(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6850496
(24)【登録日】2021年3月10日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】ガス供給装置
(51)【国際特許分類】
F17C 7/00 20060101AFI20210322BHJP
B63C 11/22 20060101ALI20210322BHJP
B63C 11/16 20060101ALI20210322BHJP
A62B 9/00 20060101ALN20210322BHJP
【FI】
F17C7/00 A
B63C11/22
B63C11/16 Z
!A62B9/00 Z
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-66978(P2019-66978)
(22)【出願日】2019年3月29日
(65)【公開番号】特開2020-165497(P2020-165497A)
(43)【公開日】2020年10月8日
【審査請求日】2019年9月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】519114775
【氏名又は名称】平瀬 剛介
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】平瀬 剛介
【審査官】
結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2013/0333704(US,A1)
【文献】
米国特許第7156092(US,B2)
【文献】
米国特許第9994292(US,B2)
【文献】
独国特許出願公開第102006003165(DE,A1)
【文献】
特開2013−180196(JP,A)
【文献】
中国実用新案第207550136(CN,U)
【文献】
韓国登録実用新案第20−0473481(KR,Y1)
【文献】
米国特許第4996982(US,A)
【文献】
SPAREAIR OWNER'S MANUAL,米国,SUBMERSIBLE SYSTEMS, LLC,2018年,pp.1-12
【文献】
New Device Lets You Breathe Underwater Without Diving Equipment,NEWSLETTER,米国,San Jose Flipper Dippers,2017年 7月,Vol.52, No.7,p.5
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63C 11/22,11/16,
A62B 9/00,
F17C 13/08, 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素を含有するガスを収容する収容室を有する容器本体と、前記収容室に収容された前記ガスの圧力を調整すると共に調整された前記ガスを当該収容室の外部に吐出する吐出部材と、を備えて、使用者に前記ガスを供給するガス供給装置であって、
前記容器本体と前記吐出部材とは、互いに連結されて一体化され、
前記容器本体を使用者の腕部に固定するための固定部材を更に備え、
前記固定部材は、可撓性を有すると共に、前記容器本体が挿入される容器本体挿入部を備え、
前記容器本体挿入部は、前記容器本体の周囲を覆う筒状に形成されると共に、その内部に前記容器本体を挿入可能に構成され、
前記容器本体挿入部は、前記容器本体における軸方向の一部の領域の周囲を覆うように構成され、前記容器本体が、前記容器本体挿入部に対して前記軸方向の両側に突出しているガス供給装置。
【請求項2】
前記固定部材は、可撓性を有すると共に、前記腕部が挿入される腕部挿入部を備え、
前記腕部挿入部は、前記腕部の周囲を覆う筒状に形成されると共に、その内部に前記腕部を挿入可能に構成され、
前記容器本体挿入部の軸心と前記腕部挿入部の軸心とが互いに平行となるように、前記容器本体挿入部と前記腕部挿入部とが並んで配置され、
前記容器本体挿入部と前記腕部挿入部とが連結部により互いに連結され、
前記容器本体挿入部が、前記軸方向における前記腕部挿入部の存在範囲内に配置されている請求項1に記載のガス供給装置。
【請求項3】
前記容器本体挿入部と前記腕部挿入部との前記軸方向における存在範囲が、同等である請求項2に記載のガス供給装置。
【請求項4】
前記腕部挿入部は、内周長を調整する調整部を備えている請求項2又は3に記載のガス供給装置。
【請求項5】
前記容器本体は、前記収容室を複数並列に並べられた状態で有し、
前記容器本体挿入部は、複数の前記収容室に応じて複数形成されている請求項1から4のいずれか一項に記載のガス供給装置。
【請求項6】
前記容器本体は、複数の前記収容室が合流する合流部を更に有し、
