特許第6850620号(P6850620)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6850620
(24)【登録日】2021年3月10日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】ピックアップ装置
(51)【国際特許分類】
   G06K 7/10 20060101AFI20210322BHJP
   B25B 9/02 20060101ALI20210322BHJP
   B25B 11/00 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   G06K7/10 252
   G06K7/10 232
   G06K7/10 256
   B25B9/02
   B25B11/00 A
   B25B11/00 B
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-16651(P2017-16651)
(22)【出願日】2017年2月1日
(65)【公開番号】特開2018-124807(P2018-124807A)
(43)【公開日】2018年8月9日
【審査請求日】2020年1月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000233491
【氏名又は名称】株式会社日立システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】特許業務法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山内 繁
【審査官】 松尾 真人
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3143720(JP,U)
【文献】 特開2010−257185(JP,A)
【文献】 特開2010−023944(JP,A)
【文献】 特開平06−015577(JP,A)
【文献】 特開2015−093004(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0135059(US,A1)
【文献】 特開2016−093873(JP,A)
【文献】 特開2016−173758(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0306747(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 7/00−7/14
17/00
B25B 1/00−11/02
23/00−23/18
G05B 19/418
B25J 1/00−21/02
H05K 13/00−13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
RFIDタグが配置された、もしくはRFIDタグからなる部品をピックアップするピックアップ装置であって、
前記部品をピックアップするピックアップ器具と、
前記RFIDタグに対する情報の読み書きを行う制御部と、を有し、
前記ピックアップ器具は、前記部品をピックアップする箇所の付近にループ状のコイルからなる検出部を有し、前記検出部と前記制御部とは、ケーブルにより接続され、
前記制御部は、ユーザが前記ピックアップ器具を操作して前記部品をピックアップしたときに、前記検出部を介して前記RFIDタグに対する情報の読み書きを行
前記ピックアップ器具は、前記箇所の付近の少なくとも1点以上で前記部品を支持して前記部品を挟むことで前記部品をピックアップし、
前記ピックアップ器具において前記部品を支持する点の少なくとも1つを含む部分が金属製であり、前記金属製の部分の付近に切欠部が形成されており、前記切欠部の一方の端部に信号ラインが接続され、他方の端部にアースラインが接続されている、
ピックアップ装置。
【請求項2】
請求項に記載のピックアップ装置において、
前記信号ラインと前記アースラインからなるツイストペアケーブルにより前記ケーブルが構成されている、ピックアップ装置。
【請求項3】
請求項に記載のピックアップ装置において、
前記信号ラインが接続された状態で前記ピックアップ器具に貼付されたストリップラインにより前記ケーブルが構成されている、ピックアップ装置。
【請求項4】
RFIDタグが配置された、もしくはRFIDタグからなる部品をピックアップするピックアップ装置であって、
前記部品をピックアップするピックアップ器具と、
前記RFIDタグに対する情報の読み書きを行う制御部と、を有し、
