特許第6850685号(P6850685)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6850685
(24)【登録日】2021年3月10日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】紙葉積載装置、及び荷重調整方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 1/24 20060101AFI20210322BHJP
   B65H 3/06 20060101ALI20210322BHJP
   G07D 11/12 20190101ALI20210322BHJP
   G07D 11/16 20190101ALI20210322BHJP
【FI】
   B65H1/24 A
   B65H1/24 D
   B65H3/06 B
   G07D11/12
   G07D11/16 101D
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-110085(P2017-110085)
(22)【出願日】2017年6月2日
(65)【公開番号】特開2018-203446(P2018-203446A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2019年7月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000230858
【氏名又は名称】日本金銭機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085660
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 均
(74)【代理人】
【識別番号】100149892
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 弥生
(74)【代理人】
【識別番号】100185672
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】長田 佳人
(72)【発明者】
【氏名】古町 宗也
【審査官】 冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平6−305586(JP,A)
【文献】 特開昭48−34622(JP,A)
【文献】 特開2000−44065(JP,A)
【文献】 米国特許第2689731(US,A)
【文献】 国際公開第2008/096428(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H1/00−3/68
G07D11/00−13/00
G07F7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉束を積載する底板、及び、前記紙葉束の前側面と接触してこれを支持する前壁を有する紙葉積載部と、
前記紙葉束の最下部の紙葉底面に接して回転することにより該最下部の紙葉を前記前壁を越えて前記紙葉積載部外へ送出する繰出しローラと、
前記前壁を越えて前記紙葉積載部内に突出したり、該紙葉積載部外へ退避自在に配置された荷重調整部材と、を備え、
前記荷重調整部材が突出した時に、前記紙葉束の前側面の中間部を押圧面によって押圧して内奥部、且つ上方に変位させると共に、該押圧面によって前記紙葉束からの荷重を受けることにより、前記紙葉束から前記繰出しローラに加わる荷重を軽減し、
前記荷重調整部材が突出した時には該荷重調整部材の下端縁、又は底面が、前記繰出しローラと前記紙葉束の底面との接触部位の上方にオーバーハングした位置にあり、
前記荷重調整部材は、前記底板上の紙葉束の枚数が減少してきた時に該紙葉束の上面に接して加圧することにより前記繰出しローラへの荷重を付加する
ことを特徴とする紙葉積載装置。
【請求項2】
前記荷重調整部材は、回動軸を中心とした円弧状の軌跡に沿って前記紙葉積載部に対して進退することを特徴とする請求項1に記載の紙葉積載装置。
【請求項3】
前記荷重調整部材は、直線状の軌跡に沿って前記紙葉積載部に対して進退することを特徴とする請求項1に記載の紙葉積載装置。
【請求項4】
前記荷重調整部材は、前記紙葉束の積載方向に沿って進退可能に構成されていることを特徴とする請求項1乃至の何れか一項に記載の紙葉積載装置。
【請求項5】
紙葉を積載する底板、及び、前記紙葉束の前側面と接触してこれを支持する前壁を有する紙葉積載部と、前記紙葉束の積載量を検知する検知手段と、前記紙葉束の最下部の紙葉底面に接して回転することにより該最下部の紙葉を前記前壁を越えて前記紙葉積載部外へ送出する繰出しローラと、前記前壁を越えて前記紙葉積載部内に突出したり、該紙葉積載部外へ退避自在に配置された荷重調整部材と、該荷重調整部材を突出、退避、或いは昇降させる駆動機構と、制御手段と、を備え、
前記荷重調整部材が突出した時に、前記紙葉束の前側面の中間部を押圧面によって押圧して内奥部、且つ上方に変位させると共に、該押圧面によって前記紙葉束からの荷重を受けることにより、前記紙葉束から前記繰出しローラに加わる荷重を軽減し、
前記荷重調整部材が突出した時には該荷重調整部材の下端縁、又は底面が、前記繰出しローラと前記紙葉束の底面との接触部位の上方にオーバーハングした位置にあり、
前記荷重調整部材は、前記底板上の紙葉束の枚数が減少してきた時に該紙葉束の上面に接して加圧することにより前記繰出しローラへの荷重を付加する紙葉積載装置における荷重調整方法であって、
