(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
水銀汚染土壌を処理する従来の方法としては、場外搬出、低温加熱処理法、不溶化封じ込め、土壌洗浄法等が知られている。
【0003】
汚染土壌の場外搬出は一般的に採用されているが、水銀に関しては許可業者が限られることもあり、水銀汚染土壌が大量に存在する場合には、処分容量及び処分コスト等に関して問題が生じる。
【0004】
低温加熱処理法は、加熱プラントをオンサイトに設置し、添加剤(例えば、塩化第一鉄)及び低温条件(例えば、300〜400℃)を利用し、土壌中に含まれる水銀をガス化することによって回収する方法である。しかしながら、汚染土壌の発生場所が市街地に所在する場合には、水銀を含んだ発生ガスの処理等について、近隣との意思疎通や合意形成を図る必要があるため、現実的にリスクコミュニケーションを成立させることは容易ではない。
【0005】
不溶化封じ込めは、汚染土壌からの水銀溶出を抑制する効果を有する添加剤(例えば、硫化ナトリウム、キレート剤)を、汚染土壌と混合する方法である。本方法は、汚染土壌から水銀を除去するものではないため、土壌汚染対策法による指定を解除することはできない。そのため、処理後の土壌及び土地の用途には制限が残ったままとなる。
【0006】
土壌洗浄法は、汚染土壌を3〜4倍量の水と混合、攪拌、及び解砕し、固形分を粒径ごとに分級する方法である。具体的には、第1の分級装置(例えば、ドラムウォシャ、トロンメル)を使用して、汚染土壌を含む泥水から粗礫(粒径:約20mm以上)を除去し、次に、第2の分級装置(例えば、ローヘッドスクリーン)を使用して、中礫及び細礫(粒径:約2.5〜20mm)を除去し、更に、第3の分級装置(例えば、ハイメッシュセパレータ)を使用して、粗砂、中砂、及び細砂(粒径:約0.075〜2.5mm)を除去する。これらの固形分が除去された泥水は、凝集剤が添加された後、脱水機(例えば、フィルタープレス)によって固液分離される。脱水ケーキは汚染が濃縮した汚泥として処分される。一方、分級装置によって除去された粒径が粗い固形分は健全土として再利用することが可能である。また、脱水機によって分離された水分も再利用することが可能である。
【0007】
ところで、汚染土壌に関するものではないが、鉄粉カラム及び硫酸銅を利用して、実験室廃液から水銀を吸着除去する方法が知られている(非特許文献1)。非特許文献1は、実験室から排出される少量の廃液をカラムで吸着する方法を開示しているに過ぎず、規模及び性質が全く異なる汚染土壌に対する対策については一切記載していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
土壌洗浄法は、常温常圧条件下において実施することができ、簡易的な防護テント等で処理設備を覆う等により周辺影響を制御しやすく、オンサイトでの土壌処理技術として許容されやすい方法である。しかしながら、通常の水を使用した土壌洗浄技術は適用可能な濃度範囲が小さく、一般に土壌溶出量基準の2〜3倍程度超過する汚染レベルが確実に浄化できる範囲と考えられている。そのため、汚染がそれ以上に深刻な場合には、土壌洗浄法によって得られた粗粒分(一般的には0.075mm以上の砂分)が十分に浄化されておらず、これを健全土として再利用することができない。
【0010】
そのため、本発明は、従来の土壌洗浄法を改良し、高濃度の水銀で汚染された土壌であっても浄化可能な方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等が鋭意検討した結果、水銀で汚染された土壌を含む泥水と鉄粉とを混合した後、鉄粉を泥水から除去することによって、当該土壌を浄化できることを見出した。また、硫黄又は銅を担持した鉄粉を使用することによって、浄化作業中に水銀が揮発することを抑制できることも見出した。
【0012】
本発明の実施形態として以下のものを挙げることができる。
[1]
水銀で汚染された土壌を含む泥水と鉄粉とを混合して、水銀を鉄粉に吸着させる吸着工程;及び
吸着工程において得られた混合物から鉄粉を磁力によって分離する分離工程;
を含む、水銀で汚染された土壌の浄化方法。
[2]
鉄粉が、硫黄を担持した鉄粉を含む、[1]に記載の浄化方法。
[3]
硫黄が、3〜30mg/g-Feの量で鉄粉に担持されている、[2]に記載の浄化方法。
