(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
厚さおよび伸縮率が異なる複数の樹脂材料からなるシートから選択されたシートが一方の面に貼着された金属材料からなる複数種類の板材を所定形状に加工する加工ステップにより形成されて、ユニットバスの壁部に所定寸法の隙間を空けて並設されると共に前記隙間に固形の乾式目地材が嵌入されることにより止水作用を生じさせた状態で使用される壁パネルの製造方法であって、
前記加工ステップは、
長方形の前記板材を用意するA1ステップと、
前記A1ステップよりも後に、
前記板材の第1短辺と第1長辺とが交わる第1隅部および前記第1短辺と第2長辺とが交わる第2隅部に、コーナー部を形成するための曲線部を含む切欠き部を形成するB1ステップと、
前記B1ステップよりも後に、
前記板材を前記第1短辺と並行する折曲げ線で折曲するC1ステップと、
前記板材を前記第1長辺と並行する折曲げ線で折曲するC2ステップと、
前記板材を前記第2長辺と並行する折曲げ線で折曲するC3ステップと、
前記C1ステップ、C2ステップ、および前記C3ステップよりも後に、
前記第1隅部および前記第2隅部のそれぞれにおいて、所定位置を土台と押え部材とで挟持すると共に、曲げ残し部として残された前記曲線部を前記土台と前記押え部材との間から突出させた状態としてローラーを転接させることにより絞り加工を行って、起立した前記コーナー部に仕上げるD1ステップと、
を備え、
前記B1ステップは、前記シートの厚さおよび伸縮率にかかわらず前記曲線部の形状が一定となるように、プレス金型を変更せずに前記板材に対してプレス加工による切断を行って前記切欠き部を形成する工程を備えており、
前記D1ステップは、前記シートの厚さおよび伸縮率に応じて、前記押え部材のローラー対向面をローラー外周面に対して接離する方向に移動させて間隔を変化させる工程を実施した後、前記曲線部に前記ローラーを転接させることにより絞り加工を行う工程を備えており、
前記D1ステップにおいて間隔を変化させる工程は、押動テーパ面が設けられた押動部材をエアシリンダにより上下動させ、前記押動テーパ面と摺接する受動テーパ面が設けられた前記押え部材を第1位置および第2位置の二段階に設定される位置に前後動させることによって、接離する方向に移動させる工程を備えており、
前記押動テーパ面のテーパ角度は前記エアシリンダによる駆動方向に対して2°〜5°に設定されていること
を特徴とする壁パネルの製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る壁パネルの例を示す概略図(表面側斜視図)である。
【
図2】本発明の実施形態に係る壁パネルの例を示す概略図(裏面側斜視図)である。
【
図3】
図1におけるIII−III線断面図である。
【
図5】本実施形態に係る壁パネルを並設した隙間に嵌入する乾式目地材の概略図(斜視図)である。
【
図6】本実施形態に係る壁パネルを使用してユニットバスの壁部を構成する方法を説明する説明図である。
【
図7】本実施形態に係る壁パネルを使用してユニットバスの壁部を構成する方法を説明する説明図である。
【
図8】本実施形態に係る壁パネルを使用してユニットバスの壁部を構成する方法を説明する説明図である。
【
図10】本実施形態に係る壁パネルの製造に用いられる原材料の概略図(平面図)である。
【
図11】本実施形態に係る壁パネルの製造を行う製造装置の例を示す概略図(平面視の概略構成図)である。
【
図12】
図12(a)は
図11の製造装置の第1プレス金型の概略図(平面図)であり、
図12(b)は
図11の製造装置の第2プレス金型の概略図(平面図)である。
【
図13】
図13(a)は第1隅部の曲線部の形成例を示す概略図(平面図)であり、
図13(b)は第2隅部の曲線部の形成例を示す概略図(平面図)である。
【
図14】
図14(a)は第1隅部の曲線部(曲げ残し部)の形成例を示す概略図(平面図)であり、
図14(b)は第2隅部の曲線部(曲げ残し部)の形成例を示す概略図(平面図)である。
