(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の従来のはしご昇降装置は、車体上面に固着したガイドフレーム(ガイドレール)は、上下寸法が高く複雑な枠組み構造であって、その上を後方・前方へ移動する(はしごを搭載した)はしごケースは、地上から高い位置にあり、車両の転倒角度が小さくなるという欠点、及び、ガイドフレームの重量が大きくなるという欠点もあった。
【0005】
また、
図16と
図17は、本出願人が実施しているはしご昇降装置である。車両上面51に長い寸法のガイドフレーム(レール)52をベース部として、固定ブラケット53,53,53,53にて固着していた。さらに、複数のローラ54,54…にて(前後に)案内走行可能な走行フレーム55を、ガイドフレーム52に沿って配設していた。
【0006】
この走行フレーム55の上に搭載され、かつ、後方下傾に揺動可能として枢支軸56にて走行フレーム55に枢着された傾動自在枠57を備え、しかも、走行フレーム55に対して傾動自在枠57が枢支軸56廻りに、
図16から
図17に示すように後方下傾状に揺動した際に、所定の後方下傾姿勢で停止するリンク機構58を付設している。
【0007】
そして、Hははしごであって、はしごケース枠60に搭載されている。このはしごケース枠60と上記傾動自在枠57とは、一体状となるように相互に固着されている。
このようにして、枢支軸56廻りに、はしごケース枠60が、矢印Q方向に揺動し、地上の作業者が、はしごHの下端59を手で握って、引き降ろすことができる。
【0008】
図16,
図17に示した従来のはしご昇降装置では、次のような問題点があった。つまり、(i)ガイドフレーム52が長尺であり、かつ、固定ブラケット53も多数個必要であり、全体の重量が過大となる点、(ii)装置の全高寸法が大きくなる傾向にあり、従って、車両の転倒角度が小さくなる点、等の問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明は、車両の上面後方部位に固着される下ベース枠と、上記下ベース枠の後端に水平軸心廻りに揺動可能として枢着された揺動ブラケットと、該揺動ブラケットに回転自在に付設された複数の第1ガイドローラを、有する揺動誘導具と、横断面コの字型の左右縦桁と、該縦桁に水平軸心廻りに回転自在として枢着された複数の第2ガイドローラとを、有すると共に、上記揺動誘導具の第1ガイドローラを上記コの字型の縦桁の溝部に差込状として、上記下ベース枠の後端に対して、前後移動自在かつ後方下傾状に揺動自在として、保持された上ベース枠と、上記上ベース枠の上記第2ガイドローラが転動自在に嵌込まれる横断面略コの字型の左右の縦桁を有し、上記上ベース枠に対して前後方向に移動自在なガイドフレームと、上記ガイドフレームに載置状として固着されると共に、
救助用はしごを搭載自在なはしごケース枠と、上記下ベース枠と上ベース枠の間に介設されて、上ベース枠の後方下傾方向及び逆の水平姿勢復元方向の作動を制御するスイングアームとを、具備
し、さらに、上記スイングアームは、上記下ベース枠との間において、上ベース枠
及びはしごケース枠の後方下傾方向への揺動速度を規制するオイルダンパ、及び、
人力で、上ベース枠
及びはしごケース枠の水平状態への復元する際の復元モーメントを付与する
ための常時伸長方向弾発力発生用ガスダンパを、備
え、上記スイングアームは、基端が上記下ベース枠に枢着され、先端が上記上ベース枠に枢着され、上記スイングアームの上記基端廻りの揺動に伴って、上記上ベース枠は、上記揺動ブラケットが上記水平軸心廻りに揺動し、かつ、上記第1ガイドローラに誘導案内されて上ベース枠長手方向に沿って後方へ移動するよう構成
