特許第6850525号(P6850525)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6850525触媒の連結を用いる、ディーゼルの水素化処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6850525
(24)【登録日】2021年3月10日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】触媒の連結を用いる、ディーゼルの水素化処理方法
(51)【国際特許分類】
   C10G 65/04 20060101AFI20210322BHJP
   B01J 27/19 20060101ALI20210322BHJP
   B01J 31/04 20060101ALI20210322BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20210322BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20210322BHJP
   B01J 37/20 20060101ALI20210322BHJP
   C10G 45/08 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   C10G65/04
   B01J27/19 M
   B01J31/04 M
   B01J37/02 101D
   B01J37/08
   B01J37/20
   C10G45/08 Z
【請求項の数】8
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2014-239424(P2014-239424)
(22)【出願日】2014年11月27日
(65)【公開番号】特開2015-105377(P2015-105377A)
(43)【公開日】2015年6月8日
【審査請求日】2017年11月22日
【審判番号】不服2019-12100(P2019-12100/J1)
【審判請求日】2019年9月12日
(31)【優先権主張番号】1361801
(32)【優先日】2013年11月28日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】マガリ ロイ−オーベルジェ
(72)【発明者】
【氏名】エマニュエル ギヨン
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ ロシェ
【合議体】
【審判長】 天野 斉
【審判官】 木村 敏康
【審判官】 川端 修
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−255995(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 65/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素含有化合物を150重量ppm超の量で含有し、かつ、250〜380℃の範囲内の加重平均温度を有する炭化水素供給原料の水素化処理方法であって、以下の工程:
a) 前記炭化水素供給原料を、水素の存在下に、少なくとも1種の第1の触媒と接触させる工程であって、該第1の触媒は、アルミナ担体と、リンと、酸化物の形態にある第VIB族からの少なくとも1種の金属、および酸化物の形態にある第VIII族からの少なくとも1種の金属によって形成された活性相とを含み、前記第1の触媒は、少なくとも1回の焼成工程を含む方法に従って調製されたものである、工程;
b) 工程a)において得られた流出物を、水素の存在下に、少なくとも1種の第2の触媒と接触させて水素化処理された流出物を得る工程であって、該第2の触媒は、アルミナ担体と、リンと、第VIB族からの少なくとも1種の金属および第VIII族からの少なくとも1種の金属によって形成された活性相と、酸素および/または窒素を含有する少なくとも1種の有機化合物とを含み、前記第2の触媒は、以下の工程:
i) 第VIB族からの金属の少なくとも1種の成分と、第VIII族からの金属の少なくとも1種の成分と、リンと、酸素および/または窒素を含有する少なくとも1種の有機化合物とを、担体と接触させて、触媒前駆体を得る、工程;
ii) 工程i)から得られた前記触媒前駆体を200℃未満の温度で乾燥させるが、続けて、焼成は行わない、工程
を含む方法に従って調製されたものである、工程
を含む、方法であって、
工程a)およびb)のそれぞれが行われる際の温度は、180〜450℃の範囲内であり、その際の圧力は、0.5〜10MPaの範囲内であり、その際の毎時空間速度は、0.1〜20h−1の範囲内であり、標準の温度および圧力の条件下に測定される水素の体積/液体供給原料の体積として表される、水素/供給原料の比は、50〜2000L/Lの範囲内であり、
工程a)は、体積V1を占める、第1の触媒を含有する第1の帯域において行われ、
工程b)は、体積V2を占める、第2の触媒を含有する第2の帯域において行われ、体積の分配V1/V2は、第1および第2の帯域それぞれについて10体積%/90体積%〜50体積%/50体積%の範囲内であり、
工程a)において前記第VIB族からの金属はモリブデンであり、第VIII族からの金属はニッケル、コバルトおよびこれらの2種の元素の混合から選択され、工程b)において前記第VIB族からの金属はモリブデンであり、第VIII族からの金属はニッケルであり、前記有機化合物はコハク酸C1−C4ジアルキルと酢酸との組合せを少なくとも含み、
前記加重平均温度(WAT)は、供給原料の体積の5%、50%および70%が蒸留される温度から、式:WAT=(T5%+2×T50%+4×T70%)/7に従って定義される、方法。
【請求項2】
工程a)またはb)の触媒のために、第VIB族からの金属の量は、全触媒重量に対する第VIB族からの金属の酸化物の重量で5〜40%の範囲内であり、第VIII族からの金属の量は、全触媒重量に対する第VIII族からの金属の酸化物の重量で1〜10%の範囲内であり、リンの量は、全触媒重量に対するPの重量で0.1〜10%の範囲内である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程a)またはb)の触媒は、ホウ素およびフッ素およびホウ素およびフッ素の混合から選択される少なくとも1種のドーパントをさらに含有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
工程a)またはb)の触媒は、硫化工程も経たものである、請求項1〜のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
供給原料中の塩基性窒素の量は、50ppm以上である、請求項1〜のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
供給原料は、接触分解、コーカーまたはビスブレーキングから得られた供給原料である、請求項1〜のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
工程b)の工程i)は、以下の工程:
i’) アルミナ担体に、第VIB族からの少なくとも1種の金属、第VIII族からの少なくとも1種の金属および前記リンを含有する少なくとも1種の溶液を含浸させて、含浸済み担体を得る工程;
i’’) 工程i’)において得られた含浸済み担体を180℃未満の温度で乾燥させるが、続けて焼成は行わず、乾燥済み含浸済み担体を得る工程;
i’’’) 工程i’’)において得られた乾燥済み含浸済み担体に、酸素および/または窒素を含有する少なくとも1種の有機化合物を含む含浸溶液を含浸させて、含浸済み触媒前駆体を得る工程;
i’’’’) 工程i’’’)において得られた含浸済み触媒前駆体を熟成させて、前記触媒前駆体を得る工程
を連続して含む、請求項1〜のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
工程a)において得られた流出物は、重質フラクションと、工程a)の間に形成されたHSおよびNHを含有する軽質フラクションとを分離するための分離工程を経、前記重質フラクションが工程b)に導入される、請求項1〜のいずれか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒の連結を用いて、ディーゼルタイプの供給原料を水素化処理する方法の分野に関する。本方法の目的は、脱硫および脱窒されたディーゼルを製造することにある。本発明の水素化処理方法は、高レベルの窒素を含む供給原料の水素化処理に特に適している。
【背景技術】
【0002】
通常、炭化水素留分の水素化処理のための触媒は、そこに含まれる硫黄含有化合物または窒素含有化合物を除去して、例えば、オイル製品が、所与の適用(自動車燃料、ガソリンまたはディーゼル、家庭用燃料、ジェット燃料)のための要求される仕様(硫黄含有率、芳香族化合物含有率等)を満たすことを保証することを目的とする。水素化処理触媒の組成および使用は、B. S Clausen、H. T. Topsoe、およびF. E. Massothによる論文(非特許文献1)において特に完全に記載された。水素化処理触媒は、一般的に、水素化脱硫機能および水素化機能を有し、第VIB族および第VIII族からの金属のスルフィドをベースとする。
【0003】