前記ピックアップ器具は、前記部品をピックアップする箇所の付近にループ状のコイルからなる検出部を有し、前記検出部と前記制御部とは、ケーブルにより接続され、
前記制御部は、ユーザが前記ピックアップ器具を操作して前記部品をピックアップしたときに、前記検出部を介して前記RFIDタグに対する情報の読み書きを行い、
前記ピックアップ器具は、前記箇所の付近の少なくとも1点以上で前記部品を支持して前記部品を挟むことで前記部品をピックアップし、
前記ピックアップ器具において前記部品を支持する点の少なくとも1つを含む部分が金属製であり、前記金属製の部分の付近に切欠部が形成されており、前記切欠部の一方の端部に前記ケーブルを構成する同軸ケーブルの芯線が接続された、ピックアップ装置。
【請求項5】
請求項に記載のピックアップ装置において、
前記同軸ケーブルは、前記ピックアップ器具に設けられた溝部もしくは貫通孔に沿って収納されている、ピックアップ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品等の微小な物をピックアップする技術に関し、特に、RFID(Radio Frequency IDentification)タグを備えた物をピックアップするピックアップ装置に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、大型の機械や装置等の構造物では、製造に際して種類が異なる多数のボルトやネジ等(以下では単に「ボルト」と記載する場合がある)の部品が用いられる。また、ボルトでは頭部の大きさや形状が同じでも首下の長さが異なるものがある等、間違ったボルトを取り付けてしまうミスが生じ易く、取り付けて初めてミスに気付く場合も多い。また、これらのボルトでは、同じものでも取付部位によってトルク値が異なる場合がある上に、10年等の一定の期間で全て交換することが必要となる場合もある等、ボルト毎の固体管理が必要となる場合がある。
【0003】
このような部品の種類の識別や固体管理等を可能とするため、部品にRFIDタグ(ICタグ、電子タグ、無線タグ等の各種名称で称呼されるものを全て含む)を配置して、固体を識別可能とすることが検討されている。例えば、特開2006−202257号公報(特許文献1)には、金属製のボルトの頭部にRFIDタグを配置する旨が記載されている。
【0004】
一方、装着する部品の種類を間違えないようにするための技術として、例えば、特開2009−137748号公報(特許文献2)には、収納庫等に収納された部品を作業者がピックアップする際に、収納庫等に取り付けられたRFIDタグを作業者が装着したウェアラブルデバイスにより読み取ることで、作業者が当該部品をピックアップする動作を行ったことを検出する旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−202257号公報
【特許文献2】特開2009−137748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
構造物の製造等に用いられる部品は、ボルト等、指で掴むことができる程度の大きさのものから、RFIDタグ自体のように数ミリメートル四方程度のさらに小さなものまである。このような小さな部品は、専用の器具を用いてピックアップする必要がある、もしくはそのような器具を用いてピックアップする方が効率的である。また、構造物の製造作業は屋外を含む様々な場所で行われる場合があり、このような器具は、ウェアラブルな構成とする等、小型で可搬性を有することが望ましい。
【0007】
一方で、ピックアップする部品の種類を間違えないように識別するとともに、部品の装着後ではなく、ピックアップ時等の装着前の時点で、部品の種類に加えてさらに個々の部品毎の単位で固体管理することが必要となる場合もある。この点、特許文献2に記載された技術では、部品のピックアップ時にどの種類の部品をピックアップしたかを識別することが可能であるが、収納庫の単位でRFIDタグを備える構成であるため、個々の部品毎の固体管理までピックアップ時に行うことはできない。
【0008】
そこで本発明の目的は、RFIDタグを備えた小型の部品等のピックアップ時に当該部品のRFIDタグに対する読み書きを行うことができ、かつ可搬性を有するピックアップ装置を提供することにある。
【0009】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0011】
