特許第6850724号(P6850724)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6850724タンパク質グリコシル化のための組成物および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6850724
(24)【登録日】2021年3月10日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】タンパク質グリコシル化のための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/54 20060101AFI20210322BHJP
   C12N 9/10 20060101ALI20210322BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20210322BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   C12N15/54
   C12N9/10ZNA
   C12N1/21
   C12P21/02 C
【請求項の数】15
【全頁数】72
(21)【出願番号】特願2017-534795(P2017-534795)
(86)(22)【出願日】2015年12月24日
(65)【公表番号】特表2018-500912(P2018-500912A)
(43)【公表日】2018年1月18日
(86)【国際出願番号】EP2015081229
(87)【国際公開番号】WO2016107818
(87)【国際公開日】20160707
【審査請求日】2018年11月26日
(31)【優先権主張番号】62/097,975
(32)【優先日】2014年12月30日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/098,071
(32)【優先日】2014年12月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】305060279
【氏名又は名称】グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハース,ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】イセン,ユリアン
(72)【発明者】
【氏名】コワリク,ミヒャエル トーマス
(72)【発明者】
【氏名】シュヴェーデ,トルステン フランツ
(72)【発明者】
【氏名】トーニー−メイヤー,リンダ クリスティアーネ
【審査官】 三原 健治
(56)【参考文献】
【文献】 BMC Biotechnol., 2012, 12:67
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C12P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のカンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)のPglB(PglBCj)に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(N-OST)であって、還元末端にN-アセチル糖を欠くオリゴ糖または多糖を、N-グリコシル化コンセンサス配列でキャリアタンパク質に検出可能に連結することができることを特徴とし、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)のPglB (PglBCj)のY77、S80、N311、K482、およびD483からなる群より選択される1個以上のアミノ酸が改変されており、Y77はH、T、W、R、K、AもしくはGに改変され;S80はRもしくはHに改変され;N311はVもしくはIに改変され;K482はRもしくはSに改変され;またはD483はHもしくはFに改変されている、上記組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【請求項2】
更にPglBCjのH479、K522およびG476から選択される1個以上のアミノ酸の改変を含み、H479がNもしくはWに改変されているか、またはG476がPに改変されている、請求項1に記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【請求項3】
組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼが1個以上のアミノ酸の改変を含み、該アミノ酸は、その側鎖が、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼとN-グリコシル化キャリアタンパク質との複合体の構造モデルにおいて、結合したN-グリコシル化キャリアタンパク質のオリゴ糖または多糖成分の還元末端にある3つの末端単糖単位の1つから2.5〜4.0Åの距離内に位置するものである、請求項1または2に記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【請求項4】
組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼが2個以上のアミノ酸の改変を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【請求項5】
前記1個以上のアミノ酸の少なくとも1つが、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼの膜貫通ドメインのペリプラズムループに位置する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【請求項6】
組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼが、PglBCjのQLKFYxxRモチーフ中のQ287、L288、K289、F290、Y291およびR294に対応する残基からなる群より選択される1個以上のアミノ酸の変異をさらに含む、請求項2に記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【請求項7】
PglBCjのN311が改変されている、請求項6に記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【請求項8】
組換えPglBCjが、Y77およびS80からなる群より選択される1個以上のアミノ酸の改変をさらに含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【請求項9】
組換えPglBCjが、PglBCjのQ287LKFYxxR294モチーフの1個以上のアミノ酸のアミノ酸改変をさらに含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【請求項10】
組換えPglBCjが、Q287、L288、K289およびR294からなる群より選択される1個以上のアミノ酸のアミノ酸改変を含む、請求項9に記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【請求項11】
配列番号2のカンピロバクター・ラリ(Campylobacter lari)のPglB(PglBCl)に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(N-OST)であって、還元末端にN-アセチル糖を欠くオリゴ糖または多糖を、N-グリコシル化コンセンサス配列でキャリアタンパク質に検出可能に連結することができることを特徴とし、カンピロバクター・ラリ(Campylobacter lari)のPglB (PglBCl)のY79、S82、N314、K488、およびD489からなる群より選択される1個以上のアミノ酸が改変されており、Y79はH、T、W、R、K、AもしくはGに改変され;S82はRもしくはHに改変され;N314はVもしくはIに改変され;K488はRに改変され;またはD489はHに改変されている、上記組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼをコードする核酸。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼを含む宿主細胞。
【請求項14】
請求項13に記載の宿主細胞を細胞培養培地中で培養することを含む、バイオコンジュゲートの生産方法。
【請求項15】
宿主細胞培養物からバイオコンジュゲートを精製することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1. 序文
本明細書には、in vitroで、および宿主細胞内で、対象となるタンパク質をN-グリコシル化するのに使用するためのオリゴサッカリルトランスフェラーゼ(oligosaccharyl transferase)が記載される。このようなオリゴサッカリルトランスフェラーゼを使用する方法、オリゴサッカリルトランスフェラーゼをコードする核酸、およびオリゴサッカリルトランスフェラーゼを含む宿主細胞も本明細書に提供される。また、このようなオリゴサッカリルトランスフェラーゼを用いることによって生成された糖コンジュゲート(glycoconjugate)も本明細書に提供される。
【背景技術】
【0002】
2. 背景
糖コンジュゲートワクチンは、生命を脅かす多くの細菌感染症を予防するその能力のために広く認識されている。糖コンジュゲートワクチンは、一般的に有効で安全であると考えられており、30年以上にわたってヒトに使用されてきた。従来の糖質ワクチンの製造には、多くの場合、病原菌の多糖抗原による免疫原性キャリアタンパク質の化学的修飾が必要である。しかし、最近になって、糖コンジュゲートワクチンを製造するための生物工学的方法が登場してきており、こうした方法は、生産コストを低減させ、糖コンジュゲートワクチン製剤の均質性と、おそらくは効力および安全性とを、さらに向上させることが期待されている。
【0003】
真核生物の細胞では、N-結合型グリコシル化が、数種の酵素が関係する極めて重要な翻訳後タンパク質修飾機構である。原核生物の細胞では、N-結合型グリコシル化は、ある種の細菌のN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(N-OST)によって触媒される。カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni; C. jejuni)のタンパク質グリコシル化遺伝子クラスターには、膜結合型N-OST (PglBCj)をコードするpglB遺伝子が含まれる。PglBCjは、大腸菌(Escherichia coli; E. coli)などの標準的な細菌宿主において発現させることができ、共発現された、少なくとも1つの表面露出されたD/E-Y-N-X-S/T (Y,X≠P)グリコシル化モチーフを有するペリプラズムタンパク質をグリコシル化することができる。PglBCjは、C.ジェジュニのタンパク質だけでなく、人工的に操作された(engineered)グリコシル化部位を含む他の生物の免疫原性キャリアタンパク質にも、細菌の多糖抗原を転移することができる。PglBCjは、C.ジェジュニのオリゴ糖を、そしてある程度は、グラム陰性細菌のO-抗原リポ多糖構造およびグラム陽性細菌の莢膜抗原多糖を、転移することができる。