前記検知手段が前記底板上における紙葉の積載量を検知するステップと、
前記検知手段が、前記積載量が一つの基準値を超過していることを検知した場合に、前記制御手段が前記駆動機構を駆動して前記荷重調整部材を突出させてから前記繰出しローラを駆動開始するステップと、
を備えたことを特徴とする紙葉積載装置における荷重調整方法。
【請求項6】
前記検知手段が、前記積載量が他の基準値を下回っていることを検知した場合に、前記制御手段が前記駆動機構を駆動して前記荷重調整部材を前記紙葉束上に下降させて加圧を行うステップと、
を備えたことを特徴とする請求項に記載の紙葉積載装置における荷重調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紙葉計数装置等の各種紙葉取扱装置に装備される紙葉積載装置、及び荷重調整方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
紙幣計数装置は、紙幣収納部に積層状態でセットした紙幣束から紙幣を一枚ずつ繰出しながらカウントを行う構成を備えている。
特許文献1に係る紙葉類繰出し装置には、繰出し方向へ下向き傾斜した底板上に多量の紙葉類を上下方向に積層状態で集積し、最下部の紙葉類から一枚ずつキッカーローラを用いて繰出す構成が開示されている。集積紙葉類の荷重を傾斜した底板で受けることにより繰り出し中の紙葉類の荷重を軽減し、多量の紙葉類が底板上に集積されてもスムーズに繰り出すことができる、とされている。
紙幣等の紙葉類の計数や分類・仕分けを支援する装置においては、サイズの異なる混合状態の紙葉束から1枚ずつ繰り出し搬送しながら紙葉類の真贋・種別(金種)を判別し、計数等を行う。この際、集積紙葉類の荷重を受ける底板を最大サイズの紙葉類に合せてサイズ設定すると、サイズの小さな紙葉類に対してはスキュー、重送等の繰出し不良が発生する。一方、底板をサイズの小さな紙葉類に合せて設定すると、サイズの大きな紙葉類からキッカーローラに加わる荷重が軽減してしまい、キック力が十分に与えられず繰り出しタイミングが遅れる等の問題が起きる。
【0003】
また、底板上の紙幣の枚数が例えば500枚程度の適正枚数である場合には、最下部の紙幣面とキッカーローラとの摩擦抵抗が紙幣同士の摩擦抵抗を上回ることにより最下部の紙幣を一枚ずつ給紙することが可能となる。しかし、1000〜2000枚程度の大量の紙幣を底板上に積載した状態でキッカーローラの回転による繰出しを開始すると、紙幣自体の重量によって紙幣間の摩擦抵抗が過大になると共に、積載紙幣束からキッカーローラに加わる荷重が過大になるため、最下部の紙幣が上側の他の紙幣と共に繰り出される重送が発生する。
このような問題は紙幣計数装置に限らず、多量の紙幣を積層状態で収容し、必要に応じて一枚ずつ繰出すための構成を備えた各種自動販売機、入出金装置、両替機等の紙幣取扱装置においても発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3866090号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、繰出しローラ上に大量の紙葉からの過大な荷重が加わる場合や、異サイズ紙葉が混載されている場合であっても、簡単な構成の付加によって、前記荷重を軽減してスムーズに繰り出しを行うことができるようにした紙葉繰出し機能を備えた紙葉積載装置、及び荷重調整方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明の紙葉積載装置は、紙葉束を積載する底板、及び、前記紙葉束の前側面と接触してこれを支持する前壁を有する紙葉積載部と、前記紙葉束の最下部の紙葉底面に接して回転することにより該最下部の紙葉を前記前壁を越えて前記紙葉積載部外へ送出する繰出しローラと、前記前壁を越えて前記紙葉積載部内に突出したり、該紙葉積載部外へ退避自在に配置された荷重調整部材と、を備え、前記荷重調整部材が突出した時に、前記紙葉束の前側面を押圧面によって押圧して内奥部に変位させると共に、該押圧面によって前記紙葉束からの荷重を受けることにより、前記紙葉束から前記繰出しローラに加わる荷重を軽減することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、繰出しローラ上に大量の紙葉からの過大な荷重が加わる場合や、異サイズ紙葉が混載されている場合であっても、簡単な構成の付加によって、前記荷重を軽減してスムーズに繰り出しを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1の実施形態に係る繰出し機能を備えた紙葉積載装置の荷重調整部材の非作動時の外観構成を示す斜視図である。
図2】(a)及び(b)は図1の紙葉積載装置の紙葉積載状態の正面図、及びX−X断面図である。
図3】紙葉積載装置の荷重調整部材の作動時の外観構成を示す斜視図である。
図4】(a)及び(b)は紙葉積載装置の紙葉積載状態の正面図、及びY−Y断面図である。
図5】紙葉積載装置の要部(荷重調整ユニット)の構成説明図である。
図6】本発明の第2の実施形態に係る紙葉積載装置の荷重調整部材の作動時の外観構成を示す斜視図である。
図7】紙幣枚数が減少した状態における荷重調整部材の機能を説明する斜視図である。
図8】(a)は図7の紙葉積載装置の要部構成を示す斜視図であり、(b)は荷重調整部材の変形例を示す側面図である。
図9】(a)及び(b)は本発明の第3の実施形態に係る紙葉積載装置の荷重調整部材の作動時の正面図、及びZ−Z断面図である。
図10図9の紙葉積載装置の荷重調整部材が紙葉束上面を押圧している状態を示す側部縦断面図である。
