、接続部材と第2の管体部との間に挿入されたホースの締結に際して、接続部材を外周からかしめても、顧客から要求される耐食性を満足する)。また、通常の鉄製の管状の金具本体を採用し、特別にスプリングバック量を改善した材質に調質する必要がないため、コスト高となってしまうこともない。
【0012】
また、上述した位置決め工程と2段階のかしめ工程{すなわち、1段階目のかしめ工程(肩かしめ工程)と2段階目のかしめ工程(接続部材と金具本体のかしめ工程)とが組み合わされたかしめ工程である}とを備え、前記肩かしめ工程後の第1開孔部と第2開孔部の境界にある前記接続部材の軸心方向の端面および第2開孔部の内周面並びに前記内周返り部によって、前記周状突出部を縦断面視コの字状に挟み込むようにかしめるため、オイル漏れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態に係る口金具の製造方法において、位置決め工程としての接続部材を金具本体に挿入する手順を説明するための説明図である。
図2】本実施形態に係る口金具の製造方法における肩かしめ工程を説明するための説明図であって、(a)位置決めをして肩かしめされる前、(b)肩かしめされた後の各状態を示す。
図3】本実施形態に係る口金具の製造方法における接続部材と金具本体とのかしめ工程並びにホース接続工程を説明するための説明図であって、(a)かしめ工程前、(b)かしめ工程後の各状態を示し、(c)接続部材と金具本体のかしめ工程が完了した後に、さらにホースを接続した後の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態に係る口金具の製造方法について、車両用ブレーキホースの口金具の製造方法を例として、添付図1〜3を参照しながら、その製造工程手順に沿って説明する。
【0015】
図1は、本実施形態に係る口金具の製造方法において、位置決め工程としての接続部材を金具本体に挿入する手順を説明するための説明図、図2は、本実施形態に係る口金具の製造方法における肩かしめ工程を説明するための説明図であって、(a)位置決めをして肩かしめされる前、(b)肩かしめされた後の各状態を示し、図3は、本実施形態に係る口金具の製造方法における接続部材と金具本体のかしめ工程並びにホース接続工程を説明するための説明図であって、(a)かしめ工程前、(b)かしめ工程後の各状態を示し、(c)接続部材と金具本体のかしめ工程が完了した後に、さらにホースを接続した後の状態を示す。
【0016】
本実施形態に係る口金具の製造方法は、ステンレス鋼製の略筒形状を有する接続部材としてのソケット5と、このソケット5と同心状にソケット5内で固定される鉄製の管状の金具本体4と、からなる口金具を製造する方法を例とする。ここで、略筒形状とは、円形状、多角形状等の外形断面形状と、この断面の直行方向に円形断面の空洞部を有する筒形の形状である。
【0017】
前記金具本体4は、第1の管体部としてのパイプ1と、第2の管体部としてのニップル2と、パイプ1の他端側とニップル2の一端側との間に形成された、パイプ1の外径d1(=5mm)およびニップル2の外径d2(=3.2mm)よりも大きな外径d3(=6mm)を有した周状突出部3と、からなる。また、パイプ1と周状突出部3用の材料としては、TDW(JASO M101:二重巻鋼管)、TSW(JASO M101:一重巻鋼管)、STKM(機械構造用炭素鋼鋼管)或いはSTAM(自動車構造用電気抵抗溶接炭素鋼鋼管)等を用いることができ、パイプ1と周状突出部3とは一体に形成されている。また、ニップル2用の材料としては、クロムモリブテン鋼(SCM415〜SCM440)、冷間鍛造用炭素鋼(SWCH12〜SWCH20)、機械構造用炭素鋼(S10C〜S45C)或いはSTKM等を用いることができる。そして、パイプ1と周状突出部3とが一体に形成された周状突出部3にニップル2を接合することで、金具本体4が完成する。また、パイプ1の一端側には、アイジョイント等の相手部品との接続用金具が形成されているが、ここでは、図示および詳細な説明を省略する。
