特許第6850514号(P6850514)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6850514
(24)【登録日】2021年3月10日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】ウイルス等検出フィルター
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/34 20060101AFI20210322BHJP
   A41D 13/11 20060101ALI20210322BHJP
   A61M 16/06 20060101ALI20210322BHJP
   A62B 18/02 20060101ALI20210322BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   C12M1/34 F
   A41D13/11 Z
   A61M16/06 A
   A62B18/02 C
   A62B18/02 Z
   G01N33/53 S
   G01N33/53 Z
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2020-185451(P2020-185451)
(22)【出願日】2020年11月5日
【審査請求日】2020年11月12日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520432587
【氏名又は名称】株式会社富士
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(74)【代理人】
【識別番号】100196313
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 大輔
(72)【発明者】
【氏名】濱田 誠輝
【審査官】 松浦 安紀子
(56)【参考文献】
【文献】 再公表特許第2017/033846(JP,A1)
【文献】 特開2016−045056(JP,A)
【文献】 特開2020−022584(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/34
A41D 13/11
A61M 16/06
A62B 18/02
G01N 33/53
WPI
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体が通過可能な第一の層と、
イムノクロマト試験片と、が積層してなり、
前記イムノクロマト試験片における検出部を有する面と、前記第一の層とが対向してなり、
前記第一の層がマスク本体である、
マスク
【請求項2】
さらに、防湿材を備え、
前記イムノクロマト試験片が、前記第一の層と前記防湿材との間に位置する、
請求項1に記載のマスク
【請求項3】
前記防湿材の透湿度が10000g/m/24h以下である、請求項2に記載のマスク
【請求項4】
前記イムノクロマト試験片に対して、前記第一の層の反対側に、
体が通過可能な第二の層を有する、請求項1〜3の何れか一項に記載のマスク
【請求項5】
前記第一の層、前記イムノクロマト試験片、前記防湿材、前記第二の層、の順に積層されてなる請求項4に記載のマスク
【請求項6】
それぞれ異なる検出対象物を検出する複数のイムノクロマト試験片を備える、請求項1〜5の何れか一項に記載のマスク
【請求項7】
検出対象物が、抗原である、請求項1〜6の何れか一項に記載のマスク
【請求項8】
ウイルス検出用である、請求項1〜7の何れか一項に記載のマスク
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウイルス等を検出可能なフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
ウイルス感染症拡大防止の観点から、ウイルスの感染有無を検査する方法の需要が高まっている。
【0003】
ウイルス感染の有無を検査する方法としては、医療機関に赴き、鼻孔ぬぐい液等を採取し、ウイルス検査キットを用いる方法が主流である。しかし、この方法で、医療機関に赴くことで、他の患者からウイルスが感染するリスクがあった。
【0004】
ここで、特許文献1には、ウイルス及びアレルゲンを捕集し、酵素によって不活性化するマスクが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−103924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の発明のように、ウイルスを捕集することでウイルスの飛散を防止したり、ウイルスを不活性化したりすることによる感染予防を目的とするマスクは多数存在する。しかし、ウイルスを捕集することで、使用者自身のウイルスや細菌等の感染の有無を簡易的に調べることができるマスクはいまだ存在していなかった。
