(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6850583
(24)【登録日】2021年3月10日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】ソケット
(51)【国際特許分類】
G01R 31/26 20200101AFI20210322BHJP
G01R 1/067 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
G01R31/26 J
G01R1/067 C
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-208030(P2016-208030)
(22)【出願日】2016年10月24日
(65)【公開番号】特開2018-71991(P2018-71991A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年6月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006758
【氏名又は名称】株式会社ヨコオ
(74)【代理人】
【識別番号】100079290
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100136375
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 弘実
(72)【発明者】
【氏名】山本 次男
【審査官】
續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−047162(JP,A)
【文献】
特表2015−507198(JP,A)
【文献】
特開2015−125971(JP,A)
【文献】
特開2011−153915(JP,A)
【文献】
特開2009−250660(JP,A)
【文献】
特開2009−271005(JP,A)
【文献】
特開2010−38837(JP,A)
【文献】
特開2012−149927(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/26
G01R 1/067
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁支持体と、
前記絶縁支持体に並列支持された2つのコンタクトプローブと、を備え、
各コンタクトプローブは、
第1及び第2プランジャーと、
前記第1及び第2プランジャーを互いに離れる方向に付勢するスプリングと、
前記第1及び第2プランジャーの基端側、並びに前記スプリングを収容する導電性チューブと、を有し、
前記第1プランジャーは、自身の前記絶縁支持体からの抜けを防止するためのフランジ部を有し、
前記絶縁支持体は、前記2つのコンタクトプローブの前記フランジ部の間が空間となっていて、
前記絶縁支持体は、
各コンタクトプローブの前記第1プランジャーの先端側をガイドする2つの第1ガイド穴を有するリテーナと、
各コンタクトプローブの前記第2プランジャーの先端側をガイドする2つの第2ガイド穴を有するピンプレートと、
前記リテーナと前記ピンプレートとの間にあって各コンタクトプローブが貫通する2つの貫通穴を有するピンブロックと、を有し、
前記導電性チューブと前記第1プランジャーとの係合領域が、前記リテーナと前記ピンブロックとの間の空間に位置する、ソケット。
【請求項2】
前記導電性チューブの外径が前記フランジ部の外径よりも小さい、請求項1に記載のソケット。
【請求項3】
絶縁支持体と、
前記絶縁支持体に並列支持された2つのコンタクトプローブと、を備え、
各コンタクトプローブは、
第1及び第2プランジャーと、
前記第1及び第2プランジャーを互いに離れる方向に付勢するスプリングと、
前記第1及び第2プランジャーの基端側、並びに前記スプリングを収容する導電性チューブと、を有し、
前記第1プランジャー及び前記導電性チューブは一体にストローク動作するように相互に組み合わされ、
