(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。なお、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。
【0022】
まず、本実施形態の採鉱システムの全体構成について説明する。
本実施形態の採鉱システムは、
図1に示すように、海上SLに海上基地として配置される母船1と、海底SBに海中基地として配置される採鉱ステーション20とを有する。この採鉱システムでは、複数の採鉱ステーション20を海中基地とする。各採鉱ステーション20には、穿孔装置30および装薬装置40が装備されている。なお、同図の符号2は曳航船である。
【0023】
本実施形態の例では、一または複数の母船1が目的とする海域の海上SLに停泊される。母船1は、採鉱ステーション20を運搬するとともに、海底SBに採鉱ステーション20を架設配置可能に構成される。母船1は、海底熱水鉱床ODの所定の位置まで採鉱ステーション20を搬送し、作業機11のワイヤ11sで採鉱ステーション20を垂下して海底SBに立設する。同図左側に示す母船1が、架設配置作業のイメージを示している。
【0024】
採鉱ステーション20の穿孔装置30は、例えば周知のドリフタを備え、ドリフタの駆動によって、さく孔により、海底熱水鉱床ODの所定範囲に有底穴を発破孔VHとして形成可能に構成されている。また、装薬装置40は、穿孔装置30で穿孔された所定範囲の発破孔VHに対して火薬カートリッジ60を装薬可能に構成されている。
【0025】
そして、海上SLの母船1は、所定範囲の火薬カートリッジ60に向けて起爆信号としての超音波USを送波器68から発射して、所定範囲を順次に打ち掛け発破により破砕可能に構成されている。なお、同図右側に示す母船1が、打ち掛け発破時の、退避位置での発破作業のイメージを示している。その後、この採鉱システムでは、破砕されたズリを周知の揚鉱装置によって洋上に揚鉱する。本実施形態の採鉱システムにおいて、発破後のズリを揚鉱するときは、不図示の大型の揚鉱用母船を更に用いることができる。
【0026】
なお、本実施形態では、オペレータは、母船1にて採鉱ステーション20を管理する例を説明するが、これに限定されず、同図に示すように、採鉱ステーション20の架設配置後に、海上基地でなく、陸上基地LSにおいて採鉱ステーション20を管理することもできる。なお、同図に実線で示す矢印は、母船1と陸上基地LSとの間で、双方向に無線通信を行うイメージを示している。
【0027】
本実施形態の母船1は、大型の揚鉱用母船に比べて小型の船であって、
図2に示すように、平面視が矩形枠状の船体を有し、船体の左右が浮体2fとされている。平面視で、船体中央は、矩形状に開口するムーンプール2pとされ、ムーンプール2pを跨ぐように、クレーン等の作業機11が船体上に跨設されている。
【0028】
母船1には、発電機12および不図示の管理コンピュータが搭載されている。管理コンピュータおよび発電機12は、不図示のアンビリカルケーブルを介して海底SBに配置された採鉱ステーション20に接続され、採鉱ステーション20の作動に必要な電力や制御信号をアンビリカルケーブルで供給可能になっている。
【0029】
また、母船1には、船体の甲板にオペレータの居住室2hが設けられるとともに、適所にウインチ11wが装備され、採鉱ステーション20をムーンプール2pから海中に吊り下ろし、および引き揚げ可能になっている。なお、同図(c)の符号DおよびUは、採鉱ステーション20を吊り下ろし、および引き揚げ可能なイメージを示している。
【0030】
母船1の寸法は、採鉱ステーション20を架設配置する上で、例えば全長72m×全幅48m程度とし、ムーンプール2pの寸法を30m×33m程度とすれば好適である。このような小型の母船を海上基地として用いれば、母船自体の費用や、海上に停泊させる際の用船費等を少なくできるため、用船コストを削減する上で好ましい。
【0031】
次に、採鉱ステーション20について詳しく説明する。
採鉱ステーション20は、
図3〜
図5に示すように、X方向およびY方向へ自走可能なベースフレーム21をプラットフォームとしている。ベースフレーム21は、複数の矩形枠体から構成され、本実施形態では、上部プラットフォーム21X、下部プラットフォーム21Yおよび中間フレーム21Mを備える。上部プラットフォーム21Xおよび下部プラットフォーム21Yは、枠体の四隅が複数(この例では4脚)の支持脚26でそれぞれ支持される。各支持脚26は、ジャッキ機構49を介して各プラットフォーム21X、21Yにそれぞれ固定されている。
【0032】
以下、
図6〜
図8に基づき、プラットフォーム21の構成を詳しく説明する。なお、
図6は、上記母船1から海底熱水鉱床ODに採鉱ステーション20が着底させられる時のプラットフォーム21の着底準備姿勢を示すもので、プラットフォーム21は、着底準備姿勢にあっては、上部プラットフォーム21X、中間フレーム21Mおよび下部プラットフォーム21Yの水平面内の中心(重心)Gが一致している。また、
図7において符号CLは、各支持脚26の中心軸線を示している。
【0033】
プラットフォーム21は、
図6〜
図8に示すように、平面視が矩形枠状をなす上部プラットフォーム(Upper platform)21Xと、平面視が矩形枠状をなす下部プラットフォーム(Lower platform)21Yと、両プラットフォーム21X、21Yの中間に設けられ平面視が矩形枠状をなす中間フレーム(Middle frame)21Mとを有する。上下の各プラットフォーム21X、21Yは、矩形状の枠体の四隅それぞれに、4本の支持脚26と各支持脚26を昇降可能なジャッキ機構49とを有するジャッキアッププラットフォームである。
【0034】
