(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
乾燥粉末吸入器によって対象の肺に送達するための乾燥粉末組成物であって、前記組成物はアセチルサリチル酸またはその薬学的に許容される塩を有する乾燥粒子を有し、前記乾燥粒子は0.5μm〜10μmの範囲内の空気力学的質量中央径(MMAD)を有し、前記乾燥粒子は6〜20μmの範囲のDV90、2.5〜7μmの範囲のDV50および0.8〜2μmの範囲のDV10を有し、前記乾燥粒子はさらに薬学的に許容される賦形剤を有し、前記薬学的に許容される賦形剤は、前記乾燥粒子の0.1%(w/w)〜10%(w/w)の範囲の量の1若しくはそれ以上のリン脂質を有し、前記アセチルサリチル酸またはその薬学的に許容される塩は前記組成物の50%(w/w)またはそれ以上の量である、組成物。
請求項1記載の乾燥粉末組成物において、前記乾燥粒子は、20μm未満のDV90、7μm未満のDV50、および2μm未満のDV10を示すようなMMADサイズ分布を有する粒子を有する、組成物。
請求項1記載の乾燥粉末組成物において、前記組成物は、前記粒子が10μm未満のDV90、4μm未満のDV50、および1μm未満のDV10を示すようなMMADサイズ分布を有する粒子を有する、組成物。
請求項1記載の乾燥粉末組成物において、前記粒子は、前記粒子が2.5〜4μmの範囲のDV50、および0.8〜1.5μmの範囲のDV10を示すようなMMADサイズ分布を有する、組成物。
請求項1記載の乾燥粉末組成物において、前記リン脂質は、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、レシチン、またはそれらの混合である、組成物。
【発明を実施するための形態】
【0024】
1.序論
血栓塞栓性症状およびイベント
心筋梗塞、深部静脈血栓症、肺塞栓症、脳血栓症等などの血栓塞栓性イベントは、患者または臨床医がイベントのための初期療法または治療を提供するのを可能にする、すなわち、血栓塞栓性イベントの開始の直ぐに、または1、5、10、もしくは15分以内の一群の症状と一緒に呈示し得る。一定の状況では、患者に初期治療を提供するために、81mgの低用量もしくは「少量の(baby)」アセチルサリチル酸、または通常のアセチルサリチル酸(330mg)が経口投与され得る。しかしながら、経口投与は、十分な治療効果を提供するのに必要なほど速くは作用しないので、あまり好ましくない結果をもたらし得る。よって、肺薬物送達システムおよび関連する方法または本発明は、血栓塞栓性イベントのリスクを低下させるおよび/または血栓塞栓性イベントのための治療を提供するための加速した、より効率的な経路および治療を提供する。例えば、一定の実施形態は、乾燥粉末吸入器(dry powder inhaler:DPI)または定量吸入器(metered dose inhaler:MDI)などによる吸入によって非ステロイド性抗炎症薬(nonsteroidal anti−inflammatory drug:NSAID)を投与するためのシステムおよび方法を提供する。
【0025】
薬物のための送達機構
薬物は、液剤、カプセル剤、錠剤、または咀嚼錠などによって、種々の方法で経口投与することができる。経口経路が簡便で、安全で、かつ安価であるために最も一般的に使用される。しかしながら、薬物が典型的に消化管を通して移動する方法のために、経口薬物送達は制限を有する。例えば、薬物が経口投与されると、薬物は口、胃、および小腸で吸収される。薬物は、血流に入る前に、腸壁を通過しなければならず、肝臓に進む。腸壁および肝臓を通過する間に、薬物は代謝され、血流に実際に到達する薬物の量が減少し得る。薬物の代謝は、薬物の生物学的利用能を低下させ、通常は「初回通過効果」と呼ばれる。初回通過効果により失われる薬物の分画は、一般的に、肝臓および腸壁での吸収、ならびに消化管ルーメン酵素、腸壁酵素、細菌酵素、および肝(肝臓)酵素によって決定される。
【0026】
一般的に、アセチルサリチル酸に対する初回通過効果は、投与された投与量の生物学的利用能を有意に低下させる。胃内での酸性条件により、アセチルサリチル酸は胃および上部小腸で吸収される。吸収された後、アセチルサリチル酸は酢酸およびサリチレートに代謝される。経口服用されると、初回通過効果のために、一般的にアセチルサリチル酸の用量の約3分の1〜3分の2しか生物学的に利用可能でない。
【0027】
吸入によって投与された薬物も初回通過効果を受け得る。吸入による薬物投与については、小さな粒子が経鼻経路を介して、喉笛(気管)を下って、肺の中へ進行する。粒子のサイズは、治療の全体的な有効性、すなわち、粒子が初回通過効果の対象となるかどうかを決定するものとなり得る。いったん肺の内側にいくと、これらの粒子は血流に吸収される。しかしながら、肺の肺胞腔に到達した薬物の分画では、医薬品有効成分(例えば、アセチルサリチル酸)が毛細血管内に吸収され、肺循環に送達される。この物質は最初に肺静脈を介して酸素化された血液により心臓へ循環し、次いで、左心室からの排出を介して全身に分配される。よって、医薬品の吸入で、アセチルサリチル酸の実質的な部分が肝臓での処理による初回通過効果を回避し、心臓の領域中のアセチルサリチル酸のレベルが経口投与の先行技術の方法後に可能なよりも高いという結果になる。
【0028】
吸入薬物の投与量ならびに送達のタイミングがしばしば測定するのが困難となり得るために、ほとんどの薬物が吸入によって投与されない。通常、この方法を使用して、定量容器中のエアロゾル化された抗喘息薬などの肺に特異的に作用する薬物を投与し、全身麻酔のために使用されるガスを投与する。この場合、発明者らは、乾燥粉末装置を介して迅速に一定用量のアセチルサリチル酸を再現性よく送達することが可能であることを決定した。
【0029】
薬物粒子のジパルミトイルホスファチジルコリン(dipalmitoyl phosphatidylcholine:DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(distearoyl phosphatidylcholine:DSPC)、またはダイズレシチンなどの界面活性剤によるコーティングが、乾燥粉末吸入装置からの薬物の送達を再現性よく改善することも分かった。
【0030】
アセチルサリチル酸の薬物動態
アセチルサリチル酸は、サリチル酸のアセチル化された形態である。アセチルサリチル酸は、所望の効果を達成するために何百万の人々によって使用されており、また多くの人々によって、少量のアセチルサリチル酸がしばしば毎日使用されている。アセチルサリチル酸の主効は、シクロオキシゲナーゼ酵素(具体的には、COX1およびCOX2酵素)の機能を減弱することである。COX1を阻害することによって、アセチルサリチル酸は、血小板凝集を不可逆的に阻害することができ、これによって血餅のリスクが低下する。さらに、COX2酵素の減弱は、プロスタグランジンおよびトロンボキサンを阻害することによって体内の炎症、硬直、および疼痛を低減することができる。よって、心臓発作、脳卒中のリスクが高い、または炎症がある個人はしばしばアセチルサリチル酸を服用してこれらの状態の症状および効果に対処する。注記されるように、アセチルサリチル酸は、このような心筋イベントの可能性を有効に減らし、少量のアセチルサリチル酸という少ない用量で疼痛および炎症を低減することができる。しかしながら、少なくとも一部はCOX1の阻害により、アセチルサリチル酸は出血のリスクを増加させ、有痛性となり得る胃および腸などの臓器への損傷を引き起こすおそれがある。
【0031】
アセチルサリチル酸を用いた経口投与は、典型的には標準的なミカエリス−メンテン速度式に従う。経口用量の投与後、サリチル酸、アセチルサリチル酸の一次代謝産物のピーク血漿レベルが、典型的には約1〜2時間後に達成され、アセチルサリチル酸は、一般的に投与後1〜2時間以内に検出不可能になる。GI管からの吸収速度は、剤形、食物の存在または非存在、胃内pH、ならびに年齢および体重などの他の因子を含むいくつかの因子に依存する。
【0032】
乾燥粉末吸入器技術
アセチルサリチル酸の経口送達は、疼痛、消化不良、および出血の高リスクをもたらす胃壁への損傷のリスクをもたらし得る。さらに、血栓塞栓性イベントをもたらし得る緊急事態中に薬物を経口投与することは通常は困難である。例えば、患者は、脳卒中を患うと、嘔吐を経験しているまたは薬物を経口服用することができないかもしれない。さらに、薬物用量が全身血流に直ちには到達せず、よって、薬物の重要な効果が遅延するので、薬物の経口投与は望ましくないものとなり得る。尚且つ、肝臓および腸における初回通過効果により、全身循環に達する薬物の量は投与されたものよりはるかに少ない。本明細書に記載される代替投与経路は、これらの望まれない副作用を回避する。
【0033】
緊急事態の初期段階での吸入による薬物の送達はまた、一定の医学的状態の予備的治療の速効性の有効な形態を提供することができる。例えば、一実施形態では、重篤な血栓塞栓性イベントの症状の愁訴を受けると、患者が、DPIによって、治療的量のNSAIDを投与され得る。NSAIDは、医学的状態に関連する課題に対処することができるまたは医学的状態のための初期治療を提供することができる。
【0034】
しかしながら、薬物の乾燥粉末吸入は、一般的にミリグラム未満の投与量に限定されてきた。粒子工学における近年の開発、特にPulmoSphere(登録商標)技術の開発によって、単一作動での多量の乾燥粉末の肺への送達が可能になった。David E.Geller,M.D.ら、
Development of an inhaled dry−powder formulation of tobramycin using pulmosphere(商標)technology、J Aerosol Med Pulm Drug Deliv.2011年8月;24(4)、175〜82頁を参照されたい。この刊行物では、112mgの用量のトブラマイシン(4つのカプセル中)がPulmoSpheres(商標)(登録商標)を介して有効に送達された。
【0035】
体は、吸入された薬物の有効性を制限する種々の粒子フィルタを含む。例えば、中咽頭は、5μm超の直径を有する粒子の通過を妨げる傾向がある。しかしながら、肺胞に到達するためには、粒子は約1μm〜約5μmのサイズを有さなければならない。したがって、粒子が約1μm〜約5μm、および一定の実施形態では、約1.7μm〜約2.7μmの中央幾何学的直径を有する吸入可能なアセチルサリチル酸の調製および使用が開示される。一般的に、約1μm〜約3μmの間の粒径が、吸入後に肺胞腔に有効に堆積する。このサイズ範囲内に入る薬物製剤の部分は、典型的には細粒分(fine particle fraction:FPF)と呼ばれ、吸入可能な薬物製剤を製造する場合、高FPFsが最も望ましい。いくつかの場合、本発明のFPFは、アセチルサリチル酸を微粒子化するために使用される方法ならびに空気力学的性能を調節する、製剤に含まれ得る任意選択の賦形剤を含むいくつかの因子に応じて、約20%〜約90%、またはそれ以上に及ぶことができる。
【0036】
薬学的に活性なタンパク質、例えば、インスリンなどの他の薬物についても同様の結果が観察される。インスリンの場合、吸入による送達が、注射による送達と比べて有意に高いピーク血漿レベル(ほぼ2倍)を提供するだけでなく、循環中の分子の実質的により迅速な出現(吸入された場合30分未満に対して注射された場合約90分)も提供する(Technosphere(登録商標)Technology:A Platform for Inhaled Protein Therapeutics,in Pulmonary Delivery:Innovative Technologies Breathing New Life into Inhalable Therapeutics、http://www.ondrugdelivery.com、8〜11頁においてオンラインで入手可能)。
【0037】
現在まで、NSAID(少量のアセチルサリチル酸など)の伝統的な毎日の使用または血栓塞栓性イベントの症状のための予防的ケアとしてのNSAIDの緊急使用に取って代わる乾燥粉末吸入器によるアセチルサリチル酸の単一用量使用は存在しなかった。したがって、一実施形態では、方法が、少量のアセチルサリチル酸(例えば、81mg未満)の投与量より少ない量で乾燥粉末吸入によりNSAIDを投与することを提供する。
【0038】
そのため、例えば、血栓塞栓性イベントのリスクを低下させることによって、疾患を治療する方法は、DPIまたはMDIによって、サリチレートなどのNSAIDを投与する工程を有する。例えば、方法は、DPIまたはMDIによってアセチルサリチル酸を投与する工程を有することができる。投与される用量(例えば、単一用量)は25mg未満のアセチルサリチル酸であり得る。さらに、種々の実施形態では、投与される投与量(例えば、単一用量)が、20mg未満のアセチルサリチル酸であり得る。投与される投与量(例えば、単一用量)は、15mg未満のアセチルサリチル酸、12mg未満のアセチルサリチル酸、10mg未満のアセチルサリチル酸、8mg未満のアセチルサリチル酸、5mg未満のアセチルサリチル酸、または2mg未満のアセチルサリチル酸であり得る。
【0039】
他の実施形態では、アセチルサリチル酸の投与量(例えば、単一用量)が、約2mg〜約30mg、約4mg〜約25mgのアセチルサリチル酸、約6mg〜約20mgのアセチルサリチル酸、約8mg〜約15mgのアセチルサリチル酸、約10mg〜約13mgのアセチルサリチル酸、約1mg、約2mg、約3mg、約4mg、約5mg、約6mg、約7mg、約8mg、約9mg、約10mg、約11mg、約12mg、約13mg、約14mg、約15mg、約16mg、約17mg、約18mg、約19mg、または約20mgのアセチルサリチル酸であり得る。このような投与量は、約81mg〜約325mgの典型的な投与量と比べて、生物学的同等性投与量を提供することができるが、負の副作用をほとんど示さない。
【0040】
よって、アセチルサリチル酸などのNSAIDを、伝統的な経口用量よりはるかに少ないアセチルサリチル酸を送達する単一用量または複数回用量でDPIまたはMDIによって投与することができ、これは同等の治療を提供することができるが、アセチルサリチル酸などの一定のNSAIDsに関連する負の副作用を回避する傾向がある。さらに、このような治療薬を投与するシステム(装置)も提供される。
【0041】
NSAID、特に、アセチルサリチル酸を製剤化して、先行技術の投与方法と比べて空気力学的性能、生物学的利用能、および/または薬物動態を改善するのに有効な薬学的に許容される賦形剤を含めることができる。
【0042】
DPIまたはMDI装置は、マウスピースと、血栓塞栓性イベントのリスクを低下させるための患者による吸入のためにNSAIDを利用可能にする作動部材とを有することができる。
【0043】
例えば、血栓塞栓性イベントのリスクを低下させる方法が提供され、これは、乾燥粉末吸入器によって一定用量の非ステロイド性抗炎症薬を投与する工程を有し得る。用量は、患者の血栓塞栓性イベントのリスクを低下させるのに有効なものとなり得る。乾燥粉末吸入器は、マウスピースと、血栓塞栓性イベントのリスクを低下させるための患者による吸入のために前記用量の非ステロイド性抗炎症薬を利用可能にする作動部材とを有することができる。
【0044】
例えば、血栓塞栓性(虚血性)イベントのリスクを低下させることによって、疾患を治療するための薬物送達システムも提供され得る。システムは、一定用量の粉末形態の非ステロイド性抗炎症薬を有し得る。用量は、患者の血栓塞栓性イベントのリスクを低下させるのに有効なものとなり得る。システムはまた、乾燥粉末吸入器も有し得る。乾燥粉末吸入器は、マウスピースと、前記用量の非ステロイド性抗炎症薬を受け入れるためのリザーバーと、前記マウスピースを通した患者による吸入のために前記用量の非ステロイド性抗炎症薬を利用可能にする作動部材とを有することができる。
【0045】
血栓塞栓性イベントは、心筋梗塞、深部静脈血栓症、肺塞栓症、または脳血栓症であり得る。前記用量のNSAID薬物を、血栓塞栓性イベントの症状に応じて、予備的治療として投与することができる。NSAIDはアセチルサリチル酸であり得、単一用量または複数回用量、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10回、またはそれ以上の用量で投与され得る。
【0046】
2.定義
「乾燥粉末」という用語は、吸入装置中で分散され、その後、対象によって吸入され得る微細分散呼吸域乾燥粒子を含有する組成物を指す。このような乾燥粉末または乾燥粒子は、最大約15%の水もしくは他の溶媒を含有し得る、または水もしくは他の溶媒を実質的に含まない、または無水であり得る。
