(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の燻煙剤組成物は、以下の(A)〜(B)成分を含有する。
<(A)成分>
(A)成分は、下記式(A1)で表される化合物である。
R
1−O−(EO)
x−H ・・・(A1)
[式(A1)中、R
1は炭素数4〜12の直鎖又は分岐のアルキル基、フェニル基、又はベンジル基であり、EOはエチレンオキシ基であり、xはEOの平均付加モル数であり、0〜2である。]
R
1は炭素数4〜12の直鎖又は分岐のアルキル基、フェニル基、又はベンジル基である。R
1のアルキル基の炭素数は、除菌効果の観点から、6〜10であることが好ましい。
xは0〜2である。xは除菌効果の観点から、1〜2であることが好ましい。
【0010】
(A)成分としては、1−ブタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、1−ペンタノール、エチレングリコールモノペンチルエーテル、ジエチレングリコールモノペンチルエーテル、1−ヘキサノール、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、2−エチル−1−ヘキサノール、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシル
エーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシル
エーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、1−デカノール、1−ドデカノール等が挙げられる。除菌効果の観点から、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシル
エーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシル
エーテル、1−ヘキサノール、ベンジルアルコール、2−エチル−1−ヘキサノール、1−デカノールが好ましく、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシル
エーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシル
エーテルがさらに好ましく、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシル
エーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテルが特に好ましい。
(A)成分は、1種単独で用いられても良いし、2種以上が組み合わされて用いられても良い。
【0011】
(A)成分の含有量は、燻煙剤組成物の総質量に対し、1〜90質量%が好ましく、3〜80質量%がより好ましく、5〜60がさらに好ましく、20〜50が特に好ましい。
(A)成分の含有量が上記数値範囲内であると、除菌効果を向上しやすくなる。
【0012】
<(B)成分>
(B)成分は、ポリオールである。
本明細書において、「ポリオール」とは、分子内に2個以上の水酸基を有する化合物であり、水酸基を2つ有するものを2価アルコール(グリコール)、3つ有するものを3価アルコールといい、2つ以上有するものは一括して多価アルコールとも称される。(B)成分としては、2価アルコール(グリコール)、3価以上の多価アルコール、糖、糖アルコール等が挙げられる。
(B)成分は、特に限定されず、医薬品、医薬部外品、化粧品、雑貨品、工業品等に使用されているもののなかから適宜選択される。
【0013】
(B)成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、trans−2−ブテン−1,4−ジオール、2−ブチン−1,4−ジオール、2,5−ヘキサンジオール、2−メチル−1,3−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,3−ジメチル−2,3−ブタンジオール、2,4−ヘプタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、イソプレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,15