上部プラットフォーム21Xは、
図6に示すように、平面視が矩形枠状をなし、X方向に離隔して互いに並行に設けられた矩形筒状をなす一対の縦ガーダーXbと、Y方向に離隔して互いに並行に設けられた矩形筒状をなす一対の横ガーダーXaとを有する。2つの横ガーダーXaの各外側面には、横ガーダーXaの延在方向に沿って、X移動用ラックRxが、中央から左右対称にそれぞれ取付けられている。
【0035】
また、下部プラットフォーム21Yは、
図6に示すように、平面視が矩形枠状をなし、X方向に離隔して互いに並行に設けられた矩形筒状をなす一対の横ガーダーYbと、Y方向に離隔して互いに並行に設けられた矩形筒状をなす一対の縦ガーダーYaとを有する。2つの縦ガーダーYaの外側面には、縦ガーダーYaの延在方向に沿って、Y移動用ラックRyが、中央から左右対称にそれぞれ取付けられている。
【0036】
中間フレーム21Mは、
図8に示すように、平面視が矩形枠状をなし、X方向に離隔して互いに並行に設けられた矩形筒状をなす一対の縦ガーダーMbと、Y方向に離隔して互いに並行に設けられた矩形筒状をなす一対の横ガーダーMaとを有する。中間フレーム21Mの各横ガーダーMaの延在方向の中央の位置には、横ガーダーMaの矩形筒内に、X駆動モータMxがそれぞれ配置されている。また、中間フレーム21Mの各縦ガーダーMbの延在方向の中央の位置には、縦ガーダーMbの矩形筒内に、Y駆動モータMyがそれぞれ配置されている。
【0037】
ジャッキ機構49は、不図示のモータ、減速機構およびラック・ピニオン機構を有する。ラックは支持脚26の軸方向に沿って形成されている。ジャッキ機構49は、モータで減速機構を介してラック・ピニオン機構を駆動することにより、支持脚26を上下方向(Z方向)にスライド移動可能に且つその移動位置の保持が可能になっている。なお、ジャッキ機構49の駆動用のモータとしては、流体圧による駆動(例えば油圧駆動)であっても、電力による駆動(例えば電磁式モータ)であってもよい(以下、他の駆動用のモータにおいて同様)。
【0038】
また、各支持脚26を駆動するジャッキ機構49には、不図示のトルク検出器が装備されている。各トルク検出器は、対応する各ジャッキ機構49のラック&ピニオン機構のピニオンを駆動する各駆動モータのトルクを検出可能なトルク計である。各トルク検出器は、各駆動モータの随時のモータトルクを検出し、検出したトルク情報を基地制御ユニット90に出力可能になっている。
【0039】
これにより、各支持脚26は、自身が装着された各プラットフォーム21X、21Yに対しZ方向に相対的スライド移動して、複数の支持脚26の協働によって、プラットフォーム21の上昇および下降が可能になっている。さらに、中間フレーム21Mと上下のプラットフォーム21X、21Yとは、直動案内機構を介してスライド移動可能に支持されるとともに、ラック&ピニオン機構を介して係合され、水平面で互いに直交するX方向およびY方向に相対的スライド移動可能に構成されている。
【0040】
X駆動モータMxの駆動軸には、
図8に示すように、X移動用ピニオンPxが装着され、X移動用ピニオンPxは、X移動用ラックRxのラック面に対向する位置に張り出している。二つのX移動用ピニオンPxは、それぞれX移動用ラックRxに噛合され、X駆動モータMxにより同期駆動されて、上部プラットフォーム21XをX方向にスライド移動可能に構成されている。
【0041】
なお、中間フレーム21Mと上下のプラットフォーム21X、21Yとは、ラック&ピニオン機構を介して水平方向への移動が可能な例を示すが、移動機構はこれに限定されず、水平方向への移動が可能な移動機構であれば、種々の移動機構を採用可能である。例えば、油圧シリンダ方式でスライドさせる移動機構を用いることができる。同様に、各支持脚26は、ラック&ピニオン機構を介してZ方向に相対的スライド移動が可能な例を示すが、これに限定されず、例えば油圧シリンダ方式でスライドさせる移動機構とすることができる。また、油圧駆動に限定されず、電気駆動式としてもよい。
【0042】
ここで、採鉱ステーション20の仕様として、全生産能力(Dry SMS)を2,000,000t/年(6,600t/日)とし、密度を3〜5(t/m
3)としたとき、体積として6600/5〜6600/3=1320〜2200m
3を想定し、一台の採鉱ステーション20が掘削する所定範囲(区画)の大きさを約10m×10mと決定した。また、穿孔装置30は、深さが約20mまで掘削可能な構成を有するものとする。また、荷重条件としては、曳航時、吊下げ時および作業時を考慮し、上部プラットフォーム21X、下部プラットフォーム21Yおよび中間フレーム21Mの形状寸法を設定した。
【0043】
具体的には、上記支持脚26の形状および寸法は、支持脚26の軸方向の全長を30mとしたとき、主に曳航条件を考慮して、ローリング時の荷重条件から、支持脚26の外径を1000mmとした。また、曳航時、吊り下げ時および作業時の荷重条件より、上部プラットフォーム21Xのガーダー内側のX方向の長さLxおよびY方向の幅Lyはそれぞれ23mおよび10mとした。また、上部プラットフォーム21Xのガーダー自体の幅および厚さはそれぞれ1mおよび2mとした。
【0044】
また、
図6において、下部プラットフォーム21Yのガーダー内側のX方向の長さLxおよびY方向の幅Lyは、それぞれ13mおよび20mとした。また、下部プラットフォーム21Yのガーダー自体の幅および厚さは、それぞれ1mおよび2mとした。さらに、中間フレーム21Mは、中間フレーム21Mのガーダー内側のX方向の長さおよびY方向の幅は、それぞれ13mおよび10mとした。また、中間フレーム21Mのガーダー自体の幅および厚さは、両方ともに1mとした。また、ラック&ピニオン機構部において、ラックの長さは約10mとした。
