(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る光測距装置の概略構成を示している。この光測距装置は、レーザ投光部10、二次元光スキャナ(反射角度可変ミラー)20、レーザ受光部30、距離計測部40、及び制御部50等を備えている。レーザ投光部10は、発光素子(光源)としてレーザ11、このレーザ11を駆動するレーザドライバ12、投光ビームを放射する投光光学系13、及びこの投光光学系13から放射されるレーザの投光タイミングをモニタする発光モニタ14を含んで構成されている。
【0010】
投光光学系13から放射されるレーザ11の投光ビームは、投受光分離器15を介して二次元光スキャナ20に照射される。二次元光スキャナ20は、スキャンミラー21を有する可動部が互いに直交する2つの方向に揺動可能に形成されており、ミラー面に入射される投光ビーム(パルス光)を対象領域内で二次元走査、より具体的にはリサージュ走査することが可能に構成されている。
【0011】
このような二次元光スキャナ20としては、例えば、本出願人の特許第2722314号公報に記載の二次元走査型の半導体ガルバノミラーを用いることができる。この二次元ガルバノミラーは、2つの駆動コイル(内側駆動コイルと外側駆動コイル)にそれぞれ流れる各電流(交流電流)と、1対または2対の永久磁石による静磁界とによって2つの可動部(外側可動部及び内側可動部)にローレンツ力が作用し、その結果、内側可動部が二次元方向に揺動する。内側可動部が揺動することによって、ミラー面に入射される投光ビームが対象領域内でリサージュ走査される。
【0012】
なお、リサージュ走査を実現するスキャンミラー21として、2つの一次元ガルバノミラーを使用し、2つの一次元ガルバノミラーを、それぞれのミラーを有する可動部が互いに直交する方向に揺動するよう配置することで、リサージュ走査を行うようにしてもよい。
【0013】
二次元光スキャナ20からの投光ビームで測定対象物が走査されると、この測定対象物で反射された光(受光ビーム)は、ミラー面に入射されて投受光分離器15によりレーザ受光部30に導かれる。レーザ受光部30は、受光素子(光検出器)としてフォトダイオードやフォトトランジスタなどのフォトセンサ31、太陽光等の背景光(外乱光)を低減する光学的バンドパスフィルタ機能を有する受光光学系32、及びフォトセンサ31の出力を増幅するアンプ33を備える。このアンプ33は、フォトセンサ31で光電変換された信号から外乱光の周波数成分を除去するフィルタ機能(RFフィルタ)を有する。
【0014】
フォトセンサ31の光電面には、信号光以外の入射光があり、この光はノイズ(外乱光ノイズ)となる。この外乱光ノイズを除去するために、レーザ受光部30は、光学的並びに電気的な処理機能を備えている。光学的には、受光光学系32に、レーザを投光している方向のみに狭角の受光視野を有する系(投受同軸光学系の場合)と、レーザ波長に対応した光学的バンドパスフィルタを設ける。電気的には、アンプ33に、外乱光の強度変調周波数成分に対応し、信号光成分のみ透過する電気的フィルタを設けることができる。
【0015】
アンプ33の出力信号は、距離計測部40に設けられた立ち上がりエッジ検出回路41、共振回路42、及び光量検出回路43にそれぞれ供給される。距離計測部40には更に、計時部44とA/D変換器45が設けられている。立ち上がりエッジ検出回路41は、受光パルスの立ち上がりエッジを検出することによりストップタイミングを検出する。この回路41は、受光パルスのレベルが予め設定した閾値を越えた時点をストップタイミングとして検出するものであり、受光パルスが高レベルの領域(近距離の測定領域)においては、精度の良い測距が可能である。
【0016】
また、共振回路42は、受光パルスのゼロクロス点を検出することにより反射パルスのストップタイミングを検出する。この共振回路42は、受光パルスに含まれる特定周波数成分で共振する回路を用いて特定周波数成分信号を抽出し、抽出した信号波形のゼロクロス点をストップタイミングとして検出するものである。共振回路42では、受光パルスが低レベルの領域(遠距離の測定領域)においては、算出距離と実際の距離とは略正比例の関係にあり精度の良い測距が可能である。
【0017】
