(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
微生物または細胞を、培養槽内で雑菌混入を防いだ状態で純粋培養し、食品、薬品、有機酸・アルコール等の化学品、抗体等の有用化学物質、または、バイオマスからのバイオエタノール等の化学品を製造する生物反応装置であって、
上記微生物または細胞、培地を含有する培養液を収容する培養槽を備え、
生物反応終了後の上記生物反応装置の洗浄・滅菌時に、上記培養槽内の上記培養液または上記培養槽内に供給される洗浄液に、オゾン等の殺菌性を有する気体を含有するマイクロナノバブルを含有させる、上記オゾン等の殺菌性を有する気体を供給する管路が接続されたマイクロナノバブル発生装置を備えることを特徴とする生物反応装置。
上記培養液に上記酸素を含有するマイクロナノバブルを含有させるマイクロナノバブル発生装置と、上記洗浄液に上記オゾン等の殺菌性を有する気体を含有するマイクロナノバブルを含有させるマイクロナノバブル発生装置とが同一の装置であって、このマイクロナノバブル発生装置には、上記酸素を含有する気体を供給する管路と、上記オゾン等の殺菌性を有する気体を供給する管路とが、切り換え可能に設けられていることを特徴とする、請求項5に記載の生物反応装置。
上記培養液に上記酸素を含有するマイクロナノバブルを含有させるマイクロナノバブル発生装置と、上記洗浄液に上記オゾン等の殺菌性を有する気体を含有するマイクロナノバブルを含有させるマイクロナノバブル発生装置とが別々の装置であることを特徴とする、請求項5に記載の生物反応装置。
マイクロナノバブル発生装置が上記培養槽の外部に設けられ、上記培養液または上記洗浄液にマイクロナノバブルを吹き込むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の生物反応装置。
マイクロナノバブル発生装置が上記培養槽に上記培養液または上記洗浄液を供給する管路に設けられ、上記培養槽に供給される上記培養液または上記洗浄液にマイクロナノバブルを含有させることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の生物反応装置。
上記ろ過器は中空糸膜とこの中空糸膜を収容する容器とからなり、上記培養液が上記中空糸膜の内部に供給され、上記中空糸膜を通して外部からろ過液が取り出されることを特徴とする、請求項3〜9のいずれかに記載の生物反応装置。
上記ろ過器を通過した上記ろ過液または上記洗浄液にマイクロナノバブルを含有させるマイクロナノバブル発生装置を備えることを特徴とする、請求項3〜10のいずれかに記載の生物反応装置。
上記ろ過器による分離により、上記培養液に含有される上記培地が上記濃縮液側に入り込む割合を50%以下、好ましくは25%以下とすることを特徴とする、請求項17に記載の生物反応方法。
【発明を実施するための形態】
【0021】
まず、本発明の生物反応装置及び生物反応方法の一般的な事項について説明する。
本発明の生物反応は、培養槽に収容した微生物等を含有する培養液中において、培養液を栄養源として、微生物等に反応生成物を生成させるものである。
【0022】
生物反応を行う生物反応装置としては、
1)1つの培養槽で微生物等に反応生成物を生成させ、この反応生成物を回収するタイプのもの、及び
2)培養槽で微生物等を増殖させ、これを発酵槽等の別の槽に移して、この別の槽で微生物等に反応生成物を生成させ、この反応生成物を回収するタイプのもの
がある。本発明における「培養槽」とは、上記1)のタイプにおいては、「1つの培養槽」を意味し、上記2)のタイプにおいては、「培養槽」及び「発酵槽等の別の槽」を意味する。
【0023】
本発明における培養液の培地(微生物等の栄養源)としては、糖類、窒素含有化合物等を用いる。糖類としては、通常、マルトース、スクロース、グルコース、フルクトース、これらの混合物等の糖類が用いられ、培養液における糖類の濃度は、特に限定されないものの、0.1〜10w/v%に設定するのが好ましい。また、窒素含有化合物としては、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウムまたはコーンスティープリカー、酵母エキス、肉エキス、ペプトン等が用いられ、0.1〜10w/v%に設定するのが好ましい。さらに、培養液には糖類、窒素含有化合物以外にも、必要に応じて、ビタミン、無機塩類等を添加することが好ましい。
【0024】
本発明における細胞としては、例えば、抗体医薬として使用される生理活性ペプチドまたは蛋白質を製造するための動物細胞、とりわけ遺伝子組換え動物細胞等が挙げられる。
【0025】
また、微生物としては、醸造、発酵等の技術分野で従来用いられている、アスペルギルス菌等の麹菌、納豆菌、酢酸菌、酵母菌、乳酸菌等の好気性もしくは通性嫌気性微生物のほか、遺伝子組み換え技術で創り出される各種好気性微生物を用いることができる。
【0026】
培養槽で生成された反応生成物は、微生物等を含有する培養液と共に培養槽から抜き出され、ろ過器で微生物とろ過液に分離され、ろ過液から反応生成物が回収される。
【0027】
本発明のろ過器は、ろ過膜と該ろ過膜を収容する容器とからなる。ろ過膜は、有機膜、無機膜を問わない。ろ過膜の形状は、平膜、中空糸膜、スパイラル式などいずれの形状のものも採用することができる。中でも、中空糸膜モジュールが好ましく、中空糸膜モジュールであれば、外圧式、内圧式のいずれの形状のものも採用することができる。
【0028】
本発明のろ過方式としては、中空糸膜モジュールを用いたクロスフローろ過が好ましい。このろ過方式は、反応生成物、微生物等を含有する培養液を中空糸膜の内部に供給しつつろ過して、中空糸膜を通して外部からろ過液を取り出すものであり、中空糸膜の内部に堆積する微生物等の膜汚れが上記培養液の平行流による剪断力にて掻き取られるので、安定したろ過状態を長期にわたって維持することができる。
【0029】
中空糸膜モジュールを用いたクロスフローろ過を行う場合には、膜汚れを掻き取るために、ろ過の対象となる液体をある程度以上の流速で中空糸膜内を流す必要がある。しかしながら、本発明では、ろ過の対象となる、微生物等を含有する培養液が酸素のマイクロナノバブルを含んでいるため、通常より低い流速で流しても、膜汚れを掻き取ることができ、微生物等に与えるストレスやダメージを大幅に軽減することができる。