【0047】
「乾燥粒子」という用語は、最大約15%の水もしくは他の溶媒を含有し得る、または水もしくは他の溶媒を実質的に含まない、または無水であり得る呼吸域粒子を指す。
【0048】
「呼吸域」という用語は、吸入によって対象の呼吸器に送達(例えば、肺送達)するのに適した乾燥粒子または乾燥粉末を指す。呼吸域乾燥粉末または乾燥粒子は、約20μm未満、約15μm未満、約10μm未満、約5μ未満、またはそれより小さい空気力学的質量中央径(mass median aerodynamic diameter:MMAD)を有し得る。
【0049】
「分散性」という用語は、呼吸域エアロゾルに散らされる乾燥粉末または乾燥粒子の特性を説明するものである。乾燥粉末または乾燥粒子の分散性は、本明細書では、HELOS/RODOSによって測定される、1barの分散(すなわち、調節装置)圧力で測定される体積中央幾何学的直径(volume median geometric diameter:VMGD)÷4barの分散(すなわち、調節装置)圧力で測定されるVMGD、または0.5barのVMGD÷4barのVMGDの商として表される。これらの商は、本明細書では、それぞれ「1/4bar」および「0.5/4bar」と呼ばれ、分散性は低い商と相関する。例えば、1/4barは、HELOSまたは他のレーザー回折システムによって測定される約1barのRODOS乾燥粉末分散機(または同等の技術)のオリフィスから放出される呼吸域乾燥粒子または粉末のVMGD÷HELOS/RODOSによって4barで測定される同じ呼吸域乾燥粒子または粉末のVMGDを指す。よって、高度分散性乾燥粉末または乾燥粒子は、1.0に近い1/4barまたは0.5/4bar比を有するだろう。高度分散性粉末は、集塊、凝集もしくは集合する傾向が低く、および/またはもし集塊、凝集もしくは集合しても、吸入器から放出し、対象によって吸い込まれると容易に分散または脱集塊する。分散性は、流量の関数として吸入器から放出されるサイズを測定することによっても評価することができる。
【0050】
「放出用量」または「ED」という用語は、発射または分散イベント後の適当な吸入装置からの薬物製剤の送達の指標を指す。より具体的には、乾燥粉末製剤については、EDは、単位用量パッケージの外に引き出され、吸入装置のマウスピースから出る粉末の割合の尺度である。EDは、吸入装置によって送達される用量と公称用量(すなわち、発射前に適当な吸入装置に入れられた単位用量当たりの粉末の質量)の比として定義される。EDは、実験的に測定されるパラメータであり、USP Section 601 Aerosols,Metered−Dose Inhalers and Dry Powder Inhalers,Delivered−Dose Uniformity,Sampling the Delivered Dose from Dry Powder Inhalers、United States Pharmacopeia Convention、Rockville、MD、第13改訂版、222−225、2007の方法を用いて決定することができる。この方法は、インビトロ装置設定を利用して患者の投与を模倣する。
【0051】
「FPF(<5.6)」、「FPF(<5.6μm)」、および「5.6μm未満の細粒分」という用語は、5.6μm未満の空気力学的直径を有する乾燥粒子の試料の分画を指す。例えば、FPF(<5.6)は、2段階崩壊Andersenカスケードインパクター(Andersen Cascade Impactor:ACI)の段階1および回収フィルタに堆積した呼吸域乾燥粒子の質量を、装置に送達するためにカプセルに計り入れられた呼吸域乾燥粒子の質量で割ることによって決定することができる。このパラメータはまた、「FPF_TD(<5.6)」(TDは全量を意味する)としても同定され得る。8段階ACIを用いて同様の測定を行うことができる。8段階ACIカットオフは、標準的な60L/分流量で異なるが、FPF_TD(<5.6)は8段階完全データセットから外挿することができる。8段階ACI結果も、FPFを決定するためのカプセルであったものの代わりに、ACIで回収された用量を用いるUSPの方法によって計算することができる。
【0052】
「FPF(<3.4)」、「FPF(<3.4μm)」、および「3.4μm未満の細粒分」という用語は、3.4μm未満の空気力学的直径を有する呼吸域乾燥粒子の質量の分画を指す。例えば、FPF(<3.4)は、2段階崩壊ACIの回収フィルタに堆積した呼吸域乾燥粒子の質量を、装置に送達するためにカプセルに計り入れられた呼吸域乾燥粒子の全質量で割ることによって決定することができる。このパラメータはまた、「FPF_TD(<3.4)」(TDは全量を意味する)としても同定され得る。8段階ACIを用いて同様の測定を行うことができる。8段階ACI結果も、FPFを決定するためのカプセルであったものの代わりに、ACIで回収された用量を用いるUSPの方法によって計算することができる。
【0053】
本明細書で使用される「FPF(<5.0)」、「FPF(<5.0μm)」、および「5.0μm未満の細粒分」という用語は、5.0μm未満の空気力学的直径を有する呼吸域乾燥粒子の質量の分画を指す。例えば、FPF(<5.0)は、8段階完全データセットから外挿することによって、標準的な60L/分流量の8段階ACIを用いて決定することができる。このパラメータはまた、「FPF_TD(<5.0)」(TDは全量を意味する)としても同定され得る。
【0054】
3.非ステロイド性抗炎症薬(NON−STEROIDAL ANTI−INFLAMMATORY DRUGS:NSAIDs)
アセチルサリチル酸などのNSAIDsは、種々の有益な効果を提供し、心血管疾患(血栓症など)のリスクを低下させることに寄与することができる。しかしながら、臨床設定におけるアセチルサリチル酸などのNSAIDsの使用は伝統的に、経口投与に限定されてきた。例えば、アセチルサリチル酸の経口投与は、腸および肝臓における初回通過効果により経口投与量の約2/3の損失または不活性化をもたらし得る。投与量の3分の1は全身血流に到達し、所望の効果を提供するが、全投与量によってもたらされる負の副作用がしばしば、患者が定期的にまたは毎日アセチルサリチル酸を用いることを阻止する。
【0055】
さらに、多くの状況、例えば、緊急事態で、有効になるのにあまりに時間がかかりすぎるために、アセチルサリチル酸などのNSAIDsの経口投与は不適当となり得る。本明細書に開示されるいくつかの実施形態の少なくとも1つの態様によると、低投与量を利用し、全身血流へのより直接的な送達機構を提供する代替投与方法およびシステムを実施することができるという認識がある。よって、本発明の方法およびシステムは、NSAIDsの使用に関連する以前の欠点を最小化しながら、アセチルサリチル酸などのNSAIDsの有益な効果を、定期的におよび緊急事態で達成することを可能にする。
【0056】
種々の研究によって、アセチルサリチル酸が心筋梗塞のリスクの低下に対する有意な効果を有することが決定された。これらの研究は、325mgのアセチルサリチル酸投与量を使用している。しかしながら、これらの研究は、アセチルサリチル酸の経口投与にその知見の基礎を置いており、DPI投与もMDI投与も示唆していない。
【0057】
アセチルサリチル酸の吸入乾燥粉末製剤が開発されてきたが、乾燥粉末の肺送達を介してアセチルサリチル酸の高い投与量要件(冠血管イベントおよび脳卒中の低用量予防のためには約80mg/日および疼痛または熱軽減のためには少なくとも300mg/日)を満たすことが困難であるので、製剤が臨床的に実行可能でないと報告で述べられている。
【0058】
さらに、これらの報告は、用量が1回の呼吸で10分の数ミリグラム未満でない限り、咳などの肺に対する乾燥粉末の有害効果を回避することができないことを認めている。よって、以前の教示は、アセチルサリチル酸の高投与量要件を、DPI(またはMDI)を用いて満たすのが不可能または困難であることを示唆している。最後に、アセチルサリチル酸が経口でなく吸入によって送達されると、喘息患者でアセチルサリチル酸不耐性の高い発生率があり得る。
【0059】
乾燥粉末吸入器(dry powder inhaler:DPI)送達のためのナノ粒子薬物の使用は単純でない。ナノ粒子薬物の直接吸入は、その小さなサイズのために実行不可能であった。ナノメートルサイズは、肺への堆積が起こることなく、ナノ粒子薬物が主に肺から吐き出されることをもたらす。さらに、小さなサイズから生じる重度の凝集問題により、その物理的取り扱いがDPI送達にとって困難になる。したがって、ナノ粒子薬物の「大型中空担体粒子」が、いくつかの薬物の肺送達のために開発されてきた。Hadinotoら、Drug Release Study Of Large Hollow Nanoparticulate Aggregates Carrier Particles For Pulmonary Delivery、International Journal of Pharmaceutics 341(2007)195〜20を参照されたい。
【0060】
本発明の方法およびシステムは、DPIによって、少量のNSAID、例えば、低用量のアセチルサリチル酸を投与することによって、疾患を治療(予防的治療またはリスクの低下を含む)する、例えば、心血管疾患(血栓症など)を治療することを提供する。用量は、少量のアセチルサリチル酸(例えば、81mg未満)よりもはるかに少なくてよい。投与される投与量は約40mg未満のアセチルサリチル酸であり得る。投与される投与量は25mg未満のアセチルサリチル酸であり得る。さらに、投与される投与量は20mg未満のアセチルサリチル酸であり得る。投与される投与量は15mg未満のアセチルサリチル酸であり得る。投与される投与量はまた、12mg未満のアセチルサリチル酸であり得る。投与される投与量は10mg未満のアセチルサリチル酸であり得る。さらに、投与される投与量は8mg未満のアセチルサリチル酸であり得る。投与される投与量は5mg未満のアセチルサリチル酸であり得る。いくつかの実施形態では、投与される投与量が2mg未満のアセチルサリチル酸であり得る。
【0061】
例えば、投与量は約1mg〜約40mgであり得る。種々の実施形態では、投与量が約4mg〜約25mgのアセチルサリチル酸、約6mg〜約20mgのアセチルサリチル酸、約8mg〜約15mgのアセチルサリチル酸、約10mg〜約13mgのアセチルサリチル酸、または約1mg、約2mg、約3mg、約4mg、約5mg、約6mg、約7mg、約8mg、約9mg、約10mg、約11mg、約12mg、約13mg、約14mg、約15mg、約16mg、約17mg、約18mg、約19mg、または約20mgのアセチルサリチル酸であり得る。あるいは、アセチルサリチル酸の用量は、約80mg未満、約1mg〜約75mg、約2mg〜約60mg、約5mg〜約40mg、約10mg〜約30mg、約12mg〜約25mg、約15mg〜約20mg、約60mg〜約95mg、約50mg〜約100mg、約50mg〜約80mg、約40mg〜約80mg、約20mg〜約30mg、約30mg〜約40mg、約40mg〜約50mg、約50mg〜約60mg、約60mg〜約70mg、約70mg〜約80mg、約80mg〜約90mg、または約90mg〜約100mgであり得る。
【0062】
このような投与量は、約81mg〜約325mgの典型的な投与量と比べて、生物学的同等性投与量のアセチルサリチル酸を提供することができるが、負の副作用をほとんど示さない。
【0063】
一定の実施形態では、NSAIDsが種々の方法およびシステムで使用され得る。いくつかの実施形態では、NSAIDsが抗血小板作用を有するサリチレート、すなわち、サリチル酸の塩およびエステルを含み得る。さらに、NSAIDsはまた、表1に列挙される以下の化合物の1若しくはそれ以上を含み得る。
【0065】
他の代替物をNSAIDの代わりに使用することもできる。このような代替物は、Plavix(クロピドグレル)、COX−2阻害剤、他の治療薬、例えば、ナットウキナーゼ(酵素(EC3.4.21.62、納豆と呼ばれる日本食から抽出および精製された))を含む。さらに、患者の心血管疾患(血栓症など)のリスクを低下させるのに有効であるなどの、異なる有益な効果を提供する他の薬物もいくつかの実施形態で使用することができる。よって、議論の目的で、本開示はしばしばアセチルサリチル酸に言及するが、方法およびシステムの議論をこれらの種々の代替物に一般的に適用するべきである。アセチルサリチル酸に関連する方法、効果、薬物動態データ、および他の考察を他のNSAIDsに等しく適用することができることが熟慮される。
【0066】
4.乾燥粉末および乾燥粒子
本技術の乾燥粒子は分散性である。乾燥粒子のサイズは、当技術分野で慣用的な種々の方法で、例えば、細粒分(FPF)、体積中央幾何学的直径(volumetric median geometric diameter:VMGD)、または空気力学的質量中央径(mass median aerodynamic diameter:MMAD)で表すことができる。
【0067】
本技術の乾燥粒子は、約10μm以下(例えば、約0.1μm〜約10μm)の1.0barでHELOS/RODOSによって測定されるVMGDを有し得る。好ましくは、本技術の乾燥粒子は、1.0barでHELOS/RODOSによって測定される約9μm以下(例えば、約0.1μm〜約9μm)、約8μm以下(例えば、約0.1μm〜約8μm)、約7μm以下(例えば、約0.1μm〜約7μm)、約6μm以下(例えば、約0.1μm〜約6μm)、約5μm以下(例えば、5μm未満、約0.1μm〜約5μm)、約4μm以下(例えば、0.1μm〜約4μm)、約3μm以下(例えば、0.1μm〜約3μm)、約2μm以下(例えば、0.1μm〜約2μm)、約1μm以下(例えば、0.1μm〜約1μm)、約0.5μm〜約6μm、約0.5μm〜約5μm、約0.5μm〜約4μm、約0.5μm〜約3μm、または約0.5μm〜約2μmのVMGDを有する。代表的な実施形態では、本技術の乾燥粒子が、約1.3〜約1.7μmの1.0barでHELOS/RODOSによって測定されるVMGDを有する。別の代表的な実施形態では、本技術の乾燥粒子が、約0.5μm〜約2μmの1.0barでHELOS/RODOSによって測定されるVMGDを有する。
【0068】
あるいは、乾燥粒子は、約30μm以下(例えば、約5μm〜約30μm)の1.0barでHELOS/RODOSによって測定されるVMGDを有し得る。好ましくは、本技術の乾燥粒子は、1.0barでHELOS/RODOSによって測定される約25μm以下(例えば、約5μm〜約25μm)、約20μm以下(例えば、約5μm〜約20μm)、約15μm以下(例えば、約5μm〜約15μm)、約12μm以下(例えば、約5μm〜約12μm)、約10μm以下(例えば、約5μm〜約10μm)、または約8μm以下(例えば、6μm〜約8μm)のVMGDを有する。乾燥粉末は、異なるサイズを有する粒子の混合物を有することができる。
【0069】
呼吸域乾燥粒子は、約10μm以下のMMAD、例えば、約0.5μm〜約10μmのMMADを有することができる。好ましくは、本技術の乾燥粒子は、約5μm以下(例えば、約0.5μm〜約5μm、好ましくは約1μm〜約5μm)、約4μm以下(例えば、約1μm〜約4μm)、約3.8μm以下(例えば、約1μm〜約3.8μm)、約3.5μm以下(例えば、約1μm〜約3.5μm)、約3.2μm以下(例えば、約1μm〜約3.2μm)、約3μm以下(例えば、約1μm〜約3.0μm)、約2.8μm以下(例えば、約1μm〜約2.8μm)、約2.2μm以下(例えば、約1μm〜約2.2μm)、約2.0μm以下(例えば、約1μm〜約2.0μm)、または約1.8μm以下(例えば、約1ミクロン〜約1.8μm)のMMADを有する。
【0070】
あるいは、本技術の乾燥粉末および乾燥粒子は、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約45%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、または少なくとも約70%の5.0μm未満のFPF(FPF_TD<5.0μm)を有する。あるいはまたはさらに、本技術の乾燥粉末および乾燥粒子は、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、または少なくとも約85%の放出用量の5.0μm未満のFPF(FPF_ED<5.0μm)を有する。
【0071】