複数の前記容器本体挿入部のそれぞれが、前記軸方向の同じ位置において、対応する前記収容室の周囲を覆うように構成され、
複数の前記容器本体挿入部のそれぞれに対して前記軸方向の一方側に、前記収容室の一部が突出しており、
複数の前記容器本体挿入部のそれぞれに対して前記軸方向の他方側に、前記合流部が配置されている請求項5に記載のガス供給装置。
【請求項7】
前記吐出部材は、使用者が口にくわえることが可能な給気部を備え、
前記給気部は、前記容器本体と前記吐出部材との連結方向に交差する方向に向かって突出するように設けられており、
前記給気部は、姿勢変更機構を有し、当該姿勢変更機構によって、突出方向の変更及び当該突出方向周りの回転の少なくとも一方の姿勢変更が可能に構成されている請求項1から6のいずれか一項に記載のガス供給装置。
【請求項8】
前記吐出部材は、前記収容室の内部の圧力を表示する圧力表示部を備え、
前記圧力表示部は、前記給気部と並んで配置されている請求項7に記載のガス供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素を含有するガスを使用者に供給するガス供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなガス供給装置が、例えば、下記の特許文献1(実公平7−017316号公報)に開示されている。特許文献1のガス供給装置〔A〕は、小型で軽量のガスカートリッジ〔3〕が用いられることにより簡易的に構成されている。特許文献1には、このようなガス供給装置〔A〕を、防災用や医療用の他、潜水用として用いることができる点が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平7−017316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、水中を撮影可能な技術の発展により(例えば、水中撮像機能を有するスマートフォンの普及等により)、海水浴場などの現場において海中での写真撮影の需要が高まっており、ある程度の時間継続して海中を遊泳可能とすることが求められている。しかしながら、特許文献1に開示されているようなガス供給装置を潜水用として用いた場合、使用者は、ガス供給装置からガスの供給を受ける際には当該ガス供給装置を口にくわえた状態となり、ガスの供給を受けない際には当該ガス供給装置を口から離して手で持つ状態となる。そのため、使用者がガスの供給を受けない際には、ガス供給装置を持つ手に自由が利かず、遊泳に支障をきたす可能性がある。一方、使用者が、ガス供給装置を手で持つことなく常に口でくわえた状態を維持しようとすると、水の抵抗に耐えきれずにガス供給装置を口から離してしまう可能性が高く、この場合にも、遊泳に支障をきたす可能性がある。
【0005】
上記実情に鑑み、遊泳の自由度を向上させることが可能なガス供給装置の実現が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るガス供給装置は、
酸素を含有するガスを収容する収容室を有する容器本体と、前記収容室に収容された前記ガスの圧力を調整すると共に調整された前記ガスを当該収容室の外部に吐出する吐出部材と、を備えて、使用者に前記ガスを供給するガス供給装置であって、
前記容器本体と前記吐出部材とは、互いに連結されて一体化され、
前記容器本体を使用者の腕部に固定するための固定部材を更に備えていることを特徴とする。
【0007】
本構成によれば、固定部材によって使用者の腕部に容器本体および吐出部材を固定することができる。これにより、使用者は、ガスの供給を受けたい場合には、腕部を動かして容器本体と一体となっている吐出部材を口に近づけることにより、当該吐出部材から吐出されるガスの供給を受けることができる。そして、ガスの供給を受けない場合には、容器本体が固定されている腕部を含め、両腕を自由に使うことができ、遊泳の自由度を向上させることが可能となる。
【0008】
ここで、
前記吐出部材は、使用者が口にくわえることが可能な給気部を備え、
前記給気部は、前記容器本体と前記吐出部材との連結方向に交差する方向に向かって突出するように設けられており、
前記給気部は、姿勢変更機構を有し、当該姿勢変更機構によって、突出方向の変更及び当該突出方向周りの回転の少なくとも一方の姿勢変更が可能に構成されていると好適である。
【0009】
吐出部材と一体となっている容器本体を使用者の腕部に固定させる構成において、吐出部材に備えられた給気部からガスの供給を受ける際には、使用者は、腕部を動かして給気部を口に近づける必要がある。ここで、使用者の腕部の長さは人それぞれであり、腕部の長さによっては、給気部を口に近づけた際の当該腕部の角度が異なることになる。そのため、使用者によっては、ガスの供給を受けようとする場合に給気部の姿勢が給気に適切な姿勢とならない場合がある。本構成によれば、給気部が姿勢変更機構によってその姿勢を変更可能であるため、腕部の長さが異なる使用者のそれぞれについて、給気部を適切な姿勢にすることが可能となる。