[4]
鉄粉が、銅を担持した鉄粉を含む、[1]に記載の浄化方法。
[5]
銅が、0.5〜10mg/g-Feの量で鉄粉に担持されている、[4]に記載の浄化方法。
[6]
鉄粉が、水銀で汚染された土壌の重量を基準として、5〜30重量%の量で使用される、[1]〜[5]のいずれかに記載の浄化方法。
[7]
分離工程において分離された鉄粉を吸着工程において再利用する、[1]〜[6]のいずれかに記載の浄化方法。
[8]
分離工程が、2,000〜13,000ガウスの表面磁束密度を有する磁石を用いて実施される、[1]〜[7]のいずれかに記載の浄化方法。
[9]
分離工程が、フェライト磁石又はネオジム磁石を用いて実施される、[1]〜[7]のいずれかに記載の浄化方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高濃度の水銀で汚染された土壌であっても浄化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本明細書において「約」とは、特定の数値の±10%の範囲を含むことを意味する。例えば、約10とは9〜11の範囲を意味する。
【0016】
<水銀で汚染された土壌の浄化方法>
本発明の一実施形態は、吸着工程及び分離工程を含む、水銀で汚染された土壌(以下、「汚染土壌」ともいう。)の浄化方法に関する。以下、各工程について説明する。
【0017】
[1.吸着工程]
吸着工程は、汚染土壌を含む泥水(以下、「汚染泥水」ともいう。)と鉄粉とを混合する工程である。鉄粉は水銀を吸着することができるため、汚染泥水と鉄粉とを混合することによって、汚染泥水中の水銀を鉄粉に吸着させることができる。
【0018】
汚染泥水は、水銀で汚染された土壌を含む泥水であれば特に限定されない。汚染泥水としては、汚染土壌の固形分が除去されていないもの、粒径が約20mm以上の固形分が除去されたもの、粒径が約2.5mm以上の固形分が除去されたもの、及び粒径が約0.075mm以上の固形分が除去されたもの等を挙げることができる。鉄粉をいずれの汚染泥水と混合するかは、汚染土壌に含まれる水銀の濃度等に基づいて、適宜決定することができる。
【0019】
水銀の土壌溶出量基準値は0.0005mg/Lである。本実施形態において対象とする汚染土壌としては、特に限定するものではないが、例えば、水銀の土壌溶出量が、約0.0011mg/L、約0.0022mg/L、約0.0033mg/L、約0.0044mg/L、約0.0055mg/L等である汚染土壌を挙げることができる。また、上記土壌溶出量の任意の2つの数値をそれぞれ上限及び下限とした範囲(例えば、約0.0011〜0.0055mg/L)の土壌溶出量の汚染土壌を本実施形態において対象とすることもできる。
【0020】
本実施形態において対象とする汚染泥水のpHとしては、特に限定するものではないが、例えば、約5、約6、約7、約、約8、約9、約10等を挙げることができる。また、上記pHの任意の2つの数値をそれぞれ上限及び下限とした範囲(例えば、約5〜10)のpHを有する汚染泥水を本実施形態において対象とすることもできる。
【0021】
汚染土壌に含まれる水銀としては、金属水銀、無機水銀、及び有機水銀を挙げることができる。無機水銀としては、例えば、酸化水銀、硫化水銀、塩化水銀(Hg
2Cl
2、HgCl
2)、硝酸水銀等を挙げることができる。有機水銀としては、例えば、アルキル水銀(例えば、メチル水銀、エチル水銀)、フェニル水銀(例えば、酢酸フェニル水銀)等を挙げることができる。汚染土壌からの水銀溶出に最も関連があるものは、水に溶けやすい塩化水銀、硝酸水銀等である。金属水銀は揮発性であるため、浄化作業中に揮発して問題となることがある。
【0022】
鉄粉としては、金属鉄を主体とする材料を使用することができる。例えば、平均粒径が10〜500μm、好ましくは20〜200μm、特に好ましくは50〜100μmの鉄粉を使用することが好ましい。このような平均粒径を有する鉄粉を使用することによって、汚染泥水に含まれる水銀を効率的に吸着することができる。
【0023】
鉄粉の量は、汚染土壌の性質等によって異なるが、例えば、汚染土壌の重量を基準として、約5重量%、約10重量%、約15重量%、約20重量%、約25重量%、約30重量%等とすることができる。また、上記の鉄粉の量の任意の2つの数値をそれぞれ上限及び下限とした範囲(例えば、約5〜30重量%)の量で鉄粉を使用してもよい。