別の実施形態では、本発明の乾燥粉末および乾燥粒子が、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、好ましくは少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、または少なくとも約70%の約5.6μm未満のFPF(FPF<5.6μm)を有し得る。
【0072】
第3の実施形態では、本発明の乾燥粉末および乾燥粒子が、少なくとも約20%、好ましくは少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、または少なくとも約55%の約3.4μm未満のFPF(FPF<3.4μm)を有し得る。
【0073】
乾燥粉末および乾燥粒子は、約0.1g/cm
3〜約1.0g/cm
3のタップ密度を有し得る。例えば、小さな、分散性の乾燥粒子は、約0.1g/cm
3〜約0.9g/cm
3、約0.2g/cm
3〜約0.9g/cm
3、約0.2g/cm
3〜約0.9g/cm
3、約0.3g/cm
3〜約0.9g/cm
3、約0.4g/cm
3〜約0.9g/cm
3、約0.5g/cm
3〜約0.9g/cm
3、または約0.5g/cm
3〜約0.8g/cm
3、約0.4g/cc超、約0.5g/cc超、約0.6g/cc超、約0.7g/cc超、約0.1g/cm
3〜約0.8g/cm
3、約0.1g/cm
3〜約0.7g/cm
3、約0.1g/cm
3〜約0.6g/cm
3、約0.1g/cm
3〜約0.5g/cm
3、約0.1g/cm
3〜約0.4g/cm
3、約0.1g/cm
3〜約0.3g/cm
3、約0.3g/cm
3未満のタップ密度を有する。好ましい実施形態では、タップ密度が約0.4g/cm
3超であり;別の好ましい実施形態では、タップ密度が約0.5g/cm
3超である。あるいは、タップ密度は約0.4g/cm
3未満であり得る。
【0074】
乾燥粉末および乾燥粒子は、乾燥粒子の約15重量%未満の水または溶媒含量を有し得る。例えば、乾燥粒子は、約15重量%未満、約13重量%未満、約11.5重量%未満、約10重量%未満、約9重量%未満、約8重量%未満、約7重量%未満、約6重量%未満、約5重量%未満、約4重量%未満、約3重量%未満、約2重量%未満、約1重量%未満の水もしくは溶媒含量を有し得る、または無水であり得る。別の実施形態では、本技術の乾燥粒子が、約6%未満かつ約1%超、約5.5%未満かつ約1.5%超、約5%未満かつ約2%超、約2%、約2.5%、約3%、約3.5%、約4%、約4.5%、約5%の水または溶媒含量を有し得る。
【0075】
具体的な用途に応じて、本組成物(例えば、本乾燥粉末または乾燥粒子)は、組成物中低または高割合の有効成分を含有し得る。例えば、乾燥粒子は、3%以上、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、約30%〜約99%、約40%〜約99%、約50%〜約99%、約60%〜約99%、約70%〜約99%、約80%〜約99%、約40%〜約95%、または約50%〜約95%(重量百分率、w/w)の有効成分(例えば、アセチルサリチル酸)を含有し得る。
【0076】
5.乾燥粉末の送達
肺胞は主に二酸化炭素を酸素と交換するよう機能するが、肺胞はまた酵素を産生する。よって、病原体、薬物、または他の化学物質などの吸入された物質は肺胞で処理され得る。肺毛細血管および上皮を通したDPIまたはMDIによって投与されたNSAIDsの吸収は、血栓塞栓性イベントの症状に対処するのに直ちに有効な治療を提供することができる。アセチルサリチル酸などのNSAIDsの経口投与によってもたらされる実質的な初回通過効果を、乾燥粉末吸入器による肺への投与を通して回避することができる。さらに、アセチルサリチル酸などのNSAIDの乾燥粉末送達の薬物動態およびこれが肺毛細血管の内皮組織に出くわした場合の薬物の考えられる代謝または不活性化に関する教示も示唆もこれまで存在しなかった。
【0077】
図1を参照すると、乾燥粉末吸入技術で、患者は乾燥粉末吸入器10を使用してNSAIDなどの薬物の粉末製剤を吸入することができる。用量は、患者の血栓塞栓性イベントのリスクを低下させるのに有効なものである。肺は効率的なフィルタであり、一般的には5μm未満のサイズを有する粒子の侵入のみを許す。ここで、薬物が主気管支幹20に入った後、薬物は各肺22、24に入る。次いで、薬物は、肺22、24中の個々の肺胞30に到達するまで、気管支樹26、28を通過することができる。よって、乾燥粉末吸入器10は、患者が約1μm〜約5μmのサイズを有する粒子の一定投与量を自己投与することを可能にし得る;あるいは、粒径は約2μm〜約4μmであり得る。
【0078】
種々のタイプの吸入器を使用してDPIまたはMDI送達システムを用いて薬物を提供することができる。投与される用量は、患者の血栓塞栓性イベントのリスクを低下させるのに有効なものとなり得る。
【0079】
例えば、乾燥粉末吸入器10は、マウスピースと、NSAIDを受け入れるためのリザーバーと、マウスピースを通した患者による吸入のためにNSAIDを利用可能にする作動部材とを有することができる。
【0080】
例えば、
図2は一般的な乾燥粉末吸入装置を図示している。本発明の方法およびシステムは、これに限定されるものではないが、Aerolizer(登録商標)、Diskus(登録商標)、Ellipta(登録商標)、Flexhaler(登録商標)、Handihaler(登録商標)、Neohaler(登録商標)、Pressair(登録商標)、Rotahaler(登録商標)、Turbuhaler(登録商標)、またはTwisthaler(登録商標)Plastiape、CDMHaler(http://www.nationaljewish.org/healthinfo/medications/devices/dry−powder参照)を含むDPIまたはMDI装置で使用するために適合させることができる。
【0081】
呼吸の過程で、肺は通常、種々のサイズの環境中に存在する物質に絶えず暴露される。これには、花粉(20〜90μm)、細菌(0.2〜200μm)、および煙粒子(0.01〜1μm)が含まれ得る。特定の粒子の堆積は、粒子のサイズおよび密度、ならびに肺の中または外への空気の流速、および呼吸器系中の粒子の滞留時間を含む、いくつかの因子に依存する。さらに、ヒトの体は、食作用のような過程を含む、これらの吸入された物質のいくつかの有害効果から防御するシステムを発達している。よって、吸入を介して医薬化合物を送達するためのシステムおよび方法を設計する際に考慮する1つの因子は、薬物粒子が吸入後に堆積すると見られる呼吸器中の位置に対して粒径が及ぼす効果である。
【0082】
肺に入る粒子は、衝突、沈降、および拡散により呼吸器のコースに沿って堆積する。通常、空気流内の粒子の挙動は、本明細書に詳細に記載される、空気力学的直径によって説明することができる。空気力学におけるレイノルズ数の概念のように、同じ空気力学的直径を有する2つの粒子は、その実際の幾何学的(すなわち、物理的)サイズにかかわらず、空気流中で基本的には同じようにふるまうだろう。
【0083】
以前、粒径または空気力学的直径が、粒子が吸気後に最も堆積すると見られる呼吸器系中の位置に有意に影響を及ぼすことが示された。例えば、Heyderら(J.Aerosol.Sci.17、811〜825、1986)は、呼吸器中のサイズが5nm〜15μmに及ぶ粒子の堆積を調査した。彼らの研究は、5μm超の空気力学的直径を有する粒子が主に慣性衝突により、口および上気道に堆積することを示した。より小さな粒子(1〜5μmに及ぶ空気力学的直径)は、衝突および沈降により、肺の深部に堆積する一方で、極めて小さな粒子(空気力学的直径<1μm)は、主に空気流中に懸濁したままであり、吐き出される。
【0084】
他者も同様の結果を得ており、薬物を肺に送達するためには、約2μmの空気力学的中央径を有する粒子が肺胞腔に効率的に堆積すると見られ、分画の堆積は送達される粒子用量の90%付近となることを示唆した(Byron、1986、J.Pharm.Sci.75(5)、433〜438)。対照的に、粒子が5〜10μmに及ぶ空気力学的中央径を有する場合、送達される用量の約10%しか肺胞に堆積せず、約40%が気道に堆積し、残りは口腔および咽頭に堆積する。空気力学的中央径が15μm以上である場合、粒子は主に口腔および咽頭に堆積する。
【0085】
本発明の方法およびシステムは、血栓塞栓性イベントのリスクを低下させるために、治療上有効用量のNSAIDを提供するための装置および方法を提供する。上で論じられるように、一般的なアプローチは、吸入器によって、薬学的に許容される粉末形態のNSAID(例えば、アセチルサリチル酸および/またはその誘導体)を送達するというものである。
【0086】
上で論じられるように、粒径が減少するにつれて、肺胞腔への粒子の堆積が増加するという一般的な傾向がある。ナノ粒子分布についての研究は、100nm未満のサイズを有する吸入ナノ粒子が肺胞堆積のためならびに肺食作用を最小化するために望ましいことを示している(Hoetら、2004、J.Nanbiotechnol.2、10.1186/1477−3155−2−12)。ナノ粒子は、より粗い製剤と比べて、活性化合物の分散の点で、および最終的に取り込み率の点でさらなる利点を提供することができ、その最も自明なものは小さな粒子が大きなものよりも速く分散および可溶化する傾向があるということである。
【0087】
粒径分布(particle size distribution:PSD)に関して、本組成物は、同じ(もしくは類似の)径分布を有する粒子、または異なる径分布を有する粒子を含有し得る。本組成物の粒径は、単峰性(mono−modal)、二峰性(bimodal)、または多峰性(multimodal)分布を有し得る。結果として、本組成物は、単峰性、二峰性、または多峰性吸収をもたらし得る。換言すれば、本組成物の投与は、単峰性、二峰性、または多峰性濃度−時間プロファイルをもたらし得る。
【0088】
例えば、本組成物は、以下の1、2、または3つのグループを含有し得る:約1μm〜約5μmの範囲の空気力学的中央径を有する粒子、約5μm〜約15μmの範囲の空気力学的中央径を有する粒子、および約15μm超の空気力学的中央径を有する粒子。
【0089】
異なる径分布を有する粒子のバッチを用いて、同じ有効成分(例えば、アセチルサリチル酸)の粒子を混合すると、架橋を減らすことができる。例えば、比較的均一な粒径を有する組成物は凝集するが、約1μm〜約5μmの範囲の空気力学的中央径を有するある粒子と、約5μm〜約15μmの範囲の空気力学的中央径を有する他の粒子と、約15μm超の空気力学的中央径を有するさらに他の粒子とを有するブレンド組成物を提供することによって、凝集が阻害され、製剤の堆積特性が維持されるだろう。事実上、医薬活性化合物を使用して、医薬品の貯蔵中の凝集の防止に関して賦形剤(ラクトースなど)の機能の代わりをする。
【0090】
さらに、および多くの他の薬物と異なり、NSAIDs、特にアセチルサリチル酸は、肺胞の上皮を通る以外の経路を通して有効に循環系に入ることができる。特に、アセチルサリチル酸は、口腔の粘膜層、ならびに咽頭および間違いなく気道の上皮を通した吸収によって体内に入ることができる。よって、粒径にかかわらず、アセチルサリチル酸の吸入可能な形態を提供することによって、吸入投与量が全身循環に実質的に取り込まれ、初期イベント後比較的短期間内に血栓塞栓性イベントのリスクを低下させるのに有効となり得ることが認識されるだろう。
【0091】
さらに、種々の粒径の割合を選択することによって、薬物が最終的に堆積する位置に基づいて、速く作用するまたは遅く作用する製剤を提供することができる。例えば、いくつかの実施形態では、80%の約1μm〜約5μmの空気力学的中央径を有するアセチルサリチル酸粒子と、約20%の少なくとも15μmの空気力学的中央径を有する粒子とを有する製剤を提供することが望ましいだろう。他の組成物も同様に可能であり、当業者であれば、速く作用する製剤は主に小さな粒子を有する一方で、遅く作用する製剤は比例して大きな粒子を有することを容易に認識するだろう。よって、本明細書に記載される装置および方法を用いて、少なくとも経口投与によって達成することができるのと同じくらい速く、呼吸器を介して、治療上有効用量のアセチルサリチル酸などのNSAIDを提供することが可能である。
【0092】
遅く作用する剤形が望ましい場合、製剤が増加した分画の約5μm〜約10μm、または15μm超の範囲の空気力学的中央径を有する粒子を含むことができるだろう。これらの製剤は、気道または口腔のいずれかでの堆積をもたらすので、アセチルサリチル酸およびその代謝誘導体の循環レベルのゆるやかな増加を提供するだろう。
【0093】
いずれの場合も、本技術は、アセチルサリチル酸およびその薬理学的に活性な代謝副産物(例えば、サリチレート)を全身循環に、少なくとも経口投与を介して達成することができるよりも速くないにしても同じくらい速く送達することができる製剤を提供する。さらに、本製剤は、アセチルサリチル酸およびその薬理学的に活性な代謝副産物を全身循環に、少なくとも等価用量のアセチルサリチル酸の経口投与後に観察されるのと等しいレベルで送達するのに有効である。
【0094】
例えば、薬物動態研究は、アセチルサリチル酸の経口投与後、ピーク血漿レベルが約20分後に達成され、その後、比較的短い排除半減期(15〜20分)のためにこれらが急速に低下することを示している。比較すると、主な薬理学的に活性な代謝産物のサリチレートの血漿レベルは、アセチルサリチル酸の投与後約45分の期間増加し、その有意に長い排除半減期(2〜3時間)のためにはるかに長く上昇したままである(Dressmanら、2012、Biowaiver Monograph for Immediate−Release Solid Oral Dosage Forms:Acetylsalicylic Acid、doi 10.1002/jps.2312)。
【0095】
意義深いことに、アセチルサリチル酸の薬物動態挙動は、30〜400mgの投与量範囲にわたって線形であることが分かった。
【0096】
したがって、本技術の一態様は、種々のサイズの粒子の混合物を有する乾燥粉末を提供する。
【0097】
例えば、乾燥粉末は、VMGDによって測定される大きなサイズ(例えば、VMGD≧15μm、例えば、≧20μmまたは20〜30μm)の粒子およびVMGDによって測定される小さなサイズ(例えば、VMGD≦5μm、例えば、1〜3μm)の粒子を約1:1、約1:2、約1:3、約1:4、約1:5、約1:6、約1:7、約1:8、約1:10、約1:15、約1:20、約1:25、約1:30、約1:40、約1:50、約1:100、約2:1、約3:1、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1、約10:1、約15:1、約20:1、約25:1、約30:1、約40:1、約50:1、または約100:1等の比(w:w)で有することができる。
【0098】
あるいは、乾燥粉末は、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約99%(重量百分率)の約10μm以下、好ましくは約5μm以下のVMGDを有する粒子を有することができる。10μm以下の粒子が一般的に肺に到達することができ、5μm以下(例えば、1〜3μm)の粒子が一般的に肺胞に到達することができる。
【0099】
別の実施形態では、乾燥粉末が、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約99%(重量百分率)の約5μm〜約20μmの間、好ましくは約5μm〜約15μmの間、または約5μm〜約10μmの間のVMGDを有する粒子を有することができる。
【0100】
あるいは、乾燥粉末は、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約99%(重量百分率)の約15μm、20μm、またはそれ以上のVMGDを有する粒子を有することができる。
【0101】
上記の特徴を組み合わせることができる。例えば、乾燥粉末は、約50%の約5μm以下(VMGD)の粒子と、約25%の約5〜約15μm(VMGD)の粒子と、約25%の約15μm以上(VMGD)の粒子とを有することができる。
【0102】