【0004】
本開示は、改変された基質特異性を有する組換えN-OST、および糖コンジュゲートワクチンを製造するための組換えN-OSTの使用方法を提供する。このような組換えN-OSTは、タンパク質のN-グリコシル化に有利に使用することができる。
【発明の概要】
【0005】
3. 概要
一態様においては、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼが本明細書で提供され、該組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼは、還元末端にN-アセチル糖を欠くオリゴ糖または多糖を、N-グリコシル化コンセンサス配列でキャリアタンパク質に検出可能に連結することができる。
【0006】
いくつかの実施形態では、還元末端にN-アセチル糖を欠くオリゴ糖または多糖をN-グリコシル化配列でキャリアタンパク質に連結するN-OST活性は、ELISAにより検出される。
【0007】
いくつかの実施形態では、N-OST活性を示すELISAシグナルは、それがELISAバックグラウンドシグナルを超えて>2σまたは>3σである場合に、検出可能である。
【0008】
いくつかの実施形態では、キャリアタンパク質は、N-OSTと同じ生物に由来する天然キャリアタンパク質である。いくつかの実施形態では、キャリアタンパク質は、N-OSTとは異なる生物に由来する異種キャリアタンパク質である。
【0009】
いくつかの実施形態では、キャリアタンパク質は、緑膿菌(P. aeruginosa)のエキソトキシンA (EPA)、CRM197、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、黄色ブドウ球菌(S. aureus)の無毒化ヘモリシンA、クランピング因子A、クランピング因子B、大腸菌FimH、大腸菌FimHC、大腸菌熱不安定性エンテロトキシン、大腸菌熱不安定性エンテロトキシンの無毒化変異体、コレラ毒素Bサブユニット(CTB)、コレラ毒素、コレラ毒素の無毒化変異体、大腸菌satタンパク質、大腸菌satタンパク質のパッセンジャードメイン、C.ジェジュニのAcrA、およびC.ジェジュニの天然糖タンパク質からなる群より選択される。
【0010】
いくつかの実施形態では、キャリアタンパク質は、少なくとも1つのグリコシル化モチーフを有する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのグリコシル化モチーフは、D/E-Y-N-X-S/T (X,Y≠P)を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのグリコシル化モチーフは、Asn-X-Ser(Thr)を含み、ここでXはProを除く任意のアミノ酸であり得る。いくつかの実施形態では、還元末端にN-アセチル糖を欠くオリゴ糖または多糖は、抗原を含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、前記抗原としては、以下が挙げられる:大腸菌抗原、サルモネラ属菌種(Salmonella sp.)抗原、シュードモナス属菌種(Pseudomonas sp.)抗原、クレブシエラ属菌種(Klebsiella sp.)抗原、アシネトバクター(acinetobacter)O抗原、クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)抗原、コレラ菌(Vibrio cholera)抗原、リステリア属菌種(Listeria sp.)抗原、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)血清型1〜15抗原、パラ百日咳菌(Bordetella parapertussis)抗原、鼻疽菌(Burkholderia mallei)もしくは類鼻疽菌(Burkholderia pseudomallei)抗原、野兎病菌(Francisella tularensis)抗原、カンピロバクター属菌種(Campylobacter sp.)抗原、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)抗原、化膿レンサ球菌(Streptococcus pyrogenes)抗原、アガラクチア菌(Streptococcus agalacticae)抗原、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)抗原、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)抗原、インフルエンザ菌(Haemophilus influenza)抗原、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)抗原、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)抗原、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)抗原、インフルエンザ菌(Haemophilus influenza)抗原、リーシュマニア・メジャー(Leishmania major)抗原、ソンネ赤痢菌(Shigella sonnei)、または肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumoniae)抗原(例えば、CP1、CP4など)。
【0012】
いくつかの実施形態では、還元末端にN-アセチル糖を欠くオリゴ糖または多糖は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)またはサルモネラ・エンテリカ血清型株(Salmonella enterica sv.)の多糖である。いくつかの実施形態では、還元末端にN-アセチル糖を欠くオリゴ糖または多糖は、黄色ブドウ球菌のCP5多糖またはサルモネラ・エンテリカ血清型ティフィムリウム(Salmonella enterica sv. Typhimurium)のLT2多糖である。
【0013】
いくつかの実施形態では、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼは、還元末端にN-アセチル糖を欠く多糖によるキャリアタンパク質のin vivoグリコシル化またはin vitroグリコシル化の収量を増加させ、グリコシル化されたキャリアタンパク質を検出するアッセイにおけるバックグラウンドレベルよりも2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、6倍以上、7倍以上、8倍以上、9倍以上、10倍以上、11倍以上、12倍以上、13倍以上、14倍以上、15倍以上、17倍以上、20倍以上、25倍以上、30倍以上、35倍以上、40倍以上、45倍以上、50倍以上、60倍以上、70倍以上、80倍以上、90倍以上、または100倍以上のレベルでグリコシル化キャリアタンパク質を生成することができる。
【0014】
いくつかの実施形態では、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼは、還元末端にN-アセチル糖を欠く多糖によるキャリアタンパク質のin vivoグリコシル化またはin vitroグリコシル化の速度(rate)を、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼの野生型形態と比較して2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、6倍以上、7倍以上、8倍以上、9倍以上、10倍以上、11倍以上、12倍以上、13倍以上、14倍以上、15倍以上、17倍以上、20倍以上、25倍以上、30倍以上、35倍以上、40倍以上、45倍以上、50倍以上、60倍以上、70倍以上、80倍以上、90倍以上、または100倍以上増加させることができる。
【0015】
いくつかの実施形態では、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼは、還元末端にN-アセチル糖を欠く多糖を用いて、キャリアタンパク質の少なくとも1%、少なくとも3%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、または少なくとも70%をin vivoまたはin vitroでグリコシル化することができる。
【0016】
いくつかの実施形態では、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼは、1個以上のアミノ酸の改変を含み、該アミノ酸は、その側鎖が、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼとN-グリコシル化キャリアタンパク質との複合体の構造モデルにおいて、結合したN-グリコシル化キャリアタンパク質のオリゴ糖または多糖成分の還元末端にある3つの末端単糖単位の1つから2.5〜4.0Åの距離内に位置するものである。
【0017】
いくつかの実施形態では、前記2.5〜4.0Åの距離は、オリゴ糖または多糖成分の還元末端にある第1の末端単糖単位からの距離である。いくつかの実施形態では、前記2.5〜4.0Åの距離は、オリゴ糖または多糖成分の還元末端にある第2の末端単糖単位からの距離である。いくつかの実施形態では、前記2.5〜4.0Åの距離は、オリゴ糖または多糖成分の還元末端にある第3の末端単糖単位からの距離である。いくつかの実施形態では、前記2.5〜4.0Åの距離は、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼとN-グリコシル化キャリアタンパク質との複合体の構造モデルにおいて、該組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼの触媒中心にある保存されたアミノ酸からの距離である(例えば、PglBCjのK522、N311、H479、G476、Y462、G477、Y77、S80、またはS199;例えば図2参照)。
いくつかの実施形態では、前記1個以上のアミノ酸の改変は、アミノ酸の置換である。
【0018】
いくつかの実施形態では、前記1個以上のアミノ酸には、N-オリゴサッカリルトランスフェラーゼの系統発生ファミリーにおいて保存されていないアミノ酸であるアミノ酸が含まれる。いくつかの実施形態では、非保存アミノ酸は、N-オリゴサッカリルトランスフェラーゼの系統発生ファミリーのメンバーの90%未満、80%未満、70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、または10%未満において保存されている。
【0019】