【0024】
水銀は以下の反応(1):
Fe + Hg
2+ → Fe
2+ + Hg (1)
によって金属水銀に還元され、金属水銀が鉄粉の表面に吸着されると推定される。しかしながら、本実施形態はこのメカニズムに限定されるものではない。即ち、本実施形態では、汚染泥水に含まれる水銀が鉄粉によって除去される限り、如何なるメカニズムを介していてもよい。
【0025】
鉄粉としては、硫黄を担持した鉄粉(以下、「硫黄担持鉄粉」ともいう。)を使用することもできる。硫黄担持鉄粉を使用することによって、金属水銀の揮発を抑制することができる。硫黄担持鉄粉は、例えば、水噴霧アトマイズ鉄粉の製造段階で、所定重量の硫酸塩として添加すること等によって調製することができる。
【0026】
上記反応(1)に示す通り、水銀イオンは還元されて金属水銀となることが推定される。硫黄担持鉄粉を使用した場合には、水銀イオンが、還元される前に硫黄と反応し、硫化水銀となることによって、金属水銀への変換及びその揮発が抑制されると推定される。しかしながら、本実施形態はこのメカニズムに限定されるものではない。即ち、本実施形態では、硫黄担持鉄粉によって金属水銀の揮発が抑制される限り、如何なるメカニズムを介していてもよい。
【0027】
硫黄の担持量としては、例えば、約3〜30mg/g-Fe、約5〜20mg/g-Fe、約10mg/g-Fe等を挙げることができる。このような量で硫黄を担持することによって、金属水銀の揮発を効果的に抑制することができる。
【0028】
鉄粉としては、銅を担持した鉄粉(以下、「銅担持鉄粉」ともいう。)を使用することもできる。銅担持鉄粉を使用することによって、金属水銀の揮発を抑制することができる。銅担持鉄粉は、例えば、銅イオン溶液に鉄粉を予め浸漬させること、銅イオン溶液を汚染泥水に添加すること等によって調製することができる。銅は鉄よりもイオン化傾向が低いため、鉄粉の表面に銅が析出し、担持される。
【0029】
銅担持鉄粉を使用した場合には、金属水銀が銅とアマルガムを形成することによって、金属水銀の揮発が抑制されると推定される。しかしながら、本実施形態はこのメカニズムに限定されるものではない。即ち、本実施形態では、銅担持鉄粉によって金属水銀の揮発が抑制される限り、如何なるメカニズムを介していてもよい。
【0030】
銅の担持量としては、例えば、約0.5〜10mg/g-Fe、約3〜8mg/g-Fe、約5mg/g-Feを挙げることができる。
【0031】
本実施形態において、鉄粉は繰り返し使用することができる。そのため、少量の鉄粉を繰り返し使用して大量の汚染土壌を浄化することができる。使用する鉄粉の量を少なくすることによって、材料コスト及び二次廃棄物量を低減することができる。
【0032】
鉄粉と汚染泥水との混合時間は、汚染土壌の性質、水銀の濃度、鉄粉の使用量等によって適宜変更されるが、例えば5〜60分、15〜30分等とすることができる。
【0033】
[2.分離工程]
分離工程は、吸着工程において得られた混合物から鉄粉を磁力によって分離する工程である。
【0034】
本実施形態では、大型で高価な超伝導磁石を使用することなく、汎用されている小型で安価な永久磁石を含む磁力分離装置(例えば、マグレットセパレーター)によって鉄粉を分離することができる。分離工程で使用する磁石としては、例えば2,000〜13,000ガウス、好ましくは4,000ガウス以上、より好ましくは10,000ガウス以上の表面磁束密度を有する磁石を挙げることができる。具体的には、フェライト(等方、異方)磁石、ネオジム磁石、サマリウムコバルト磁石、アルニコ磁石等の永久磁石を挙げることができ、フェライト磁石又はネオジム磁石が特に好ましく使用される。このような磁石を使用することによって、低コスト且つ狭いスペースにおいて鉄粉の分離が可能となる。
【0035】
分離工程において分離された鉄粉は吸着工程において再利用することができる。鉄粉を再利用することによって、使用する鉄粉の量を低減させ、材料コスト及び二次廃棄物量の低減が可能となる。
【0036】
以上の通り、本実施形態に係る浄化方法は、吸着工程及び分離工程を含む。なお、本実施形態に係る浄化方法に含まれる工程は上記のものに限定されるわけではなく、必要に応じて更なる工程を含んでいてもよい。例えば、分離工程において鉄粉が分離された泥水を脱水ケーキと水分とに固液分離する固液分離工程等を更に含んでいてもよい。