【
図15】
図15(a)は第1隅部のコーナー部の形成例を示す概略図(平面図)であり、
図15(b)は第2隅部のコーナー部の形成例を示す概略図(平面図)である。
【
図16】
図11の製造装置の絞り加工装置の概略図(側面図)である。
【
図18】
図18(a)は第1隅部の絞り加工前の概略図(平面図)であり、
図18(b)は第2隅部の絞り加工前の概略図(平面図)である。
【
図19】
図19(a)は第1隅部の絞り加工後の概略図(平面図)であり、
図18(b)は第2隅部の絞り加工後の概略図(平面図)である。
【
図20】
図20(a)は第1隅部の絞り加工前の概略図(側面図)であり、
図20(b)は第1隅部の絞り加工後の概略図(側面図)である。
【
図21】
図21(a)は第2隅部の絞り加工前の概略図(側面図)であり、
図21(b)は第2隅部の絞り加工後の概略図(側面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態に係る製造方法によって製造される壁パネルは、一方の面に樹脂材料からなるシートが貼着された金属材料からなる板材をライン搬送しながら所定形状に加工する加工ステップにより形成されて、ユニットバスの壁部に所定寸法の隙間を空けて並設されると共に、当該隙間に固形の乾式目地材が嵌入されることにより止水作用を生じさせた状態で使用されるものである。以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳しく説明する。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0012】
(壁パネル)
先ず、本実施形態に係る壁パネル30の構成例について説明する。
図1は、壁パネル30の表面側(ユニットバスの室内側)の斜視図であり、
図2は、壁パネル30の裏面側(ユニットバスの室外側)の斜視図である。また、
図3は、
図1におけるIII−III線断面図であり、
図4は、
図1におけるIV−IV線断面図である。一例として、壁パネル30は、長辺寸法1000mm〜2300mm程度、短辺寸法300mm〜1200mm程度に形成されるが、これに限定されるものではない。また、
図1等の各図面は、実寸法に対する厳密な縮尺によって表示するものではない。
【0013】
壁パネル30を製造する材料には、一例として、金属材料(例えば、厚さ0.5mm程度の亜鉛めっき鋼等)からなる矩形(長方形)の板材であって、一方の面に樹脂材料(例えば、厚さ0.1mm程度のポリエステル樹脂等)からなるシート(いわゆる「化粧シート」)39が貼着された鋼板(いわゆる「化粧鋼板」)10が用いられる(以下、単に「原材料」と称する場合がある)。シート39のデザインを変えることによって、ユニットバスの壁面デザインを変えることができ、多種多様なバリエーションの提供が可能となる(すなわち、シート39貼着面が壁パネル30の表面となる)。詳細は後述するが、この原材料10(
図10参照)を用いて、四隅をプレス加工(切断加工)によって所定形状に加工した後、四辺をプレス加工(曲げ加工)によって所定形状に加工することにより壁面構成部が平面視長方形の壁パネル30が製造される。なお、原材料10の構成は上記の例に限定されるものではない。
【0014】
壁パネル30の構成例として、原材料10の第1短辺15寄りの位置で、裏面側に90°、次いで裏面側に90°で折曲されることにより、
図3に示すように断面U字状(より正確には、日本語カタカナのコ字状)の折曲部31を有している。また、原材料10の第2短辺16寄りの位置でが、表面側に90°、次いで裏面側に90°で折曲されることにより、
図3に示すように断面L字状の折曲部32を有している。一方、原材料10の第1長辺17寄りの位置および第2長辺18寄りの位置で、それぞれ、裏面側に90°、次いで裏面側に120°、次いで裏面側に90°で折曲されることにより、
図4に示すように断面三角形状の折曲部33、34を有している。ただし、この構成に限定されるものではない。
【0015】
(使用方法)