【0030】
具体的には、一般的なクロスフローろ過においては、循環流速が、有機膜を用いた場合には1〜2m/s程度、セラミック膜を用いた場合には1〜3m/s程度で定常運転されるが、培養液に酸素のマイクロナノバブルを含有させることにより、膜汚れを少なく、ろ過抵抗を小さく維持できるため、同じフラックス(単位時間・単位膜面積あたりの膜ろ過水量)を得るために必要な循環流速を0.2〜1.5m/s程度まで低減することができる。また、同じ循環流速で運転する場合、フラックスを1.2〜2.0倍程度増加することができる。
【0031】
ろ過膜としては、分離性能及び透水性能、さらには耐汚れ性の観点から、有機高分子化合物を好適に使用することができる。例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、セルロース系樹脂およびセルローストリアセテート系樹脂などが挙げられ、これらの樹脂を主成分とする樹脂の混合物であってもよい。
【0032】
溶液による製膜が容易で物理的耐久性や耐薬品性にも優れているポリ塩化ビニル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂およびポリアクリロニトリル系樹脂が好ましく、ポリフッ化ビニリデン系樹脂またはそれを主成分とする樹脂が、化学的強度(特に耐薬品性)と物理的強度を併せ有する特徴をもつためより好ましく用いられる。
【0033】
ここで、ポリフッ化ビニリデン系樹脂としては、フッ化ビニリデンの単独重合体が好ましく用いられる。さらに、ポリフッ化ビニリデン系樹脂は、フッ化ビニリデンと共重合可能なビニル系単量体との共重合体を用いても構わない。フッ化ビニリデンと共重合可能なビニル系単量体としては、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよび三塩化フッ化エチレンなどが例示される。
【0034】
ろ過膜の平均細孔径は、使用する目的や状況に応じて適宜決定することができるが、ある程度小さい方が好ましく、通常は0.01μm以上1μm以下であることが好ましい。中空糸膜の平均細孔径が0.01μm未満であると、微生物等、糖や蛋白質などの成分やその凝集体などの膜汚れ成分が細孔を閉塞して、安定運転ができなくなる。透水性能とのバランスを考慮した場合、好ましくは0.02μm以上であり、さらに好ましくは0.03μm以上である。また、1μmを超える場合、膜表面の平滑性と膜面の流れによる剪断力や、逆洗やエアースクラビングなどの物理洗浄による細孔からの汚れの成分の剥離が不十分となり、安定運転ができなくなる。
【0035】
また、平均細孔径が微生物等の大きさに近づくと、これらが直接細孔を塞いでしまう場合がある。さらに発酵液中の微生物または培養細胞の一部が死滅することにより細胞の破砕物が生成する場合があり、これらの破砕物によって細孔の閉塞を回避するために、平均細孔径は0.4μm以下が好ましく、0.2μm以下が好適である。
【0036】
ここで、ろ過膜の平均細孔径は、倍率10,000倍以上の走査型電子顕微鏡観察で観察される複数の細孔の直径を測定し、平均することにより求めることができる。10個以上、好ましくは20個以上の細孔を無作為に選び、それら細孔の直径を測定し、数平均して求めることが好ましい。細孔が円状でない場合などは画像処理装置等によって、細孔が有する面積と等しい面積を有する円、すなわち等価円を求め、等価円直径を細孔の直径とする方法により求めることも好ましく採用できる。
【0037】
本発明の生物反応装置及びこの生物反応装置を用いた生物反応方法においては、目的物の回収は、バッチ式で行ってもよいし、連続式で行ってもよい。
【0038】
バッチ式で行う場合には、培養槽内における生物反応が完了した後、培養槽ポンプを駆動して、ろ過したろ過液をろ過液貯槽に移送する。
【0039】
連続式で行う場合には、培養槽の微生物等を含有する培養液の水位が一定に保たれるように、培養槽に供給される培養液の量とバランスをとって、ろ過したろ過液を抜き出し、ろ過液貯槽に移送する。
【0040】
バッチ式、連続式のどちらを選定するかは、生物反応の効率、必要とされる目的物の純度、経済性等を考慮して、適宜選択することができる。
【0041】
まず、本発明の第1の特徴は、前述のように、生物反応終了後に、微生物等の滅菌・殺菌を、液中に速やかに溶解・拡散し長時間残存するオゾン等のマイクロナノバブルを用いて、効率的、経済的かつ十分に行うことである。
【0042】
これにより、前述のように、従来の水蒸気を用いる方法では、設備、手間を要し、また、従来の薬剤を用いる方法では、作業者の安全性を十分に確保するのが難しく、また、殺菌後に残存した薬剤を中和もしくは分解するための廃水処理手段が別途必要になり、かつ、生物反応装置に腐食等の損傷が生じるおそれがあるのに対し、本発明のオゾン等のマイクロナノバブルを用いた滅菌・殺菌方法では、オゾン等のマイクロナノバブルが培養液または洗浄液中に速やかに溶解・拡散し長時間残存するので、微生物等の滅菌・殺菌を効率的、経済的かつ十分に行うことができ、さらに、後記の実施例・比較例で示すように、培養槽、不活化槽等の槽上部のような、洗浄液または培養液が直接接触しない箇所に対しても、オゾン等の殺菌性を有する気体により滅菌・殺菌作用を及ぼすことができる。
【0043】
オゾン等のマイクロナノバブルを用いて微生物等の滅菌・殺菌を行う具体的な方法については、以下の第1実施形態乃至第7実施形態において説明する。
【0044】
つぎに、本発明の第2の特徴は、前述のように、生物反応装置に備えたマイクロナノバブル発生装置により、生物反応時には微生物等を含有する培養液に、酸素のマイクロナノバブルを含有させ、また、生物反応終了後の洗浄・滅菌時には、洗浄液に、オゾン等のマイクロナノバブルを含有させることである。
【0045】