前記導電性チューブは、自身及び前記第1プランジャーの前記絶縁支持体からの抜けを防止するためのフランジ部を有し、
前記絶縁支持体は、前記2つのコンタクトプローブの前記フランジ部の間が空間となっていて、
前記絶縁支持体は、
各コンタクトプローブの前記第1プランジャーの先端側をガイドする2つの第1ガイド穴を有するピンブロックと、
各コンタクトプローブの前記第2プランジャーの先端側をガイドする2つの第2ガイド穴を有するピンプレートと、を有し、
前記導電性チューブと前記第2プランジャーとの係合領域が、前記ピンブロックと前記ピンプレートとの間の空間に位置する、ソケット。
【請求項4】
前記2つの第1ガイド穴間の距離が、前記2つの第2ガイド穴間の距離よりも小さい、請求項1から3のいずれか一項に記載のソケット。
【請求項5】
前記2つのコンタクトプローブが、前記第1プランジャーの先端側に向かって互いに近づくように斜めに傾いている、請求項4に記載のソケット。
【請求項6】
前記第1プランジャーは、先端に接触部を有する円柱部を有し、
前記円柱部の外周面よりも前記フランジ部が径方向外側に突出し、
前記絶縁支持体は、前記円柱部をガイドする、前記フランジ部よりも小径の丸穴を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載のソケット。
【請求項7】
前記第1プランジャーが検査対象物との接続用で、前記第2プランジャーが検査用基板との接続用である、請求項1から6のいずれか一項に記載のソケット。
【請求項8】
前記フランジ部は、前記第1プランジャーの長さ方向と垂直な断面が円形である、請求項1から7のいずれか一項に記載のソケット。
【請求項9】
前記フランジ部が、前記コンタクトプローブの最外周面を成している、請求項1から8のいずれか一項に記載のソケット。
【請求項10】
絶縁支持体と、
前記絶縁支持体に並列支持された2つのコンタクトプローブと、を備え、
各コンタクトプローブは、
第1及び第2プランジャーと、
前記第1及び第2プランジャーを互いに離れる方向に付勢するスプリングと、を有し、
前記第1プランジャーは、自身の前記絶縁支持体からの抜けを防止するためのフランジ部を有し、
前記絶縁支持体は、前記2つのコンタクトプローブの前記フランジ部の間が空間となっていて、
前記2つのコンタクトプローブの前記フランジ部の外周面間の間隔は、前記絶縁支持体による隔壁を設けることができない長さである、ソケット。
【請求項11】
絶縁支持体と、
前記絶縁支持体に並列支持された2つのコンタクトプローブと、を備え、
各コンタクトプローブは、
第1及び第2プランジャーと、
前記第1及び第2プランジャーを互いに離れる方向に付勢するスプリングと、
前記第1及び第2プランジャーの基端側、並びに前記スプリングを収容する導電性チューブと、を有し、
前記第1プランジャー及び前記導電性チューブは一体にストローク動作するように相互に組み合わされ、
前記導電性チューブは、自身及び前記第1プランジャーの前記絶縁支持体からの抜けを防止するためのフランジ部を有し、
前記絶縁支持体は、前記2つのコンタクトプローブの前記フランジ部の間が空間となっていて、
前記2つのコンタクトプローブの前記フランジ部の外周面間の間隔は、前記絶縁支持体による隔壁を設けることができない長さである、ソケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体集積回路等の被測定デバイスの検査に使用するソケットに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路等の検査対象物の検査を行う場合において、検査対象物と測定器側の検査用基板とを電気的に接続するために、複数のコンタクトプローブを絶縁支持体によって並列支持したソケットが使用される。
図7は、従来のケルビン測定用のソケットの一端の拡大断面図である。ケルビン測定とは、電流供給用プローブ及び電圧監視用プローブを検査対象物の電極、例えば電極バンプに当接させて電気的特性を測定するものである(必要に応じて下記特許文献2参照)。
【0003】
図7のソケットは、2つのコンタクトプローブ801を絶縁支持体900で並列支持した構成であり、コンタクトピッチP1は、次式で示される。