したがって、本発明は、使用者の呼気から感染の有無を簡易的に検査することができる、マスクに応用可能なフィルターを提供することを課題とする。
【0007】
また、乳幼児や犬猫等のペットの検査においては、唾液の採取や血液の採取が困難である場合がある。また、乳幼児や犬猫等のペットは、マスクを着用することができないという問題があった。
したがって、本発明は、尿から感染の有無を簡易的に検査することができる、おむつに応用可能なフィルターを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明は、
気体及び/又は液体が通過可能な第一の層と、
イムノクロマト試験片と、が積層してなる
フィルターである。
上記構成のフィルターは、使用者の呼気、又は尿に含まれる抗原又は抗体等の検出対象物を捕捉し、簡易的にウイルス等の検出を行うことができる。
【0009】
本発明の好ましい形態では、さらに、防湿材を備え、前記イムノクロマト試験片が、前記第一の層と前記防湿材の間に位置する。
防湿材を備えることにより、呼気による水分を効率的にフィルター内に保持することが可能となり、より検出精度が高いフィルターとなる。
【0010】
本発明の好ましい形態では、前記防湿材の透湿度が10000g/m/24h以下である。
透湿度を1000g/m/24h以下とすることにより、呼気による水分を効率的にフィルター内に保持することができ、より検出精度が高いフィルターとなる。
【0011】
本発明の好ましい形態では、前記イムノクロマト試験片に対して、前記第一の層の反対側に、気体及び/又は液体が通過可能な第二の層を有する。
第二の層を有することにより、外側からのウイルス等の侵入を防ぎ、イムノクロマト試験片の偽陽性、偽陰性の可能性を軽減する。
また、呼気による水分を効率的にフィルター内に保持することが可能となり、イムノクロマト試験片による検出精度が向上する。
【0012】
本発明の好ましい形態では、フィルターは、前記第一の層、前記イムノクロマト試験片、前記防湿材、前記第二の層、の順に積層されてなる。
上記構成を有するフィルターは、呼気による水分を効率的にフィルター内に保持することが可能となり、イムノクロマト試験片による検出精度が向上する。
【0013】
本発明の好ましい形態では、それぞれ異なる検出対象物を検出する複数のイムノクロマト試験片を備える。
上記構成を有するフィルターは、複数の検出対象物について同時に検出を行うことができる。
【0014】
本発明の好ましい形態では、検出対象物が抗原である。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記フィルターが、ウイルス検出用である。
【0016】
また、前記課題を解決する本発明は、
防湿材と、
イムノクロマト試験片を含む、フィルター用検出部材である。
本発明のフィルター用検出部材は、使用者が所有するフィルターやマスク、おむつに取り付けることで、簡便にウイルス等を検出可能なフィルターを製造することができる。
【0017】
また、本発明は、上記のフィルターを含むマスク、又はおむつに関する。
マスクに本発明のフィルターを用いることで、簡易的にウイルス等の検出を行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、使用者がウイルス等に感染しているか否か簡易的に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係るフィルターの第一の形態を表す図である。
図2】本発明に係るフィルターに用いることのできる一般的なイムノクロマト試験片の作用原理を表す図である。
図3】増感剤含有層を備えるイムノクロマト試験を表す図である。
図4】本発明に係るフィルターの第二の形態を表す図である。
図5】本発明に係るフィルターの第三の形態を表す図である。
図6】第一の層に開口部及びカバー部を備えるフィルターを表す図である。
図7】実施例1に係るマスクの構造を表す図である。
図8】実施例2に係るマスクの構造を表す図である。
図9】実施例3に係るマスクの構造を表す図である。
図10】実施例1〜3の結果を表す図である。
図11】実施例4の結果を表す図である。
図12】実施例5に係るマスクの構造を表す図である。
図13】実施例6に係るマスクの構造を表す図である。
図14】実施例7に係るマスクの構造を表す図である。
図15】実施例5〜7の結果を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明について説明するが、本発明の技術的範囲は、下記の記載に限定されない。