−ペンタデカンジオール、1,16−ヘキサデカンジオール、1,17−ヘプタデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,19−ノナデカンジオール、1,20−イコサンジオール、1,2−オクタンジオール、1,2−デカンジオール、1,2−ドデカンジオール、1,2−テトラデカンジオール、1,2−ヘキサデカンジオール、1,2−オクタデカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、平均分子量200〜20000のポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、平均分子量300〜2000のポリプロピレングリコール等が挙げられる。
糖のなかで好適なものとしては、グルコース、フルクトース等の単糖;スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース等の二糖;三糖以上の多糖等が挙げられる。
糖アルコールのなかで好適なものとしては、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、エリスリトール、キシリトール、D−ソルビトール、マンニトール、マルチトール等が挙げられる。グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリンは、たとえば阪本薬品工業(株)等の市販品を用いることができる。
(B)成分の沸点は、除菌効果の観点から、150〜300℃が好ましく、170〜300℃がより好ましい。
(B)成分としては、除菌効果の観点から、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールが好ましく、エチレングリコールがさらに好ましい。
(B)成分は、1種単独で用いられても良いし、2種以上が組み合わされて用いられても良い。
【0014】
(B)成分の含有量は、燻煙剤組成物の総質量に対し、1〜98質量%が好ましく、3〜97質量%がさらに好ましい。
(B)成分の含有量が上記数値範囲内であると、除菌効果を向上しやすくなる。
【0015】
(A)成分/(B)成分で表される質量比(以下、A/B比ともいう)は、0.02〜9であり、0.03〜5が好ましく、0.11〜1.5がさらに好ましく、0.33〜1が特に好ましい。
A/B比が上記数値範囲内であることにより、除菌効果を向上しやすくなる。
【0016】
<任意成分>
また、本発明の燻煙剤組成物は、(A)〜(B)成分に加えて、(A)〜(B)成分以外の任意成分を含有してもよい。
任意成分としては、例えば、有機発泡剤(以下、(C)成分ともいう)、吸油量が20〜300g/100gの無機粉体(以下、(D)成分ともいう)、結合剤、界面活性剤、賦形剤、発熱助剤、安定剤、効力増強剤、酸化防止剤、賦香剤、水等が挙げられる。
任意成分は、1種単独で用いられても良いし、2種以上が組み合わされて用いられても良い。
【0017】
(C)成分は、有機発泡剤である。
(C)成分は、特に限定されず、従来公知のものを利用できる。(C)成分としては、加熱により熱分解して多量の熱を発生すると共に、炭酸ガスや窒素ガス等(以下、総じて発泡ガスという)を発生するものが用いられ、例えば、アゾジカルボンアミド、p,p’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。中でも、分解温度、発泡ガスの発生量等の観点から、アゾジカルボンアミドが好ましい。
(C)成分は、1種単独で用いられても良いし、2種以上が組み合わされて用いられても良い。
【0018】
本発明の燻煙剤組成物が(C)成分を含有する場合、(C)成分の含有量は、燻煙剤組成物の総質量に対し、0〜20質量%が好ましく、25〜10質量%がより好ましい。
(C)成分の含有量が上記数値範囲内であると、除菌効果を向上しやすくなる。
【0019】
本発明の燻煙剤組成物が(C)成分を含有する場合、(A)成分と(B)成分との合計含有量は、燻煙剤組成物の総質量に対し、10〜97.5質量%が好ましく、90〜95質量%がより好ましい。
(A)成分と(B)成分との合計含有量が上記数値範囲内であると、除菌効果を向上しやすくなる。
【0020】
[(A)成分+(B)成分]/(C)成分で表される質量比(以下、[A+B]/C比ともいう)は、8〜20が好ましく、8〜12がより好ましい。
