(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その言及した数に限定されるものではなく、言及した数以上でも以下でもよい。
【0012】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことはいうまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0013】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0014】
(実施の形態1)
<半導体装置の構造の説明>
以下に、
図1〜
図3を用いて、本実施の形態1の半導体装置の構造を説明する。
図1は、本実施の形態の半導体装置の構成を模式的に示す平面図である。
図2は、本実施の形態の半導体装置の構成を示す断面図である。
図2に示す断面は、例えば、
図1のA−A部と対応する。本実施の形態の半導体装置(半導体素子)は、縦型のパワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor、MOS型の電界効果トランジスタ)である。MOSFETは、MISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)と呼ばれることもある。
図3は、本実施の形態の半導体装置のp型カラム領域の構成を示す平面図である。
【0015】
図1に示すように、本実施の形態の半導体装置(半導体チップ)の上面からの平面視における形状は、矩形状である。そして、本実施の形態の半導体装置は、セル領域CRと、中間領域(ターミネーション部、終端部ともいう)TRと、周辺領域PERとを有している。セル領域CRは、略矩形の半導体装置の中央部に配置され、中間領域TRは、セル領域CRの外側を囲むように配置され、周辺領域PERは、中間領域TRを囲むように配置されている。以下、
図2を参照しながら、各領域における半導体装置の構成を説明する。
【0016】
(1)セル領域CRの構造
図2に示すように、セル領域CRには、パワーMOSFETが形成されている。このパワーMOSFETは、半導体基板1S上のエピタキシャル層(半導体層)EPSの主表面に形成されている。半導体基板1Sは、
図2においては、n型半導体領域LRに対応する。つまり、半導体基板1S内の全体に、n型半導体領域LRが形成されている。
【0017】
エピタキシャル層EPSは、複数のp型カラム領域(p型ピラー、ピラーともいう)PC1と複数のn型カラム領域(n型ピラー、ピラーともいう)NC1とからなる。p型カラム領域PC1とn型カラム領域NC1とはX方向に交互に配置されている。このようなp型カラム領域PC1とn型カラム領域NC1とが周期的に配置された構造を、スーパージャンクション(Superjunction)構造と言う。
図3に示すように、p型カラム領域PC1の上面からの平面視における形状は、ライン状(Y方向に長辺を有する矩形状)である。
【0018】
例えば、ここでは、p型カラム領域PC1の幅(X方向の寸法)および奥行き(Y方向の寸法)と、n型カラム領域NC1の幅(X方向の寸法)および奥行き(Y方向の寸法)とがそれぞれ同じになるように設計されている。なお、本願でいうX方向およびY方向は、半導体基板1Sの上面およびエピタキシャル層EPSの上面に沿う方向であり、平面視で互いに直交する方向である。また、Z方向は、X方向およびY方向に対して直交する方向(横方向、水平方向)である。つまり、Z方向は半導体基板1Sの上面およびエピタキシャル層EPSの上面に対して垂直な方向(縦方向、垂直方向、高さ方向、深さ方向)である。
【0019】
n型カラム領域NC1は、例えば柱形状をしており、リン(P)またはヒ素(As)などのn型不純物が導入された半導体領域(エピタキシャル層)から構成されている。n型カラム領域NC1のn型不純物濃度は、例えば2.5×10
15/cm
3〜3.5×10
15/cm
3である。また、n型カラム領域NC1の比抵抗は、例えば1.4〜2.0Ω・cmである。n型カラム領域NC1と半導体基板1Sによって、パワーMOSFETのドレイン領域が構成されている。n型カラム領域NC1は、2つのp型カラム領域PC1で挟まれている。複数のn型カラム領域NC1は、それぞれp型カラム領域PC1の幅(X方向の寸法)だけ離間して配置されている。
【0020】
p型カラム領域PC1は、例えば柱形状をしており、ホウ素(B)などのp型不純物が導入された半導体領域から構成されている。p型カラム領域PC1は、2つのn型カラム領域NC1で挟まれている。複数のp型カラム領域PC1は、それぞれn型カラム領域NC1の幅(X方向の寸法)だけ離間して配置されている。p型カラム領域PC1のp型不純物の濃度は、例えば3.0×10
15/cm
3〜6.0×10
15/cm
3であり、p型カラム領域PC1の比抵抗は、例えば2.3〜4.5Ω・cmである。
【0021】
このようなp型カラム領域PC1とn型カラム領域NC1とが周期的に配置された構造体(エピタキシャル層EPS)の主表面にパワーMOSFETが形成されている。
【0022】
p型カラム領域PC1の上面のX方向の幅は、例えば5μmであり、n型カラム領域NC1の上面のX方向の幅は、例えば6μmであり、p型カラム領域PC1、n型カラム領域NC1およびエピタキシャル層EPSのそれぞれの縦方向(Z方向)の厚さ(深さ)は、例えば60μmである。すなわち、p型カラム領域PC1のアスペクト比は、12である。これらの寸法は、後述するp型カラム領域PC2、PC3、n型カラム領域NC2およびNC3も同様である。
【0023】
パワーMOSFETは、n型カラム領域NC1上にゲート絶縁膜GOXを介して配置されたゲート電極GEを有する。ゲート絶縁膜GOXとしては、例えば、酸化シリコン膜を用いることができる。また、ゲート絶縁膜GOXとしては、酸化シリコン膜以外に、例えば、酸化シリコン膜よりも誘電率の高い高誘電率膜などを用いてもよい。また、ゲート電極GEとしては、例えば、多結晶シリコン膜を用いることができる。
【0024】
ゲート電極GEの両側のp型カラム領域PC1の上部にはチャネル領域CHが配置されている。このチャネル領域CHに内包されるようにソース領域SRが配置されている。チャネル領域CHは、例えばホウ素(B)などのp型不純物が導入された半導体領域から構成され、ソース領域SRは、例えばリン(P)またはヒ素(As)などのn型不純物が導入された半導体領域から構成されている。前述したように、n型カラム領域NC1と半導体基板1Sによって、パワーMOSFETのドレイン領域が構成されている。
【0025】
パワーMOSFETのゲート電極GEに電位が印加された場合には、チャネル領域CHに形成された反転層を介して、ソース領域SRからドレイン領域(n型カラム領域NC1、半導体基板1S(LR))に、キャリア(電子)が流れる。言い換えれば、チャネル領域CHに形成された反転層を介して、ドレイン領域(n型カラム領域NC1、半導体基板1S(LR))からソース領域SRに、電流が流れる。
【0026】
Y方向に延在するゲート電極GE、その下方のn型カラム領域NC1、およびその両側のソース領域SRを単位セルとし、これらが繰り返し配置されている。複数の単位セルが、並列に接続され、1つのパワーMOSFETが形成されている。
【0027】
また、ソース領域SRの中央部分には、エピタキシャル層EPSの上面からチャネル領域CHに達するボディコンタクト領域BCが形成されている。このボディコンタクト領域BCは、例えばホウ素(B)などのp型不純物が導入された半導体領域から構成されている。このボディコンタクト領域BCの不純物濃度は、チャネル領域CHの不純物濃度よりも高くなっている。
【0028】
ゲート電極GEの上面および両側の側面は、層間絶縁膜ILにより覆われている。層間絶縁膜ILとしては、例えば、酸化シリコン膜を用いることができる。ボディコンタクト領域BCおよびその両側のソース領域SR上の層間絶縁膜ILは除去されコンタクトホールが形成されている。このコンタクトホールおよび層間絶縁膜IL上には、ソース電極SEが配置されている。ソース電極SEとしては、例えば、チタンタングステン膜からなるバリア導体膜とその上部のアルミニウム膜からなる主導体膜との積層膜を用いることができる。