本発明の代表的な実施の形態によるピックアップ装置は、RFIDタグが配置された、もしくはRFIDタグからなる部品をピックアップするピックアップ装置であって、前記部品をピックアップするピックアップ器具と、前記RFIDタグに対する情報の読み書きを行う制御部と、を有する。そして、前記ピックアップ器具は、前記部品をピックアップする箇所の付近にループ状のコイルからなる検出部を有し、前記検出部と前記制御部とは、ケーブルにより接続され、前記制御部は、ユーザが前記ピックアップ器具を操作して前記部品をピックアップしたときに、前記検出部を介して前記RFIDタグに対する情報の読み書きを行うものである。
【発明の効果】
【0012】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0013】
すなわち、本発明の代表的な実施の形態によれば、RFIDタグを備えた小型の部品等のピックアップ時に当該部品のRFIDタグに対する読み書きを行うことができ、かつ可搬性を有するピックアップ装置を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態1であるピックアップ装置の構成例について概要を示した図である。
図2】RFIDタグの構成例について概要を示した図である。
図3】(a)、(b)は、本発明の実施の形態1における第1の方式のピックアップ装置の例について概要を示した図である。
図4】(a)、(b)は、本発明の実施の形態1におけるRFIDタグの検出の手法について概要を示した図である。
図5】(a)、(b)は、本発明の実施の形態1におけるケーブルの構成の変形例について概要を示した図である。
図6】本発明の実施の形態2であるピックアップ装置の構成例について概要を示した図である。
図7】本発明の実施の形態2であるピックアップ装置の他の構成例について概要を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。一方で、ある図において符号を付して説明した部位について、他の図の説明の際に再度の図示はしないが同一の符号を付して言及する場合がある。
【0016】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1であるピックアップ装置は、RFIDタグが配置された小型の部品(アンテナ一体型の小型のパッケージタグ等、RFIDタグ自体であってもよい)をピックアップする器具であり、ピックアップした際に当該部品のRFIDタグに対して情報を読み書きするリーダ/ライタ機能を備えることで、当該部品の固体管理を可能とするものである。なお、以下では特に断らない限り、RFIDタグ自体を部品としてピックアップする場合を例として説明するものとする。
【0017】
図2は、RFIDタグの構成例について概要を示した図である。RFIDタグ31は、例えば、一般に市販されている2.5mm四方程度の小型のパッシブタイプのRFIDタグを対象とすることができる。RFIDタグ31は、絶縁樹脂等の基材311の中央付近に配置されたICチップ313の周囲に導体の配線によりアンテナコイル312が形成された構成を有する。
【0018】
このRFIDタグ31のような小型の部品をピックアップする方式としてはいくつかのものが考えられるが、本実施の形態のピックアップ装置では、部品を2箇所以上で支持することで保持する場合を例とする。これには、例えば、「掴む」、「挟む」、「つまむ」等として表される動作によりピックアップすることが広く含まれる。以降では、この第1の方式を行う動作を「挟む」と総称する場合がある。
【0019】
図3は、本実施の形態における第1の方式のピックアップ装置の例について概要を示した図である。ここでは、ピックアップ装置1が部品等を「挟む」手法について説明するため、ピックアップ装置1を構成するピックアップ器具10の部分を中心に図示し、他の構成要素は記載を省略している。
【0020】
図3(a)は、ピックアップ装置1を構成するピックアップ器具10が、部品を2箇所で支持する構成を備える場合の例を示している。例えば、図示するように、2つの板状もしくは棒状の部材の先端部によって部品等を挟んでピックアップする。部品等を挟む先端部付近には、RFIDタグ31と信号の授受を行うための図示しない1回巻きもしくは複数回巻きのループ状のコイルアンテナが形成された検出部11を備えている。
【0021】
図3(a)では、代表例として、2つの部材が一端で一体的に結合された構造を有するピンセットやトング状の器具を示しているが、2つの部材それぞれの中間部分で可動に結合されたハサミのような構造を有していてもよい。また、箸のように一体に結合されていない構成であってもよい。これらの部材は全てが金属製(もしくは導体製)であってもよいし、検出部11を備える方(もしくは備える部分)の部材が金属製で、他方(もしくは他の部分)の部材が非金属製であってもよい。
