特許第6850544号(P6850544)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6850544
(24)【登録日】2021年3月10日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】印刷機
(51)【国際特許分類】
   B41F 15/06 20060101AFI20210322BHJP
   B41F 15/08 20060101ALI20210322BHJP
   B41F 33/00 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   B41F15/06
   B41F15/08 302B
   B41F33/00 630
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-72536(P2016-72536)
(22)【出願日】2016年3月31日
(65)【公開番号】特開2017-140817(P2017-140817A)
(43)【公開日】2017年8月17日
【審査請求日】2019年3月25日
(31)【優先権主張番号】特願2016-22828(P2016-22828)
(32)【優先日】2016年2月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】392021344
【氏名又は名称】株式会社桜井グラフィックシステムズ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】酒井 章
(72)【発明者】
【氏名】井戸 豊
【審査官】 大浜 登世子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−290549(JP,A)
【文献】 実開平03−031241(JP,U)
【文献】 特開平07−323516(JP,A)
【文献】 特開2003−089190(JP,A)
【文献】 特開平11−240130(JP,A)
【文献】 特開2014−162036(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 15/06
B41F 15/08
B41F 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷機フレームに収容されている印刷機構を上方から包囲するカバーが備えられた印刷機において、
前記カバーは、前記印刷機フレームの幅方向両側に立設される支持柱と、前記支持柱の上端部間に架設され、下側が開放された内部空間を有する梁部材と、前記支持柱を挟むように前記印刷機フレームの幅方向両側の上端に支持され、前記印刷機構を上方から覆って覆蓋状態となるカバーユニットと、前記梁部材の下側の開放部を覆うように前記支持柱及び前記梁部材の側壁に設けられる閉塞板と、前記閉塞板と前記カバーユニットとの間の開放部を塞ぐように前記カバーユニットの上面に設けられる箱状の閉塞部材と、から構成され、
前記梁部材の上面中央部には、前記カバー内のエアを吸引するためのダクトを接続する接続部が設けられている印刷機。
【請求項2】
前記印刷機構がスクリーン印刷機構であり、前記梁部材には、前記接続部に向かってエアをガイドするためのガイド面が形成されている請求項1に記載の印刷機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーン印刷機等の印刷機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、スクリーン印刷機が開示されている。この特許文献1のスクリーン印刷機においては、スクリーンの枠を有する印刷機構が設けられ、その印刷機構の上部を覆うカバーが設けられている。
【0003】
ところで、印刷機、特にスクリーン印刷機においては、印刷機構内のインク量が多く、かつ、そのインクがスクリーン上においてスキージによって広げられるため、インクから大量の揮発性物質が発生される。この場合、特許文献1のように、印刷機構の上方にカバーが設けられた構成であっても、揮発性物質の拡散を十分に抑制することはできず、作業環境の改善を有効に行ない得ない。このため、従来は、印刷機構の上方に吸引装置の吸引ダクトの開口部であるフードを位置させて、大気とともに揮発性物質を吸引させるようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−290549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のダクトを設けた構成では、印刷機構とダクトのフードとの間に、周囲に開放された空間が存在するため、かなりの量の揮発性物質がダクトに吸引されることなく、印刷機の周囲に漂う結果となり、作業環境の改善には不十分である。