欧州共同体における自動車公害規格の引締め(非特許文献2)は、非常に大きな程度までディーゼル燃料およびガソリン中の硫黄含有率を低減させることを精製業者に要求した(2009年1月1日において硫黄最大10重量百万分率(parts per million:ppm)に対して2005年1月1日で50ppm)。さらに、精製業者は、しばしば、水素化処理方法に対してますます抵抗性の供給原料を用いることを強いられるが、これは、一方では、原油がますますより重質になってきており、その結果、ますますより多くの不純物を含有するからであり、他方で、精製業者における転化装置の数の増加に起因する。実際に、それらは、高レベルの芳香族性の化合物、窒素含有化合物および硫黄含有化合物のために、常圧蒸留から直接的に得られる留分より水素化処理し難い留分を生じさせる。これらの留分は、それ故に、伝統的な触媒と比較して大きく改善された、水素化脱硫および水素化の機能を有する触媒を要求する。
【0004】
有機化合物を水素化触媒に加えてそれらの活性を改善することは、今や、当業者に周知である。多くの特許が種々の範囲の有機化合物、例えは、モノ−、ジ−またはポリ−アルコール(これらはエーテル化させられてもよい)の使用を保護する(特許文献1〜5)。C2−C14モノエステルにより改変された触媒が特許出願(特許文献6〜7)において記載されている。
【0005】
他の特許により、同じ反応器中の触媒の特定の連結が有利であってよいことが示される。
【0006】
それ故に、特許出願(特許文献8)には、床の頭部における、より低い活性を有する触媒による基準HDS触媒の一部の取替えは、触媒床の第一の部分にわたって非抵抗性硫黄含有種上に反応が起こるために、100%基準触媒と比較して全体的な装入原料の性能を改変せず、高い性能の触媒を必要としないことが開示されている。
【0007】
特許(特許文献9)には、異なる粒子形状を有する触媒の床を連結して繋ぎ合わせる利点が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第96/41848号
【特許文献2】国際公開第01/76741号
【特許文献3】米国特許第4012340号明細書
【特許文献4】米国特許第3954673号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第0601722号明細書(特開平6−226108号公報)
【特許文献6】欧州特許出願公開第466568号明細書(特開平4−227071号公報)
【特許文献7】欧州特許出願公開第1046424号明細書(特開2000−342971号公報)
【特許文献8】米国特許出願公開第2011/0079542号明細書
【特許文献9】欧州特許出願公開第0651041号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】B. S Clausen、H. T. Topsoe、およびF. E. Massoth著、Springer-Verlag、「Catalysis Science and Technology」、1996年、第11巻
【非特許文献2】欧州連合の官報、第L76巻、2003年3月22日、指令 2003/70/CE、ページL76/10〜L76/19
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、脱硫および脱窒されたディーゼルを製造すること、特に、高レベルの窒素を含む供給原料の水素化処理に適している水素化処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は、窒素含有化合物を150重量ppm超の量で含有し、かつ、250〜380℃の範囲内の加重平均温度を有する炭化水素供給原料の水素化処理方法であって、以下の工程:
a) 前記炭化水素供給原料を、水素の存在下に、少なくとも1種の第1の触媒と接触させる工程であって、該第1の触媒は、アルミナ担体と、リンと、酸化物の形態にある、第VIB族からの少なくとも1種の金属および酸化物の形態にある、第VIII族からの少なくとも1種の金属によって形成された活性相とを含み、前記第1の触媒は、少なくとも1回の焼成工程を含む方法に従って調製されたものである、工程;
b) 工程a)において得られた流出物を、水素の存在下に、少なくとも1種の第2の触媒と接触させて水素化処理された流出物を得る工程であって、該第2の触媒は、アルミナ担体と、リンと、第VIB族からの少なくとも1種の金属および第VIII族からの少なくとも1種の金属によって形成された活性相と、酸素および/または窒素を含有する少なくとも1種の有機化合物とを含み、前記第2の触媒は、以下の工程:
i) 第VIB族からの金属の少なくとも1種の成分と、第VIII族からの金属の少なくとも1種の成分と、リンと、酸素および/または窒素を含有する少なくとも1種の有機化合物とを、担体と接触させて、触媒前駆体を得る、工程;
ii) 工程i)から得られた前記触媒前駆体を200℃未満の温度で乾燥させるが、続けて、焼成は行わない、工程
を含む方法に従って調製されたものである、工程
を含む、方法である。
【0012】
上記本発明の方法において、工程a)またはb)の触媒のために、第VIB族からの金属は、モリブデンであり、第VIII族からの金属は、コバルト、ニッケルおよびこれらの2種の元素の混合から選択されることが好ましい。
【0013】
上記本発明の方法において、好ましくは、工程a)またはb)の触媒のために、第VIB族からの金属の量は、全触媒重量に対する第VIB族からの金属の酸化物の重量で5〜40%の範囲内であり、第VIII族からの金属の量は、全触媒重量に対する第VIII族からの金属の酸化物の重量で1〜10%の範囲内であり、リンの量は、全触媒重量に対するPの重量で0.1〜10%の範囲内であることが好ましい。
【0014】
上記本発明の方法において、工程a)またはb)の触媒は、ホウ素およびフッ素およびホウ素およびフッ素の混合から選択される少なくとも1種のドーパントをさらに含有することが好ましい。
【0015】
上記本発明の方法において、有機化合物は、カルボン酸、アルコール、アルデヒド、エステル、アミン、アミノカルボン酸、アミノアルコール、ニトリルまたはアミドから選択される1種以上であることが好ましい。
【0016】
上記本発明の方法において、有機化合物は、エチレングリコール、グリセロール、ポリエチレングリコール(200〜1500の分子量を有する)、アセトフェノン、2,4−ペンタンジオン、ペンタノール、酢酸、マレイン酸、シュウ酸、酒石酸、ギ酸、クエン酸およびコハク酸C1−C4ジアルキルから選択される1種以上であることが好ましい。
【0017】
上記本発明の方法において、有機化合物は、コハク酸C1−C4ジアルキルと酢酸との組合せを少なくとも含むことが好ましい。
【0018】
上記本発明の方法において、有機化合物は、クエン酸を少なくとも含むことが好ましい。
【0019】
上記本発明の方法において、工程a)またはb)の触媒は、硫化工程も経たものであることが好ましい。
【0020】
上記本発明の方法において、供給原料中の塩基性窒素の量は、50ppm以上であることが好ましい。
【0021】
上記本発明の方法において、供給原料は、接触分解、コーカーまたはビスブレーキングから得られた供給原料であることが好ましい。
【0022】
上記本発明の方法において、工程a)およびb)のそれぞれが行われる際の温度は、180〜450℃の範囲内であり、その際の圧力は、0.5〜10MPaの範囲内であり、その際の毎時空間速度は、0.1〜20h−1の範囲内であり、標準の温度および圧力の条件下に測定される水素の体積/液体供給原料の体積として表される、水素/供給原料の比は、50〜2000L/Lの範囲内であることが好ましい。
【0023】
上記本発明の方法において、工程a)は、体積V1を占める、第1の触媒を含有する第1の帯域において行われ、工程b)は、体積V2を占める、第2の触媒を含有する第2の帯域において行われ、体積の分配V1/V2は、第1および第2の帯域それぞれについて10体積%/90体積%〜50体積%/50体積%の範囲内であることが好ましい。
【0024】
上記本発明の方法において、工程b)の工程i)は、以下の工程:
i’) アルミナ担体に、第VIB族からの少なくとも1種の金属、第VIII族からの少なくとも1種の金属および前記リンを含有する少なくとも1種の溶液を含浸させて、含浸済み担体を得る工程;
i’’) 工程i’)において得られた含浸済み担体を180℃未満の温度で乾燥させるが、続けて焼成は行わず、乾燥済み含浸済み担体を得る工程;
i’’’) 工程i’’)において得られた乾燥済み含浸済み担体に、酸素および/または窒素を含有する少なくとも1種の有機化合物を含む含浸溶液を含浸させて、含浸済み触媒前駆体を得る工程;
i’’’’) 工程i’’’)において得られた含浸済み触媒前駆体を熟成させて、前記触媒前駆体を得る工程
を連続して含むことが好ましい。
【0025】
上記本発明の方法において、工程a)において得られた流出物は、重質フラクションと、工程a)の間に形成されたHSおよびNHを含有する軽質フラクションとを分離するための分離工程を経、前記重質フラクションが工程b)に導入されることが好ましい。
【0026】
本発明は、少なくとも2種の異なるタイプの触媒の特定の連結を用いることによってディーゼルタイプの供給原料を水素化処理する方法であって、これらの2種のタイプの触媒の丁度一種と同じ量および同じ操作条件を用いる水素化処理方法と比較して、水素化処理方法の全体的な活性および全体的な安定性を増大させることができる、方法に関する。
【0027】
用語「水素化処理」は、水素化脱硫(hydrodesulphurization:HDS)、水素化脱窒(hydrodenitrogenation:HDN)および芳香族化合物の水素化(hydrogenation of aromatics:HDA)を特に包含する反応を意味する。
【0028】
本発明の方法によると、供給原料は、最初に、リンと、その酸化物の形態にある活性相とを含む第1のタイプの触媒と接触させられ、すなわち、前記第1の触媒は、金属塩の含浸後に少なくとも1回の焼成工程を含む方法を用いて調製される。この第1のタイプの触媒は、「酸化物の形態にある触媒(catalyst in the oxide form)」または「焼成触媒(calcined catalyst)」と称される。