いくつかの実施形態では、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼは、2個以上のアミノ酸の改変を含む。いくつかの実施形態では、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼは、3個以上のアミノ酸の改変を含む。いくつかの実施形態では、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼは、4個以上のアミノ酸の改変を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、前記1個以上のアミノ酸の少なくとも1つは、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼの膜貫通ドメインのペリプラズムループに位置する。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインのペリプラズムループは、大きな外部ループ5 (EL5)である。いくつかの実施形態では、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼはPglBCjであり、該EL5はPglBCjのEL5である。
【0021】
いくつかの実施形態では、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼは、QLKFYxxRモチーフ中の1個以上のアミノ酸に変異をさらに含む。いくつかの実施形態では、該Q287LKFYxxR294モチーフは、Q287LKFYxxR294モチーフである。いくつかの実施形態では、該Q287LKFYxxR294モチーフは、PglBCjのQ287LKFYxxR294モチーフである。
いくつかの実施形態では、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼは、組換えPglBCjである。
【0022】
いくつかの実施形態では、結合したN-グリコシル化キャリアタンパク質は、天然C.ジェジュニグリコシル化キャリアタンパク質である。いくつかの実施形態では、結合したN-グリコシル化キャリアタンパク質は、異種C.ジェジュニグリコシル化キャリアタンパク質である。
いくつかの実施形態では、結合したN-グリコシル化キャリアタンパク質のオリゴ糖または多糖成分は、その還元末端にガラクトース単糖を有する。
【0023】
いくつかの実施形態では、PglBCjのY77、S80、S196、N311、Y462、H479、K522、G476およびG477からなる群より選択される1個以上のアミノ酸が改変されている。いくつかの実施形態では、PglBCjのN311が改変されている。いくつかの実施形態では、組換えPglBCjは置換N311Vまたは置換N311Iを含む。いくつかの実施形態では、組換えPglBCjは置換N311Vを含む。いくつかの実施形態では、組換えPglBCjは、Y77およびS80からなる群より選択される1個以上のアミノ酸の改変をさらに含む。いくつかの実施形態では、組換えPglBCjは、Y77H、Y77T、Y77W、Y77R、Y77K、Y77A、Y77G、S80RおよびS80Hからなる群より選択されるアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、組換えPglBCjは、Y77HおよびS80Rからなる群より選択されるアミノ酸置換を含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、組換えPglBCjは、PglBCjのQ287LKFYxxR294モチーフの1個以上のアミノ酸のアミノ酸改変をさらに含む。いくつかの実施形態では、組換えPglBCjは、Q287、L288およびK289からなる群より選択される1個以上のアミノ酸のアミノ酸改変を含む。いくつかの実施形態では、組換えPglBCjは、Q287P、Q287K、Q287R、L288M、L288F、L288I、L288C、K289R、K289N、K289QおよびR294Kからなる群より選択される1つ以上のアミノ酸置換を含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、組換えPglBCjはアミノ酸置換N311Vを含む。いくつかの実施形態では、組換えPglBCjはアミノ酸置換Y77HおよびN311Vを含む。いくつかの実施形態では、組換えPglBCjはアミノ酸置換S80RおよびN311Vを含む。いくつかの実施形態では、組換えPglBCjは、アミノ酸置換Q287PおよびY77HまたはQ287PおよびS80Rを含む。いくつかの実施形態では、組換えPglBCjは、アミノ酸置換S80R、Q287PおよびN311Vを含む。いくつかの実施形態では、組換えPglBCjは、アミノ酸置換Y77H、Q287PおよびN311Vを含む。いくつかの実施形態では、組換えPglBCjは、アミノ酸置換Y77H、S80R、Q287PおよびN311Vを含む。いくつかの実施形態では、組換えPglBCjは、アミノ酸置換Y77H、S80R、Q287P、K289RおよびN311Vを含む。いくつかの実施形態では、組換えPglBCjは、アミノ酸置換N311VおよびA699Vを含む。いくつかの実施形態では、組換えPglBCjは、アミノ酸置換K482RおよびD483Hを含む。
【0026】
別の態様においては、1個以上のアミノ酸の改変を含む組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(N-OST)が本明細書に提供され、該アミノ酸は、その側鎖が、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼとN-グリコシル化キャリアタンパク質との複合体の構造モデルにおいて、結合したN-グリコシル化キャリアタンパク質のオリゴ糖または多糖成分の還元末端にある3つの末端単糖単位の1つから2.5〜4.0Åの距離内に位置するものである。いくつかの実施形態では、改変はアミノ酸の置換である。
【0027】
いくつかの実施形態では、キャリアタンパク質は、緑膿菌のエキソトキシンA (EPA)、CRM197、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、黄色ブドウ球菌の無毒化ヘモリシンA、クランピング因子A、クランピング因子B、大腸菌FimH、大腸菌FimHC、大腸菌熱不安定性エンテロトキシン、大腸菌熱不安定性エンテロトキシンの無毒化変異体、コレラ毒素Bサブユニット(CTB)、コレラ毒素、コレラ毒素の無毒化変異体、大腸菌satタンパク質、大腸菌satタンパク質のパッセンジャードメイン、C.ジェジュニのAcrA、およびC.ジェジュニの天然糖タンパク質からなる群より選択される。
【0028】
いくつかの実施形態では、還元末端にN-アセチル糖を欠くオリゴ糖または多糖は、抗原を含む。いくつかの実施形態では、該抗原として、以下が挙げられる:大腸菌抗原、サルモネラ属菌種抗原、シュードモナス属菌種抗原、クレブシエラ属菌種抗原、アシネトバクターO抗原、クラミジア・トラコマチス抗原、コレラ菌抗原、リステリア属菌種抗原、レジオネラ・ニューモフィラ血清型1〜15抗原、パラ百日咳菌抗原、鼻疽菌もしくは類鼻疽菌抗原、野兎病菌抗原、カンピロバクター属菌種抗原、クロストリジウム・ディフィシル抗原、アガラクチア菌抗原、髄膜炎菌抗原、カンジダ・アルビカンス抗原、インフルエンザ菌抗原、エンテロコッカス・フェカリス抗原、ボレリア・ブルグドルフェリ抗原、髄膜炎菌抗原、インフルエンザ菌抗原、リーシュマニア・メジャー抗原、ソンネ赤痢菌、または肺炎レンサ球菌抗原(例えば、CP1、CP4など)。
【0029】
いくつかの実施形態では、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼは、2個以上のアミノ酸の改変を含む。いくつかの実施形態では、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼは、3個以上のアミノ酸の改変を含む。いくつかの実施形態では、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼは、4個以上のアミノ酸の改変を含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、前記1個以上のアミノ酸の少なくとも1つは、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼの膜貫通ドメインのペリプラズムループに位置する。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインのペリプラズムループは、大きな外部ループ5 (EL5)である。いくつかの実施形態では、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼはカンピロバクター・ジェジュニのPglB (PglBCj)であり、EL5はPglBCjのEL5である。
【0031】
いくつかの実施形態では、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼは、QLKFYxxRモチーフ中に1個以上のアミノ酸の改変をさらに含む。いくつかの実施形態では、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼは、Q287LKFYxxR294モチーフ中に1個以上のアミノ酸の改変をさらに含む。いくつかの実施形態では、QLKFYxxRモチーフは、PglBCjのQ287LKFYxxR294モチーフである。
【0032】
いくつかの実施形態では、前記アミノ酸の置換は、N-オリゴサッカリルトランスフェラーゼの系統発生ファミリーにおいて保存されていないアミノ酸の置換である。
【0033】
いくつかの実施形態では、結合したN-グリコシル化ポリペプチド産物は、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼと同じ生物に由来する天然N-グリコシル化キャリアタンパク質である。いくつかの実施形態では、N-グリコシル化キャリアタンパク質は異種N-グリコシル化キャリアタンパク質であり、その場合に、N-グリコシル化キャリアタンパク質のオリゴ糖もしくは多糖成分は、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼとは異なる生物に由来し、かつ/またはN-グリコシル化キャリアタンパク質のキャリアタンパク質成分は、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼとは異なる生物に由来する。
いくつかの実施形態では、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼは、組換えPglBCjである。
【0034】
いくつかの実施形態では、結合したN-グリコシル化ポリペプチド産物は、天然C.ジェジュニグリコシル化キャリアタンパク質である。いくつかの実施形態では、結合したN-グリコシル化ポリペプチド産物は、異種C.ジェジュニグリコシル化キャリアタンパク質である。いくつかの実施形態では、異種C.ジェジュニグリコシル化キャリアタンパク質は、緑膿菌エキソトキシン(EPA)-志賀赤痢菌(S. dysenteriae)O1 (EPA-O1)、EPA-黄色ブドウ球菌莢膜多糖タイプ5 (EPA-CP5)、またはEPA-サルモネラ・エンテリカ(S. enterica) LT2 (EPA-LT2)である。