続いて、本実施形態に係る壁パネル30を用いてユニットバスの壁部を構成する方法について説明する。概略として、壁パネル30は、金属材料からなる連結用部品であるコーナージョイナー40および平ジョイナー50と共に、床部62(一例として、浅箱状の床パン)62の外周縁に沿って一周するように配設されて、ユニットバスの壁部を構成する。なお、コーナージョイナー40および平ジョイナー50の上端部および下端部には、樹脂材料からなるブロック部材66〜69が嵌合される構成となっている。以下、詳しく説明する。
【0016】
先ず、
図6に示すように、矩形状に形成された床部62の一の角部近傍位置(隣接位置)において、床部62の外縁部に一枚の壁パネル30(30A)を立設する。このとき、壁パネル30(30A)の折曲部31の折曲面31b(第1折曲面)と、床部62の外縁部の当接面62aに設けられた壁下パッキン64とが当接(密接)する構成となり、水の浸入防止が図られる。なお、壁下パッキン64の例として、樹脂材料等からなる公知の防水テープが用いられる。
【0017】
次いで、床部62の所定位置(壁パネル30(30A)に隣接する角部位置)にコーナージョイナー40を立設する。このとき、壁パネル30(30A)にコーナージョイナー40を取付けるようにして、コーナージョイナー40および壁パネル30を所定位置に位置決めしながら立設する。
【0018】
次いで、床部62の外縁部に一枚の壁パネル30(30B)を立設する。次いで、
図7に示すように、コーナージョイナー40の上端部にブロック部材66を装着する。
【0019】
次いで、床部62の所定位置(壁パネル30Bに隣接する中間位置)に平ジョイナー50を立設する。このとき、壁パネル30Bに平ジョイナー50を取付けるようにして、平ジョイナー50および壁パネル30を所定位置に位置決めしながら立設する。
【0020】
次いで、
図8に示すように、平ジョイナー50の上端部にブロック部材68(68A)を装着する。次いで、床部62の外縁部に一枚の壁パネル30(30C)を立設する。次いで、平ジョイナー50の上端部にブロック部材68(68B)を装着する。
【0021】
次いで、ユニットバスの設計仕様(ここでは、壁部の水平方向寸法)に応じて、壁パネル30Cにコーナージョイナー40を取付けて当該壁面を終端させるか、もしくは平ジョイナー50を取付けて当該壁面を延設させるか、いずれかの工程を実施する。なお、コーナージョイナー40もしくは平ジョイナー50のいずれを取付ける場合も、その取付け方法は前述したそれぞれの場合と同様であるため、繰り返しの説明を省略する。
【0022】
このようにして、壁パネル30、コーナージョイナー40、および平ジョイナー50を順次組み立てることによって、床部62の外周縁に沿って一周するように壁部を形成することができる。その際、壁パネル30、コーナージョイナー40、および平ジョイナー50は、互いに引き合い一体化されており、特別な部材を設けることなくユニットバスの壁面を容易に形成できる。
【0023】
このとき、コーナージョイナー40に係止されて並設された壁パネル30同士の間、より具体的には、一方の壁パネル30(30A)の折曲部33と他方の壁パネル30(30B)の折曲部34との間に隙間が生じた状態となっている。したがって、この隙間に、
図5に示す樹脂材料からなる乾式目地材60を嵌め込んで、閉塞して水の浸入を防止する工程を実施する。
【0024】
同様に、平ジョイナー50に係止されて並設された壁パネル30同士の間、より具体的には、一方の壁パネル30(30B)の折曲部33と他方の壁パネル30(30C)の折曲部34との間に隙間が生じた状態となっている。したがって、この隙間に、
図5に示す樹脂材料からなる乾式目地材60を嵌め込んで、閉塞して水の浸入を防止する工程を実施する。
【0025】
これらの工程を経て、ユニットバスの壁部が構成される。このように、硬化性を有する液状樹脂ではなく、所定の弾性を有する樹脂材料からなる固形の乾式目地材60を使用することによって、施工作業の容易化を図り、工期の短縮およびコスト削減を可能としている。