【0010】
また、
前記吐出部材は、前記収容室の内部の圧力を表示する圧力表示部を備え、
前記圧力表示部は、前記給気部と並んで配置されていると好適である。
【0011】
本構成によれば、圧力表示部を給気部に近づけて配置することができる。これにより、使用者は、例えば、給気部からガスの供給を受ける一連の動作において、圧力表示部を確認することが容易となる。
【0012】
また、
前記固定部材は、可撓性を有すると共に、前記容器本体が挿入される容器本体挿入部と、前記腕部が挿入される腕部挿入部と、を備え、
前記容器本体挿入部は、前記容器本体が有する前記収容室の数に対応して設けられていると好適である。
【0013】
本構成によれば、例えば容器本体が複数の収容室を有する場合であっても、容器本体挿入部によって容器本体及びこれに連結された吐出部材を適切に保持することが可能となる。そして、使用者は、腕部挿入部によって容器本体及びこれに連結された吐出部材を適切に保持することが可能となる。また、このような容器本体挿入部および
腕部挿入部を備える固定部材が可撓性を有していることにより、容器本体の大きさが異なる場合、又は、使用者が異なることにより腕部の大きさが異なる場合であっても、ガス供給装置を適切に使用することが可能となる。
【0014】
また、
前記容器本体挿入部は、前記容器本体の周囲を覆う筒状に形成されると共に、その内部に前記容器本体を挿入可能に構成され、
前記腕部挿入部は、前記腕部の周囲を覆う筒状に形成されると共に、その内部に前記腕部を挿入可能に構成され、
前記容器本体挿入部の軸心と前記腕部挿入部の軸心とが互いに平行となるように、前記容器本体挿入部と前記腕部挿入部とが並んで配置されていると好適である。
【0015】
本構成によれば、ガス供給装置が腕部の長さ方向に沿う方向に大型化することを抑制でき、使用者による遊泳の自由度を適切に担保することが可能となる。
【0016】
また、
前記容器本体は、前記収容室を複数並列に並べられた状態で有し、
前記容器本体挿入部は、複数の前記収容室に応じて複数形成されていると好適である。
【0017】
本構成によれば、装置全体として収容可能なガスの容量を多くできると共に、複数の収容室を有する容器本体を適切に保持することができる。
【0018】
前記腕部挿入部は、内周長を調整する調整部を備えていると好適である。
【0019】
本構成によれば、腕部挿入部の内周長を使用者の腕部の太さに合わせて調整することができ、使用者が異なることにより腕部の太さが異なる場合であっても、ガス供給装置を適切に使用することが可能となる。
【0020】
本開示に係る技術のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図5】
図1におけるV矢視図であり、吐出部材のみを示している
【
図6】ガス供給装置を使用する際の使用者の動きを示す図
【
図7】使用者がガス供給装置からガスの供給を受けている様子を示す図
【発明を実施するための形態】
【0022】
〔実施形態〕
ガス供給装置1の実施形態の一例を、図面を参照して説明する。
図1に示すように、ガス供給装置1は、酸素を含有するガスを収容する収容室21を有する容器本体2と、収容室21に収容されたガスの圧力を調整すると共に調整されたガスを当該収容室21の外部に吐出する吐出部材3と、を備えている。
【0023】
図1及び2に示すように、容器本体2は、収容室21を覆う壁部22を有している。収容室21は、酸素を含有するガスを高圧状態で収容する。収容室21に収容されるガスは、酸素を含有するガス、又は酸素ガスそのものであっても良い。本実施形態では、収容室21は、酸素や窒素等を含有する空気を高圧状態で収容する。従って、収容室21が空となった場合、或いは、収容室21内のガスが少なくなった場合には、圧縮させた空気を収容室21に収容することで、収容室21の内部をガスで満たすことができる。
【0024】
ガス供給装置1は、このようなガスを当該ガス供給装置1の使用者9(
図6参照)に供給するように構成されている。ガス供給装置1は、防災用、医療用として用いることが可能であるが、潜水用として用いると好適である。吐出部材3は、いわゆるレギュレータであり、容器本体2の収容室21に充填されている高圧状態のガス(高圧空気)を、使用者9の潜水深度に合った圧力に減圧して吐出する。
【0025】
本実施形態では、容器本体2は、収容室21を複数並列に並べられた状態で有している。図示の例では、容器本体2は、並列に並べられた2つの収容室21を有しており、2つの収容室21が合流する合流部23を更に有している。合流部23は、上述の収容室21を覆う壁部22によって覆われており、容器本体2における吐出部材3が連結している側に形成されている。換言すれば、合流部23は、収容室21と吐出部材3との間に形成されている。これにより、容器本体2が複数の収容室21を有する場合であっても、1つの吐出部材3によってガスを吐出可能な構成を実現できる。