【0022】
図中では、このような構造のピックアップ装置1により、部品ケース等に収納された多数の中から1つずつRFIDタグ31をピックアップする例を示している。本実施の形態では、ピックアップ器具10がRFIDタグ31を挟む部分(図3(a)の例ではピックアップ器具10の先端部)付近に、RFIDタグ31の検出部11を備える。これにより、ピックアップ器具10がRFIDタグ31を挟んでいるタイミングで、RFIDタグ31に対する情報の読み書きが可能となる。
【0023】
図3(b)は、ピックアップ器具10が部品に対して1箇所で接触して支持する構成の例を示している。ここでは、代表例として、ピックアップ器具10が指サックの形状を有して作業者(ロボット等も含む)の指に装着されており、指の先端部付近に検出部11を有する構成を示している。この検出部11における図示しないループ状のコイルアンテナは、指の動作を阻害しない柔軟な構造を有しているのが望ましい。
【0024】
図3(b)の例では、ピックアップ器具10自体は部品等(図3(b)の例ではRFIDタグ31が配置されたボルト等の部品3)に対して1箇所でしか支持していないが、作業者の他の指が部品3に接触して支持することで、作業者の手全体として部品3を挟んで保持している。このように、ピックアップ器具10自体によって部品等を挟む場合に加えて、ピックアップ器具10を一部に利用して挟む場合も広く含むものとする。また、部品等を挟むために支持する箇所は3箇所以上であってもよい。
【0025】
図1は、本発明の実施の形態1であるピックアップ装置の構成例について概要を示した図である。図1の例では、部品等を「挟む」ためのピックアップ器具10としてピンセットを用いた構成を示している。ピックアップ装置1は、図3(a)の例と同様に、ピックアップ器具10における部品等を挟む箇所(図1の例ではピックアップ器具10の先端部)に検出部11を備えている。
【0026】
検出部11には、RFIDタグ31と信号の授受を行うためのループ状のコイルアンテナが形成される。このコイルアンテナの寸法は、使用する電波の波長に対して十分に微少とみなすことができる程度である。検出部11の詳細については後述する。検出部11は、ケーブル12を介して制御部13に接続される。制御部13は、例えば、蓄電池等により構成される図示しない電源機構から電力の供給を受けて、検出部11を介してRFIDタグ31に対する読み書きを行うリーダ/ライタ機能を有する。また、読み取ったIDを、当該IDに関連した情報処理を行う上位システム2に対して送信し、もしくは、上位システム2からRFIDタグ31に書き込む情報を受信するための、有線もしくは無線の通信機能を有していてもよい。ピックアップ装置1全体として可搬性を確保するとともに、ピックアップ器具10の操作性を向上させるため、制御部13はピックアップ器具10とは独立した構成とし、ウェアラブルな構成として実装するのが望ましい。
【0027】
図1には、検出部11の拡大図についても示している。上述したように、検出部11にはループ状のコイルアンテナが形成される必要がある。しかしながら、このようなピックアップ装置1では、部品等を挟む先端部付近が作業上重要であるところ、先端部付近にループ状のコイルアンテナのような構造を実装すると、ピックアップ作業の際の大きな邪魔となり得る。
【0028】
そこで、本実施の形態では、ピックアップ器具10(の少なくとも検出部11付近)を金属製とするとともに、この金属製の部分を高周波電流の伝送路として利用することで、ケーブル12と合わせてコイル構造を形成する。すなわち、信号ライン121側の配線を延伸させて1回巻きのループ状のコイルアンテナを形成するのではなく、頑丈なループ状コイルアンテナを形成するために、頑丈とはいえない信号ライン121が延伸する長さを可能な限り短くする。具体的には、信号ライン121が延伸する長さを1回巻き以下の短い長さとし、残りの長さをピックアップ器具10の金属製部分における切欠部111の湾曲部からアースライン122につながる最短の長さ部分を利用することで、等価的に合計1回巻きループ状のコイルアンテナを実現する。これにより、ピックアップ器具10の先端部付近の構造をシンプルかつ頑丈にする。
【0029】
具体的には、拡大図に示すように、例えば、ピックアップ器具10である金属製のピンセットの上側板101a(下側板101bであってもよい)に対して、信号ライン121とアースライン122の2本のケーブルを、間隔を空けてはんだ等により接続する。本実施の形態では、コイルをより効率よく形成するために、上側板101aの先端部のRFIDタグ31を挟む箇所付近に、図示するような切欠部111を設け、その両端部分付近に信号ライン121およびアースライン122を接続するものとする。なお、これらのケーブルは、例えば、撚ってツイストペアケーブルとすることでケーブル12を形成する。