P1=A+(B×2)+(C×2)+(D×2) …式1
ただし、
A:絶縁支持体900の最小肉厚
B:絶縁支持体900とフランジ部812の側面との隙間(クリアランス)
C:フランジ部812と先端側円柱部824との半径差
D:先端側円柱部824の側面(隣の先端側円柱部824と最も距離が近い側面)から先端面の山の頂点までの距離
※Dの距離は、隣り合うコンタクトプローブ801同士を結ぶ方向に沿う距離である。先端側円柱部824の回転角度次第ではゼロになることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−149927号公報
【特許文献2】特開2008−45986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記式1において、一例として、A=40μm、B=10μm、C=15μm、D=0として計算すると、P1=90μmとなる。式1において、Cに対応するフランジ部812の出っ張りは、コンタクトピッチP1に直接影響しており、狭ピッチ化の妨げとなっている。なお、上記の長さA〜DのうちAとBは、設計上ゼロにすることは不可能である。
【0006】
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、その目的は、従来と比較してコンタクトピッチを狭めることの可能なソケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、ソケットである。このソケットは、
絶縁支持体と、
前記絶縁支持体に並列支持された2つのコンタクトプローブと、を備え、
各コンタクトプローブは、
第1及び第2プランジャーと、
前記第1及び第2プランジャーを互いに離れる方向に付勢するスプリングと、を有し、
前記第1プランジャーは、自身の前記絶縁支持体からの抜けを防止するためのフランジ部を有し、
前記絶縁支持体は、前記2つのコンタクトプローブの前記フランジ部の間が空間となっている。
【0008】
前記第1及び第2プランジャーの基端側、並びに前記スプリングを収容する導電性チューブを備え、前記導電性チューブの外径が前記フランジ部の外径よりも小さくてもよい。
【0009】
本発明のもう1つの態様は、ソケットである。このソケットは、
絶縁支持体と、
前記絶縁支持体に並列支持された2つのコンタクトプローブと、を備え、
各コンタクトプローブは、
第1及び第2プランジャーと、
前記第1及び第2プランジャーを互いに離れる方向に付勢するスプリングと、
前記第1及び第2プランジャーの基端側、並びに前記スプリングを収容する導電性チューブと、を有し、
前記第1プランジャー及び前記導電性チューブは一体にストローク動作するように相互に組み合わされ、
前記導電性チューブは、自身及び前記第1プランジャーの前記絶縁支持体からの抜けを防止するためのフランジ部を有し、
前記絶縁支持体は、前記2つのコンタクトプローブの前記フランジ部の間が空間となっている。
【0010】
前記絶縁支持体は、
各コンタクトプローブの前記第1プランジャーの先端側をガイドする2つの第1ガイド穴を有する第1絶縁支持体と、
各コンタクトプローブの前記第2プランジャーの先端側をガイドする2つの第2ガイド穴を有する第2絶縁支持体と、を有し、
前記2つの第1ガイド穴間の距離が、前記2つの第2ガイド穴間の距離よりも小さくてもよい。
【0011】
前記2つのコンタクトプローブが、前記第1プランジャーの先端側に向かって互いに近づくように斜めに傾いていてもよい。
【0012】
前記第1プランジャーは、先端に接触部を有する円柱部を有し、
前記円柱部の外周面よりも前記フランジ部が径方向外側に突出し、
前記絶縁支持体は、前記円柱部をガイドする、前記フランジ部よりも小径の丸穴を有してもよい
【0013】
前記第1プランジャーが検査対象物との接続用で、前記第2プランジャーが検査用基板との接続用であってもよい。
【0014】
前記フランジ部は、前記第1プランジャーの長さ方向と垂直な断面が円形であってもよい。
【0015】
前記フランジ部が、前記コンタクトプローブの最外周面を成してもよい。