[A+B]/C比が上記数値範囲内であると、除菌効果を向上しやすくなる。
【0021】
(D)成分は吸油量が20〜300g/100gである無機粉体である。(D)成分は、(A)成分および(B)成分の突沸を防止し、(A)成分および(B)成分の蒸散を助ける働きがある。
(D)成分としては、前記吸油量を有する各種無機粉体が利用できる。例えば、ゼオライト、タルク、パーライト、無水ケイ酸、含水ケイ酸、硫酸バリウム、酸化チタン、ベントナイト、スメクタイト、モンモリロナイト、サポナイト、炭酸カルシウム等が挙げられる。
具体的には、カオリナイト(クレー、昭和KDE(株)製、吸油量30〜50g/100g)、パーライト(トプコパーライト、東興パーライト工業(株)製、吸油量60〜100g/100g)、珪藻土(セライト、東新化成(株)製、吸油量120〜180g/100g、ラヂオライト(昭和化学工業(株)製、吸油量150〜250g/100g)等が挙げられる。
吸油性の無機粉体の中でも、吸油量が20〜300g/100gであるものが好ましく、吸油量が20〜180g/100gであるものがより好ましい。この範囲内の吸油量を持つ無機粉体を用いると、(A)成分および(B)成分の突沸を防止し、効率よく(A)成分および(B)成分を蒸散することができる。
本発明において「吸油量」は、JIS K 5101−13−2に準じて測定される値を示す。具体的には、試料と煮アマニ油を少しずつ混ぜ、ヘラを用いてらせん状に巻くことができる状態になったときの、試料100gあたりの煮アマニ油の使用量を意味する。
なかでも、除菌効果の観点から、カオリナイト、パーライトが好ましく、このなかでもカオリナイトが最も好ましい。
(D)成分は、1種単独で用いられても良いし、2種以上が組み合わされて用いられても良い。
【0022】
本発明の燻煙剤組成物が(D)成分を含有する場合、(D)成分の含有量は、燻煙剤組成物の総質量に対し、30〜90質量%が好ましく、40〜80質量%がより好ましい。
(D)成分の含有量が上記数値範囲内であると、除菌効果を向上しやすくなる。
【0023】
本発明の燻煙剤組成物が(D)成分を含有する場合、(A)成分と(B)成分との合計含有量は、燻煙剤組成物の総質量に対し、10〜80質量%が好ましく、20〜60質量%がより好ましい。
(A)成分と(B)成分との合計含有量が上記数値範囲内であると、除菌効果を向上しやすくなる。
【0024】
[(A)成分+(B)成分]/(D)成分で表される質量比(以下、[A+B]/D比ともいう)は、0.25〜1.5が好ましく、0.8〜1.2がより好ましい。
[A+B]/D比が上記数値範囲内であると、除菌効果を向上しやすくなる。
【0025】
本発明の燻煙剤組成物に結合剤が含有されると、顆粒成形性が向上する。
結合剤としては、例えば、セルロース類(カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等。)、デンプン系高分子化合物(デンプン、スターチ等。)、天然系高分子化合物(アラビアゴム等。)、合成高分子化合物(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等。)等が挙げられる。
【0026】
本発明の燻煙剤組成物が結合剤を含有する場合、本発明の燻煙剤組成物(100質量%)中の結合剤の含有量は、3〜8質量%が好ましい。結合剤の含有量が下限値以上であれば、設置から燻煙開始までの時間をより長くすることができ、燻煙開始時に使用者が被煙することを防ぎやすい。結合剤の含有量が上限値以下であれば、良好な燻煙性能(噴出力)が得られやすい。
【0027】
賦形剤としては、例えば、(D)成分以外の無機系鉱物質(石英、水晶等)等が挙げられる。
本発明の燻煙剤組成物に賦形剤が含有される場合、本発明の燻煙剤組成物(100質量%)中の賦形剤の含有量は、2〜45質量%が好ましく、10〜30質量%がより好ましい。賦形剤の含有量が下限値以上であれば、顆粒成形性が向上し、燻煙性能がより安定になる。賦形剤の含有量が上限値以下であれば、充分な燻煙性能(噴出力)が得られやすい。
【0028】
発熱助剤としては、例えば、酸化亜鉛、リン酸カルシウム、メラミン等が挙げられる。