これにより、前述のように、微生物等を用いた生物反応を効率的かつ経済的に行うことができると共に、生物反応終了後の洗浄・滅菌時には、洗浄液に、速やかに溶解・拡散し長時間残存するオゾン等のマイクロナノバブルを含有させることにより、生物反応装置、特にろ過膜の洗浄・滅菌を効率的、経済的かつ十分に行うことができる。また、後記の実施例・比較例で示すように、培養槽上部のような洗浄液が直接接触しない箇所に対しても、オゾン等の殺菌性を有する気体により滅菌・殺菌作用を及ぼすことができる。
【0046】
本発明の第2の特徴については、以下に第1実施形態乃至第6実施形態も挙げて説明する。
微生物等を含有する培養液または洗浄液にマイクロナノバブルを含有させる手段としては、
a)培養槽の外部に設けたマイクロナノバブル発生装置により、培養槽の微生物等を含有する培養液にマイクロナノバブルを放出する手段、
b)培養槽に培養液を供給する管路に設けたマイクロナノバブル発生装置により、培養槽に供給される培養液にマイクロナノバブルを含有させる手段、
c)微生物等を含有する培養液から回収したろ過液に、マイクロナノバブル発生装置によりマイクロナノバブルを含有させ、このマイクロナノバブルを含有するろ過液を培養槽に還流する手段、
d)マイクロナノバブルを予め含有させた培養液を、管路を通じて培養槽に供給する手段、
などを採用することができる。
【0047】
これらの手段は、単独で、あるいは、組み合わせて採用できるが、どの手段を採用するかは、使用する微生物等の剪断力等に対する耐性、生物反応の効率、経済性等を考慮して、適宜選択することができる。
【0048】
微生物等に与えるストレスやダメージが最も少ない手段は、上記b)及びd)の手段である。一般的には、上記a)の手段ではマイクロナノバブルの放出によって生じる剪断力により、また、上記c)手段ではろ過の際に生じる剪断力により、微生物等にストレスやダメージが与えられため、ストレスやダメージに弱い微生物等を用いる場合には、上記b)またはd)の手段を用いるのが好ましい。
【0049】
なお、後述するように、微生物等を多孔質構造体で担持する手法を採用すれば、このようなストレスやダメージを大幅に軽減することができる。
【0050】
マイクロナノバブル発生装置としては、公知あるいは市販されている装置を用いることができる。具体的には、例えば、ある程度の高圧で十分な量の気体を液中に溶解させた後、その圧力を解放することで溶解した気体の過飽和条件を作り出す「加圧溶解型マイクロバブル発生装置」、水流を起こして渦を発生させ、渦内に大きな気泡を巻き込み、この渦を崩壊させたときに気泡がバラバラに細分化する現象を利用した「気液二相流旋回型マイクロバブル発生装置」等を用いることができる。
【0051】
また、マイクロナノバブル発生装置としては、例えば、特開2007−312690号公報、特開2006−289183号公報、特開2005−245817号公報、特開2007−136255号公報、特開2009−39600号公報に記載されたもの等を用いることができる。
【0052】
本発明の最大の特徴点は、このマイクロナノバブル発生装置を活用して、生物反応時には微生物等を含有する培養液に、酸素のマイクロナノバブルを含有させ、また、生物反応終了後の洗浄・滅菌時には、洗浄液に、オゾン等のマイクロナノバブルを含有させることにあるが、酸素のマイクロナノバブルの発生と、オゾン等のマイクロナノバブルの発生は、同一のマイクロナノバブル発生装置で行っても良いし、別々のマイクロナノバブル発生装置を用いて行っても良い。同一のマイクロナノバブル発生装置で行う場合には、この装置への酸素を含有する気体の供給、オゾン等を含有する気体の供給を切替弁等により切り換えるようにする。
【0053】
酸素のマイクロナノバブルの発生と、オゾン等のマイクロナノバブルの発生とを同一のマイクロナノバブル発生装置で行うほうが、生物反応装置の製造コストを削減でき、また、装置をコンパクトにできるので好ましい。
【0054】
生物反応時には微生物等を含有する培養液に、酸素のマイクロナノバブルを含有させることにより、特許文献1〜4にも記載されているように、微生物等の活性化を促進し、生物反応の反応効率の向上、反応時間の短縮等を図ることができる。
【0055】
本発明では、生物反応時に微生物等を含有する培養液に、酸素のマイクロナノバブルを含有させるが、微生物等に呼吸に必要な酸素を効率的に供給する観点からは、マイクロナノバブルの酸素含有率を高く設定するのが好ましい。
【0056】
また、本発明では、生物反応終了後の洗浄・滅菌時には、洗浄液に、オゾン等のマイクロナノバブルを含有させることにより、生物反応装置、特にろ過膜の細部まで洗浄・滅菌を経済的且つ十分に行うことができる。
【0057】
本発明では、オゾン等のマイクロナノバブルに含有される「オゾン等の殺菌性を有する気体」としてオゾンを好適に用いることができるが、オゾンは、一般に行われている水銀灯による短い波長の紫外線照射、高電圧による低温放電等によって、空気または酸素から発生させることができる。
【0058】
洗浄液へのオゾンの供給量は、滅菌の対象となる菌の種類、温度、pH等に異なるが、洗浄液中のオゾン濃度が1ppm前後となるように供給することが好ましい。洗浄液中のオゾン濃度が低すぎる場合には、殺菌力が不足し、特に、ろ過膜の細部まで十分に滅菌することができなくなる。一方、洗浄液中のオゾン濃度が高すぎる場合には、経済的でなく、生物反応装置の内部、ろ過膜等を劣化させるおそれもある。
【0059】
オゾン等のマイクロナノバブルを含有させる洗浄液としては、例えば、イオン交換水、逆浸透膜透過水、蒸留水等の水や、アルコール類が好適に使用される。アルコール類としては、1−ブタノール、2−ブタノール、1−ヘプタノール等の1価のアルコール類、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコールに加え、ブチルセロソルブ、フェニルセロソルブ等が例示される。また、シリコーンオイルや、界面活性剤を添加した水も使用することができる。
【0060】
洗浄液は、水に電解質を溶解したものであっても良く、アルカリ、酸、酸化剤または還元剤を添加したものあってもよい。なお、添加物としては、分解物が発生するなどして、ろ過膜やモジュール部材等に悪影響を与えないものが好適に用いられる。特に添加物を含有しない水は、ろ過液に混入してもろ過液の性質に与える変化が小さい点で好ましい。