【0045】
次に、上記所定の範囲(この例では約10m×10mの区画)で、穿孔装置30および装薬装置40を移動させる移動機構について説明する。
上部プラットフォーム21Xには、
図3に示すように、Y方向に沿って移動フレーム46が張り渡されている。移動フレーム46の両端は、X方向用移動機構54を介して上部プラットフォーム21Xにそれぞれ支持される。X方向用移動機構54は、不図示のモータ、減速機構およびラック・ピニオン機構を有し、モータで減速機構を介してラック・ピニオン機構を駆動することにより、移動フレーム46を上部プラットフォーム21Xに沿ってX方向にスライド移動可能になっている。
【0046】
移動フレーム46には、Y方向用移動機構52を介して第一ガイドシェル45および第二ガイドシェル55が縦に配置されている。第一ガイドシェル45は、穿孔装置30のZ方向の送り機構を構成している。また、第二ガイドシェル55は、装薬装置40のZ方向の送り機構を構成している。Y方向用移動機構52は、不図示のモータ、減速機構およびラック・ピニオン機構を有し、モータで減速機構を介してラック・ピニオン機構を駆動することにより、第一ガイドシェル45および第二ガイドシェル55を移動フレーム46沿ってY方向にスライド移動可能になっている。
【0047】
次に、採鉱ステーション20に装備された穿孔装置30について説明する。
図3に示すように、第一ガイドシェル45には、スライダ47を介して周知のドリフタを備える穿孔装置30が装備されている。第一ガイドシェル45の上部には、第一ガイドシェル45に沿ってスライダ47をZ方向にスライド移動させる送り機構48が設けられている。送り機構48は、不図示のモータ、減速機構およびラック・ピニオン機構を有し、モータで減速機構を介してラック・ピニオン機構を駆動することにより、第一ガイドシェル45に沿ってドリフタをZ方向にスライド移動可能になっている。
ロッド31の前端にはビット50が装着される。ロッド31は、穿孔装置30からの打撃力を受け、ビット50先端のチップがさく孔面に衝撃力を加えて海底鉱物をさく孔により破砕して発破孔VHを穿孔する。また、さく孔により破砕された海底鉱物を孔内で海水と混合してスラリーを生成できる。
【0048】
次に、採鉱ステーション20に装備された装薬装置40について説明する。
図4および
図5に示すように、第二ガイドシェル55には、装薬装置40が装備されている。プラットフォーム21は、装薬装置40の筐体となっており、上部プラットフォーム21Xに、複数の火薬カートリッジ60を収容するマガジン80が設けられている。
【0049】
装薬装置40は、第二ガイドシェル55が、移動フレーム46に対してY方向用移動機構52の第一ガイドシェル45とは反対側に軸線を縦に配置されている。また、装薬装置40は、マガジン80に収容された火薬カートリッジ60のクランプおよびその解放が可能なクランプ機構41を備える。本実施形態のクランプ機構41は、上下に離隔配置された二組の把持部を有する。各把持部には、火薬カートリッジ60を把持およびその解放可能に水平方向に開閉する一対の開閉アームが設けられている。クランプ機構41は、第一フィード機構42に支持されている。
【0050】
第一フィード機構42は、例えばラックアンドピニオン機構により、クランプ機構41全体を上下方向にスライド移動に構成され、マガジン80に対する火薬カートリッジ60の把持高さから装薬位置にて火薬カートリッジ60を発破孔VHに装薬する高さまでクランプ機構41を移動可能に構成されている。さらに、第一フィード機構42は、第二フィード機構43に支持されている。第一フィード機構42の支持筐体の下部には、装薬位置を確認するためのカメラ44が装備されている。
【0051】
第二フィード機構43は、例えばラックアンドピニオン機構により、第一フィード機構42全体を、上記第二ガイドシェル55に対して上下方向にスライド移動に構成され、第一フィード機構42をマガジン80内の火薬カートリッジ60を把持させる高さからマガジン80から引き出した高さまで移動させるとともに、装薬位置において火薬カートリッジ60を発破孔VHに仮装薬する高さまで移動可能に構成されている。
なお、本実施形態では、第一フィード機構42および第二フィード機構43により、クランプ機構41を支持するとともに火薬カートリッジ60を把持する高さから発破孔VHに装薬する高さまで移動させるフィード機構を構成した例を示したが、これに限定されず、一つのフィード機構から構成してもよい。
【0052】
次に、採鉱ステーション20を制御する基地制御ユニット90について説明する。
基地制御ユニット90は、ベースフレーム21の適所に設けられる。本実施形態では、
図3および
図5に示すように、耐圧構造を有する移動フレーム46に内蔵されている。基地制御ユニット90には、母船1からアンビリカルケーブルが接続され、アンビリカルケーブルを介して必要な電力や制御信号の供給を受ける。基地制御ユニット90は、コンピュータと、姿勢安定制御処理を実行するためのプログラムとを含んで構成された制御部(コントローラ)を有し、採鉱ステーション20のベースフレーム21および穿孔装置30並びに装薬装置40を制御する。
【0053】
これにより、基地制御ユニット90は、母船1側の管理コンピュータの管理下、管理コンピュータの指令またはオペレータの操作入力に基づいて、各ジャッキ機構49の駆動により、採鉱ステーション20の姿勢を制御する。そして、採鉱ステーション20は、基地制御ユニット90によるX方向用移動機構54およびY方向用移動機構52の駆動により、第一および第二第一ガイドシェル45、55を所定範囲でX方向およびY方向に移動するとともに、第一および第二第一ガイドシェル45、55に設けられた穿孔装置30並びに装薬装置40を駆動可能になっている。
