【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る三次元積層造形用のスライスデータ生成方法は、パウダーベッドを形成するためのリコータを有する三次元積層造形装置による造形に用いられるスライスデータの生成方法であって、造形物の平面視又は前記リコータの幅方向に直交する方向から視た側面視において、前記リコータの幅方向における前記造形物の複数の角部の位置がずれるように、前記造形物の三次元形状データの配向を設定するステップと、設定された前記配向の前記三次元形状データをスライスして、前記スライスデータを生成するステップと、を備える。
【0010】
造形物の長辺の長さと短辺の長さの差が大きい場合、レーザ照射後の造形物の熱変形(熱収縮)が大きくなるため、造形物の反りによって造形物の角部に大きな浮き上がりが発生することがある。この場合、リコータが造形物を通過する際に造形物の角部がリコータに接触し、リコータにおける造形用の粉末材を敷設するための敷設部品の損傷が生じる可能性がある。特に、リコータの同一箇所に造形物の角部が何度も接触すると、当該同一箇所にてリコータの局所的な損傷による造形物の品質低下リスクが高くなる。
【0011】
この点、上記(1)に記載の三次元積層造形用のスライスデータ生成方法によれば、造形物の平面視又はリコータの幅方向に直交する方向から視た側面視において、リコータの幅方向における造形物の複数の角部の位置がずれるように造形物の三次元形状データの配向を設定する。このため、リコータが造形物を造形する間にリコータに対する造形物の複数の角部が接触する位置をリコータの幅方向に分散させることができる。これにより、リコータの局所的な損傷を抑制し、高品質な造形物の安定的な造形を行うことができる。
【0012】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の三次元積層造形用のスライスデータ生成方法において、前記造形物の三次元形状データの配向を設定するステップでは、前記造形物の平面視又は前記リコータの幅方向に直交する方向から視た側面視において、前記リコータの幅方向における前記造形物の複数の角部の位置の重複を低減するように、前記造形物の三次元形状データの配向を初期配向から変更する。
【0013】
上記(2)に記載の三次元積層造形用のスライスデータ生成方法によれば、造形物の三次元形状データの配向を初期配向から変更して、造形物の平面視又はリコータの幅方向に直交する方向から視た側面視において、リコータの幅方向における造形物の複数の角部の位置の重複を低減する。このため、リコータが造形物を造形する間にリコータに対する造形物の複数の角部が接触する位置をリコータの幅方向に分散させることができる。これにより、リコータの局所的な損傷を抑制し、高品質な造形物の安定的な造形を行うことができる。
【0014】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)に記載の三次元積層造形用のスライスデータ生成方法において、前記リコータの幅方向における複数の位置範囲のそれぞれについて、前記造形物の造形に伴う前記造形物の前記角部の出現頻度を算出するステップをさらに備え、前記三次元形状データの配向を設定するステップでは、各々の前記位置範囲における前記角部の前記出現頻度のばらつきが許容範囲内に収まるような前記三次元形状データの配向を決定する。
【0015】
上記(3)に記載の三次元積層造形用のスライスデータ生成方法によれば、リコータの幅方向における複数の位置範囲での角部の出現頻度のばらつきを小さくすることにより、リコータに対する造形物の複数の角部の接触位置を、リコータの幅方向に効果的に分散させることができる。これにより、リコータの局所的な損傷を効果的に抑制し、高品質な造形物の安定的な造形を行うことができる。
【0016】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れか一項に記載の三次元積層造形用のスライスデータ生成方法において、前記三次元形状データの配向を設定するステップでは、平面視において、前記リコータの前記幅方向に対して前記造形物の長手方向が斜めになるように、前記三次元形状データの配向を決定する。
【0017】
上記(4)に記載の三次元積層造形用のスライスデータ生成方法によれば、直方体等の一定の対称性を有する造形物を造形する場合に、リコータに対する造形物の複数の角部の接触位置を、リコータの幅方向に容易に分散させることができる。これにより、リコータの局所的な損傷を容易に抑制し、高品質な造形物の安定的な造形を行うことができる。