【0029】
これにより、ソース電極SEは、ソース領域SRと電気的に接続されるとともに、ボディコンタクト領域BCを介してチャネル領域CHとも電気的に接続されることになる。このボディコンタクト領域BCは、ソース電極SEとのオーミック接触を確保する機能を有し、このボディコンタクト領域BCが存在することにより、ソース領域SRとチャネル領域CHとは同電位で電気的に接続されることになる。
【0030】
したがって、ソース領域SRをエミッタ領域とし、チャネル領域CHをベース領域とし、かつn型カラム領域NC1をコレクタ領域とする寄生npnバイポーラトランジスタのオン動作を抑制することができる。すなわち、ソース領域SRとチャネル領域CHとが同電位で電気的に接続されているということは、寄生npnバイポーラトランジスタのエミッタ領域とベース領域との間に電位差が生じていないことを意味し、これによって、寄生npnバイポーラトランジスタのオン動作を抑制することができる。
【0031】
ソース電極SE上には、ソース電極SEを部分的に覆うように、表面保護膜PASが配置されている。表面保護膜PASとしては、例えば、酸化シリコン膜を用いることができる。ソース電極SEの一部領域は、表面保護膜PASから露出している。また、半導体基板1Sの裏面(エピタキシャル層EPSが形成された主面と反対側の面)には、金属膜からなるドレイン電極DEが配置されている。
【0032】
(2)中間領域TRの構造
図2に示すように、中間領域TRには、ゲート引き出し部GPU、ゲート引き出し電極GPE、ソース引き出し領域SPRおよびソース引き出し電極SPEが形成されている。
【0033】
ゲート引き出し部GPUおよびゲート引き出し電極GPEは、半導体基板1S上のエピタキシャル層EPS上に配置されている。ソース引き出し領域SPRは、エピタキシャル層EPSの上部に配置されている。
【0034】
この中間領域TRにおいても、p型カラム領域PC2とn型カラム領域NC2とが周期的に配置されている。別の言い方をすれば、
図3に示すように、ライン状のp型カラム領域PC2とライン状のn型カラム領域NC2(図示しない)とが交互に配置された矩形領域のうち、中央部のセル領域CRの外周領域が中間領域TRとなる。このため、中間領域TRのY方向に延在する辺(
図3の左右の辺)に沿っては、ライン状のp型カラム領域PC2とライン状のn型カラム領域NC2とが交互に配置されている。また、中間領域TRのX方向に延在する辺(
図3の上下の辺)に沿っては、セル領域CRから延在するライン状のp型カラム領域PC2とライン状のn型カラム領域NC2のそれぞれの端部が交互に配置されることとなる。
【0035】
このように、中間領域TRにおけるp型カラム領域PC2とn型カラム領域NC2とが周期的に配置された構造体(エピタキシャル層EPS)は、セル領域CRにおけるp型カラム領域PC1とn型カラム領域NC1とが周期的に配置された構造体(エピタキシャル層EPS)と同様の構成である。
【0036】
ゲート引き出し部GPUは、エピタキシャル層EPSにゲート絶縁膜GOXを介して配置されている。このゲート引き出し部GPUの下方にも、チャネル領域CHが配置されている。そして、このゲート引き出し部GPUの上面および両側の側面を覆うように層間絶縁膜ILが配置されており、この層間絶縁膜ILの一部にゲート引き出し部GPUの上面の一部を露出する開口部が形成されている。また、ゲート引き出し部GPUとしては、ゲート電極GEと同様に、例えば、多結晶シリコン膜を用いることができる。
【0037】
そして、開口部内を含む層間絶縁膜IL上に、ゲート引き出し電極GPEが配置されている。ゲート引き出し電極GPEとしては、ソース電極SEと同様に、例えば、チタンタングステン膜からなるバリア導体膜とその上部のアルミニウム膜からなる主導体膜との積層膜を用いることができる。
【0038】
ここで、ゲート引き出し部GPUは、複数のゲート電極GEと電気的に接続されており、ゲート引き出し電極GPEに印加されたゲート電圧は、ゲート引き出し部GPUを介して、複数のゲート電極GEのそれぞれに印加される。
【0039】
エピタキシャル層EPSの上部には、セル領域CRから延在するチャネル領域CHが形成されている。このチャネル領域CHに内包されるようにソース引き出し領域SPRが配置されている。ソース引き出し領域SPRは、ソース領域SRと同様に、例えばリン(P)またはヒ素(As)などのn型不純物が導入された半導体領域から構成されている。
【0040】
上記チャネル領域CH上を覆うように、エピタキシャル層EPSの上面上に層間絶縁膜ILが配置されており、この層間絶縁膜ILには、ソース引き出し領域SPRを露出するように開口部が形成されている。
【0041】
そして、開口部内を含む層間絶縁膜IL上に、ソース引き出し電極SPEが配置されている。ソース引き出し電極SPEとしては、ソース電極SEと同様に、例えば、チタンタングステン膜からなるバリア導体膜とその上部のアルミニウム膜からなる主導体膜との積層膜を用いることができる。
【0042】
中間領域TRにおいても、ゲート引き出し電極GPEおよびソース引き出し電極SPEを部分的に覆うように、酸化シリコン膜からなる表面保護膜PASが配置されており、ゲート引き出し電極GPEの一部領域およびソース引き出し電極SPEの一部領域は、表面保護膜PASから露出している。
【0043】
(3)周辺領域PERの構造
図2に示すように、周辺領域PERには、フィールドプレート電極(電極、ダミー電極とも言う)FFPが形成されている。
【0044】
フィールドプレート電極FFPは、半導体基板1S上のエピタキシャル層EPS上に配置されている。
【0045】
この周辺領域PERにおいても、p型カラム領域PC3とn型カラム領域NC3とが周期的に配置されている。
図3に示すように、ライン状のp型カラム領域PC1およびライン状のn型カラム領域NC1が交互に配置された矩形領域(セル領域CR)と、ライン状のp型カラム領域PC2およびライン状のn型カラム領域NC2が交互に配置された矩形領域(中間領域TR)の外周領域が周辺領域PERとなる。そして、周辺領域PERのY方向に延在する辺(
図3の左右の辺)に沿っては、Y方向に延在するライン状のp型カラム領域PC3とライン状のn型カラム領域NC3とが交互に配置されている。また、中間領域TRのX方向に延在する辺(
図3の上下の辺)に沿っては、X方向に延在するライン状のp型カラム領域PC3とライン状のn型カラム領域NC3とが交互に配置されている。
【0046】
また、この周辺領域PERのp型カラム領域PC3とn型カラム領域NC3と(エピタキシャル層EPS)は、セル領域CRや中間領域TRのp型カラム領域PC3やn型カラム領域NC3の幅と同じになるように設計されている。
【0047】
このような、周辺領域PERのp型カラム領域PC3とn型カラム領域NC3と(エピタキシャル層EPS)の上に、フィールドプレート電極FFPが形成されている(
図2)。フィールドプレート電極FFPとしては、ゲート電極GEと同様に、例えば、多結晶シリコン膜を用いることができる。フィールドプレート電極FFP上は、層間絶縁膜ILにより覆われている。層間絶縁膜IL上には、酸化シリコン膜からなる表面保護膜PASが配置されている。このように、フィールドプレート電極FFPを設けることにより、電界集中を緩和し、耐圧を向上させることができる。
【0048】
フィールドプレート電極FFPは、例えば、p型カラム領域PC3とn型カラム領域NC3の境界の上方に配置され、p型カラム領域PC3とn型カラム領域NC3と同様に、ライン状に配置される。
【0049】
上述したようなp型カラム領域(PC1)とn型カラム領域(NC1)とが周期的に配置された構造体(スーパージャンクション構造)の主表面に、パワーMOSFETを配置することにより、高耐圧を確保しながら、オン抵抗を低減することができる。
【0050】
例えば、スーパージャンクション構造を採用せず、n型のエピタキシャル層の主表面にパワーMOSFETを配置した場合は、エピタキシャル層の不純物濃度を低くし、エピタキシャル層に形成される空乏層を延ばすことにより、耐圧を確保する必要がある。
【0051】