図11】荷重調整部材を作動させる昇降機構の後面側斜視図である。
図12】荷重調整部材を作動させる昇降機構の正面側斜視図である。
図13】本発明の荷重調整方法の制御手順を示すフローチャートである。
図14】本発明の紙葉積載装置を適用する紙葉取扱装置の一例としての紙葉整理機の概略構成説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を図面に示した実施の形態により詳細に説明する。
<第1の実施形態に係る紙葉積載装置>
[紙葉積載装置の基本構成]
図1は本発明の第1の実施形態に係る紙葉繰出し機能を備えた紙葉積載装置の荷重調整部材の非作動時の外観構成を示す斜視図であり、図2(a)及び(b)は同紙葉積載装置の紙葉積載状態の正面図、及びX−X断面図であり、図3は紙葉積載装置の荷重調整部材の作動時の外観構成を示す斜視図であり、図4(a)及び(b)は紙葉積載装置の紙葉積載状態の正面図、及びY−Y断面図であり、図5は紙葉積載装置の要部(荷重調整ユニット)の構成説明図である。
なお、本実施形態では紙葉積載装置を備えた紙葉取扱装置の一例として紙幣計数装置を示す。
【0010】
紙幣計数装置(紙葉計数装置)1は、多枚数の紙幣(紙葉)B`を積層状態、即ち上下方向(斜め上下方向)へ積み重ねた状態で(紙幣束状態)で積載する底板10、左右側板15、16、及び積載紙幣束(積層紙幣束)Bの前側面BFと接触してこれを支持する前壁20を有する紙幣積載部(紙葉積載部)5、紙幣積載部5の底部(底板10)に設けた開口(前壁の底部開口)10aから露出する最下部の紙幣底面に接して回転することにより該最下部の紙幣を前壁20を越えて紙幣積載部5外(前方)へ送出する繰出しローラ30と、繰出しローラ30の繰出し方向下流側に配置された分離ローラ対(摩擦ローラ41、リバースローラ42)40と、一枚に分離された紙幣を更に下流側へ搬送する搬送ローラ群45と、繰出しローラ30、分離ローラ対40、及び搬送ローラ群45(ベルト45b)を駆動する駆動機構50と、前壁20の適所に形成された開口部(連通部)21から紙幣積載部5内に突出、退避自在(出没自在)に配置された荷重調整部材(荷重軽減部材)60と、荷重調整部材60を作動させる駆動機構(出没駆動機構)70と、搬送ローラ45の下流側に位置する図示しない紙幣計数器(カウンター)と、各駆動機構50、70、紙幣計数器等の各種制御対象を制御する図示しない制御手段(CPU、ROM、RAM)と、を備え、駆動機構70により荷重調整部材60が開口部21から紙幣積載部5内に突出した時に、該開口部内に露出する積載紙幣束の前側面BFを押圧して内奥部(後方)に変位させて押圧された紙幣、及びそれより上側の紙幣からの荷重を荷重調整部材60により受けて繰出しローラ30に加わる荷重を軽減させるようにしている。
【0011】
紙幣積載部5と、繰出しローラ30と、荷重調整部材60は、紙幣積載装置を構成している。
紙幣積載部5の底部に位置する底板10は、紙幣繰出し方向である前方、且つ下方へ向かって傾斜しており、繰出しローラ30によって繰り出された紙幣束Bの最下部の紙幣を前壁20の下部との間に形成されるスペースである繰出し口12から紙幣束Bの前方へ送り出す。繰り出された紙幣が二枚以上が重なった重送状態にある時には分離ローラ対40を構成する摩擦ローラ41、リバースローラ42の協働により下側の一枚の紙幣のみを前方へ送出すると共に、残りの上側の紙幣は紙幣積載部5側へ戻し搬送する。
【0012】
駆動機構50は、側板16の下部内側に固定された共通のモータ51によって繰出しローラ30、分離ローラ対40、及び搬送ローラ群45を駆動する。モータ51の出力軸に固定された出力プーリ51aは紙幣繰出し時には繰出しローラ30を図2の矢印aで示す給紙方向(時計回り方向)へ所定角度回転させることによりその高摩擦部30aによって最下部紙幣の下面に接して所定距離送り出す。送り出された紙幣が一枚である場合には分離ローラ対40、及び搬送ローラ45は当該紙幣を下流側へ搬送して搬送ローラ群45を矢印方向へ駆動して更に下流側の紙幣計数器に送り込む。紙幣が重送状態にある場合には下側の紙幣と接する摩擦ローラ41は図2(b)の時計回り方向へ回転する一方で、リバースローラ42は矢印で示す戻し方向(反時計回り方向)へ小さいトルクで回転することにより上側の重送紙幣を逆方向へ戻す。なお、重送防止機構は種々のものがあり、これは一例に過ぎない。
【0013】
出力プーリ51aに巻掛けられたタイミングベルト53は、繰出しローラ30の回転軸31の端部に軸芯を固定されたプーリ32と、摩擦ローラ41の回転軸41aに軸芯を固定されたプーリ41bと、一つの搬送ローラ45の回転軸45aに軸芯を固定されたプーリ46に巻掛けられることによりこれらを回転駆動する。各ローラの駆動、及び停止タイミングは図示しないクラッチを用いて各ローラへの駆動力の伝達をオンオフすることにより調整する。
リバースローラ42はその回転軸にワンウェイクラッチを備えていて紙幣を紙幣積載部5へ戻す方向へのみ回転駆動される。
なお、プーリに代えてギアを用い、タイミングベルトに代えてチェーンを用いても良い。
【0014】
2つの荷重調整部材60を同時に出没動作させるための駆動機構(出没駆動機構)70は、左右側板15、16間に水平に差し渡されて両端部を軸支された回動軸65の端部に軸芯を固定された従動ギア71と、出力ギア74から従動ギア71に正逆方向の駆動力を伝達するモータ73と、を備える。本例の2つの荷重調整部材60は、回動軸65の適所に一端部を固定された細幅帯状の薄板材であり、図1図2に示した退避姿勢と、図3図4に示した突出姿勢との間を相互に変位可能に構成されている。回動軸65に対する各荷重調整部材60の取付角度は一定である。