安定剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドキシアニソール、没食子酸プロピル、エポキシ化合物(エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油等。)等が挙げられる。
効力増強剤としては、例えば、ピペロニルブトキサイド、S−421等が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、トコフェロール等が挙げられる。
(A)〜(B)成分、任意成分の含有量の合計は、100質量%を超えない。
【0029】
<燻煙剤組成物の製造方法>
本発明の燻煙剤組成物は、粉状、粒状、錠剤などの固形製剤、及び液体製剤として調製される。
固形製剤の場合、燻煙剤組成物の製造方法としては、目的とする剤形に応じて、公知の製造方法が用いられる。例えば、粒状の製剤とする場合は、押出し造粒法、圧縮造粒法、撹拌造粒法、転動造粒法、流動層造粒法等、公知の造粒物の製造方法が用いられる。
燻煙剤組成物は、(A)〜(B)成分を混合することにより得られる。
【0030】
押出し造粒法による製造方法の具体例として、燻煙剤組成物の各成分を、ニーダー等により混合し、必要に応じて適量の水を加えて混合し、得られた混合物を任意の開孔径を有するダイスを用い、前押出しあるいは横押出し造粒機で造粒する方法が挙げられる。該造粒物をさらにカッター等で任意の大きさに切断し、水分除去のための乾燥を行っても良い。
乾燥方法は、例えば、従来公知の乾燥機を用いた加熱乾燥法が挙げられる。
乾燥温度は、特に限定されないが、香料等の揮発を抑制する点から、50〜80℃が好ましい。
乾燥時間は、乾燥温度に応じて適宜決定される。
乾燥した後の燻煙剤組成物の水分含量は、特に限定されないが、5質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましく、0質量%であってもよい。水分含量が5質量%以下であると(A)成分の揮散率が良好である。
液体製剤の場合、燻煙剤組成物は、(A)〜(B)成分、必要に応じて任意成分を混合することにより製造できる。
【0031】
<燻煙剤組成物の使用方法>
本発明の燻煙剤組成物は、加熱されることにより白色の煙状物が発生するとともに(A)成分および(B)成分が加熱蒸散する。
燻煙剤組成物の加熱温度は、150〜450℃が好ましく、170〜400℃が好ましく、190〜400℃がより好ましい。前記範囲内においては、加熱温度が高いほど、成分が空間内全体に拡散する時間が短くなり、その拡散範囲も広くなる。加熱温度が450℃を超えると、(A)成分および(B)成分が熱分解し、有効な状態(未分解の状態)で揮散する量が減少(揮散効率が低下)するおそれがある。
燻煙剤組成物の加熱は、簡便かつ汚染防止効果に優れることから、間接加熱方式により行うことが好ましい。間接加熱方式は、燻煙剤の加熱方式の一つとして知られる方法で、燻煙剤を燃焼させることなく、発熱性基剤の熱分解に必要な温度(熱エネルギー)を、伝熱部(たとえば前記燻煙剤を収容した容器の壁(側壁や底壁)、前記容器の空間等)を介して供給する簡便な方法である。つまり、本発明の場合、燻煙剤組成物を燃焼させることなく、(A)成分および(B)成分の気化に必要な温度(熱エネルギー)を、伝熱部を介して供給することが好ましい。
【0032】
加熱手段としては、特に限定されず、従来、間接加熱方式に用いられている加熱手段を用いることができる。たとえば、水と接触して発熱する物質を水と接触させ、その反応熱を利用する方法、金属と前記金属よりイオン化傾向の小さい金属酸化物又は酸化剤とを混合(たとえば鉄粉と酸化剤(塩素酸アンモニウム等)とを混合)し、その酸化反応により生じる熱を利用する方法、電熱線のような電気的な力(たとえばホットプレート等)によって発生した熱を利用する方法等が挙げられる。これらの中でも、実用性の観点から、水と接触して発熱する物質を水と接触させ、その反応熱を利用する方法が好ましく、酸化カルシウムと水との反応熱を利用する方法がより好ましい。
水と接触して発熱する物質としては、酸化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、塩化カルシウム、塩化鉄等が挙げられる。たとえば酸化カルシウムと水とを反応させると、200〜400℃程度の熱が発生する。
間接加熱方式による加熱は、たとえば、従来、間接加熱方式の燻煙装置に用いられている容器に、本発明の燻煙剤組成物を組み込むことにより実施できる。