【0026】
図1に示すように、容器本体2と吐出部材3とは、互いに連結されて一体化されている。図示は省略するが、容器本体2と吐出部材3との連結部分には、例えばパッキン等の封止部材が設けられている。これにより、容器本体2と吐出部材3との連結部分は、ガス漏れがないように封止されている。
【0027】
図1、4及び5に示すように、吐出部材3は、使用者9が口部91(
図6参照)にくわえることが可能な給気部31を備えている。使用者9は、給気部31をくわえた状態でガスの供給を受けることができる。本実施形態では、給気部31は、容器本体2と吐出部材3との連結方向に交差する方向に向かって突出するように設けられている。図示の例では、給気部31は、上記の連結方向に対して直交する方向に向かって突出するように設けられている。
【0028】
本実施形態では、給気部31は、吐出部材3の側面3Fに設けられている。本例では、吐出部材3は、高圧状態のガスを減圧する調圧機構が内部に備えられた本体部30を有しており、給気部31は、本体部30から突出して設けられている。なお、
図5では、説明の便宜上、吐出部材3のみを示している。
【0029】
ここでは、吐出部材3の側面3Fは、吐出部材3と容器本体2とが並ぶ方向に対して直交する方向を向く面である。本実施形態では、給気部31を除く吐出部材3の外径(本体部30の外径)は、概ね円柱状に形成されている。従って、本実施形態において、吐出部材3の側面3Fは、円筒状に形成された外周面である。但し、このような構成に限定されることなく、吐出部材3は、多角柱状(例えば四角柱状や五角柱状など)に形成されていても良い。この場合、吐出部材3は複数の側面を有し、複数の側面のうちいずれかの側面(側面3F)に、給気部31が設けられる。なお、
図5に示すように、本体部30の端面には、複数の圧力調整孔32が形成されている。使用者9がガス供給装置1を用いて遊泳している際には、複数の圧力調整孔32を介して本体部30の内部に水が案内される。これにより、本体部30の内部に設けられたダイヤフラム(不図示)が弾性的に変形(湾曲)して、本体部30の内部の圧力が適切に保たれる。
【0030】
本実施形態では、給気部31は、本体部30から突出する管状の給気路31Aと、給気路31Aの端部で開口する給気口31Bと、使用者9によって噛み込み挟持される噛み込み部31Cと、給気口31B及び噛み込み部31Cを覆うと共に使用者9がガスの供給を受ける際に給気口31Bから吐出されるガスが漏れないように構成されたカバー部31Dと、を有している。詳細には、カバー部31Dは、使用者9がガスの供給を受ける際に、当該使用者9の口部91の周りを覆うように構成されており、ガス供給時のガス漏れを抑制可能となっている。上記の構成により、本体部30の調圧機構で減圧されたガスが、給気路31Aを通って給気口31Bから吐出し、使用者9の口部91の内部に供給される。また、使用者9は、噛み込み部31Cを噛み込み挟持することによって、手を使うことなく、顎の力のみで給気部31をくわえた状態を維持することができる。なお、本体部30は、逆止弁を備えた排気路(不図示)を備えており、排気路を介して使用者9の呼気を排出可能であると共に、逆止弁によって本体部30の内部に水が逆流することを抑制可能となっている。
【0031】
本実施形態では、吐出部材3は、収容室21の内部の圧力を表示する圧力表示部33を備えている。これにより、使用者9は、ガスの残量を確認することができ、安全に遊泳することができる。なお、本例では、圧力表示部33は、圧力変化に応じて揺動する指針を有するアナログ式に構成されている。但し、このような構成に限定されることなく、圧力表示部33は、ガスの残量を数値や記号などによって示すデジタル式に構成されていても良い。
【0032】
ここで、従来のガス供給装置を潜水用として用いた場合、使用者は、ガス供給装置からガスの供給を受けない際には当該ガス供給装置を口から離して手で持つ状態となる。この状態では、ガス供給装置を持つ手に自由が利かず、遊泳に支障をきたす可能性があった。一方、使用者が、ガス供給装置を手で持つことなく常に口でくわえた状態を維持しようとすると、水の抵抗に耐えきれずにガス供給装置を口から離してしまう可能性が高く、この場合にも、遊泳に支障をきたす可能性があった。
【0033】
そこで、本開示に係るガス供給装置1は、
図1〜3、及び6に示すように、容器本体2を使用者9の腕部92に固定するための固定部材4を更に備えている。この構成によれば、