【0029】
供給原料は、その後、第2のタイプの触媒と接触させられ、この第2のタイプの触媒は、リンと、活性相と、酸素および/または窒素を含有する有機化合物とを導入した後に乾燥工程を行うが、続いて焼成を行わないことによって調製されたものである。この第2のタイプの触媒は、焼成処理を経ないこと、したがって、活性相は、その酸化物形態にないことが留意されるべきである。この第2のタイプの触媒は、「添加物含有触媒(additive-containing catalyst)」として知られている。
【0030】
より具体的には、本発明は、窒素含有化合物を150重量ppm超の量で含有しかつ250〜380℃の範囲の加重平均温度を有する炭化水素供給原料の水素化処理方法であって、以下の工程:
a) 前記炭化水素供給原料を、水素の存在下に、アルミナ担体と、リンと、酸化物の形態にある第VIB族からの少なくとも1種の金属および酸化物の形態にある第VIII族からの少なくとも1種の金属によって形成された活性相とを含む少なくとも1種の第1の触媒と接触させる工程であって、前記第1の触媒は、少なくとも1回の焼成工程を含む方法に従って調製されたものである、工程、
b) 工程a)において得られた流出物を、水素の存在下に、アルミナ担体と、リンと、第VIB族からの少なくとも1種の金属および第VIII族からの少なくとも1種の金属によって形成された活性相と、酸素および/または窒素を含有する少なくとも1種の有機化合物とを含む少なくとも1種の第2の触媒と接触させて水素化処理された流出物を得る工程であって、前記第2の触媒は、以下の工程:
i) 第VIB族からの金属の少なくとも1種の成分と、第VIII族からの金属の少なくとも1種の成分と、リンと、酸素および/または窒素を含有する少なくとも1種の有機化合物とを、担体と接触させて、触媒前駆体を得る工程;
ii) 工程i)から得られた前記触媒前駆体を200℃未満の温度で乾燥させるが、続いて焼成は行わない工程
を含む方法に従って調製されたものである、工程
を含む、方法に関する。
【0031】
有機化合物の添加物含有触媒は、一般的に、添加物のない触媒と比較して改善された水素化処理能力を有するが、これらの触媒は、添加物のない触媒よりも、供給原料中に含まれる窒素含有分子、特に、塩基性の窒素含有分子によってより容易に阻害されることが観察された。この阻害は、添加物含有触媒の活性および安定性を経時的に低減させ、それ故に、それらの水素化処理能力を低減させるという結果を有する。
【0032】
本出願人は、ディーゼルタイプの供給原料の水素化処理方法であって、最初に、良好な水素化脱硫および水素化脱窒の活性を有する、その酸化物の形態にある触媒(焼成触媒)により水素化処理を行うために用いられ得る触媒の連結を含む、方法を開発した。この第1のタイプの触媒は、特に、抵抗性の塩基性窒素含有分子によって阻害され難く、それ故に、水素化脱窒において、添加物含有触媒より活性である。このことは、本発明の方法の第1の工程において強度の水素化脱窒が行われ得ることを意味し、それ故に、この第1の工程から出る流出物と接触させられる第2の工程の添加物含有触媒を救済する。水素化処理は、その後、その窒素含有分子の大部分およびその硫黄含有分子の一部がない供給原料を、HDSにおいて特に活性である添加物含有触媒と接触させることによって続けられ、それ故に、強度の水素化処理を完了させることが可能となる。供給原料が酸化物の形態にある触媒と接触させられた後に、添加物含有触媒と接触させられるため、添加物含有触媒は、窒素含有分子によって阻害されることが少なく、それ故に、経時的により活性かつ安定である。特定の連結は、それ故に、HDSに対して高度に活性である添加物含有触媒を、HDNにおいて高度に活性である酸化物の形態にある触媒と共に保護することができ、このことは、添加物含有触媒のみを含有する触媒系と比較して触媒の連結の全体的な活性および全体的な安定性を増大させるという結果を有する。それ故に、全体的な活性は増大し、それに応じて毎時空間速度(単位時間当たりの処理され得る供給原料の体積)が増大し得るか、あるいは、より少ない触媒が、同一体積の供給原料を処理するために用いられ得るだろう。さらに、活性の増大のため、所望の硫黄含有率(例えば、硫黄10ppm)を得るために必要な温度が低減させられ得る。同様に、全体的な安定性が増大し、それに応じて、サイクルタイムがより長くなる。
【0033】
本発明の水素化処理方法は、高含有率の有機窒素を含む供給原料、例えば、接触分解、コーカーまたはビスブレーキングから得られた供給原料の水素化処理に特に適している。
【0034】
本発明の方法は、水素化処理された炭化水素留分、すなわち、あらゆる窒素含有化合物を含まず、同時に、10ppm以下の含有率の硫黄に脱硫されたものを製造するために用いられ得る。本明細書の以降の部分を通して用いられた時の用語「硫黄(または窒素)ppm」は、硫黄(窒素)が結合した有機分子(単数種または複数種)の如何を問わず、元素硫黄(元素窒素)に対する重量ppmを意味する。好ましくは、本発明の方法では、水素化脱硫転化率は、98%超であり、好ましくは99%超である。本発明の方法における具体的な触媒の連結は、それ故に、ディーゼル燃料の強度の水素化処理、特に強度の水素化脱硫を行って、仕様を満たすディーゼル(ULSD(Ultra Low Sulphur Diesel:超低硫黄軽油))を得るために用いられ得る。
【0035】
バリエーションにおいて、工程a)またはb)の触媒のために、第VIB族からの金属は、モリブデンであり、第VIII族からの金属は、コバルト、ニッケルおよびこれらの2種の元素の混合から選択される。
【0036】
バリエーションにおいて、工程a)またはb)の触媒のために、第VIB族からの金属の量は、全触媒重量に対する第VIB族からの金属の酸化物の重量で5〜40%の範囲内であり、第VIII族からの金属の量は、全触媒重量に対する第VIII族からの金属の酸化物の重量で1〜10%の範囲内であり、リンの量は、全触媒重量に対するPの重量で0.1〜10%の範囲内である。
【0037】
バリエーションにおいて、工程a)またはb)の触媒は、ホウ素およびフッ素並びにホウ素およびフッ素の混合から選択される少なくとも1種のドーパントをさらに含有する。
【0038】
バリエーションにおいて、有機化合物は、カルボン酸、アルコール、アルデヒド、エステル、アミン、アミノカルボン酸、アミノアルコール、ニトリルまたはアミドから選択される1種以上である;好ましくは、それは、エチレングリコール、グリセロール、ポリエチレングリコール(200〜1500の分子量を有する)、アセトフェノン、2,4−ペンタンジオン、ペンタノール、酢酸、マレイン酸、シュウ酸、酒石酸、ギ酸、クエン酸およびコハク酸C1−C4ジアルキルから選択される1種以上である;特に好ましくは、それは、コハク酸C1−C4ジアルキルと酢酸の組合せを少なくとも含む。別の特に好ましいバリエーションによると、有機化合物は、クエン酸を少なくとも含む。
【0039】
バリエーションにおいて、工程a)またはb)の触媒は、硫化工程も経たものである。
【0040】
バリエーションにおいて、供給原料中の塩基性窒素の量は、50ppm以上である。
【0041】
バリエーションにおいて、供給原料は、接触分解、コーカーまたはビスブレーキングから得られる供給原料である。
【0042】
バリエーションにおいて、工程a)およびb)のそれぞれが行われる際の温度は、180〜450℃の範囲内であり、その際の圧力は、0.5〜10MPaの範囲内であり、その際の毎時空間速度は、0.1〜20h−1の範囲内であり、水素/供給原料の比(標準の温度および圧力の条件下に測定される水素の体積/液体供給原料の体積として表される)は、50〜2000L/Lの範囲内である。
【0043】
バリエーションにおいて、工程a)は、体積V1を占める、第1の触媒を含有する第1の帯域において行われ、工程b)は、体積V2を占める、第2の触媒を含有する第2の帯域において行われ、体積の分配(V1/V2)は、第1および第2の帯域のそれぞれについて10体積%/90体積%〜50体積%/50体積%の範囲内である。
【0044】
バリエーションにおいて、工程b)の工程i)は、連続する以下の工程を含む:
i’) アルミナ担体に、第VIB族からの少なくとも1種の金属、第VIII族からの少なくとも1種の金属および前記リンを含有する少なくとも1種の溶液を含浸させて、含浸済み担体を得る工程;
i’’) 工程i’)において得られた含浸済み担体を180℃未満の温度で乾燥させるが、続けて、焼成を行わず、乾燥含浸済み担体を得る、工程;
i’’’) 工程i’’)において得られた乾燥含浸済み担体に、酸素および/または窒素を含有する少なくとも1種の有機化合物を含む含浸溶液を含浸させて、含浸済み触媒前駆体を得る、工程;
i’’’’) 工程i’’’)において得られた含浸済み触媒前駆体を熟成させて、前記触媒前駆体を得る工程。
【0045】
バリエーションにおいて、工程a)において得られた流出物は、分離工程を経て、重質フラクションと、工程a)の間に形成されたHSおよびNHを含有する軽質フラクションとが分離され、前記重質フラクションは、その後、工程b)に導入される。
【発明の効果】
【0046】