【0018】
また、前記ソケット5には、肩かしめ部5aが設けられているとともに、この肩かしめ部5aは、ソケット5の一端側から軸心方向に順に、外径d3を有した周状突出部3が挿通可能な内径d4(=6.1mm)を有した第1開孔部6と、周状突出部3の外周面の軸心方向の長さ(=1.5mm)よりも長い軸心方向の長さ(=3mm)を有した内周面と第1開孔部6よりも大きな内径d5(=7mm)とを有した第2開孔部7とが同心状に形成されている。さらに、ソケット5の他端側には、第2開孔部7よりも大きな内径d6(=8mm)を有した第3開孔部8が第2開孔部7と同心状に形成されている。ソケット5の材料としては、オーステナイト系ステンレス鋼(例えば、18−8ステンレス鋼)、フェライト系のステンレス鋼、マルテンサイト系のステンレス鋼、オーステナイト・フェライト二相ステンレス鋼および析出硬化ステンレス鋼等、多くのステンレス鋼を用いることができる。
【0019】
次に、口金具の製造方法の各工程に関して、以下に順次説明する。
【0020】
(位置決め工程)
図1に示すように、ソケット5を金具本体4に挿入する。そして、図2(a)に示すように、第1開孔部6の内周面をパイプ1の外周面のみと対向させ、かつ、第2開孔部7の内周面をパイプ1の外周面および周状突出部3の外周面3bおよびニップル2の外周面と対向するように位置決めする。このように位置決めすることにより、第1開孔部6と第2開孔部7との境界にあるソケット5の軸心方向の端面6aと周状突出部3の一端側の端面3aとの間に、ソケット5が金具本体4に対して軸方向に移動可能となる十分な間隙が生ずるので好ましい。しかし、第1開孔部6の内周面をパイプ1の外周面と対向させ、かつ、第2開孔部7の内周面を周状突出部3の外周面3bと対向するように位置決めするだけでも、ソケット5が金具本体4に対して軸方向に移動可能となる間隙が実際上は多少生ずるので、このような位置決めを採用することも可能である。
【0021】
(肩かしめ工程)
次に、図2(a)に示す第1開孔部6の内径d4が周状突出部3の外径d3よりも小さく、かつ、ソケット5が金具本体4に対して軸方向に移動可能となるように、上記位置決め工程で位置決めされたソケット5の第1開孔部6および第2開孔部7が形成された箇所に対応する肩かしめ部5aを外周数箇所から(例えば、8本のツメで)径方向{矢印(⇒)で示す方向}にかしめる。その結果、図2(b)に示すように、第1開孔部6の内径d7(肩かしめ後の内径)が周状突出部3の外径d3よりも小さく、かつ、ソケット5が金具本体4に対して軸方向に移動可能である。すなわち、第2開孔部7の内径d8(肩かしめ後の内径)が、周状突出部3の外径d3よりもわずかに大きい。したがって、図2(b)に示すようなソケット5と金具本体4の状態であると、ソケット5が金具本体4に対して引っかかり、ソケット5が金具本体4から落ちないばかりか、次工程(ソケット5と金具本体4のかしめ工程)の位置決めも容易となる。また、この状態であると、ソケット5が金具本体4に対して固着されていないため、ソケット5が金具本体4に対して軸方向に移動可能であるばかりか、ソケット5は金具本体4に対して回転も可能であり好ましい。しかし、肩かしめ工程は、本実施形態の例に必ずしも限定されるものではなく、第1開孔部6の内径d4が周状突出部3の外径d3よりも小さく、かつ、ソケット5が金具本体4に対して軸方向に移動可能となるように、位置決めされたソケット5の第1開孔部6が形成された箇所に対応する肩かしめ部5aを外周数箇所から(例えば、8本のツメで)径方向{矢印(⇒)で示す方向}にかしめる肩かしめを採用することも可能である。
【0022】
(接続部材と金具本体のかしめ工程)