【0021】
[第一の形態]
以下、図1を参照しながら、本発明の第一の形態に係るフィルターについて説明する。
図1に示すように、本発明の第一の形態は、第一の層1、及びイムノクロマト試験片2を備えるフィルターである。
【0022】
第一の層1は、気体又は液体が通過可能なもの、若しくは気体及び液体が通過可能なものであれば特に制限されない。例えば、防塵マスク、医療用マスク、家庭用マスクに使用されるフィルターを用いることができる。また、BFE規格、VFE規格、PFE規格のフィルター等を用いることができる。第一の層1は、シート状であることが好ましい。
本発明のフィルターを、マスクに応用する場合には、気体が通過可能なものを選択することが好ましい。本発明のフィルターをおむつに応用する場合、液体が通過可能なものを選択することが好ましい。
【0023】
第一の層1は、目的の抗原、抗体の大きさに応じて適宜変更することができる。
本発明の好ましい態様として、第一の層1は、BFE99%規格以下の捕集率を有するフィルターであることが好ましく、BFE規格99%規格のフィルターであることがより好ましい。
第一の層1は、呼気や飛沫核に含まれる目的の抗原・抗体等を通過させ、イムノクロマト試験片にサンプルを供給できるよう構成する。そのため、捕集率が高すぎる、又は捕集率が低すぎると、偽陰性、又は偽陽性が発生する恐れがある。
BFE規格のフィルターを用いることで、適切な量の抗原、又は抗体を供給することができ、偽陽性、又は偽陰性の発生を抑制することができる。
【0024】
イムノクロマト試験片2としては、サンプル供給部、展開部、検出部と有する一般的なイムノクロマト試験片を用いることができる。
【0025】
図2に、一般的なイムノクロマト試験片の構造、及び作用原理を説明するための説明図を示す。
イムノクロマト試験片2は、検出対象物を供給するサンプルパッド21と、検出対象物に特異的に結合する標識された第一の結合性物質221を含むコンジュゲートパット22と、展開部23と、検出対象物と第一の結合性物質221(コンジュゲート)との複合体と結合する第二の結合性物質241を含む検出部24と、標識された第一の結合性物質221と結合する第三の結合性物質251を含むコントロール部25と、吸液パッド26を備える。
【0026】
検出対象物27がサンプルパッド21に供給されると、サンプルパッド21を通過してコンジュゲートパット22に到達し、検出対象物27はコンジュゲートパット22の標識された第一の結合性物質221と複合体を形成する。複合体は、展開部23を展開し、第二の結合性物質241と結合する。コントロール部25は、試験の信頼性を担保するためのものであり、第三の結合性物質251は、標識された第一の結合性物質221と結合する。
【0027】
なお、図2に示すイムノクロマト試験片はあくまで一例であり、発明の効果を損なわない限り、適宜構造を変更してもよい。例えば、イムノクロマト試験片として、吸液パッドを有さない構造、すなわち、サンプルパッド、コンジュゲートパット、展開部、検出部、コントロール部からなる構造としてもよい。
検出速度を向上させる観点から、イムノクロマト試験片として、吸液パッドを含むことが好ましい。
【0028】
第一の結合性物質221を標識する標識物質は特に限定されないが、金属コロイドであることが好ましい。標準物質として金属コロイドを用いることにより、目視で確認することができ、より簡易的な検査が可能となる。
金属コロイドとしては、金コロイド及び/又は白金コロイドが例示できる。
【0029】
検出対象物はイ厶ノアッセイ、すなわち抗原抗体反応を利用したアッセイで測定し得る抗原又は抗体である。抗原としては例えば、タンパク質、多糖類、脂質等が挙げられる。これらの物質を含む原生動物、真菌、細菌、マイコプラズマ、リケッチア、クラミジア、ウイルス等も測定し得る。具体的には、インフルエンザウイルス、アデノウイルス、RSウイルス、及びヒトメタニューモウイルス(hMPV)、コロナウイルス(SARS−CoV、SARS−CoV2、MERS−CoV)、HIV等の抗原が挙げられる。
本発明のフィルターは、ウイルス検出用であることが好ましい。
【0030】
第一の結合性物質、第二の結合性物質、及び第三の結合性物質は、検出対象物に応じて適宜設計することができる。
【0031】
イムノクロマト試験片は、それぞれ異なる検出対象物と結合する結合性物質を含む複数の検出部を備える形態であってもよい。例えば、A型インフルエンザウイルス抗体を含む検出部と、B型インフルエンザウイルス抗体を含む検出部とを含むイムノクロマト試験片を備える形態とすることができる。
【0032】