本出願人は、ディーゼルタイプの供給原料の水素化処理方法であって、最初に、良好な水素化脱硫および水素化脱窒の活性を有する、その酸化物の形態にある触媒(焼成触媒)により水素化処理を行うために用いられ得る触媒の連結を含む、方法を開発した。この第1のタイプの触媒は、特に、抵抗性の塩基性窒素含有分子によって阻害され難く、それ故に、水素化脱窒において、添加物含有触媒より活性である。このことは、本発明の方法の第1の工程において強度の水素化脱窒が行われ得ることを意味し、それ故に、この第1の工程から出る流出物と接触させられる第2の工程の添加物含有触媒を救済する。水素化処理は、その後、その窒素含有分子の大部分およびその硫黄含有分子の一部がない供給原料を、HDSにおいて特に活性である添加物含有触媒と接触させることによって続けられ、それ故に、強度の水素化処理を完了させることが可能となる。供給原料が酸化物の形態にある触媒と接触させられた後に、添加物含有触媒と接触させられるため、添加物含有触媒は、窒素含有分子によって阻害されることが少なく、それ故に、経時的により活性かつ安定である。特定の連結は、それ故に、HDSに対して高度に活性である添加物含有触媒を、HDNにおいて高度に活性である酸化物の形態にある触媒と共に保護することができ、このことは、添加物含有触媒のみを含有する触媒系と比較して触媒の連結の全体的な活性および全体的な安定性を増大させるという結果を有する。それ故に、全体的な活性は増大し、それに応じて毎時空間速度(単位時間当たりの処理され得る供給原料の体積)が増大し得るか、あるいは、より少ない触媒が、同一体積の供給原料を処理するために用いられ得るだろう。さらに、活性の増大のため、所望の硫黄含有率(例えば、硫黄10ppm)を得るために必要な温度が低減させられ得る。同様に、全体的な安定性が増大し、それに応じて、サイクルタイムがより長くなる。
【発明を実施するための形態】
【0047】
(詳細な説明)
(供給原料および操作条件)
本発明の水素化処理方法に従って処理される炭化水素供給原料の加重平均温度(weighted average temperature:WAT)は、280〜350℃の範囲内である。WATは、供給原料の体積の5%、50%および70%が蒸留される温度から、以下の式:WAT=(T5%+2×T50%+4×T70%)/7に従って定義される。WATは、模擬蒸留値から計算される。処理される炭化水素供給原料は、一般的に150〜500℃の範囲、好ましくは180〜450℃の範囲の蒸留範囲を有する。
【0048】
本明細書の以降において、本発明者らは、この供給原料をディーゼルと呼ぶ約束事を用いることとするが、この呼称は、決して、本質的に制限的ではない。水素化処理阻害物質である硫黄および窒素含有の化合物を含有し、ディーゼル留分のWATに類似するWATを有するあらゆる炭化水素供給原料が、本発明の方法において用いられてよい。炭化水素供給原料は、あらゆる化学的性質を有してよく、すなわち、それは、あらゆる分布の化学的族、特に、パラフィン、オレフィン、ナフテンおよび芳香族化合物を有してよい。
【0049】
前記炭化水素供給原料は、有機性の窒素含有および/または硫黄含有の分子を含む。窒素含有有機分子は、塩基性、例えば、アミン、アニリン、ピリジン、アクリジン、キノリンおよびそれらの誘導体、または、中性、例えば、ピロール、インドール、カルバゾールおよびそれらの誘導体のいずれかである。特に、それは、水素化処理触媒、特に、添加物含有触媒を阻害する塩基性の窒素含有分子である。
【0050】
供給原料中の全窒素含有率(中性および塩基性)は、150重量ppm以上であり、好ましくは200〜6000重量ppmの範囲内であり、より好ましくは300〜4000重量ppmの範囲内であり、一層より好ましくは400〜4000重量ppmの範囲内である。塩基性窒素含有率は、全体の窒素含有率の少なくとも3分の1である。
【0051】
塩基性窒素含有率は、一般的には50重量ppm以上であり、より好ましくは65〜2000重量ppmの範囲内であり、一層より好ましくは100〜2000重量ppmの範囲内である。
【0052】
供給原料中の硫黄含有率は、一般的には0.01〜5重量%の範囲内であり、好ましくは0.2〜4重量%の範囲内であり、より好ましくは0.25〜3重量%の範囲内である。
【0053】
処理される供給原料は、一般的に、極少量の樹脂を含有する;樹脂含有率は、一般的には1重量%未満である。
【0054】
前記炭化水素供給原料は、有利には、LCO(Light Cycle Oil(ライトサイクルオイル)、あるいは、接触分解装置から得られる軽質ディーゼル)、常圧蒸留物、例えば、原油の直留蒸留からまたは転化装置、例えば流動床接触分解、コーカーまたはビスブレーキング装置から得られたディーゼル、あるいは、固定床または沸騰床の脱硫または常圧残渣の水素化転化から得られた蒸留物、あるいは上記の前記供給原料の混合物から選択される。
【0055】
本発明の水素化処理方法は、原油の常圧蒸留から直接的に得られた留分より水素化処理し難い供給原料(高い硫黄および窒素の含有率を有する)の水素化処理に特に適している。本発明の水素化処理方法は、高いレベルの窒素を含有する、特に高い塩基性窒素含有率を有する供給原料の水素化処理に特に適している。
【0056】
好ましくは、前記炭化水素供給原料は、流動床の接触分解(またはFCC(Fluid Catalytic Cracking:流動接触分解))から得られるLCO供給原料(Light Cycle Oil)またはコーキングまたはビスブレーキングの方法から得られる留分から選択される。このタイプの留分は、一般的には、以下の特徴を有する:硫黄含有率:0.5重量%超、一般的には0.5〜3重量%;窒素含有率:150重量ppm超、一般的には200〜6000重量ppmの範囲、好ましくは300〜4000重量ppmの範囲;この窒素の中で、塩基性化合物と称される化合物:最低50重量ppm、一般的には150〜2000重量ppmの範囲;芳香族化合物含有率:25重量%超、一般的には30〜90重量%の範囲。
【0057】
本発明の方法は、1、2または3基の反応器において行われてよい。それは、一般的には、固定床の様式で行われる。
【0058】
本発明の方法が2基の反応器において行われる場合、工程a)は、供給原料によって横切られる第1の反応器において行われてよく、その後、工程b)は、第1の反応器の下流に置かれた第2の反応器において行われてよい。場合によっては、第1の反応器を出る工程a)からの流出物は、分離工程を経て、HSおよびNH、特に、水素化処理の間に、工程a)において形成されたものを含有する軽質フラクションが部分的に水素化処理された炭化水素を含有する重質フラクションから分離されてよい。分離工程の後に得られた重質フラクションは、その後、本発明の方法の工程b)を行うために第2の反応器に導入される。分離工程は、蒸留、フラッシュ分離または当業者に知られる任意の他の方法によって行われてよい。
【0059】
本方法が単一の反応器において行われる場合、工程a)は、体積V1を占める、第1の触媒を含有する第1の帯域において行われ、工程b)は、体積V2を占める、第2の触媒を含有する第2の帯域において行われる。帯域の全体積に対する、工程a)の酸化物の形態にある触媒を含有する第1の帯域の体積による割合(%)は、好ましくは最低10体積%である。工程a)の酸化物の形態にある触媒を含有する第1の帯域の体積による割合(%)は、塩基性化合物と称される、阻害する窒素含有化合物の転化率を最大にするように調節される。体積の分配(V1/V2)は、第1および第2の帯域それぞれにおいて、好ましくは10体積%/90体積%〜50体積%/50体積%の範囲内である。
【0060】
工程a)またはb)の触媒の活性相を形成するために用いられる第VIB族または第VIII族からの金属は、工程a)またはb)のそれぞれにおいて同一でも異なっていてもよい。
【0061】
本発明の水素化処理方法の工程a)またはb)において用いられる操作条件は、一般的に以下の通りである:温度は有利には180〜450℃の範囲内、好ましくは250〜400℃の範囲内であり、圧力は、有利には0.5〜10MPaの範囲内、好ましくは1〜8MPaの範囲内であり、毎時空間速度(時間当たりの供給原料の体積流量対触媒の体積の比として定義される)は、有利には0.1〜20h−1の範囲内、好ましくは0.2〜5h−1の範囲内であり、水素/供給原料の比(標準の温度および圧力の条件下に測定される水素の体積/液体供給原料の体積として表される)は、有利には50〜2000L/Lの範囲内である。工程a)およびb)における操作条件は、同一であっても異なっていてもよい。好ましくは、それらは、同一である。
【0062】
(工程a):酸化物形態にある触媒による水素化処理)
本発明の方法の工程a)において、前記炭化水素供給原料は、水素の存在下に、少なくとも第1の触媒と接触させられ、この第1の触媒は、アルミナ担体と、リンと、酸化物の形態にある第VIB族からの少なくとも1種の金属および酸化物の形態にある第VIII族からの少なくとも1種の金属によって形成された活性相とを含み、前記第1の触媒は、少なくとも1回の焼成工程を含む方法を用いて調製される。
【0063】
本発明の工程a)において用いられる触媒は、アルミナ担体と、リンと、酸化物の形態にある第VIB族からの少なくとも1種の金属および酸化物の形態にある第VIII族からの少なくとも1種の金属によって形成された活性相とからなる。
【0064】
一般に、第VIB族からの金属および第VIII族からの金属の全量は、全触媒重量に対する第VIB族および第VIII族からの金属の酸化物の重量で6%超、好ましくは10〜50重量%の範囲内である。
【0065】
第VIB族からの金属の量は、全触媒重量に対する第VIB族からの金属(単数種または複数種)の酸化物の重量で5〜40%の範囲内、好ましくは8〜35重量%の範囲内、より好ましくは10〜30重量%の範囲内である。
【0066】
第VIII族からの金属の量は、全触媒重量に対する第VIII族からの金属の酸化物の重量で1〜10%の範囲内、好ましくは1.5〜9重量%の範囲内、より好ましくは2〜8重量%の範囲内である。
【0067】
本発明の水素化処理方法において用いられる触媒の活性相中に存在する第VIB族からの金属は、好ましくはモリブデンである。
【0068】
本発明の水素化処理方法において用いられる触媒の活性相中に存在する第VIII族からの金属は、好ましくは、コバルト、ニッケルおよびこれらの2種の元素の混合から選択される。
【0069】