【0035】
いくつかの実施形態では、結合したN-グリコシル化キャリアタンパク質のオリゴ糖または多糖成分は、その還元末端にN-アセチル単糖を有しない。いくつかの実施形態では、結合したN-グリコシル化キャリアタンパク質のオリゴ糖または多糖成分は、その還元末端にガラクトース単糖を有する。
【0036】
いくつかの実施形態では、PglBCjのY77、S80、S196、N311、Y462、H479、K522、G476およびG477からなる群より選択される1個以上のアミノ酸が改変されている。いくつかの実施形態では、PglBCjのN311が改変されている。いくつかの実施形態では、組換えPglBCjは、N311VおよびN311Iからなる群より選択されるアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、組換えPglBCjはアミノ酸置換N311Vを含む。いくつかの実施形態では、PglBCjのY77およびS80からなる群より選択される1個以上のアミノ酸が改変されている。いくつかの実施形態では、組換えPglBCjは、Y77H、Y77T、Y77W、Y77R、Y77K、Y77A、Y77G、S80RおよびS80Hからなる群より選択されるアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、組換えPglBCjは、Y77HおよびS80Rからなる群より選択されるアミノ酸置換を含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、組換えPglBCjは、PglBCjのQ287LKFYxxR294モチーフの1個以上のアミノ酸の改変をさらに含む。いくつかの実施形態では、組換えPglBCjは、Q287、L288およびK289からなる群より選択される1個以上のアミノ酸の改変を含む。いくつかの実施形態では、組換えPglBCjは、Q287P、Q287K、Q287R、L288M、L288F、L288I、L288C、K289R、K289N、K289QおよびR294Kからなる群より選択される置換を含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、組換えPglBCjは置換N311Vを含む。いくつかの実施形態では、組換えPglBCjは置換Y77Hおよび置換N311Vを含む。いくつかの実施形態では、組換えPglBCjは置換S80Rおよび置換N311Vを含む。いくつかの実施形態では、組換えPglBCjは置換Q287Pおよび置換Y77Hまたは置換Q287P変異および置換S80Rを含む。いくつかの実施形態では、組換えPglBCjは、置換S80R、置換Q287Pおよび置換N311Vを含む。いくつかの実施形態では、組換えPglBCjは、置換Y77H、置換Q287Pおよび置換N311Vを含む。いくつかの実施形態では、組換えPglBCjは、置換Y77H、置換S80R、置換Q287Pおよび置換N311Vを含む。いくつかの実施形態では、組換えPglBCjは、置換Y77H、置換S80R、置換Q287P、置換K289Rおよび置換N311Vを含む。いくつかの実施形態では、組換えPglBCjは、置換N311Vおよび置換A699Vを含む。いくつかの実施形態では、組換えPglBCjは、置換K482Rおよび置換D483Hを含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼは、還元末端にN-アセチル糖を欠くオリゴ糖または多糖を、キャリアタンパク質に検出可能に連結することができる。
【0040】
いくつかの実施形態では、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼは、還元末端にガラクトース単糖を有するオリゴ糖または多糖を、キャリアタンパク質に検出可能に連結することができる。
【0041】
いくつかの実施形態では、前記オリゴ糖または多糖は、黄色ブドウ球菌またはサルモネラ・エンテリカ血清型株のオリゴ糖または多糖である。いくつかの実施形態では、前記オリゴ糖または多糖は、黄色ブドウ球菌CP5またはサルモネラ・エンテリカ血清型ティフィムリウムLT2のオリゴ糖もしくは多糖である。
【0042】
いくつかの実施形態では、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼは、還元末端にN-アセチル糖を欠くオリゴ糖または多糖によるキャリアタンパク質のin vivoグリコシル化またはin vitroグリコシル化の収量を増加させ、グリコシル化されたキャリアタンパク質を検出するアッセイにおけるバックグラウンドレベルを超えて2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、6倍以上、7倍以上、8倍以上、9倍以上、10倍以上、11倍以上、12倍以上、13倍以上、14倍以上、15倍以上、17倍以上、20倍以上、25倍以上、30倍以上、35倍以上、40倍以上、45倍以上、50倍以上、60倍以上、70倍以上、80倍以上、90倍以上、または100倍以上のレベルでグリコシル化キャリアタンパク質を生成することができる。
【0043】
いくつかの実施形態では、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼは、還元末端にN-アセチル糖を欠くオリゴ糖または多糖によるキャリアタンパク質のin vivoまたはin vitroグリコシル化の速度を、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼの野生型形態と比較して2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、6倍以上、7倍以上、8倍以上、9倍以上、10倍以上、11倍以上、12倍以上、13倍以上、14倍以上、15倍以上、17倍以上、20倍以上、25倍以上、30倍以上、35倍以上、40倍以上、45倍以上、50倍以上、60倍以上、70倍以上、80倍以上、90倍以上、または100倍以上増加させることができる。
【0044】
いくつかの実施形態では、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼは、少なくとも1%、少なくとも3%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、または少なくとも70%のキャリアタンパク質のin vivoグリコシル化レベルまたはin vitroグリコシル化レベルをもたらすことができる。
別の態様においては、N311V置換を含む組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼPglBCjが本明細書で提供される。
別の態様においては、N311V変異およびY77H置換を含む組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼPglBCjが本明細書に提供される。
別の態様においては、N311V変異およびS80R置換を含む組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼPglBCjが本明細書に提供される。
【0045】
別の態様においては、N311V変異およびY77H変異およびS80R置換を含む組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼPglBCjが本明細書に提供される。
別の態様においては、N311V変異およびQ287P置換を含む組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼPglBCjが本明細書に提供される。
【0046】
別の態様においては、N311V変異、Y77H置換およびQ287P置換を含む組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼPglBCjが本明細書に提供される。
【0047】
別の態様においては、N311V変異、S80R置換およびQ287P置換を含む組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼPglBCjが本明細書に提供される。
【0048】
別の態様においては、N311V置換、Y77H置換、S80R置換およびQ287P置換を含む組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼPglBCjが本明細書に提供される。
別の態様においては、N311V置換およびA669V置換を含む組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼPglBCjが本明細書に提供される。
【0049】
別の態様においては、N311V置換、Y77H置換、S80R置換、Q287P置換およびK289R置換を含む組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼPglBCjが本明細書に提供される。
別の態様においては、K482R置換およびD483H置換を含む組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼPglBCjが本明細書に提供される。
別の態様においては、N311V置換およびA669V置換を含む組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼPglBCjが本明細書に提供される。
【0050】
別の態様においては、N314V置換を含む組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼPglBCl(PglB C. lari)が本明細書に提供される。
別の態様においては、N314V変異およびY79H置換を含む組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼPglBClが本明細書に提供される。
別の態様においては、N314V変異およびS82R置換を含む組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼPglBClが本明細書に提供される。
【0051】
別の態様においては、N314V変異およびY79H変異およびS82R置換を含む組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼPglBClが本明細書に提供される。
別の態様においては、N314V変異およびQ289P置換を含む組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼPglBClが本明細書に提供される。
【0052】
別の態様においては、N314V変異、Y79H置換およびQ289P置換を含む組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼPglBClが本明細書に提供される。
【0053】