【0054】
さらに、基地制御ユニット90は、プラットフォーム21の姿勢を検出する不図示の傾斜センサを有する。基地制御ユニット90は、採鉱ステーション20の姿勢制御処理や歩行制御処理、採鉱ステーション20の穿孔制御処理、装薬制御処理、および、採鉱ステーション20の姿勢制御、並びにその他必要な処理を実行する。
【0055】
例えば、基地制御ユニット90は、採鉱ステーション20の姿勢制御処理や歩行制御処理が実行されると、傾斜センサの出力に基づいて、採鉱ステーション20自体の姿勢の不均衡の程度を判定し、ラック&ピニオン機構のピニオンを駆動する各駆動モータの調整により、作動時の姿勢安定を維持する姿勢安定制御を行う。
【0056】
また、基地制御ユニット90は、傾斜センサの検出した傾斜情報、および、複数の支持脚26のモータのトルクを検出したモータトルク情報を、海上の母船1に装備された管理コンピュータに出力する。管理コンピュータは、オペレータに対して、ディスプレイ上に、随時の傾斜情報およびモータトルク情報を表示可能に構成される。
【0057】
これにより、採鉱ステーション20は、上下のプラットフォーム21X、21YをX方向およびY方向にスライド移動させるスライド移動機構、並びに各支持脚26をZ方向にスライド移動させるスライド移動機構により、後述する歩行制御処理の手順に従い、予定採鉱区域をX方向およびY方向それぞれに安定した姿勢で歩行するとともに、穿孔装置30および装薬装置40をX方向およびY方向に移動させて、所定区画に順次に発破孔VHを穿孔し、さらに、その発破孔VHへの装薬が可能になっている。
【0058】
次に、上記火薬カートリッジ60について説明する。
図9に模式的に拡大図示するように、火薬カートリッジ60は、海底熱水鉱床ODに穿孔された発破孔VHに装薬される。本実施形態の火薬カートリッジ60は、発破孔VHへの装薬姿勢において、凸の半球状頭部61および軸方向に沿って複数に分割されたアーチ型ブロック62a〜dが円筒状に組み合わされた円筒部62を有する爆薬筒67を有する。
【0059】
爆薬筒67の上部には、円筒状の保持筒63が設けられ、さらに、保持筒63の上部には、超音波USにより無線で起爆するための指令器を含む起爆素子66が内蔵された起爆素子筒64と、起爆素子筒64の上部に設けられた不発信号器65とが設けられている。なお、同図に示すように、装薬時の発破孔VHへの挿入位置は、起爆素子66が、送波器68からの超音波USを受信する必要がある。そのため、起爆素子筒64の部分を水中に突き出した状態で装薬される。
【0060】
この火薬カートリッジ60によれば、不発信号器65により不発の有無を把握可能であり、また、爆薬筒67は、軸方向に沿って複数に分割されたアーチ型ブロック62a〜dが円筒状に組み合わされた円筒部62を有するので、深海での高い水圧に耐えつつ、爆破時の抵抗を少なくできる。そのため、海底熱水鉱床ODの所定範囲を打ち掛け発破により破砕するための海底熱水鉱床用の火薬カートリッジとして優れている。これにより、複数の所定範囲に対し各打ち掛け発破作業をより効率良く行い得るので、用船費削減に寄与する。
【0061】
次に、上述の採鉱システムによって、海底熱水鉱床ODの所定範囲に打ち掛け発破を行ってそのズリを揚鉱する手順、並びにこの採鉱方法の作用・効果について説明する。
まず、採鉱に際し、
図1に示したように、母船1を目的とする海域の海上SLに停泊する。次いで、母船1に設置されているクレーン等の作業機11を用い、採鉱ステーション20を海中に降ろし、海底SBの適切な位置に設置する。採鉱ステーション20の設置時または設置後に、アンビリカルケーブル等の必要な配線や配管を行う。
【0062】
ここで、採鉱ステーション20の安定着座方法について説明する。
図1に示したように、母船1から採鉱ステーション20をワイヤ11sで吊り下げて海底SBに着底させる場合、採鉱ステーション20は、平面視が、
図5(a)に示す着底準備姿勢の状態とされる。オペレータは、母船1から採鉱ステーション20をワイヤ11sで吊り降ろす。
【0063】
オペレータは、垂下した深度に注意しつつ、海底熱水鉱床ODの所期の位置に採鉱ステーション20を降下させる。そして、オペレータは、複数の支持脚26のうち、少なくとも3脚のモータトルクの応答を検出した時点で吊り下げを停止する。但し、支持脚26の1脚が着座してから、他の3脚が着座する前に予め規定した傾斜角を超えた場合には着座位置を変更する。
【0064】
なお、この吊り下げ操作は、オペレータが管理コンピュータを介して基地制御ユニット90を手動操作してもよいし、管理コンピュータと基地制御ユニット90とにより自動制御してもよい。例えば、採鉱ステーション20の基地制御ユニット90は、吊り下げ操作の終了情報(着座情報)を取得したときに、上記姿勢安定制御を実行する。
【0065】
つまり、基地制御ユニット90は、傾斜センサの姿勢検出情報に基づいて、採鉱ステーション20の姿勢が水平になるように、着底した支持脚26を伸縮させる。基地制御ユニット90は、モータトルク情報に基づいて、着底してない支持脚26を伸長させ、各支持脚26のモータトルクがほぼ均衡するように制御して着底させる。基地制御ユニット90は、採鉱ステーション20の姿勢が水平であると判断したら、姿勢安定制御の終了情報を母船1の管理コンピュータに送信する。
【0066】
母船1のオペレータは、管理コンピュータのディスプレイから採鉱ステーション20の状態を監視し、姿勢安定制御の終了情報を確認したら、ワイヤ11sの吊り下げ張力を緩める指令を管理コンピュータから入力する。このとき、ワイヤ11sの張力変動により、採鉱ステーション20の姿勢が不安定になるおそれがある。そのため、基地制御ユニット90は、姿勢安定制御を継続して実行する。