乾燥粉末はまた、種々の空気力学的質量中央径(mass median aerodynamic diameter:MMAD)を有する粒子の混合物を有することができる。例えば、乾燥粉末は、大きなサイズ(例えば、MMAD2:15μm、例えば、2:20μm、または20〜30μm)の粒子および小さなサイズ(MMAD:5μm、例えば、1〜3μm)の粒子を約1:1、約1:2、約1:3、約1:4、約1:5、約1:6、約1:7、約1:8、約1:10、約1:15、約1:20、約1:25、約1:30、約1:40、約1:50、約1:100、約2:1、約3:1、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1、約10:1、約15:1、約20:1、約25:1、約30:1、約40:1、約50:1、または約100:1等の比(w:w)で有することができる。
【0103】
あるいは、乾燥粉末は、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約99%(重量百分率)の約10μm以下、好ましくは約5μm以下のMMADを有する粒子を有することができる。10μm以下の粒子が一般的に肺に到達することができ、5μm以下(例えば、1〜3μm)の粒子が一般的に肺胞に到達することができる。
【0104】
別の実施形態では、乾燥粉末が、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約99%(重量百分率)の約5μm〜約20μmの間、好ましくは約5μm〜約15μmの間、または約5μm〜約10μmの間のMMADを有する粒子を有することができる。
【0105】
別の実施形態では、乾燥粉末が、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約99%(重量百分率)の約15μm以上、好ましくは20μm以上のMMADを有する粒子を有することができる。
【0106】
上記の特徴を組み合わせることができる。例えば、乾燥粉末は、約50%の約5μm以下(MMAD)の粒子と、約25%の約5〜約15μm(MMAD)の粒子と、約25%の約15μm以上(MMAD)の粒子とを有することができる。
【0107】
一定の実施形態では、乾燥粉末が、抗凝集(または抗架橋)賦形剤であり得る賦形剤を有さなくてもよい。
【0108】
乾燥粉末は、種々のサイズの粒子の混合物を有することができ、粒子架橋を実質的に妨げるまたは減少させるのに有効である。一定の実施形態では、乾燥粉末中のNSAID(アセチルサリチル酸など)の少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも80%、少なくとも約85%、または少なくとも約90%が肺の肺胞腔に送達される。
【0109】
6.乾燥粉末および乾燥粒子を調製する方法
乾燥粒子および乾燥粉末は任意の適当な方法を用いて調製することができる。乾燥粉末および粒子を調製するための多くの適当な方法は当技術分野で慣用的であり、一重および二重エマルジョン溶媒蒸発、噴霧乾燥、粉砕(例えば、ジェット粉砕)、ブレンド、溶媒抽出、溶媒蒸発、相分離、単一および複合コアセルベーション、界面重合、超臨界二酸化炭素(CO
2)の使用を伴う適当な方法、ならびに他の適当な方法を含む。乾燥粒子は、当技術分野で既知のマイクロスフェアまたはマイクロカプセルを作製する方法を用いて作製することができる。これらの方法を、所望の空気力学的特性(例えば、空気力学的直径および幾何学的直径)を有する乾燥粒子の形成をもたらす条件下で使用することができる。所望であれば、ふるい分けなどの適当な方法を用いて、サイズおよび密度などの所望の特性を有する乾燥粒子を選択することができる。
【0110】
噴霧乾燥
乾燥粒子を噴霧乾燥によって製造することができる。適当な噴霧乾燥技術は、例えば、K.Mastersによって「Spray Drying Handbook」、John Wiley & Sons、New York(1984)に記載されており、BUCHI Laboratory Equipmentによって開発された噴霧乾燥技術またはGEA Niro乾燥技術がある。一般的に、噴霧乾燥中、加熱空気または窒素などのホットガスからの熱を使用して、連続液体供給を霧化することによって形成された液滴から溶媒を蒸発させる。所望であれば、乾燥粒子を調製するために使用される噴霧乾燥または他の装置、例えば、ジェット粉砕装置が、粒子が製造されている間に呼吸域乾燥粒子の幾何学的直径を決定するインライン幾何学的粒径分析計、および/または粒子が製造されている間に呼吸域乾燥粒子の空気力学的直径を決定するインライン空気力学的粒径分析計を含むことができる。
【0111】
噴霧乾燥のために、適当な溶媒(例えば、水性溶媒、有機溶媒、水性−有機混合物、またはエマルジョン)中に製造される乾燥粒子の成分を含有する溶液、エマルジョン、または懸濁液を、霧化装置を介して乾燥容器に分配する。例えば、ノズルまたはロータリーアトマイザーを使用して溶液または懸濁液を乾燥容器に分配することができる。例えば、4−または24−羽根車を有するロータリーアトマイザーを使用することができる。ロータリーアトマイザーまたはノズルのいずれかを備えることができる適当な噴霧乾燥機の例としては、共にNiro,Inc.(デンマーク)によって製造されている、Mobile Minor Spray DryerまたはModel PSD−1が挙げられる。実際の噴霧乾燥条件は、一部は、噴霧乾燥溶液または懸濁液の組成および物質流量に応じて変化するだろう。当業者であれば、噴霧乾燥される溶液、エマルジョン、または懸濁液の組成、所望の粒子特性、および他の因子に基づいて、適当な条件を決定することができるだろう。一般的に、噴霧乾燥機への入口温度は約100℃〜約300℃であり、好ましくは約220℃〜約285℃である。噴霧乾燥機出口温度は、供給温度および乾燥している物質の特性のような因子に応じて変化するだろう。一般的に、出口温度は約50℃〜約150℃、好ましくは約90℃〜約120℃、または約98℃〜約108℃である。所望であれば、製造される呼吸域乾燥粒子を、例えば、ふるいを用いて体積測定サイズによって分画する、または例えば、サイクロンを用いて空気力学的サイズにより分画する、および/または当業者に知られている技術を用いて密度によりさらに分離することができる。
【0112】
本技術の乾燥粒子を調製するために、一般的に、乾燥粉末の所望の成分を含有する溶液、エマルジョン、または懸濁液(すなわち、供給原料)を、適当な条件下で調製し、噴霧乾燥する。好ましくは、供給原料中の溶解または懸濁した固体濃度は、少なくとも約1g/L、少なくとも約2g/L、少なくとも約5g/L、少なくとも約10g/L、少なくとも約15g/L、少なくとも約20g/L、少なくとも約30g/L、少なくとも約40g/L、少なくとも約50g/L、少なくとも約60g/L、少なくとも約70g/L、少なくとも約80g/L、少なくとも約90g/L、または少なくとも約100g/Lである。供給原料は、適当な成分(例えば、塩、賦形剤、他の有効成分)を適当な溶媒に溶解または懸濁することによって、単一溶液または懸濁液を調製することによって提供することができる。溶媒、エマルジョン、または懸濁液は、乾燥および/または液体成分のバルク混合あるいは液体成分の静的混合により組み合わせを形成するなどの任意の適当な方法を用いて調製することができる。例えば、親水性成分(例えば、水溶液)および疎水性成分(有機溶液)を、静的ミキサーを用いて組み合わせて組み合わせを形成することができる。次いで、組み合わせを霧化して液滴を製造し、これを乾燥させて呼吸域乾燥粒子を形成する。好ましくは、霧化工程を、成分を静的ミキサーで組み合わせた直後に行う。
【0113】
一例では、アセチルサリチル酸を有する乾燥粒子を噴霧乾燥によって調製することができる。噴霧乾燥は、一般的に使用される、ホットガスを通して液体供給を乾燥させる方法である。これは、熱室で液体を霧化することによって、溶液またはスラリーを粒子形態に急速に乾燥することができる方法である。典型的には、ホットガスは空気であり得る。医薬品などの化学的感受性物質を調製する場合、またはエタノールなどの溶媒を使用する場合、窒素などの無酸素雰囲気が要求され得る。噴霧乾燥は食品調製産業で頻繁に使用されており、牛乳、コーヒー、および卵粉などの流動食品の脱水のための重要な方法になっている。この方法は、医薬および化学製剤の調製にも適応可能である。
【0114】
液体供給は、乾燥している物質に応じて変化し、食品または医薬品に限定されず、溶液、コロイド、または懸濁液であり得る。この方法は、典型的には追加の処理を排除する一段階迅速法である。工程条件を制御することによって、所望のサイズの粒子を再現性よく形成することができる。
【0115】
噴霧乾燥は、1若しくはそれ以上の賦形剤の存在下または非存在下で行うことができる。いくつかの場合、医薬品有効成分(active pharmaceutical ingredient:API)と賦形剤の複合体粒子が単一工程プロセスで製造され得るように賦形剤を医薬品有効成分と含めることができる。他の場合、医薬品有効粒子製剤を最初の噴霧乾燥工程で製造し、次いで、その生成物を1若しくはそれ以上の薬学的に許容される賦形剤のその後の添加によって修飾することができる。いくつかの場合、その後の噴霧乾燥工程で賦形剤を添加することが可能である。
【0116】
いくつかの噴霧乾燥方法では、液体供給を、アトマイザーノズルまたはノズルの配列を通してポンピングし、これにより微細液滴が製造され、これを主乾燥室に導入する。アトマイザーは、ロータリー、単一流体、二流体、および超音波設計であるなど、いろいろであってよい。これらの異なる設計が、要求される特定の噴霧乾燥工程に応じて、種々の利点、適応性、および欠点を提供する。ホット乾燥ガスを並流または向流としてアトマイザー方向に通すことができる。並流は、粒子がシステム内で短い滞留時間を有することを可能にし、よって、粒子分離器がより効率的に作動する。いくつかのシステムでは、粒子分離器がサイクロン装置である。向流方法は、チャンバー内の粒子の長い滞留時間を可能にする。そのため、一般的に、噴霧乾燥方法は、液体の予備濃縮、霧化、ホットガス雰囲気中での乾燥、湿ったガスからの乾燥粉末の分離、冷却、次いで、最終製品の包装の工程から成るだろう。
【0117】
一実施形態では、アセチルサリチル酸濃度が2%w/wまたは5%w/wのいずれかである供給溶液を、アセチルサリチル酸を適当な溶媒に添加し、引き続いて均質な溶液が得られるまで攪拌することによって調製した。BUCHI噴霧乾燥機モデルB−290 Advancedを全ての実験で使用した。装置にノズルおよび直径がそれぞれ1.4mmおよび0.7mmである二流体ノズルを備え付けた。高性能サイクロンを使用して乾燥生成物を回収した。噴霧乾燥装置を、アスピレーターが窒素を約40kg/時間の乾燥窒素の流量に相当する100%容量で吹く、開放サイクルで運転した。霧化窒素の流量を、特定の試験に応じて、ロータメータで40mmまたは50mmに調節した。ストック溶液を供給する前に、噴霧乾燥機を溶媒で安定化した。安定化期間中、標的出口温度を得るために、溶媒流量を調節した。出口温度を安定化した後、噴霧乾燥機の供給を溶媒から生成物溶液に切り替えた(次いで、入口温度を再調節して出口温度を標的値に維持した)。ストック溶液の最後で、フィードラインをすすぎ、制御されたシャットダウンを行うために、供給をもう一度溶媒に切り替えた。
【0118】
これらの実験の最初の目的は、アセチルサリチル酸の非晶質形態を単離してこれを十分に特徴付けることであった。しかしながら、文献レビューから発見されたように、アセチルサリチル酸は(−30℃の)負のTgを示し、よって、この技術を用いて結晶サイズが減少した活性医薬品を製造する選択肢を試みた。その目的のために、以下の通り、アセチルサリチル酸のエタノール(その高い溶解度および吸入使用についての承認を考えると、アセチルサリチル酸を溶解するのに最も適した溶媒)中溶液を調製し、噴霧乾燥した。入口温度は約80℃〜約160℃に及んだ。出口温度を最初に65℃に設定した。1つの実験では、これが物質の一過性のガラス状態に典型的な損失を減らすことを希望して、非晶質−結晶変換を加速しようとして、出口温度を100℃に上昇させた。しかしながら、出口温度を上昇させても、生成物の全体収率の明らかな増加はもたらされなかった。ロータメータを約40mmから約50mmに変えた。供給量は典型的には約5mL/分とした。噴霧乾燥後、いくつかの分析方法を使用して得られた生成物を評価した。
【0119】
粉末X線回折法(X−ray powder diffraction:XRPD)は、4つの異なるバッチの各々で、調製したアセチルサリチル酸が結晶性の形態であるように思われ、ディフラクトグラムが出発材料のものと類似であることを示した。さらに、噴霧乾燥した生成物は、入力材料と同一のサーマルグラム(thermal gram)を示した。全体収率は約55%〜約65%に及んだ。
【0120】
都合よく、アセチルサリチル酸について公開されている融点(136℃)と比較して、得られた噴霧乾燥した生成物の融点は約133℃〜約137℃に及んだ。生成物を95%相対湿度の雰囲気に暴露すると、吸湿特性の尺度は−.4%〜約1.2%に及ぶ重量変化を示した。これらの結果は、吸湿性挙動に問題はなく、この特性に関して、噴霧乾燥したアセチルサリチル酸が処理していないアセチルサリチル酸と同様にふるまうことを示唆している。
【0121】
粒径分布分析は、DV
10が約0.9μm〜約1.2μmに及び、DV
50が約3μm〜約6μmに及び、DV
90が約8μm〜約24μmに及ぶことを示した。アセチルサリチル酸の供給濃度を2%w/wに低下させることによって、典型的な吸入範囲内にある小さな平均粒径を得ることができることが分かった。
【0122】
HPLC分析は、アセチルサリチル酸純度が約92%〜約98%に及ぶことを示し、主な「不純物」はサリチル酸であり、これは約.3%〜約.5%に及んだ。残留溶媒は約90ppm〜約150ppmに及び、ICH Q3Aガイドラインで定義される限度よりずっと低かった。
【0123】
供給原料または供給原料の成分は、有機溶媒、水性溶媒、またはこれらの混合物などの任意の適当な溶媒を用いて調製することができる。使用することができる適当な有機溶媒は、これに限定されるものではないが、例えば、エタノール、メタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコールを含む。他の有機溶媒は、これに限定されるものではないが、パーフルオロカーボン、ジクロロメタン、クロロホルム、エーテル、酢酸エチル、メチルtert−ブチルエーテルなどを含む。使用することができる共溶媒は、水性溶媒およびこれに限定されるものではないが、上記の有機溶媒などの有機溶媒を含む。水性溶媒は水および緩衝化溶液(リン酸緩衝液など)を含む。
【0124】
供給原料または供給原料の成分は任意の所望のpH、粘度、または他の特性を有することができる。所望であれば、pH緩衝剤を溶媒もしくは共溶媒または形成した混合物に添加することができる。一般的に、混合物のpHは約3〜約8に及ぶ。
【0125】
ジェット粉砕
呼吸域粒子をジェット粉砕によって製造することもできる。例えば、Apex Process TechnologyまたはJetpharma SAによって開発された技術を参照されたい。ジェット粉砕は、通常は渦運動の高度圧縮空気または他のガスを用いて、チャンバー内で微粒子を互いに衝突させる方法である。ジェットミルは、固体を低ミクロン〜サブミクロン範囲の粒径に減らすことができる。粉砕エネルギーは、水平粉砕空気ノズルからのガス流によって生成される。ガス流によって形成された流動床中の粒子がミルの中心に向かって加速され、ゆっくり移動する粒子と衝突する。ガス流およびその中に積まれている粒子が激しい乱流を作り出し、粒子が互いに衝突するにつれて、粒子が微粉砕される。
【0126】
一定の実施形態では、ジェット粉砕が、肺の最深レベルでの最大堆積のために望ましい吸入可能な範囲内のFPFを有するアセチルサリチル酸粒子を製造することができた。いくつかの場合、DV
90が約9μm未満であり、いくつかの場合、約5μm未満であり、いくつかの場合、約3μm未満であった。ジェット粉砕によって製造される粒子は、乾燥粉末吸入装置から効率的かつ予想通りに送達され、粒子の少なくとも25%が肺の肺胞腔内に堆積すると予想されるサイズとなる。いくつかの場合、粒子の少なくとも50%が肺の肺胞腔内に堆積すると予想されるサイズとなる。一実施形態では、粒子の少なくとも75%が肺の肺胞腔内に堆積すると予想されるサイズとなる。別の実施形態では、粒子の少なくとも90%が肺の肺胞腔内に堆積すると予想されるサイズとなる。
【0127】
湿式研磨