【0033】
また、加熱によって燻煙剤組成物の温度を、設定温度になるべく短時間で到達させることが好ましい。具体的には、燻煙剤組成物の加熱は、伝熱部面が任意の設定温度になるべく短時間で到達するように行うことが好ましい。より具体的には、前記の各反応又は電熱線によって加熱し始めてから、好ましくは120秒以内に、より好ましくは60秒以内に、設定温度に到達するように加熱を行う。このように加熱速度を制御することにより、(A)成分および(B)成分の熱分解がより抑制されて有効成分による効果が高まる。
さらに、任意の設定温度をなるべく長い時間保持することが好ましい。具体的には、好ましくは90秒間以上、より好ましくは150秒間以上、設定温度を保持するように加熱を行う。このように設定温度を保持することにより、発煙継続時間が長くなり、(B)成分を処理対象の空間全体により拡散できる、又は、(A)成分および(B)成分の空間への揮散量をより増加させることができる。
前記の設定温度、加熱速度及び保持時間は、(A)成分および(B)成分の種類に応じて適宜設定すればよい。水と接触して発熱する物質として酸化カルシウムを用いる場合、酸化カルシウムと水との比率、酸化カルシウムの使用量、酸化カルシウムの商品グレードの選択により制御できる。また、燻煙剤組成物を収容する容器の容量又は材質等によっても制御できる。
【0034】
燻煙剤組成物の使用量は、対象とする床面積に応じて適宜設定すればよい。1m
3当たり、0.1〜2.0gが好ましく、0.2〜1.5gがより好ましく、0.3〜1.0gが更に好ましい。
処理時間(加熱開始後、対象空間を密閉する時間)は、特に限定されず、10分間以上が好ましく、1時間以上がより好ましい。
【0035】
以下、本発明の燻煙剤組成物を用いた燻煙方法の一例として、
図1に例示した燻煙装置10を用いた燻煙方法について説明する。
燻煙装置10は、
図1に示すように、筐体12と、筐体12の内部に設けられた加熱部20と、筐体12の内部に設けられた燻煙剤部32とで概略構成されている。筐体12は略円筒状の本体14と、底部16と、本体14の上部に設けられた蓋部18とで構成されている。筐体12内には、燻煙剤容器30が設けられ、燻煙剤容器30に燻煙剤組成物が充填されて燻煙剤部32が形成されている。
【0036】
蓋部18は、貫通孔を有するものであり、メッシュ、パンチングメタル、格子状の枠体等が挙げられる。蓋部18の材質は、例えば、金属、セラミック等が挙げられる。
本体14の材質は蓋部18と同じである。
【0037】
燻煙剤容器30は、燻煙剤部32を充填する容器として機能すると共に、加熱部20で生じた熱エネルギーを燻煙剤部32に伝える伝熱部として機能するものである。燻煙剤容器30は、例えば金属製の容器等が挙げられる。
【0038】
加熱部20は、特に限定されず、燻煙剤部32の煙化に必要な熱量を考慮して適宜決定できる。加熱部20としては、前記した水と接触して発熱する物質を充填して形成したものが好ましく、酸化カルシウムを充填して形成したものが特に好ましい。また、加熱部20は、鉄粉と酸化剤とを仕切り材で仕切って充填して形成してもよく、金属と該金属よりイオン化傾向の小さい金属酸化物又は酸化剤とを仕切り材で仕切って充填して形成してもよい。
【0039】
底部16は、加熱部20の機構に応じて適宜決定すればよい。例えば、加熱部20が水と接触して発熱する物質(酸化カルシウム等。)により構成されている場合、底部16には不織布や金属製のメッシュ等を用いることができる。底部16を不織布や金属製のメッシュとすることで、底部16から水を加熱部20内に浸入させて反応熱を発生させ、燻煙剤組成物を加熱することができる。
【0040】
燻煙装置10を用いた燻煙方法では、まず燻煙装置10を対象空間内に設置する。次いで、加熱部20の機構に応じて加熱部20を発熱させる。例えば、酸化カルシウムを充填した加熱部20が設けられている場合、底部16を水に浸漬する。加熱部20が発熱すると、燻煙剤容器30を介して燻煙剤部32が加熱される。加熱された燻煙剤部32の燻煙剤組成物は、(B)成分の分解によってガスが生じ、該ガスと共に(A)成分が煙化し、蓋部18の貫通孔を通過して噴出する。これにより、対象空間内に(A)成分が拡散して、(A)成分の効果が得られる。
【0041】