【0016】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法やシステムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、従来と比較してコンタクトピッチを狭めることの可能なソケットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1(A)は、本発明の実施の形態1に係るソケット1の正断面図。
図1(B)は、
図1(A)の状態からソケット1を検査用基板9にセットした状態の正断面図。
図1(C)は、
図1(B)の状態から検査対象物8をソケット1にセットした状態の正断面図。
【
図3】本発明の実施の形態2に係るソケット2の正断面図。
【
図4】
図4(A)は、本発明の実施の形態3に係るソケット3の正断面図。
図4(B)は、
図4(A)の状態からソケット3を検査用基板9にセットした状態の正断面図。
図4(C)は、
図4(B)の状態から検査対象物8をソケット3にセットした状態の正断面図。
【
図6】本発明の実施の形態4に係るソケット4の正断面図。
【
図7】従来のケルビン測定用のソケットの一端の拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0020】
(実施の形態1)
図1(A)は、本発明の実施の形態1に係るソケット1の正断面図である。
図1(A)により、上下方向を定義する。ソケット1は、ケルビン測定用であり、絶縁支持体5によって並列支持された相互に同一構成の2本のコンタクトプローブ7の一方を電流供給用プローブ、他方を電圧監視用プローブとして使用する。
図1(A)は、コンタクトプローブ7が絶縁支持体5に対して上限位置にある状態を示している。
【0021】
絶縁支持体5は、第1絶縁支持体としてのリテーナ5a、ピンブロック5b、及び第2絶縁支持体としてのピンプレート5cの三部品(いずれも例えば樹脂成形体)を組み合わせたものである。リテーナ5aに形成された第1ガイド穴としての貫通穴5d、ピンブロック5bに形成された貫通穴5e、及びピンプレート5cに形成された貫通穴5fに、コンタクトプローブ7が貫通され、コンタクトプローブ7の姿勢を保持する。貫通穴5fの下端部は、第2ガイド穴としての小径穴部5gとなっている。貫通穴5d〜5fは、小径穴部5gも含め、いずれも丸穴であって、ドリルにより高い位置精度で形成可能である。リテーナ5aの貫通穴5dのピッチは、ピンブロック5bの貫通穴5eのピッチ及びピンプレート5cの貫通穴5fピッチよりも狭い。貫通穴5d間の隔壁5iの肉厚は、フランジ部12同士が接触しない範囲で最も小さい幅であり、
図7に示す従来例の該当部分の肉厚と比較して薄い。貫通穴5d〜5fは、コンタクトプローブ7を斜めにすることができるだけの余裕を持った内径寸法となっている。リテーナ5aとピンブロック5bとの間には、空間5hが設けられる。空間5hは、後述の第1プランジャー10のフランジ部12のストローク範囲を包含する上下方向長さを有する。
【0022】
コンタクトプローブ7は、第1プランジャー10と、第2プランジャー20と、導電性チューブ30と、スプリング35と、を有する。第1プランジャー10は、
図1(C)に示す検査対象物8との接続部品であり、銅又は銅合金等の導電性金属体からなる。第2プランジャー20は、
図1(C)に示す検査用基板9との接続部品であり、銅又は銅合金等の導電性金属体からなる。導電性チューブ30は、第1プランジャー10の基端側、第2プランジャー20の基端側、及びスプリング35を内部に収容する部品であり、銅又は銅合金等の導電性金属体からなる。スプリング35は、例えばピアノ線やステンレス線等の一般的な導体金属材質で形成されたコイルスプリングであり、第1プランジャー10及び第2プランジャー20を互いに離れる方向に付勢し、第1プランジャー10及び第2プランジャー20に対して検査対象物8及び検査用基板9との接触力を与える。検査対象物8は、例えば電極が所定間隔で配列された半導体集積回路であり、図示の場合、電極バンプ8aが所定間隔で配列されたものである。検査用基板9は、不図示の測定器側に接続される電極パッド9aを所定間隔で有するものである。