湿式研磨は、小さな粒径を達成する技術(制御された結晶化もしくはナノ結晶化などのボトムアップ技術または高せん断混合もしくは高圧均質化などのトップダウン技術のいずれか)を適当な単離技術(例えば、噴霧乾燥または乾燥過程を伴う濾過)と組み合わせる方法である。例えば、Hovioneによって開発された技術を参照されたい。これらの組み合わせを使用して粒径および形態を調整して具体的な薬物送達ニーズを満たすことができる。この方法により、短期間およびインプロセスサンプリングでの粒径分布の制御が可能になり、結晶状態が維持される(非晶質含量がほとんどまたは全くない)。
【0128】
湿式研磨技術を複数回繰り返して、約500nm以下の粒径を達成することができる。研究を行って、湿式研磨が吸入可能なサイズの、乾燥粉末吸入装置から送達可能なアセチルサリチル酸粒子を製造するために適した方法を提供することができるかどうかを調査した。最初に、湿式研磨方法によってアセチルサリチル酸粒径を減少させるのに使用するための最良の候補逆溶剤を決定するために文献レビューを行った。アセチルサリチル酸の最小溶解度に関する予想される能力によって溶媒を評価した。このレビューから、以下の候補溶媒を同定した:水、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、n−ヘプタン、ジブチルエーテル、およびジ−イソプロピル−エーテル。
【0129】
最後にいくつかの因子を検討した後、n−ヘプタンおよびトルエンのみが全ての要件を満たすことが決定されたので、これらをさらなる評価のために選択した。5%w/wのアセチルサリチル酸の懸濁液を、要求される量の逆溶剤を装入し、要求される量のアセチルサリチル酸を装入し、次いで、均質な懸濁液が得られるまで攪拌することによって、種々の逆溶剤を用いて調製した。懸濁液を室温で定量的に評価し、次いで、0.45μm膜を用いて濾過し、次いで、これをオーブンに入れ、溶媒が完全に蒸発するまで60℃で乾燥させた。試験前後に膜を秤量することによって、膜に残った残渣に定量分析を行った。この分析から、アセチルサリチル酸がトルエンに部分的に可溶性であり、疎n−ヘプタン性挙動を示すことが決定された。
【0130】
5%w/wのアセチルサリチル酸濃度でトルエンまたはn−ヘプタンのいずれかを用いて懸濁液を調製した。次いで、各個々の懸濁液を、Microfluidics Model M−110EH−30装置を用いた粉砕操作に供した。200μmチャンバーを用いて50barの圧力で20〜70サイクルの間、粉砕を行った。入口温度は約80℃〜約140℃に及んだ。出口温度は約65℃〜約90℃に及んだ。プロセス収率は約5%〜約25%に及んだ。
【0131】
得られた生成物の分析により、約1.5μm〜約3.3μmに及ぶDV
10、約3.3μm〜約6.7μmに及ぶDV
50、および約6.3μm〜約12.0μmに及ぶDV
90が明らかになった。最終生成物のHPLCアッセイにより、90%〜約98%に及ぶアセチルサリチル酸の組成が明らかになり、不純物は約1.4%〜約12%に及んだ。主不純物はサリチル酸であった。湿式研磨によって得られた生成物の全てが原材料よりも吸湿性であり、95%相対湿度の存在下で約5%の水分増加を示した。
【0132】
さらに、空気力学的性能について試験すると、湿式研磨によって処理されたアセチルサリチル酸は、2つの異なる乾燥粉末送達装置でうまく働かなかった。15mgまたは40mgのいずれかを充填した装置を試験すると、有意な量の物質(約25〜30%)が吸入装置自体の中に保持された。全体的に見て、結果は、湿式研磨単独ではアセチルサリチル酸の物理的および化学的特性に有意な程度に影響を及ぼすので、吸入用の医薬製品を製造するのにあまり望ましくないと見られることを示唆した。それにもかかわらず、湿式研磨は、他の目的のためのアセチルサリチル酸の微粒子化に適した方法となり得る。
【0133】
いくつかの場合、制御された結晶化として知られている方法を用いて、所望のサイズのアセチルサリチル酸粒子を製造することが可能である。ほとんどの化合物の結晶状態が非晶質状態よりも熱力学的に安定であることが当技術分野で周知である。結果として、結晶形態のアセチルサリチル酸の製造は、有効成分の安定性を改善すると予想される。さらに、結晶形態のアセチルサリチル酸の製造はまた、有効成分を修飾して種々の生化学的特性、例えば、溶解度、溶解速度、およびpH溶解度プロファイル(など)を最適化して薬物動態性能を改善する可能性を提供する。いくつかの場合、連続的結晶化工程を使用して有効成分の純度を改善し、望ましくない不純物を選択的に除去することができる。
【0134】
同様に、種々の溶媒および逆溶剤の適切な選択を通して、結晶形状などの物理的特性を操作することが可能である。一定の結晶形状は、製品開発と製造段階の両方で取り扱うのが困難であることが周知である。例えば、針およびフレークはあまり望ましくない粒子形状と広くみなされている。しかしながら、結晶形成を操作して最終生成物をより適当な結晶形態に向けることが可能である。いくつかの場合、ヘキサンまたはヘプタンなどの非極性炭化水素溶媒を用いて、高いアスペクト比を有する結晶を成長させることが可能である。対照的に、メタノールまたはエタノールなどの極性溶媒を用いて、低いアスペクト比を有する結晶を製造することができる。表面活性「不純物」の添加を使用して一定の平面形態の結晶成長を阻害することもできる。
【0135】
適当な逆溶剤の添加により制御された結晶化を開始する前に、最初に、いくつかの溶媒へのアセチルサリチル酸の溶解度を評価した。結果を以下の表2に示す。
【0137】
次に、いくつかの小さな結晶化実験を行って、異なる系でのアセチルサリチル酸の挙動を評価した。各実験は、アセチルサリチル酸2gmを溶媒(T=20〜25℃)に溶解する工程と、次いで、この溶液を逆溶剤(約5℃で100体積の逆溶剤)に添加する工程とから成っていた。得られた懸濁液を15分間攪拌し、固体物質を濾過によって回収し、次いで、乾燥させた。表3は、各実験の条件を要約している。
【0139】
賦形剤
本明細書に記載される粒子を、例えば、ラクトース、糖、またはポリマーなどの医薬賦形剤によってカプセル化することができる。
【0140】
さらに、本明細書に記載される粒子を、種々の薬学的に許容される賦形剤と混合および/または種々の薬学的に許容される賦形剤でコーティングすることができる。賦形剤を含めて、活性薬物の空気力学的性能を改善する、生物学的利用能を改善する、安定性を増加させる、pHを調整する、持続放出特性を提供する、刺激性薬物の味覚マスキングを提供する、および/または薬物動態性能を改善することができる。
【0141】
吸入に適した製剤に関して、呼吸器系の所望の領域に到達するために粒径が重要なだけでなく、製剤が患者にとって許容できるものでなければならない。本発明に関する研究の初期の態様では、純粋なアセチルサリチル酸が呼吸器系に極めて刺激性であり、よって、使用者にとって許容できそうにないことが分かった。結果として、アセチルサリチル酸のこの特性を隠すために適した賦形剤を見出すことが必要となった。
【0142】
乾燥粉末製剤では、賦形剤はまた、医薬製剤が吸入されている時に医薬品有効成分の集塊を低減し、気流への製剤の懸濁を改善する担体機能も提供することができる。このような担体は、これに限定されるものではないが、糖/糖アルコール(グルコース、サッカロース、ラクトースおよびフルクトースなど)、デンプンまたはデンプン誘導体、オリゴ糖(デキストリン、シクロデキストリン、およびその誘導体など)、ポリビニルピロリドン、アルギン酸、チロース、ケイ酸、セルロース、セルロース誘導体、糖アルコール(マンニトールまたはソルビトールなど)、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、ラクトース、ラクチトール、デキストレート、デキストロース、マルトデキストリン、糖類(単糖、二糖、多糖を含む);糖アルコール(アラビノース、リボース、マンノース、スクロース、トレハロース、マルトース、およびデキストランなど)などの物質を含むことができる。
【0143】
いくつかの場合、賦形剤を提供して医薬品有効成分をコーティングし、よって、これを「マスキングする」ことができる。マスキングは、未修飾活性医薬品が刺激性であるまたはレシピエントにとって不快である場合に特に有用である。例えば、いくつかの場合、苦い分子を硬化油と界面活性剤の組み合わせでコーティングすることが有効成分の不快な味覚をカバーするのに有効であることが示された。
【0144】
現在の研究の一部として、吸入時のアセチルサリチル酸の刺激を減らすのに有用であることが発見された1つのこのような賦形剤は、界面活性剤化合物を含む双性イオン性リン脂質である。適当なリン脂質賦形剤の例としては、限定されないが、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、スフィンゴミエリン、または他のセラミド、ならびにレシチン油などの油を含有するリン脂質が挙げられる。リン脂質の組み合わせ、またはリン脂質(複数可)と他の物質(複数可)の混合物を使用してもよい。一実施形態では、賦形剤として使用されるリン脂質がダイズレシチンである。別の実施形態では、リン脂質が肺に内在性である。
【0145】
本組成物に使用され得るリン脂質の限定的でない例としては、ダイズレシチン、ジパルミトイルホスファチジルコリン(dipalmitoylphosphatidylcholine:DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(distearoylphosphatidylcholine:DSPC)、ジラウリロイルホスファチジルコリン(dilauryloylphosphatidylcholine:DLPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(dimyristoylphosphatidylcholine:DMPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(dioleoylphosphatidylcholine:DOPC)、ジラウリロイルホスファチジルグリセロール(dilauryloylphosphatidylglycerol:DLPG)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(dimyristoylphosphatidylglycerol:DMPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(dipalmitoylphosphatidylglycerol:DPPG)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(distearoylphosphatidylglycerol:DSPG)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(dioleoylphosphatidylglycerol:DOPG)、ジミリストイルホスファチジン酸(dimyristoyl phosphatidic acid:DMPA)、ジミリストイルホスファチジン酸(dimyristoyl phosphatidic acid:DMPA)、ジパルミトイルホスファチジン酸(dipalmitoyl phosphatidic acid:DPPA)、ジパルミトイルホスファチジン酸(dipalmitoyl phoshatidic acid:DPPA)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(dimyristoyl phosphatidylethanolamine:DMPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(dipalmitoyl phosphatidylethanolamine:DPPE)、ジミリストイルホスファチジルセリン(dimyristoyl phosphatidylserine:DMPS)、ジパルミトイルホスファチジルセリン(dipalmitoyl phosphatidylserine:DPPS)、ジパルミトイルスフィンゴミエリン(dipalmitoyl sphingomyelin:DPSP)、およびジステアロイルスフィンゴミエリン(distearoyl sphingomyelin:DSSP)が挙げられる。
【0146】
一実施形態では、ダイズレシチン、ジパルミトイルホスファチジルコリン(dipalmitoyl phosphatidylcholine:DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(distearoyl phosphatidylcholine:DSPC)、またはこれらの混合物が賦形剤として使用される。例えば、DPPCおよびDSPCは肺界面活性物質の天然構成成分である。肺界面活性物質は、II型肺胞細胞によって産生される表面活性リポタンパク質複合体である。界面活性物質を構成するタンパク質および脂質は、親水性領域および疎水性領域を有する。水中の親水性頭部および気胞に面した疎水性尾部による肺胞の空気−水界面への吸着によって、界面活性物質は表面張力をゼロ付近レベルに低下させ、そうでない場合に要求されるよりも少ない力での肺の膨張を可能にするのに有効である。結果として、肺界面活性物質は、表面張力を低下させることによって、肺がはるかに容易に膨張することを可能にするので、肺を膨張させるために要求される努力を減らす。
【0147】
賦形剤を使用して本粒子の味覚をマスキングするおよび/または空気力学的性能を改善することができる。賦形剤は本明細書に記載されるいずれの物質であってもよい。賦形剤(複数可)は、粒子の約0%〜約99%(w/w)、約0.01%〜約80%(w/w)、約0.05%〜約70%(w/w)、約0.1%〜約60%(w/w)、約0.1%〜約50%(w/w)、約0.1%〜約40%(w/w)、約0.1%〜約30%(w/w)、約0.1%〜約20%(w/w)、約0.1%〜約10%(w/w)、約0.05%〜約8%(w/w)、約0.1%〜約6%(w/w)、約5%〜約10%(w/w)、約3%〜約8%(w/w)、約2%〜約6%(w/w)、約0.1%〜約5%(w/w)、約0.1%〜約4%(w/w)、約0.1%〜約3%(w/w)、約0.1%〜約2%(w/w)、約0.1%〜約1%(w/w)、約1%〜約6%(w/w)、約1%〜約5%(w/w)、約1%〜約4%(w/w)、または約1%〜約3%(w/w)に及ぶレベルで存在し得る。一定の実施形態では、1若しくはそれ以上の賦形剤(例えば、1若しくはそれ以上のリン脂質)が、粒子の約0.1%〜約10%(w/w)、約1%〜約5%(w/w)、約0.1%、約5%(w/w)、約3%、または約10%(w/w)の範囲のレベルで存在する。
【0148】
アセチルサリチル酸単独では、あまりに刺激性で、窒息反応を誘起し得る。一実施形態では、経口または経鼻のいずれかで吸入により投与する場合、アセチルサリチル酸を界面活性剤でコーティングした後、修飾した製剤は十分耐容性である。経鼻送達された界面活性剤コーティングアセチルサリチル酸が投与の数秒以内に頭痛および鼻閉の症状を軽減することができるという所見も驚くべきものであった。発明者らの知識では、これが、アセチルサリチル酸がこの様式で送達した場合に頭痛および/または鼻閉の迅速な軽減を提供することができるという最初の証明である。
【0149】
さらに、いくつかの実施形態では、界面活性剤を、吸収剤、酸性化剤、アルカリ化剤、緩衝剤、抗微生物剤、抗酸化剤、結合剤、可溶化剤、溶媒、粘度調節剤、湿潤剤、およびこれらの組み合わせを含む1若しくはそれ以上の追加の賦形剤と組み合わせて提供することができる。いくつかの実施形態では、製剤が、溶解した製剤を肺と等張性にするのに有効な量の塩を含む。
【0150】
呼吸域乾燥粒子および乾燥粉末を製作し、次いで、例えば、濾過またはサイクロンによる遠心分離によって分離して、前選択した径分布を有する粒子試料を提供することができる。例えば、試料中呼吸域乾燥粒子の約30%超、約40%超、約50%超、約60%超、約70%超、約80%超、または約90%超が選択された範囲内の直径を有することができる。呼吸域乾燥粒子の一定割合が入る選択された範囲は、例えば、本明細書に記載されるサイズ範囲のいずれか、例えば、約0.1〜約3μmの間のVMGDであり得る。
【0151】
呼吸域乾燥粒子の直径、例えば、そのVMGDは、Multisizer lie(Coulter Electronic、Luton、Beds、英国)などの電気的帯検知装置、またはHELOSシステム(Sympatec、Princeton、NJ)などのレーザー回折装置を用いて測定することができる。粒子幾何学的直径を測定するための他の装置は当技術分野で周知である。試料中の呼吸域乾燥粒子の直径は、粒子組成および合成方法などの因子に応じて変動するだろう。試料中の呼吸域乾燥粒子の径分布を選択して呼吸器系中の標的部位内の最適な堆積を可能にすることができる。