したがって、高耐圧を実現するためには、低不純物濃度のエピタキシャル層の厚さを厚くする必要がある。一方、低不純物濃度のエピタキシャル層を厚くすると、パワーMOSFETのオン抵抗が高くなる。つまり、パワーMOSFETにおいては、耐圧の向上とオン抵抗の低減とはトレードオフの関係にある。
【0052】
これに対し、p型カラム領域(PC1)とn型カラム領域(NC1)とが周期的に配置された構造体(スーパージャンクション構造)の主表面に、パワーMOSFETを配置した場合には、p型カラム領域(PC1)とn型カラム領域(NC1)との境界領域、すなわち、縦方向(Z方向)に延びるpn接合から、横方向に空乏層が延びる。このため、スーパージャンクション構造のパワーMOSFETでは、オン抵抗の低減のため、電流通路となるn型カラム領域NC1の不純物濃度を高くしても、縦方向(Z方向)に延びるpn接合から横方向に空乏層が広がるため、耐圧を確保することができる。
【0053】
このように、p型カラム領域(PC1)とn型カラム領域(NC1)とが周期的に配置された構造を採用することにより、高耐圧を確保しながら、オン抵抗を低減することができる。
【0054】
また、セル領域CRだけでなく、中間領域TRおよび周辺領域PERにおいても、p型カラム領域(PC2、PC3)とn型カラム領域(NC2、NC3)とを周期的に配置することで、セル領域CRを囲むように空乏層が広がるため、さらに、耐圧を向上させることができる。
【0055】
(4)p型カラム領域(PC1〜PC3)に隣接するp型半導体領域PR1
ここで、本実施の形態の半導体装置の特徴として、n型ピラー(n型カラム領域NC1〜NC3)の両側の側面のそれぞれには、p型半導体領域PR1が形成されている。p型半導体領域PR1は、n型カラム領域NC1〜NC3が形成されたn型ピラー内に形成されており、その導電型はp型である。すなわち、p型半導体領域PR1はn型カラム領域NC1〜NC3を構成していない。p型半導体領域PR1は、隣接するp型カラム領域PC1、PC2またはPC3と共にp型カラム領域を構成している。つまり、p型半導体領域PR1はp型カラム領域の一部である。p型半導体領域PR1のp型不純物の濃度は、例えば8×10
15/cm
3程度である。つまり、p型半導体領域PR1は、p型カラム領域PC1〜PC3と同様の不純物濃度を有している。
【0056】
セル領域CRにおいて、n型ピラーの両側の側面のそれぞれに形成されたp型半導体領域PR1同士の間には、n型カラム領域NC1が形成されている。中間領域TRでも同様に、n型ピラーの両側の側面のそれぞれに形成されたp型半導体領域PR1同士の間には、n型カラム領域NC2が形成されている。周辺領域PERでも同様に、n型ピラーの両側の側面のそれぞれに形成されたp型半導体領域PR1同士の間には、n型カラム領域NC3が形成されている。すなわち、例えばセル領域CRでは、X方向において順にn型カラム領域NC1、p型半導体領域PR1、p型カラム領域PC1、p型半導体領域PR1およびn型カラム領域NC1が並んでいる。
【0057】
p型半導体領域PR1は、エピタキシャル層EPSの上面(n型カラム領域NC1の上面)から、エピタキシャル層EPSの厚さ方向の途中深さに亘って形成されており、p型カラム領域PC1〜PC3のそれぞれの底部近傍にはp型半導体領域PR1は形成されていない。言い換えれば、p型半導体領域PR1は、n型ピラーの側面において、n型ピラーの上面から、n型ピラーの厚さ方向の途中深さまで形成されている。よって、p型半導体領域PR1の下では、p型カラム領域PC1は、導電型がn型であるn型カラム領域NC1に直接接している。
【0058】
つまり、p型半導体領域PR1は、p型カラム領域PC1、PC2またはPC3と隣接する領域において、p型カラム領域PC1、PC2またはPC3のそれぞれの上面と同じ高さから、Z方向におけるp型カラム領域PC1、PC2またはPC3のそれぞれの途中深さに亘って形成されている。具体的には、p型半導体領域PR1はエピタキシャル層EPSの上面からp型カラム領域PC1、PC2またはPC3のそれぞれの半分程度の深さまで形成されており、p型半導体領域PR1の上端から下端までのZ方向の深さは、例えば30μmである。
【0059】
p型半導体領域PR1のX方向の幅は、p型半導体領域PR1の上端から下端に亘ってほぼ一様である。つまり、p型半導体領域PR1は、p型カラム領域PC1、PC2またはPC3のそれぞれの側面に沿って延在している。また、
図3に示すp型カラム領域PC1またはPC2のそれぞれに沿って、p型半導体領域PR1はY方向に延在している。また、
図3においてY方向に延在するp型カラム領域PC3に沿って、p型半導体領域PR1はY方向に延在している。なお、
図3ではp型半導体領域PR1の図示を省略している。
【0060】
<半導体装置の製造方法の説明>
次に、
図4〜
図14を参照しながら、本実施の形態の半導体装置の製造方法を説明するとともに、本実施の形態の半導体装置の構成をより明確にする。
図4〜
図14は、本実施の形態の半導体装置の製造工程を示す断面図である。本実施の形態の半導体装置は、いわゆる「トレンチフィル法」と呼ばれる方法を用いて製造される。
【0061】
まず、
図4に示すように、主面(表面、上面)上にn型半導体層からなるエピタキシャル層EPIを形成した半導体基板1Sを用意する。例えば半導体基板1Sは、リン(P)またはヒ素(As)などのn型不純物を単結晶シリコンに導入することにより形成されている。また、エピタキシャル層EPIのn型不純物濃度は、例えば2.5×10
15/cm
3〜3.5×10
15/cm
3であり、エピタキシャル層EPIの厚さは、例えば60μm程度である。また、エピタキシャル層EPIの比抵抗は、例えば1.4〜2.0Ω・cmである。
【0062】
次に、
図5に示すように、エピタキシャル層EPI上にフォトレジスト膜PRを形成し、露光、現像する。これにより、エピタキシャル層EPI上のn型カラム領域(NC1、NC3)の形成領域にフォトレジスト膜PRが形成される。別の言い方をすれば、p型カラム領域(PC1、PC3)の形成領域のエピタキシャル層EPIが露出する。なお、セル領域CR(中間領域TRを含む)と周辺領域PERの露光(レチクルの転写)は、一度に行ってもよいが、領域毎に個別に行ってもよい。
【0063】
続いて、フォトレジスト膜PRをマスク(エッチング阻止マスク)としてエピタキシャル層EPIをエッチングする。これにより、p型カラム領域(PC1、PC2およびPC3)の形成領域のエピタキシャル層EPIが除去され、溝(トレンチ)DT1、DT2およびDT3が形成される。このように、露光、現像により所望の形状に加工したフォトレジスト膜、または、ハードマスク膜などをマスクとしてエッチングを行うことにより、下層の膜を所望の形状に加工することをパターニングという。
【0064】
ここで、セル領域CRのエピタキシャル層EPIに形成された溝をDT1と、中間領域TRのエピタキシャル層EPIに形成された溝をDT2と、周辺領域PERのエピタキシャル層EPIに形成された溝をDT3とする。溝DT1および溝DT2は、Y方向に延在するライン状であり、溝DT3は、Y方向またはX方向に延在するライン状である。
【0065】
例えば、溝DT1、溝DT2および溝DT3の幅(X方向またはY方向の寸法)および深さ(Z方向の寸法)は、それぞれ、5μm、60μm程度である。そして、これらの溝DT1、溝DT2および溝DT3の間に残存するエピタキシャル層EPIが、ライン状のn型カラム領域NC1、NC2およびNC3となる。例えば、n型カラム領域(NC1、NC2およびNC3)の幅(X方向の寸法)は、6μm程度である。また、n型カラム領域(NC1、NC2およびNC3)の深さ(Z方向の寸法)は、60μm程度である。なお、ここでは溝DT1〜DT3のそれぞれが半導体基板1Sの上面に達している場合について説明するが、溝DT1〜DT3は、半導体基板1Sの上面に達していなくてもよい。
【0066】
ここでは、エッチング工程と、そのエッチング工程によりエピタキシャル層EPIの上面に形成された凹部の側面に対する成膜工程とを繰り返し交互に行うことで、深い溝DT1〜DT3のそれぞれを形成する。このような方法でエッチングを行うことで、溝DT1、DT2およびDT3のそれぞれの側面を、半導体基板1Sの上面に対して垂直に近い角度で形成することができる。具体的には、溝DT1の側面と半導体基板1Sの上面とのなす角度θ1(
