(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6850589
(24)【登録日】2021年3月10日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】屋根架構の構築工法
(51)【国際特許分類】
E04G 21/14 20060101AFI20210322BHJP
E04B 1/35 20060101ALI20210322BHJP
E04B 1/342 20060101ALI20210322BHJP
E04B 1/34 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
E04G21/14
E04B1/35 D
E04B1/342 B
E04B1/34 F
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-222700(P2016-222700)
(22)【出願日】2016年11月15日
(65)【公開番号】特開2018-80490(P2018-80490A)
(43)【公開日】2018年5月24日
【審査請求日】2019年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】竹永 伸明
(72)【発明者】
【氏名】深沢 茂臣
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼澤 秀実
(72)【発明者】
【氏名】岡 日出夫
【審査官】
瓦井 秀憲
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭62−037439(JP,A)
【文献】
特開平07−259191(JP,A)
【文献】
特開平09−151541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/14
E04B 1/34− 1/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の躯体に架設され、複数の架構ブロックで構成された屋根架構の構築方法であって、
前記構造物の前記躯体の一方側の外側に作業ステージを地面よりも高い位置に設ける工程と、
前記作業ステージに資材を持ち上げ、前記作業ステージの上で前記架構ブロックを作製する工程と、
前記作業ステージで作製された前記架構ブロックを、前記躯体の一方側と他方側との間に架設されたレールで他方側にスライドさせ、前記躯体に固定する工程と、
を備え、
前記躯体の一方側と他方側との間に前記レールを架設する前に、前記作業ステージで前記架構ブロックの作製を開始する、
屋根架構の構築工法。
【請求項2】
前記作業ステージを撤去する工程を有する、
請求項1に記載の屋根架構の構築工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根架構の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、中間層鉄骨トラベリング工法に関する技術が開示されている。この先行技術では、地組みした中間層鉄骨トラスの1ユニットを躯体妻側から所定の奥位置の両小梁間に架載置し、次いで同じユニットの地組み完了後これを所定の手前位置に同様に載置して両ユニットを桁方向梁により連結してブロックを形成する。そして、ブロックの1スパン分のスライドを行い順次ユニットを追加して大規模ブロックを形成後、屋根トラスの下にスライドさせて最終定着する。
【0003】
ここで、アリーナや体育館等の内部に広い空間を有する構造物の躯体に架設する屋根架構の構築に、スライド工法が採用されることがある。スライド工法は、あらかじめ作業しやすい作業床上で屋根架構を構成する複数の架構ユニットを1架構ユニットずつ組み立てた後、1架構ユニットずつ走行レールに載せて、一方側から他方側に順次スライドしていき、屋根架構全体を組み立てる工法である。
【0004】
しかし、このスライド工法の場合、最初に組み立てた1架構ユニットが躯体の他端部に到達するまで、すなわち屋根架構を構成する各架構ユニットが全て完成して繋がるまで、屋根架構を躯体に固定する工事を行うことができない。よって、屋根架構を躯体に早期に固定し、工期を短縮することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許4497341号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事実を鑑み、屋根架構を早期に躯体に固定することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第一態様は、構造物の躯体に架設され、複数の架構ブロックで構成された屋根架構の構築方法であって、前記構造物の前記躯体の一方側の外側に設けられた作業ステージで前記架構ブロックを作製する工程と、前記作業ステージで作製された前記架構ブロックを、前記躯体の一方側と他方側との間に架設されたレールで他方側にスライドさせ、前記躯体に固定する工程と、を備える屋根架構の構築工法である。
【0008】
第一態様の屋根架構の構築工法では、構造物の躯体の一方側の外側に設けられた作業ステージで作製された架構ブロックを、躯体の一方側と他方側との間に架設されたレールで他方側にスライドさせ躯体に固定する。よって、屋根架構全体の構築が完了する前に、先行して架構ブロックを躯体に早期に固定できる。したがって、効率的に工事を進捗させることができるので、構造物を構築する工期が短縮する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、屋根架構を早期に躯体に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図6の構造物の施工工程を説明する工程図であって、スタンドの一方側部の構築及び作業ステージの組立を行っている工程の図である。
【
図2】
図1の後の工程を示す工程図であって、先行架構ブロックの作製及びスタンドの他方側部の構築を行っている工程の図である。
【
図3】
図2の後の工程を示す工程図であって、先行架構ブロックを他方側にスライドしてスタンドに固定する工事及び後行架構ブロックの作製を行っている工程の図である。
【
図4】
図3の後の工程を示す工程図であって、先行架構ブロックを他方側にスライドしてスタンドに固定する工事及び後行架構ブロックの作製を行っている工程の図である。
【
図5】
図4の後の工程を示す工程図であって、後行架構ブロックをスライドさせてスタンドに固定すると共に先行架構ブロックと接合して一体化する工程の図である。
【
図6】本実施形態の構築工法で屋根架構が構築された構造物を模式的に示す
図7の6−6線に沿った垂直断面図である。
【
図7】