【0026】
しかしながら、固形の乾式目地材60を使用するが故に、壁パネル30の外形寸法の形成精度が低くなる程、目地材が嵌入される隙間の止水作用が得られなくなり、壁内へ水が浸入してしまう課題が生じる。具体的には、壁パネル30において、折曲部31の折曲面31b(第1折曲面)に対する、折曲部33の折曲面33c(第4折曲面)の直角度、および折曲部34の折曲面34c(第3折曲面)の直角度が正確でない場合に、壁内(室内側とは逆の裏側)への水の浸入が生じ得る。すなわち、折曲面31b(第1折曲面)を床部62(ここでは、当接面62aに設けられた壁下パッキン64)に密接(密着)させて壁パネル30を立設する際に、当該直角度が正確でなければ、壁パネル30の折曲面33c(第4折曲面)および折曲面34c(第3折曲面)が鉛直方向からずれて(傾いて)配置される状態となる。したがって、一方の壁パネル30の折曲面(ここでは、第4折曲面33c)と他方の壁パネル30の折曲面(ここでは、第3折曲面34c)との間の隙間が台形等のように歪んでしまい、固形の乾式目地材60を嵌め込んだ際に折曲面(第4折曲面33c、第3折曲面34c)との間に空隙ができて、水の浸入が生じてしまう。逆に、一方の壁パネル30の折曲面(ここでは、第4折曲面33c)と他方の壁パネル30の折曲面(ここでは、第3折曲面34c)とを鉛直方向に沿って平行に保持しようすると、壁パネル30の折曲面31b(第1折曲面)と床部62(ここでは、当接面62aに設けられた壁下パッキン64)との間に空隙ができて、水の浸入が生じてしまう。
【0027】
そのため、折曲面31b(第1折曲面)と折曲面33c(第4折曲面)との交差部となる第1コーナー部19、および折曲面31b(第1折曲面)と折曲面34c(第3折曲面)との交差部となる第2コーナー部20の外形形状を高精度に形成することが重要となる。具体的には、第1コーナー部19、第2コーナー部20の外形形状を、それらと連続する折曲面31b(第1折曲面)、折曲面33c(第4折曲面)、折曲面34c(第3折曲面)に対して、凹凸無く連続する平行面(同一面)となるように形成することが重要となる。一例として、第1コーナー部19の形状の拡大図(
図2におけるC部拡大図)を
図9に示す。
【0028】
(製造方法)
続いて、本実施形態に係る壁パネル30の製造方法について説明する。この製造方法は、
図10に示す長方形の原材料10をライン搬送しながら切断、折曲、絞り等のプレス加工を行うことによって所定形状の壁パネル30として製造する下記の主要ステップを備えている。また、製造には一つのラインで加工を行う製造装置100が用いられる。この製造装置100の説明図(平面視の概略構成図)を
図11に示す。なお、図中の矢印Xはライン搬送方向を示す。
【0029】
先ず、原材料10となる長方形の板材(厚さおよび伸縮率が異なる複数の樹脂材料からなるシートから選択されたシート39が一方の面に貼着された化粧鋼板)を用意して、ライン上に搬入するステップを実施する(A1ステップ)。一例として、当該板材が複数枚、積層収納されたストッカー102内から、フィーダー等の搬送装置(不図示)を用いて、所定タクトで一枚ずつライン上(ここでは、始端部104上)に載置する方法等が採用できる。なお、その後の原材料10のライン搬送には、主としてベルトコンベア等の搬送装置(不図示)を用いる。一例として、回転移動部110(後述)までは第1短辺15側を先頭として搬送し、回転移動部110からは第2長辺18側を先頭として搬送するが、この構成に限定されるものではない。
【0030】
次いで、A1ステップよりも後に、隅切り加工部106においてB1ステップを実施する。一例として、隅切り加工部106は、
図12(a)に示す切断用の第1プレス金型160(第1隅部11の切断用)および
図12(b)に示す第2プレス金型162(第2隅部12の切断用)を備えて構成されている。本実施形態においては、第1プレス金型160と第2プレス金型162とは、ライン搬送方向に対して左右対称の形状の刃面を有している。
【0031】
当該B1ステップとして、