図13参照)は、例えば89.3°である。つまり、溝DT1〜DT3のそれぞれは垂直に近い側面を有する溝であるが、その側面はテーパー(順テーパー)を有している。
【0067】
次に、
図6に示すように、半導体基板1Sの上面(エピタキシャル層EPIの上面)に対して斜めの角度から、フォトレジスト膜PRをマスクとして溝DT1〜DT3のそれぞれの側面にイオン注入を行うことで、溝DT1〜DT3のそれぞれの側面にp型半導体領域PR1を形成する。つまり、ここではp型不純物(例えばホウ素(B))をエピタキシャル層EPIに斜め注入する。これにより、溝DT1〜DT3のそれぞれの側面のうち、例えば下半分には不純物は注入されないが、上半分には不純物が注入される。また、溝DT1〜DT3のそれぞれの底面には不純物は注入されない。
【0068】
したがって、p型半導体領域PR1は、溝DT1〜DT3のそれぞれの側面の上端から、溝DT1〜DT3のそれぞれの側面の途中深さに亘って形成されている。具体的には、p型半導体領域PR1はエピタキシャル層EPIの上面から溝DT1〜DT3のそれぞれの半分程度の深さまで形成されており、p型半導体領域PR1の上端から下端までのZ方向の深さは、例えば30μmである。言い換えれば、ここではp型半導体領域PR1をn型カラム領域NC1の上端の高さから、n型カラム領域NC1の高さの半分の位置まで形成する。
【0069】
当該イオン注入工程の注入条件として、例えば注入のエネルギーは40keVであり、ドーズ量は1.0×10
11/cm
2〜3.0×10
11/cm
2である。また、打ち込みは、垂直方向(Z方向)から、X方向(n型ピラーの短手方向)に4〜5°傾けた角度から行う。ここでは、4〜5°での斜め注入を行った後、垂直方向に対して反対側に4〜5°傾けた角度からも打ち込みを行うことで、n型ピラーの短手方向の両側の側面のそれぞれの上部にp型半導体領域PR1が形成される。つまり、1方向からの斜め注入を行った後、平面視において180°回転した位置からの斜め注入も行う。言い換えれば、Y方向に沿う軸に対して線対称の方向からも斜め方向からのイオン注入を行う。
【0070】
ここでは、p型半導体領域PR1を形成した後、p型半導体領域PR1を活性化することを目的とした熱処理を行わず、下記のようにフォトレジスト膜PRの除去工程、洗浄工程およびエピタキシャル成長工程を行う。
【0071】
次に、
図7に示すように、フォトレジスト膜PRをアッシングなどにより除去した後、洗浄工程を行う。
【0072】
続いて、埋め込みエピタキシャル成長法により、溝DT1、DT2およびDT3の内部およびエピタキシャル層EPI上に、p型のエピタキシャル層EPを形成する。すなわち、p型不純物を導入しながらエピタキシャル層を成長させる。この際、溝DT1、DT2およびDT3の底面、側面(側面)からエピタキシャル層EPが成長し、溝DT1、DT2およびDT3の内部が埋め込まれる。また、溝間に位置するエピタキシャル層EPI上や、溝DT1、DT2およびDT3が埋め込まれた後の上部にもエピタキシャル層EPが成長する。エピタキシャル層EPのp型不純物の濃度は、例えば3.0×10
15/cm
3〜6.0×10
15/cm
3であり、エピタキシャル層EPの比抵抗は、例えば2.3〜4.5Ω・cmである。
【0073】
当該エピタキシャル成長工程では、エピタキシャル層EPIを含め半導体基板1Sが、例えば1050〜1100℃程度に加熱される。つまり、エピタキシャル層EPIを含む半導体基板1Sは1000℃以上の温度で加熱される。この熱により、p型半導体領域PR1内のp型不純物は活性化する。また、p型半導体領域PR1は、後に形成するパワーMOSFETを構成するソース領域などを活性化するために行う熱処理などでも活性化する。よって、
図6を用いて説明した斜めイオン注入工程によりp型半導体領域PR1を形成した後、エピタキシャル層EPを形成する上記工程の間に、p型半導体領域PR1を活性化させることを目的とする熱処理を行う必要はない。つまり、熱処理工程を省略することができる。つまり、ここでは、p型半導体領域PR1の形成工程と、エピタキシャル層EPの形成工程とを連続して行う。
【0074】
次に、
図8に示すように、溝DT1、DT2およびDT3上部のエピタキシャル層EPを、CMP(Chemical Mechanical Polishing:化学的機械的研磨)法などを用いて除去することにより、溝DT1、DT2およびDT3の内部にエピタキシャル層EPを埋め込む。これにより、ライン状のp型カラム領域PC1、PC2およびPC3が形成される。また、別の言い方をすれば、複数のp型カラム領域PC1、PC2およびPC3と、複数のn型カラム領域NC1、NC2およびNC3とからなるエピタキシャル層EPSが形成される。
【0075】
以上の工程により、セル領域CRおよび中間領域TRにおいては、Y方向に延在するライン状のp型カラム領域PC1とY方向に延在するライン状のn型カラム領域NC1とがX方向に交互に周期的に配置された構造体が形成される。また、周辺領域PERにおいては、Y方向に延在するライン状のp型カラム領域PC1とY方向に延在するライン状のn型カラム領域NC1とがX方向に交互に周期的に配置された構造体が形成され、X方向に延在するライン状のp型カラム領域PC3とX方向に延在するライン状のn型カラム領域NC3とがY方向に交互に周期的に配置された構造体が形成される(
図3参照)。p型カラム領域PC1〜PC3のそれぞれの上半分の側面は、p型半導体領域PR1と接している。
【0076】
続いて、エピタキシャル層EPSの主表面に、パワーMOSFET、ゲート引き出し部GPU、ゲート引き出し電極GPE、ソース引き出し領域SPR、ソース引き出し電極SPEおよびフィールドプレート電極FFPなどを形成する。
【0077】
例えば、
図9に示すように、チャネル領域CHを形成する。例えば、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて、チャネル領域CHの形成領域に開口部を有するマスク膜を形成する。続いて、このマスク膜をマスク(注入阻止マスク)として、不純物イオンを注入することにより、チャネル領域CHを形成する。例えば、不純物イオンとして、ホウ素(B)などのp型不純物イオンを注入する。これにより、チャネル領域CHとなるp型半導体領域を形成することができる。
【0078】
続いて、上記マスク膜を除去し、エピタキシャル層EPS上にゲート絶縁膜GOXを形成し、さらに、このゲート絶縁膜GOX上に導体膜PF1を形成する。例えば、エピタキシャル層EPSの表面を熱酸化することにより、ゲート絶縁膜GOXとして酸化シリコン膜を形成する。続いて、酸化シリコン膜上に、CVD法などを用いて、多結晶シリコン膜を堆積する。ゲート絶縁膜GOXとしては、上記酸化シリコン膜に変えて、酸化ハフニウム膜などの酸化シリコン膜よりも誘電率の高い高誘電率膜を用いてもよい。また、CVD法などによりゲート絶縁膜GOXを形成してもよい。
【0079】
次に、
図10に示すように、n型カラム領域NC1上に、ゲート電極GEを形成する。また、中間領域TRに、ゲート引き出し部GPUを形成する。また、p型カラム領域PC3とn型カラム領域NC3とのpn接合上に、フィールドプレート電極FFPを形成する。例えば、導体膜PF1上に、ゲート電極GEの形成領域、ゲート引き出し部GPUの形成領域およびフィールドプレート電極FFPの形成領域を覆うフォトレジスト膜を形成し、このフォトレジスト膜をマスクとして、導体膜PF1をエッチングする。
【0080】
これにより、ゲート電極GE、ゲート引き出し部GPUおよびフィールドプレート電極FFPを形成する。例えば、ゲート電極GEは、p型カラム領域PC1と同様にライン状に形成され、ゲート引き出し部GPUは、複数のゲート電極GEと電気的に接続されるように形成される。また、フィールドプレート電極FFPは、p型カラム領域PC3と同様にライン状に形成される。ここでは、セル領域CRでゲート電極GEから露出するゲート絶縁膜GOXをエッチングにより除去する。また、中間領域TRでも、後述するソース引き出し領域SPRを形成する領域のゲート絶縁膜GOXをエッチングにより除去する。