【0067】
つまり、基地制御ユニット90は、傾斜センサの姿勢検出情報に基づいて、採鉱ステーション20の姿勢が水平になるように各支持脚26の脚長を調整する。これにより、採鉱ステーション20は、初期着底状態で海底SBに安定した姿勢で着底できる。以降、オペレータは、ワイヤ11sの係合解除装置(不図示)によりワイヤ11sの係合を解除し、自立した採鉱ステーション20により採鉱作業を開始する。
【0068】
すなわち、本実施形態の採鉱方法では、採鉱ステーション20の設置後、オペレータは、母船1からアンビリカルケーブルを介して基地制御ユニット90に必要な電力や制御信号を供給し、採鉱ステーション20および穿孔装置30を駆動して海底熱水鉱床ODの所定範囲に発破孔VHをさく孔する(穿孔工程)。さらに、装薬装置40を駆動して火薬カートリッジ60を発破孔VHに装薬する(装薬工程)。そして、母船1から海底熱水鉱床ODの所定範囲を打ち掛け発破により破砕する(打ち掛け発破工程)。その後、打ち掛け発破工程で破砕された海底熱水鉱床ODのズリを洋上に揚鉱する(揚鉱工程)。
【0069】
以下、本実施形態の採鉱ステーション20により、一の所定範囲に対して、複数の発破孔VHを穿孔し、次いで、各発破孔VHに火薬カートリッジ60を装薬する手順を詳しく説明する。まず、穿孔装置30による所定範囲の穿孔方法について説明する。
本実施形態の穿孔工程においては、まず、
図10に示すように、穿孔装置30を駆動して所定の範囲にて発破孔VHをさく孔する。駆動された穿孔装置30は、ドリフタによりロッド後端面への打撃を繰り返し、ビット50でのさく孔面への打撃とともに、第一ガイドシェル45に設けられた送り機構48による穿孔装置30の給進駆動がなされるとともに回転機構によるロッドの回転駆動がなされる。
そのため、この穿孔装置30によれば、海底熱水鉱床ODの所定範囲に、さく孔により複数の発破孔VHを形成できる。ここで、衝撃力によるさく孔であると、さく孔により生じる破砕された海底鉱物は、その粒子径が非常に細かくて粒度が均一になるため、孔内で海水と混合したスラリーとすることができる。
【0070】
採鉱ステーション20は、所期のさく孔深度で発破孔VHを穿孔したら穿孔装置30を後退した後に、穿孔装置30をX−Y平面の所定範囲で移動して、予め定めたプログラムに従い、同図(b)に示すように、所定範囲全体の破砕に必要な数の発破孔VHを形成するように順次にさく孔を行う。
【0071】
このように、本実施形態の採鉱ステーション20は、予め定めたプログラムに従い、着底位置での区画(所定範囲)に多数の発破孔VHを自動的に穿孔可能なので、視認性の問題無く自動的に発破孔VHを穿孔できる。また、採鉱ステーション20は、海底に立設されるとともに、各支持脚26は、垂直方向への移動機構を介してZ方向に個別に相対的スライド移動が可能なので、複雑な海底形状や軟弱地盤にも適用できる。
【0072】
次に、装薬装置40による所定範囲の装薬方法について説明する。
本実施形態の採鉱ステーション20においては、
図11に示すように、装薬装置40を駆動して火薬カートリッジ60を発破孔VHに装薬する。採鉱ステーション20は、一の発破孔VHに装薬したら装薬装置40を後退した後に、装薬装置40をX−Y平面の所定範囲で移動して、予め定めたプログラムに従い、所定範囲全体の発破孔VHに順次に装薬を行う。
【0073】
本実施形態の装薬工程においては、
図11(a)に示すように、第二ガイドシェル55に対する第二フィード機構43のフィード位置を下方の把持位置にするとともに、第二フィード機構43に対する第一フィード機構42のフィード位置を上方の把持位置にする。第一および第二フィード機構42、43をいずれも把持位置として、移動フレーム46をX−Y平面で駆動し、クランプ機構41の開閉アームを開いた状態で、マガジン80に収容されたクランプ対象となる火薬カートリッジ60を把持可能な位置に移動する。同図の矢印は、火薬カートリッジ60を把持可能な位置に移動するイメージを示している。
【0074】
次いで、同図(b)に示すように、火薬カートリッジ60を把持可能な位置に移動したら、クランプ機構41の開閉アームを閉じて火薬カートリッジ60を把持する。同図の二つの矢印は、火薬カートリッジ60を把持するイメージを示している。
次いで、同図(c)に示すように、第二ガイドシェル55に対する第二フィード機構43のフィード位置を上方の抜出位置にして、クランプ対象となる火薬カートリッジ60をマガジン80から抜き出した後に、移動フレーム46をX−Y平面で駆動し、当該火薬カートリッジ60を装薬する発破孔VHに移動する。同図の矢印は、火薬カートリッジ60をマガジン80から抜き出すイメージを示している。
【0075】
次いで、同図(d)に示すように、装薬する発破孔VHに装薬装置40を移動したら、火薬カートリッジ60を発破孔VHに仮装薬する。この仮装薬を行うときは、基地制御ユニット90は、仮装薬のための位置決め処理を実行し、穿孔装置30での穿孔時に取得した所定範囲での穿孔位置情報と、カメラ44で撮像した撮像情報とに基づいて、火薬カートリッジ60の軸心を発破孔VHの軸心に位置合わせする。これにより、相互の軸心を精度良く一致させることができる。基地制御ユニット90またはオペレータは、相互の軸心の一致を確認しつつ、第二ガイドシェル55に対する第二フィード機構43のフィード位置を下方の仮装薬位置に移動して、火薬カートリッジ60を発破孔VHに仮装薬する。同図の矢印は、火薬カートリッジ60を発破孔VHに仮装薬するイメージを示している。
【0076】