【0030】
図4は、本実施の形態におけるRFIDタグ31の検出の手法について概要を示した図である。ここでは、図1の拡大図と同様に、ピンセット状のピックアップ器具10の先端部付近を拡大した状態を示している。図4(a)では、ピックアップ器具10の上側板101aおよび下側板101bがいずれも金属製の部材により構成されている場合の例を示し、図4(b)では、信号ライン121およびアースライン122が接続されていない方である下側板101bが非金属製の部材により構成されている場合の例を示している。図4(a)、(b)いずれの場合も、図示するように、信号ライン121を流れる高周波電流iは、アース部となる上側板101aの切欠部111の周囲を通って、アースライン122に流れる。
【0031】
このとき、信号ライン121が、ピンセットの上側板101aを流れる高周波電流iを流用することで、信号ライン121の先端部分と合わせてループ状のコイルアンテナを形成することができる。このコイル面に対しては、図4(a)、(b)に示すような磁界分布Φが発生する。すなわち、図4(a)では、磁界分布Φは、コイル面において金属製の下側板101bを貫通することができないため、RFIDタグ31を通った磁界分布Φは、図示するように下側板101bとの間を通って出てくることになる。一方、図4(b)では、磁界分布Φはコイル面において非金属製の下側板101bを貫通することができるため、図示するような磁界分布Φとなる。
【0032】
コイル面に発生するこれらの磁界分布Φにより、RFIDタグ31と誘導結合して通信することができる。このような磁界分布Φを発生させるため、切欠部111の凹部により形成される面は、ピンセットの先端部分でRFIDタグ31を挟んだときに、RFIDタグ31の面と略平行となるように形成されるのが望ましい。また、磁界分布Φがアース部となる上側板101aにより遮蔽されるのを抑えるには、切欠部111の凹部を、ピックアップ器具10としての強度が確保できる範囲で可能な限り広くとる方がよい。
【0033】
図5は、本実施の形態におけるケーブル12の構成の変形例について概要を示した図である。図1および図4に示した例では、信号ライン121とアースライン122の2本のケーブルでツイストペアケーブルを構成している。ツイストペアケーブルとした場合、ケーブルの形態上の特性として邪魔にならないように取り回すことが困難な場合がある。
【0034】
そこで、ケーブル処理をより邪魔にならないような形で行うことを可能とする変形例として、図5(a)では、ピンセットの上側板101aに沿って取り回すケーブル12の部分を、ツイストペアケーブルからストリップライン12aに置き換えてリード線を排除している。この場合でも、ストリップライン12aの伝送線と接続された信号ライン121と、上側板101aの切欠部111の周囲との間で、図4に示すようなループ状のコイルアンテナを形成することができる。
【0035】
同様に、図5(b)の変形例では、上側板101aに沿って取り回すケーブル12の部分を、ツイストペアケーブルから同軸ケーブルの芯線(同軸ケーブル芯線12b)に置き換えて、不要なリード線を排除している。この場合、図1図4図5(a)の例のように、信号ライン121によって上側板101aの切欠部111の周囲との間でループ状のコイルアンテナを形成するのに代えて、同軸ケーブル芯線12bが切欠部111に露出した部分によって、上側板101aの切欠部111の周囲との間でループ状のコイルアンテナを形成する。
【0036】
なお、同軸ケーブル芯線12bを上側板101aに沿って取り回す際には、例えば、図示するように、上側板101aの側面部分に沿って溝部112を設け、その中に同軸ケーブル芯線12bを収納するようにして、同軸ケーブル芯線12bの露出を抑えて耐久性を向上させるようにしてもよい。さらに露出を抑えるために、同軸ケーブルの特性を損なわない程度の範囲で溝部112の開放部分を埋めたり蓋をしたり等により封止してもよい。上側板101aの側面部に露出した溝部112に限らず、例えば、上側板101aの延伸方向に沿って内部を貫通するように設けられた図示しない孔部に同軸ケーブル芯線12bを通す構造としてもよい。もしくは、このような内部を貫通する孔部を通した同軸ケーブル芯線12bを、側面部に露出した溝部112に絶縁を介して通す構造としてもよい。
【0037】