図13(a)に示すように、第1プレス金型160を用いて、原材料10における第1短辺15と第1長辺17とが交わる第1隅部11に、第1コーナー部19を形成するための曲線部27(27A)を含む切欠き部25をプレス加工(切断加工)により形成するステップを実施する。併せて、
図13(b)に示すように、第2プレス金型162を用いて、原材料10における第1短辺15と第2長辺18とが交わる第2隅部12に、第2コーナー部20を形成するための曲線部28(28A)を含む切欠き部26をプレス加工(切断加工)により形成するステップを実施する。なお、本実施形態においては、切欠き部25と切欠き部26とは、ライン搬送方向に対して左右対称の形状となるように形成される。
【0032】
次いで、B1ステップよりも後に、短辺加工部108において原材料10を第1短辺15と並行する折曲げ線で折曲するC1ステップを実施する。一例として、短辺加工部108は、折曲用のプレス金型130、原材料10の位置決めを行う位置決め装置(不図示)を備えて構成されている。当該C1ステップとして、プレス加工(折曲加工)により原材料10の短辺部に、仕様に応じた折曲部を形成するステップを実施する。本実施形態においては、原材料10における第1短辺15寄りの端部を二回折曲して折曲面31aおよび折曲面31b(第1折曲面)を有する折曲部31を形成する。また、原材料10における第2短辺16寄りの端部を二回折曲して折曲面32aおよび折曲面32b(第2折曲面)を有する折曲部32を形成する。
【0033】
次いで、C1ステップよりも後に、回転移動部110においてG1ステップを実施する。一例として、回転移動部110は、原材料10を回転移動させてライン搬送の向きを変更する回転移動装置(不図示)を備えて構成されている。当該G1ステップとして、原材料10を面内方向に90°回転させるステップを実施する。
【0034】
次いで、G1ステップよりも後に、長辺加工部112(112A)において原材料10を第1長辺17と並行する折曲げ線で折曲するC2ステップを実施する。一例として、長辺加工部112(112A)は、折曲用のプレス金型140、原材料10の位置決めを行う位置決め装置(不図示)を備えて構成されている。当該C2ステップとして、プレス加工(折曲加工)により原材料10の長辺部に、仕様に応じた折曲部を形成するステップを実施する。本実施形態においては、原材料10における第2長辺18寄りの端部を三回折曲して折曲面34a、折曲面34b、および折曲面34c(第3折曲面)を有する折曲部34を形成する。
【0035】
次いで、C2ステップよりも後に、長辺加工部112(112B)において原材料10を第2長辺18と並行する折曲げ線で折曲するC3ステップを実施する。一例として、長辺加工部112(112B)は、折曲用のプレス金型142、原材料10の位置決めを行う位置決め装置(不図示)を備えて構成されている。当該C3ステップとして、プレス加工(折曲加工)により原材料10の長辺部に、仕様に応じた折曲部を形成するステップを実施する。本実施形態においては、原材料10における第1長辺17寄りの端部を三回折曲して折曲面33a、折曲面33b、および折曲面33c(第4折曲面)を有する折曲部33を形成する。
【0036】
なお、上記のC1、C2、C3ステップ、およびG1ステップは、本実施形態においては、上記の順番で実施するが、これに限定されるものではない。
【0037】
ここまでの工程によって、原材料10は、
図14(a)に示すように第1隅部11において曲げ残し部として残された曲線部27(27B)が形成された状態で、且つ、
図14(b)に示すように第2隅部12において曲げ残し部として残された曲線部28(28B)が形成された状態となっている。
【0038】
次いで、C1、C2、C3ステップよりも後に、コーナー加工部114(114A、114B)において、
図16に示す絞り加工装置150、152(詳細は後述)を用いてD1ステップを実施する。当該D1ステップとして、先ず、コーナー加工部114(114A)に設けられた絞り加工装置150を用いて、