別の態様においては、N314V変異、S82R置換およびQ289P置換を含む組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼPglBClが本明細書に提供される。
【0054】
別の態様においては、N314V置換、Y79H置換、S82R置換およびQ289P置換を含む組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼPglBClが本明細書に提供される。
別の態様においては、K488R置換およびD489H置換を含む組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼPglBClが本明細書に提供される。
別の態様においては、本明細書に記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼをコードする核酸が本明細書に提供される。
別の態様においては、本明細書に記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼを含む宿主細胞が本明細書に提供される。
いくつかの実施形態では、宿主細胞は、組換えグリコシルトランスフェラーゼをさらに含む。
別の態様においては、本明細書に記載の核酸を含む宿主細胞が本明細書で提供される。
いくつかの実施形態では、宿主細胞は原核細胞である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は大腸菌細胞である。
【0055】
別の態様においては、本明細書に記載の宿主細胞を培養することを含む、バイオコンジュゲート(bioconjugate)の生産方法が本明細書で提供される。
【0056】
いくつかの実施形態では、宿主細胞は、キャリアタンパク質および組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼを含む。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、組換えグリコシルトランスフェラーゼをさらに含む。いくつかの実施形態では、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼは組換えPglBCjである。
【0057】
いくつかの実施形態では、該キャリアタンパク質は、緑膿菌のエキソトキシンA (EPA)、CRM197、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、黄色ブドウ球菌の無毒化ヘモリシンA、クランピング因子A、クランピング因子B、大腸菌FimH、大腸菌FimHC、大腸菌熱不安定性エンテロトキシン、大腸菌熱不安定性エンテロトキシンの無毒化変異体、コレラ毒素Bサブユニット(CTB)、コレラ毒素、コレラ毒素の無毒化変異体、大腸菌satタンパク質、大腸菌satタンパク質のパッセンジャードメイン、C.ジェジュニのAcrA、およびC.ジェジュニの天然糖タンパク質からなる群より選択される。
【0058】
いくつかの実施形態では、該バイオコンジュゲートは、N-グリコシル化されたキャリアタンパク質である。いくつかの実施形態では、該バイオコンジュゲートは、天然C.ジェジュニN-グリコシル化キャリアタンパク質である。いくつかの実施形態では、該バイオコンジュゲートは、異種C.ジェジュニN-グリコシル化キャリアタンパク質である。いくつかの実施形態では、該N-グリコシル化キャリアタンパク質は、そのオリゴ糖または多糖成分の還元末端にN-アセチル糖を有しない。いくつかの実施形態では、該N-グリコシル化キャリアタンパク質は、そのオリゴ糖または多糖成分の還元末端にガラクトースを有する。
【0059】
いくつかの実施形態では、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ変異体は、バイオコンジュゲートの生産速度を、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼの野生型形態により達成される速度と比較して2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、6倍以上、7倍以上、8倍以上、9倍以上、10倍以上、11倍以上、12倍以上、13倍以上、14倍以上、15倍以上、17倍以上、20倍以上、25倍以上、30倍以上、35倍以上、40倍以上、45倍以上、50倍以上、60倍以上、70倍以上、80倍以上、90倍以上、または100倍以上増加させることができる。
【0060】
いくつかの実施形態では、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ変異体は、バイオコンジュゲートの生産収量を、該バイオコンジュゲートを検出するアッセイにおけるバックグラウンドレベルを超えて2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、6倍以上、7倍以上、8倍以上、9倍以上、10倍以上、11倍以上、12倍以上、13倍以上、14倍以上、15倍以上、17倍以上、20倍以上、25倍以上、30倍以上、35倍以上、40倍以上、45倍以上、50倍以上、60倍以上、70倍以上、80倍以上、90倍以上、または100倍以上のレベルに増加させることができる。
【0061】
いくつかの実施形態では、宿主細胞中のキャリアタンパク質の少なくとも1%、少なくとも3%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、または少なくとも70%がグリコシル化されてバイオコンジュゲートを形成する。
いくつかの実施形態では、前記方法は、宿主細胞培養物からバイオコンジュゲートを精製することをさらに含む。
【0062】
別の態様においては、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼのライブラリー(各組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼが1個以上のアミノ酸の改変を含む)をスクリーニングする方法が本明細書に提供され、この方法は、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼのライブラリーの各メンバーを、キャリアタンパク質および還元末端にN-アセチル糖を欠くオリゴ糖または多糖と接触させて、バイオコンジュゲートを生産することを含んでなる。
いくつかの実施形態では、前記バイオコンジュゲートはN-グリコシル化されたキャリアタンパク質である。
【0063】
いくつかの実施形態では、前記接触はin vitroで起こる。いくつかの実施形態では、前記接触はin vivoで起こる。いくつかの実施形態では、前記接触は宿主細胞内で起こる。いくつかの実施形態では、該宿主細胞は原核細胞である。いくつかの実施形態では、該宿主細胞は大腸菌細胞である。
【0064】
いくつかの実施形態では、前記組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼのライブラリーは、少なくとも2種、少なくとも5種、少なくとも10種、少なくとも15種、少なくとも20種、少なくとも25種、少なくとも50種、少なくとも75種、少なくとも100種、少なくとも150種、少なくとも200種、少なくとも250種、少なくとも500種、少なくとも750種、または少なくとも1,000種の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼを含む。
【0065】
いくつかの実施形態では、前記組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼのライブラリーは、本明細書に記載の1種以上の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼを含む。
いくつかの実施形態では、前記方法は、前記バイオコンジュゲートの生産速度または収量を分析することをさらに含む。
【0066】
いくつかの実施形態では、前記方法は、前記組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼのライブラリーから1種以上の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼを選択することをさらに含む。
【0067】
いくつかの実施形態では、前記1つ以上の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼは、該組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼがその野生型形態の速度よりも2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、6倍以上、7倍以上、8倍以上、9倍以上、10倍以上、11倍以上、12倍以上、13倍以上、14倍以上、15倍以上、17倍以上、20倍以上、25倍以上、30倍以上、35倍以上、40倍以上、45倍以上、50倍以上、60倍以上、70倍以上、80倍以上、90倍以上、または100倍以上速い速度でバイオコンジュゲートを生成する場合に、選択される。
【0068】
いくつかの実施形態では、前記1つ以上のN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ変異体は、該N-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ変異体が、バイオコンジュゲートを検出するアッセイにおけるバックグラウンドレベルを超えて2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、6倍以上、7倍以上、8倍以上、9倍以上、10倍以上、11倍以上、12倍以上、13倍以上、14倍以上、15倍以上、17倍以上、20倍以上、25倍以上、30倍以上、35倍以上、40倍以上、45倍以上、50倍以上、60倍以上、70倍以上、80倍以上、90倍以上、または100倍以上のレベルの検出可能な収量でバイオコンジュゲートを生成する場合に、選択される。
【0069】
いくつかの実施形態では、前記1つ以上の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼは、該組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼが宿主細胞中のキャリアタンパク質の少なくとも1%、少なくとも3%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、または少なくとも70%をグリコシル化する場合に、選択される。
【0070】
別の態様においては、N-オリゴサッカリルトランスフェラーゼの野生型形態と比較して、改変された基質選択性を有する組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼを同定する方法が本明細書で提供され、この方法は、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼとN-グリコシル化キャリアタンパク質との複合体の構造モデルにおいて、結合したN-グリコシル化キャリアタンパク質のオリゴ糖または多糖成分の還元末端にある3つの末端単糖単位の1つから2.5〜4.0Åの距離内にアミノ酸側鎖が位置する、1個以上のアミノ酸を改変することを含んでなる。