【0023】
第1プランジャー10は、先端側から順に、先端側円柱部11、フランジ部12、及び基端側円柱部13を有する。先端側円柱部11の先端は、ここでは八つ割り形状の接触部11aとされている。先端側円柱部11は、リテーナ5aの貫通穴5dを貫通し、貫通穴5dにガイドされる。フランジ部12は、貫通穴5dよりも大径であり、第1プランジャー10がリテーナ5aから上方に抜けるのを防止する。フランジ部12は、第1プランジャー10の長さ方向と垂直な断面が円形である。ここでは、フランジ部12は円柱形状である。フランジ部12の外周面は、コンタクトプローブ7の最外周面を成す。フランジ部12は、リテーナ5aとピンブロック5bとの間の空間5hに位置する。フランジ部12の下面は、導電性チューブ30の上端と係合(当接)する。基端側円柱部13は、導電性チューブ30の内側に位置する。基端側円柱部13は、長さ方向中間部に部分的に小径化されたくびれ部13aを有する。くびれ部13aは、導電性チューブ30の凸部30aと係合し、これにより第1プランジャー10と導電性チューブ30は一体にストローク動作するように相互に組み合わされる。
【0024】
第2プランジャー20は、先端側から順に、先端側円柱部21及び基端側円柱部22を有する。先端側円柱部21の先端は、テーパー状に先細り形状とされた接触部21aとなっている。先端側円柱部21は、ピンプレート5cの小径穴部5gを貫通し、小径穴部5gにガイドされる。基端側円柱部23は、導電性チューブ30の内側に位置する。基端側円柱部23は、先端側円柱部21よりも大径であり、導電性チューブ30の絞り部30bと係合することで、第2プランジャー20が導電性チューブ30から下方に抜けるのを防止する。
【0025】
導電性チューブ30は、内側に突出する所定数の凸部30aを有する。凸部30aは、例えば導電性チューブ30の外周面をポンチで打撃して形成され、ここでは周方向に90度間隔で4個設けられる。凸部30aは、第1プランジャー10のくびれ部13aと係合し、導電性チューブ30を第1プランジャー10と一体にストローク可能とする。導電性チューブ30の下端部は、絞り部30bとなっている。絞り部30bは、第2プランジャー20の基端側円柱部22よりも小径となるように例えば絞り加工によって径が絞られた部分である。導電性チューブ30の上端は、第1プランジャー10のフランジ部12の下端面と係合(当接)する。導電性チューブ30は、ピンプレート5cの小径穴部5gよりも大径であり、ピンプレート5cから下方に抜けない。導電性チューブ30の外径は、第1プランジャー10の外径以下である(図示の例では同外径)。スプリング35は、導電性チューブ30内にあり、上端が第1プランジャー10の基端側円柱部13の下端面と係合(当接)し、下端が第2プランジャー20の基端側円柱部22の上端面と係合(当接)する。
【0026】
図1(B)は、
図1(A)の状態からソケット1を検査用基板9にセットした状態の正断面図である。ピンプレート5cの下面は、検査用基板9の上面と接触する。また、第2プランジャー20の先端側円柱部21の接触部21aが検査用基板9の電極パッド9aと接触し、第2プランジャー20は、
図1(A)に示す突出状態からスプリング35の付勢力に抗して後退する。
図1(B)に示すように、リテーナ5aの2つの貫通穴5d間の距離L1は、ピンプレート5cの2つの小径穴部5g間の距離L2よりも小さい。これにより、2つのコンタクトプローブ7は、第1プランジャー10の先端側に向かって(上方に向かって)、互いに近づくように斜めに傾いている。
【0027】
図1(C)は、
図1(B)の状態から検査対象物8をソケット1にセットした状態の正断面図である。
図2は、
図1(C)の要部拡大図である。第1プランジャー10の先端側円柱部11の接触部11aが検査対象物8の電極バンプ8aと接触し、第1プランジャー10は、
図1(B)に示す突出状態から、スプリング35の付勢力に抗して、導電性チューブ30を伴って後退する。
図1(C)に示す状態では、コンタクトプローブ7により検査対象物8の電極バンプ8aと検査用基板9の電極パッド9aとが電気的に接続され、検査対象物8の検査が可能となる。