【0018】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れか1項に記載の三次元積層造形用のスライスデータ生成方法において、前記三次元形状データの配向を設定するステップでは、前記リコータの幅方向に直交する方向から視た側面視において、前記造形物の高さ方向が鉛直方向に対して斜めになるように、前記三次元形状データの配向を決定する。
【0019】
上記(5)に記載の三次元積層造形用のスライスデータ生成方法によれば、直方体等の一定の対称性を有する造形物を造形する場合に、リコータに対する造形物の複数の角部の接触位置を、リコータの幅方向に容易に分散させることができる。これにより、リコータの局所的な損傷を容易に抑制し、高品質な造形物の安定的な造形を行うことができる。
【0020】
(6)本発明の少なくとも一実施形態に係る三次元積層造形方法は、上記(1)乃至(5)の何れか一項に記載の方法により、前記スライスデータを生成するステップと、前記リコータにより前記パウダーベッドを形成するステップと、生成された前記スライスデータに従って、前記パウダーベッドに対して選択的に光ビームを照射して固化するステップと、を備える。
【0021】
上記(6)に記載の三次元積層造形方法によれば、上記(1)乃至(5)の何れか一項に記載の方法によって前記スライスデータを生成するため、リコータの局所的な損傷を容易に抑制し、高品質な造形物の安定的な造形を行うことができる。
【0022】
(7)幾つかの実施形態では、上記(6)に記載の三次元積層造形方法において、前記パウダーベッドが形成されるベースプレート又は前記リコータの配向を指定する配向指定データに従って、各層の造形前に前記ベースプレート又は前記リコータの少なくとも一方を制御して、前記リコータに対する各造形層の相対的配向を調整するステップをさらに備える。
【0023】
上記(7)に記載の三次元積層造形方法によれば、各層の造形前にリコータに対する各造形層の相対的配向を調整することにより、リコータに対する造形物の複数の角部の接触位置を、リコータの幅方向に効果的に分散させることができる。これにより、リコータの局所的な損傷を効果的に抑制し、高品質な造形物の安定的な造形を行うことができる。
【0024】
(8)本発明の少なくとも一実施形態に係る三次元積層造形方法は、パウダーベッドを形成するためのリコータを有する三次元積層造形装置を用いた三次元積層造形方法であって、平面視において、前記リコータの幅方向に対して造形物の長手方向が斜めになるように、前記造形物の三次元形状データの配向を設定するステップと、設定された前記配向の前記三次元形状データをスライスして、スライスデータを生成するステップと、生成された前記スライスデータに従って、前記パウダーベッドに対して選択的に光ビームを照射して固化するステップと、を備える。
【0025】
造形物の長辺の長さと短辺の長さの差が大きい場合、レーザ照射後の造形物の熱変形(熱収縮)が大きくなるため、造形物の反りによって造形物の角部に大きな浮き上がりが発生することがある。この場合、リコータが造形物を通過する際に造形物の角部がリコータに接触し、リコータにおける造形用の粉末材を敷設するための敷設部品の損傷が生じる可能性がある。特に、リコータの同一箇所に造形物の角部が何度も接触すると、当該同一箇所にてリコータの局所的な損傷による造形物の品質低下リスクが高くなる。
【0026】
この点、上記(8)に記載の三次元積層造形用のスライスデータ生成方法によれば、平面視においてリコータの幅方向に対して造形物の長手方向が斜めになるように、造形物の三次元形状データの配向を設定する。このため、直方体等の一定の対称性を有する造形物を造形する場合に、リコータに対する造形物の複数の角部の接触位置を、リコータの幅方向に容易に分散させることができる。これにより、リコータの局所的な損傷を抑制し、高品質な造形物の安定的な造形を行うことができる。
【0027】
(9)本発明の少なくとも一実施形態に係る三次元積層造形方法は、パウダーベッドを形成するためのリコータを有する三次元積層造形装置を用いた三次元積層造形方法であって、前記リコータの幅方向に直交する方向から視た側面視において、造形物の高さ方向が鉛直方向に対して斜めになるように、前記造形物の三次元形状データの配向を設定するステップと、設定された前記配向の前記三次元形状データをスライスして、スライスデータを生成するステップと、生成された前記スライスデータに従って、前記パウダーベッドに対して選択的に光ビームを照射して固化するステップと、を備える。