図6の構造物の屋根架構を模式的に示す伏図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態>
本発明の一実施形態の屋根架構の構築工法について説明する。なお、各図において、鉛直方向を矢印Zで示し、水平方向の直交する二方向を矢印X及び矢印Yで示している。また、各図におけるX方向の右側を一方側とし、左側を他方側とする。また、
図1〜
図6は構造物の垂直断面を示しているが、断面を示す斜線(ハッチング)は、図が煩雑になるのを避けるためスタンドのみ図示している。
【0012】
[構造]
まず、本実施形態の構築工法で屋根架構が構築された構造物の構造について説明する。
【0013】
図6及び
図7に示すように、本実施形態の構造物10は、躯体の一例としての傾斜した階段状のスタンド20によって外周又は略外周が囲まれた所謂アリーナである。また、このスタンド20で囲まれたた内側が、競技を行うアリーナ床12(
図6参照)となっている。
【0014】
構造物10の屋根14を構成する屋根架構100がスタンド20の上端部22に架設されている。なお、符号20Aはスタンド20の一方側半分を構成する一方側部であり、符号20Bはスタンド20の他方側半分を構成する他方側部である。また、符号22Aはスタンド20の一方側部20Aの他端の上端部であり、符号22Bはスタンド20の他方側部20Bの他端の上端部である。
【0015】
屋根架構100は、Y方向を長手方向とする複数の架構ユニット110が、X方向に並び接合された構造となっている。なお、架構ユニット110に斜材を設けトラス構造としてもよい。また、後述するように、屋根架構100は、他方側半分を構成する先行架構ブロック120と一方側半分を構成する後行架構ブロック130とに分割されて作製され、これらが中央接合部125で接合されて一体化されている。
【0016】
[構築工法]
次に、本実施形態の構造物10のスタンド20の上端部22に架設された屋根架構100の構築工法の一例について説明する。
【0017】
図1に示すように、スタンド20の一方側部20Aを構築する。また、スタンド20の一方側部20Aの外側に隣接して仮設の作業ステージ200を組み立てる。
【0018】
図2に示すように、クレーン300で資材を持ち上げて作業ステージ200の上で架構ユニット110を組み立て、屋根架構100の他方側半分を構成する先行架構ブロック120(
図6及び
図7も参照)を作製していく。また、同時にスタンド20の他方側部20Bも構築する。
【0019】
図3に示すように、スタンド20の一方側部20Aの上端部22Aと他方側部20Bの上端部22Bとの間にレール150を架設し、作製が完了した他方側の先行架構ブロック120を、レール150に載せて他方側にスライドさせる。なお、レール150の一方側は、仮設の支柱210によって支持されている。
【0020】
図3及び
図4に示すように、他方側に移動した先行架構ブロック120をスタンド20の他方側部20Bに固定する工事等を行うと共に、同時に作業ステージ200の上で架構ユニット110を組み立て、屋根架構100の他方側半分を構成する後行架構ブロック130(
図6及び
図7も参照)を作製していく。
【0021】
図5に示すように、一方側の後行架構ブロック130の作製が完了すると、レール150に載せて他方側にスライドさせる。そして、スタンド20の一方側部20Aに固定する工事等を行うと共に、中央接合部125で接合して先行架構ブロック120と後行架構ブロック130とを一体化する。
【0022】
図6に示すように、レール150、仮設の作業ステージ200及び仮設の支柱210を撤去すると共に、他の工事を行い、構造物10を完成させる。
【0023】
なお、説明はしていないが、屋根架構100の構築工事と同時に、他の工事も行っている。
【0024】
[作用及び効果]
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0025】
構造物10のスタンド20の一方側部20Aの外側に仮設された作業ステージ200で作製された先行架構ブロック120を、スタンド20の一方側部20Aの上端部22Aと他方側部20Bの上端部22Bとの間に架設されたレール150に載せて他方側にスライドさせ、スタンド20の他方側部20Bに固定する。
【0026】
よって、屋根架構100全体の組み立てが完了する前に、先行して先行架構ブロック120をスタンド20の他方側部20Bに早期に固定する工事等を行うことができると共に同時に後行架構ブロック130の作製を行うことができる。
【0027】
したがって、従来のスライド工法のように屋根架構100全体が完成するまでスタンド20に固定する工事等を行うことができない場合と比較し、屋根架構10を早期にスタンド20に固定することができる。したがって、屋根架構100と取り合う外壁などの工事を早期に着手することができるので、効率的に工事を進捗させることができ、この結果、構造物10を構築する工期が短縮する。
【0028】
<その他>
尚、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0029】
例えば、上記実施形態では、構造物10は、傾斜した階段状のスタンド20によって外周又は略外周が囲まれた所謂アリーナであったが、これに限定されるものではない。例えば、構造物は、内部に柱が無い又は柱が殆ど無い広い空間を有する倉庫や体育館であってもよい。
【0030】
また、例えば、上記実施形態の構造物10では、先行架構ブロック120及び後行架構ブロック130を載せてスライドさせるレール150は、屋根架構100の構築が完了したのち撤去した。しかし、レール150を撤去しないで、そのまま残す構造であってもよい。
【0031】
また、例えば、上記実施形態では、屋根架構100はフラットな形状であるが、湾曲した複雑な構造であってもよい。なお、屋根架構100が湾曲した複雑な構造の場合は、各架構ユニット110がそれぞれ異なる構造となり、従来のスライド工法のように順次繋げてスライドすると、変形やひずみが生じ易い。しかし、本発明を適用すると、左右対称の先行架構ブロック120と後行架構ブロック130とに分割することで、中央接合部125で接合し一体化する際に、変形やひずみ等を調整することができるので、好適である。
【0032】
また、例えば、上記実施形態では、屋根架構100を先行架構ブロック120と後行架構ブロック130との二つに分割したが、これに限定されない。屋根架構100を三つ以上の架構ブロックに分割してもよい。
【0033】
また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0034】
10 構造物
20 スタンド(躯体の一例)
100 屋根架構
120 先行架構ブロック(架構ブロックの一例)
130 後行架構ブロック(架構ブロックの一例)
150 レール
200 作業ステージ