【0071】
いくつかの実施形態では、前記方法は、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼの2個以上のアミノ酸を改変することを含む。いくつかの実施形態では、前記方法は、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼの3個以上のアミノ酸を改変することを含む。いくつかの実施形態では、前記方法は、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼの4個以上のアミノ酸を改変することを含む。
【0072】
いくつかの実施形態では、前記1個以上のアミノ酸の少なくとも1つは、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼの膜貫通ドメインのペリプラズムループに位置する。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインのペリプラズムループは、大きな外部ループ5 (EL5)である。
【0073】
いくつかの実施形態では、前記方法は、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼのQLKFYxxRモチーフ中の1個以上のアミノ酸を変異させることをさらに含む。いくつかの実施形態では、該QLKFYxxRモチーフは、Q287LKFYxxR294モチーフである。いくつかの実施形態では、結合したN-グリコシル化キャリアタンパク質は、天然N-グリコシル化キャリアタンパク質である。
【0074】
いくつかの実施形態では、結合したN-グリコシル化キャリアタンパク質は、異種N-グリコシル化キャリアタンパク質である。いくつかの実施形態では、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼは、組換えPglBCjである。いくつかの実施形態では、結合したN-グリコシル化キャリアタンパク質は、天然C.ジェジュニN-グリコシル化キャリアタンパク質である。いくつかの実施形態では、結合したN-グリコシル化キャリアタンパク質は、異種C.ジェジュニN-グリコシル化キャリアタンパク質である。
【0075】
いくつかの実施形態では、結合したN-グリコシル化キャリアタンパク質のオリゴ糖または多糖成分は、その還元末端にN-アセチル単糖を有しない。いくつかの実施形態では、結合したN-グリコシル化キャリアタンパク質のオリゴ糖または多糖成分は、その還元末端にガラクトース単糖を有する。
【0076】
いくつかの実施形態では、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼは、改変された基質選択性をin vitroで有する。いくつかの実施形態では、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼは、改変された基質選択性をin vivoで有する。
【図面の簡単な説明】
【0077】
4. 図面の簡単な説明
図1図1は、PglBCjの天然のC.ジェジュニヘプタサッカリド基質の構造、および2つの非天然の多糖基質の構造を示し、グリコシル化効率は上から下へ低下する。GalNAc: 2-N-アセチルガラクトサミン、Glc: グルコース、DATDH: 2,4-ジアセトアミド-2,4,6-トリデオキシヘキソース、P-P-und: ウンデカプレニルピロリン酸担体、Rha: ラムノース、Gal: ガラクトース、GlcNAc: N-アセチルグルコサミン、ManNAc: N-アセチルマンノサミン、OAc: O-アセチル修飾、FucNAc: N-アセチルフコサミン、Man: マンノース、Abe: アベクォース(3,6-デオキシ-D-ガラクトース)。
図2A図2は、PglBCjと相互作用するときのオリゴ糖構造の例示的なモデリングを示す。図2Aは、活性部位におけるC.ジェジュニOS (薄い灰色のボール・アンド・スティック(ball-and-stick)表示)およびS.エンテリカLT2反復単位(濃い灰色のスティック表示)の例示的なコンフォメーションを示し、動的モデリングの間、アクセプターペプチドへの結合の位置が固定点として選択された。PglBCj骨格構造は灰色(リボン)で示され、膜のリン酸基は薄い灰色のボールとして示される。天然OSにごく接近した残基は、薄い灰色のボール・スティック表示として示される。破線は、非構造化外部ループEL5の接続性を示す。
図2B図2は、PglBCjと相互作用するときのオリゴ糖構造の例示的なモデリングを示す。図2Bは、C.ジェジュニOS (明るい灰色のボール・アンド・スティック表示)の例示的なコンフォメーションを示す。PglBCj骨格構造は灰色(リボン)で示され、膜のリン酸基は薄い灰色のボールとして示される。天然OSにごく接近した残基は、薄い灰色のボール・スティック表示として示される。破線は、非構造化外部ループEL5の接続性を示す。
図2C図2は、PglBCjと相互作用するときのオリゴ糖構造の例示的なモデリングを示す。図2Cは、S.エンテリカLT2反復単位(濃い灰色のスティック表示)の例示的なコンフォメーションを示す。PglBCj骨格構造は灰色(リボン)で示され、膜のリン酸基は薄い灰色のボールとして示される。天然OSにごく接近した残基は、薄い灰色のボール・スティック表示として示される。破線は、非構造化外部ループEL5の接続性を示す。
図3A-B】図3は、PglBCj残基N311をランダム化する飽和変異導入(saturation mutagenesis)ライブラリーの例示的なDWP-ELISAスクリーニングの結果を示す。図3Aは、黄色ブドウ球菌CP5多糖の宿主株および該多糖に対する検出抗体を用いたスクリーニング結果を示す。図3Bは、S.エンテリカLT2多糖の宿主株および該多糖に対する検出抗体を用いたスクリーニング結果を示す。白丸はライブラリークローンを示す;黒三角は、野生型PglB (pGVXN1413)を発現する陽性対照クローンを示し、影付き三角は、不活性PglBmut (pGVXN408)を発現する陰性対照クローンを示す。配列決定されたクローンを楕円でマークする。
図4A】(A) C.ジェジュニ287QLKFYxxR294モチーフおよびC.ジェジュニN311を含むEL5領域における細菌のPglBホモログのアライメントを示す。C.ジェジュニのPglBをProtein BLASTの検索テンプレートとして使用して、非重複配列を、ClustalWアルゴリズムを用いたMegAlign(商標)プログラム(DNASTAR社, Madison, WI, 米国)によりアライメントさせた。他の菌種の配列中で保存されたPglBCj残基には陰影を付けてある。関連するC.ジェジュニ残基は最上部に示され、相同N-OST配列中の対応するアミノ酸はボックスで囲まれる。
図4B】(B)残基C.ジェジュニY77/S80およびC.ジェジュニK482/D843付近における細菌のPglBホモログのアライメントを示す。C.ジェジュニのPglBをProtein BLASTの検索テンプレートとして使用して、非重複配列を、ClustalWアルゴリズムを用いたMegAlign(商標)プログラム(DNASTAR社, Madison, WI, 米国)によりアライメントさせた。他の菌種の配列中で保存されたPglBCj残基には陰影を付けてある。関連するC.ジェジュニ残基は最上部に示され、相同N-OST配列中の対応するアミノ酸はボックスで囲まれる。
図5図5は、一晩誘導されたDWP培養物におけるin vivo CP5-EPA生産に対する、可能性がある糖相互作用PglBCj残基Y462、G476、G477およびH479内のアミノ酸置換の影響を示すグラフである。参照ウェル(100%値、バックグラウンド補正した):pGVXN1050 (野生型テンプレートプラスミド)。変異体あたり3つ組のクローンの平均数および標準偏差が示される。
図6A-B】図6は、ウェスタンブロットによって分析された、振盪フラスコ内での糖タンパク質形成に及ぼすPglB変異体N311Vの効果を示す。図6Aは、S.エンテリカSGSC228 (pGVXN150)宿主株におけるLT2-EPAにより得られた結果を示す。図6Bは、大腸菌St1717 (pGVXN150, pGVXN393)宿主株におけるCP5-EPAにより得られた結果を示す。図5に示すのと同じ実験、バイオマス標準化したペリプラズム抽出物、同様のローディング量、変異体あたり1つの振盪フラスコ培養物のサンプル。野生型PglB: pGVXN970、PglB N311V: pGVXN1217。非グリコシル化EPA-6Hの理論上の分子量:69.4 kDa。
図6C-D】図6は、ウェスタンブロットによって分析された、振盪フラスコ内での糖タンパク質形成に及ぼすPglB変異体N311Vの効果を示す。図6Cは、大腸菌CLM24 (pGVXN64, pGVXN150)宿主株におけるO1-EPAにより得られた結果を示す。図6Dは、大腸菌CLM24 (pACYC(pglmut), pGVXN150)宿主株におけるEPA-C.ジェジュニOSにより得られた結果を示す。図5に示すのと同じ実験、バイオマス標準化したペリプラズム抽出物、同様のローディング量、変異体あたり1つの振盪フラスコ培養物のサンプル。野生型PglB: pGVXN970、PglB N311V: pGVXN1217。非グリコシル化EPA-6Hの理論上の分子量:69.4 kDa。
図7A図7は、3つの異種多糖および天然オリゴ糖を用いたEPAのグリコシル化に及ぼすアミノ酸置換PglBCj N311Vの効果を示す。白抜きの記号:野生型PglB (pGVXN970)、黒塗りの記号:PglB N311V (pGVXN1217)。図7Aは、黄色ブドウ球菌CP5多糖の宿主株および該多糖に対する検出抗体を用いて得られた例示的な結果を示す。振盪フラスコ培養物からのバイオマス標準化ペリプラズム抽出物についてのバックグラウンド補正されたELISAシグナル、n=3の生物学的レプリケートの平均値および標準偏差が示される。
図7B図7は、3つの異種多糖および天然オリゴ糖を用いたEPAのグリコシル化に及ぼすアミノ酸置換PglBCj N311Vの効果を示す。白抜きの記号:野生型PglB (pGVXN970)、黒塗りの記号:PglB N311V (pGVXN1217)。図7Bは、S.エンテリカ血清型ティフィムリウムLT2多糖の宿主株および該多糖に対する検出抗体を用いて得られた例示的な結果を示す。振盪フラスコ培養物からのバイオマス標準化ペリプラズム抽出物についてのバックグラウンド補正されたELISAシグナル、n=3の生物学的レプリケートの平均値および標準偏差が示される。
図7C図7は、3つの異種多糖および天然オリゴ糖を用いたEPAのグリコシル化に及ぼすアミノ酸置換PglBCj N311Vの効果を示す。白抜きの記号:野生型PglB (pGVXN970)、黒塗りの記号:PglB N311V (pGVXN1217)。図7Cは、志賀赤痢菌O1多糖の宿主株および該多糖に対する検出抗体を用いて得られた結果を示す。振盪フラスコ培養物からのバイオマス標準化ペリプラズム抽出物についてのバックグラウンド補正されたELISAシグナル、n=3の生物学的レプリケートの平均値および標準偏差が示される。