好ましくは、工程a)において用いられる触媒の活性相は、以下の元素の組合せによって形成される群から選択される:ニッケル−モリブデン、コバルト−モリブデンおよびニッケル−コバルト−モリブデン。
【0070】
酸化物の形態にある触媒中の第VIII族からの金属対第VIB族からの金属のモル比は、好ましくは0.1〜0.8の範囲内、好ましくは0.15〜0.6の範囲内、より好ましくは0.2〜0.5の範囲内である。
【0071】
工程a)の前記触媒はまた、リンをドーパントとして含む。ドーパントは、それ自体なんらの触媒特性を有しないが、活性相の触媒活性を増加させる、加えられる元素である。
【0072】
工程a)のための前記触媒中のリンの量は、好ましくはPの重量で0.1〜10%の範囲内、好ましくはPの重量で0.2〜8%の範囲内、より好ましくはPの重量で0.3〜8%の範囲内である。
【0073】
前記工程a)のための触媒中のリン対第VIB族からの金属のモル比は、0.05以上、好ましくは0.07以上、より好ましくは0.08〜0.5の範囲内である。
【0074】
本発明の工程a)において用いられる触媒は、有利には、ホウ素およびフッ素およびホウ素およびフッ素の混合から選択される少なくとも1種のドーパントをさらに含有してよい。
【0075】
工程a)において用いられる水素化処理触媒がホウ素を含有する場合、その含有率は、好ましくは酸化ホウ素の重量で0.1〜10%の範囲内、好ましくは酸化ホウ素の重量で0.2〜7%の範囲内、非常に好ましくは酸化ホウ素の重量で0.2〜5%の範囲内である。
【0076】
工程a)において用いられる水素化処理触媒がフッ素を含有する場合、フッ素含有率は、好ましくはフッ素の重量で0.1〜10%の範囲内、好ましくはフッ素の重量で0.2〜7%の範囲内、非常に好ましくはフッ素の重量で0.2〜5%の範囲内である。
【0077】
担体は、アルミナ担体であり、すなわち、それは、アルミナ、および場合による金属および/またはドーパント(単数種または複数種)を含有し、含浸から別に導入される(例えば、担体の調製(混合処理、解膠処理等)の間またはその成形処理の間に導入される)。担体は、成形処理(例えば、押出による)および焼成処理(一般的には300〜600℃)の後に得られる。
【0078】
好ましくは、担体は、アルミナ、好ましくは押し出されたアルミナによって構成される。好ましくは、アルミナはガンマアルミナである;より好ましくは、前記アルミナ担体は、ガンマアルミナによって構成される。
【0079】
無定形担体の細孔容積は、一般的には0.1〜1.5cm/gの範囲内、好ましくは0.4〜1.1cm/gの範囲内である。全細孔容積は、水銀ポロシメトリ(mercury porosimetry)により、ASTM規格D 4284-92に従って、濡れ角140°で、Rouquerol F.; Rouquerol J.; Singh K.による著作「Adsorption by Powders & Porous Solids: Principle, methodology and applications」(Academic Press, 1999)において記載されたようにして、例えば、Micromeritics(登録商標)社からの器具(Autopore III(登録商標)モデル)を用いて測定される。
【0080】
無定形担体の比表面積は、一般的には5〜400m/gの範囲内、好ましくは10〜350m/gの範囲内、より好ましくは40〜350m/gの範囲内である。比表面積は、本発明では、BET法によって決定される。この方法は、上記に引用された著作において記載されている。
【0081】
前記アルミナ担体は、有利には、粉末の形態にあるか、または、ビーズ、押出物、ペレット、または、不規則かつ非球状の凝塊物に成形され、この凝塊物の具体的形状は、破砕工程の結果であってよい。非常に有利には、前記担体は、押出物の形態にある。
【0082】
工程a)において用いられる酸化物の形態にある触媒は、当業者に周知であるあらゆる方法を用いて調製されてよい。
【0083】
前記触媒の第VIB族からの金属および第VIII族からの金属は、有利には、調製の種々の段階において、種々の方法で触媒に導入されてよい。第VIB族および第VIII族からの前記金属は、有利には、一部、前記無定形担体の成形処理の間、あるいは、好ましくは、前記成形処理の後に導入されてよい。
【0084】
第VIB族および第VIII族からの金属が、一部、前記アルミナ担体の成形処理の間に導入される場合、それらは、一部、マトリクスとして選択されるアルミナゲルと混合する時にのみ導入されてよく、金属の残部が続いて導入される。好ましくは、第VIB族および第VIII族からの金属が、一部、混合する時に導入される場合、この工程の間に導入される第VIB族からの金属の割合は、最終触媒上に導入される第VIB族からの金属の全量の20%以下であり、この工程の間に導入される第VIII族金属の割合は、最終触媒上に導入される第VIII族からの金属の全量の50%以下である。
【0085】
第VIB族および第VIII族からの金属が、少なくとも一部、好ましくは、それらの全体において、前記担体を成形した後に導入される場合、第VIB族および第VIII族からの金属は、有利には、金属の前駆体を含有する水溶液または有機溶液を活用する、アルミナ担体上への1回以上の過剰な溶液含浸によって、あるいは、好ましくは、前記アルミナ担体の1回以上の乾式含浸、好ましくは単一の乾式含浸によって、アルミナ担体上に導入されてよい。乾式含浸は、担体を、第VIB族および/または第VIII族からの前記金属(単数種または複数種)の少なくとも1種の前駆体を含有する溶液と接触させることからなり、その体積は、含浸させられるべき担体の細孔容積に等しい。含浸溶液のための溶媒は、水または有機化合物、例えば、アルコールであってよい。好ましくは、含浸溶液として水溶液が用いられる。
【0086】
非常に好ましくは、第VIB族および第VIII族からの金属は、それらの全体において、前記アルミナ担体を成形した後に、金属の前駆体塩を含有する含浸水溶液を活用した前記担体の乾式含浸によって導入される。第VIB族および第VIII族からの金属は、有利には、金属の前駆体塩を含有する溶液を用いる、アルミナ担体の1回以上の含浸によって導入されてもよい。対応する前駆体塩の複数回の含浸において金属が導入される場合、触媒を乾燥させるための中間工程が、一般的に行われ、その際の温度は、50〜180℃の範囲内、好ましくは60〜150℃の範囲内、非常に好ましくは75〜130℃の範囲内である。
【0087】
好ましくは、第VIB族からの金属は、導入の様式に拘わらず、第VIII族からの金属と同時に導入される。
【0088】
用いられてよいモリブデン前駆体は、当業者に周知である。例として、モリブデン源の中から、酸化物および水酸化物、モリブデン酸およびそれらの塩、特に、アンモニウム塩、例えば、モリブデン酸アンモニウム、ヘプタモリブデン酸アンモニウム、リンモリブデン酸(HPMo1240)、およびそれらの塩、場合によってはケイモリブデン酸(HSiMo1240)およびその塩を用いることが可能である。モリブデン源は、任意のヘテロポリ化合物、例えば、ケギン(Keggin)、欠損ケギン(lacunary Keggin)、置換ケギン(substituted Keggin)、ドーソン(Dawson)、アンダーソン(Anderson)またはストランドバーグ(Strandberg)タイプのものであってもよい。好ましくは、三酸化モリブデンおよびケギン、欠損ケギン、置換ケギンおよびストランドバーグタイプのヘテロポリ化合物が用いられる。
【0089】
用いられてよいコバルト前駆体は、有利には、酸化物、水酸化物、ヒドロキシ炭酸塩、炭酸塩および硝酸塩等から選択される。水酸化コバルトおよび炭酸コバルトが好ましくは用いられる。
【0090】
用いられてよいニッケル前駆体は、有利には、酸化物、水酸化物、ヒドロキシ炭酸塩、炭酸塩および硝酸塩等から選択される。水酸化ニッケルおよびヒドロキシ炭酸ニッケルが好ましくは用いられる。
【0091】
同様に、リンは、有利には、触媒に、調製における種々の段階において、種々の方法で導入されてよい。前記リンは、有利には、前記担体の成形処理の間に、あるいは、好ましくは、それを成形した後に導入されてよい。それは、例えば、選択されたマトリクス、例えばおよび好ましくはオキシ水酸化アルミニウム(ベーマイト)アルミナ前駆体を解膠する直前または直後に導入されてよい。それは、有利には、単独でまたは第VIB族および第VIII族からの金属の少なくとも1種との混合物で導入されてもよい。
【0092】
前記リンは、好ましくは、第VIB族および第VIII族からの金属の前駆体との混合物として、その全体においてまたは一部において、成形されたアルミナ担体、好ましくは押し出された形態にあるアルミナ上に、金属の前駆体およびリン前駆体を含有する溶液を用いる前記アルミナ担体の乾式含浸によって導入される。
【0093】
好ましいリン源は、オルトリン酸(HPO)であるが、塩およびエステル、例えば、リン酸アンモニウムも適している。リンは、第VIB族元素(単数種または複数種)と同時に、ケギン、欠損ケギン、置換ケギンまたはストランドバーグタイプのヘテロポリアニオンの形態で導入されてもよい。
【0094】
本発明の工程a)において用いられる触媒は、有利には、ホウ素およびフッ素並びにホウ素およびフッ素の混合から選択される少なくとも1種のドーパントをさらに含有してよい。このドーパントは、リンのためのものと同様に、調製における種々の段階において種々の方法で導入されてよい。それは、少なくとも一部、担体の調製の間(成形処理を含む)に導入されてよい。それは、有利には、単独でまたはリンまたは第VIB族および第VIII族からの金属の前駆体の少なくとも1種との混合物として導入されてよい。それは、好ましくは、第VIB族および第VIII族からの金属の前駆体およびリンとの混合物として、その全体においてまたは一部において、成形されたアルミナ担体、好ましくは、押し出された形態にあるアルミナ上に、金属の前駆体、リン前駆体並びにホウ素および/またはフッ素から選択されるドーパントの前駆体(単数種または複数種)を含有する溶液を用いる前記アルミナ担体の乾式含浸によって導入される。