また、本発明のフィルターはそれぞれ異なる検出対象物を検出する複数のイムノクロマト試験片を備えることが好ましい。例えば、インフルエンザウイルス、アデノウイルス、RSウイルス、及びヒトメタニューモウイルス(hMPV)から選択される2種以上のウイルスの抗原をそれぞれ捕捉する検出部を含む2種以上のイムノクロマト試験片を備える形態とすることができる。
このような構成とすることで、複数の検出対象物について同時に検査を行うことができる。
【0033】
本発明のフィルターは、第一の層1を顔側にして装着して、呼気を第一の層1を通してイムノクロマト試験片2に送りこむことで、呼気に含まれる検出対象物及び、水分をイムノクロマト試験片2に送り込むことができる。
【0034】
イムノクロマト試験片2として、既存のウイルス検出キットのイムノクロマト試験片を用いた場合には、イムノクロマト試験片を筐体に戻し、検出ラインが検出部24、又はコントロール部25の何れかに現れたか確認することができる。
また、第一の層1におけるイムノクロマト試験片2の検出部24に対応する位置、及びコントロール部25に対応する位置に、検出部24を示す符号、及びコントロール部25を示す符号を付してもよい。このような形態とすることで、簡単に検出結果を確認することができる。
【0035】
また、本発明のフィルターには、さらに、増感剤含有層28を含むことが好ましい(図3)。
増感剤含有層28は、界面活性剤及び/又は緩衝剤を含み、好ましくは、界面活性剤と緩衝剤の両方を含む。界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤が好ましい。非イオン性界面活性剤としては、ポリソルベート20が例示できる。
増感剤含有層28を備えることで、被験物質が増感剤とともに展開していき、より検出結果を確認しやすくすることができる。
【0036】
増感剤含有層28は、イムノクロマト試験片2のサンプルパッド21の上に積層されることが好ましい。
【0037】
本発明のフィルターに適用する、検出対象物を含む生体試料は、呼気又は飛沫である。
一般的なイムノクロマト試験片は、睡液、鼻汁、鼻孔拭い液、咽頭拭い液等を生体試料として用いるが、本発明のフィルターは、呼気又は飛沫を生体試料として、検出対象物の検出を行うことができる、
【0038】
[第二の形態]
次いで、第一の形態で説明した事項については省略しつつ、図4を参照しながら、本発明の第二の形態に係るフィルターについて説明を加える。
図4に示すように第二の形態に係るフィルターは、第一の層1、イムノクロマト試験片2、防湿材3を備え、イムノクロマト試験片2は、前記第一の層1と前記防湿材3の間に位置する。
【0039】
上述したイムノクロマトグラフ試験片を用いた検出には、複合体を展開するための媒体となる水分が必要となる。
第二の形態に係るフィルターは、イムノクロマト試験片2が第一の層1と防湿材3との間に位置することにより、呼気に含まれる水分がフィルター内に効率的に保持され、イムノクロマト試験片2の検出精度を高めることができる。また、水分が効率的に保持されることにより、検出に要する時間を短縮することができる。
【0040】
防湿材は、特に限定されないが、金属等の無機化合物、ポリマー、セロファン等の有機化合物ができる。防湿材の材料としては、常温でシート状に成型できるものが好ましい。金属としては、Li、K、Rb、Cs等のアルカリ金属、Ca、Sr、Ba、Ra等のアルカリ土類金属、Be、Mg、Zn、Cd、Hg等のマグネシウム族元素、Al、Ga、ln等のアルミニウム族元素、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu等の希土類元素、Ti、Zr、Sn、Hf、Pb、Th等のスズ族元素、Fe、Co、Ni等の鉄族元素、V、Nb、Ta等の土酸元素、Cr、Mo、W、U等のクロム族元素、Mn、Re等のマンガン族元素、Cu、Ag、Au等の貴金属、及びRu、Rh、Pd、Os,Ir、Pt等の白金族元素、並びにこれらの合金が挙げられる。防湿材として金属を用いる場合、Al、又はAgを含むことが好ましく、Alを含むことがより好ましく、アルミホイルが特に好ましい。
【0041】
防湿材の材料として有機化合物を用いる場合、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン等の合成ポリマー、セルロース等の天然ポリマー、木材パルプ、ビスコース、セロファン、防湿セロファン等の植物性成分等が例示できる。
また、防湿材として、綿、木綿、麻、竹繊維等の植物繊維、絹、羊毛等の動物繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維、アセテート等の半合成繊維、ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン等の合成繊維、又はこれらを編んだ生地を用いることができる。