【0028】
図2に示すように、本実施の形態におけるコンタクトピッチP2は、リテーナ5aの2つの貫通穴5d間の隔壁5iの厚さA(加工上の最小肉厚以上かつフランジ部12同士が接触しない範囲で最も小さい幅)と同等以下、ないし厚さAに先端側円柱部11と隔壁5iとの間のクリアランスの2倍を足した長さ以下に狭められていて、
図7に示す従来例と比較して狭ピッチ化を実現できる。なお、
図7に示す従来例のコンタクトピッチP1の式1のDに対応する、先端側円柱部11の側面から先端面の山の頂点までの距離は、本実施の形態及び
図7に示す従来例のいずれにおいても制御範囲外のため考慮しない。
【0029】
本実施の形態において、
図7に示す従来例と同様に、2つの第1プランジャー10のフランジ部12間に隔壁を設けようとすると、当該隔壁はリテーナ5aの2つの貫通穴5d間の隔壁5iよりも薄くする必要があるため、隔壁5iを加工上の最小肉厚にすると、フランジ部12間の隔壁を加工することができない(隔壁が成立しない)。これに対し本実施の形態では、フランジ部12間を空間5hとし、コンタクトプローブ7を斜めに傾けることで、導電性チューブ30間の隔壁5jを成立可能としている。隔壁5jの成立可能高さは、コンタクトプローブ7の傾き具合、導電性チューブ30の外径、及び隔壁5jの肉厚によって変化する。なお、フランジ部12間の隔壁が存在しないため、フランジ部12同士が接触してショートしないための条件として、隔壁5iの厚さAは、先端側円柱部11とフランジ部12の半径差Cに対して、A>C×2を満たす必要がある。
【0030】
ソケット1の組立方法は、次のとおりである。第1の方法では、リテーナ5aとピンブロック5bをネジ止め等により相互に固定しておき、コンタクトプローブ7をピンブロック5bの下面側から貫通穴5e,5dに挿入し、その後コンタクトプローブ7が貫通穴5fを貫通するようにピンプレート5cをピンブロック5bの下面にネジ止め等により固定する。第2の方法では、ピンブロック5bとピンプレート5cをネジ止め等により相互に固定しておき、コンタクトプローブ7をピンブロック5bの上面側から貫通穴5e,5fに挿入し、その後コンタクトプローブ7が貫通穴5dを貫通するようにリテーナ5aをピンブロック5bの上面にネジ止め等により固定する。第2の方法の場合、ピンブロック5bとピンプレート5cは別部品ではなく一体成形品であってもよい。
【0031】
本実施の形態によれば、下記の効果を奏することができる。
【0032】
(1) リテーナ5aとピンブロック5bとの間に空間5hを設け、2つのコンタクトプローブ7の第1プランジャー10のフランジ部12間に隔壁が無い構成とし、かつ2つのコンタクトプローブ7が上方に向かって互いに近づくように斜めに傾いているため、導電性チューブ30間の隔壁5jを設けながら、
図2に示すようにコンタクトピッチP2をリテーナ5aの2つの貫通穴5d間の隔壁5iの厚さAと同等以下に狭めることができる(先端側円柱部11とフランジ部12との半径差をコンタクトピッチP2から排除し、狭ピッチ化が可能となる)。
【0033】
(2) コンタクトプローブ7の姿勢が傾いた状態で安定するため、従来のように絶縁支持体5との間の隙間の範囲でどのような姿勢になるか不定の構成と比較して、先端側円柱部11の先端位置が高精度に定められ、接点が安定化する。これにより、接点が電極バンプ8aの側方寄りとなって電極バンプ8aの側面を削ることを抑制できる。
【0034】
(3) コンタクトプローブ7は、長さ方向と垂直な断面が円形であって方向性が無いため、製造容易であると共に、コンタクトプローブ7を絶縁支持体5に組み合わせる作業性も良い。また、コンタクトプローブ7に回転方向の力が加わっても絶縁支持体5を傷つけるリスクが小さい。
【0035】
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2に係るソケット2の正断面図である。本実施の形態のソケット2は、実施の形態1のものと比較して、導電性チューブ30がフランジ部12よりも小径となっている点で相違し、その他の点で一致する。導電性チューブ30をフランジ部12より小径とすることで、導電性チューブ30がピンブロック5bの隔壁5jの上端エッジ部やピンプレート5cの貫通穴5fの内面と干渉することを抑制できる。本実施の形態も、実施の形態1と同様の効果を奏することができる。