図6及び7に示すように、使用者9は、ガスの供給を受けたい場合には、腕部92を動かして容器本体2と一体となっている吐出部材3を口部91に近づけることにより、当該吐出部材3から吐出されるガスの供給を受けることができる。そして、ガスの供給を受けない場合には、容器本体2が固定されている腕部92を含め、両腕を自由に使うことができ、遊泳の自由度を向上させることが可能となる。更に、このような構成から、使用者9は、遊泳中に給気部31を常に口でくわえる必要がないため、例えば、給気部31について、上述の噛み込み部31Cを備えない構成とすることもできる。本実施形態では、容器本体2は、固定部材4によって、使用者9の腕部92のうちの前腕部に固定されるように構成されている。換言すれば、容器本体2は、使用者9の腕部92における、手関節と肘関節との間に固定されるように構成されている。更に、本実施形態では、固定部材4は、容器本体2を使用者9の腕部92に対して直接的に固定するように構成されている。但し、直接的な固定でなく、間接的な固定であっても良い。例えば、固定部材4は、吐出部材3を使用者9の腕部92に固定することによって、容器本体2を当該腕部92に対して間接的に固定するようにしても良い。また、このような間接的な固定は、例えば、容器本体2と吐出部材3との連結部分を腕部92に固定することによって行うものであっても良い。
【0034】
本実施形態では、固定部材4は、可撓性を有すると共に、容器本体2が挿入される容器本体挿入部4Aと、腕部92が挿入される腕部挿入部4Bと、を備えている。
図2及び3に示すように、容器本体挿入部4Aと腕部挿入部4Bとは、連結部4Cにより互いに連結されている。図示の例では、容器本体挿入部4Aと腕部挿入部4Bとは、連結部4Cを間に挟んで配置されている。
【0035】
本例では、容器本体挿入部4Aは、ゴム製のバンド部材により構成されている。
図2に示すように、当該バンド部材が、筒状を成すと共にその表面および裏面に形成された第1接着部41Aによって接着することにより、容器本体挿入部4Aが形成されている。そして、腕部挿入部4Bも、容器本体挿入部4Aと同様に構成されており、第2接着部42Bを有している。本実施形態では、第1接着部41A及び第2接着部42Bは、面ファスナーにより構成されている。但し、このような構成に限定されることなく、第1接着部41A及び第2接着部42Bは、脱着可能に構成されていれば良く、例えば、凹凸を有して互いに嵌合する嵌合部などによって構成されていても良い。本例では、第1接着部41Aは、バンド部材の長手方向に沿って形成されており、容器本体挿入部4Aの内周長を調整可能となっている。同様に、第2接着部42Bは、バンド部材の長手方向に沿って形成されており、腕部挿入部4Bの内周長を調整可能となっている。このように、容器本体挿入部4A及び腕部挿入部4Bは、内周長を調整する調整部を備えており、本実施形態では、第1接着部41A及び第2接着部42Bのそれぞれが、調整部に相当する。
【0036】
本実施形態では、容器本体挿入部4Aは、容器本体2の周囲を覆う筒状に形成されると共に、その内部に容器本体2(収容室21)を挿入可能に構成されている。そして、腕部挿入部4Bは、腕部92の周囲を覆う筒状に形成されると共に、その内部に腕部92を挿入可能に構成されている。本例では、
図2及び3に示すように、容器本体挿入部4Aの軸心XAと腕部挿入部4Bの軸心XBとが互いに平行となるように、容器本体挿入部4Aと腕部挿入部4Bとが並んで配置されている。これにより、容器本体2が複数の収容室21を備える場合であっても、使用者9の腕部92にガス供給装置1が装着された際に、当該ガス供給装置1が腕部92の長さ方向に沿う方向に大型化することを抑制できる。従って、使用者9による遊泳の自由度を適切に担保することが可能となる。
【0037】
容器本体挿入部4Aは、容器本体2が有する収容室21の数に対応して設けられている。上述のように、本実施形態では、容器本体2は、複数(本例では2つ)の収容室21を有しているため、容器本体挿入部4Aは、複数(本例では2つ)の収容室21に応じて複数(2つ)形成されている。
【0038】
図1及び2に示すように、本実施形態では、ガス供給装置1は、容器本体2に対して固定部材4を適切な位置に位置決めするための位置決め部材5を備えている。位置決め部材5は、容器本体2に装着される。位置決め部材5は、収容室21の数に対応して備えられており、本例では、2つの収容室21に対応して2つ備えられている。図示の例では、位置決め部材5は、収容室21を覆う壁部22の周囲に装着される環状の装着部51と、当該装着部51の外周面に設けられて固定部材4を係止する係止部52と、を有している。
【0039】
係止部52は、1つの装着部51に対して複数(本例では2つ)設けられており、装着部51との間に、固定部材4が挿入される空間、詳細には、容器本体挿入部4Aを形成するバンド部材が挿入される空間を形成している(