荷重調整部材60は弾性変形しないリジッドな構成とすることにより、回動軸65の回転によって発生する押し込む力を効果的に紙幣束に伝えて紙幣束前側面BFを確実、且つ効率的に押し込んで積層状態を変形させることができ、押し込み完了後は押圧面60aと接する紙幣群、及びそれより上方の紙幣群からの荷重の一部を押圧面により確実に支持し続けることができる。
なお、荷重調整部材60の全部、又は一部が紙幣束を押圧する際に若干弾性変形するように構成することにより、過大な力で紙幣束側面を押圧して個々の紙幣にダメージを与えることを防止するようにしてもよい。
【0015】
本例では、同形状の荷重調整部材60を二個設けているが、荷重調整部材60の形状、幅、個数は種々変形可能である。ただ、荷重調整部材をどのように構成した場合であっても、紙幣束の長手方向中心部を中心とした線対称位置を押圧するように構成する必要があり、このように構成することにより押圧時の左右バランスの崩れを防止できる。
また、荷重調整部材60はその先端縁60bが水平な直線、即ち紙幣束Bを構成する個々の紙幣B`の面方向と略並行な直線となるように構成することにより、紙幣束の側面を押圧した時にほぼ同一レベルにある紙幣を押圧して押上げ、押し込んで、紙幣束の積層状態をバランス良く変化させることができる。
【0016】
図5に示すように回動軸65は、平面視がコ字状の支持部材66の2つの側板66a、66bによって軸支されており、支持部材66にこれらの構成要素を組み付けてユニット化することができる。荷重調整部材60、回動軸65、支持部材66、駆動機構70等は、荷重調整ユニットUを構成する。
一方の荷重調整部材60の基端部に設けた小突片は被検知片61であり、荷重調整部材60が回動する過程で被検知片61がフォトインタラプタ等から成るセンサ63内に出たり入ったりするため、その際のオンオフ信号に基づいて制御手段は荷重調整部材60の角度(作動の有無)を知ることができる。
【0017】
[第1の実施形態に係る紙葉積載装置の動作の説明]
以上の構成を備えた紙幣計数装置(紙葉計数装置)1は、以下のように動作する。
まず、図1図2に示した荷重調整部材の非作動時には、紙幣束Bはその前側面BF前壁20に沿わせた状態で整列性よく上下方向(斜め上下方向)へ積層されている。
本例では、積載枚数が基準値、例えば1000枚を越えると、繰出しローラ30に対して適正値を越えた荷重が加わって重送が多発し易くなるものとして説明する。
【0018】
本発明では、紙幣積載部5の底板10上にセットされた紙幣の積載枚数(積載重量)が基準値を超えている場合にこれを側板15、16、その他の箇所に設けたセンサ35で検知するか、或いは作業者が図示しない始動スイッチを操作することにより、荷重軽減部材としての荷重調整部材60を図3図4のように作動させて紙幣束の前側面の中間高さ位置を内奥部へ向けて所定距離押し込む。
なお、複数のセンサ35を側板に沿って上下方向に配列することにより積載紙幣束の高さ位置の変化によりその積載量の変化を検知することができる。また、センサ35を底板に配置することにより紙幣の有無を検知することもできる。
【0019】
図4のように荷重調整部材60を押し込んだ状態では、荷重調整部材60の後面に設けた押圧面60aは上向きに傾斜した状態で紙幣群の前側面BFと接しており、紙幣群からの荷重を受ける荷重受け面として機能する。この状態では、荷重調整部材60の先端縁60bよりも下方の紙幣群と、荷重調整部材60の先端よりも上側の紙幣群とはV字状に前後方向へ位置ずれを起こしており、押圧面60aが支持する紙幣群の重量の分だけ、紙幣束Bから繰出しローラ30へ加わる荷重が荷重調整部材の作動前よりも作動後の方が大きく軽減されている。押圧面60aは前端縁を接触させている紙幣群Bmからの荷重だけでなく、その上方に積載されている他の紙幣群Buからの荷重の一部も受けることはもちろんである。
【0020】
また、図4(b)に示すように荷重調整部材が突出位置にある時には、前壁20に前端縁を接触させている上側にある紙幣群Buと、前端縁を荷重調整部材の押圧面60aに接触させている中間位置にある紙幣群Bmと、前端縁をいずれの部材にも接触させていない下側の紙幣群Bdと、積載態様が三つに分かれる。
【0021】
中間位置にある紙幣群Bmと下側の紙幣群Bdは、紙幣積載部5の内奥方向へ向けてくの字、或いはV字状に屈曲しているため、下側の紙幣群Bdはその後側端面が上方へ向かう程、後方へ傾いた平行四辺形となっている。このため、下側の紙幣群Bdの重心が後方へ偏った状態となり、図2(b)の非突出時に繰出しローラ30に加わっていた積載紙幣からの荷重の一部が図4(b)では底板後部上に移行した状態となり、その分だけ繰出しローラへの荷重が更に軽減される。
繰出しローラによる繰出しが進行して積載紙幣の全体量が減少して行くと、重力の作用により中間位置にある紙幣群Bmは順次下側の紙幣群Bd側に移行して行き、上側の紙幣群Buは中間位置にある紙幣群Bm側に移行して行く。
【0022】
突出時における荷重調整部材60の適正な突出長L(下端縁60bと前壁20との距離、図4(b))は、変形した積載紙幣束の積載バランスが悪化しない範囲内で、繰出しローラに加わる荷重を最適値にまで低減できるように設定する。従って、回動軸65の回動角度を調整することによって、積載量の多寡に応じて突出長Lを変化させるように構成してもよい。図4(b)の例では、押圧面60aの下端縁60bが繰出しローラ30の上面、特に紙幣下面と接する繰出しローラ周面(30a)の上方に若干オーバーハングする程度としているが、この程度の突出長であっても充分に繰出しローラへの荷重軽減効果をえることができる。