そして、発光モニタ14で検出したレーザの投光タイミングをスタートタイミング、立ち上がりエッジ検出回路41で検出した立ち上がりエッジと共振回路42で検出したゼロクロス点をそれぞれストップタイミングとして計時部44に入力し、レーザの投光タイミングから反射光の受光タイミングまでの時間を計時する。計時部44の出力信号とA/D変換器45の出力信号はそれぞれ、CPU(Central Processing Unit)やマイクロコンピュータ等からなる制御部50に供給される。
【0018】
制御部50は、距離値と光量値を算出するとともに健全性を判定する検知判定部51、レーザの投光制御を行う投光制御部52、外部とのインターフェイスを行う情報入出力部53、スキャナの制御を行うスキャナ制御部54、スキャナドライバ55及びフィルタ56等を備えている。検知判定部51は、光量検出回路43で検出した受光パルスの光量(受光レベル)が、予め設定した受光レベルより小さいときは共振回路42から出力されるストップタイミングを用いて測距対象物までの距離を算出し、予め設定した受光レベルより高いときは立ち上がりエッジ検出回路41から出力されるストップタイミングを用いて測距対象物までの距離を算出する。このように、立ち上がりエッジ検出回路41による測距と共振回路42による測距とを組み合わせることによって、広いダイナミックレンジを確保できる。
【0019】
検知判定部51で算出された距離値と、光量検出回路43で検出されA/D変換器45でデジタルデータに変換された光量値は、投光制御部52の制御により情報入出力部53を介して計測データ(判定結果)として外部に出力される。この投光制御部52は、レーザドライバ12に投光タイミング制御信号を供給して投光タイミングの制御を行う。投光制御部52は、リサージュ走査の対象領域内に、異なる複数の照射パターンを生成するためのデータが格納されたタイミングテーブル52aを備えている。
【0020】
タイミングテーブル52aには、リサージュ走査における走査起点からの経過時間に基づいて投光タイミングを制御するデータが格納されており、本例では、
図2(a)に示すような行列状配置の照射パターンを生成するデータと、
図2(b)に示すような横方向に千鳥配置の照射パターンを生成するデータと、
図2(c)に示すような縦方向に千鳥配置の照射パターンを生成するデータとが格納されている。そして、タイミングテーブル52aに格納されたデータを、外部からの指示、タイマーの出力、及び測距判定結果の何れかにより切り替えて読み出すようになっている。
【0021】
また、スキャナ制御部54は、スキャナドライバ55に内軸駆動信号と外軸駆動信号を供給し、このスキャナドライバ55で二次元光スキャナ20の内軸と外軸を制御して投光ビームで測距対象物の走査を行う。そして、二次元光スキャナ20からは、フィルタ56を介してスキャナ制御部54にミラー位置信号(サーチコイル)が供給されるように構成されている。
【0022】
次に、上記のような構成において、
図3乃至
図7により動作を説明する。
図3のフローチャートに示すように、まず、測距開始か否かが判定され(ステップS1)、測距開始が指示されるとフレーム毎の処理が実行される(ステップS2)。測距開始は、外部からの指示、タイマーにより所定時間経過したことが検知された場合、あるいはタイマーにより所定の時間間隔で実行など、様々な方法が採用できる。
ステップS2で測距開始でないと判定されると、測距開始が指示されるまで待機する。
【0023】
次のステップS3では、タイミングテーブル52aに格納されたデータを、フレーム毎に外部からの指示、タイマーの出力、及び測距判定結果の何れかにより切り替える。続いて画素毎(ステップS4)にタイミングテーブル52aから順次データを読み出して取得する(ステップS5)。
【0024】
例えば、二次元光スキャナ20のXとYの走査周波数比を「数:1」程度として走査すると、
図4に示すようなリサージュ軌跡となる(
図4では約「3:1」の場合を示す)。走査はリサージュ走査起点「0」から始まり、ポイントP1,P2,P3,…のタイミングでレーザ放射を実行する。
起点「0」からポイントP1までの時間t1、ポイントP1からポイントP2までの時間t2、ポイントP2からポイントP3までの時間t3、ポイントP3からポイントP4までの時間t4、…が、タイミングテーブル52aに格納されているデータを用いて制御される。
【0025】