また、揮発性物質の吸引量を多くするために、ダクトの開口部を印刷機構に近づけたり、フードとして大面積のものを用いたりすると、そのフードに作業者の頭が当たったりして、スクリーン印刷機を取り扱う作業の邪魔になるものである。そして、このように、ダクトのフードを印刷機構に近づけたり、フードとして大きなものを用いたりしても、揮発性物質の拡散防止を有効に行ない得るものではなかい。しかも、揮発性物質の吸引量を多くするために、吸引装置として、大パワーのものを用いる必要があって、電力消費量が多大になるばかりでなく、吸引装置の運転騒音も大きくなって、作業環境をさらに悪化させる結果となる。
【0006】
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、作業環境の改善を実現できる印刷機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明においては、印刷機構を上方から覆うカバーが備えられた印刷機において、前記カバーには、そのカバー内のエアを吸引するためのダクトを接続するようにした接続部を備えたことを特徴とする。
【0008】
前記の構成においては、カバー内のエアが接続部からカバー外の空間を経ることなく直接吸引される。従って、揮発性物質がカバー外にほとんど漏洩することなく、吸気装置によって吸引される。このため、インクの揮発性物質が印刷機の周囲に拡散されることを抑制できる。しかも、印刷機構の上方にダクトのフードを設ける必要がないため、印刷機構の上方を開放して、作業を行ないやすくすることができる。しかも、エアを余分に吸引する必要がないため、エア吸引のための消費電力を少なくできるとともに、運転騒音を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、インクの揮発性物質が印刷機の周囲に拡散されることを抑えることができて、作業環境を改善できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】スクリーン印刷機の斜視図。
図2】カバーユニットを示す平面図。
図3】カバーユニット及び吸気ユニットを示す側面図。
図4】印刷機構を示す簡略図。
図5】吸気ユニットを示す背面図。
図6】吸気ユニットを示す正面図。
図7】スクリーン印刷機を示す斜視図。
図8】スクリーン印刷機を示す正面図。
図9】スクリーン印刷機を示す断面図。
図10】排気部を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態を図1図6の図面に基づいて説明する。
図1に示す印刷機フレーム21の前後の一対の側壁部211間には、印刷胴(図示しない)が回転可能に支持されている。そして、印刷胴の間欠回転にともない、印刷シート(図示しない)が一方向に間欠搬送される。図3及び図4に示すように、前記印刷胴の上方に位置するように、両側壁部211の上部間には支持枠22が左右に移動可能に支持されている。支持枠22の内部にはスクリーン23が張設されている。
【0012】
図1に示すように、印刷機フレーム21の両側壁部211の上端面には支持柱24が立設され、それらの支持柱24の上端間には梁部材25が架設されている。図4に示すように、両支持柱24間にはスキージ26及びドクター27が支持されている。このスキージ26及びドクター27は、支持枠22の移動領域の上部側において、印刷胴と対応して配置されている。そして、支持枠22の往復移動タイミングと同期してスキージ26及びドクター27が各別に昇降され、印刷胴上の印刷シートに対してスクリーン印刷が行なわれる。印刷胴,スクリーン23を有する支持枠22,スキージ26及びドクター27などによりスクリーン印刷機構(以下、単に印刷機構という)28が構成されている。
【0013】
図2及び図3に示すように、前記支持柱24の左右両側において、両側壁部211の上端にはガイドレール31が敷設されている。そのガイドレール31には、第1カバー32がその両側の車輪33において移動案内される。第1カバー32と隣接するように、側壁部211には、スライドレール34を介して第2カバー35が第1カバー32の移動方向と同方向に移動可能に支持されている。第1カバー32と第2カバー35との間には、スライドレール36が介在されている。第1カバー32と、第2カバー35とにより、左右両側のテレスコ状のカバーユニット37が構成されている。
【0014】