【0042】
防湿材としては、セロファンが好ましく、粘着性物質を備えるセロファンがより好ましい。
粘着性物質を備えるセロファンとしては、セロハンテープを用いることができる。セロハンテープは接着面を有するため、イムノクロマト試験片を第一の層に張り付けるように組み立てることができ、作成が簡単である。また、イムノクロマト試験片の位置固定ができるため、検出対象物を検出するのに最適な位置を維持することができる。
【0043】
防湿材の透湿度は、好ましくは10000g/m/24h以下であり、より好ましくは5000g/m/24hであり、さらに好ましくは3000g/m/24hであり、特に好ましくは1000g/m/24hであり、最も好ましくは800g/m/24h以下である。
【0044】
防湿材は、シート状であることが好ましい。シート状の防湿材を用いることで、フィルターの装着時における過剰なムレを抑制することができる。
また、防湿材の面積は、イムノクロマト試験片のサンプルパッドの面積以上であることが好ましく、イムノクロマト試験片の片面を覆う面積であることがより好ましく、イムノクロマト試験片の片面の面積よりも大きい面積であることがさらに好ましい。
具体的には、イムノクロマト試験片の面積に対する防湿材の面積は、2倍以上が好ましく、4倍以上がより好ましく、6倍以上がさらに好ましく、8倍以上が特に好ましく、10倍以上が最も好ましい。
イムノクロマト試験片に対する防湿材の面積を大きくすることで、より短時間で検出を行うことができる。
【0045】
また、防湿材の面積は、第一の層の面積の90%以下が好ましく、80%以下がより好ましく、70%以下がより好ましい。
【0046】
[第三の形態]
第一の形態、及び第二の形態で説明した事項については省略しつつ、図5を参照しながら、本発明の第三の形態に係るフィルターについて説明を加える。
図5に示すように、第三の形態に係るフィルターは、第一の層1、イムノクロマト試験片2、防湿材3、第二の層4の順に積層されてなる。すなわち、第三の形態は、第二の形態に、第二の層4を追加した構造である。
【0047】
第二の層4としては、第一の層1と同様のフィルターが例示できる。気体が通気可能なものであれば特に制限されない。例えば、防塵マスク、医療用マスク、家庭用マスクに使用されるフィルターを用いることができる。また、BFE規格、VFE規格、PFE規格のフィルター等を用いることができる。第二の層4は、シート状であることが好ましい。
第二の層としては、第一の層と同一のものを用いてもよく、異なるものを用いてもよい。
【0048】
第二の層としては、PFE99%規格以上の捕集率を有するフィルターを用いることが好ましい。第二の層として、捕集率の高いフィルターを用いることで、外側からの抗原、抗体の侵入を防ぎ、偽陽性の発生を抑制することができる。
また、第二の層として捕集率の高いフィルターを用いることで、第一の層を通過した抗原、抗体の流出を抑制することができる。
【0049】
第三の形態に係るフィルターは、第二の層4を備えることにより、呼気に含まれる水分をより効率的にフィルター内に保持することができる。
【0050】
また、イムノクロマト試験片2と防湿材3を、第一の層1と第二の層4ではさむ構造にすることにより、内部のイムノクロマト試験片2と防湿材3を汚れや破損から保護することができる。
【0051】
第一の形態、第二の形態、及び第三の形態に係るフィルターについて説明したが、本発明はこれに限定されない。
本発明のフィルターは、第一の層と、イムノクロマト試験片の検出部及びコントロール部との間に、防湿材を備える形態を採用することができる。
このように、防湿材を第一の層及び検出部の間の配置することで、検出対象物が直接第二の結合性物質に結合することを防ぐことができる。
より好ましくは、第一の層と、イムノクロマト試験片のコンジュゲートパット、展開部、検出部、コントロール部、及び吸液パッドとの間に、防湿材を備える。
すなわち、イムノクロマト試験片のサンプルパッド以外の部分について、防湿材でカバーすることで、より検出精度を向上させることができる。
【0052】
また、本発明は、第一の層1に、開口部11と、カバー部12を備える形態とすることができる(図6)。
カバー部12は、開口部11を覆うように配置されてなり、第一の層1から取り外し可能に構成されている。イムノクロマト試験片2は、カバー部12が取り外れた場合、開口部11から検出部24及びコントロール部25が確認できるように配置されている。
このような構成とすることで、簡便にイムノクロマト試験片2の検出ラインを確認することができる。
【0053】
開口部11の大きさ及び位置は、イムノクロマト試験片2の検出ラインが見えるように、すなわち検出部24及びコントロール部25が確認できる大きさ及び位置であれば、特に限定されない。