【0061】
洗浄液は、ろ過膜との親和性が高い方が液体の供給が容易となる。したがって、ろ過膜が親水性の場合には、親水性の液体を選択し、疎水性のろ過膜には疎水性の液体を選択することが好ましい。あるいは、疎水性のろ過膜を使用する場合であっても、例えば、水と相溶性のグリセリンに疎水性ろ過膜を浸漬処理することにより、もしくは、一旦、グリセリンをアルコールに置換することにより、グリセリンを水で置換することができるため、疎水性ろ過膜の液体として水を選択することが可能となる。
【0062】
洗浄液として水以外の溶媒を使用する場合、洗浄後、ろ過膜に水を供給して、残存する液体を洗浄することが好ましい。
【0063】
洗浄・滅菌は、通常、次の工程で行われる。
1)生物反応装置から、生物反応に用いた微生物等および微生物等を含有する培養液を除去する。
2)培養槽に洗浄液を収容し、この洗浄液にオゾン等のマイクロナノバブルを含有させる。なお、洗浄液へのオゾン等のマイクロナノバブルの含有は、上記a)〜d)で説明したように、培養槽に収容した洗浄液、培養槽に供給される段階の洗浄液、ろ過膜を通り培養槽に還流される洗浄液、および/または、培養槽に供給される前の洗浄液に対して行われる。
3)オゾン等のマイクロナノバブルを含有させた洗浄液を、生物反応時において、微生物等を含有する培養液またはろ液が流されるのと同じ経路で流して、生物反応装置内部を洗浄・滅菌する。
【0064】
このように、培養槽に収容する液体を培養液から洗浄液に変更するだけで、生物反応を実施する装置をそのまま利用して、生物反応装置内部を洗浄・滅菌することができる。また、通常の方法では洗浄・滅菌が難しい、生物反応装置内部の隅部、ろ過膜の細孔等も十分に洗浄・滅菌することができる。
【0065】
特に、ろ過膜は多数の細孔を有しており、これらの細孔に詰まった微生物等、有機物等を十分に除去し、滅菌することが難しい。上記1)〜3)のろ過器の1次側に洗浄液を供給し、ろ過器の2次側にろ過をすることでろ過膜の洗浄・滅菌を行うこと(以下、「順洗」という。)によっても、実用上十分な洗浄・滅菌を行うことができるが、さらに十分な洗浄・滅菌を行いたい場合、洗浄・滅菌時間を短縮したい場合等には、逆洗を併用することができる。
【0066】
この逆洗は、ろ過器の2次側に接続した管路から、オゾン等のマイクロナノバブルを含有させた洗浄液を供給し、ろ過器の1次側にろ過をすることでろ過膜の洗浄・滅菌を行うものである。洗浄・滅菌を十分に行うため、または、洗浄・滅菌時間を短縮するためには、順洗と逆線を複数回繰り返し行うことが好ましい。
【0067】
ろ過膜を洗浄・滅菌した後の洗浄液は、生物反応装置の外部に排出しても良いし、培養槽に還流して培養槽等を洗浄・滅菌するようにしても良い。洗浄初期におけるろ過膜を洗浄・滅菌した洗浄液は、微生物等、有機物等を高い濃度で含んでいることから、洗浄初期においては、この洗浄液を生物反応装置の外に排出し、ろ過膜がある程度十分に洗浄・滅菌された段階で、この該洗浄液を培養槽に還流し培養槽内を洗浄・滅菌することが好ましい。
【0068】
さらに、ろ過膜を洗浄・滅菌した後の洗浄液は、1回の洗浄・滅菌でろ過器の出口から排出しても良いし、ろ過器の入口に還流して再度ろ過膜を洗浄・滅菌するようにしても良い。洗浄初期におけるろ過膜を洗浄・滅菌した洗浄液は、微生物等、有機物等を高い濃度で含んでいるためろ過器の出口から排出し、ろ過膜がある程度十分に洗浄・滅菌された段階で、この洗浄液を、ろ過器の入口に還流して再度ろ過膜を洗浄・滅菌するようにすれば洗浄液を節約できるので好ましい。
【0069】
また、該洗浄液で培養槽内を洗浄・滅菌する際には、該洗浄液をシャワーのように広範囲に散布するようにすれば、培養槽の内壁を十分に洗浄・滅菌できるので好ましい。
【0070】
洗浄・滅菌は、ろ過膜の状況、微生物等の耐性等に応じて、これらが十分に洗浄・滅菌できる時間で行う。
【0071】
以上に説明したように、本発明の生物反応装置及びこの生物反応装置を用いた生物反応方法は、生物反応時には、微生物等を用いた生物反応を効率的かつ経済的に行うことができると共に、生物反応終了後に培養装置を洗浄・滅菌する時には、生物反応装置、特に、ろ過膜等の洗浄・滅菌を効率的、経済的かつ十分に行うことのできる極めて優れたものである。
【0072】
なお、本発明では、生物反応を、酸素のマイクロナノバブルを含有させた微生物等を含有する培養液で行うので、微生物等を細孔の奥まで担持させた、担持密度の高い多孔質構造体を用いた場合でも、多孔質構造体の細孔の奥に担持した微生物等にも呼吸に必要な酸素を十分に供給できるので、生物反応の効率を向上させることができる。この場合、ろ過を効率的、経済的に行うことができ、さらに、微生物等に与えるストレスやダメージも小さくすることができる。
【0073】
このように、本発明の生物反応装置及びこの生物反応装置を用いた生物反応方法は、マイクロナノバブルを利用して、微生物等用いた生物反応を効率的かつ経済的に行うことができ、醸造や発酵といった生物反応を利用する食品、薬品、化学品などの製造のみならず、バイオマスを利用してバイオエタノール等を製造するバイオリファイナリーにも適用できる有用なものである。
【0074】
以下、本発明の実施形態を、添付の図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0075】
<第1実施形態>
図1に、この発明の生物反応装置の第1実施形態を模式的に示す。なお、第1実施形態では、培養槽1には、微生物等を含有する培養液6を撹拌するための培養槽撹拌機17が設置されている。
【0076】
第1実施形態では、生物反応時には、
a)培養槽1に培養液7を供給する管路に設けられたマイクロナノバブル発生装置3により、培養槽1に供給される培養液7に、酸素のマイクロナノバブルを含有させること、及び
b)培養槽1の外部に設けられたマイクロナノバブル発生装置2により、培養槽1内の微生物等を含有する培養液6に、酸素のマイクロナノバブルを含有させること
が行われる。
【0077】