タイミングテーブル52aには、
図5(a)に示すような「次のレーザ放射点までの時間を表すデータ」と、
図5(b)に示すような「画素の座標を表すデータ」が格納されており、リサージュ走査における走査起点「0」からの経過時間に基づいて投光タイミングが制御され、各ポイント間の時間が経過するとレーザを放射する(ステップS6)。
このような画素毎のレーザ放射(ステップS7)がフレーム毎に実行されて測定対象物までの距離を測定する(ステップS8)。
【0026】
上記のような測距動作において、ステップS3のタイミングテーブル52aの選択時に、例えば
図6(a),(b)に示すように、行列状配置の照射パターンを生成するデータを選択して測定対象物22までの距離を測定した後、横方向に千鳥配置の照射パターンを生成するデータを選択して測定対象物22までの距離を測定する。すると、
図6(a)に示したような行列状配置の照射パターンでは検知できない、横方向に細長い測定対象物であっても、実質的に垂直方向の画素の縦方向のピッチを狭くしたのと等価になり、
図6(b)に示したように測定対象物22を検知でき、垂直方向の分解能を向上できる。
この際、光測距装置の駆動周波数、駆動信号の位相差、揺動振幅を変更する必要がないので、変更速度が機械的な応答速度に制限されずに細い物体を検知可能である。
【0027】
また、例えば
図7(a),(b)に示すように、行列状配置の照射パターンを生成するデータを選択して測定対象物22までの距離を測定した後、縦方向に千鳥配置の照射パターンを生成するデータを選択して測定対象物22までの距離を測定する。これによって、
図7(a)に示したような行列状配置の照射パターンでは検知できない、縦方向に細長い測定対象物であっても、実質的に水平方向の画素の縦方向のピッチを狭くしたのと等価になり、
図7(b)に示したように測定対象物22を検知でき、垂直方向の分解能を向上できる。
この場合にも、光測距装置の駆動周波数、駆動信号の位相差、揺動振幅を変更する必要がないので、変更速度が機械的な応答速度に制限されずに細い物体を検知可能である。
【0028】
更に、行列状配置の照射パターンを生成するデータを選択して測定対象物22までの距離を測定した後、横方向に千鳥配置の照射パターンを生成するデータを選択して測定対象物22までの距離を測定し、更に縦方向に千鳥配置の照射パターンを生成するデータを選択して測定対象物22までの距離を測定するようにしても良い。このようにすると、行列状配置の照射パターンでは検知できない、横方向に細長い測定対象物と縦方向に細長い測定対象物の両方を検知でき、垂直方向と水平方向の両方の分解能を向上できる。
従って、例えばホームドア用支障物検知センサとして用いる場合に、レーザの走査軌跡を密にすることなく、傘や杖などの細い物体も検知することができる。
【0029】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々変形して実施することが可能である。例えば、タイミングテーブル52aに、行列状配置の照射パターンを生成するデータ、横方向に千鳥配置の照射パターンを生成するデータ、及び縦方向に千鳥配置の照射パターンを生成するデータを格納する例について説明したが、これらのパターンに限られるものではなく、様々なパターンを適用可能である。リサージュ走査の対象領域内に、これらの照射パターンを所定の角度で回転させた照射パターンを生成するデータを格納して用いることもできる。
【0030】
また、二次元光スキャナ(例えばMEMS光スキャナ)を使った走査光学系を例に取って説明したが、リサージュ走査できれば、他の走査光学系を用いる場合にも同様に適用可能である。
更に、ホームドア用支障物検知センサとして用いる場合を例に取って説明したが、この用途に限られるものではない。
また、投光ビームと受光ビームの軸が一致した投光/受光同軸型について説明したが、この構成に限定されるものではなく、投光ビームと受光ビームの光路が異なっていても良いことはもちろんである。
【0031】
以上の実施形態で説明された回路構成や動作手順等については、本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものに過ぎない。従って本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。