底板上の紙幣束の繰出しを完了した時点で、荷重調整部材60を図1図2に示した初期位置に復帰させる。また、紙幣の繰り出し途中で紙幣束を継ぎ足す場合には、荷重調整部材を図1図2の初期状態に復帰させて紙幣束の継ぎ足しの邪魔にならないようにする。
【0023】
荷重調整部材60は金属、或いは樹脂から構成するが、作動したときにその先端縁60bを含めた押圧面60aにより紙幣束の前側面を押圧し、押圧後は接触する紙幣からの荷重を支持し続けるため、紙幣との間に必要充分な摩擦力を発生させる程度に押圧面60aの摩擦係数を設定する。或いは、押圧面60aの摩擦力を調整するために前面に粗面加工を施しても良い。
なお、押圧面60aを概略平坦面とすることにより、図4(b)に示すように押圧時に形成される紙幣束の変形量を必要最少限に留めることができる。紙幣束の変形量が過大になってV字状に内奥部へ変位する距離が過大になると、積載バランスが崩れて繰出しローラに紙幣束から加わる荷重が不安定化する等の不具合をもたらすが、押圧面を平坦面にすることにより突出時の押圧面の傾斜角度を一定にすることができるので荷重の不安定化による給紙不良は発生しない。また、押圧面60aと接する紙幣群は、繰出しローラが給紙を続けてゆくと、押圧面に沿って順次下方へ移動して行くが、この紙幣の下方へのスムーズな移動を妨げることがないように押圧面の傾斜角度、摩擦抵抗等を設定する。
従って、押圧時の紙幣束の変形量が過大にならず、且つ紙幣量の減少に伴って押圧面と接する紙幣群のスムーズな下降を妨げない限り、押圧面60aを凹面状にしたり、粗面化したり、多少の段差部を設けても差し支えない。
【0024】
本例では荷重調整部材60はその上端部を回動軸65に固定されているため、回動軸の回動によって押圧面60aは円弧状の軌跡で上下方向に回動する。このため、押圧時には押圧面60aと接する紙幣群を上方向に掬い上げるように押し込むことができ、押圧開始時には紙幣群を容易に押圧面上に移動させることができ、且つ押圧が終了した時点では押圧面上に安定して紙幣群を支持し続けることができる。
ただ、この構成は一例に過ぎず、荷重調整部材60を回動させるのではなく、直線的に前後動させるように構成してもよい。この場合には予め押圧面60aの傾斜角度を押し込み後に紙幣からの荷重を受け易い角度に予め設定しておき、その傾斜角度を維持したまま後方へ移動して紙幣束側面を押圧し、押圧後に荷重を受け続けるように構成する。直線的に前後動させる方向は、水平方向のみならず、斜め上下方向であってもよい。
【0025】
或いは、荷重調整部材の下部を回動軸によって前後動するように軸支し、荷重調整部材の上部に設けた押圧面を前壁の開口部から紙幣積載部内に出没させて紙幣側面を押圧するように構成してもよい。
荷重調整部材60は一気に突出させても良いし、段階的に(徐々に)突出させてもよい。或いは、前後、左右、上下に振動しながら突出させるようにしてもよい。これらの補助的な動作により紙幣を捌く効果を発揮して押し込みがスムーズとなり、紙幣束の変形状態を適切にすることができる。
荷重調整部材60が突出して紙幣束側面を局所的に押し込むに際しては、紙幣を面方向にスライドさせるだけなのでさほど大きな抵抗はなく、スライド後に荷重調整部材60の傾斜した押圧面60a上に接した紙幣群、及びそれより上側に積層された他の紙幣群からの荷重の一部を受け続けることにより、繰出しローラ30が受ける荷重を減少させた状態となる。図2のように荷重調整部材が突出する前の段階では、紙幣束自体の過大な重量によって個々の紙幣間が密着しているが、図4のように荷重調整部材が突出することにより紙幣の面方向に沿った方向へ位置ずれを起こさせる挙動によって紙幣を捌く効果を発揮することができる。
【0026】
上述のように多量に積載した紙幣束の荷重の多くを繰出しローラ30で受けると、適切荷重以上の送り力(紙幣との摩擦力)が発生し、重送などの繰り出し不良が発生するが、荷重調整部材60の傾斜した押圧面(荷重受け面)60aが紙幣束の荷重を受ける構成とした為に、繰出しローラは常に一定の適正荷重を受けることが可能となり、安定した繰り出しを行うことができる。このため、重送を防止できるばかりで無く、サイズの異なる紙幣が混在している場合にも重送、スキューなどの給紙不良を防止することができる。
【0027】
<第2の実施形態に係る紙葉積載装置>
図6は本発明の第2の実施形態に係る紙葉積載装置の荷重調整部材の作動時の外観構成を示す斜視図であり、図7は紙幣枚数が減少した状態における荷重調整部材の機能を説明する斜視図であり、図8(a)は同紙葉積載装置の要部構成を示す斜視図であり、(b)は荷重調整部材の変形例を示す側面図である。
なお、第1の実施形態と同一部分には同一符号を付し、相違点を中心として説明する。
【0028】
この実施形態に係る紙幣計数装置(紙葉計数装置)1が第1の実施形態と異なる点は、荷重軽減部材としての荷重調整部材60の形状にある。第1の実施形態では荷重調整部材60を薄板状、且つ細幅帯状の2つの部材から構成したが、第2の実施形態では最大サイズの紙幣の横幅の1/2〜2/3程度の大きな横幅を有した部材を用いている。また、この荷重調整部材60は、底面60cの前後幅(厚み)が大きく構成されており、底板10上の紙幣枚数が減少してきた場合に荷重調整部材を下降させる方向へ回動させて底面60cによって紙幣束上面を下向きに加圧することにより、繰出しローラ30に対する荷重を適正値に維持する役割を発揮する。
なお、荷重調整部材60の形状の変化に対応して前壁に形成する開口部21の形状も変化させることは勿論である。つまり、上述のように荷重調整部材60の形状、幅、個数は種々変形可能である。