【0028】
造形物の長辺の長さと短辺の長さの差が大きい場合、レーザ照射後の造形物の熱変形(熱収縮)が大きくなるため、造形物の反りによって造形物の角部に大きな浮き上がりが発生することがある。この場合、リコータが造形物を通過する際に造形物の角部がリコータに接触し、リコータにおける造形用の粉末材を敷設するための敷設部品の損傷が生じる可能性がある。特に、リコータの同一箇所に造形物の角部が何度も接触すると、当該同一箇所にてリコータの局所的な損傷による造形物の品質低下リスクが高くなる。
【0029】
この点、上記(9)に記載の三次元積層造形用のスライスデータ生成方法によれば、リコータの幅方向に直交する方向から視た側面視において、造形物の高さ方向が鉛直方向に対して斜めになるように造形物の三次元形状データの配向を設定する。このため、直方体等の一定の対称性を有する造形物を造形する場合に、リコータに対する造形物の複数の角部の接触位置を、リコータの幅方向に容易に分散させることができる。これにより、リコータの局所的な損傷を抑制し、高品質な造形物の安定的な造形を行うことができる。
【0030】
(10)本発明の少なくとも一実施形態に係る三次元積層造形用のスライスデータ生成プログラムは、パウダーベッドを形成するためのリコータを有する三次元積層造形装置による造形に用いられるスライスデータの生成プログラムであって、造形物の平面視又は前記リコータの幅方向に直交する方向から視た側面視において、前記リコータの幅方向における前記造形物の複数の角部の位置がずれるように、前記造形物の三次元形状データの配向を設定する処理と、設定された前記配向の前記三次元形状データをスライスして、前記スライスデータを生成する処理と、をコンピュータに実行させる。
【0031】
造形物の長辺の長さと短辺の長さの差が大きい場合、レーザ照射後の造形物の熱変形(熱収縮)が大きくなるため、造形物の反りによって造形物の角部に大きな浮き上がりが発生することがある。この場合、リコータが造形物を通過する際に造形物の角部がリコータに接触し、リコータにおける造形用の粉末材を敷設するための敷設部品の損傷が生じる可能性がある。特に、リコータの同一箇所に造形物の角部が何度も接触すると、当該同一箇所にてリコータの局所的な損傷による造形物の品質低下リスクが高くなる。
【0032】
この点、上記(10)に記載の三次元積層造形用のスライスデータ生成プログラムによれば、造形物の平面視又はリコータの幅方向に直交する方向から視た側面視において、リコータの幅方向における造形物の複数の角部の位置がずれるように造形物の三次元形状データの配向を設定する。このため、リコータが造形物を造形する間にリコータに対する造形物の複数の角部が接触する位置をリコータの幅方向に分散させることができる。これにより、リコータの局所的な損傷を抑制し、高品質な造形物の安定的な造形を行うことができる。
【0033】
(11)本発明の少なくとも一実施形態に係る三次元積層造形装置は、ベースプレートと、前記ベースプレート上にパウダーベッドを形成するためのリコータと、前記パウダーベッドを選択的に固化するように前記パウダーベッドに光ビームを照射するための光ビーム照射ユニットと、前記ベースプレート又は前記リコータの配向を指定する配向指定データに従って、各層の造形前に前記ベースプレート又は前記リコータの少なくとも一方を制御して、前記リコータに対する各造形層の相対的配向を調整するように構成されたコントローラと、を備える。
【0034】
造形物の長辺の長さと短辺の長さの差が大きい場合、レーザ照射後の造形物の熱変形(熱収縮)が大きくなるため、造形物の反りによって造形物の角部に大きな浮き上がりが発生することがある。この場合、リコータが造形物を通過する際に造形物の角部がリコータに接触し、リコータにおける造形用の粉末材を敷設するための敷設部品の損傷が生じる可能性がある。特に、リコータの同一箇所に造形物の角部が何度も接触すると、当該同一箇所にてリコータの局所的な損傷による造形物の品質低下リスクが高くなる。
【0035】
この点、上記(11)に記載の三次元積層造形装置によれば、ベースプレート又はリコータの配向を指定する配向指定データに従って、各層の造形前にベースプレート又はリコータの少なくとも一方を制御して、リコータに対する各造形層の相対的配向が調整される。このため、リコータが造形物を造形する間にリコータに対する造形物の複数の角部が接触する位置をリコータの幅方向に分散させるようにリコータに対する各造形層の相対的配向を調整することにより、リコータの局所的な損傷を抑制し、高品質な造形物の安定的な造形を行うことができる。