【0081】
続いて、ソース領域SRおよびソース引き出し領域SPRを形成する。例えば、周辺領域PERおよび中間領域TRのソース引き出し領域SPRの形成領域以外の領域をフォトレジスト膜(図示せず)で覆い、このフォトレジスト膜およびセル領域CRのゲート電極GEをマスクとして、n型不純物イオンを注入する。例えば、不純物イオンとして、リン(P)またはヒ素(As)などのn型不純物イオンを注入する。これにより、セル領域CRのゲート電極GE間にソース領域SRとなるn型半導体領域を形成することができる。また、中間領域TRにソース引き出し領域SPRとなるn型半導体領域を形成することができる。セル領域CRに形成された複数のソース領域SRは、中間領域TRに形成されたソース引き出し領域SPRと電気的に接続されている。
【0082】
次に、
図11に示すように、ゲート電極GE、ゲート引き出し部GPUおよびフィールドプレート電極FFPを覆う層間絶縁膜ILを形成する。例えば、ゲート電極GE等の上に、CVD法により、酸化シリコン膜を堆積する。その後、層間絶縁膜IL上に、ボディコンタクト領域BCの形成領域、ゲート引き出し部GPU上およびソース引き出し領域SPR上に開口部を有するフォトレジスト膜(図示せず)を形成する。続いて、このフォトレジスト膜をマスクとして、セル領域CRの隣り合うゲート電極GE間に位置するソース領域SR上の層間絶縁膜ILをエッチングすることにより、開口部を形成する。この際、開口部の底部がエピタキシャル層EPSの表面より低くなるようにオーバーエッチングを行う。これにより、開口部の底部の側面からソース領域SRが露出する。また、中間領域TRのゲート引き出し部GPU上およびソース引き出し領域SPRの層間絶縁膜ILをエッチングすることにより、開口部を形成する。
【0083】
続いて、中間領域TRおよび周辺領域PERを覆うフォトレジスト膜を形成し、このフォトレジスト膜および層間絶縁膜ILをマスクとして不純物イオンを注入することによりボディコンタクト領域BCを形成する。例えば、不純物イオンとして、ホウ素(B)などのp型不純物イオンを注入する。これにより、ボディコンタクト領域BCとなるp型半導体領域を形成することができる。ボディコンタクト領域BCは、ソース領域SRの中央部に位置し、その底部はチャネル領域CHに達している。そして、ボディコンタクト領域BCの不純物濃度は、チャネル領域CHの不純物濃度よりも高い。
【0084】
次に、
図12に示すように、ソース電極SE、ゲート引き出し電極GPEおよびソース引き出し電極SPEを形成する。例えば、ボディコンタクト領域BC、ゲート引き出し部GPUおよびソース引き出し領域SPR上を含む層間絶縁膜IL上に金属膜を形成する。例えば、チタンタングステン膜とその上部のアルミニウム膜との積層膜をスパッタリング法などにより形成する。続いて、金属膜をパターニングすることにより、ソース電極SE、ゲート引き出し電極GPEおよびソース引き出し電極SPEを形成する。セル領域CRのソース電極SEは、ソース領域SRとボディコンタクト領域BCとに電気的に接続される。中間領域TRのゲート引き出し電極GPEは、ゲート引き出し部GPUと電気的に接続される。また、中間領域TRのソース引き出し電極SPEは、ソース引き出し領域SPRと電気的に接続される。
【0085】
続いて、ソース電極SE、ゲート引き出し電極GPEおよびソース引き出し電極SPEを覆うように表面保護膜PASを形成する。例えば、ソース電極SE、ゲート引き出し電極GPEおよびソース引き出し電極SPE等の上に、CVD法により、酸化シリコン膜を堆積する。そして、表面保護膜PASをパターニングすることにより、ソース電極SEの一部領域と、ゲート引き出し電極GPEの一部領域と、ソース引き出し電極SPEの一部領域とを露出させる。この露出部が、外部接続領域(例えば、ゲートパッド、ソースパッド)となる。
【0086】
続いて、半導体基板1Sの裏面の全面に、n型不純物イオンを注入することにより、n型半導体領域(低抵抗領域)LRを形成する。このように、n型半導体領域LRを形成することにより、後述するドレイン電極DEとn型カラム領域(NC1、NC2およびNC3)との接続抵抗を低減することができる。このn型半導体領域(低抵抗領域)LRは、半導体基板1Sの裏面から、溝(DT1、DT2およびDT3)の底部まで延在し、そのn型不純物濃度は、例えば、1.0×10
16/cm
3程度であり、その厚さは、例えば、1〜2μm程度である。
【0087】
続いて、半導体基板1Sの裏面に、ドレイン電極DEを形成する。例えば、半導体基板1Sの裏面側を上面とし、金属膜をスパッタリング法または蒸着法により形成する。これにより、金属膜よりなるドレイン電極DEを形成することができる。ゲート電極GE、ソース領域SRおよびドレイン電極DEは、パワーMOSFETを構成している。
【0088】
以上の工程により、本実施の形態の半導体装置を形成することができる。
【0089】
本実施の形態のように、トレンチフィル法を用いて、p型カラム領域(PC1、PC2およびPC3)およびn型カラム領域(NC1、NC2およびNC3)を形成した場合には、「マルチエピタキシャル法」と比較し、p型カラム領域とn型カラム領域との間隔をより狭くすることができる。これにより、オン抵抗を低減し、耐圧を向上させることができる。また、「トレンチフィル法」によれば、「マルチエピタキシャル法」よりスループットの点でも有利である。
【0090】
<本実施の形態の効果の説明>
以下に、
図13と、比較例の半導体装置を示す
図25を用いて、本実施の形態の効果について説明する。
図13は、本実施の形態の半導体装置を示す拡大断面図である。
図25は、比較例である半導体装置を示す断面図である。
図13では、半導体基板1S、n型カラム領域NC1、p型カラム領域PC1およびp型半導体領域PR1のみを示し、他の構造の図示は省略している。
図25は、
図2に対応する領域を示す断面図である。
図25に示す比較例の半導体装置は、p型半導体領域PR1(
図2参照)が形成されていない点のみ、本実施の形態の半導体装置と異なる。
【0091】
スーパージャンクション構造を採用した縦型パワーMOSFETでは、n型カラム領域およびp型カラム領域のZ方向の距離(厚さ)を増大させることが求められている。これは、空乏層が生じる領域を増大させることを意味し、これによりパワーMOSFETの耐圧を高めることができるためである。また、スーパージャンクション構造を採用した縦型パワーMOSFETでは、n型カラム領域およびp型カラム領域のそれぞれの短手方向(X方向)の幅を縮小することが求められている。これは、半導体装置の微細化が可能となることに加えて、パワーMOSFETの電流経路であるn型カラム領域の幅を狭めることで、パワーMOSFETのオフ時においてX方向に対向するp型カラム領域から伸びる空乏層がn型カラム領域内で閉じやすくなることで、耐圧の確保が容易となるためである。
【0092】
n型カラム領域およびp型カラム領域のそれぞれの幅が狭ければ、n型カラム領域およびp型カラム領域のそれぞれの不純物濃度が高くてもパワーMOSFETのオフ時に空乏層を閉じることができ、耐圧を保つことができる。パワーMOSFETの電流経路であるn型カラム領域の不純物濃度を高くすることができれば、n型カラム領域が低抵抗化し、パワーMOSFETのオン抵抗および消費電力を低減することができるため、半導体装置の性能を向上させることができる。したがって、n型カラム領域およびp型カラム領域のアスペクト比を高めることで、半導体装置の性能を向上させることができる。
【0093】
しかし、
図5を用いて説明した工程で形成した溝内に、
図7を用いて説明したエピタキシャル成長工程にいてエピタキシャル層を形成する場合、溝のアスペクト比が高いと、溝内に埋め込んだエピタキシャル層のp型不純物濃度を制御することが困難となる。つまり、当該エピタキシャル層からなるp型カラム領域の不純物濃度を制御することが困難となる。スーパージャンクション構造を採用した縦型パワーMOSFETでは、所望の耐圧を確保するため、p型カラム領域を一定の範囲内のp型不純物濃度で形成する必要がある。これは、互いに隣接するp型カラム領域およびn型カラム領域の相互間の濃度差が過度に大きくなると、パワーMOSFETの耐圧を保つことができなくなるためである。