荷重調整部材60の後面に設けた傾斜した押圧面60aは、作動して紙幣束の前側端面の中間部を内奥部、且つ上方に押圧変形させた時に接触する紙幣からの荷重を継続して安定して支持し得るようにその傾斜角度、材質を選定する。
なお、図8(b)のように板部材を略L字状に構成してもよい。
【0029】
<第3の実施形態に係る紙葉積載装置>
図9(a)及び(b)は本発明の第3の実施形態に係る紙葉積載装置の荷重調整部材の作動時の正面図、及びZ−Z断面図であり、図10は同紙葉積載装置の荷重調整部材が紙葉束上面を押圧している状態を示す側部縦断面図であり、図11、及び図12は荷重調整部材を作動させる駆動機構(昇降機構)の後面側斜視図、及び正面側斜視図である。
なお、第2の実施形態と同一部分には同一符号を付し、相違点を中心として説明する。
【0030】
この実施形態に係る紙幣積載装置と第2の実施形態との相違点は、荷重調整部材(荷重調整ユニットU)を上下方向へ進退自在に構成した点にある。
荷重調整ユニットUは、荷重付加部材としての荷重調整部材60、回動軸65、支持部材66、駆動機構70等から構成されており、この荷重調整ユニットUは、紙幣積載装置本体側に配置された昇降機構(駆動機構)80によって昇降するように構成されている。昇降機構80は、前壁20と並行に配置された2本の昇降ガイドレール81と、各昇降ガイドレール81に対して昇降自在に係合するスライダー82と、図示しないモータ、ソレノイド等の駆動源と、を備えている。スライダー82は支持部材66の前部に固定されており、スライダー82の昇降に伴って荷重調整ユニットUは上下動し、任意の高さ位置に停止することができる。
【0031】
計数開始当初に底板上に1000枚以上の多枚数が積載されていたとしても、紙幣の繰出しが進行するに連れて残存枚数が減少する。紙幣束から繰出しローラ30に対して過大な負荷が加わっている間は荷重調整部材60を紙幣積載部5内に突出させて紙幣束の荷重の一部を受けることにより繰出しローラへの荷重を適正値に調整することができるが、図9に示すように紙幣束Bの枚数が過少になると紙幣束から繰出しローラに加わる荷重が過少となって繰出し不良が発生する。具体的には、積載枚数が過少になると、繰出しローラの回転によって紙幣束が押し上げられてバウンドを起こす。このバウンドによって繰出しローラ周面と最下部の紙幣面とが離間すると、空振りが発生して繰出しタイミングが不安定となる。
【0032】
図9は積載枚数が過大である時に荷重調整部材60を作動させて紙幣束側面を押圧した状態のまま繰出しを継続した結果として、積載枚数が減少して紙幣束上面の位置が荷重調整部材の底面60cよりも下方へ変位した状態を示している。
このような不具合に対処するために本実施形態では、図10に示すように昇降機構80を作動させて荷重調整ユニットUを全体として下降させることにより、突出状態にある荷重調整部材60の底面60cによって紙幣束Bの上面適所(繰出しローラ30の直上部)を下方へ押圧するようにしている。つまり、この実施形態では荷重調整部材60は荷重軽減部材ではなく、荷重付加部材として機能する。
【0033】
荷重調整部材の底面60cによって繰出しローラの上方に相当する紙幣束上面部位を下方へ加圧することにより、バウンドを防止することができる。
荷重調整部材の底面60cと紙幣束上面との接触部位は、繰出しローラと紙幣との接触部位の上方であって、加圧力を繰出しローラと紙幣との接触部位に伝えられる範囲とする。
底板上の紙幣束の積載量が図10の状態から更に減少した場合には、例えば紙幣の減少状態をセンサ35により適宜検知した上で昇降機構80を作動させて荷重調整ユニットUを順次下降させる制御を行う。或いは、昇降機構80を構成する駆動源によって常に一定の力で荷重調整ユニットUを下降方向へ付勢しておき、紙幣束の積載量の減少に随従して荷重調整部材が下降してゆくように構成してもよい。
荷重調整部材の底面60cが紙幣束上面に接触する際の傾斜角度は回動軸65の回動角度を調整することにより適正値に(面接触となるように)設定できる。
なお、本実施形態では荷重調整ユニットUの昇降方向を前壁20と並行としたが、これは一例であり前壁と非平行な方向に昇降するようにしてもよい。
なお、昇降機構80によって荷重調整ユニットUの高さ位置を任意に調整することが可能となるため、積載紙幣束の積載量の多寡などの条件の違いに応じて、紙幣束の前側面を押圧する際の荷重調整部材の高さ位置を微調整することも可能となる。
【0034】
<紙葉積載装置における荷重調整方法>
上記の各実施形態に係る紙葉積載装置を用いた荷重調整方法(荷重軽減方法)は、以下の通りである。
本発明に係る紙葉積載装置は、荷重調整方法としても把握することができる。
即ち、本発明に係る紙葉積載装置における荷重調整方法は、多枚数の紙葉を積層状態で積載する底板10、及び、積載紙葉束Bの前側面と接触してこれを支持する前壁20を有する紙葉積載部5と、積載紙葉束の積載量を検知する検知手段35と、積載紙幣束の最下部の紙葉底面に接して回転することにより該最下部の紙葉を前壁を越えて紙葉積載部外へ送出する繰出しローラ30と、前壁を越えて紙葉積載部内に突出したり、該紙葉積載部外へ退避自在に配置された荷重調整部材60と、該荷重調整部材を突出、退避、或いは昇降させる駆動機構70、80と、制御手段と、を備え、荷重調整部材が突出した時に、積載紙葉束の前側面を押圧面60aによって押圧して内奥部に変位させると共に、該押圧面によって紙葉からの荷重を受けることにより積載紙葉束から繰出しローラに加わる荷重を軽減する紙葉積載装置における荷重調整方法であって、検知手段が底板上における紙葉の積載量を検知するステップと、検知手段が、積載量が一つの基準値(基準値1)を超過していることを検知した場合に、制御手段が駆動機構を駆動して荷重調整部材を突出させてから繰出しローラを駆動開始するステップと、を備える。