図15(a)に示すように、第1隅部11において第1コーナー部19を形成するステップ(D1aステップ)を実施する。次いで、コーナー加工部114(114B)に設けられた絞り加工装置152を用いて、
図15(b)に示すように、第2隅部12において第2コーナー部20を形成するステップ(D1bステップ)を実施する。本実施形態においては、第1コーナー部19と第2コーナー部20とは、ライン搬送方向に対して左右対称の形状となるように形成される。なお、D1ステップの変形例として、ラインにおけるコーナー加工部114Aと114Bとの配置順序を入れ換えて、D1aステップとD1bステップとを逆の順番で実施してもよい。
【0039】
上記のD1aステップについて詳しく説明する。ここで、絞り加工装置150による絞り加工前の状態を
図18(a)(平面図)、および
図20(a)(
図18(a)における矢印D方向視の側面図)に示し、絞り加工後の状態を
図19(a)(平面図)、および
図20(b)(
図19(a)における矢印D方向視の側面図)に示す。先ず、第1隅部11における所定位置を、絞り加工装置150の土台72と押え部材74とで挟持して、曲げ残し部として残された曲線部27(27B)を土台72と押え部材74との間から突出させた状態とする。次いで、ローラー76を土台72の端面に沿って転接させることにより、上記突出させた状態の曲げ残し部(曲線部27(27B))の絞り加工を行って、起立した第1コーナー部19に仕上げる工程を実施する。
【0040】
次に、D1bステップについて詳しく説明する。ここで、絞り加工装置152による絞り加工前の状態を
図18(b)(平面図)、および
図21(a)(
図18(b)における矢印E方向視の側面図)に示し、絞り加工後の状態を
図19(b)(平面図)、および
図21(b)(
図19(b)における矢印E方向視の側面図)に示す。先ず、第2隅部12における所定位置を、絞り加工装置152の土台72と押え部材74とで挟持して、曲げ残し部として残された曲線部28(28B)を土台72と押え部材74との間から突出させた状態としてローラー76を土台72の端面に沿って転接させることにより、上記突出させた状態の曲げ残し部(曲線部28(28B))の絞り加工を行って、起立した第2コーナー部20に仕上げる工程を実施する。
【0041】
ところで、前述の通り、ユニットバスにおける壁面デザイン、すなわち板材に貼着されるシート39のデザインは、昨今、多様化している。そのため、当該シート39には厚さや伸縮率が異なる複数種類の樹脂材料が用いられるようになっている。例えば、原材料10に貼着されるシート39の種類として、厚さに関して少なくとも0.1mmを超える相違があり、伸縮率に関して少なくとも10%を超える相違がある。このような背景の下、本実施形態に係るB1ステップは、シート39の種類(厚さおよび伸縮率等)にかかわらず、コーナー部19、20に形成される曲線部27(27A)、28(28A)の形状が一定となるように原材料10をプレス加工(切断加工)により形成する工程を備えている。これによれば、貼着されたシート39の種類に応じてラインやプレス金型を変更することなく、複数種類の原材料10に対するプレス加工(切断加工)を行うことができるため、装置コストを低減でき、且つ、作業時間の増加を防ぐことができる。
【0042】
しかしながら、そのような構成であるが故に生じる課題がある。具体的には、一つのラインで、同じプレス金型を用いて加工(特に、隅部の絞り加工)を行う場合には、当該板材に貼着されるシート39の厚さや伸縮率の違いによって、仕上がり状態に良否が生じ、外観品質の低い製品(壁パネル30)が形成されてしまうという課題である。
【0043】