培養槽1で生成された反応生成物は、培養槽ポンプ11により、微生物等を含有する培養液6と共に培養槽1から抜き出され、ろ過器10において、ろ過液と、ろ過液が除かれた微生物等を含有する培養液(以下、「微生物等の濃縮液」という。)に分離され、バルブ12及びバルブ13を開とした状態で、ろ過液はろ過液貯槽16に貯えられ、微生物等の濃縮液は管路を通って培養槽1に還流される。
【0078】
生物反応終了後の洗浄・滅菌時には、培養槽1及びろ過液貯槽16から、それぞれ、微生物等を含有する培養液6及びろ過液が除かれた状態となっているが、
a)マイクロナノバブル発生装置3により、培養液7に代えて培養槽1に供給される洗浄液に、オゾン等のマイクロナノバブルを含有させること、及び
b)マイクロナノバブル発生装置2により、培養槽1内の洗浄液に、オゾン等のマイクロナノバブルを含有させること
が行われる。
【0079】
まず、オゾン等のマイクロナノバブルを十分に含有させた洗浄液により、培養槽1内部を洗浄・滅菌する。
【0080】
その後、オゾン等のマイクロナノバブルを十分に含有させた洗浄液を、培養槽ポンプ11により培養槽1から抜き出し、バルブ12を閉、バルブ13を開として、ろ過器10のろ過膜を洗浄・滅菌(順洗)すると共に、ろ過器10→ろ過液貯槽16の管路内部を洗浄・滅菌する。また、バルブ12を開、バルブ13を閉とすれば、ろ過器10→培養槽1の管路内部を洗浄・滅菌することができる。
【0081】
第1実施形態では、
1)マイクロナノバブル発生装置2及び3に供給される気体を、生物反応時の「酸素を含有する気体」から「オゾン等を含有する気体」に切り換える、
2)培養槽1に供給される液体を、生物反応時の「培養液」から「洗浄液」に切り換える、
といった簡単な操作によって、生物反応と同様の操作により洗浄・滅菌を行うことができる。
【0082】
さらに、オゾン等のマイクロナノバブルを含有する洗浄液は、培養液、ろ過液と同じように、ろ過器のろ過膜の細部まで行き渡るため、ろ過膜に負担をかけずに十分に洗浄・滅菌を行うことができる。
【0083】
さらに、第1の実施形態では、生物反応時において、ろ過器10で分離された微生物等の濃縮液を培養槽1に戻すため、培養槽1内の微生物等の濃度を高く維持することができる。
【0084】
<第2実施形態>
図2に、この発明の生物反応装置の第2実施形態を模式的に示す。
第2実施形態は、第1実施形態における、マイクロナノバブル発生装置2及び3に代えて、マイクロナノバブル発生装置4を用いると共に、微生物等のろ過液にマイクロナノバブルを含有させて、培養槽1に還流するようにしたものである。
【0085】
また、第2実施形態では、
1)ろ過膜を洗浄・滅菌した洗浄液を、生物反応装置の外部に排出するか、または、培養槽に還流するかを選択できる機能、及び
2)ろ過膜を洗浄・滅菌した洗浄液を、1回の洗浄・滅菌でろ過器の出口から排出するか、または、ろ過器の入口に還流するかを選択できる機能、
が設けられている。これら1)及び2)の機能は、他の実施形態にも、適宜設けることができる。
【0086】
第2実施形態では、次のようにして、生物反応時における、微生物等を含有する培養液への、酸素のマイクロナノバブルの含有、及び、生物反応終了後の洗浄・滅菌時における、洗浄液への、オゾン等のマイクロナノバブルの含有が行われる。
【0087】
生物反応時:
a)培養槽1に培養液7を供給する。
b)バルブ13、バルブ22、バルブ23及びバルブ24を閉、バルブ12、バルブ14及びバルブ21を開として培養槽ポンプ11を駆動し、ろ過器10で分離された微生物等の濃縮液を、管路を通じて培養槽1に戻すと共に、ろ過器10で分離されたろ過液を、マイクロナノバブル発生装置4に導き、酸素のマイクロナノバブルを含有させた後、培養槽1に戻す。
c)培養槽1で生成された反応生成物は、適当な時期に、バルブ13を開として、ろ過液と共に回収し、ろ過液貯槽16に貯えられる。
【0088】
洗浄・滅菌時:培養槽1及びろ過液貯槽16から、それぞれ、微生物等を含有する培養液6及びろ過液が除かれた状態となっている。
a)培養槽1に、培養液7に代えて洗浄液を供給する。
b)バルブ13、バルブ14、バルブ21、バルブ23及びバルブ24を閉、バルブ12及びバルブ22を開として培養槽ポンプ11を駆動し、主としてろ過器10のろ過膜を洗浄し、洗浄初期の、微生物等、有機物等を高濃度で含んでいる洗浄液を、生物反応装置の外に排出する。
c)その後、ろ過器10のろ過膜がある程度十分に洗浄できた段階で、バルブ13、バルブ14、バルブ22、バルブ23及びバルブ24を閉、バルブ12及びバルブ21を開として培養槽ポンプ11を駆動して、洗浄液を、培養槽1→ろ過器10→バルブ12の管路を通じてマイクロナノバブル発生装置4に導き、オゾン等のマイクロナノバブルを含有させた洗浄液を培養槽1に戻すことにより、洗浄液にオゾン等のマイクロナノバブルを含有させながら、培養槽1内部、ろ過器10のろ過膜、培養槽1→ろ過器10→バルブ12→マイクロナノバブル発生装置4→培養槽1の管路内部等を洗浄・滅菌する。
d)その後、オゾン等のマイクロナノバブルを十分に含有させた洗浄液を、培養槽ポンプ11により培養槽1から抜き出し、バルブ12及びバルブ14を閉、バルブ13を開とすれば、ろ過器10のろ過膜を洗浄・滅菌(順洗)すると共に、ろ過器10→バルブ13→ろ過液貯槽16の管路内部を洗浄・滅菌することができる。また、バルブ12及びバルブ13を閉、バルブ14を開とすれば、ろ過器10→バルブ14→培養槽1の管路内部を洗浄・滅菌することができる。
e)さらに、ろ過器10のろ過膜がある程度十分に洗浄・滅菌(順洗)できた段階で、バルブ12、バルブ13及びバルブ14を閉、バルブ23及びバルブ24を開として、ろ過器10のろ過膜を洗浄・滅菌した洗浄液をろ過器10の入口に還流して再度ろ過器10のろ過膜を洗浄・滅菌する。これにより、洗浄液を節約して、ろ過器10のろ過膜を十分に洗浄・滅菌することができる。
【0089】
第2実施形態では、第1の実施形態と同様に、生物反応と同様の操作により洗浄・滅菌を行うことができ、また、ろ過膜に負担をかけずに洗浄・滅菌を十分に行うことができる。
【0090】