そして、図1に実線で示すように、第2カバー35が第1カバー32内に収容されることなく、カバーユニット37が左右方向に伸長された状態において、カバーユニット37は、前記印刷機構28を上方から覆う覆蓋状態となる。図2に2点鎖線で示すように、第2カバー35が移動することなく、第1カバー32が第2カバー35上に重なった状態においては、印刷機構28の上方が開放された状態となる。図1に2点鎖線で示すように、第2カバー35に第1カバー32が重なるとともに、両カバー32,35が印刷機フレーム21の外部側に移動した状態においては、印刷機構28の上部が全面的に開放される。
【0015】
図3及び図6に示すように、第1カバー32の後ろ側の側壁321には通気口41が形成されている。一方、印刷機フレーム21の後ろ側の側壁部211上には、吸気ユニット42が脚43を介して搭載されている。その吸気ユニット42は、風箱44内にモータ(図示しない)及びファン(図示しない)を内蔵したブロワ45を備え、風箱44には、第1カバー32側に位置する開口としての吸気口46と、ダクト47が接続される接続部としての接続口48とが備えられている。そして、前記第1カバー32が閉鎖位置に配置されたときに、前記通気口41と吸気口46とがシール49内の狭い空間を介して連通される。この状態で、ブロワ45が作動されると、カバーユニット37のエアが通気口41及び吸気口46を介して風箱44内に吸引され、接続口48及びダクト47を介して排気される。
【0016】
前記カバーユニット37の移動領域の両側及び前記支持柱24の上端部間には、手摺51,52がそれぞれ設けられ、作業者が片手で手摺51,52を把持することにより、印刷機構28の清掃などの作業を安定姿勢で行うことができるようになっている。なお、側壁部211の上端にはカバー53が着脱可能に設けられ、手摺51の使用が不要なときに、このカバー53により手摺51が覆われる。
【0017】
前部側の支持柱24の前面には、各種の操作ボタンなどを有する操作盤61と、その操作盤61の上方に位置し、各種の情報を表示する液晶パネルよりなる表示装置62とが設置されている。
【0018】
前記のように構成された印刷機は、以下のように作用する。
スクリーン印刷機の稼働時には、カバーユニット37が印刷機構28を上方から覆う覆蓋位置に配置される。
【0019】
このとき、スクリーン23上などのインクからの揮発性物質がカバーユニット37内に漂うが、このカバーユニット37内の揮発性物質は、吸気ユニット42によって吸引されて、ダクト47を介して外部に排気される。従って、作業者の周囲に多量の揮発性物質が漂うようなことを回避できる。
【0020】
印刷作業を終了して、印刷機構28のメンテナンスなどの作業を行なう場合は、少なくとも第1カバー32が開放位置に移動される。このような場合は、第1カバー32の通気口41が吸気ユニット42の吸気口46との連通位置から移動される。
【0021】
従って、本実施形態においては、以下の効果がある。
(1)印刷機構28がカバーユニット37によって覆われ、そのカバーユニット37内のエアが吸気ユニット42により吸引されて、ダクト47を通して排出される。従って、印刷機構28に存在するインクからの揮発性物質を含むエアが印刷機の外部に漂うことを抑えることができて、作業環境を改善することができる。
【0022】
(2)揮発性物質を含むエアを空間を介して吸引するためのフードが印刷機構28の上方に設けられる必要はない。従って、スクリーン印刷機の上方に、作業の邪魔になるフードが存在しないため、印刷機を取り扱う作業を円滑に行なうことができる。
【0023】
(3)吸気ユニット42は、印刷機の周囲のエアを吸引して、揮発性物質を除去するものではなく、カバーユニット37内のエアを吸引すればよい。従って、吸気ユニット42として、大パワーのものは不要であり、消費電力を少なくできるとともに、エア吸引にともなう騒音を小さくできて、作業環境を改善できる。
【0024】
(4)第1カバー32が印刷機構28を覆う位置に配置されれば、第1カバー32の通気口41が吸気ユニット42の吸気口46に連通される。従って、吸気ユニット42を第1カバー32や第2カバー35上に搭載する必要がなく、第1,第2カバー32,35の大重量化を回避できて、両カバー32,35の開閉を小さな力で行なうことができる。
【0025】
(5)支持柱24が、表示装置62や操作盤61の支持部をも形成するため、印刷機の構成が簡単になるとともに、表示装置62が見やすくなり、さらに操作盤61上のボタンなどの操作が容易になる。
【0026】
(第2実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態を図7図10の図面に基づいて説明する。この第2実施形態においては、第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0027】
第2実施形態においては、カバーユニット37の側部の吸気ユニット42は設けられていない。