【0095】
ホウ素源は、ホウ酸、好ましくはオルトホウ酸(HBO)、二ホウ酸または五ホウ酸のアンモニウム塩、酸化ホウ素、またはホウ酸エステルであってよい。ホウ素は、例えば、水/アルコール混合物中または水/エタノールアミン混合物中のホウ酸の溶液によって導入されてよい。
【0096】
用いられてよいフッ素源は、当業者に周知である。例として、フッ化物アニオンが、フッ化水素酸またはその塩の形態で導入されてよい。これらの塩は、アルカリ金属、アンモニウムまたは有機化合物により形成される。この後者の場合、塩は、有利には、反応混合物中に、有機化合物とフッ化水素酸との間の反応によって形成される。フッ素は、例えば、フッ化水素酸またはフッ化アンモニウム、あるいは実際に重フッ化アンモニウムの水溶液の含浸によって導入されてよい。
【0097】
好ましい様式において、本発明の方法の触媒の調製方法の工程a)は、以下の工程を含む:
a’) 第VIB族からの金属の少なくとも1種の前駆体、第VIII族からの金属の少なくとも1種の前駆体、リン、場合による、ホウ素および/またはフッ素から選択される別のドーパントを含有する溶液を、アルミナ担体上に含浸させる工程;
a’’) 場合による、工程a’)から得られた含浸済み担体を乾燥させる工程;
a’’’) 含浸させられ、場合によっては乾燥させられた担体を焼成して、第VIB族および第VIII族からの金属の前駆体を酸化物に変換する工程。
【0098】
含浸工程a’)は、上記に記載されたバリエーションに従って行われる。非常に好ましくは、第VIB族および第VIII族からの金属、リンおよび場合による、ホウ素および/またはフッ素から選択される他のドーパントは、それらの全体において、前記アルミナ担体を成形した後に、金属の前駆体塩、リンおよび場合による、ホウ素および/またはフッ素から選択されるドーパントを含有する含浸水溶液を活用する前記担体の乾式含浸によって導入される。
【0099】
工程a’’)の乾燥が行われる際の温度は、一般的には50〜180℃の範囲内、好ましくは60〜150℃の範囲内、非常に好ましくは75〜130℃の範囲内である。乾燥は、一般的には1〜24時間の範囲内、好ましくは1〜20時間の範囲内の期間にわたって行われる。乾燥は、空気中、または、不活性雰囲気(例えば窒素)下に行われる。
【0100】
工程a’’’)の焼成が行われる際の温度は、一般的に250〜900℃の範囲内、好ましくは350〜750℃の範囲内である。焼成期間は、一般的に0.5〜16時間の範囲内、好ましくは1〜5時間の範囲内である。それは、一般的には空気中で行われる。焼成は、第VIB族および第VIII族からの金属の前駆体を酸化物に変換するために用いられ得る。
【0101】
それを用いる前に、本発明の方法の工程a)において用いられる酸化物の形態にある(焼成された)触媒を、その活性種を形成するように硫化された触媒に変換することが有利である。この活性化または硫化の段階は、当業者に周知である方法を用いて、有利には、水素および硫化水素の存在下の硫黄性還元雰囲気(sulpho-reducing atmosphere)中で行われる。
【0102】
好ましいバリエーションにおいて、工程a’’’)において得られた触媒は、硫化工程を経る。硫化工程は、有利には、現場外(ex situ)または現場内(in situ)の方法で行われる。硫化剤は、HSガスまた触媒は硫化することを目指して炭化水素供給原料の活性化のために用いられる硫黄を含有する任意の他の化合物である。硫黄を含有する前記化合物は、有利には、アルキルジスルフィド、例えば、ジメチルジスルフィド(dimethyldisulphide:DMDS)、アルキルスルフィド、例えば、ジメチルスルフィド、n−ブチルチオール、tert−ノニルポリスルフィドタイプのポリスルフィド化合物、または当業者に知られており、かつ、触媒の良好な硫化をもたらし得る任意の他の化合物から選択される。好ましくは、触媒は、現場内で、硫化剤および炭化水素供給原料の存在下に硫化される。非常に好ましくは、触媒は、現場内で、ジメチルジスルフィドで補足された炭化水素供給原料の存在下に硫化される。
【0103】
(工程b):添加物含有触媒による水素化処理)
本発明の方法の工程b)によると、工程a)から得られた流出物は、水素の存在下に、少なくとも1種の第2の触媒と接触させられ、この第2の触媒は、アルミナ担体と、リンと、第VIB族からの少なくとも1種の金属および第VIII族からの少なくとも1種の金属によって形成された活性相と、酸素および/または窒素を含有する少なくとも1種の有機化合物とを含み、前記第2の触媒は、以下の工程を含む方法により調製される:
i) 第VIB族からの金属の少なくとも1種の成分と、第VIII族からの金属の少なくとも1種の成分と、リンと、酸素および/または窒素を含有する少なくとも1種の有機化合物とを、担体と接触させて、触媒前駆体を得る工程;
ii) 工程i)から得られた前記触媒前駆体を200℃未満の温度で乾燥させるが、続いてその焼成は行わない、工程。
【0104】
本発明の工程b)において用いられる触媒は、アルミナ担体と、リンと、第VIB族からの少なくとも1種の金属および第VIII族からの少なくとも1種の金属によって形成される活性相と、酸素または窒素を含有する有機化合物とからなる。工程b)において用いられる触媒は、添加物含有触媒と称される触媒である。その調製の間、それは、焼成を経ない。すなわち、その活性相は、酸化物の形態に変換されなかった第VIB族および第VIII族からの金属を含む。
【0105】
工程b)の触媒の第VIII族からの金属および第VIII族からの金属の全量並びに第VIII族からの金属対第VIB族からの金属のモル比は、工程a)の触媒のために記載されたものと同じ範囲内である。
【0106】
本発明の工程b)において用いられる触媒の活性相中に存在する第VIB族からの金属は、好ましくはモリブデンである。
【0107】
本発明の工程b)において用いられる触媒の活性相中に存在する第VIII族からの金属は、好ましくは、コバルト、ニッケルおよびこれらの2種の元素の混合から選択される。
【0108】
好ましくは、工程b)において用いられる触媒の活性相は、以下の元素の組合せによって形成される群から選択される:ニッケル−モリブデン、コバルト−モリブデンおよびニッケル−コバルト−モリブデン。
【0109】
工程b)において用いられる添加物含有触媒はまた、リンをドーパントとして含む。工程b)の触媒のリン含有率並びに工程b)の触媒のリン対第VIB族からの金属のモル比は、工程a)の触媒のために記載されたものと同じ範囲内にある。
【0110】
本発明の工程b)において用いられる触媒は、有利には、ホウ素および/またはフッ素から選択される少なくとも1種の他のドーパントをさらに含有してよい。工程b)において用いられる触媒がホウ素および/またはフッ素を含有する場合、ホウ素および/またはフッ素の量は、工程a)の触媒のために記載された量と同じ範囲内にある。
【0111】
工程b)において用いられる前記触媒のためのアルミナ担体は、工程a)に属するセクションにおいて記載された。工程b)の添加物含有触媒のための担体は、工程a)において用いられる触媒の担体と同一または異なっていてよい。
【0112】
好ましくは、工程b)において用いられる前記触媒のための担体は、アルミナ、好ましくは押し出されたアルミナによって構成される。好ましくは、アルミナは、ガンマアルミナであり、前記アルミナ担体は、好ましくは、ガンマアルミナによって構成される。
【0113】
工程b)において用いられる触媒は、酸素および/または窒素を含有する有機化合物をさらに含有する。この化合物は、2個超の炭素原子および少なくとも1個の酸素および/または窒素原子を含有する有機化合物である。
【0114】
酸素を含有する有機化合物は、カルボン酸、アルコール、アルデヒドまたはエステルから選択される1種以上の化合物であってよい。例として、酸素を含有する有機化合物は、エチレングリコール、グリセロール、ポリエチレングリコール(200〜1500の分子量を有する)、アセトフェノン、2,4−ペンタンジオン、ペンタノール、酢酸、マレイン酸、シュウ酸、酒石酸、ギ酸、クエン酸およびコハク酸C1−C4ジアルキルによって構成される群から選択される1種以上の化合物であってよい。用いられるコハク酸ジアルキルは、好ましくは、コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル、コハク酸ジプロピルおよびコハク酸ジブチルからなる群中に含まれる。好ましくは、用いられるコハク酸C1−C4ジアルキルは、コハク酸ジメチルまたはコハク酸ジエチルである。非常に好ましくは、用いられるコハク酸C1−C4ジアルキルは、コハク酸ジメチルである。少なくとも1種のコハク酸C1−C4ジアルキルが用いられるが、好ましくは1種のみであり、好ましくはコハク酸ジメチルである。
【0115】
窒素を含有する有機化合物は、アミンから選択されてよい。例として、窒素を含有する有機化合物は、エチレンジアミンまたはテトラメチル尿素であってよい。
【0116】
酸素および窒素を含有する有機化合物は、アミノカルボン酸、アミノアルコール、ニトリルまたはアミドから選択されてよい。例として、酸素および窒素を含有する有機化合物は、アミノトリ酢酸(aminotriacetic acid)、1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸、モノ−エタノールアミン、アセトニトリル、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミドまたはEDTAであってよい。
【0117】