さらに、第2の実施形態では、生物反応時において、ろ過器10で分離されたろ過液にマイクロナノバブルを含有させるため、微生物等に与えるストレスやダメージを小さくすることができ、また、ろ過器10で分離された微生物等の濃縮液を培養槽1に戻すため、培養槽1内の微生物等の濃度を高く維持することができる。
【0091】
<第3実施形態>
図3に、この発明の生物反応装置の第3実施形態を模式的に示す。
第3実施形態は、第2の実施形態に、第1実施形態で用いられている、培養槽1の微生物等を含有する培養液6にマイクロナノバブルを含有させる手段(マイクロナノバブル発生装置2)及び培養槽1に供給される培養液7にマイクロナノバブルを含有させる手段(マイクロナノバブル発生装置3)を併用したものである。
【0092】
培養液、洗浄液中のマイクロナノバブル含有量を高めたい場合には、このように複数のマイクロナノバブル含有手段を併用することが有効である。
【0093】
<第4実施形態>
図4に、この発明の生物反応装置の第4実施形態を模式的に示す。
第4実施形態は、微生物等をポリビニルアルコール系多孔質ゲル等の多孔質構造体に担持させた担持構造体8が用いることを特徴としている。
【0094】
第4実施形態では、次のようにして、生物反応時における、培養液への、酸素のマイクロナノバブルの含有、及び、生物反応終了後の洗浄・滅菌時における、洗浄液への、オゾン等のマイクロナノバブルの含有が行われる。
【0095】
生物反応時:
a)培養槽1に培養液7を供給する。
b)バルブ12を開及びバルブ13を閉として培養槽ポンプ11を駆動し、培養槽1に備えたろ過器10で分離されたろ過液をマイクロナノバブル発生装置4に導き、酸素のマイクロナノバブルを含有させた後、培養槽1に戻す。
c)培養槽1で生成された反応生成物は、適当な時期に、バルブ13を開として、ろ過液と共に回収し、ろ過液貯槽16に貯えられる。
【0096】
洗浄・滅菌時:培養槽1及びろ過液貯槽16から、それぞれ、微生物等を含有する培養液6及びろ過液が除かれた状態となっている。
a)培養槽1に、培養液7に代えて洗浄液を供給する。
b)バルブ12を開、バルブ13を閉として培養槽ポンプ11を駆動して、洗浄液を、培養槽1→ろ過器10→バルブ12の管路を通じてマイクロナノバブル発生装置4に導き、オゾン等のマイクロナノバブルを含有させた洗浄液を培養槽1に戻すことにより、洗浄液にオゾン等のマイクロナノバブルを含有させながら、培養槽1内部及び培養槽1→ろ過器10→バルブ12→マイクロナノバブル発生装置4→培養槽1の管路内部を洗浄・滅菌と共に、ろ過器10のろ過膜を洗浄・滅菌(順洗)する。
c)その後、オゾン等のマイクロナノバブルを十分に含有させた洗浄液を、培養槽ポンプ11によりろ過器10を通して培養槽1から抜き出し、バルブ12及びバルブ14を閉、バルブ13を開とすれば、ろ過器10のろ過膜を再度洗浄・滅菌(順洗)できると共に、ろ過器10→バルブ13→ろ過液貯槽16の管路内部を洗浄・滅菌することができる。
【0097】
第4実施形態は、微生物等を担持させた担持構造体8を用いることにより、次のような特長を有する。
○培養槽1中の微生物等の密度を高くできるため、生物反応の効率を高めることができる。
○微生物等を含有する培養液6から微生物等を分離するろ過器10として、醸造や発酵の技術分野で通常行われている精密ろ過器を採用する必要はなく、ポリフッ化ビニリデン等の有機高分子化合物からなる多孔性膜、金属製の金網等のろ過精度の低い平膜を採用できるため、ろ過工程を経済的かつ効率的に行うことができる。
○微生物等に大きなストレスやダメージを与えることなく、生物反応を効率的、経済的に行うことができる。
【0098】
<第5実施形態>
図5に、この発明の生物反応装置の第5実施形態を模式的に示す。
第5実施形態は、第4実施形態における微生物等を担持させた担持構造体8を、培養槽1中にカラム、網体等の固定部材9で固定したものである。
【0099】
第5実施形態での、生物反応時における、微生物等を含有する培養液6への、酸素のマイクロナノバブルの含有、及び、生物反応終了後の洗浄・滅菌時における、洗浄液への、オゾン等のマイクロナノバブルの含有は、第4実施形態と同様に行われる。
【0100】
第5実施形態では、微生物等を担持させた担持構造体8が培養槽1中に固定されているため、担持構造体8が損傷・破壊されることが少ない、担持構造体8から微生物等が脱離することが少ない等の特長を有する。
【0101】
<第6実施形態>
図6に、この発明の生物反応装置の第6実施形態を模式的に示す。
第6実施形態は、ろ過器10の2次側に接続した管路から、オゾン等のマイクロナノバブルを含有させた洗浄液を供給することにより、順洗と併せて逆洗を行うようにしたものである。
【0102】
第6実施形態では、バルブ15及びバルブ20を閉とした状態で、次のような、第2の実施形態と同様の生物反応時の操作1)及びに洗浄・滅菌時の順洗の操作2)が行われる。
【0103】
1)生物反応時:
a)培養槽1に培養液7を供給する。
b)バルブ13を閉、バルブ12及びバルブ14を開として培養槽ポンプ11を駆動し、ろ過器10で分離された微生物等の濃縮液を、管路を通じて培養槽1に戻すと共に、ろ過器10で分離されたろ過液を、マイクロナノバブル発生装置4に導き、酸素のマイクロナノバブルを含有させた後、培養槽1に戻す。
c)培養槽1で生成された反応生成物は、適当な時期に、バルブ13を開として、ろ過液と共に回収し、ろ過液貯槽16に貯えられる。
【0104】
2)洗浄・滅菌時(順洗):培養槽1及びろ過液貯槽16から、それぞれ、微生物等を含有する培養液6及びろ過液が除かれた状態となっている。
a)培養槽1に、培養液7に代えて洗浄液を供給する。
b)バルブ12を開、バルブ13及びバルブ14を閉として培養槽ポンプ11を駆動して、洗浄液を、培養槽1→ろ過器10→バルブ12の管路を通じてマイクロナノバブル発生装置4に導き、オゾン等のマイクロナノバブルを含有させた洗浄液を培養槽1に戻すことにより、洗浄液にオゾン等のマイクロナノバブルを含有させながら、培養槽1内部及び培養槽1→ろ過器10→バルブ12→マイクロナノバブル発生装置4→培養槽1の管路内部を洗浄・滅菌する。