次いで、同図(e)に示すように、仮装薬に問題が無いことを確認したら、火薬カートリッジ60を発破孔VHに本装薬する。仮装薬時の問題の有無は、オペレータによる監視や、カメラ44の撮像情報に基づく画像処理結果、第二フィード機構43のフィードトルクの異常の有無等によって総合的に判断される。火薬カートリッジ60を発破孔VHに本装薬するときは、第二フィード機構43に対する第一フィード機構42のフィード位置を下方の装薬位置にする。本装薬時も、仮装薬時同様にフィードトルクの異常の有無等を監視し異常があれば装薬動作を中断する。異常なく所定の装薬位置まで火薬カートリッジ60が挿入されたら、クランプ機構41の開閉アームを開いて火薬カートリッジ60の把持を開放して装薬を完了する。同図の矢印は、火薬カートリッジ60を発破孔VHに本装薬するイメージを示している。
【0077】
このようにして、採鉱ステーション20は、装薬装置40およびこれに付随する上記の各機構を駆動して、
図11(a)から(e)に示す装薬動作を繰り返し、所定範囲に形成された各発破孔VHに火薬カートリッジ60を順次に装薬する。これにより、採鉱ステーション20の装薬装置40によれば、海底熱水鉱床ODの所定範囲に形成された複数の発破孔VHに火薬カートリッジ60を装薬することができる。特に、本実施形態の採鉱ステーション20は、穿孔装置30と同じ駆動体に装薬装置40が装備されているので、予め定めたプログラムに従い、着底位置での区画(所定範囲)において高精度で効率よく火薬カートリッジ60を装薬できる。
【0078】
次に、採鉱ステーション20の自走(歩行)方法について、
図12〜
図14を適宜参照して説明する。
ここでは、一例として、
図12に示すように、採鉱ステーション20の自走、発破孔VHの穿孔および火薬カートリッジ60の装薬によって、40×40mの海底熱水鉱床ODの複数の所定範囲を順次に採鉱する手順を説明する。なお、以下説明する採鉱ステーション20の自走動作は、上記管理コンピュータの監視下、基地制御ユニット90が実行する所定のプログラムに基づき行われるが、これに限定されず、オペレータのマニュアル操作によって行ってもよい。
【0079】
(手順1)準備工程
採鉱ステーション20は、上述した初期着底状態では、
図13(a)に示すように、上下のプラットフォーム21X、21Yの相対位置が、
図5(a)に示した着底準備姿勢において、上部プラットフォーム21Xおよび下部プラットフォーム21Yの全ての支持脚26が着底している。
そのため、基地制御ユニット90は、管理コンピュータから採鉱準備命令を受けると、まず、着底準備姿勢から、上部プラットフォーム21Xの全ての支持脚26を一旦離底させ、中間フレーム21Mと下部プラットフォーム21Yを結合した状態で上部プラットフォーム21XをXの正方向に一杯に移動させる。その後、基地制御ユニット90は、上部プラットフォーム21Xの全ての支持脚26を着底させて
図13(b)に示す採鉱開始状態とする。これにより、上下のプラットフォーム21X、21Yの内側の所定領域が、
図12に示す第一の区画Aとなる。
【0080】
(手順2)Xの正方向への歩行並びに穿孔および装薬
(手順2−1)第一の区画Aにおいて、採鉱ステーション20の基地制御ユニット90は、管理コンピュータから採鉱開始命令を受けると、中間フレーム21Mの内側の所定領域(10m×10m)の採鉱を開始する。
基地制御ユニット90は、一の区画の採鉱時には、採鉱ステーション20の歩行を停止した状態で、中間フレーム21Mの内側の10×10mの所定領域を、
図10に示した穿孔方法で、上述した穿孔装置30のX方向およびY方向の移動により順次に発破孔VHを穿孔する(以下同様)。さらに、基地制御ユニット90は、
図11に示した装薬方法で、上述した装薬装置40のX方向およびY方向の移動により順次に各発破孔VHに火薬カートリッジ60を装薬する(以下同様)。
【0081】
(手順2−2)第一の区画Aでの所期の発破孔VHの穿孔および火薬カートリッジ60の装薬をし終えたら、中間フレーム21Mの内側の所定領域を、第二の区画Bに対応する位置となるように、各部を駆動制御してプラットフォーム21を移動させる。
つまり、第一の区画Aの穿孔および装薬を終えた状態では、
図14(a)に示すように、上部プラットフォーム21Xおよび下部プラットフォーム21Yの全ての支持脚26が着底している。そのため、基地制御ユニット90は、まず、
図14(b)に示すように、上部プラットフォーム21Xの支持脚26を着底させたまま、下部プラットフォーム21Yの4つの支持脚26を離底させる。
【0082】
次いで、基地制御ユニット90は、下部プラットフォーム21Yと中間フレーム21Mを結合した状態で、
図14(c)に示すように、下部プラットフォーム21Yと中間フレーム21MをXの正方向一杯に移動させる。その後、基地制御ユニット90は、
図14(d)に示すように、下部プラットフォーム21Yの4つの支持脚26を下方に伸長してそれぞれ着底させる。これにより、上下のプラットフォーム21X、21Yの内側の所定領域が第二の区画Bとなる。
【0083】
(手順2−3)第二の区画Bにおいて、採鉱ステーション220の基地制御ユニット90は、管理コンピュータから採鉱開始命令を受けると、中間フレーム21Mの内側の所定領域に対して穿孔および装薬を行う。
(手順2−4)第二の区画Bでの所期の発破孔VHの穿孔および火薬カートリッジ60の装薬を終えたら、基地制御ユニット90は、下部プラットフォーム21Yの支持脚26を着底させたまま、上部プラットフォーム21Xの4つの支持脚26を離底させ、次いで、下部プラットフォーム21Yと中間フレーム21Mを結合した状態で、上部プラットフォーム21XをXの正方向一杯に移動させる。その後、上部プラットフォーム21Xの4つの支持脚26を着底させる。
【0084】