好ましくは、有機化合物は、酸素を含有する。特に好ましくは、有機化合物は、コハク酸C1−C4ジアルキル(特に、ジメチル)と酢酸との組合せを少なくとも含む。別の特に好ましいバリエーションによると、有機化合物は、クエン酸を少なくとも含む。
【0118】
工程b)において用いられる触媒は、以下の工程を含む方法に従って調製される:
i) 第VIB族からの金属の少なくとも1種の成分と、第VIII族からの金属の少なくとも1種の成分と、リンと、酸素および/または窒素を含有する少なくとも1種の有機化合物とを、担体と接触させて、触媒前駆体を得る工程;
ii) 工程i)から得られた前記触媒前駆体を200℃未満の温度で乾燥させるが、続いて、その焼成は行わない工程。
【0119】
接触工程i)は、数多くの方法において実施され得る。
【0120】
工程b)において用いられる触媒の調製方法の工程i)の第1の実施によると、第VIB族および第VIII族からの金属の前記成分、リン、および有機化合物の成分は、前記担体上に、少なくとも1回の共含浸工程によって、好ましくは乾式含浸によって沈着させられる。「共含浸(co-impregnation)」としても知られる、この実施によると、第VIB族および第VIII族からの金属の前記成分、リンおよび有機化合物は、前記担体に同時に導入される。工程i)の前記の第1の実施形態は、1回以上の共含浸工程を行うことを含み、各共含浸工程の後に、好ましくは、下記の工程i’’)に記載されるような乾燥工程が行われる。
【0121】
工程b)において用いられる触媒の調製方法の工程i)の第2の実施形態によると、第VIII族からの少なくとも1種の金属、第VIB族からの少なくとも1種の金属、前記リンおよび少なくとも前記アルミナ担体を含む少なくとも1種の触媒前駆体は、酸素および/または窒素を含有する少なくとも1種の有機化合物と接触させられる。本発明によると、前記第2の実施形態は、「後含浸(post-impregnation)」として知られる調製である。このバリエーションによると、触媒前駆体は、当業者に知られるあらゆる方法を用いて、好ましくは、乾式含浸、過剰含浸(excess impregnation)によって、または、当業者に周知である方法を用いる沈着−沈殿(deposition-precipitation)によって、第VIB族からの金属の少なくとも1種の成分、第VIII族からの金属の少なくとも1種の成分およびリンを前記担体上に沈着させることにより調製される。第VIB族および第VIII族からの金属の成分およびリンは、1回以上の含浸によって沈着させられてよく、好ましくは、その後に、下記の工程i’’)において記載されるような乾燥工程が行われる。
【0122】
特に好ましいバリエーションによると、工程i)の接触は、工程i)の第2の実施形態に従って、すなわち、後含浸によって行われる。特に好ましいバリエーションにおいて、工程b)において用いられる触媒は、US 2013/008829において記載された調製方法に従って調製される。より正確には、工程b)の触媒の調製方法の工程i)は、下記により詳細に記載されることになる以下の工程を連続して含んでよい:
i’) アルミナ担体に、第VIB族からの少なくとも1種の金属、第VIII族からの少なくとも1種の金属および前記リンを含有する少なくとも1種の溶液を含浸させて、含浸済み担体を得る工程;
i’’) 工程i’)において得られた含浸済み担体を180℃未満の温度で乾燥させるが、続けて焼成は行わず、乾燥済み含浸済み担体を得る工程;
i’’’) 工程i’’)において得られた乾燥済み含浸済み担体を、酸素および/または窒素を含有する少なくとも1種の有機化合物を含む含浸溶液に含浸させて、含浸済み触媒前駆体を得る工程;
i’’’’) 工程i’’’)において得られた含浸済み触媒前駆体を熟成させて、前記触媒前駆体を得る工程。
【0123】
工程i’)において、第VIB族および第VIII族からの金属は、有利には、アルミナ担体上に、前記アルミナ担体の1回以上の過剰溶液含浸によって、または、好ましくは、1回以上の乾式含浸によって、より好ましくは、1回の乾式含浸によって、金属の前駆体を含有する水溶液または有機溶液を用いて導入されてよい。含浸工程は、工程a)において記載された酸化物の形態にある触媒の調製のために記載された方法と同じ方法で行われてよい。第VIB族および第VIII族からの金属の前駆体は、工程a)のために記載されたものである。前記リンおよび場合による、ホウ素および/またはフッ素から選択される他のドーパントは、工程a)において記載された方法で導入されてよい。リン、ホウ素およびフッ素の前駆体は、工程a)において記載されたものである。
【0124】
第VIB族および第VIII族からの金属およびリンのアルミナ担体上への導入の後に、乾燥させるための工程i’’)が行われ、この工程i’’)の間に、溶媒(これは一般的には水である)が除かれ、その際の温度は、50〜180℃の範囲内、好ましくは60〜150℃の範囲内または65〜145℃の範囲内、非常に好ましくは70〜140℃の範囲内または75〜130℃の範囲内である。これにより得られた乾燥済み含浸済み担体を乾燥させるための工程の後には、決して、空気中、200℃超の温度で焼成するための工程は行われない。
【0125】
好ましくは、工程i’)において、前記含浸済み担体は、第VIB族および第VIII族からの金属の前駆体、およびリンを含む溶液を、焼成されかつ成形されたアルミナ担体上に乾式含浸させ、その後に、180℃未満、好ましくは50〜180℃の範囲内、好ましくは60〜150℃の範囲内、非常に好ましくは75〜130℃の範囲内の温度で乾燥させることによって得られる。乾燥済み含浸済み担体は、それ故に、工程i’’)の終わりに得られる。
【0126】
工程i’’’)によると、前記乾燥済み含浸済み担体は、酸素および/または窒素を含有する少なくとも1種の有機化合物、好ましくはコハク酸C1−C4ジアルキル(特にコハク酸ジメチル)および酢酸を含む含浸溶液を含浸させられる。別のバリエーションでは、工程i’’’)の含浸溶液は、好ましくは、クエン酸を含む。少なくとも前記有機化合物を含む含浸溶液は、好ましくは、水溶液である。
【0127】
酸素および/または窒素を含有する有機化合物(単数種または複数種)対触媒上に嵌め込まれる触媒前駆体の第VIB族からの含浸元素(単数種または複数種)のモル比は、工程ii)の乾燥の前に0.05〜2モル/モルの範囲内、好ましくは0.1〜1.8モル/モルの範囲内、好ましくは0.15〜1.5モル/モルの範囲内である。有機成分がコハク酸C1−C4ジアルキル(特にコハク酸ジメチル)および酢酸の混合物である場合、前記成分は、有利には、本発明の方法の工程i’’’)の含浸溶液に、以下に対応する量で導入される:
・ コハク酸ジアルキル(例えばジメチル)対触媒前駆体の第VIB族からの含浸させられる元素(単数種または複数種)のモル比:0.05〜2モル/モルの範囲内、好ましくは0.1〜1.8モル/モルの範囲内、より好ましくは0.15〜1.5モル/モルの範囲内;
・ 酢酸対触媒前駆体の第VIB族からの含浸させられる元素(単数種または複数種)のモル比:0.1〜5モル/モルの範囲内、好ましくは0.5〜4モル/モルの範囲内、より好ましくは1.3〜3モル/モルの範囲内、非常に好ましくは1.5〜2.5モル/モルの範囲内。
【0128】
前記有機化合物(単数種または複数種)は、有利には、1回以上の工程において、スラリー含浸または過剰含浸または乾式含浸のいずれかによって、または当業者に知られている任意の他の手段のいずれかによって沈着させられてよい。
【0129】
工程i’’’)によると、酸素または窒素を含有する有機化合物は、乾燥済み含浸済み担体上に、少なくとも1回の含浸工程によって、好ましくは単一回の含浸工程によって、特に好ましくは単一回の乾式含浸工程によって導入される。
【0130】
本発明の調製方法の工程i’’’’)によると、工程i’’’)から得られた含浸済み触媒前駆体は、熟成工程を経る。それは、有利には、大気圧において、17〜50℃の範囲内の温度で行われ、熟成期間は、一般的には10分〜48時間の範囲内、好ましくは30分〜5時間の範囲内で十分である。より長い時間は除外されない。触媒前駆体は、それ故に、工程i’’’’)の終わりに得られる。
【0131】
本発明の調製方法の工程ii)によると、工程i)から得られた触媒前駆体は、200℃未満の温度での乾燥工程を経るが、続けて、それを焼成することはない。
【0132】
本発明の方法の乾燥工程ii)は、有利には、当業者に知られている任意の技術を用いて行われる。それは、有利には、大気圧でまたは減圧下に行われる。好ましくは、この工程は、大気圧で行われる。
【0133】
この工程ii)が行われる際の温度は、有利には、50℃以上かつ200℃未満、好ましくは60〜180℃の範囲内、非常に好ましくは80〜160℃の範囲内である。
【0134】
工程ii)は、有利には、空気または任意の他の高温ガスを用いるフラッシュ床(flushed bed)において行われる。好ましくは、固定床において乾燥が行われる場合に、用いられるガスは、空気または不活性ガス(例えばアルゴンまたは窒素)のいずれかである。非常に好ましくは、乾燥は、フラッシュ床において、窒素の存在下に行われる。
【0135】
好ましくは、この工程は、30分〜4時間の範囲内、好ましくは1〜3時間の範囲内で続く。
【0136】
本発明の方法の工程ii)の終わりに、「添加物含有触媒」としても知られる乾燥触媒が得られ、このものは、その後の空気中、200℃超の温度での焼成工程を一切経ない。
【0137】
それを用いる前に、工程b)において用いられる添加物含有触媒を硫化触媒に変換してその活性種を形成することが有利である。この活性化または硫化の段階は、当業者に周知である方法を用いて、有利には、水素および硫化水素の存在中の硫黄性還元雰囲気(sulpho-reducing atmosphere)において行われる。
【0138】