以上に説明したように、本発明の実施の形態1であるピックアップ装置1によれば、RFIDタグ31が配置された小型の部品(もしくはRFIDタグ31自体)をピックアップ器具10により「挟む」ことによってピックアップする際に、ピックアップ器具10の先端部付近に形成された検出部11を介して、RFIDタグ31に対して情報の読み書きを行うことが可能となる。
【0038】
また、ピックアップ器具10における金属製の先端部付近に切欠部111を設け、ピックアップ器具10における切欠部111の周囲からアースライン122に流れる高周波電流を流用することで、信号ライン121で1つのループを形成するのではなく、信号ライン121と合わせて切欠部111の周囲にループ状のコイルアンテナを合成して形成する。これにより、ピックアップ器具10の先端部付近の構造をシンプルにするとともに、上側板101aの頑丈な構造を利用することが可能となる。
【0039】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2であるピックアップ装置は、上述の実施の形態1と同様に、RFIDタグが配置された小型の部品(もしくはRFIDタグ自体)をピックアップし、その際にRFIDタグに対して情報の読み書きを行うものである。部品をピックアップする方式として、実施の形態1では、第1の方式である「挟む」ことによって部品をピックアップするものを主に対象としていたが、本実施の形態では、第2の方式である、部品を吸着・吸引(以下では「吸引」と総称する場合がある)することによってピックアップするものを対象とする。
【0040】
図6は、本発明の実施の形態2であるピックアップ装置の構成例について概要を示した図である。上述の実施の形態1の図1に示した構成と比較して、制御部13および上位システム2については同様であるため再度の説明は省略する。図6の例では、ピックアップ器具10として、部品(RFIDタグ31)を2箇所で支持してピックアップするピンセットではなく、空気圧によって吸引するポンプを例として説明している。
【0041】
ピックアップ器具10であるポンプは、例えばゴム等の伸縮性のある素材により形成されたポンプ部113と、空気の吸入・排出を行うノズル部114により構成される。作業者がポンプ部113を手動で握って内部の空気をノズル部114の先端孔から排出した後、その状態で先端孔をRFIDタグ31の近傍に配置してポンプ部113を解放すると、先端孔からポンプ部113の内部に向かって、空気を吸引するための圧力が生じる。この吸引圧力によってRFIDタグ31をノズル部114の先端に吸引することができる。
【0042】
そして、ノズル部114の先端孔の部分には、検出部11としてのループ状のコイルが形成されている。コイルがループ状であることから、先端孔の外周部分に構成することで、先端孔を塞ぐことなく空気の出入りを確保した状態でコイルを実装することができる。検出部11に接続されたケーブル12は、例えば、ツイストペアケーブルや同軸ケーブル等により構成され、ポンプ部113やノズル部114に沿って取り付けられたアンテナ123を構成する。このアンテナ123と、制御部13からケーブル132で接続された送受信用のアンテナ部131との間の無線通信を介して、検出部11は制御部13に接続される。
【0043】
図6の例に示したピックアップ装置1は、手動で吸引する簡易な構成のポンプをピックアップ器具10として用いるため、低コストで容易に構成することができるというメリットを有する。一方で、手動で吸引することから吸引力が持続せず、時間の経過とともに吸引力が弱くなるというデメリットも有する。
【0044】
図7は、本発明の実施の形態2であるピックアップ装置の他の構成例について概要を示した図である。図7の例では、動力を使用してモーター等により継続的に空気を吸引する吸引器をピックアップ器具10として用いたものを示している。これにより、図6の例に示したような手動で吸引するピックアップ器具10を用いる場合と比べて、ピックアップ器具10のコストは高くなるものの、時間の経過による吸引力の低下を回避することができる。なお、図7の例では、市販されているようなハンドガンタイプの吸引器を用いる場合を示しているが、吸引器の形状や構成はこれに特に限定されない。
【0045】
ピックアップ器具10であるハンドガンタイプの吸引器は、例えば、本体部に内蔵された、電動ポンプ等の空気を吸引する機構からなる吸引機構115と、蓄電池等からなる電源部116を有する。また、グリップ部には、RFIDタグ31に対するリーダ/ライタ機能と上位システム2との通信機能を備える制御部13が内蔵されている。図7の例では、ピックアップ器具10自体が制御部13や電源部116を備える一体型の構成としているが、図1図6の例のように、これらの機構をピックアップ器具10とは別に構成し、ピックアップ器具10自体を小型・軽量化する構成としてもよい。