すなわち、第2実施形態においては、図7及び図9に示すように、両支持柱24間における梁部材25の下側の開放部を塞ぐように、支持柱24及び梁部材25の左右両側に閉塞板71が設けられている。また、その閉塞板71とカバーユニット37の第1カバー32との間の開放部を塞ぐように、第1カバー32の上面には、箱状の閉塞部材72が取り付けられている。この閉塞部材72は、側板721と、その側板721の前後両端に位置する端板722と、側板721の上端に位置する上板723とを備えている。なお、端板722には、手摺52との干渉を避けるための凹部73が形成されている。側板721と第1カバー32の上面との間にはハンドル74が取り付けられている。
【0028】
前記梁部材25の中央部には排気口81が形成され、その上端開口には接続部としての接続口82が設けられている。そして、この接続口82に排気ダクト83が接続されている。梁部材25の内側の上面には、前記排気口81に向かって上昇傾斜するガイド面84が形成され、このガイド面84によってエアが排気口81に向かってガイドされる。
【0029】
第2実施形態において、支持柱24,梁部材25,閉塞部材72及び閉塞板71は、前記カバーユニット37とともに、印刷機構28を上方から覆うカバーを構成している。
従って、印刷機構28の上方のエアは、前記第1実施形態と同様に、カバーユニット37内に上昇される。そして、そのカバーユニット37内のエアは、閉塞部材72及び閉塞板71によって拡散が抑えられながら、支持柱24,梁部材25,閉塞部材72及び閉塞板71によって形成された排気路を通り、ガイド面84によって案内されて排気口81に至る。そして、そのエアは、排気口81から排気ダクト83を介して外部に排出される。従って、インクからの揮発性物質が印刷機の周囲に漂うことを抑えることができる。
【0030】
第2実施形態においては以下の効果がある。
(6)エアが両カバーユニット37に挟まれた位置から排気されるため、両カバーユニット37内のエアの吸引と排出とを効率よく行なうことができる。
【0031】
(7)支持柱24と梁部材25とを利用して排気路を構成しているため、排気路のための部品点数が少なくなり、構成が簡単になる。
(8)高いところに位置する梁部材25の上面位置の接続口82に排気ダクト83が接続されるため、排気ダクト83の長さを短くできるとともに、その排気ダクト83が邪魔になることを回避できる。
【0032】
(9)梁部材25の内側のガイド面84がエアをガイドするようになっているため、エアを排気口81に向かって円滑に案内できる。
(10)カバーユニット37の上面と閉塞部材72とを利用して、カバーユニット37を開閉するためのハンドル74を設けることができる。
【0033】
(変更例)
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、以下のような態様で具体化してもよい。
【0034】
・本発明をスクリーン印刷機以外の印刷機、例えばオフセット印刷機において具体化すること。
・第1実施形態において、吸気ユニット42が接続される通気口41を第1カバー32の上板部に設けること。
【0035】
・第1実施形態において、吸気ユニット42をカバーユニット37上に設けること。
・第2実施形態において、排気口81及び接続口82を梁部材25の前部側あるいは後部側の端部に設けること。この場合も、ガイド面84を排気口81に向かって上昇傾斜させる必要がある。
【0036】
・第1,第2実施形態において、カバーユニット37のカバーを1または3以上の複数にすること。
(他の技術的思想)
前記実施形態から把握される技術的思想は以下の通りである。
【0037】
(A)前記カバーを、印刷機構を上方から覆う覆蓋位置と、その覆蓋位置から退避して、印刷機構の上方を開放する開放位置との間を移動可能にし、前記接続部は、印刷機フレームに搭載された吸気ユニットに設けられ、前記カバーが前記覆蓋位置にあるときにそのカバー側壁の吸気口と対向される請求項2に記載の印刷機。
【0038】
(B)前記吸気ユニットがカバーの側面の通気口に接続されるようにした前記技術的思想(A)項に記載の印刷機。
(D)印刷機フレームの両側にそれぞれ支持柱が設けられるとともに、両支持柱の上端部間に梁部材が架設され、両支持柱と梁部材とによって包囲された空間の両側を閉塞して、その空間を排気路とし、前記梁部材の上面に前記接続部を設けた請求項1または2に記載の印刷機。
【0039】
(E)梁部材の下側には、前記接続部に向かってエアをガイドするためのガイド面を設けた前記技術的思想(D)項に記載の印刷機。
【符号の説明】
【0040】
21…印刷機フレーム、25…梁部材、28…スクリーン印刷機構、32…第1カバー、35…第2カバー、37…カバーユニット、46…吸気口、48…排気口、81…排気口、82…接続口、84…ガイド面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10