図2参照)。容器本体挿入部4Aを形成するバンド部材が、装着部51と係止部52との間の空間に挿入されつつ、上述の第1接着部41Aが接着することで、固定部材4が容器本体2に対して位置決めされる。この位置決め部材5によって、固定部材4の位置決めをできることの他、容器本体2が固定部材4(或いは腕部92)から脱落することを抑制することも可能となっている。
【0040】
ここで、
図6を参照して上述したように、ガス供給装置1を使用する使用者9は、腕部92を動かして容器本体2と一体となっている吐出部材3を口部91に近づけることにより、ガスの供給を受けることが可能となっている。しかし、使用者9の腕部92の長さは人それぞれであり、腕部92の長さによっては、給気部31を口部91に近づける際の腕部92の角度が異なることとなる。そのため、使用者9によっては、ガスの供給を受けようとする場合に給気部31の姿勢、本例では、人の口の形状に合わせて形成された噛み込み部31C及びカバー部31Dの姿勢が、給気に適切な姿勢とならない場合がある。
【0041】
そこで、本実施形態では、
図1、4及び5に示すように、給気部31は、姿勢変更機構31Eを有し、当該姿勢変更機構31Eによって、突出方向の変更及び当該突出方向周りの回転の少なくとも一方の姿勢変更が可能に構成されている。図示の例では、姿勢変更機構31Eは、管状に形成された給気路31Aに対して、当該給気路31Aの軸心まわりに回転自在に連結されている。そして、姿勢変更機構31Eは、給気口31B、噛み込み部31C、及びカバー部31Dと共に一体回転する。これにより、姿勢変更機構31Eは、噛み込み部31C及びカバー部31Dを回転可能に構成されている。このように、本例では、姿勢変更機構31Eは、給気部31を回転させることによって、換言すれば、給気部31を突出方向周りに回転させることによって、当該給気部31の姿勢を変更する。
【0042】
また、本実施形態では、上述の圧力表示部33は、給気部31と並んで配置されている。これにより、圧力表示部33を給気部31に近づけて配置することができ、
図7に示すように、使用者9は、給気部31からガスの供給を受ける一連の動作において、圧力表示部33を確認することが容易となっている。
【0043】
以上説明したガス供給装置1によれば、使用者9は、ガスの供給を受けたい場合には、腕部92を動かして容器本体2と一体となっている吐出部材3を口部91に近づけることにより、当該吐出部材3から吐出されるガスの供給を受けることができる。そして、ガスの供給を受けない場合には、容器本体2が固定されている腕部92を含め、両腕を自由に使うことができ、遊泳の自由度を向上させることが可能となる。
【0044】
〔その他の実施形態〕
次に、ガス供給装置1のその他の実施形態について説明する。
【0045】
(1)上記の実施形態では、容器本体2が、収容室21を複数並列に並べられた状態で有している例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、複数の収容室21は、互いに異なる角度に傾いた状態で並べられていても良い。
【0046】
(2)上記の実施形態では、容器本体2が、2つの収容室21を有している例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、容器本体2は、収容室21を1つのみ有していても良いし、3つ以上有していても良い。また、収容室21が1つのみの場合、固定部材4の容器本体挿入部4Aに関しても、1つのみであると好適である。そして、収容室21が3つ以上ある場合、容器本体挿入部4Aに関しても、3つ以上であると好適である。
【0047】
(3)上記の実施形態では、姿勢変更機構31Eが、給気部31を回転させることによって、当該給気部31の姿勢を変更するように構成されている例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、姿勢変更機構31Eは、例えば、蛇腹状のフレキシブルホースによって構成されて、任意に変更された形状を維持可能に構成されていても良い。これにより、給気部31の姿勢を3次元的に変更可能となる。すなわち、給気部31は、姿勢変更機構31Eによって、突出方向の姿勢変更が可能に構成されていても良い。
【0048】
(4)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本開示に係る技術は、酸素を含有するガスを使用者に供給するためのガス供給装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 :ガス供給装置
2 :容器本体
3 :吐出部材
3F :側面
4 :固定部材
4A :容器本体挿入部
4B :腕部挿入部
21 :収容室
31 :給気部
31E :姿勢変更機構
33 :圧力表示部
9 :使用者
91 :口部
92 :腕部
XA :軸心
XB :軸心