【0094】
図25に示す比較例では、p型カラム領域PC1のアスペクト比は12にまで高められている。また、例えば、p型カラム領域PC1のX方向の幅を3μmとし、n型カラム領域NC1のX方向の幅を3μmとして、各領域のアスペクト比をさらに高めることが考えられる。このようにアスペクト比が高くなると、p型カラム領域PC1の濃度がばらつきやすくなり、p型カラム領域PC1のp型不純物濃度が、許容範囲(チャージバランスマージン)外の値になりやすくなる。すなわち、半導体装置の信頼性が低下し、半導体装置の製造工程における歩留まりが低下する問題が生じる。ここでいうチャージバランスマージンとは、p型カラム領域PC1のp型不純物濃度の許容範囲であり、p型カラム領域PC1のp型不純物濃度がこの許容範囲内にあるときは、パワーMOSFETの所望の耐圧を確保することができる。
【0095】
ここで、本発明者らは、p型カラム領域の側面の角度が、半導体基板の上面に対して垂直な方向に近い場合に比べ、p型カラム領域の側面の角度が大きい場合に、よりチャージバランスマージンが大きくなることを見出した。言い換えれば、垂直に立つp型カラム領域に比べ、側面がテーパーを有するp型カラム領域の方が、p型カラム領域内のp不純物濃度の許容範囲が大きくなるため、半導体装置の信頼性を向上させ、かつ、半導体装置の製造時の歩留まりを向上させることができる。このため、p型カラム領域の側面の角度が、より半導体基板1Sの上面に近い角度であれば、p型カラム領域のアスペクト比を高くすることに起因してp型カラム領域の不純物濃度がばらつきやすくなっても、半導体装置の耐圧を確保することが容易となる。
【0096】
しかし、p型カラム領域を埋め込むために形成する溝の側面を、より半導体基板1Sの上面に近い角度で形成すると、p型カラム領域およびn型カラム領域のそれぞれの幅を狭めることが困難となる。また当該溝の側面を垂直方向に近い角度で形成するエッチング方法を採用している場合、当該エッチング方法を変更することが困難な場合もある。
【0097】
そこで、本実施の形態では、
図2に示すように、p型カラム領域PC1の側面の上半分と隣接するn型ピラー内に、当該側面に沿ってp型半導体領域PR1を形成している。p型半導体領域PR1はp型カラム領域の一部を構成するため、
図2に示す構造を実現することで、p型カラムの側面にテーパーをつけることができる。このため、p型カラム領域PC1と、その両側のp型半導体領域PR1とからなるp型カラム領域の上面のX方向の幅は、当該p型カラム領域の下面のX方向の幅より大きい。言い換えれば、p型カラム領域PC1の上面のX方向の幅、および、当該p型カラム領域PC1の側面に隣接する2つのp型半導体領域PR1のそれぞれの上面のX方向の幅を足した距離は、p型半導体領域PR1の下面のX方向の幅よりも大きい。
【0098】
ここで、
図13に、p型カラムの拡大断面図を示す。
図2では、p型カラム領域PC1の側面を垂直方向に沿うように示しているが、実際は、
図13に示すように、p型カラム領域PC1の側面はテーパーを有している。例えば、p型カラム領域PC1の側面と半導体基板1Sの上面とのなす角度θ1は、例えば89.3°である。これに対し、p型カラム領域PC1およびp型半導体領域PR1からなるp型カラム領域PC1の側面の角度θ2は、例えば89.0°である。
【0099】
なお、
図13では、p型カラム領域PC1およびp型半導体領域PR1からなるp型カラム領域PC1の実効的な側面であって、p型カラム領域PC1の底面の端部(角部)とp型半導体領域PR1の底面の端部(角部)とを結ぶ面の位置を破線で示している。つまり、本実施の形態では、p型半導体領域PR1が当該破線と重なる位置で終端し、p型半導体領域PR1が当該破線よりも外側に形成されないように、p型半導体領域PR1を形成している。
【0100】
このようにp型半導体領域PR1を形成することで、p型カラム領域は、X方向において、底面の幅に対する上面の幅が実質的にさらに大きくなり、p型カラム領域の側面の角度θ2を角度θ1より小さくすることができる。言い換えれば、p型カラム領域の側面とp型カラム領域の底面とのなす角を大きくすることができ、p型カラム領域の側面の角度は、より半導体基板1Sの上面に近い角度となる。
【0101】
よって、
図2に示すように、p型カラム領域PC1を埋め込むために形成する溝DT1(
図5参照)の形状を変更しなくても、p型カラム領域の一部であるp型半導体領域PR1を形成することで、p型カラム領域PC1内のp不純物濃度の許容範囲を拡大することができる。したがって、半導体装置の耐圧を確保しつつ、p型カラム領域のアスペクト比を高くすることが容易となる。このため、スーパージャンクション構造を採用した縦型パワーMOSFETの耐圧の向上および低抵抗化を共に実現することができるため、半導体装置の性能を向上させることができる。
【0102】
なお、本実施の形態の半導体装置では、
図5に示す溝DT1〜DT3内に、絶縁膜ではなく、エピタキシャル層EPIと同じSi(シリコン)からなるエピタキシャル層EP(
図7参照)を埋め込んでいる。これは、異なる材料同士の間で応力が発生することを防ぐためである。また、溝DT1〜DT3内には、絶縁膜よりもシリコン膜を埋め込んだ方が、半導体素子の耐圧を高めることができる。
【0103】
<変形例>
以下に、
図14および
図15を用いて、本実施の形態1の変形例である半導体装置およびその製造方法について説明する。
図14および
図15は、本実施の形態1の変形例である半導体装置の製造工程を示す断面図である。ここでは、エピタキシャル層の上面にp型半導体領域を形成することで、アバランシェ破壊耐量を向上させることについて説明する。
【0104】
本変形例の半導体装置の製造工程では、
図4〜
図6を用いて説明した工程を行った後、
図14に示すように、p型不純物(例えばホウ素(B))を斜め方向からイオン注入することで、溝DT1〜DT3のそれぞれの側面の上端近傍に、p型半導体領域PR2を形成する。p型半導体領域PR2は、エピタキシャル層EPIの上面および溝DT1〜DT3のそれぞれの側面の上端に形成され、p型半導体領域PR1よりも高い不純物濃度を有しており、p型半導体領域PR1より浅く形成されている。また、n型ピラー内において、n型ピラーのX方向の両側の側面のそれぞれに形成されたp型半導体領域PR2同士の相互間には、n型カラム領域NC1が形成されている。p型半導体領域PR2は、X方向においてp型半導体領域PR1よりも大きい幅を有している。ここでは、溝DT1〜DT3のそれぞれの側面ではなく、エピタキシャル層EPIの上面にp型半導体領域PR2を形成する目的でイオン注入を行う。
【0105】
その後の工程は、
図7〜
図12を用いて説明した工程と同様に行う。これにより、
図15に示す本変形例の半導体装置を形成することができる。ここではp型半導体領域PR1の形成後にp型半導体領域PR2を形成することについて説明したが、
図5を用いて説明した工程の後、
図6を用いて説明した工程(p型半導体領域PR1の形成工程)の前に、p型半導体領域PR2を形成してもよい。なお、
図15のセル領域CRでは、チャネル領域CHと重なるp型半導体領域PR2を示しているが、中間領域TRでは、図を分かり易くするため、チャネル領域CHと重なるp型半導体領域PR2を示していない。
【0106】
本変形例では、p型半導体領域PR2を形成することで、p型カラム領域の側面の上端のp型不純物濃度を高めている。エピタキシャル層EPSの上面のpn接合部では、アバランシェ降伏が起きやすいが、アバランシェ降伏が起きてキャリアが大量に発生しても、不純物濃度が高い中性領域であるp型半導体領域PR2がエピタキシャル層EPSの上面に形成されていることにより、p型半導体領域PR2にキャリアが吸収される。したがって、アバランシェ降伏による破壊が生じることを防ぐことができる。つまり、アバランシェ破壊耐量を向上させることができる。
【0107】
(実施の形態2)