【0046】
ピックアップ器具10のノズル部114の先端孔には、図6の例と同様のループ状のコイルアンテナを含む検出部11が形成されており、検出部11に接続されたツイストペアケーブルからなるケーブル12が制御部13に接続されている。図7の例では、ピックアップ器具10であるハンドガンタイプの吸引器の外部にケーブル12を取り回す構成として記載しているが、外部に露出しないよう内部に取り回す構成としてもよい。
【0047】
ハンドガンのトリガーの位置に構成された吸引スイッチ118aが作業者により押下されると、その間、電源部116から電力の供給を受けた吸引機構115がノズル部114の先端孔から空気を継続的に吸引する。これによって生じる吸引圧力によってRFIDタグ31をノズル部114の先端に吸引することができる。なお、吸引機構115が吸引した空気は、例えば、エアフィルター117から排出される。また同様に、吸引スイッチ118aに隣接して構成された読取スイッチ118bが作業者により押下されると、制御部13が検出部11を介してRFIDタグ31に対する読み書きの動作を行う。
【0048】
なお、作業者により吸引スイッチ118aが押下されてノズル部114の先端でRFIDタグ31を吸引している状態でさらに読取スイッチ118bが押下された状態となったときに限り、RFIDタグ31の読み取り動作を行うようにしてもよい。すなわち、作業者は、吸引スイッチ118aと読取スイッチ118bの押下の操作を使い分けることで、吸引動作と読取動作を必要最小限に抑えて効率化することが可能である。なお、吸引スイッチ118aと読取スイッチ118bは、作業者が押下するとオン状態となり、離すとオフ状態となるプッシュスイッチや、作業者が押下するとオン状態となり、離してもオン状態が維持されるが、再度押下するとオフ状態に戻るトグルスイッチ等、操作要件に応じて適当な種類のスイッチを用いることができる。
【0049】
図6および図7の例では、空気圧を利用して部品(RFIDタグ31)を吸引する方式をとる構成を示したが、部品を吸引する方式はこれに限られず、例えば、磁石等の磁気を用いて吸引する方式とすることも可能である。この場合、部品の材質によっては磁気によって吸引できないものが生じ得る。また、例えば永久磁石を用いる場合は、ピックアップ器具10により吸引された状態の部品をピックアップ器具10から取り外すための付加機構が必要となり得る。
【0050】
以上に説明したように、本発明の実施の形態2であるピックアップ装置1によれば、RFIDタグ31が配置された小型の部品(もしくはRFIDタグ31自体)をピックアップ器具10により吸引してピックアップする作業工程の際に、ピックアップ器具10の先端部付近に形成された検出部11を介して、RFIDタグ31に対して同時に情報の読み書きを行う。これにより、従来部品のピックアップとは別工程であった情報の読み書きを、ピックアップ工程に集約することが可能となる。
【0051】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、上記の実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0052】
例えば、上記の各実施の形態において図1図7の例で示した各ピックアップ装置1(ピックアップ器具10)は、必ずしも人(作業者)が使用するものに限らず、ロボットの手指や腕等の機構によって操作する場合にも広く適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、RFIDタグを備えた物をピックアップするピックアップ装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0054】
1…ピックアップ装置、2…上位システム、3…部品、
10…ピックアップ器具、11…検出部、12…ケーブル、12a…ストリップライン、12b…同軸ケーブル芯線、13…制御部、
31…RFIDタグ、
101a…上側板、101b…下側板、111…切欠部、112…溝部、113…ポンプ部、114…ノズル部、115…吸引機構、116…電源部、117…エアフィルター、118a…吸引スイッチ、118b…読取スイッチ、121…信号ライン、122…アースライン、123…アンテナ、131…アンテナ部、132…ケーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7