して、上記救助用はしごを、人力によって上記車両の上面よりも上方の位置に搭載し、かつ、人力によって地上に降ろすように構成した。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、車両上面に取付けるはしご昇降装置の軽量化を図り、かつ、全高を低く、コンパクト化を図ることができる。そして、装置全体の重量低減と重心低下を図ることによって、車両の転倒角度を減少でき、また、車両の低燃費化も可能となった。また、救助活動のスピードアップに寄与できると共に、作業性も向上できる。さらに、普通車登録の消防車にも積載可能となる場合もある。
しかも、人力のみで、安全かつ迅速に救助用はしごを車両の上方へ搭載できる。かつ、人力のみで、安全かつ迅速に地上に救助用はしごを降ろすことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】車両から後方へ少しスライドさせた状態を示す側面図である。
【
図3】車両から後方へ大きくスライドさせた状態を示す側面図である。
【
図4】後方下傾状となるように揺動を開始した状態を示す側面図である。
【
図5】最も大きく揺動させた最大後方下傾姿勢を示す側面図である。
【
図10】スイングアームの一例を示す平面図である。
【
図11】揺動誘導具の一例を示し、(A)は側面図、(B)は平面図、(C)は背面図である。
【
図12】ガイドフレームの一例を示し、(A)は平面図、(B)は(A)のb−b断面拡大図、(C)は上ベース枠の第2ガイドローラが嵌込まれた状態を示す一部断面説明図である。
【
図13】はしご、及び、はしごが搭載されたはしごケース枠を示す平面図である。
【
図14】はしご、及び、はしごが搭載されたはしごケース枠を示す側面図である。
【
図15】はしごケース枠の一例を示す横断面図である。
【
図17】はしごケース枠とそれに搭載したはしごが最大後方下傾姿勢となった状態を示した従来例の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図示の実施の形態に基づき本発明を詳説する。
図1〜
図5、及び、
図6〜
図9に於て、2点鎖線で示した車両10の上面後方部位10Bに、下ベース枠1が固着される。また、2は、この下ベース枠1の後端1Aに対して、水平軸心L
1 廻りに揺動可能で、しかも、全体が前後方向に移動可能として、連結(保持)された上ベース枠である。
【0013】
図11に於て、揺動誘導具3を例示する。この揺動誘導具3は、
図6,
図7,
図8,
図9及び
図11に示す如く、上記下ベース枠1の後端1Aに水平軸心L
1 廻りに揺動可能として枢着される揺動ブラケット4と、この揺動ブラケット4に回転自在に付設された複数の(図例では2個)の第1ガイドローラ5を、有する。
【0014】
ところで、上ベース枠2は、
図12(C)及び
図6,
図7,
図8,
図9に示すように、横断面コの字型(チャンネル型)の左右縦桁2A,2Aと、この縦桁2Aに水平軸心廻りに回転自在として枢着された複数の第2ガイドローラ2Bとを、有する。
【0015】
また、前述の揺動誘導具3の第1ガイドローラ5を、横断面コの字型の縦桁2Aの(凹状の)溝部12に差込状として、(下ベース枠1の後端1Aに対し、)上ベース枠2が、前後移動自在かつ後方下傾状に揺動自在として、保持されている。
【0016】
そして、
図12に示すように、6はガイドフレームであって、(上辺が下辺よりも長い寸法の)横断面コの字型の左右の縦桁6A,6Aを有する。上述の上ベース枠2の複数の第2ガイドローラ2Bが、ガイドフレーム6の横断面コの字型の縦桁6Aの(凹状の)溝部13に、
図12(C)に示すように、転動自在に嵌込まれ、上ベース枠2に対して、前後方向に、ガイドフレーム6が移動自在に、組立てられている。
【0017】
そして、
図13〜
図15に於て、7は、はしごケース枠であって、横断面形状が浅皿型であり(