次に、図3(a)に示すように、上記肩かしめ工程でかしめられた第2開孔部7と第3開孔部8との境界にあるソケット5(接続部材)の軸心方向の端面7aを、ソケット5の他端側から一端側へ軸心方向に{矢印(⇒)で示す方向に}、かしめピン{図示は省略、外径D1(後記、図3(b)に示すかしめ径D1に相当)}を用いて、かしめる径方向の肉厚t1、かしめ量H1(各々後記、図3(b)参照)だけプレス加工する。そして、図3(b)に示すように、前記プレス加工により、塑性変形させて内周返り部7bを形成するとともに、上記肩かしめ工程後の第1開孔部6と第2開孔部7との境界にあるソケット5の軸心方向の端面6aおよび第2開孔部7の内周面並びに内周返り部7bによって、周状突出部3を縦断面視コの字状に挟み込むようにかしめる。また、前述したD1、d8およびt1には、(D1−d8)/2=t1を満足する関係がある。なお、本実施形態においては、D1=7mm,t1=0.5mm,H1=1.3mmである。
【0023】
また、図3(c)に示すように、ソケット5と金具本体4とのかしめ工程が完了した後に、さらにソケット5とニップル2との間にホース10を挿入し、ソケット5の加締部5bを外周数箇所から矢印(⇒)で示すように求心方向にかしめて、ホース10を接続する。
【0024】
上記ソケット5と金具本体4とのかしめ工程では、上記肩かしめ工程後の第1開孔部6と第2開孔部7との境界にあるソケット5の軸心方向の端面6aおよび第2開孔部7の内周面並びに内周返り部7bによって、周状突出部3を縦断面視コの字状に挟み込むようにかしめられているため、仮に経年変化により、ニップル2とホース10との間にオイルが伝わったとしても、オイル漏れが防止できる{顧客から要望される所定の耐圧試験(例えば、条件:30MPa×3分)により確証済みである}。前記オイル漏れが防止できるのは、周状突出部3の他端側の稜部3dの曲率半径rが0.5mmであるため、ソケット5の他端側から一端側へ軸心方向にかしめピンを用いてプレス加工し、塑性変形させて内周返り部7bを形成する際に、前記稜部3dが上記肩かしめ工程後の第2開孔部7の内周面と内周返り部7bとの境目に線接触しながら食い込むことによる楔効果に起因しているのではないかと考えている。
【0025】
なお、本実施形態においては、周状突出部3の他端側の稜部3dの曲率半径rが0.5mmである場合について説明したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、上記楔効果に基づくならば、稜部3dの曲率半径rは1.0mm以下が好ましく、0.5mm以下がより好ましい。
【0026】
上述したように、本発明に係る口金具の製造方法の構成によれば、ステンレス鋼製の略筒形状を有する接続部材を採用しているため、接続部材全体を被覆部材で覆う必要もなく、コスト高となることがないばかりか、外観性を損なうこともなく、かつ、耐食性にも優れる(すなわち、接続部材と第2の管体部の間に挿入されたホースの締結に際して、接続部材を外周からかしめても、顧客から要求される耐食性を満足する)。また、通常の鉄製の管状の金具本体を採用し、特別にスプリングバック量を改善した材質に調質する必要がないため、コスト高となってしまうこともない。このように、本発明を採用したならば、安価であり、外観性を損なうこともない構成でありながら、耐食性に優れるとともに、オイル漏れが防止できるという作用効果を奏する。
【0027】
以上、本発明の実施形態を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成等は、適宜設計変更可能である。また、発明を実施するための形態に記載された、作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、発明を実施するための形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0028】
1 パイプ
2 ニップル
3 周状突出部
3a、3c 端面
3b 外周面
3d 稜部
4 金具本体
5 ソケット
5a 肩かしめ部
5b 加締部
6 第1開孔部
6a 端面
7 第2開孔部
7a 端面
7b 内周返り部
8 第3開孔部
10 ホース
図1
図2
図3