図7D図7は、3つの異種多糖および天然オリゴ糖を用いたEPAのグリコシル化に及ぼすアミノ酸置換PglBCj N311Vの効果を示す。白抜きの記号:野生型PglB (pGVXN970)、黒塗りの記号:PglB N311V (pGVXN1217)。図7Dは、C.ジェジュニオリゴ糖の宿主株および該オリゴ糖に対する検出抗体を用いて得られた結果を示す。振盪フラスコ培養物からのバイオマス標準化ペリプラズム抽出物についてのバックグラウンド補正されたELISAシグナル、n=3の生物学的レプリケートの平均値および標準偏差が示される。
図8A図8は、振盪フラスコ実験におけるHAタグ付きPglBの発現およびCP5-EPA形成に及ぼすN311Vの効果を示す。図8Aは、大腸菌St1717 (pGVXN150, pGVXN393)宿主株におけるPglB-HAの抗HAウェスタンブロット分析の結果を示す。白抜きの記号は野生型PglB-HAの結果を示す。黒塗りの記号はPglB-HA N311Vの結果を示す。n=3のレプリケート培養物の平均値および標準偏差が示される。
図8B図8は、振盪フラスコ実験におけるHAタグ付きPglBの発現およびCP5-EPA形成に及ぼすN311Vの効果を示す。図8Bは、バイオマス標準化ペリプラズム抽出物のサンドイッチELISAによって分析したCP5-EPA形成の経時変化の結果を示す。白抜きの記号は野生型PglB-HAの結果を示す。黒塗りの記号はPglB-HA N311Vの結果を示す。n=3のレプリケート培養物の平均値および標準偏差が示される。
図9A-B】図9は、中立的な突然変異およびわずかに有益な突然変異のシャッフリングを使用した、PglBCjの第3ラウンドの定方向進化(directed evolution)の例示的結果を示す。図9Aは、代表的な96ウェルライブラリーのスクリーニング結果を示す。白丸はライブラリークローンを示す;黒三角は、PglB N311V (テンプレートプラスミドpGVXN1418)を示す;影付き三角は、不活性PglBmut (pGVXN408)を示す。図9Bは、再形質転換後のDWPにおける改善の検証を示す。変異型プラスミド、wt: pGVXN1413およびN311V: pGVXN1418についてn=3のレプリケートクローン/ウェルの平均値および標準偏差が示される。非グリコシル化EPA-6Hの理論上の分子量:69.4 kDa。
図9C図9は、中立的な突然変異およびわずかに有益な突然変異のシャッフリングを使用した、PglBCjの第3ラウンドの定方向進化の例示的結果を示す。図9Cは、振盪フラスコ内で野生型PglB (pGVXN970)、PglB N311V (pGVXN1217)またはPglB S80R-Q287P-N311V (ライブラリークローン2B2)のいずれかを用いて生産されたNi-NTAアフィニティー精製タンパク質のSDS-PAGEおよびウェスタンブロット分析の例示的結果を示す(同様のローディング量、全タンパク質濃度(A280)を2mg/mLに調整した)。非グリコシル化EPA-6Hの理論上の分子量:69.4 kDa。
図10図10は、残基PglBCj K482およびD483をランダム化したPglBCjライブラリーの例示的なスクリーニング結果を示す。白丸:ライブラリークローン;黒三角:野生型PglB-HA (pGVXN407);白三角:不活性PglB (pGVXN408)。二重変異K482R-D483Hを有するクローンFa8_G10を円でマークする。
図11図11は、PglBCj K482-D483Hが振盪フラスコ培養でのCP5-EPAの生産を改善し得ることを示す棒グラフである。バイオマス標準化したペリプラズムタンパク質抽出物を誘導の4時間後および一晩(o/n)インキュベーション後に調製し、サンドイッチELISAによって分析した。黒い棒:野生型PglBCj-HA (pGVXN114)、白い棒:PglBCj-HA K482R-D483H (pGVXN635)。n=3の同型培養物の平均値および標準偏差。バックグラウンドELISA吸光度を差し引いた(不活性PglB、pGVXN115)。
図12図12は、PglBCj K482-D483Hが黄色ブドウ球菌CP5多糖による黄色ブドウ球菌Hlaのグリコシル化を改善し得ることを示すウェスタンブロット分析を示す。HisTrap精製後のペリプラズムタンパク質のSDS-PAGEおよびウェスタンブロット分析が示される。最高のタンパク質濃度(A280)を有する溶出画分の同様の分量をローディングした。
【発明を実施するための形態】
【0078】
5. 略語
本明細書で使用する略語「CP」は、「莢膜多糖」(capsular polysaccharide)を意味する。
本明細書で使用する略語「EL」は、「外部ループ」(external loop)を意味する。
本明細書で使用する略語「N-OST」は、N-オリゴサッカリルトランスフェラーゼを意味する。
本明細書で使用する略語「PglBCj」は、カンピロバクター・ジェジュニ(C. jejuni)のN-OST PglBを指す。
本明細書で使用する略語「PglBCl」は、カンピロバクター・ラリ(C. lari)のN-OST PglBを指す。
【0079】
6. 詳細な説明
本明細書には、改変された基質特異性を有する改変型N-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(N-OST)が提供される。具体的には、N-グリコシル化コンセンサス配列でタンパク質をN-グリコシル化するための基質として、N-OSTの野生型形態によっては使用され得ない(または検出可能なレベルで使用され得ない)オリゴ糖または多糖を用いることができる改変型N-OSTが本明細書で提供される。特定の実施形態では、改変型N-OSTは、例えばin vivoまたはin vitroで、N-グリコシル化キャリアタンパク質の検出可能なレベルを生産するために、このようなオリゴ糖または多糖を使用することができる。グリコシル化キャリアタンパク質のレベルは、ELISA、HPLC、LC-MSなどを含むがこれらに限定されない、当技術分野で公知の方法により測定することができる;例えば、セクション6.10、セクション6.12、および実施例2〜3を参照されたい。いくつかの実施形態では、N-グリコシル化キャリアタンパク質の生産は、ELISAによって検出される。
【0080】
いくつかの実施形態では、グリコシル化キャリアタンパク質のレベルは、該グリコシル化キャリアタンパク質が、アッセイにおいて、平均値または中央値アッセイバックグラウンドシグナルを超えて2または3標準偏差上回る(>2σまたは>3σ)レベルの、あるいは該アッセイバックグラウンドシグナルを超えて2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、7倍以上、8倍以上、9倍以上、または10倍以上のレベルの、グリコシル化キャリアタンパク質を示すシグナルにより検出され得る場合に、検出可能である。
【0081】
いくつかの実施形態では、アッセイバックグラウンドシグナルは、N-OSTの非存在下で実施される陰性対照実験の平均値または中央値アッセイシグナルである。いくつかの実施形態では、アッセイバックグラウンドシグナルは、野生型N-OSTの存在下で実施される陰性対照実験の平均値または中央値アッセイシグナルである。
【0082】
特定の実施形態では、グリコシル化キャリアタンパク質は、バイオコンジュゲートを検出するアッセイ(例えば、ELISAアッセイ、HPLC、LC-MS;セクション6.10およびセクション6.12参照)におけるバックグラウンドレベルを超えて2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、6倍以上、7倍以上、8倍以上、9倍以上、10倍以上、11倍以上、12倍以上、13倍以上、14倍以上、15倍以上、17倍以上、20倍以上、25倍以上、30倍以上、35倍以上、40倍以上、45倍以上、50倍以上、60倍以上、70倍以上、80倍以上、90倍以上、または100倍以上のレベルで検出され得る。
【0083】
本明細書で提供されるN-OSTの改変は、N-OSTに結合しているグリコシル化キャリアタンパク質のオリゴ糖または多糖成分の還元末端にある単糖単位から特定の距離内に位置することができる。そのような改変が基質特異性の変化をもたらすことを確認するために、タンパク質グリコシル化のための任意のルーチンアッセイを使用することができる。本明細書に記載されるように、そのような改変型N-OSTを用いて、原核宿主細胞においてバイオコンジュゲートを生成することができる。結果として得られるバイオコンジュゲートを含む組成物もまた、本明細書に開示される。特定の実施形態では、そのような改変型N-OSTは、還元末端にN-アセチル置換された糖を欠くオリゴ糖または多糖を基質として使用して、グリコシル化キャリアタンパク質の検出可能なレベルを生産することが可能である。
【0084】
いくつかの実施形態では、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ変異体は、バイオコンジュゲートの生産収量を、該バイオコンジュゲートを検出するアッセイにおけるバックグラウンドレベルを超えて2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、6倍以上、7倍以上、8倍以上、9倍以上、10倍以上、11倍以上、12倍以上、13倍以上、14倍以上、15倍以上、17倍以上、20倍以上、25倍以上、30倍以上、35倍以上、40倍以上、45倍以上、50倍以上、60倍以上、70倍以上、80倍以上、90倍以上、または100倍以上のレベルに増加させることができる。
【0085】
バイオコンジュゲートを検出するアッセイにおけるバックグラウンドレベルは、例えば、N-OSTの非存在下で実施されるか、または野生型N-OSTを用いて実施される対照実験で得られる平均値シグナルまたは中央値シグナルであり得る。
【0086】
6.1 N-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ
一態様においては、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(N-OST)が本明細書で提供され、該組換えN-OSTは、還元末端にN-アセチル糖を欠くオリゴ糖または多糖をキャリアタンパク質に検出可能に連結することができる。いくつかの実施形態では、組換えN-OSTは、1個以上のアミノ酸の改変を含み、該アミノ酸は、その側鎖が、組換えN-OSTとグリコシル化キャリアタンパク質産物との複合体の構造モデルにおいて、結合したグリコシル化キャリアタンパク質産物の多糖成分の還元末端にある単糖単位から0.5〜10.0Åの距離内に位置するものである。いくつかの実施形態では、該改変はアミノ酸の置換である。いくつかの実施形態では、組換えN-OSTは、1個以上のアミノ酸の改変を含み、該アミノ酸は、その側鎖が、組換えN-OSTとグリコシル化キャリアタンパク質産物との複合体の構造モデルにおいて、結合したグリコシル化キャリアタンパク質産物の多糖成分の還元末端にある3つの末端単糖単位の1つから2.5〜4.0Åの距離内に位置するものである。いくつかの実施形態では、該改変はアミノ酸の置換である。例えば、図2およびセクション6.3を参照されたい。
【0087】