【0152】
実験的に、飛行時間(time of flight:TOF)測定を用いて、空気力学的直径を測定することができる。例えば、Model 3225 Aerosizer DSP Particle Size Analyzer(Amherst Process Instrument,Inc.、Amherst、MA)などの装置を使用して空気力学的直径を測定することができる。Aerosizerは、個々の呼吸域乾燥粒子が2つの固定レーザー光の間を通過するのにかかる時間を測定する。
【0153】
呼吸域乾燥粒子の試料が一定の距離を沈降するために要する時間を測定する慣用的な重力沈降方法を用いて、空気力学的直径を実験的に直接測定することもできる。空気力学的質量中央径を測定するための間接的方法は、Andersenカスケードインパクター(Andersen Cascade Impactor:ACI)および多段階液体インピンジャー(multi−stage liquid impinger:MSLI)法を含む。空気力学的直径を測定する別の方法は、次世代インパクター(Next Generation Impactor:NGI)である。NGIは ACIと同様の慣性衝突の原理で働く。NGIは、7段階から成り、30、60、および100LPMの流量で較正することができる。インパクター段階が積み重なっているACIと対照的に、NGIの段階は全て一面にある。回収カップを使用してNGIの各段階の下の粒子を回収する。米国特許第8614255号明細書。粒子空気力学的直径を測定するための方法および装置は当技術分野で周知である。
【0154】
本製剤の乾燥粉末は、約0.5μm〜約10μmの範囲内の空気力学的質量中央径(mass median aerodynamic diameter:MMAD)を有する実質的乾燥粒子を有し、前記乾燥粉末は前記乾燥粒子の約0.1%(w/w)〜約10%(w/w)に及ぶ量の1若しくはそれ以上のリン脂質をさらに有する。粒子は、粒子が(i)約20μm未満のDV90、約7μm未満のDV50、および約2μm未満のDV10;(ii)約10μm未満のDV90、約4μm未満のDV50、および約1μm未満のDV10;または(iii)約6μm未満のDV90、約3μm未満のDV50、および約1μm未満のDV10を示すMMAD径分布を有し得る。
【0155】
乾燥粉末は、薬学的に許容される賦形剤でコーティングされた粒子を有し得る。薬学的に許容される賦形剤は、約0.1%〜約10%w/wに及ぶ量または約1%〜約5%w/wに及ぶ量の、ジパルミトイルホスファチジルコリン(dipalmitoyl phosphatidylcholine:DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(distearoyl phosphatidylcholine:DSPC)、またはダイズレシチンなどの界面活性剤特性を有するリン脂質であり得る。一実施形態では、乾燥粒子のDSPCの重量百分率が5%w/wである。別の実施形態では、乾燥粒子のダイズレシチンの呼吸域乾燥粉末が0.1%w/wである。
【0156】
本発明の薬物送達システムは、血栓塞栓性イベントのリスクの低下または血栓症の治療に有効である。アセチルサリチル酸の用量は、約5〜約40mgに及ぶ量で存在し得る。製剤は、クロピドグレルをさらに有し得る。呼吸域乾燥粉末は、約75%〜約95%に及ぶ放出用量を有し得る。
【0157】
一実施形態では、薬学的に許容される賦形剤がDSPCであり、呼吸域乾燥粉末が約3〜約4μmに及ぶMMADを有する乾燥粒子および約90%超の放出用量を実質的に有する。この実施形態では、呼吸域粉末収量のNGI試験装置の段階の質量%が、段階1で、約10%〜約13%、段階2で、約20%〜約23%、段階3で、約13%〜約15%、および段階4で、約5%〜約6%であり、細粒分が約45%〜約55%に及ぶ。上に示される実際の百分率の80%〜120%の間の範囲が各実施形態に包含される。
【0158】
別の実施形態では、薬学的に許容される賦形剤がダイズレシチンであり、呼吸域乾燥粉末が約2.0〜約3.0μmに及ぶMMADを有する乾燥粒子および約70%〜約85%に及ぶ放出用量を実質的に有する。この実施形態では、呼吸域粉末収量のNGI試験装置の段階の質量%が、段階1で、約5%〜約10%、段階2で、約10%〜約18%、段階3で、約15%〜約20%、および段階4で、約10%〜約15%であり、細粒分が約50%〜約70%に及ぶ。上に示される実際の百分率の80%〜120%の間の範囲が各実施形態に包含される。
【0159】
タップ密度は、粒子を特徴付けるエンベロープ質量密度(envelope mass density)の尺度である。統計学的に等方性の形状の粒子のエンベロープ質量密度は、粒子の質量÷粒子が囲まれ得る最小球エンベロープ体積として定義される。低いタップ密度に寄与し得る特徴には、不規則表面組織および多孔性構造が含まれる。タップ密度は、Dual Platform Microprocessor Controlled Tap Density Tester(Vankel、NC)、GeoPyc(商標)装置(Micrometries Instrument Corp.、Norcross、GA)、またはSOTAX Tap Density TesterモデルTD2(SOTAX Corp.、Horsham、PA)などの当業者に知られている装置を用いることによって測定することができる。タップ密度は、USP Bulk Density and Tapped Density、United States Pharmacopia convention、Rockville,MD、第10補遺、4950〜4951、1999の方法を用いて測定することができる。
【0160】
細粒分(FPF)を分散した粉末のエアロゾル性能を特徴付ける1つの方法として使用することができる。細粒分は、大気中の呼吸域乾燥粒子の径分布を説明するものである。カスケードインパクターを用いた重力分析が大気中の呼吸域乾燥粒子の径分布または細粒分を測定する1つの方法である。Andersenカスケードインパクター(Andersen Cascade Impactor:ACI)は、エアロゾルを空気力学的サイズに基づいて9つの別個の分画に分離することができる8段階インパクターである。各段階のサイズカットオフは、ACIを運転する流量に依存する。ACIは一連のノズル(すなわち、ジェットプレート)と、衝突面(すなわち、衝突ディスク)とから成る多段階で構成されている。各段階で、エアロゾル流がノズルを通過し、表面上に衝突する。十分大きな慣性を有するエアロゾル流中の呼吸域乾燥粒子はプレートに衝突する。プレートに衝突するのに十分な慣性を有さない小さな呼吸域乾燥粒子はエアロゾル流中に残ったままで、次の段階に運ばれる。ACIの各連続段階は、小さな呼吸域乾燥粒子が各連続段階で回収され得るように、ノズル中で高いエアロゾル速度を有する。
【0161】
所望であれば、2段階崩壊ACIを使用して細粒分を測定することもできる。2段階崩壊ACIは、8段階ACIの上2段階のみから成り、2つの別個の粉末分画の回収を可能にする。具体的には、2段階崩壊ACIは、段階1で回収される粉末の分画が5.6μm未満かつ3.4μm超の空気力学的直径を有する呼吸域乾燥粒子で構成されるように較正される。よって、段階1を通過し、回収フィルタに堆積する粉末の分画は、3.4μm未満の空気力学的直径を有する呼吸域乾燥粒子で構成される。このような較正における気流は約60L/分である。本明細書に記載される方法によって製造される製剤は、約20L/分〜約60L/分に及ぶ気流速度で有効に送達され得る。
【0162】
FPF(<5.6)は粉末を患者の肺中にあるようにすることができる粉末の分画に相関することが証明された一方で、FPF(<3.4)は患者の深部肺に到達する粉末の分画に相関することが証明された。これらの相関は、粒子最適化に使用することができる定量的指標を提供する。
【0163】
ACIを使用して、本明細書では重力回収用量および分析回収用量と呼ばれる放出用量を近似することができる。「重力回収用量」は、ACIの全段階フィルタ上の秤量した粉末と公称用量の比として定義される。「分析回収用量」は、ACIの全段階、全段階フィルタ、および導入部をすすぐことによって回収された粉末と公称用量の比として定義される。FPF TD(<5.0)は、ACI上の5.0μm未満の堆積粉末の内挿量と公称用量の比である。FPF RD(<5.0)は、ACI上の5.0μm未満の堆積粉末の内挿量と重力回収用量または分析回収用量のいずれかの比である。
【0164】
放出用量を近似する別の方法は、乾燥粉末吸入器(dry powder inhaler:DPI)の作動で、どれくらいの粉末が容器、例えば、カプセルまたはブリスターを出るかを決定するものである。これは、カプセルを出た割合を考慮するが、DPIに堆積している粉末を考慮しない。放出用量は、吸入器作動前の用量を含むカプセルの重量と吸入器作動後のカプセルの重量の比である。この測定値をカプセル放出粉末質量(capsule emitted powder mass:CEPM)と呼ぶこともできる。
【0165】
多段階液体インピンジャー(Multi−Stage Liquid Impinger:MSLI)は、粒径分布または細粒分を測定するために使用することができる別の装置である。多段階液体インピンジャーは、8段階の代わりに、5段階を有するが、ACIと同じ原理で作動する。さらに、各MSLI段階は、固体プレートの代わりにエタノール湿潤ガラスフリットから成る。湿潤段階を使用して、ACIを用いる場合に生じ得る、粒子の弾みおよび再飛散を防ぐ。米国特許第8614255号明細書。
【0166】
本技術はまた、本明細書に記載される方法のいずれかを用いて製造される呼吸域乾燥粉末または呼吸域乾燥粒子に関する。
【0167】
本技術の乾燥粒子を、乾燥粒子が有する塩または賦形剤の化学的安定性によって特徴付けることもできる。構成塩の化学的安定性は、塩の貯蔵寿命、適切な貯蔵条件、許容される投与環境、生物学的適合性、および有効性を含む、粒子の重要な特性に影響を及ぼし得る。当技術分野で周知の技術を用いて、化学的安定性を評価することができる。化学的安定性を評価するために使用することができる技術の1つの例は、逆相高速液体クロマトグラフィー(reverse phase high performance liquid chromatography:RP−HPLC)である。本技術の呼吸域乾燥粒子は、長期間にわたって一般的に安定な塩を含む。
【0168】
所望であれば、本明細書に記載される乾燥粒子および乾燥粉末をさらに処理して安定性を増加させることができる。医薬乾燥粉末の重要な特性は、これらの粉末が異なる温度および湿度条件で安定であるかどうかである。不安定な粉末は、環境から湿気を吸収し、凝集するので、粉末の粒径分布を変化させるだろう。
【0169】
マルトデキストリンなどの賦形剤を使用してより安定な粒子および粉末を作製することができる。マルトデキストリンは、非晶相安定剤として作用し、成分が非晶質から結晶状態に転換するのを防ぐことができる。あるいは、結晶化工程中に凝集体が形成する場合、粒子をサイクロンに通過させて凝集体をばらばらにするなど、制御された方法で(例えば、高湿度のバッグハウス)の結晶化工程を通る粒子を助ける後処理工程を使用することができ、得られた粉末は潜在的にさらに処理されてその分散性を回復する。別の可能なアプローチは、より結晶性であり、それゆえにより安定な粒子の製造をもたらすプロセス条件の近くで最適化するものである。別のアプローチは、異なる賦形剤または異なるレベルの現賦形剤を使用して塩のより安定な形態を製造しようとするものである。
【0170】
本明細書に記載される呼吸域乾燥粒子および乾燥粉末は、吸入療法に適している。呼吸域乾燥粒子は、深部肺または上もしくは中央気道などの呼吸器系の選択された領域への局所化送達に適した材料、表面粗度、直径、およびタップ密度で製作され得る。例えば、より高密度またはより大きな呼吸域乾燥粒子を上気道送達に使用することができる、または同じもしくは異なる製剤で提供する場合、試料中種々のサイズの呼吸域乾燥粒子の混合物を一投与で投与して肺の異なる領域を標的化することができる。
【0171】
異なる吸入流量、体積での、および異なる抵抗の吸入器からの粉末の分散を関連付けるために、吸入操作を行うために要するエネルギーを計算することができる。吸入エネルギーは、式E=R
2Q
2V(Eは吸入エネルギー(J)であり、Rは吸入器抵抗(kPa
1/2/LPM)であり、Qは定常流量(L/分)であり、Vは吸入される空気体積(L)である)から計算することができる。
【0172】
流量QについてはClarkeら(Journal of Aerosol Med、6(2)、99〜110頁、1993)によって測定されたピーク吸気流量(PIFR)の値、0.02および0.055kPa1/2/LPMの2つの吸入器の抵抗からの値、乾燥粉末吸入器についてのFDAガイダンス文献と、成人が種々のDPIsを通して平均2.2Lの吸入体積であることを見出したTiddensら(Journal of Aerosol Med、19、(4)、456〜465頁、2006)の研究の両方に基づく2Lの吸入体積の値を用いることによって、健康な成人集団は、2.9〜22Jに及ぶ吸入エネルギーを達成することができると予想される。
【0173】
Liら、Chemical Engineering Science 61(2006)3091〜3097によって記載される、円錐ジェット様式の電気流体力学的霧化を用いて、乾燥粉末粒子を調製することもできる。例えば、針を通って流れるアセチルサリチル酸溶液を電界に供して液滴を生成することができる。この方法は、アセチルサリチル酸粒子状結晶の形成をもたらす液滴残存の単分散に近い分布を生成すると言われている。
【0174】
7.治療の方法
他の態様では、本技術は、心血管疾患(血栓症など)を治療(予防的治療またはリスクの低下を含む)する方法であって、有効量の本明細書に記載される呼吸域乾燥粒子または乾燥粉末を、それを必要とする対象の呼吸器に投与する工程を有する方法である。
【0175】
心血管疾患は、例えば、粥状動脈硬化、冠動脈疾患(coronary artery disease:CAD)、狭心症(「アンギナ」として一般的に知られている)、血栓症、虚血性心疾患、冠不全、末梢血管疾患、心筋梗塞、脳血管疾患(脳卒中など)、一過性脳虚血発作、細動脈硬化、小血管疾患、高コレステロール、間欠性跛行、または高血圧を含む。
【0176】
呼吸域乾燥粒子および乾燥粉末を、滴下注入などの任意の適当な方法、および/または乾燥粉末吸入器(dry powder inhaler:DPI)もしくは定量吸入器(metered dose inhaler:MDI)などの吸入装置を用いて、それを必要とする対象の呼吸器に投与することができる。いくつかのDPIsが入手可能であり、例えば、米国特許第4995385号明細書および第4069819号明細書に開示される吸入器、Spinhaler(登録商標)(Fisons、Loughborough、英国)、Rotahalers(登録商標)、Diskhaler(登録商標)およびDiskus(登録商標)(GlaxoSmithKline、Research Triangle Technology Park、ノースカロライナ州)、FlowCapss(登録商標)、XCaps(Hovione、Loures、ポルトガル)、Inhalators(登録商標)(BoehringerIngelheim、ドイツ)、Aerolizer(登録商標)(Novartis、スイス)、および当業者に知られている他のものがある。
【0177】
一般的に、吸入装置(例えば、DPIs)は、ブリスター、カプセル(例えば、サイズ000、00、OE、0、1、2、3、および4、それぞれの体積容量は1.37ml、950μl、770μl、680μl、480μl、360μl、270μl、および200μlである)、または吸入器中に乾燥粒子もしくは乾燥粉末を含有する他の手段の容量に関連する、最大量の乾燥粉末または乾燥粒子を単一吸入で送達することができる。したがって、所望の用量または有効量の送達は2回以上の吸入を要し得る。好ましくは、それを必要とする対象に投与される各用量は、有効量の呼吸域乾燥粒子または乾燥粉末を含有し、約4回以下の吸入を用いて投与される。例えば、呼吸域乾燥粒子または乾燥粉末の各用量を単一吸入で、または2、3、もしくは4回の吸入で投与することができる。呼吸域乾燥粒子および乾燥粉末は、好ましくは、呼吸活性化DPIを用いて、単一の呼吸活性化段階で投与される。この種の装置を使用する場合、対象の吸入のエネルギーは、呼吸器乾燥粒子を分散させることと、これらを呼吸器に引き込むことの両方を行う。