前記実施の形態1では、エピタキシャル層の平坦な上面上にゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極を備えたプレーナ型のパワーMOSFETを形成することについて説明したが、パワーMOSFETは、エピタキシャル層の上面に形成された溝内に埋め込まれたトレンチ型のゲート電極を備えたトレンチ型MOSFETであってもよい。以下に、
図16〜
図22を用いて、本実施の形態2の半導体装置およびその製造方法について説明する。
図16は、本実施の形態2の半導体装置を示す断面図である。
図17〜
図22は、本実施の形態2の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【0108】
図16に示すように、本実施の形態の半導体装置は、スーパージャンクション構造を採用した、トレンチゲート電極を有する縦型パワーMOSFETであって、ドレイン電極DE、半導体基板1S、エピタキシャル層EPSおよびp型半導体領域PR1の構成は、前記実施の形態1と同様である。ただし、セル領域CRでは、エピタキシャル層EPSの上面であるn型カラム領域NC1の上面に溝DT4が形成され、溝DT4内には、ゲート絶縁膜GOXを介してトレンチ型のゲート電極TGが形成されている。溝DT4およびゲート電極TGは、Y方向に延在するパターンを有している。X方向に隣り合う溝DT4同士の間のエピタキシャル層EPSの上面には、ゲート電極TGよりも深さが浅いチャネル領域CHが形成されている。ゲート絶縁膜GOXは例えば酸化シリコン膜からなり、ゲート電極TGは例えばポリシリコン膜からなる。チャネル領域CHはp型半導体領域である。
【0109】
チャネル領域CHの上面には、p型半導体領域であるボディコンタクト領域BCが、チャネル領域CHよりも浅く形成されている。ボディコンタクト領域BCと溝DT4との間のチャネル領域CHの上面には、n型半導体領域であるソース領域SRが形成されている。すなわち、X方向において隣り合う溝DT4同士の間のエピタキシャル層EPSの上面には、ソース領域SR、ボディコンタクト領域BCおよびソース領域SRが順に配置されている。ゲート電極TG、ソース領域SRおよびドレイン電極DEは、トレンチゲート型のパワーMOSFETを構成している。
【0110】
中間領域TRおよび周辺領域PERの構造は、前記実施の形態1と同様である。また、セル領域CRのエピタキシャル層EPS上の構造は、エピタキシャル層EPSよりも上にゲート絶縁膜GOXおよびゲート電極GE(
図2参照)が形成されていない点を除き、前記実施の形態1と同様である。すなわち、セル領域CRのエピタキシャル層EPS上には層間絶縁膜ILが形成されており、層間絶縁膜ILを貫通するソース電極SEが、各ソース領域SRおよび各ボディコンタクト領域BCのそれぞれの上面に接続されている。
【0111】
以下に、本実施の形態の半導体装置の製造方法について、
図17〜
図22を用いて説明する。
図17〜
図22は、本実施の形態2の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【0112】
まず、
図4〜
図8を用いて説明した工程を行うことで、半導体基板1S上にエピタキシャル層EPSを形成する。
【0113】
次に、
図17に示すように、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を用いて、p型不純物(例えばホウ素(B))を打ち込むことで、セル領域CRおよび中間領域TRのエピタキシャル層EPSの上面にチャネル領域CHを形成する。チャネル領域CHの深さは、p型半導体領域PR1の深さよりも浅い。
【0114】
次に、
図18に示すように、フォトリソグラフィ技術およびドライエッチング法を用いて、各n型カラム領域NC1の上面に溝DT4を形成する。溝DT4の深さはチャネル領域CHよりも深く、p型半導体領域PR1よりも浅い。なお、n型カラム領域NC2、NC3のそれぞれの上面には溝DT4を形成しない。続いて、エピタキシャル層EPSの表面上に、例えば酸化シリコン膜からなるゲート絶縁膜GOXを形成する。ゲート絶縁膜GOXは、例えば熱酸化法により形成する。ゲート絶縁膜GOXは、エピタキシャル層EPSの上面並びに溝DT4の側面および底面を覆って形成される。
【0115】
次に、
図19に示すように、溝DT4内に、ゲート電極TGを介してゲート電極GEを形成する。また、中間領域TRに、ゲート引き出し部GPUを形成する。また、p型カラム領域PC3とn型カラム領域NC3とのpn接合上に、フィールドプレート電極FFPを形成する。ここでは、CVD法などを用いて、例えばポリシリコン膜からなる導体膜をエピタキシャル層EPS上に形成する。その後、ゲート引き出し部GPUの形成領域およびフィールドプレート電極FFPの形成領域を覆うフォトレジスト膜を形成し、このフォトレジスト膜をマスクとして、当該導体膜をエッチングする。これにより、ゲート電極TG、ゲート引き出し部GPUおよびフィールドプレート電極FFPを形成する。
【0116】
このとき、セル領域CRでは、エピタキシャル層EPSの上面上の当該導電膜は全て除去され、当該導電膜は、溝DT4内にのみ、ゲート電極TGとして残る。また、溝DT4内のゲート絶縁膜GOX以外のゲート絶縁膜GOXを除去することで、エピタキシャル層EPSの上面を露出させる。これにより、溝DT4内に、ゲート絶縁膜GOXおよびゲート電極TGを残すことができる。
【0117】
次に、
図20に示すように、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を用いて、セル領域CRのチャネル領域CHの上面にn型不純物(例えばP(リン)またはヒ素(As))を打ち込むことにより、チャネル領域CHよりも浅いn型半導体領域であるソース領域SRを形成する。ここでは、溝DT4とX方向で隣接する領域にソース領域SRを形成する。ただし、隣り合う溝DT4同士の間において、それらの溝DT4のそれぞれに隣接するソース領域SR同士は互いに離間している。
【0118】
次に、
図21に示すように、
図11を用いて説明した工程と同様の工程を行うことで、層間絶縁膜ILおよびボディコンタクト領域BCを形成する。ボディコンタクト領域BCの深さは、ソース領域SRよりも深く、チャネル領域CHよりも浅い。ボディコンタクト領域BCは、隣り合う溝DT4同士の間において、溝DT4から離間した位置に形成する。すなわち、ボディコンタクト領域BCは、隣り合う溝DT4同士の間において、隣り合うソース領域SR同士の間のチャネル領域CHの上面に形成する。
【0119】
次に、
図22に示すように、
図12を用いて説明した工程と同様の工程を行うことで、ソース電極SE、ゲート引き出し電極GPE、ソース引き出し電極SPE、n型半導体領域(低抵抗領域)LRおよびドレイン電極DEを形成する。ゲート電極TG、ソース領域SRおよびドレイン電極DEは、トレンチゲート型のパワーMOSFETを構成している。これにより、本実施の形態の半導体装置を形成することができる。
【0120】
本実施の形態のように、スーパージャンクション構造を採用したトレンチゲート型のパワーMOSFETであっても、p型カラム領域PC1と隣接するp型半導体領域PR1を形成することにより、p型カラム領域の側面のテーパーを傾けることができ、これにより、前記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0121】
(実施の形態3)
前記実施の形態1では、n型ピラー内に1回のイオン注入により形成したp型カラム領域の一部であるp型半導体領域を、各溝の側面のそれぞれに1つ形成することで、p型カラム領域の側面を実質的に傾けることについて説明した。これに対し、本実施の形態3では、複数回イオン注入を行うことで、各溝の側面のそれぞれに複数のp型半導体領域を形成することについて説明する。
【0122】
以下に、
図23および
図24を用いて、本実施の形態3の半導体装置およびその製造方法について説明する。
図23および
図24は、本実施の形態3の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【0123】
本実施の形態の半導体装置の製造工程では、まず、
図4〜
図6を用いて説明した工程を行うことで、半導体基板1S上のエピタキシャル層EPIを貫通する溝DT1〜DT3と、p型半導体領域PR1とを形成する。