次いで、基地制御ユニット90は、上部プラットフォーム21Xの支持脚26を着底させたまま、下部プラットフォーム21Yの4つの支持脚26を離底させ、下部プラットフォーム21Yと中間フレーム21Mを結合した状態で、下部プラットフォーム21Yと中間フレーム21MをXの正方向一杯に移動させる。その後、下部プラットフォーム21Yの4つの支持脚26を下方に伸長してそれぞれ着底させる。これにより、上下のプラットフォーム21X、21Yの内側の所定領域が、
図12に示す第三の区画Cとなる。
【0085】
(手順2−5)以下、同様にして、第三の区画Cでの所期の発破孔VHの穿孔および火薬カートリッジ60の装薬を終えたら、基地制御ユニット90は、下部プラットフォーム21Yの支持脚26を着底させたまま、上部プラットフォーム21Xの支持脚26を離底させ、次いで、上部プラットフォーム21Xと中間フレーム21Mを結合した状態で、上部プラットフォーム21Xと中間フレーム21MをXの正方向一杯に移動させる。
【0086】
次いで、基地制御ユニット90は、上部プラットフォーム21Xの支持脚26を着底させたまま、下部プラットフォーム21Yの支持脚26を離底させ、次いで、下部プラットフォーム21YとMFを結合した状態で、下部プラットフォーム21Yと中間フレーム21MをXの正方向一杯に移動させる。その後、下部プラットフォーム21Yの支持脚26を着底させる。これにより、上下のプラットフォーム21X、21Yの内側の所定領域が、
図12に示す第四の区画Dとなる。
(手順2−6)第四の区画Dにおいて、基地制御ユニット90は、管理コンピュータから採鉱開始命令を受け、中間フレーム21Mの内側の所定領域に、所期の発破孔VHの穿孔および火薬カートリッジ60の装薬をする。
(手順2−7)以下、同様にして、Xの正方向への歩行並びに穿孔および装薬では(2−4)〜(2−6)の手順を繰り返す。
【0087】
(手順3)Yの正方向への走行並びに穿孔および装薬
(手順3−1)また、Y方向に採鉱ステーション220を移動するときは、基地制御ユニット90は、上部プラットフォーム21Xの支持脚26を着底させたまま、下部プラットフォーム21Yの4つの支持脚26を離底させ、次いで、上部プラットフォーム21Xと中間フレーム21Mを結合した状態で、下部プラットフォーム21YをYの正方向一杯に移動させる。その後、下部プラットフォーム21Yの4つの支持脚26を着底させる。
【0088】
(手順3−2)その後、基地制御ユニット90は、下部プラットフォーム21Yの支持脚26を着底させたまま、上部プラットフォーム21Xの4つの支持脚26を離底させ、次いで、上部プラットフォーム21Xと中間フレーム21Mを固定した状態で、上部プラットフォーム21Xと中間フレーム21MをYの正方向一杯に移動させる。その後、上部プラットフォーム21Xの4つの支持脚26を着底させる。
【0089】
(手順3−3)次いで、基地制御ユニット90は、上部プラットフォーム21Xの支持脚26を着底させたまま、下部プラットフォーム21Yの4つの支持脚26を離底させ、上部プラットフォーム21Xと中間フレーム21Mを結合した状態で、下部プラットフォーム21YをYの正方向に、下部プラットフォーム21Yの平面中心が上部プラットフォーム21Xおよび中間フレーム21Mの平面中心に一致する位置まで移動させる。
その後、基地制御ユニット90は、下部プラットフォーム21Y4つの支持脚26を着底させる。これにより、上下のプラットフォーム21X、21Yの内側の所定領域が、
図12に示す第五の区画Eとなる。第五の区画Eにおいて、基地制御ユニット90は、管理コンピュータから採鉱開始命令を受けると、中間フレーム21Mの内側の所定領域に、所期の発破孔VHの穿孔および火薬カートリッジ60の装薬をする。
【0090】
(手順4)繰返し
以下、Xの負方向に移動する場合は、Xの正方向と同様の手順を逆方向に向けて行えばよく、予定採鉱区域(40×40m)での発破孔VHの穿孔および装薬の終了まで、上述した(手順2)と(手順3)の動作を繰り返し行う。また、X方向の走行に関しては、Xの正方向と負方向の手順を交互に実行すればよい。
これにより、
図15に示すように、隣接する所定領域に対して順次に、所期の発破孔VHの穿孔および火薬カートリッジ60の装薬を行うことができる。そして、
図1に示したように、設備を退避したら、適当なタイミングにて装薬がされた所定範囲を打ち掛け発破により破砕することができる。
【0091】
次に、本実施形態の海底熱水鉱床の採鉱システム、および、これによる海底熱水鉱床の採鉱方法の作用効果について説明する。
上述したように、本実施形態の海底熱水鉱床の採鉱方法は、海底熱水鉱床ODの所定範囲に複数の発破孔VHを穿孔する発破孔穿孔工程と、所定範囲の複数の発破孔VHの全部または一部に火薬カートリッジ60を装薬する装薬工程と、装薬がされた所定範囲を打ち掛け発破により破砕する打ち掛け発破工程と、打ち掛け発破工程で破砕された海底熱水鉱床ODのズリを洋上に揚鉱する揚鉱工程と、を含むものである。
【0092】
そのため、本実施形態の海底熱水鉱床の採鉱方法によれば、海底熱水鉱床ODの所定範囲を打ち掛け発破により破砕するので、各採鉱作業を効率良く行うことができるため、採鉱効率が良い。そして、本実施形態の打ち掛け発破であれば、洋上にて小型船である母船1によって発破作業が可能であり、揚鉱工程において、仮に大型船舶を揚鉱に用いる場合であっても、破砕された海底熱水鉱床ODのズリを洋上に揚鉱するときに限定すればよいので、大型採鉱船の常時停船が不要であり、用船費を大幅に削減できる。また、ツール交換の回数を低減できる。
【0093】
なお、所定範囲のX−Y平面での移動、並びに、移動後の発破孔VHの穿孔および火薬カートリッジ60の装薬は、本実施形態のように、コンピュータ(上記管理コンピュータ、および基地制御ユニット90等)により自動的に行ってもよいし、各採鉱ステーション20の状況をオペレータが母船1から監視しつつ、オペレータの手動操作によって行ってもよい。