【0178】
呼吸域乾燥粒子または乾燥粉末を、所望のように、吸入によって呼吸器内の所望の領域に送達することができる。約1μm〜約3μmのMMADを有する粒子が肺胞腔などの深部肺領域に有効に送達され得ることが周知である。例えば、約3μm〜約5μmのより大きな空気力学的直径は中央および上気道に送達され得る。
【0179】
乾燥粉末吸入器については、口腔堆積は、慣性衝突によって支配されるので、エアロゾルのストローク数によって特徴付けられる(DeHaanら、Journal of Aerosol Science、35(3)、309〜331,2003)。等しい吸入器幾何学については、呼吸パターンおよび口腔幾何学、ストローク数、およびそれゆえに口腔堆積が吸入される粉末の空気力学的サイズによって主に影響される。よって、粉末の口堆積に寄与する因子には、個々の粒子の径分布および粉末の分散性が含まれる。個々の粒子のMMADが大きすぎる、例えば、5μmより上である場合、増加した割合の粉末が口腔に堆積する。同様に、粉末が乏しい分散性を有する場合、粒子が凝集体として乾燥粉末吸入器を出て、口腔に入る兆しがある。凝集した粉末は、空気力学的に凝集体と同じくらい大きい個々の粒子のようにふるまうので、個々の粒子が小さい(例えば、約5μm以下のMMAD)場合でさえ、吸入される粉末の径分布は約5μm超のMMADを有し、口腔堆積増加をもたらし得る。
【0180】
そのため、粒子が小さく(例えば、5μm以下、例えば、約1μm〜5μmの間のMMAD)、高度分散性である(例えば、2.0、好ましくは1.5未満の1/4barまたはあるいは、0.5/4bar)粉末を有することが望ましい。より好ましくは、呼吸域乾燥粉末が、1〜4μmまたは1〜3μmの間のMMADを有し、1.4未満、または1.3未満、より好ましくは1.2未満の1/4barを有する呼吸域乾燥粒子で構成される。
【0181】
粒子のエンベロープ密度が、MMADが上に列挙される範囲の1つにあるように十分である限り(MMADは、エンベロープ密度の平方根のVMGD倍である(MMAD=VMGD
*sqrt(エンペロープ密度))、HELOSシステムを用いて1barで測定される粒子の絶対幾何学的直径は重要でない。固定体積投与容器を用いて高単位用量の塩を送達することが望まれる場合、高いエンベロープ密度の粒子が望ましい。高いエンベロープ密度は、より多くの質量の粉末が固定体積投与容器中に含有されることを可能にする。好ましいエンベロープ密度は0.1g/cm
3超、0.25g/cm
3超、0.4g/cm
3超、0.5g/cm
3超、および0.6g/cm
3超である。
【0182】
本技術の呼吸域乾燥粉末および粒子は、呼吸器系を介した薬物送達に適した組成物に使用することができる。例えば、このような組成物は、本技術の呼吸域乾燥粒子と1若しくはそれ以上の他の乾燥粒子または粉末、例えば、別の活性剤を含有するまたは1若しくはそれ以上の薬学的に許容される賦形剤から成るもしくはから本質的に成る乾燥粒子または粉末のブレンドを含むことができる。
【0183】
本技術の方法に使用するのに適した呼吸域乾燥粉末および乾燥粒子は、上気道(すなわち、中咽頭および喉頭)、気管を含む下気道、引き続いて気管支と細気管支の分岐点、および終末細気管支を移動し、今度はこれが呼吸細気管支に分かれ、次いで、呼吸領域、肺胞または深部肺につながっている。本技術の一実施形態では、呼吸域乾燥粉末または粒子の質量のほとんどが深部肺に堆積する。本技術の別の実施形態では、送達が主に中央気道へのものである。別の実施形態では、送達が上気道へのものである。
【0184】
本技術の呼吸域乾燥粒子または乾燥粉末は、呼吸周期の種々の部分(例えば、呼吸中の層流)で吸入により送達され得る。本技術の乾燥粉末および乾燥粒子の高い分散性の利点は、呼吸器中での堆積を標的化することができることである。例えば、噴霧溶液の呼吸制御送達は、液体エアロゾル送達における最近の発展である(DalbyらのInhalation Aerosols、編者Hickey 2007、437頁)。この場合、噴霧液滴が呼吸周期の一定の部分中でのみ放出される。深部肺送達のためには、液滴が吸入周期の始めに放出される一方で、中央気道堆積のためには、これらが吸入の後期に放出される。
【0185】
この本技術の乾燥粉末は、呼吸周期および同様にヒト肺中の位置における薬物送達のタイミングを標的化するための利点を提供する。本技術の呼吸域乾燥粉末は迅速に、例えば、わずかな典型的な吸入操作内に分散することができるので、粉末分散のタイミングを制御して吸入中の特定の時間にエアロゾルを送達することができる。
【0186】
高度分散性粉末では、エアロゾルの完全な用量が吸入の開始部分で分散され得る。患者の吸入流量がピーク吸気流量までランプアップする一方で、高度分散性粉末はランプアップの開始時に既に分散し始め、吸入の最初の部分で用量を完全に分散することができるだろう。吸入の開始時に吸入される空気は肺の最深部に通気するので、ほとんどのエアロゾルを吸入の最初の部分に分散することが深部肺堆積にとって好ましい。同様に、中央堆積のために、中央気道に通気する空気に高濃度のエアロゾルを分散することは、吸入の中央〜最後付近の用量の迅速な分散によって達成され得る。これは、いくつかの機構および他の手段、例えば、切換条件が満たされた後にのみ患者の吸入空気を分散される粉末に転送する時間、圧力、または流量によって作動されるスイッチによって達成され得る。
【0187】
例えば、Gonda,I.「Aerosols for delivery of therapeutic and diagnostic agents to the respiratory tract」、Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems、6:273〜313(1990);およびMoren、「Aerosol Dosage Forms and Formulations」、Aerosols in Medicine,Principles,Diagnosis and Therapy、Morenら、編者Esevier、Amsterdam(1985)に記載されるように、エアロゾル投与量、製剤、および送達システムを特定の治療用途のために選択することができる。
【0188】
所望の治療効果を提供する用量間の適当な間隔は、状態の重症度、対象の全体的な健康、ならびに呼吸域乾燥粒子および乾燥粉末に対する対象の耐容性、ならびに他の考慮事項に基づいて決定することができる。これらのおよび他の考慮事項に基づいて、臨床医は用量間の適当な間隔を決定することができる。呼吸域乾燥粒子および乾燥粉末は、1日1回、2回、もしくは3回、または必要に応じて投与され得る。
【0189】
種々の実施形態では、呼吸器(例えば、肺、呼吸気道)に送達されるアセチルサリチル酸などのNSAIDの量が、約0.001mg/kg体重/用量〜約2mg/kg体重/用量、約0.002mg/kg体重/用量〜約2mg/kg体重/用量、約0.005mg/kg体重/用量〜約2mg/kg体重/用量、約0.01mg/kg体重/用量〜約2mg/kg体重/用量、約0.02mg/kg体重/用量〜約2mg/kg体重/用量、約0.05mg/kg体重/用量〜約2mg/kg体重/用量、約0.075mg/kg体重/用量〜約2mg/kg体重/用量、約0.1mg/kg体重/用量〜約2mg/kg体重/用量、約0.2mg/kg体重/用量〜約2mg/kg体重/用量、約0.5mg/kg体重/用量〜約2mg/kg体重/用量、または約0.75mg/kg体重/用量〜約2mg/kg体重/用量である。
【0190】
一定の実施形態では、投与されたアセチルサリチル酸の少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%が、投与の約60分以内、または投与の約40分以内、または投与の約30分以内、または投与の約20分以内、または投与の約15分以内、または投与の約5分以内に対象の全身循環に到達する。
【0191】
鼻粘膜細胞を含む、鼻、気管支、または肺上皮の上皮細胞のPGI2合成能力が阻害されないように、アセチルサリチル酸の投与を調節することができる。
【0192】
一定の実施形態では、本明細書に記載される方法および送達装置は、約30mgのアセチルサリチル酸、約40mgのアセチルサリチル酸、約50mgのアセチルサリチル酸、約80mgのアセチルサリチル酸、または約160mgのアセチル酸の経口投与によって送達されるものと比べて実質的に同じまたはそれより高いレベルでアセチル酸、およびそのアセチル酸の薬理学的に活性な代謝副産物を全身循環に送達することができる。
【0193】
約30mg、約40mg、約50mg、約80mg、または約160mgのアセチルサリチル酸の経口投与によって送達されるものと比べて実質的に同じまたはそれより高いレベル(または患者の集団中の平均レベル)を達成するために投与されるアセチルサリチル酸の用量を慣用的な方法によって決定することができる。投与量、投与技術およびスケジュールは当技術分野で既知であり、熟練した臨床医の能力の範囲内にある。例えば、対象のアセチルサリチル酸またはその代謝産物の血清レベル(または対象の集団中の平均血清レベル)は、慣用的な薬物動態または薬力学試験によって決定することができる。
【0194】
一定の実施形態では、本明細書に記載される方法および装置は、アセチルサリチル酸の循環血漿レベルが投与の約60分以内、または投与の約40分以内、または投与の約30分以内、または投与の約20分以内、または投与の約15分以内、または投与の約5分以内に少なくとも約1μg/mL、少なくとも約2μg/mL、少なくとも約3μg/mL、少なくとも約4μg/mL、少なくとも約5μg/mL、または少なくとも約6μg/mLになるようにアセチルサリチル酸を全身循環に送達することができる。
【0195】
他の実施形態では、本明細書に記載される方法および装置は、サリチレートの循環血漿レベルが投与の約60分以内、または投与の約40分以内、または投与の約30分以内、または投与の約20分以内、または投与の約15分以内、または投与の約5分以内に約8μg/mL、約9μg/mL、約10μg/mL、約11μg/mL、約12μg/mL、または約15μg/mLになるようにアセチルサリチル酸を全身循環に送達することができる。
【0196】
所望であるまたは指示される場合、本明細書に記載される呼吸域乾燥粒子および乾燥粉末を1若しくはそれ以上の他の治療薬と共に投与することができる。他の治療薬は、経口、非経口(例えば、静脈内、動脈内、筋肉内、または皮下注射)、局所、吸入(例えば、気管支内、鼻腔内、または経口吸入、鼻腔内滴剤)、直腸、膣内などの任意の適当な経路によって投与することができる。呼吸域乾燥粒子および乾燥粉末は、他の治療薬の投与の前、投与と実質的に同時、または投与の後に投与することができる。好ましくは、呼吸域乾燥粒子および乾燥粉末と他の治療薬を、その薬理学的活性の実質的な重複を提供するように投与する。
【0197】
本発明を実施するための具体的な態様の以下の実施例は、例示目的のためのみに提供され、本発明の範囲を限定することを何ら意図していない。
【実施例1】
【0198】
吸入用のアセチルサリチル酸粒子の開発
この試験は、深部肺組織送達のための粒径約2.0μm未満のリン脂質コーティングアセチルサリチル酸粒子を開発するよう設計した。この開発研究を行って以下の標的粒径を達成した:0.5nm〜2.0μmのDv50;1.5〜2.0μmのDv90。
【0199】
ジェット粉砕をアセチルサリチル酸粒子の微粒子化の方法として選択して標的粒径を達成した。ジェット粉砕操作を、製造した2つのバッチについて0.4μmのDv50ならびに1.3μおよび1.6μmのDv90でうまく再現した。次いで、微粒子化した粒子を、DSPC(1,2−ジステアロイル−(sn)−グリセロ−3−ホスホコリン)またはダイズレシチンを用いて噴霧乾燥して粒子凝集および吸入時の刺激を低減した。DSPC/アセチルサリチル酸については79%収率およびダイズレシチン/アセチルサリチル酸については54%収率が得られた。
【0200】
各工程での粒径分析を行った。噴霧乾燥したDSPC/アセチルサリチル酸粒子は1.8〜3.6μmに及び、レシチン/アセチルサリチル酸粒子は1.7〜3.3μmに及んだ。
【0201】
DSC試験は、DSPCを用いた噴霧乾燥の前後でアセチルサリチル酸の結晶構造の変化がないことを示した。TGAは、噴霧乾燥前と後の両方の粒子について0.6%含湿量を示し、噴霧乾燥後にいずれの残留溶媒も存在しないことを示した。
【0202】
製剤開発
1.アセチルサリチル酸
Rhodia Inc.から得たRhodine 3040 USを全ての実験に使用した。粒子を水中0.1%w/wドクサートナトリウムに分散し、光学顕微鏡下で観察して粒径を確認した。66〜280μmに及ぶ粒子が観察され、分析の証明書からのデータを確認したが、粒子の観察された「丸み」は水性分散剤への部分的溶解を示している。
【0203】
2.粒径分析
レーザー回折および光学顕微鏡法を用いて粒径分析を行った。
【0204】
2.1.レーザー回折
以下のパラメータを用いて、フラクションセルを有するHoriba LA−950 V2をレーザー回折試験に使用した:分散媒体:n−ヘキサンに溶解した0.05%w/wダイズレシチン;媒体の屈折率:1.334;アセチルサリチル酸粒子の屈折率:1.5623;i値:0.01。i値は、粒子による光の吸収を説明するレーザー回折アルゴリズムによって使用される虚数成分である。粒子の同じ媒体中のストック分散液を調製し、強度計が80%〜90%の間の赤色レーザーを示し、一方で青色レーザーが70%〜90%の間となるまで、磁気攪拌棒を含むフラクションセルに滴加した。いったん安定化したら体積中央径Dv10、Dv50およびDv90を測定した。コーティングされていない粒子のために開発されたこのレーザー回折法は、噴霧乾燥したリン脂質/アセチルサリチル酸粒子が選択された媒体に十分に分散しなかったので、これらの粒子には使用しなかった。
【0205】
2.2.光学顕微鏡法
微粒子化前および後のコーティングされていない粒子の顕微鏡写真を、これらの粒子をドクサートナトリウムの精製水USP中0.1%w/w溶液に分散させ、400倍または1000倍の倍率でデジタル画像処理光学顕微鏡(Clemex ST−2000コントローラを有するOlympus BX51)を用いて撮影した。噴霧乾燥したリン脂質/アセチルサリチル酸粒子は選択された媒体に十分に分散していないことが分かったので、これらをスライドガラス上に乾燥状態で広げた後で顕微鏡写真を撮影した。
【0206】
3.Sturtevant Qualificationミルを用いたジェット粉砕試験
キャリヤガスとして窒素を用いて、ベンチュリ番号1を有するSturtevant Qualificationミルを用いて最初の作業を行った。材料を制御された速度ならびに所定の供給および粉砕圧力で振動式送り装置を通して供給した。粉砕圧力、供給量、および2度目の通過の効果を粒径減少について試験し、条件を表4に報告する。
【0207】
【表4】
【0208】
3.1 粉砕圧力の効果
製剤3694と3695を比較してPSD(粒径分布)に対する粉砕圧力の効果を試験した。得られたレーザー回折および顕微鏡法結果を表5に提示する。顕微鏡法およびレーザー回折データは極めてよく相関していることが分かった。粉砕圧力を3.5から5barに増加させると、予想されるように粒径の測定可能な減少が観察された。
【0209】
【表5】
【0210】
3.2 供給量の効果
顕微鏡法を用いて、製剤3694と3701を比較して粒径に対する材料供給量の効果を試験した(表6)。明らかに、流量を17g/時間から54g/時間に増加させるにつれて、有意に大きな粒子が得られた。これはおそらく、新たな物質が粉砕室に入り、十分な摩擦を受ける前に粒子を回収バッグに押し出す結果である。
【0211】
【表6】
【0212】
3.3 2度目の粉砕通過の効果
1.5μmのDv50および2μmのDv90の標的粒径を達成するために、製剤3695を2度目の通過のためにミルに通過させた。レーザー回折および顕微鏡法を用いて粒径分析を行った(表7)。ジェットミルの2度目の通過で有意な粒径減少が達成され、このことは、アセチルサリチル酸粒子が一次径減少を受けること、および得られる最終粒径が使用される初期粒径に依存することを暗示している。
【0213】
【表7】
【0214】
4.Sturtevantサニタリーデザインミルを用いたジェット粉砕