以上、説明した通り、本発明の燻煙剤組成物は、(A)〜(B)成分を含み、かつA/B比が特定の範囲内であることにより、除菌効果を高めることができる。
本発明の燻煙剤組成物は、特に居室や浴室用の除菌用(防カビ、抗カビ、殺菌、抗菌等)の燻煙剤として好適である。なかでも、浴室用防カビ燻煙剤であることが好ましい。
【実施例】
【0042】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
各例の燻煙剤組成物の組成(含有量(質量%))を表1〜7に示す。
表中、空欄の配合成分がある場合、その配合成分は配合されていない。
本実施例において使用した原料は下記の通りである。
【0043】
<(A)成分>
・EHDG:ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシル
エーテル [日本乳化剤(株)製、式(A1)中、R
1=炭素数8の分岐型アルキル基、x=2]。
・BDG:ジエチレングリコールモノブチルエーテル [日本乳化剤(株)製、式(A1)中、R
1=炭素数4の直鎖型アルキル基、x=2]。
・1−ヘキサノール [東京化成工業(株)製、98.0%、式(A1)中、R
1=炭素数6の直鎖型アルキル基、x=0]。
・HeG:エチレングリコールモノヘキシルエーテル [日本乳化剤(株)製、式(A1)中、R
1=炭素数6の直鎖型アルキル基、x=1]。
・HeDG:ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル [日本乳化剤(株)製、式(A1)中、R
1=炭素数6の直鎖型アルキル基、x=2]。
・PhG:エチレングリコールモノフェニルエーテル [日本乳化剤(株)製、式(A1)中、R
1=炭素数6のフェニル基、x=1]。
・PhDG:ジエチレングリコールモノフェニルエーテル [日本乳化剤(株)製、式(A1)中、R
1=炭素数6のフェニル基、x=2]。
・ベンジルアルコール [東京化成工業(株)製、99.0質量%、式(A1)中、R
1=炭素数7のベンジル基、x=0]。
・BzG:エチレングリコールモノベンジルエーテル [日本乳化剤(株)製、式(A1)中、R
1=炭素数7のベンジル基、x=1]。
・BzDG:ジエチレングリコールモノベンジルエーテル [日本乳化剤(株)製、式(A1)中、R
1=炭素数7のベンジル基、x=2]。
・2−エチル−1−ヘキサノール [東京化成工業(株)製、99.5質量%、式(A1)中、R
1=炭素数8の分岐型アルキル基、x=0]。
・EHG:エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシル
エーテル [日本乳化剤(株)製、式(A1)中、R
1=炭素数8の分岐型アルキル基、x=1]。
・1−デカノール [東京化成工業(株)製、98.0質量%、式(A1)中、R
1=炭素数10の直鎖型アルキル基、x=0]。
・1−ドデカノール [和光純薬工業(株)製、95.0質量%、式(A1)中、R
1=炭素数12の直鎖型アルキル基、x=0]。
【0044】
<(A)’成分>(A)成分の比較品
・iPDG:ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル [日本乳化剤(株)製、式(A1)中、R
1=炭素数3の分岐型アルキル基、x=2]。
・1−テトラデカノール [東京化成工業(株)製、98.0%、式(A1)中、R
1=炭素数14の直鎖型アルキル基、x=0]。
・トリエチレングリコールモノデシルエーテル [シグマアルドリッチ社製、97.0質量%、式(A1)中、R
1=炭素数10の直鎖型アルキル基、x=3]。
・PhFG:プロピレングリコールモノフェニルエーテル[日本乳化剤(株)製]。
・IPMP:4−イソプロピル−3−メチルフェノール[東京化成工業(株)、99.0質量%]。
【0045】
<(B)成分>
・EG:エチレングリコール [和光純薬工業(株)製、99.5質量%]。
・PG:プロピレングリコール [和光純薬工業(株)製、99.0質量%]。
・DPG:ジプロピレングリコール [和光純薬工業(株)製、95.0質量%]。
・TPG:トリプロピレングリコール [東京化成工業(株)製、98.0質量%]。
【0046】
<(B)’成分>(B)成分の比較品
・EtOH:エタノール [和光純薬工業(株)、99.5%]。
・水:イオン交換水。
【0047】
<任意成分>
・水:イオン交換水。