具体的には、コーナー部19、20を前述の絞り加工によって形成する際に、土台72と押え部材74とで原材料10を挟持する位置に関し、シート39の厚さや伸縮率の違いに起因して最適値から極めて僅かな(0.5mm以下のオーダーで)ずれが生じた状態となる。その結果、ローラー76の転接時の擦り上げによって、シート39がちぎれた状態となる、あるいは、シート39が削れて素地(原材料10における金属板材の部分)が露出した状態となる等の不具合が生じる。さらに、これらの不具合が生じることによって、ちぎれたシート39のカスが金型(ここでは、土台72および押え部材74等)に付着して、打痕等が発生する原因となる。また、原材料10における素地の露出面積が大きくなれば、不良品として出荷ができず、仮に出荷できた場合でも、露出箇所が水分に触れてサビ等の劣化が発生し易くなる原因となる。
【0044】
このような課題に対し、本実施形態においては、下記の特徴的な構成(製造工程および装置構成)を備えて、その解決を図っている。
【0045】
先ず、製造工程に関して、本実施形態に係るD1ステップは、原材料10に貼着されたシート39の厚さおよび伸縮率に応じて、押え部材74におけるローラー76と対向する面(以下、「ローラー対向面」と称する)が、ローラー76における外周面に対して接離するように(接離する方向に)、当該押え部材74を移動させて当該面同士の間隔を変化させる工程を実施した後、曲線部27(27B)、28(28B)にローラー76を転接させることにより絞り加工を行う工程を備えている。
【0046】
この構成によれば、原材料10に貼着されたシート39の厚さや伸縮率の違いに応じて、押え部材74のローラー対向面と、ローラー76の外周面との間隔を、最適な寸法に変化させることができる。したがって、貼着されたシート39の厚さが異なる複数種類の原材料10に対しても、同一の製造装置100を用いて、すなわち、ラインの変更やプレス金型(具体的には、絞り加工装置150、152の土台72および押え部材74等)の変更を行うことなく、加工することが可能となる。
【0047】
さらに、D1ステップの実施に用いられる絞り加工装置150、152の構成に関しては、以下の特徴的構成を備えている。具体的には、
図16、
図17に示すように、本実施形態に係る絞り加工装置150は、エアシリンダ80により上下動される押動部材78を備えている。この押動部材78は、押え部材74に対向する位置に、所定角度で傾斜する押動テーパ面78aを有している。一方、押え部材74は、押動部材78に対向する位置に、所定角度で傾斜する受動テーパ面74aを有している。この押動テーパ面78aと、受動テーパ面74aとが摺接するように配置されている。なお、絞り加工装置152は、絞り加工装置150と同様の構成であるため、繰り返しの説明を省略する。
【0048】
この構成によれば、上記のD1ステップにおける押え部材74のローラー対向面とローラー76の外周面との間隔を変化させる工程は、押動テーパ面78aが設けられた押動部材78をエアシリンダ80により上下動させ、押動テーパ面78aと摺接する受動テーパ面74aが設けられた押え部材74を前後動させることによって、ローラー76に対して接離する方向に移動させる作用が得られる。具体的には、エアシリンダ80を駆動して、押動部材78を矢印A方向に押動することによって、押え部材74が矢印B方向に移動する構成となっている。一方、押え部材74を矢印Bと逆方向に移動させる際は、エアシリンダ80を駆動して、押動部材78を矢印Aと逆方向に引動し、図示しない付勢部材(コイルバネ等)の付勢力を矢印Bと逆方向に作用させることによって当該押え部材74が移動する構成となっている。なお、本実施形態においては、絞り加工装置150、152における、押動テーパ面78aのテーパ角度α1および受動テーパ面74aのテーパ角度α2は鉛直方向に対してα1=α2=2°〜5°(一例として、3°)に設定されている。
【0049】
例えば、押え部材74のローラー対向面とローラー76の外周面との間隔(位置)を第1位置、第2位置のように二段階に設定する場合、両位置を規定する突当て部(不図示)等を併設しつつ、エアシリンダ80による移動機構を実現することができる。エアシリンダ80は移動寸法精度が低いものの、本実施形態に係る上記構成を備えることによって、押動部を介して移動させる押え部材74の移動寸法精度を極めて高く設定することができる。具体的には、押え部材74の位置を0.5mm以下の寸法精度で位置決めすることができる。したがって、貼着されるシート39の種類が異なる原材料10であっても、同一の製造装置100を用いて、すなわち、ラインの変更やプレス金型(ここでは、絞り加工装置)の変更を行うことなく、加工することが可能となる。しかも、外観品質の低下を防ぎ、同一の仕上がりを維持することができる。また、移動寸法精度の低いエアシリンダ80を用いて装置を構成することができるため、装置コストの低減も可能となる。