c)その後、オゾン等のマイクロナノバブルを十分に含有させた洗浄液を、培養槽ポンプ11により培養槽1から抜き出し、バルブ12及びバルブ14を閉、バルブ13を開とすれば、ろ過器10のろ過膜を洗浄・滅菌(順洗)すると共に、ろ過器10→バルブ13→ろ過液貯槽16の管路内部を洗浄・滅菌することができる。また、バルブ12及びバルブ13を閉、バルブ14を開とすれば、ろ過器10→バルブ14→培養槽1の管路内部を洗浄・滅菌することができる。
【0105】
第6実施形態では、他の実施形態と同様に、生物反応と同様の操作により洗浄・滅菌を行うことができ、ろ過膜に負担をかけずに洗浄・滅菌を十分に行うことができ、微生物等に与えるストレスやダメージを小さくすることができ、また、培養槽内の微生物等の濃度を高く維持することができる。
【0106】
さらに、第6の実施形態では、洗浄・滅菌時に、上記2)の順洗と共に、下記3)のろ過膜の逆洗をも行うようにしたものである。
3)上記2)の順洗を中断した後、次のd)〜f)の工程により、ろ過膜の逆洗を行う。d)バルブ12、バルブ13及びバルブ14を閉とし、バルブ15及びバルブ20を開とした状態で、ポンプ(図示せず)を駆動して、洗浄液槽19の洗浄液をマイクロナノバブル発生装置5に導いて、洗浄液にオゾン等のマイクロナノバブルを含有させる。
e)このオゾン等のマイクロナノバブルを含有させた洗浄液を、ろ過器10の2次側に供給し、ろ過器10の1次側にろ過して、ろ過膜を逆洗して洗浄・滅菌を行う。
f)ろ過膜を逆洗した後の洗浄水は、バルブ20を経由して外部に排出する。
【0107】
第6実施形態では、上記2)の順洗及び上記3)の逆洗を必要に応じ複数回繰り返して行う。
【0108】
第6実施形態では、多数の細孔を有し、洗浄・滅菌に手間や時間を要するろ過膜の洗浄・滅菌を、順洗と共に逆洗を併用して行うため、ろ過膜の洗浄・滅菌を十分に行うことができる、洗浄・滅菌時間を短縮することができる等の特長を有する。
【0109】
つぎに、本発明の第3の特徴は、前述のように、生物反応終了後に、培養槽から微生物等、培地を含有する培養液を抜き出し、
ろ過器により微生物等が分離・濃縮された濃縮液を分離して不活化槽に収容し、この不活化槽に収容された濃縮液に、オゾン等の殺菌性を有する気体を含有するマイクロナノバブルを含有させて、回収濃縮液中の微生物等を殺菌することである。
本発明の第3の特徴については、以下に第7実施形態も挙げて説明する。
【0110】
<第7実施形態>
図7に、この発明の生物反応装置の第7実施形態を模式的に示す。
第7実施形態では、生物反応時には、バルブ25及びバルブ27を閉とした状態で、培養槽1で生成された反応生成物は、培養槽ポンプ11により、微生物等、培地を含有する培養液6と共に培養槽1から抜き出され、ろ過器10において、反応生成物を含有するろ過液と、微生物等の濃縮液(以下、「回収濃縮液」という。)に分離され、バルブ12、バルブ13及びバルブ14を開とした状態で、ろ過液はろ過液貯槽16に貯えられ、回収濃縮液は管路を通って培養槽1に還流される。
【0111】
生物反応終了後には、生物反応に用いた微生物等を十分に殺菌して生物反応装置外に排出するが、第7実施形態では、微生物等を培養槽で殺菌する態様(以下、「培養槽殺菌」という。)と、微生物等を培養槽から不活化槽に移しで殺菌する態様(以下、「不活化槽殺菌」という。)を採ることができる。
【0112】
まず、不活化槽殺菌は、次のようにして行うことができる。
a)バルブ27及びバルブ14を閉とした状態で、微生物等、培地を含有する培養液6を、培養槽ポンプ11により、培養槽1から抜き出し、ろ過器10において、培地を含有するろ過液と、回収濃縮液に分離する。
b)バルブ12、バルブ13及びバルブ25を開とし、バルブ26を閉とした状態で、ろ過液をろ過液貯槽16に貯えると共に、回収濃縮液を不活化槽30に収容する。
c)不活化槽30に収容した回収濃縮液に、マイクロナノバブル発生装置28により、オゾン等のマイクロナノバブルを含有させ、微生物等を殺菌する。
d)微生物等の殺菌が完了した段階でバルブ26及びバルブ33を開とし、殺菌した回収濃縮液を生物反応装置外に排出する。
【0113】
つぎに、培養槽殺菌は、次のようにして行うことができる。
a)バルブ27及びバルブ25を閉とした状態で、微生物等、培地を含有する培養液6を、培養槽ポンプ11により、培養槽1から抜き出し、ろ過器10において、培地を含有するろ過液と、回収濃縮液に分離する。
b)バルブ12、バルブ13及びバルブ14を開とした状態で、ろ過液をろ過液貯槽16に貯えると共に、回収濃縮液を培養槽1に還流する。
c)培養槽1に収容した回収濃縮液に、マイクロナノバブル発生装置29により、オゾン等のマイクロナノバブルを含有させ、微生物等を殺菌する。
d)微生物等の殺菌が完了した段階でバルブ27及びバルブ33を開とし、バルブ26を閉とし、廃水ポンプ32を駆動して、殺菌した回収濃縮液を生物反応装置外に排出する。
【0114】
この第7実施形態は、基本的にはバルブ14、バルブ25の切り替えにより、不活化槽殺菌または培養槽殺菌を選択して行うことができるが、不活化槽殺菌または培養槽殺菌のいずれか一方だけが行えれば良い場合には、その殺菌に利用しない機器類は省略できる。例えば、培養槽殺菌だけを行えれば良い場合には、不活化槽30、マイクロナノバブル発生装置28等のバルブ25より下流側の機器類は設置する必要がない。
【0115】
この第7実施形態では、生物反応時に反応生成物を回収するために用いたろ過器10を利用して回収濃縮液の分離を行っているが、回収濃縮液の分離は、ろ材を使用せず比重差を利用する遠心分離、沈降分離等によっても行うことができる。
【0116】
不活化槽殺菌においては、不活化槽30は、オゾン等のマイクロナノバブルの殺菌効果を高めること、オゾン等の殺菌性を有する気体が生物反応装置外に排出されるのを防ぐこと等を考慮して、密閉型とするのが望ましい。
【0117】
回収濃縮液の粘度が高すぎると、オゾン等のマイクロナノバブルが回収濃縮液全体に均一に行き渡らず、微生物等の殺菌が十分に行えないこととなるため、不活化槽殺菌においては、不活化槽30には、液体を供給できる液体供給器31を設け、回収濃縮液の粘度を適正な範囲に調整することが好ましい。また、培養槽殺菌においても、培養液7を培養槽1に供給する管路等を通じて、液体を培養槽1に供給し回収濃縮液の粘度を適正な範囲に調整することが好ましい。