【0124】
次に、
図23に示すように、半導体基板1Sの上面に対して斜めの角度から、フォトレジスト膜PRをマスクとして溝DT1〜DT3のそれぞれの側面にイオン注入を行うことで、溝DT1〜DT3のそれぞれの側面にp型半導体領域PR3を形成する。つまり、ここではp型不純物(例えばホウ素(B))をエピタキシャル層EPIに斜め注入する。これにより、溝DT1〜DT3のそれぞれの側面のうち、例えば下端から上端までの高さの3/4の領域には不純物は注入されないが、例えば上端から下端までの高さの1/4の領域には不純物が注入される。また、溝DT1〜DT3のそれぞれの底面には不純物は注入されない。
【0125】
したがって、p型半導体領域PR3は、溝DT1〜DT3のそれぞれの側面の上端から、溝DT1〜DT3のそれぞれの側面の途中深さに亘って形成されており、p型半導体領域PR3の深さは、p型半導体領域PR1の深さよりも浅い。具体的には、p型半導体領域PR3はエピタキシャル層EPIの上面から溝DT1〜DT3のそれぞれの上端から下端までの高さの1/4程度の深さまで形成されており、p型半導体領域PR3の上端から下端までのZ方向の深さは、例えば15μmである。言い換えれば、ここではp型半導体領域PR3をn型カラム領域NC1の上端の高さから、n型カラム領域NC1の高さの1/4の位置まで形成する。
【0126】
当該イオン注入工程の注入条件として、例えば注入のエネルギーは40keVであり、ドーズ量は1.0×10
11/cm
2〜3.0×10
11/cm
2である。また、打ち込みは、垂直方向(Z方向)から、X方向(n型ピラーの短手方向)に9°傾けた角度から行う。つまり、p型半導体領域PR1を形成するために行う斜め注入の角度は、p型半導体領域PR3を形成するために行う斜め注入の角度よりも、半導体基板1Sの上面(エピタキシャル層EPIの上面)に対して垂直な角度に近い。ここでは、1方向から9°での斜め注入を行った後、垂直方向に対して反対側に9°傾けた角度からも打ち込みを行うことで、n型ピラーの短手方向の両側の側面のそれぞれの上部にp型半導体領域PR3が形成される。
【0127】
p型半導体領域PR3のX方向の幅は、p型半導体領域PR1のX方向の幅よりも大きい。つまり、溝DT1〜DT3のそれぞれの側面からのp型半導体領域PR3の深さは、当該側面からのp型半導体領域PR1の深さより大きい。p型半導体領域PR1を形成する際のイオン注入のエネルギーと、p型半導体領域PR3を形成する際のイオン注入のエネルギーは、ここでは同一である。しかし、p型半導体領域PR3を形成する際のイオン注入の打ち込み角度がp型半導体領域PR1を形成する際のイオン注入の打ち込み角度に比べて、上記側面に対して垂直な方向に近いため、当該側面に対するp型半導体領域PR3の深さは、当該側面に対するp型半導体領域PR1の深さよりも深くなる。
【0128】
p型半導体領域PR3は、
図13に示す破線内にのみ形成する。つまり、p型半導体領域PR1と同様に、p型半導体領域PR3の下面の端部が当該破線と重なる位置で終端するように、p型半導体領域PR3を形成する。つまり、p型半導体領域PR1、PR3の下面の端部であって、後にp型カラム領域PC1が形成される溝DT1から離れた位置の端部と、溝DT1の下面の端部とは、当該破線で結ばれ、直線上に重なる位置に形成される。これにより形成されたp型半導体領域PR1、PR3は、いずれもp型カラム領域を構成し、実質的にp型カラム領域の側面を傾ける役割を果たす。
【0129】
ここでは、p型半導体領域PR3を形成した後、p型半導体領域PR3を活性化することを目的とした熱処理を行わず、下記のように、
図7を用いて説明したフォトレジスト膜PRの除去工程、洗浄工程およびエピタキシャル成長工程を行う。
【0130】
その後の工程は、
図7〜
図12を用いて説明した工程と同様の工程を行うことで、
図24に示す本実施の形態の半導体装置を形成することができる。
図24に示すように、n型ピラーの両側の側面のそれぞれには、p型半導体領域PR1、PR3が互いに隣接して形成されている。p型半導体領域PR1は、p型半導体領域PR3の下に形成されている。
【0131】
なお、p型半導体領域PR1、PR3のそれぞれの一部が互いに重なり合っていると考えることもできる。この場合、p型半導体領域PR1、PR3はいずれもエピタキシャル層EPSの上面に形成されており、p型半導体領域PR1の一部はp型半導体領域PR3よりも下の領域でp型カラム領域PC1と隣接している。また、p型半導体領域PR3の一部は、X方向においてp型半導体領域PR1よりもp型カラム領域PC1から離れた位置に亘って形成されている。
【0132】
p型半導体領域PR1、PR3は、n型カラム領域NC1〜NC3が形成されたn型ピラー内に形成されており、その導電型はp型である。すなわち、p型半導体領域PR1、PR3は、n型カラム領域NC1〜NC3を構成していない。p型半導体領域PR3のp型不純物の濃度は、例えば8×10
15/cm
3程度である。つまり、p型半導体領域PR3は、p型カラム領域PC1〜PC3と同様の不純物濃度を有している。
【0133】
セル領域CRにおいて、n型ピラーの両側の側面のそれぞれに形成されたp型半導体領域PR3同士の間には、n型カラム領域NC1が形成されている。中間領域TRでも同様に、n型ピラーの両側の側面のそれぞれに形成されたp型半導体領域PR3同士の間には、n型カラム領域NC2が形成されている。周辺領域PERでも同様に、n型ピラーの両側の側面のそれぞれに形成されたp型半導体領域PR3同士の間には、n型カラム領域NC3が形成されている。すなわち、例えばセル領域CRでは、X方向において順にn型カラム領域NC1、p型半導体領域PR3、p型カラム領域PC1、p型半導体領域PR3およびn型カラム領域NC1が並んでいる。
【0134】
p型半導体領域PR3のX方向の幅は、p型半導体領域PR3の上端から下端に亘ってほぼ一様である。つまり、p型半導体領域PR3は、p型カラム領域PC1、PC2またはPC3のそれぞれの側面に沿って延在している。また、
図3に示すp型カラム領域PC1またはPC2のそれぞれに沿って、p型半導体領域PR3はY方向に延在している。また、
図3においてY方向に延在するp型カラム領域PC3に沿って、p型半導体領域PR3はY方向に延在している。なお、
図3ではp型半導体領域PR3の図示を省略している。
【0135】
前記実施の形態1とは異なり、本実施の形態のように、p型カラム領域を構成するp型半導体領域を、深さを分けて複数形成してもよい。これにより、
図24に示すp型半導体領域PR1、PR3およびp型カラム領域PC1を含むp型カラム領域全体を、p型カラム領域PC1の側面よりも半導体基板1Sの上面側に傾いた側面を有する形状に近付けることができる。このため、前記実施の形態1に比べ、よりp型カラム領域PC1のp型不純物濃度のばらつきの許容範囲(チャージバランスマージン)を拡大することができる。したがって、p型カラム領域のアスペクト比を高くすることに起因してp型カラム領域の不純物濃度がばらつきやすくなっても、半導体装置の耐圧を確保することが容易となる。すなわち、エピタキシャル層EPSの厚さの増大と、n型カラムNC1およびp型カラム領域PC1のそれぞれの幅の縮小が容易となるため、半導体装置の性能を向上させることがでいる。
【0136】
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0137】
例えば、前記実施の形態2と前記実施の形態3とを組み合わせてもよい。
【0138】
また、前記実施の形態3の半導体装置に、前記実施の形態1の変形例として説明したp型半導体領域PR2(
図15参照)を形成してもよい。この場合、p型半導体領域PR2は、p型半導体領域PR3(
図24参照)よりもX方向において大きい幅を有し、p型半導体領域PR3よりも浅く形成される。
【0139】
また、上記実施の形態では、Si(シリコン)からなる基板およびエピタキシャル層を備えた半導体装置について説明したが、SiではなくSiC(炭化ケイ素)を材料とした半導体装置でもよい。すなわち、半導体基板、p型カラム領域およびn型カラム領域は、何れもSiCにより構成されていてもよい。