更に、検知手段が、積載量が他の基準値(基準値2)を下回っていることを検知した場合に、制御手段が駆動機構を駆動して荷重調整部材を積載紙葉束上に下降させて加圧を行うステップと、を備える。
【0035】
図13はこの荷重調整方法の制御手順を示すフローチャートである。
ステップS1で底板10上に紙葉束がセットされたことがセンサ35によって検知されると、ステップS2においてセンサ35からの出力に基づいて積載紙葉の量が基準値1を超過しているか否かを判定する。ここで基準値1とは当該装置において繰出しローラ30による正常な繰出し動作を不可能とする程度に繰出しローラに加わる荷重が過大となるか否かを判定する基準である。ステップS2がNOの場合にはステップS3へ進み、荷重調整部材を図1図2に示した退避位置に保持する。一方、ステップSがYESの場合にはステップS4に進み、制御手段が駆動機構70を作動させてそれまで退避位置にあった荷重調整部材60を図3図4に示した突出位置に変位させるとともに、ステップS5において駆動機構50を作動させて繰出しローラ30、分離ローラ対40、及び搬送ローラ群45を駆動開始する。
【0036】
ステップS6以降は、第3の実施形態に対応している。
即ち、ステップS6においてセンサ35からの出力に基づいて積載紙葉の量が基準値2を下回っているか否かを判定する。ここで基準値2とは、当該装置において繰出しローラ30による正常な繰出し動作を不可能とする程度に繰出しローラに加わる荷重が過小となるか否かを判定する基準である。
基準値2を下回っている場合には、ステップS7に進んで昇降機構80を作動させて荷重調整部材60を下降させて積載紙葉束上面に当接させて加圧を行う。
更に、ステップS8において制御手段は積載紙葉が残っているか否かをセンサ35からの検知信号により判定し、残存紙葉が存在しない場合には処理を終了する。
【0037】
<紙葉積載装置の適用例>
図14は本発明の紙葉積載装置を適用する紙葉取扱装置の一例としての紙幣整理機の概略構成説明図である。
この紙幣整理機100は、紙幣積載装置1と、紙幣積載装置1から繰り出されてきた紙幣の金種、真贋等を判定する紙幣識別部105と、紙幣識別部105により金種の判定を受けた紙幣を金種別に収納する紙幣集積部110〜113と、リジェクト紙幣を収納する紙幣リジェクト部120と、搬送機構130と、制御手段150と、を概略備えている。
紙幣識別部105が、紙幣積載装置1から繰り出されてきた紙幣が受け容れできない紙幣であると判定した場合には、制御手段150は搬送機構130を駆動してこの紙幣を紙幣リジェクト部120へ搬送し、受け容れ可能な真正紙幣である場合に金種別に紙幣を何れかの紙幣集積部110〜113に振り分ける。
紙幣積載装置1は、荷重調整部材60を用いて繰出しローラ30への荷重を常に適正値に維持することができるため、重送、スキュー、繰出しローラの空振り等の繰出し不良を防止することができ、紙幣整理機100の稼働率の低下を防止することができる。
この紙幣積載装置は計数装置に限らず、各種自動販売機、入出金装置、両替機等の紙幣取扱装置にも適用することができる。
【0038】
<本発明の構成、作用、効果のまとめ>
第1の本発明に係る紙葉積載装置は、多枚数の紙葉(紙葉束)を積層状態で積載する底板10、及び、積載紙葉束Bの前側面と接触してこれを支持する前壁20を有する紙葉積載部5と、積載紙葉束の最下部の紙葉底面に接して回転することにより該最下部の紙葉を前壁20を越えて紙葉積載部外へ送出する繰出しローラ30と、前壁を越えて紙葉積載部5内に突出したり、該紙葉積載部外へ退避自在に配置された荷重調整部材60と、を備え、荷重調整部材が突出した時に、積載紙葉束の前側面を押圧面60aによって押圧して内奥部に変位させると共に、該押圧面によって紙葉束からの荷重を受けることにより、積載紙葉束から繰出しローラに加わる荷重を軽減することを特徴とする。
【0039】
荷重調整部材が突出位置にあるときに押圧面60aが積載紙葉束の前側面適所を押し込むことにより、押圧面60aに前端縁を接触させている紙葉群、及びそれよりも上方にある紙葉群は荷重の一部を押圧面により受承される。このため、受承された分に相当する荷重が繰出しローラに加わる荷重から軽減される。紙葉のサイズの大小に関係なく押圧面60aにより押圧された紙葉はその前端縁を押圧面に接触させた状態となるので、押圧面は紙葉からの荷重を分散させる機能を発揮する。繰出しローラによる紙葉の繰り出しが進行して押圧面と接触していた紙葉が下降することにより順次押圧面から離脱して行くと、それまで押圧面と接触していなかった上方の紙幣が順次下降してきて前端縁を押圧面と接触させた状態に移行するので、押圧面による荷重を分散させる機能は依然として継続的に発揮される。
【0040】
また、押圧面に前端縁を接触させた紙葉群Bmよりも下方に位置する紙葉群Bdは後方(紙葉繰出し方向と反対方向)に向けて変形して平行四辺形状になるため、紙葉群の後方の荷重の一部が底板上に分散されて、その分に相当する荷重が繰出しローラに加わる荷重から軽減される。
荷重調整部材60の形状、構造、材質は、荷重軽減機能、荷重付加機能を発揮することができるように選定する。
荷重調整部材60の出没、進退の経路は、曲線的であってもよいし、直線的であってもよい。
【0041】
紙葉とは、紙幣に限らず、チケット、有価証券、投票用紙等々の各種紙葉を含む。
紙葉束とは、複数の紙葉を重ねて束状にしたものを指称する。束を構成する個々の紙葉のサイズ、形状、厚み、材質が異なったものを積層して束状にしている場合も含む。