図15参照)、この浅皿型横断面のはしごケース枠7の上に、はしごHが前後方向にスライド可能に搭載される。
【0018】
前記ガイドフレーム6の上に、はしごケース枠7が固着される。つまり、ガイドフレーム6とはしごケース枠7とは、常に一体に作動する。
そして、
図6,
図7,
図8に示したように、下ベース枠1と上ベース枠2の間には、スイングアーム20が介設されている。
【0019】
図10に示した実施例では、このスイングアーム20は、縦部材23,23とこれ等を連結する横部材24とを有する平面視がH字型であって、各縦部材23の前後端には孔付きボス部23Aを有する。
スイングアーム20は、基端のボス部23Aが下ベース枠1にピン25にて枢着され、先端のボス部23Aが上ベース枠2にピン26にて枢着される。
【0020】
図4から
図5に示すように、作業者がガイドフレーム6の後端の垂下部6Cを手で握って、ガイドフレーム6とはしごケース枠7とはしごHを、後方下傾方向に揺動させると、スイングアーム20は、
図7から
図8に示すように、スイングアーム基端───ピン25───廻りに揺動し、これに伴って、上ベース枠2は、前記揺動ブラケット4が水平軸心L
1 廻りに揺動し、かつ、第1ガイドローラ5に誘導案内されて、上ベース枠長手方向N
2 に沿って後方へ移動する。
【0021】
図6〜
図8、及び、上述のように、スイングアーム20は、油圧シリンダや電動アクチュエータ等の駆動手段を備えていない。しかし、このスイングアーム20を下ベース枠1と上ベース枠2の間に介設したことによって、スイングアーム20は上ベース枠2の揺動傾斜角度の大小に対応した上ベース枠長手方向N
2 の(水平軸心L
1 を基準としての)位置を、決定する役目をなす。
【0022】
さらに、スイングアーム20は、
図8(
図7)に示したように、下ベース枠1との間に、オイルダンパ21及びガスダンパ22を、有する。
図例では、オイルダンパ21は、スイングアーム20の長手方向の途中と、下ベース枠1の前方寄りとを、ピン27,28にて、枢結するように設けられている。
図4から
図5のように、矢印M
0 で示した後方下傾方向への作動が、急激となることを防止して、ゆっくりと(安全に)上ベース枠2及びはしごケース枠7等が後方下傾方向に揺動させる機能を、スイングアーム20に与える。
【0023】
なお、逆の水平姿勢復元方向への作動は、オイルダンパ21は邪魔をせず、フリー状態とする。即ち、オイルダンパ21の内部には、オリフィス付きの孔部を有するピストンが内有され、しかも、このピストンには、逆止弁を有する別の孔部を付設して、オイルダンパ21の伸長作動時には逆止弁にてオイルの流れを阻止し、オリフィスを介してオイルを流して、ピストンの速度を低下するように制御する。
【0024】
また、ガスダンパ22は、スイングアーム20の長手方向途中のやや先端寄りと、下ベース枠1の後方寄りとを、ピン29,30にて、枢結するように設けられる。
このガスダンパ(ガスシリンダ)22は、常に弾発的に伸長方向の力を発生する。従って、
図5,
図4に示すように、上ベース枠2等の水平状態へ復元する際の復元モーメントM
21を発生する。即ち、上ベース枠2とはしごケース枠7とはしごH等を
図5から
図4を経て
図3のように作業者が手で持ち上げる力を軽減できる。さらに、このガスダンパ(ガススプリング)22は、
図5に示した矢印M
0 方向への揺動の最終にて、衝撃緩和の役目も期待できる。
【0025】
以上述べたように、スイングアーム20は、上ベース枠2等の後方下傾方向への揺動、及び、逆の水平姿勢復元方向への揺動の速度やモーメント(M
0 ,M
21参照)を制御する機能をも備えている。
【0026】