【0118】
第7実施形態の生物反応装置は、基本的には生物反応終了後に培養槽殺菌および/または不活化槽殺菌を行うものであるが、生物反応中に培養液に雑菌が混入した場合、培養槽殺菌中または不活化槽殺菌中に、培養槽1を次の生物反応に用いる必要が生じた場合等においては、バルブ27およびバルブ26を開とし、バルブ33を閉として、廃水ポンプ32を駆動することにより、培養槽1中の培養液6または濃縮液を早急に不活化槽30に収容することができる。
【0119】
本発明では、1)培養液、洗浄液等の液中に速やかに溶解・拡散し長時間残存するオゾン等のマイクロナノバブルを用いて微生物等の殺菌を行うこと、及び2)微生物等を分離・濃縮した回収濃縮液に対して殺菌を行うことにより、微生物等を効率的、経済的かつ十分に殺菌できるものであるが、さらに、本発明者等は、微生物等、培地を含有する培養液を、ろ過器等の分離器を用いて回収濃縮液を分離する際に、培養液に含有される培地が回収濃縮液に入り込む割合を50%以下、好ましくは25%以下とすること、すなわち、ろ過液等の液側に、培養液に含有される培地の50%以上、好ましくは75%以上が入り込むようにすることにより、オゾン等のマイクロナノバブルによる滅菌・殺菌作用を著しく高めることができることを見出したものである。
【0120】
後記の実施例・比較例で示すように、ろ過器等の分離器により、回収濃縮液に入り込む培地の割合を50%以下、好ましくは25%以下とすることにより、滅菌・殺菌作用を著しく高めることができる。
【0121】
この理由としては、回収濃縮液中の培地濃度が高すぎると、回収濃縮液に含有させたオゾン等のマイクロナノバブルが、糖類、窒素含有化合物等の変性等の化学反応に消費され、滅菌・殺菌作用が低下してしまうことが考えられる。
【0122】
また、後記の実施例・比較例で示すように、不活化槽上部のような、培養液が直接接触しない箇所に対しても、オゾン等の殺菌性を有する気体により滅菌・殺菌作用を及ぼすことができる。
【0123】
以下に実施例・比較例により、本発明の、オゾン等のマイクロナノバブルを用いた場合の優れた滅菌・殺菌作用についてさらに説明する。
【0124】
まず、実施例・比較例を用いた説明の主旨を簡単に説明すると、実施例1〜4及び比較例1を用いて、培養液に吹き込むオゾン含有気体の気泡の形態及び培養液の培地(糖類、窒素含有化合物等の微生物等の栄養源)の含有量が滅菌・殺菌作用に及ぼす影響について説明し、実施例5〜6を用いて、培養槽上部のような、培養液が直接接触しない箇所に対する、オゾン等のマイクロナノバブルが及ぼす滅菌・殺菌作用について説明する。
【0125】
<実施例1〜4及び比較例1>
処理槽として1Lメジウム瓶(柴田科学製 型番:017200-10002A)を用い、この中に培養液[微生物等としてコリネ型細菌(コリネバクテリウムグルタミカム)の標準株を濁度(OD660の値):16含有し、培地としてグルコースを24g/Lのほかペプトン、酵母エキス等を含有する]を500mL収容した。
【0126】
オゾン発生器(エコデザイン製 型番:ED-OG-RC12GC)を用いて、オゾン濃2.2重量%、密度1.2kg/m
3のオゾン含有気体を作り、このオゾン含有気体の気泡を、大気圧中、20℃の上記培養液に、通気量0.5L/分で処理槽底部から吹き込んだ。
【0127】
<実施例1>
培地を全て除去した培養液に、マイクロナノバブル発生装置(商品名:OKノズル OKエンジニアリング製 型番:OKE-MB200ml)を用いて、オゾン含有気体をマイクロナノバブルの気泡形態で吹き込み、吹き込み開始時、15分後、30分後、45分後及び60分後における培養液中の生菌数を平板培養法で測定した。
【0128】
<比較例1>
通気装置として内径4mmのシリコンチューブを用い、オゾン含有気体を通常の気泡形態で吹き込んだ以外は、実施例1と同様にして、生菌数を測定した。
【0129】
<実施例2>
培養液として、培地を87.5%除去した培養液を用いた以外は、実施例1と同様にして、生菌数を測定した。
【0130】
<実施例3>
培養液として、培地を75%除去した培養液を用いた以外は、実施例1と同様にして、生菌数を測定した。
【0131】
<実施例4>
培養液として、培地を50%除去した培養液を用いた以外は、実施例1と同様にして、生菌数を測定した。
【0132】
実施例1〜4及び比較例1の結果を表1に示す。
まず、表1の実施例1と比較例1の比較からわかるように、オゾン含有気体を培養液に吹き込んで微生物等の滅菌・殺菌を行う場合、気泡の形態を通常の気泡とした場合に比べ、マイクロナノバブルとした場合には滅菌・殺菌作用を著しく高めることができる。
【0133】
さらに、実施例1〜4からわかるように、培養液中の微生物等を滅菌・殺菌する場合には、培養液から培地を除去する程、滅菌・殺菌作用を高めることができる。培地の除去率は、50%以上とすることが好ましく、75%以上とすることがより好ましいことがわかる。
【0135】
<実施例5〜6>
実施例5及び実施例6は、それぞれ、実施例1及び実施例4において、吹き込み開始時及び60分後に、処理槽の培養液が直接接触しない上部内面1周分を脱脂綿でふき取り、脱脂綿に付着した生菌数を平板培養法で測定した。実施例5〜6の結果を表2に示す。
【0136】
表2の実施例5〜6からわかるように、オゾン含有気体のマイクロナノバブルを培養液に吹き込んで微生物等の滅菌・殺菌を行う場合には、培養液中の微生物等ばかりでなく、処理槽の培養液が直接接触しない処理槽上部に付着した微生物等にも滅菌・殺菌作用を及ぼすことができ、さらに、培養液から培地を除去するほうが、滅菌・殺菌作用を高めることができる。
【0137】
このように、生物反応終了後に、オゾン等の殺菌性を有する気体を含有するマイクロナノバブルを用いて微生物等の滅菌・殺菌を行うことにより、培養槽、不活化槽等の槽上部のような、洗浄液または培養液が直接接触しない箇所に対しても滅菌・殺菌作用を及ぼすことができ、培養槽、不活化槽等の槽の隅々まで滅菌・殺菌を行うことができる。