積載紙葉束とは、複数の紙葉を重ねた状態で上下方向に積層したものを意味し、実施形態例のように個々の紙葉が面方向に少しずつ位置ずれしていることにより前側面BFが全体として傾斜して積層されている場合は勿論、個々の紙葉が面方向への位置ずれなく前側面BFが全体として垂直に積層されている場合も含む。
【0042】
この紙葉積載装置は計数装置に限らず、各種自動販売機、入出金装置、両替機等の紙幣取扱装置にも適用することができる。即ち、これらの紙幣取扱装置は、利用者が投入した紙幣、或いは予め準備された紙幣を金庫等の紙幣収納部に積層状態で収納しておき、繰出し要求があった場合に釣り銭や払出し金として一枚ずつ繰出す機能を備えている。この紙幣収納部内に繰出しローラの適正荷重を越える紙幣が積載されている場合に本発明の荷重軽減機能を発揮させることにより繰出し不良を解消することができる。積載紙幣量が過少であるために繰出し不良が発生する虞が場合には本発明を適用することにより荷重付加機能を発揮することができる。
【0043】
第2の本発明に係る紙葉積載装置では、荷重調整部材60は、回動軸65を中心とした円弧状の軌跡に沿って紙葉積載部に対して進退することを特徴とする。
例えば、回動軸により荷重調整部材の上部を支持して前後方向へ回動させることにより、回動軸よりも下方に位置する荷重調整部材の押圧面によって積載紙葉束の前側面を押し込んで変形させる。押圧面は接触する紙葉群を円弧状の軌道により掬い上げるように押し込むため、前端縁を接触させている紙葉群と、それよりも上方に位置する紙葉群の荷重の一部を押圧面によって受けることができる。
また、回動軸により荷重調整部材の下部を支持することにより、回動軸よりも上方に位置する押圧面によって積載紙葉束の前側面を押し込んで変形させてもよい。
【0044】
第3の本発明に係る紙葉積載装置では、荷重調整部材60は、直線状の軌跡に沿って紙葉積載部に対して進退することを特徴とする。
直線状の軌跡とは、水平な軌跡は勿論、斜め上方向から斜め下方向へ向かう直線的な軌跡や、斜め下方向から斜め上方向へ向かう直線的な軌跡も含む。
押圧面が積載紙葉束の前側面を押圧した時に押圧面が斜め上向きとなるように構成することにより、荷重調整部材を直線的に移動させることにより突出位置に移動させたとしても、押圧面によって紙幣からの荷重を受けることが可能となる。
【0045】
第4の本発明に係る紙葉積載装置では、荷重調整部材60は、底板10上の紙葉束の上面に接して加圧することにより繰出しローラへの荷重を付加(追加、補助)することを特徴とする。
繰出し作業が進行して積載紙葉束の量が減少してきた場合には給紙ローラへの繰出し用の荷重が不足して繰出し不良が発生する虞がある。この場合には、荷重調整部材を紙葉束の上面に接触させて下方へ加圧することが有効である。
【0046】
第5の本発明に係る紙葉積載装置では、荷重調整部材60は、積載紙葉束の積載方向に沿って進退可能に構成されていることを特徴とする。
積載紙葉束の量が減少してきた場合に荷重調整部材を積載紙葉束の上面に接触させて下方へ加圧する必要があるが、荷重調整部材を上下方向へ進退可能にすることにより、任意のタイミングで積載紙葉束の上面に下降させて加圧を開始することができる。加圧が不要となった場合には上方に退避させることができる。
また、荷重調整部材が紙葉束を押圧する際の高さ位置を微調整することも可能となる。
【0047】
第6の本発明に係る荷重調整方法では、第1乃至第5の検知手段が底板上における紙葉の積載量(積層量、堆積量)を検知するステップと、検知手段が、積載量が一つの基準値を超過していることを検知した場合に、制御手段が前記駆動機構を駆動して荷重調整部材を突出させてから繰出しローラを駆動開始するステップと、を備えたことを特徴とする。
上記各ステップからなる荷重調整方法によれば、荷重調整部材を突出させるだけの簡単な操作によって繰出しローラに対する積載紙葉束からの荷重、荷重バランスを調整し、繰出しローラに対して最適な繰出し荷重を付与することができる。
【0048】
第7の本発明に係る荷重調整方法では、荷重調整部材を昇降させる昇降機構を備え、検知手段が、積載量が他の基準値を下回っていることを検知した場合に、制御手段が昇降機構を駆動して荷重調整部材を積載紙葉束上に下降させて加圧を行うステップと、を備えたことを特徴とする。
これによれば、荷重調整部材を昇降させるだけの簡単な操作によって繰出しローラに対する積載紙葉束からの荷重、荷重バランスを調整し、繰出しローラに対して最適な繰出し荷重を付与することができる。
【符号の説明】
【0049】
1…紙幣積載装置(紙葉積載装置)、5…紙幣積載部(紙葉積載部)、10…底板、15、16…側板、20…前壁、21…開口部、30…繰出しローラ、30a…高摩擦部、31…回転軸、32…プーリ、35…検知手段(センサ)、40…分離ローラ対、41…摩擦ローラ、41a…回転軸、41b…プーリ、42…リバースローラ、45…搬送ローラ、45a…回転軸、45b…ベルト、46…プーリ、50…駆動機構、51…モータ、51a…出力プーリ、53…タイミングベルト、60…荷重調整部材、60a…押圧面、60b…先端縁(下端縁)、60c…底面、61…被検知片、63…センサ、65…回動軸、66…支持部材、66a…側板、70…駆動機構、71…従動ギア、73…モータ、74…出力ギア、80…昇降機構、81…昇降ガイドレール、82…スライダー、100…紙幣整理機(紙葉整理機)、105…紙幣識別部(紙葉識別部)、110…紙幣集積部(紙葉集積部)、120…紙幣リジェクト部(紙葉リジェクト部)、130…搬送機構、150…制御手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14