【0037】
本実施形態に係る浄化方法では、汚染土壌の浄化によって得られる、粒径が約0.075mm以上の固形分の水銀土壌溶出量が土壌溶出量基準値(0.0005mg/L)を下回っていることが好ましく、全ての粒径の固形分の水銀土壌溶出量が土壌溶出量基準値を下回っていることが更に好ましく、全ての粒径の固形分の水銀土壌溶出量、及び固液分離後に得られる洗浄水中の水銀濃度が土壌溶出量基準値を下回っていることが特に好ましい。
【0038】
本実施形態に係る浄化方法では、汚染土壌に含まれる水銀を鉄粉によって除去するため、従来の土壌洗浄法では処理できなかった、高濃度の水銀で汚染された土壌を浄化することができる。これにより、汚染土壌の浄化によって得られる多くの固形分を健全土として再利用又は処分することができる。
【0039】
本実施形態に係る浄化方法では、更に、汚染土壌の浄化作業中に水銀が揮発することを抑制できるため、作業員の水銀への曝露を回避することができる。これにより、作業現場における曝露回避に必要となるコストを低減することができる。
【0040】
本発明のより具体的な実施形態としては、
汚染泥水から第1の固形分(例えば、粒径が約20mm以上の固形分)を除去する第1の分級工程;
第1の分級工程を経た泥水と鉄粉とを混合して、水銀を鉄粉に吸着させる吸着工程;
吸着工程を経た泥水から第2の固形分(例えば、粒径が約2.5〜20mmの固形分)を除去する第2の分級工程;
第2の分級工程を経た泥水から鉄粉を磁力によって分離する分離工程;
分離工程を経た泥水から第3の固形分(例えば、粒径が約0.075〜2.5mmの固形分)を除去する第3の分級工程;及び
第3の分級工程を経た泥水を固液分離する固液分離工程;
を含む、汚染泥水の浄化方法を挙げることができる。
【0041】
第1の分級工程は、例えば、ドラムウォシャ、トロンメル等を使用して実施することができる。第2の分級工程は、例えば、ローヘッドスクリーン等を使用して実施することができる。第3の分級工程は、例えば、ハイメッシュセパレータ等を使用して実施することができる。
【0042】
<汚染泥水の浄化装置>
上記の浄化方法を実施するための本発明に係る浄化装置について、図面を参照して以下説明する。但し、以下の実施形態は例示に過ぎず、本発明に係る浄化装置の実施形態がこれに限定されるわけではない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、更なる構成からなる装置が本発明に包含される。
【0043】
本発明の一実施形態は、
図1に示すように、混合槽101、磁力分離装置102、及び返送ライン103を備える浄化装置に関する。
【0044】
混合槽101は、汚染泥水と鉄粉とを混合して、水銀を鉄粉に吸着させるものである。混合槽101は、汚染泥水と鉄粉とを混合する撹拌機104を有しており、混合して得られた混合物を磁力分離装置102に送出する混合物送出ライン105を備える。混合物送出ライン105の出口末端は、混合物を磁力分離装置102に投入できるように、磁力分離装置102の上部又は内部に位置している。
【0045】
磁力分離装置102は、混合槽101において水銀を吸着した鉄粉を、磁力によって混合物から分離するものである。磁力分離装置102の下部には、浄化された泥水を収容する浄化泥水収容容器106が配置されている。
【0046】
返送ライン103は、磁力分離装置102によって分離された鉄粉を混合槽101に返送するものである。
【0047】
磁力分離装置としては、汎用されている簡易なマグレットセパレーターを使用することが好ましい。マグネットセパレーターは、例えば
図2に示すように、マグネットコア901と、マグネットコア901の外周に覆う外筒902と、外筒902に付着した鉄粉から水分を搾り出すローラー903と、ローラー903によって水分が搾り出された鉄粉を外筒902から剥がし取るスクレーパー904とを備える。
【0048】
本実施形態に係る浄化装置では、大型で高価な超伝導磁石を使用することなく、汎用されている小型で安価な磁石による磁力によって鉄粉を分離することができる。そのため、マグネットコアとして、例えば2,000〜13,000ガウス、好ましくは4,000ガウス以上、より好ましくは10,000ガウス以上の表面磁束密度を有する磁石を使用することができる。具体的には、マグネットコアとしてフェライト(等方、異方)磁石、ネオジム磁石、サマリウムコバルト磁石、アルニコ磁石等の永久磁石を使用することができる。