本発明の方法の工程ii)の終わりに、得られた前記乾燥済み添加物含有触媒は、それ故に、有利には、硫化工程iii)を経るが、中間的な焼成工程は行われない。
【0139】
前記添加物含有触媒は、有利には、現場外または現場内で硫化される。工程a)における酸化物の形態にある触媒のために記載されたものと同一の硫化剤が用いられてよい。
【0140】
現場内で硫化が行われる場合、工程b)の触媒の硫化は、有利には、工程a)の触媒の硫化と同時に行われる。
【0141】
(実施例)
以下の実施例により、「酸化物の形態にある触媒/添加物含有触媒」の連結を用いる本発明による水素化処理方法は、添加物含有触媒のみを用いる方法と比較して改善された活性および改善された安定性を有することが実証される。
【0142】
(触媒A、B、CおよびDの調製)
以下の4種の触媒が調製された:
・ 触媒A:焼成NiMoP/アルミナ触媒
・ 触媒B:焼成CoMoP/アルミナ触媒
・ 触媒C:酢酸およびコハク酸ジメチルで補給された(後含浸)NiMoP/アルミナ触媒
・ 触媒D:クエン酸で補給された(共含浸)CoMoP/アルミナ触媒
(担体の調製)
超微細平板状ベーマイトからなるマトリクスまたはアルミナゲルが用いられた。Condea Chemie GmbHによって販売されたものである。このゲルは、66%硝酸を含有する水溶液と混合され(乾燥ゲルの重量(g)当たり7重量%の酸)、次いで、15分にわたって混合された。この混合の終わりに、得られたペースト状物は、1.6mmに等しい径を有する円筒状のオリフィスを有するダイ中に通された。押出物は、次いで、120℃で終夜乾燥させられ、乾燥空気の重量(kg)当たり水50gを含有する湿潤空気中、600℃で2時間にわたって焼成された。それ故に、担体の押出物が得られた。このものの比表面積は、300m/gであった。X線回折分析により、担体は、低結晶性の立方晶系ガンマアルミナのみからなることが表された。
【0143】
(触媒A:焼成NiMoP/アルミナ触媒)
ニッケルをベースとする触媒Aの場合、ニッケル、モリブデンおよびリンが、押出物の形態にある上記に記載されたアルミナ担体に加えられた。含浸溶液は、リン酸水溶液中に酸化モリブデンおよびヒドロキシ炭酸ニッケル(酸化ニッケルの前駆体)を高温溶解させることによって調製された。これは、最終触媒における乾燥物の量に対するニッケルおよびモリブデンの酸化物の重量%としておよび無水リン酸の重量%として表される約4/22/5の配合を生じさせることを目的としたものである。乾式含浸の後、押出物は、水飽和雰囲気中で8時間にわたって熟成させられ、次いで、それらは、90℃で終夜乾燥させられた。2時間にわたる450℃での焼成の結果、触媒Aが得られた。
【0144】
触媒Aの最終組成(酸化物の形態で表される)は、以下の通りであった:MoO=22.0±0.2(重量%)、NiO=4.1±0.1(重量%)およびP=5.0±0.1(重量%)。
【0145】
(触媒B:焼成CoMoP)
コバルトをベースとする触媒Bの場合、押出物の形態にある上記に記載されたアルミナ担体にコバルト、モリブデンおよびリンが加えられた。含浸溶液は、リン酸水溶液中に酸化モリブデンおよび炭酸コバルトを高温溶解させることによって調製された。これは、最終触媒における乾燥物の量に対するコバルトおよびモリブデンの酸化物の重量%としておよび無水リン酸の重量%として表される約4/22/5の配合を生じさせることを目的としたものである。乾式含浸の後、押出物は、水飽和雰囲気中、8時間にわたって熟成させられ、次いで、それらは、90℃で終夜乾燥させられた。450℃での2時間にわたる焼成の結果、触媒Bが得られた。
【0146】
触媒Bの最終組成(酸化物の形態で表される)は、以下の通りであった:MoO=22.0±0.2(重量%)、CoO=4.1±0.1(重量%)およびP=5.0±0.1(重量%)。
【0147】
(触媒C:酢酸およびコハク酸ジメチル(dimethyl succinate:DMSU)で補給されたNiMoP/アルミナ触媒)
ニッケルをベースとする触媒Cの場合、押出物の形態にある上記に記載されたアルミナ担体にニッケル、モリブデンおよびリンが加えられた。含浸溶液は、リン酸水溶液中に酸化モリブデンおよびヒドロキシ炭酸ニッケルを高温溶解させることによって調製された。これは、最終触媒の乾燥物の量に対するニッケルおよびモリブデンの酸化物の重量%としておよび無水リン酸の重量%として表される約5/25/6の配合を得ることを目的としたものである。乾式含浸の後、押出物は、水飽和雰囲気中、8時間にわたって熟成させられ、次いで、それらは、90℃で終夜乾燥させられた。触媒Cのための乾燥済み含浸担体は、次いで、コハク酸ジメチル(DMSU)および酢酸(純度75%)の混合物を含有する溶液の乾式含浸によって補給された。モル比は、以下の通りであった:DMSU/Mo=0.85モル/モル、DMSU/酢酸=0.5モル/モル。次に、触媒は、空気中、3時間にわたる20℃での熟成工程を経た後、フラッシュ床タイプのオーブンにおいて、120℃で3時間にわたって乾燥させられた。
【0148】
触媒Cの最終組成(酸化物の形態で表される)は、それ故に、以下の通りであった:MoO=25.1±0.2(重量%)、NiO=5.1±0.1(重量%)およびP=6.0±0.1(重量%)。
【0149】
(触媒D:クエン酸で補給されたCoMoP/アルミナ触媒)
コバルトをベースとする触媒Dの場合、押出物の形態にある上記に記載されたアルミナ担体にコバルト、モリブデンおよびリンが加えられた。含浸溶液は、リン酸水溶液中に酸化モリブデンおよび水酸化コバルトおよびクエン酸を高温溶解させることによって調製された。これは、最終触媒の乾燥物の量に対するコバルトおよびモリブデンの酸化物の重量%としておよび無水リン酸の重量%として表される約4/22/5の配合を得ることを目的としたものである。モリブデンに対するモル比として表される、クエン酸の量は、次の通りであった:クエン酸/Mo=0.4モル/モル。乾式含浸の後、押出物は、水飽和雰囲気中、8時間にわたって熟成させられ、次いで、それらは、90℃で終夜乾燥させられ、次いで、フラッシュ床タイプのオーブン中、140℃で3時間にわたって乾燥させられた。
【0150】
触媒Dの最終組成(酸化物の形態で表される)は、それ故に、以下の通りであった:MoO=22.4±0.2(重量%)、CoO=4.1±0.1(重量%)およびP=5.0±0.1(重量%)。
【0151】
(直留ディーゼル/LCOの混合物の水素化処理における触媒A、B、CおよびDの種々の連結の評価)
用いられる供給原料は、常圧蒸留から得られたディーゼル(直留)70体積%と285℃のWATを有するコーカーガス30体積%との混合物であった。供給原料の特徴は、以下の通りであった:密度(15℃)0.8486、硫黄1.06重量%、窒素410重量ppm、塩基性窒素200重量ppm、芳香族化合物(UV)29重量%。
【0152】
・ 模擬蒸留
− IP: 150℃
− 5%: 200℃
− 10%: 220℃
− 50%: 283℃
− 70%: 307℃
− 90%: 337℃
試験は、固定フラッシュ床を有する等温試験反応器において行われ、流体は、底部から頂部に移動した。反応器は、触媒A、B、CおよびDの種々の連結を評価するために2個の触媒帯域を含んでいた。供給原料は、最初に、第1の触媒が装填された第1の帯域上を、次いで、第2の触媒が装填された第2の帯域上を通過した。
【0153】
実施例1(本発明に合致しない)によると、2個の触媒帯域の全体(体積の100%)が添加物含有触媒(触媒C)を含有していた。
【0154】
実施例2および3(本発明に合致する)によると、第1の帯域は、焼成触媒(触媒AまたはB:体積の30%)で装填され、次いで、第2の帯域は、添加物含有触媒(触媒C:体積の70%)で装填された。
【0155】
実施例4(本発明に合致しない)によると、2個の帯域は、添加物含有触媒(触媒D:体積の30%、次いで、触媒C:体積の70%)で装填された。
【0156】
実施例5(本発明に合致しない)によると、第1の帯域は、添加物含有触媒(触媒C:体積の70%)で装填され、次いで、第2の帯域は、焼成触媒(触媒A:体積の30%)で装填された。
【0157】
ディーゼルに2重量%のジメチルジスルフィドが加えられたものにより加圧された装置中の350℃での現場内硫化の後、水素化脱硫試験が、以下の操作条件下に行われた:全圧:5MPa(50バール)、H/供給原料の比:380L/LおよびHSV:1.5h−1
【0158】
温度は、反応器出口において硫黄含有率10ppmを得るように調節された。以下の表は、触媒A、B、CおよびDの種々の連結について、硫黄含有率10ppmを得るのに必要な温度を示す。高い触媒活性は、低い温度T1によって表される。高い安定性は、操作期間(この場合、1000時間)の後に、低い温度T2によって表される。
【0159】
結果は、明らかに、「酸化物の形態にある触媒/添加物含有触媒」の連結(実施例2および3)が、「添加物含有触媒」のみの連結(実施例1および4)または「添加物含有触媒/酸化物の形態にある触媒」の連結(実施例5)より高い触媒活性およびより高い安定性を得るために用いられ得ることを示す。
【0160】
【表1】
【0161】
実施例2、3および4の場合において、第1の帯域の水素化脱窒(hydrodenitrogenation:HDN)のための値(%)は、以下の通りであった;条件は、上記に言及された通りであった:
・ 触媒A(焼成NiMoP):HDN(%)=70%、残留窒素含有率(全体)は、150ppm程度のものであり、主として、非塩基性のカルバゾール種の形態にあった;
・ 触媒B(焼成CoMoP):HDN(%)=67%
・ 触媒C(DMSU/酢酸で補給されたNiMoP):HDN(%)=63%
・ 触媒D(クエン酸で補給されたCoMoP):HDN(%)=58%。
【0162】
焼成触媒(触媒AおよびB)は、添加物含有触媒(触媒CおよびD)より強度のHDNを行うために用いられ得ることが観察されるだろう。