【0036】
(実施の形態3)
図4(A)は、本発明の実施の形態3に係るソケット3の正断面図である。
図4(B)は、
図4(A)の状態からソケット3を検査用基板9にセットした状態の正断面図である。
図4(C)は、
図4(B)の状態から検査対象物8をソケット3にセットした状態の正断面図である。
図5は、
図4(C)の要部拡大図である。
【0037】
本実施の形態のソケット3では、第1プランジャー10が中空であり、不図示のスプリングが第1プランジャー10内にある。絶縁支持体はピンブロック5bとピンプレート5cの二部品構成であり、第1プランジャー10の先端側円柱部11はピンブロック5bの貫通穴5eにガイドされる。第1プランジャー10の基端側円柱部13は、基端が絞り部13bとされ、実施の形態1の導電性チューブ30の絞り部30b(
図1(A))と同様に、第2プランジャー20の抜けを防止する。空間5hは、ピンブロック5bとピンプレート5cとの間に設けられる。ピンブロック5bの貫通穴5eとピンプレート5cの小径穴部5gは同軸であり、2つのコンタクトプローブ7は互いに略平行(上下方向と平行)に支持される。
【0038】
図5に示すように、本実施の形態におけるコンタクトピッチP3は、ピンブロック5bの隔壁5jの厚さA(例えば加工上の最小肉厚)と、先端側円柱部11と隔壁5jとの間の隙間Bにより、P3=A+(B×2)と表される。コンタクトピッチP3は、
図7に示す従来例のコンタクトピッチP1(式1)と異なり、先端側円柱部11とフランジ部12の半径差(フランジ部12の出っ張り長)が入らない分、狭ピッチ化されている。本実施の形態のその他の点は、実施の形態1と同様である。
【0039】
(実施の形態4)
図6は、本発明の実施の形態4に係るソケット4の正断面図である。本実施の形態のソケット4では、実施の形態1と異なり、第1プランジャー10はフランジ部12を有さず、導電性チューブ30がフランジ部31を有する。絶縁支持体はピンブロック5bとピンプレート5cの二部品構成であり、第1プランジャー10の先端側円柱部11はピンブロック5bの貫通穴5eにガイドされる。空間5hは、ピンブロック5bとピンプレート5cとの間に設けられる。ピンブロック5bの貫通穴5eとピンプレート5cの小径穴部5gは同軸であり、2つのコンタクトプローブ7は互いに略平行(上下方向と平行)に支持される。第2プランジャー20の先端側円柱部21の中間部に設けられたテーパー部(傾斜部)21bは、検査時における第2プランジャー20の傾きを低減する役割を持つ。本実施の形態のその他の点は、実施の形態1と同様である。本実施の形態の狭ピッチ化の効果は、実施の形態3と同様である。
【0040】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。
【0041】
空間5hは、ピンブロック5bの貫通穴5e及び隔壁5jの上方となる部分に形成されていればよく、その他の部分、すなわち貫通穴5e及び隔壁5j以外の部分の上方においてはピンブロック5bはリテーナ5aの下面に接触するまで延ばされてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1〜4 ソケット、5 絶縁支持体、5a リテーナ、5b ピンブロック、5c ピンプレート、5d 貫通穴(第1ガイド穴)、5e,5f 貫通穴、5g 小径穴部(第2ガイド穴)、5h 空間、5i,5j 隔壁、7 コンタクトプローブ、8 検査対象物、8a 電極バンプ、9 検査用基板、9a 電極パッド、10 第1プランジャー、11 先端側円柱部、11a 接触部、12 フランジ部、13 基端側円柱部、13a くびれ部、13b 絞り部、20 第2プランジャー、21 先端側円柱部、21a 接触部、21b テーパー部(傾斜部)、22 基端側円柱部、30 導電性チューブ、30a 凸部、30b 絞り部、31 フランジ部