【0049】
以上のように構成された本実施形態に係る浄化装置において、汚染泥水と鉄粉とが混合槽101において混合され、混合物中において水銀が鉄粉に吸着される。混合物は混合物送出ライン105を介して磁力分離装置102に送出され、鉄粉が磁力によって混合物から分離される。鉄粉が分離された浄化泥水は、浄化泥水収容容器106に収容される。磁力分離装置102によって分離された鉄粉は、返送ライン103を介して混合槽101に返送される。
【実施例】
【0050】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれに限定されるものではない。
【0051】
<汚染土壌洗浄試験>
[比較例1]
500gの実汚染土壌(水銀の初期溶出量:0.0011mg/L)を3倍量(1500mL)の洗浄水と混合し、攪拌機にて300rpmで5分間、攪拌及び解砕を行った。混合物を目開きの異なる3種類の篩に順番に通して分級操作を行ない、粒径が約2mm以上の固形分、粒径が約0.425〜2mmの固形分、及び粒径が約0.075〜0.425mmの固形分をそれぞれ単離した。なお、別途準備しておいた500gの蒸留水を分級操作時に使用した。分級操作において篩を通過した残留物を遠心分離し、粒径が約0.075mm未満の固形分、及び水分をそれぞれ得た。
【0052】
[比較例2]
実汚染土壌(水銀の初期溶出量:0.0055mg/L)を使用したこと以外は、比較例1と同一の操作を実施した。
【0053】
[実施例1]
50gの鉄粉の存在下で実汚染土壌を洗浄水と混合した後、ネオジム磁石内蔵のマグネットバーで鉄粉を除去し、分級操作を行なったこと以外は、比較例2と同一の操作を実施した。
【0054】
[実施例2]
100gの鉄粉の存在下で実汚染土壌を洗浄水と混合した後、ネオジム磁石内蔵のマグネットバーで鉄粉を除去し、分級操作を行なったこと以外は、比較例2と同一の操作を実施した。
【0055】
結果を表1に示す。なお、本試験における汚染泥水のpHは約5〜10であった。
【表1】
【0056】
比較例1に関して、水銀土壌溶出量基準値を2.2倍超過した低濃度汚染土壌の場合には、鉄粉を使用しない通常の洗浄操作によって、粒径が約0.075mm未満の固形分を除いて、水銀土壌溶出量基準を満たした。
【0057】
比較例2に関して、水銀土壌溶出量基準値を11倍超過した高濃度汚染土壌の場合には、鉄粉を使用しない通常の洗浄操作では、粒径が約2mm以上の固形分以外は水銀土壌溶出量基準を満たすことはできなかった。
【0058】
実施例1に関して、水銀土壌溶出量基準値を11倍超過した高濃度汚染土壌の場合でも、鉄粉(10重量%)を使用して洗浄操作を行なうことによって、全ての固形物について水銀土壌溶出量基準を満たすことができた。一方、洗浄操作によって生じた水分は、水銀排水基準(0.005mg/L)は満たしたものの、水銀土壌溶出量基準は満たしていなかった。
【0059】
実施例2に関して、水銀土壌溶出量基準値を11倍超過した高濃度汚染土壌の場合でも、鉄粉(20重量%)を使用して洗浄操作を行なうことによって、全ての固形物及び水分について水銀土壌溶出量基準を満たすことができた。
【0060】
<金属水銀揮発抑制試験>
[比較例3]
0.5mg/Lの水銀(Hg
2+)濃度を有する200mLの水銀溶液と2gの鉄粉とを、600mLの有効容量を有する密閉容器(気相部の体積:400mL)内で10分間反応させた。その後、気相部における水銀ガス濃度を測定した。
【0061】
[実施例3]
銅を担持した鉄粉(銅担持量:5mg/g-Fe)を使用したこと以外は、比較例3と同一の操作を実施した。
【0062】
[実施例4]
硫黄を担持した鉄粉(硫黄担持量:10mg/g-Fe)を使用したこと以外は、比較例3と同一の操作を実施した。
【0063】
結果を表2に示す。
【表2】
【0064】
銅担持鉄粉を使用することによって、単なる鉄粉を使用した場合と比較して、水銀ガス濃度を約70%減少させることができた。また、硫黄担持鉄粉を使用することによって、単なる鉄粉を使用した場合と比較して、水銀ガス濃度を約90%減少させることができた。