【0054】
カバー部12は、気体が通気可能な素材であれば特に限定されず、第一の層1と同一の素材であってもよく、異なる素材であってもよい。
【0055】
別の実施形態において、カバー部12は、透明性又は透光性を有する素材、又はガーゼのような透ける素材を用いることができる。この場合、カバー部12は取り外し可能であることを要さない。
【0056】
また、本発明は、防湿材と、イムノクロマト試験片を含む、検出部材に関する。
本発明の検出部材は、使用者が自身で所有しているフィルターや、マスクに取り付けることで、当該フィルターやマスクを、簡易的なフィルターとして用いることができる。
【0057】
また、本発明は、上述したフィルターを含むマスクに関する。
本発明のフィルターを、マスクに適用することで、ウイルス感染防止の観点からマスクを使用すると同時に、自身のウイルス感染有無を簡易的に確認することができる。
フィルターを含むマスクは、市販のマスクに当該フィルターを取り付けてもよく、マスク本体を第一の層として、イムノクロマト試験片を取り付けたものであってもよい。
【0058】
また、本発明は、上述したフィルターを含むおむつに関する。
本発明のおむつは、第一の層を内側(泌尿器部と接する側)として、尿をサンプルとして用いることができる。
第一の層を通してイムノクロマト試験片に尿を供給することで、試験片へのサンプルの流入量を調整することができる。
【0059】
本発明のおむつは、マスクの着用できない乳幼児や高齢者、ペット等の動物に対するウイルス等の検出に有用である。
【0060】
おむつは、一般的に表面材(内側)、吸水材、防水材、表面材(外側)が積層してなる構造を有している。
本発明のフィルターをおむつに適用する場合、おむつの内側の表面材と吸水材の間に、本発明のフィルターを配置してなる構造が例示できる。
また、おむつの内側の表面材を第一の層としてもよく、吸水材を第一の層としてもよい。
【実施例】
【0061】
[試験例1]水濡れ感知シートの設置位置の違いによるマスクの水分保持力確認試験
上述の通り、本発明のフィルターにおけるイムノクロマト試験片は、展開部から標識された第一の結合性物質を展開するために水分を必要する。
まずは、イムノクロマト試験片の代わりに市販の水濡れ感知シートを用いて、マスクの水分保持力を確認した。
表1に、実施例1〜3の実験条件を示す。
【0062】
【表1】
【0063】
<実施例1>
図7に実施例1のマスクの構造を示す。
実施例1のマスクは、水濡れ感知シート5、第一の層1(マスク本体)、水濡れ感知シート5、防湿材3(セロハンテープ)の順に積層して製造した。
水濡れ感知シートは片面が水濡れ感知面51、他方の面が接着面52となっているものを使用した。一方の水濡れ感知シート5は水濡れ感知面51が第一の層1に接するよう配置し、セロハンテープを用いて第一の層1に接着した。以下、第一の層1と防湿材3に挟まれる位置を、設置位置Aと称する。
他方の水濡れ感知シート5は接着面52が第一の層1に接するよう、第一の層1に接着した。以下、第一の層1と顔に挟まれる位置を、設置位置Bと称する。
【0064】
第一の層1(マスク本体)として、プリーツ型マスク(医療用マスク メディカルASTM−F2100 Visit the LOHAStyle Store製)を用いた。
【0065】
水濡れ感知シート5として、株式会社ぺパレス製作所製のものを用いた。設置位置Aの水濡れ感知シートのサイズは8mm×8mmであり、設置位置Bの水濡れ感知シートのサイズは7mm×10mmである。
【0066】
防湿材3として、セロハンテープ(「スコッチ」(スリーエムジャパン株式会社製))を1.8cm×7.5cmのサイズに切り出して用いた。
【0067】
設置位置Bの水濡れ感知シートがある面を顔に接する面として、実施例1のマスクを1.5時間装着し、水濡れ感知シートの変化を調べた。結果を図9に示す。
【0068】
<実施例2>
図8に実施例2のマスクの構造を示す。
実施例2のマスクは、第一の層1(マスク本体)、2つの水濡れ感知シート5、防湿材3(セロハンテープ)、第二の層4(第一の層1とは別個独立のマスク本体)の順に積層することで作成した。防湿材3は、一方の水濡れ感知シート5のみ覆うよう配置した。
以下、第一の層1と第二の層4に挟まれる位置を、設置位置Cと称する。さらに、設置位置Cのうち、防湿材3と第一の層1とに挟まれる位置を、設置位置Dと称する。
【0069】
第一の層1として、立体型マスク(クールマックス アクアバンク製)を用いた。第二の層4としてプリーツ型マスク(医療用マスク メディカルASTM−F2100 Visit the LOHAStyle Store製)を用いた。
【0070】