優れた制御で高い供給量を達成するならびにバッチサイズを増加させるために、大型2’’サニタリーデザインミルを表8に列挙されるパラメータにより使用した。材料を同様に2度目の通過で処理して粒径を標的まで減少させた。製剤3727および3734を、それぞれQualificationミルを用いて処理した3705および3725と比較してPSDの再現性を試験した。1度目の通過中に付与された静電気の効果を最小化するために、帯電防止装置が2度目の通過用の粉末の供給に必要であった。
【0215】
【表8】
【0216】
高静電荷を有する凝集粒子が全ての場合で得られた。
【0217】
4.1 粒径分析
レーザー回折および顕微鏡表を用いて上記製剤の粒径分析を行った(表9、
図3および
図4)。バッチサイズを1度目の通過については80gから200gおよび2度目の通過については50gから120gに増加させた場合でさえ、2つのミルサイズ間での同等のDv10、Dv50、およびDv90値により、粒径減少の再現性のある結果が得られた。1度目の通過については単峰性PSDが得られた一方で、2度目の通過については二峰性分布が観察された。
【0218】
【表9】
【0219】
5.コーティング
コーティングのために噴霧乾燥を使用した。2’’サニタリーミルで2回の通過で処理したジェット粉砕製剤3734をさらに使用してDSPCまたはダイズレシチンのいずれかでコーティングした。粒子を、脂質を含有するn−ヘキサンに分散し、溶媒を除去する方法として噴霧乾燥を選択した。全ての個々の粒子の周りのコーティングを達成するために、ジェット粉砕粒子を沈降なしに完全に分散させることが要求されたので、噴霧乾燥操作の全体を通して連続攪拌を使用した。
【0220】
以前の研究から、吸入した場合に刺激を軽減することが分かったので、5%w/w DSPCを使用した。さらに、ダイズレシチンも0.1%w/wの濃度で使用した。アセチルサリチル酸はn−ヘキサンに不溶性であるので、n−ヘキサンを微粒子化粒子のための分散媒体として選択した。また、これはアセチルサリチル酸の融点(約135℃)よりずっと低い70℃の融点を有するので、85℃の入口温度はアセチルサリチル酸粒子に影響を及ぼすことなく溶媒を除去するはずである。
【0221】
0.7mm直径のノズルを備えたBuchi−290噴霧乾燥機を試験に使用した。アスピレーターを100%容量に設定して、キャリヤガスとして窒素を用いて噴霧乾燥を行った。窒素の流量を1052L/時間(ロータメータで50mm)に調節した。ストック分散液を供給する前に、分散媒体のみを用いて供給量を調節して標的化出口温度およびシステムの安定化を達成した。
【0222】
5.1 DSPCを用いた噴霧乾燥
DSPC(リポイドPC18:0/18:0)は、55℃の相転移温度を有する内在性肺リン脂質である。この温度で加熱すると、DSPCはゲル相から液体結晶相に変化し、リン脂質相がランダムで非剛直性の構造を有する単層としてn−ヘキサンに分散する。ジェット粉砕アセチルサリチル酸粒子をDSPC/ヘキサン溶液に分散させると、目立った沈降なしによく分散したコロイド懸濁液が形成した。このことから、噴霧乾燥は溶媒除去で個々のアセチルサリチル酸粒子をコーティングすることができるはずであると仮定した。処理の詳細を表10に報告する。
【0223】
【表10】
【0224】
処理中に、噴霧乾燥室への過度の固着は観察されず、79%の収率が得られた。また、得られたコーティング粒子がコーティングされていない粒子よりも密であり、静電性が小さいことが認められた。
【0225】
5.1.1 粒径分析
噴霧乾燥したDSPCコーティング粒子はまた、コーティングされていないアセチルサリチル酸粒子の粒径分析に使用した0.05%w/wダイズレシチン/n−ヘキサン溶液に分散しないことが分かった。主粒子のPSD範囲を顕微画像から照合したが、コーティングされていないものと比べて、顕微鏡法によっていくらかの凝集が観察された(表11)。
【0226】
【表11】
【0227】
5.1.2 示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimetry:DSC)
原料のアセチルサリチル酸、コーティングされていない粉砕粒子である製剤3734、および噴霧乾燥したDSPC/アセチルサリチル酸粒子である製剤3739にDSC試験を行って、処理から誘導されるアセチルサリチル酸の結晶化度の変化を試験した。
【0228】
試料を穴のあいた蓋のついた40μLアルミニウムパンに密閉し、示差走査熱量計(STAR(登録商標)ソフトウェアV10.00を備えたMettler−Toledo DSC)を用いて分析した。試料を10℃/分の速度で25℃から160℃に加熱した。空のパンが基準として働いた。
【0229】
全ての試料で、アセチルサリチル酸融解に対応する鋭い吸熱ピークが観察された。他の多形性変換は観察されなかった。また、ピークの有意なシフトは観察されず、処理時のアセチルサリチル酸の結晶化度の変化がないことが確認された(
図5、表12)。
【0230】
【表12】
【0231】
5.1.3 熱重量分析(Thermogravimetric Analysis:TGA)
微粒子化したコーティングされていないアセチルサリチル酸粒子である製剤3734および噴霧乾燥したDSPC/アセチルサリチル酸粒子である製剤3739についてTGAを行って、噴霧乾燥時の粒子の残留溶媒および含湿量変化についてこれらを評価した。
【0232】
噴霧乾燥した粉末のTGAは、STAR(登録商標)ソフトウェアV10.00を備えたMettler−Toledo TGA/DSC1を用いて10℃/分の速度で25℃から160℃に加熱することによって、40μLアルミニウム開放パンで行った。重量損失%を25℃から120℃で測定し、噴霧乾燥前と後で比較した。
【0233】
TGAデータは、噴霧乾燥前および後の重量損失%が類似の値を示すので、噴霧乾燥した粒子中に残留ヘキサンが存在しないことを示唆している。0.57%の重量損失は、おそらく噴霧乾燥前および後のアセチルサリチル酸粒子の含湿量を示している(
図6、表13)。
【0234】
【表13】
【0235】
5.2 ダイズレシチンを用いたアセチルサリチル酸粒子の噴霧乾燥
ダイズレシチンも吸入薬物送達のために承認されており、ジェット粉砕アセチルサリチル酸粒子を十分に分散させることができたので、ダイズレシチンを賦形剤として選択した。そのため、これは溶媒除去で個々のアセチルサリチル酸粒子をコーティングすることができると予想された。ダイズレシチンをn−ヘキサンに溶解し、ジェット粉砕アセチルサリチル酸粒子を攪拌によりそこに分散させた。しかしながら、アセチルサリチル酸のDSPC中分散液と異なり、0.1%w/w濃度のダイズレシチンはコロイド分散液を形成することができず、いくらかの沈降が観察された。そのため、噴霧乾燥中の供給懸濁液の連続攪拌を使用してアセチルサリチル酸粒子の分散を維持した。表14のパラメータを用いて、噴霧乾燥を行ってn−ヘキサンを除去し、アセチルサリチル酸粒子をコーティングした。54%収率が得られた。
【0236】
【表14】
【0237】
5.2.1 粒径分析
粉末顕微鏡法を用いて粒径分析を行い、微粒子化したコーティングされていないおよび噴霧乾燥したDSPC/アセチルサリチル酸と比較した。両噴霧乾燥製剤の粒径は、満足のいく結果を示唆している(表15)。
【0238】
【表15】
【0239】
結論
アセチルサリチル酸の微粒子化によって、出発粒径の約70分の1への減少が得られた。DSPCまたはダイズレシチンを用いた噴霧乾燥によって、最大径3.6μmの深部肺薬物送達のための満足のいく粒径が得られた。噴霧乾燥したDSPC/アセチルサリチル酸粒子は、ダイズレシチン/アセチルサリチル酸粒子よりも静電性が小さく、微粒子化したコーティングされていないアセチルサリチル酸粒子よりも静電性がさらに小さいことが分かった。アセチルサリチル酸の結晶構造は、DSC試験によって観察されるように粉砕中も噴霧乾燥中も変化しなかった。DSC試験はまた、処理中の多形変換などのいずれの他のイベントも存在しないことを示唆した。TGA分析中噴霧乾燥したDSPC/アセチルサリチル酸に残留溶媒の形跡は見られなかった。
【実施例2】
【0240】
DSPC/アセチルサリチル酸粒子およびダイズレシチン/アセチルサリチル酸粒子の放出用量分析
DPI装置、例えば、Plastiapeを使用して、DSPC/アセチルサリチル酸粒子およびダイズレシチン/アセチルサリチル酸粒子の放出用量を評価した。
【0241】
【表16】
【0242】
ラクトースを使用して適切な装置設定を試験した。
【実施例3】
【0243】
乾式分散およびレーザー回折による吸入アセチルサリチル酸の粒径分布(Particle Size Distribution:PSD)分析
乾式分散し、噴霧乾燥したDSPC/アセチルサリチル酸粒子である製剤3739(表17)および噴霧乾燥したダイズレシチン/アセチルサリチル酸粒子である製剤3740(表18)(DSPC/アセチルサリチル酸粒子およびダイズレシチン/アセチルサリチル酸粒子の調製については実施例1を参照されたい)のレーザー回折分析を用いて粒径分析を行った。
【0244】
【表17】
【0245】
【表18】
【実施例4】
【0246】
噴霧乾燥したアセチルサリチル酸/DPSC粒子のNGI(次世代インパクター)分析
実施例1の乾燥粉末を空気力学的性能について評価した。使用したDPI装置は単回用量吸入器であった。NGI試験条件は20℃〜25℃の間および40%〜50%RH(相対湿度)の間に及んだ(表19)。
【0247】
【表19】
【0248】
表20は、DSPC/アセチルサリチル酸粒子の空気力学的特性を示している。
【0249】
【表20】
【実施例5】
【0250】
噴霧乾燥したアセチルサリチル酸/ダイズレシチン粒子のNGI分析
実施例1の乾燥粉末を空気力学的性能について評価した。使用したDPI装置は単回用量吸入器であった。NGI試験条件は20℃〜25℃の間および40%〜50%RH(相対湿度)の間に及んだ(表21)。
【0251】
【表21】
【0252】
表22は、ダイズレシチン/アセチルサリチル酸粒子の空気力学的特性を示している。
【0253】
【表22】
【0254】
NGIおよび送達用量試料におけるアセチルサリチル酸のHPLC分析を以下の通り行った。
【0255】
装置
HPLCカラムはPhenomenex Luna C18(2)5μm、4.6×100mmとした。Shimadzu SIL−HTC自動精製装置、Shimadzu CTO−10ASVPカラムオーブン、Shimadzu LC−10ADVPバイナリーHPLCポンプ、Shimadzu DGU−14Aインライン脱ガス装置、Shimadzu UV検出装置、およびShimadzu Class VPソフトウェアを備えたコンピュータを含む、Shimadzu HPLC装置を使用した。
【0256】
材料
移動相Aは69:28:3の水:メタノール:氷酢酸とした。移動相Bは97:3のメタノール:氷酢酸とした。希釈剤は95:5のメタノール:氷酢酸とした。ニードル洗浄液は50:50の水:メタノールとした。標準試薬は750μg/mLのアセチルサリチル酸(標準試薬A「WSA」および標準試薬B「WSB」)とした。
【0257】
HPLC条件および分析
流量は2.0mL/分とした。試料注入体積は10μLとした。勾配は表23のタイミングスキームにより実行した。
【0258】
【表23】
【0259】
試料の分析は以下の順序とした:
A.ブランク(2回の注入)
B.標準試薬A(6回の注入)
C.標準試薬B(2回の注入)
D.ブランク(1回の注入)
E.試料(それぞれ1回の注入)
F.WSB(QC標準)(1回の注入)
【0260】
順序の最後の注入がQC標準となることを確保して、必要に応じて工程E〜Fを繰り返す。
【0261】
WSAとWSBとの間の標準一致は97.0〜103.0%内でなければならない。WSBについての進行中の標準分析と初期分析(n=2)との間の標準一致は97.0〜103.0%の間でなければならない。
【0262】
WSAとWSBとの間の標準一致を以下の式により計算した。
【0263】
【数1】
【0264】
QC標準(複数可)の回収%を以下の式により計算した。
【0265】
【数2】
【0266】
試料の濃度を以下の式により計算した。
【0267】
【数3】
【実施例6】
【0268】
スプレーパターンおよびプルーム幾何学
標準的な方法論(http://www.proveris.com/products/sprayview/を参照;また、http://www.oxfordlasers.com/imaging/spray−pattern−plume−geometry−measurement/を参照)を用いて、スプレーパターンおよびスプレーパターンのプルーム幾何学および製剤のプルーム幾何学を評価する。
【0269】
作動装置オリフィスのサイズおよび形状、作動装置の設計、計量室のサイズ、バルブのステムオリフィスのサイズ、容器内の蒸気圧、ならびに製剤の性質を含む種々の因子がスプレーパターンおよびプルーム幾何学に影響を及ぼし得る。スプレーパターン試験を種々の異なる温度および湿度条件下で全ての製剤で試験した。
【実施例7】
【0270】
乾燥粉末安定性試験
以下の試験パラメータを全ての乾燥粉末製剤について分析する。
【0271】
i.外観および色
容器の内容物の外観ならびに容器および閉鎖系の外観(すなわち、バルブおよびその成分ならびに容器の内側)を分析する。色が存在するかどうか決定することは、最初に存在するまたは貯蔵寿命中に生じる分解過程からの製剤と関連する。
【0272】
ii.微生物限界
微生物量を総好気性菌数、総酵母および糸状菌数、ならびに指定された指標病原体からの解放のために制御する。適当な試験を行って、製剤が微生物の増殖を支持しないこと、および微生物品質が吸気期間全体を通して維持されることを示す。
【0273】
iii.含水量または含湿量
含水量または含湿量を分析する。粒径分布、形態型の変化、および他の変化(結晶成長または凝集など)を評価する。
【0274】
iv.用量含量均一性
用量含量均一性を複数バッチ、製剤にわたって、および安定性試験条件下で評価する。1回の測定当たりの有効成分の量を評価して、放出用量が10個の容器のうちの2個以上についてラベルクレームの80〜120%であることを示す。容器寿命にわたる用量含量均一性も評価する。
【0275】
v.粒径分布
粒径分布を全てのバッチ、製剤にわたって、ならびに安定性試験条件下で評価する。特定の製剤について、全段階および付属品で回収した薬物の総質量が、1作動基準でラベルクレームの85〜115%の間にあることが示される。
【0276】
vi.全てのバッチならびに各製剤に安定性試験を行う。制御された室温条件下での貯蔵を意図した製剤のための安定性プロトコルでの試験貯蔵条件は、(1)促進(40±2℃/75±5%相対湿度(Relative Humidity:RH))、(2)必要な場合、中間(30±2℃/60±5%RH)、および(3)長期(25±2℃/60±5%RH)条件を含む。
【0277】
前記説明を提供して、当業者が本明細書に記載される種々の構成を実施することを可能にする。本技術を特に種々の図面および構成を参照して説明してきたが、これらは例証を目的としたものにすぎず、本技術の範囲を限定するものとみなされるべきでないことが理解されるべきである。
【0278】
本技術を実施する多くの他の方法が存在し得る。本明細書に記載される種々の機能および要素を、本技術の範囲から逸脱することなく、示されるものと異なって分割することができる。これらの構成に対する種々の修正は当業者に容易に明らかになり、本明細書で定義される一般原則を他の構成に適用することができる。よって、本技術の範囲から逸脱することなく、当業者によって、多くの変更および修正が本技術に行われ得る。
【0279】
開示される方法中の工程の具体的な順序または階層は、代表的なアプローチの例証であることが理解される。設計志向に基づいて、方法中の工程の具体的な順序または階層を再配列することができることが理解される。工程のいくつかを同時に行ってもよい。付随する方法クレームは、サンプル順序で種々の工程の要素を提示しており、提示される具体的な順序または階層に限定されることを意図していない。
【0280】
本技術をその詳細な説明と合わせて説明してきたが、前記説明は例証することを意図しており、本技術の範囲を限定することを意図していないことが理解されるべきである。本明細書中のいずれの参考文献の引用も、このような参考文献が本発明の先行技術であることの自認ではない。
【0281】
当業者であれば、日常的な実験に過ぎないものを用いて、本明細書に記載される本発明の具体的な実施形態との多くの同等物を認識する、または確認することができるだろう。このような同等物は以下の実施形態によって包含されることが意図されている。