【0094】
特に、本実施形態の海底熱水鉱床の採鉱システムでは、採鉱ステーション20は、ジャッキアップ式のプラットフォームを備えているので、海底熱水鉱床ODの傾斜や起伏に柔軟に対応できる上、自らが水平方向に移動可能な機構を有するので、最初の区画の発破孔VHの穿孔が終了した後は、次の隣接する区画に自ら移動できる。
よって、この採鉱ステーション20を採用することにより、プラットフォームの移動に際し、採鉱ステーション20の位置替え(リロケーション)を行う船舶(IRV)を不要または使用を要する状態を大幅に少なくすることができる。そのため、IRVによる自身の吊り上げ、移動、着底の作業に要する多くの時間とコストが削減できる。また、採鉱期間中、移動時のIRVが不要なので、プロジェクトの工期や用船費を大きく削減できる。
【0095】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能なことは勿論である。
【0096】
ここで、海底熱水鉱床では、熱水が噴出するチムニー(煙突状の熱水噴出突起)が海山に多く存在するところ、このようなチムニーの存在や高温領域がある点を考慮することも、安全かつ効率良い採鉱を行う上で重要である。
そこで、上述した装薬工程において、火薬カートリッジ60の装薬に際し、発破孔VHの温度(例えば水温)を測定し、所定温度以下の温度の発破孔VHに装薬を行ない、所定温度を超える温度の発破孔VHには装薬を行なわないことは好ましい。このような採鉱方法であれば、海底熱水鉱床ODの高温領域での誤爆を防止する上で好適である。
【0097】
また、発破孔VHの温度は、発破孔VHを穿孔している時のスラリーの温度に基づいて判定することは好ましい。このような採鉱方法であれば、海底熱水鉱床ODの高温領域での誤爆を防止する上でより好適である。スラリーの温度は、例えば採鉱ステーション20の穿孔装置30に装備すればよい。
つまり、海底熱水鉱床ODから噴出される水温は、深海底の水温に比べ非常に高い。そのため、アクティブな熱水噴出口の位置や熱水噴出経路は、水温を測定することで判定できる。そして、穿孔途中で穿孔中の発破孔VHが熱水噴出経路に通じるおそれを考慮すれば、穿孔時に掘削されたスラリーの温度を測定することは安全管理上重要であるといえる。
【0098】
また、例えば上記実施形態では、所定範囲について、所期の発破孔VHを穿孔後に、直ぐに各発破孔VHに火薬カートリッジ60を装薬する例を説明したが、これに限定されず、上記高温領域の存在を考慮すると、所定範囲相互の穿孔および装薬の手順について、複数の所定範囲に対して直ちに装薬せずに、空間を空けつつ順次に装薬するようにしてもよい。
図16を参照して、複数の所定範囲として、上述した第一の区画Aから第四の区画Dを例にして、これら複数の所定範囲A〜Dにおける穿孔および装薬に際し、直ちに装薬せずに、時間を空けつつ順次に装薬する例を具体的に説明する。なお、同図では、複数の所定範囲を一般化する意味で、所定範囲A〜Dに対し、Nを自然数とし、複数の所定範囲として、N番目から順に穿孔する所定範囲を、所定範囲N、所定範囲(N+1)、所定範囲(N+2)、および、所定範囲(N+3)とする呼称を併せて示す。
【0099】
図16に示すように、この例では、まず、ステップS1として、所定範囲A(N)を穿孔する。次いで、ステップS2として、所定範囲A(N)を穿孔直後には、当該所定範囲A(N)には装薬を行わずに続く所定範囲B(N+1)を穿孔する。次いで、ステップS3として、所定範囲B(N+1)を穿孔直後には、当該所定範囲B(N+1)には装薬を行わずに、所定範囲A(N)に装薬を行なう。
【0100】
次いで、ステップS4では、続く所定範囲C(N+2)を穿孔する。次いで、ステップS5では、所定範囲C(N+2)を穿孔直後には、当該所定範囲C(N+2)には装薬を行わずに前記所定範囲B(N+1)に装薬を行なう。次いで、ステップS6では、続く所定範囲D(N+3)を穿孔する。以下、上述したステップの流れに従い、同様にして、所定範囲D(N+3)を穿孔直後には、当該所定範囲(N+3)には装薬を行わずに前記所定範囲(N+2)に装薬を行なうという手順を繰り返す。
【0101】
このような穿孔および装薬方法であれば、複数の所定範囲に対し、穿孔後に直ちには装薬をせずに、時間を空けつつ順次に装薬できるため、海底熱水鉱床の高温領域での誤爆を防止する上で好適である。また、このような穿孔および装薬方法であれば、複数の所定範囲に対し、各打ち掛け発破作業を効率良く、且つより安全に行い得るので、用船費を削減する上でより好適である。
【0102】
また、例えば上記実施形態では、海上基地として母船1を例に説明したが、これに限定されず、海上基地として機能すれば、例えば海上に建設されたプラットフォームなどであってもよい。また、発破孔VHを形成する方法および装置は、打撃機構によるさく孔に限定されず、回転機構によるドリル穿孔であってもよい。但し、採鉱した鉱物をスラリー状とし、粒子径を非常に細かくして粒度を均一にする上では、ドリル穿孔ではなく、打撃機構によるさく孔が好ましい。
【0103】
また、例えば採鉱ステーション20の位置・方位の計測は、海上基地となる母船1と採鉱ステーション20とをつなぐ超音波、採鉱ステーション20に装備したジャイロ、さらに深度計を搭載して、精度を上げることが好ましい。
また、
図1に示すように、海上の母船1から採鉱ステーション20を投入する際に、人工衛星ASの発する電波に基づくGPSで採鉱ステーション20の投入位置を計測し、海底SBに着座するまでの経路を採鉱ステーション20に搭載された慣性センサで計測することが好ましい。海底着座開始地点から海底を歩行する移動工程では、海底基地のメカニカルな移動量、移動方向から積算することが好ましい。