水濡れ感知シート5として、株式会社ぺパレス製作所製のものを用いた。設置位置Cの水濡れ感知シートのサイズは10mm×8mmであり、設置位置Dの水濡れ感知シートのサイズは11mm×7mmである。
【0071】
防湿材3として、セロハンテープ(「スコッチ」(スリーエムジャパン株式会社製))を1.8cm×7.5cmのサイズに切り出して用いた。
【0072】
第一の層1の外側面を顔に接する面として1.2時間装着し、水濡れ感知シートの変化を調べた。結果を図9に示す。
【0073】
<実施例3>
図9に実施例3のマスクの構造を示す。
実施例3に係るマスクは、水濡れ感知シート5が設置位置Aに位置する。
【0074】
第一の層1として、プリーツ型マスク(医療用マスク メディカルASTM−F2100 Visit the LOHAStyle Store製)を用いた。
【0075】
水濡れ感知シート5として、株式会社ぺパレス製作所製のものを用いた。水濡れ感知シート5のサイズは、16mm×10mmである、
【0076】
防湿材3として、OPPテープ(「透明梱包用テープNo.3303」(株式会社ニトムズ製)を5cm×8.5cmのサイズに切り出して用いた。
【0077】
第一の層1の外側面を顔に接する面にして0.7時間装着し、水濡れ感知シートの変化を調べた。結果を図10に示す。
【0078】
[試験例1:考察]
<実施例1>
設置位置Aの水濡れ感知シート5は、設置位置Bの水濡れ感知シート5と比較して、多くの水分を保持することが確認された。この結果から水濡れ感知シートが第一の層1と防湿材3にはさまれていることによって、呼気に含まれる水分をより多く保持することが示された。
【0079】
<実施例2>
設置位置Dの水濡れ感知シート5は、設置位置Cの水濡れ感知シート5よりも、多くの水分を保持することが確認された。水濡れ感知シートが第一の層1と防湿材3にはさまれていることによって、呼気に含まれる水分をより多く保持することが示された。
また、実施例1と、実施例2を比較すると、実施例2は実施例1と比して装着時間が短いにも関わらず、実施例2の設置位置Dの水濡れ感知シート5は、実施例1の設置位置Aの水濡れ感知シートと比して、より多くの水分を保持することが確認された。この結果から、第二の層4の存在により、呼気に含まれる水分をより多く保持できることが示された。
【0080】
<実施例3>
実施例3は、装着時間が0.7時間であるにも関わらず、水濡れ感知シートが反応した。
この結果から、防湿材3の面積を大きくすることで、短時間でも水分を保持できることが明らかとなった。
【0081】
[試験例2]防湿材の大きさによる水分捕捉量の影響確認試験
第一の層として立体型マスクを、防湿材としてセロハンテープを用いて、設置位置Aに9mm×9mmのサイズの水濡れ感知シートを2つ設置した(実施例4)。
一方の水濡れ感知シートには、サイズが28.5mm×28.5mm(防湿材との面積比:10倍)のセロハンテープを防湿材として用いて、他方の水濡れ感知シートには、サイズが12.7mm×12.7mm(防湿材との面積比:2倍)のセロハンテープを防湿材として用いた。
【0082】
第一の層1がある向きを顔に接する向きにして装着し、水濡れ感知シートの変化の違い調べた。結果を図11に示す。
【0083】
[試験例2:考察]
図11に示す通り、水濡れ感知シートに対する防湿材の面積比が大きいほど、水の吸収量が高いことがわかった。すなわち、水濡れ感知シートに対する防湿材の面積比を高くするほど、短時間でイムノクロマト試験片を反応させることができる。
【0084】
[試験例3]フィルターを含むマスクの反応性確認試験
表2に、実施例5〜7の実験条件を示す。
【表2】
【0085】
<実施例5>
図12に実施例5のマスクの構造を示す。
実施例5のマスクは、第一の層1、イムノクロマト試験片2及び水濡れ感知シート5、防湿材3、第二の層4の順に積層することで作成した。
実施例5のイムノクロマト試験片2及び水濡れ感知シート5の設置位置は、試験例1の設置位置Dに相当する。
【0086】
第一の層1として、立体型マスク(クールマックス アクアバンク製)を用いた。第二の層4としてプリーツ型マスク(医療用マスク メディカルASTM−F2100 Visit the LOHAStyle Store製)を用いた。
【0087】
イムノクロマト試験片2として、イムノエースRSV(株式会社タウンズ製)のイムノクロマト試験片を用いた。
【0088】
水濡れ感知シート5として、株式会社ぺパレス製作所製のものを用いた。
【0089】
防湿材3として、セロハンテープ(「スコッチ」(スリーエムジャパン株式会社製))を用いた。
【0090】
第一の層1の外側面を顔に接する面として、実施例5のマスクを1.5時間装着し、イムノクロマト試験片2及び水濡れ感知シート5の変化を調べた。結果を図15に示す。