・ADCA:アゾジカルボンアミド [商品名:ダイブローAC.2040(C)、大日精化工業(株)製]。
・クレー:クレー [商品名:NK−300、昭和KDE株式会社製、]。
<その他の成分>
・酸化カルシウム(吉澤石灰工業(株)製、商品名:CAg、ロータリーキルン炉焼成品(葛生産)、嵩比重0.80g/cm
3(20℃)、残留炭酸ガス0.9%、粒径3〜5mm)。
【0048】
<燻煙剤組成物の調製>
表1〜7に示す各成分を混合することにより、各例の燻煙剤組成物を調製した。各成分の配合量の単位は質量%である。そして、
図1に示す実施形態の燻煙装置10と同一の実施形態の燻煙装置10を用いた。具体的には、ライオン(株)製「ルックおふろの防カビくん煙剤」に使用されているブリキ缶(直径52mm×高さ67mm)の発熱部に、加熱剤として酸化カルシウムを充填し、専用の底蓋を取り付け、各例の燻煙剤組成物3gを内容器に収容して燻煙剤とした。酸化カルシウムの充填量は、実施例1−1〜1−9、2−1〜2−13、3−1〜3−3、4−1〜4−10、5−1〜5−11および比較例1−1〜1−4、2−1〜2−23、3−1〜3−9は56g、実施例1−10は40gとした。
なお、実施例2−2、2−5、及び2−10は参考例である。
【0049】
<供試用プラスチック板の作製>
ポテトデキストロース寒天(Difco社製)の斜面培地にて25℃、1週間培養したCladosporium cladosporioides HMC1064(浴室分離菌)を、滅菌した0.05%Tween80(関東化学製)水溶液にて約10
6CFU/mLの胞子液を調製した。次いで、該胞子液をプラスチック板(FRP板、50mm×50mm)に0.5mL接種し、室温にて乾燥固定した(薄膜状、板上の菌数は約10
6CFU)。
【0050】
<加熱蒸散試験>
図2に示すように、内容積21m
3(天井高2.5m)の試験室100内の天井中央に、前記<供試用プラスチック板の作製>に記載の方法で作成した供試用プラスチック板1(菌を接種したプラスチック板)を設置した。次に、直径8cm、高さ8.2cmのプラスチックカップに水23gを入れ、前記プラスチックカップを前記試験室内の中央床面に設置した。その後、前記プラスチックカップに、燻煙装置10を配置した。加熱蒸散を開始してから30分後に供試用プラスチック板1を回収した。後述する<除菌効果の評価>に記載の方法により、除菌効果を評価した。評価結果を表1〜7に示す。
【0051】
<除菌効果の評価>
供試用プラスチック板1にGPLP液体培地(日本製薬株式会社製)10mLを添加し菌を洗い出し、その液をポテトデキストロース寒天培地に塗抹接種して、25℃にて5日間培養した後のコロニー数を計測し、生菌数を算出した。生菌数は常用対数(log)に変換し、未処理の菌数から処理後の菌数を差し引いた値を除菌活性値とした。下記評価基準に従い、除菌効果を評価した。
(評価基準)
除菌活性値が3.5以上 :◎◎◎
除菌活性値が3.0以上3.5未満:◎◎
除菌活性値が2.5以上3.0未満:◎
除菌活性値が2.0以上2.5未満:○
除菌活性値が1.5以上2.0未満:△
除菌活性値が1.5未満 :×
◎◎◎〜△を除菌効果が高い、×を除菌効果が低いと評価した。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
【表4】
【0056】
【表5】
【0057】
【表6】
【0058】
【表7】
【0059】
表1〜7に示す結果から、本発明を適用した実施例1−1〜1−10、2−1〜2−13、3−1〜3−3、4−1〜4−10、5−1〜5−11は、除菌効果に優れていた。
A/B比が0.02未満である比較例1−1は、除菌効果に劣っていた。
A/B比が9超である比較例1−2は、除菌効果に劣っていた。
(B)成分を含まない比較例1−3は、除菌効果に劣っていた。
(A)成分を含まない比較例1−4は、除菌効果に劣っていた。
(A)成分の代わりに(A)’成分を使用した比較例2−1〜2−5は、除菌効果に劣っていた。
(B)成分を含まない比較例2−6〜2−23は、除菌効果に劣っていた。
(B)成分の代わりに(B)’成分を使用した比較例3−1、3−3は、除菌効果に劣っていた。
(A)成分を2種類使用し、(B)成分を含まない比較例3−2は、除菌効果に劣っていた。
(A)成分を含まない比較例3−4〜3−9は、除菌効果に劣っていた。