本発明は、救助作業車、消防自動車等の特殊な車両10の上面に、救助用はしごHを、人力にて、迅速かつ容易に、搭載し、かつ、降ろすことが可能で、各種緊急救助に大きく貢献できるはしご昇降装置である。
【0027】
なお、各構成部材が、前後スライドし、かつ、大きく揺動もするため、各構成部材が不意に、上記スライドや揺動が発生しないように、ロック手段(安全固定機構)等を付設することも、重要である。本発明では、そのようなロック手段(安全固定機構)等の説明は省略する。
【0028】
本発明は、以上詳述したように、車両10の上面後方部位10Bに固着される下ベース枠1と;上記下ベース枠1の後端1Aに水平軸心L
1 廻りに揺動可能として枢着された揺動ブラケット4と、該揺動ブラケット4に回転自在に付設された複数の第1ガイドローラ5を、有する揺動誘導具3と;横断面コの字型の左右縦桁2A,2Aと、該縦桁2Aに水平軸心廻りに回転自在として枢着された複数の第2ガイドローラ2Bとを、有すると共に、上記揺動誘導具3の第1ガイドローラ5を上記コの字型の縦桁2Aの溝部12に差込状として、上記下ベース枠1の後端1Aに対して、前後移動自在かつ後方下傾状に揺動自在として、保持された上ベース枠2と;上記上ベース枠2の上記第2ガイドローラ2Bが転動自在に嵌込まれる横断面略コの字型の左右の縦桁6A、6Aを有し、上記上ベース枠2に対して前後方向に移動自在なガイドフレーム6と;上記ガイドフレーム6に載置状として固着されると共に、はしごHを搭載自在なはしごケース枠7と;上記下ベース枠1と上ベース枠2の間に介設されて、上ベース枠2の後方下傾方向及び逆の水平姿勢復元方向の作動を制御するスイングアーム20とを;具備する構成であるので、車両10の上面に取付けられる構造体としての上下寸法のコンパクト化を図り得て、軽量化も容易であって、車両の転倒角度が大きく、車両の走行時及び作業時の安定性向上に大きく貢献できる。
図16,
図17に示した従来例に比べれば、下ベース枠1の長さを著しく短縮可能であって、車両上面に固着する固定ブラケットの個数も少なく、全体の重量が減少できる。また、車両の転倒角度も減少できる。
【0029】
また、上記スイングアーム20は、上記下ベース枠1との間において、上ベース枠2の後方下傾方向への揺動速度を規制するオイルダンパ21、及び、上ベース枠2の水平状態への復元する際の復元モーメントM
21を付与するガスダンパ22を、備えているので、人力で、はしごケース枠7等を傾動させていく作業中に、急激に傾動する危険を防止できる。しかも、人力で、はしごケース枠7等を水平状態に復元させる作業は(ガスダンパ22によって)楽々と行うことが可能となる。
【0030】
また、上記スイングアーム20は、基端が上記下ベース枠1に枢着され、先端が上記上ベース枠2に枢着され、上記スイングアーム20の上記基端廻りの揺動に伴って、上記上ベース枠2は、上記揺動ブラケット4が上記水平軸心L
1 廻りに揺動し、かつ、上記第1ガイドローラ5に誘導案内されて上ベース枠長手方向N
2 に沿って後方へ移動するよう構成されているので、揺動ブラケット4の第1ガイドローラ5にて上ベース枠2は、その長手方向N
2 に沿って極めてスムーズに後方へ移動でき、かつ、不安定とならずに、安全かつ迅速な作業を行い得る。
【解決手段】車両10に固着される下ベース枠1と、下ベース枠の後端に揺動可能として枢着された揺動ブラケットと、該揺動ブラケットに回転自在に付設された複数の第1ガイドローラを、有する揺動誘導具と、下ベース枠の後端に対して、前後移動自在かつ後方下傾状に揺動自在として、保持された上ベース枠2と、上ベース枠に対して前後方向に移動自在なガイドフレーム6と、ガイドフレームに固着されると共に、はしごHを搭載自在なはしごケース枠7と、下ベース枠と上ベース枠の間に介設されて、上ベース枠の後方下傾方向及び逆の水平姿勢復元方向の作動を制御するスイングアーム20とを、具備することを特徴とする。