【0091】
<実施例6>
図13に実施例6のマスクの構造を示す。
実施例6のマスクは、第一の層1、イムノクロマト試験片2、防湿材3、第二の層4の順に積層して作成した。
実施例6のイムノクロマト試験片2の設置位置は、試験例1の設置位置Dに相当する。
【0092】
第一の層1として、立体型マスク(クールマックス アクアバンク製)を用いた。第二の層としてプリーツ型マスク(医療用マスク メディカルASTM−F2100 Visit the LOHAStyle Store製)を用いた。
【0093】
イムノクロマト試験片2として、イムノエースFlu(株式会社タウンズ製)の試験片を用いた。
【0094】
防湿材3として、セロハンテープ(「スコッチ」(スリーエムジャパン株式会社製))を用いた。
【0095】
第一の層1の外側面を顔に接する面として、1.5時間装着し、イムノクロマト試験片2の変化を調べた。結果を図15に示す。
【0096】
<実施例7>
図14に実施例7のマスクの構造を示す。実施例7は、実施形態2の構造である。
実施例7のマスクは、第一の層1、2つのイムノクロマト試験片2(図12には一つのみ記載)、防湿材3、の順に積層して作成した。
実施例7のイムノクロマト試験片2の設置位置は、試験例1の設置位置Aに相当する。
【0097】
第一の層1として、プリーツ型マスク(医療用マスク メディカルASTM−F2100 Visit the LOHAStyle Store製)を用いた。
【0098】
イムノクロマト試験片2として、イムノエースFlu(株式会社タウンズ製)のイムノクロマト試験片及びイムノエースアデノ(株式会社タウンズ製)のイムノクロマト試験片を用いた。
【0099】
防湿材3として、セロハンテープ(「スコッチ」(スリーエムジャパン株式会社製))を用いた。
【0100】
第一の層1の外側面を顔に接する面にして4.6時間装着し、イムノクロマト試験片の変化を調べた。結果を図15に示す。
【0101】
[試験例3:考察]
<実施例5>
水濡れ感知シートにより、水分を保持することを確認した。
RSV検出用の試験片をイムノクロマト試験片として用いた実施例5のマスクは、装着後に検出ラインが出現されていることを確認した。実施例5のマスクからイムノクロマト試験片を取り外し、イムノエースRSVの筐体内に戻すと、検出ラインはコントロール部のラインであることが確認された。
この結果から、実施例5に係るマスクは、イムノクロマト試験片に十分な水分が供給され、白金−金コロイド標識抗体が、正常に展開することがわかった。
【0102】
<実施例6>
インフルエンザウイルス検出用の試験片をイムノクロマト試験片として用いた実施例6のマスクは、装着後に検出ラインが出現していることが確認された。イムノクロマト試験片をマスクから取り外し、イムノエースfluの筐体内に戻すと、コントロール部にラインが出ていることが確認された。この結果から、実施例6に係るマスクは、イムノクロマト試験片に十分な水分が吸収され、金属コロイド標識抗体が、正常に展開することがわかった。
【0103】
<実施例7>
インフルエンザウイルス検出用のイムノクロマト試験片及びアデノウイルス検出用のイムノクロマト試験片を実施例7のマスクは、装着後に何れのイムノクロマト試験片にも検出ラインが出現していることが確認された。それぞれのイムノクロマト試験片をそれぞれの筐体に戻したところ、何れのイムノクロマト試験片もコントロール部に検出ラインが出現してことが確認された。この結果から、実施例7に係るマスクは、イムノクロマト試験片に十分な水分が吸収され、金属コロイド標識抗体が、正常に展開することがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明は、簡易的なウイルス検査に応用することができる。
【符号の説明】
【0105】
1 第一の層
11 開口部
12 カバー部
2 イムノクロマト試験片
21 サンプルパッド
22 コンジュゲートパット
221 標識された第一の結合性物質
23 展開部
24 検出部
241 第二の結合性物質
25 コントロール部
251 第三の結合性物質
26 吸液パッド
27 検出対象物
28 増感剤含有層
3 防湿材
31 防湿材の非接着面
32 防湿材の接着面
4 第二の層
5 水濡れ感知シート
51 水濡れ感知シートの水濡れ感知面
52 水濡れ感知シートの接着面
A 設置位置A
B 設置位置B
C 設置位置C
D 設置位置D

【要約】
【課題】
簡易的に感染の有無を確認することができる新規なフィルターを提供する。
【解決手段】
気体及び/又は液体が通過可能な第一の層と、
イムノクロマト試験片と、が積層してなる、
フィルター。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15