【0050】
さらに、第1コーナー部19、第2コーナー部20の外形形状を高精度に形成することができる。具体的には、第1コーナー部19、第2コーナー部20と連続する折曲面31b(第1折曲面)、折曲面33c(第4折曲面)、折曲面34c(第3折曲面)に対して、凹凸無く連続する平行面(同一面)となるように形成することができる。したがって、第1コーナー部19、第2コーナー部20を有する壁パネル30を、ユニットバスの壁部に所定寸法の隙間を空けて並設し、当該隙間に固形の乾式目地材60を嵌入するだけで、高い止水作用(水の浸入防止作用)を得ることができる。すなわち、当該隙間を液状の目地材で埋めて止水する作業を行う必要が無いため、壁部の設置作業を簡易且つ短時間で行うことができ、現場施工費の低コスト化を図ることができる。
【0051】
なお、D1ステップの後は、適宜、必要なステップを実施する。一例として、製造装置100における原材料10の加工が終了して所定形状に形成された状態の壁パネル30を、終端部116に載置するE1ステップを実施する。次いで、フィーダー等の搬送装置(不図示)を用いて、壁パネル30を一枚ずつライン上(ここでは、終端部116上)からストッカー118内に搬送して、積層収納するF1ステップを実施する。ただし、これらのステップに限定されるものではなく、D1ステップに続いて、その他の追加加工を行う構成としてもよい。なお、その場合は、必要な機構を製造装置100に設けて壁パネル30の追加加工を行ってもよく、あるいは、別の製造装置(不図示)に壁パネル30を搬送(移送)した後、追加加工を行ってもよい。
【0052】
以上、説明した通り、本発明に係る壁パネルの製造方法によれば、厚さや伸縮率が異なる複数の樹脂材料からなるシートから選択されたシートが一方の面に貼着された複数種類の化粧鋼板を原材料として用いる場合であっても、一つのラインで、プレス金型(絞り加工装置の土台、押え部材等)を交換せずに加工して壁パネルを製造することが可能となる。これにより、多様なデザインバリエーションの壁パネルを、装置コストや工程時間の増加を防ぎつつ製造することが可能となる。さらに、プレス加工(特に、絞り加工)により形成される際の仕上がり状態のばらつきを抑えて、外観品質が高く、且つ、外形寸法が高精度で止水性能の高い壁パネルを形成することが可能となる。
【0053】
なお、本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において種々変更が可能である。この壁パネルはユニットバスの壁部を構成する際に好適に用いられるが、ユニットバス以外の壁部を構成する際にも用いることができるのは言うまでもない。
【課題】厚さや伸縮率が異なるシートが貼着された複数種類の鋼板を、一つのラインで、プレス金型を交換することなく加工でき、仕上がり状態のばらつきを抑えて、外観品質の高い壁パネルを形成できる製造方法を実現する。
【解決手段】本発明に係る壁パネル30の製造方法は、シート39が貼着された板材10を用意して、曲線部27A、28Aを含む切欠き部25、26を形成するB1ステップと、第1短辺15、第1長辺17、第2長辺18とそれぞれ並行する所定位置で折曲するC1、C2、C3ステップと、曲げ残し部27B、28Bにローラー76を転接させる絞り加工によりコーナー部19、20に仕上げるD1ステップとを備え、前記B1ステップでは、シート39の厚さや伸縮率にかかわらず曲線部27A、28Aの形状を一定とし、前記D1ステップでは、シート39の厚さや伸縮率に応じて、押え部材74とローラー76との間隔を変化させて絞り加工を行う。