別の態様においては、1個以上のアミノ酸の改変を含む組換えN-OSTが本明細書で提供され、該アミノ酸は、その側鎖が、組換えN-OSTとN-グリコシル化キャリアタンパク質との複合体の構造モデルにおいて、結合したN-グリコシル化キャリアタンパク質のオリゴ糖または多糖成分の還元末端にある単糖単位から1.0〜10.0Åの距離内に位置するものである。いくつかの実施形態では、該組換えN-OSTは、1個以上のアミノ酸の改変を含む組換えN-OSTであり、該アミノ酸は、その側鎖が、組換えN-OSTとN-グリコシル化キャリアタンパク質との複合体の構造モデルにおいて、結合したN-グリコシル化キャリアタンパク質のオリゴ糖または多糖成分の還元末端にある3つの末端単糖単位の1つから2.5〜4.0Åの距離内に位置するものである。いくつかの実施形態では、該組換えN-OSTは、還元末端にN-アセチル糖を欠くオリゴ糖または多糖をキャリアタンパク質に検出可能に連結することができる。いくつかの実施形態では、該改変はアミノ酸の置換である。例えば、図2およびセクション6.3を参照されたい。
【0088】
いくつかの実施形態では、2.5〜4.0Åの距離は、オリゴ糖または多糖成分の還元末端にある第1の末端単糖単位からの距離である。いくつかの実施形態では、2.5〜4.0Åの距離は、オリゴ糖または多糖成分の還元末端にある第2の末端単糖単位からの距離である。いくつかの実施形態では、2.5〜4.0Åの距離は、オリゴ糖または多糖成分の還元末端にある第3の末端単糖単位からの距離である。いくつかの実施形態では、2.5〜4.0Åの距離は、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼとN-グリコシル化キャリアタンパク質との複合体の構造モデルにおいて、該組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼの触媒中心にある保存されたアミノ酸からの距離である(例えば、PglBCjのK522、N311、H479、G476、Y462、G477、Y77、S80、またはS199;例えば図2参照)。
【0089】
いくつかの実施形態では、組換えN-OSTとN-グリコシル化キャリアタンパク質との複合体の構造モデルにおいて、結合したN-グリコシル化キャリアタンパク質のオリゴ糖または多糖成分の還元末端にある単糖単位からの0.5〜10.0Åの距離は、約1.0〜9.0Åの距離、約1.5〜約8.0Åの距離、約2.0〜約6.0Åの距離、または約2.5〜4.0Åの距離である。いくつかの実施形態では、組換えN-OSTとN-グリコシル化キャリアタンパク質との複合体の構造モデルにおいて、結合したN-グリコシル化キャリアタンパク質のオリゴ糖または多糖成分の還元末端にある単糖単位からの1.0〜10.0Åの距離は、約1.0Å、約1.5Å、約2.0Å、約2.5Å、約3.0Å、約3.5Å、約4.0Å、約4.5Å、約5.0Å、約5.5Å、約6.0Å、約6.5Å、約7.0Å、約7.5Å、約8.0Å、約8.5Å、約9.0Å、または約10.0Åの距離である。例えば、図2およびセクション6.3を参照されたい。
【0090】
本明細書に記載のN-OSTの活性を確認するためのアッセイは、当業者によく知られており(例えば、ELISA、ウェスタンブロット)、セクション6.10および6.12に記載のアッセイを含む。いくつかの実施形態では、組換えN-OSTは、1個以上のアミノ酸の改変を含み、該アミノ酸は、その側鎖が、組換えN-OSTとN-グリコシル化キャリアタンパク質との複合体の構造モデルにおいて、結合したN-グリコシル化キャリアタンパク質のオリゴ糖または多糖成分の還元末端にある3つの末端単糖単位の1つから2.5〜4.0Åの距離内に位置するものであり、該組換えN-OSTは、還元末端にN-アセチル糖を欠くオリゴ糖または多糖をキャリアタンパク質に検出可能に連結することができ、かつ該N-OSTの活性は、セクション6.10または6.12に記載のアッセイによって確認することができる。いくつかの実施形態では、該改変はアミノ酸の置換である。
前記オリゴ糖および多糖は、本明細書に記載の任意のオリゴ糖または多糖を含むことができる。例えば、セクション6.4を参照されたい。
前記キャリアタンパク質は、本明細書に記載の任意のキャリアタンパク質を含むことができる。例えば、セクション6.5を参照されたい。
【0091】
いくつかの実施形態では、組換えN-OSTは、例えば、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、または10個以上のアミノ酸の改変を含み、該アミノ酸は、その側鎖が、N-OSTとグリコシル化キャリアタンパク質産物との複合体の構造モデルにおいて、結合したN-グリコシル化キャリアタンパク質のオリゴ糖または多糖成分の還元末端にある3つの末端単糖単位の1つから2.5〜4.0Åの距離内に位置するものである。
【0092】
いくつかの実施形態では、N-OSTとグリコシル化キャリアタンパク質産物との複合体の構造モデルにおいて、結合したN-グリコシル化キャリアタンパク質のオリゴ糖または多糖成分の還元末端にある3つの末端単糖単位の1つから2.5〜4.0Åの距離内にアミノ酸側鎖が位置する1個以上のアミノ酸の少なくとも1つまたは複数の改変は、N-OST膜貫通ドメインのペリプラズムループに位置する。いくつかの実施形態では、該ペリプラズムループはN-OSTの大きな外部ループ5 (EL5)である。いくつかの実施形態では、該ペリプラズムループは、PglBCjのEL5、PglBCjホモログのEL5、またはその天然に存在する変異体のEL5である(例えば、PglBCjホモログのリストについては図4および9を参照されたい)。
【0093】
N-OSTは、QLKFYxxRモチーフのような、保存された配列モチーフを含むことができる。例えば、図9を参照されたい。いくつかの実施形態では、組換えN-OSTは、QLKFYxxRモチーフ中の少なくとも1個のアミノ酸の改変を含む。いくつかの実施形態では、QLKFYxxRモチーフは、Q287LKFYxxR294モチーフである(例えば、配列番号1によるPglBCj参照)。いくつかの実施形態では、組換えN-OSTは、QLKFYxxRモチーフ中の少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、または少なくとも5個のアミノ酸の改変を含む。いくつかの実施形態では、QLKFYxxRモチーフは、PglBCjの、PglBCjホモログの、またはその天然に存在する変異体のQLKFYxxRモチーフである。
【0094】
いくつかの実施形態では、組換えN-OSTは、N-OSTとN-グリコシル化キャリアタンパク質との複合体の構造モデルにおいて、結合したN-グリコシル化キャリアタンパク質のオリゴ糖または多糖成分の還元末端にある3つの末端単糖単位の1つから2.5〜4.0Åの距離内にアミノ酸側鎖が位置する1個以上のアミノ酸の改変を含み、かつQLKFYxxRモチーフ中の1個以上のアミノ酸の改変をさらに含む。
【0095】
いくつかの実施形態では、アミノ酸の改変はアミノ酸の置換を含む。アミノ酸は、天然のタンパク質構成アミノ酸または人工アミノ酸に置き換えることができる。いくつかの実施形態では、アミノ酸の改変は、非保存アミノ酸の置換(すなわち、異なる生物由来のN-OST間で保存されていないアミノ酸の改変)を含む。いくつかの実施形態では、非保存アミノ酸は、N-オリゴサッカリルトランスフェラーゼの系統発生ファミリーのメンバーの90%未満、80%未満、70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、または10%未満において保存されている。いくつかの実施形態では、非保存アミノ酸は、N-オリゴサッカリルトランスフェラーゼの系統発生ファミリーのメンバーの約10%〜約90%の間、約20%〜約80%の間、約30%〜約70%の間、または約40%〜約60%の間で保存されている。
【0096】
いくつかの実施形態では、組換えN-OSTは、多糖によるキャリアタンパク質のグリコシル化のin vivoまたはin vitro速度を、組換えN-OSTの野生型形態の速度と比較して、約2倍〜約100倍、約5倍〜約80倍、約10倍〜約60倍、約10倍〜約20倍、または約20倍〜約40倍増加させることができる。いくつかの実施形態では、組換えN-OSTは、多糖によるキャリアタンパク質のグリコシル化のin vivoまたはin vitro速度を、組換えN-OSTの野生型形態の速度と比較して、2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、6倍以上、7倍以上、8倍以上、9倍以上、10倍以上、11倍以上、12倍以上、13倍以上、14倍以上、15倍以上、17倍以上、20倍以上、25倍以上、30倍以上、35倍以上、40倍以上、45倍以上、50倍以上、60倍以上、70倍以上、80倍以上、90倍以上、または100倍以上増加させることができる。
【0097】
いくつかの実施形態では、組換えN-OSTおよび該組換えN-OSTの野生型形態のグリコシル化の速度は、還元末端にN-アセチル糖を欠く多糖またはオリゴ糖によるキャリアタンパク質のグリコシル化の組換えN-OSTの速度と野生型N-OSTの速度を比較することによって、比較することができる。
【0098】
いくつかの実施形態では、還元末端にN-アセチル糖を欠く多糖またはオリゴ糖によるキャリアタンパク質のグリコシル化の組換えN-OSTの速度は、還元末端にN-アセチル糖を有する多糖またはオリゴ糖によるキャリアタンパク質のグリコシル化の野生型N-OSTの速度と比較される。
【0099】
いくつかの実施形態では、還元末端にN-アセチル糖を有する多糖またはオリゴ糖によるキャリアタンパク質のグリコシル化の野生型N-OSTの速度が、100%の相対速度として定義される。
【0100】
いくつかの実施形態では、還元末端にN-アセチル糖を欠く多糖またはオリゴ糖によるキャリアタンパク質のグリコシル化の組換えN-OSTの速度は、野生型N-OSTの相対速度の少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、または少なくとも80%である。
【0101】
いくつかの実施形態では、組換えN-OSTは、多糖によるキャリアタンパク質のグリコシル化のin vivoまたはin vitroでの収量を、該組換えN-OSTの野生型形態により達成される収量と比較して、約2倍〜約100倍、約5倍〜約80倍、約10倍〜約60倍、約10倍〜約20倍、または約20倍〜約40倍に増加させることができる。いくつかの実施形態では、組換えN-OSTは、多糖によるキャリアタンパク質のグリコシル化のin vivoまたはin vitroでの収量を、該組換えN-OSTの野生型形態により達成される収量と比較して、2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、6倍以上、7倍以上、8倍以上、9倍以上、10倍以上、11倍以上、12倍以上、13倍以上、14倍以上、15倍以上、17倍以上、20倍以上、25倍以上、30倍以上、35倍以上、40倍以上、45倍以上、50倍以上、60倍以上、70倍以上、80倍以上、90倍以上、または100倍以上に増加させることができる。
【0102】
いくつかの実施形態では、組換えN-OSTは、約1%〜約70%、約3%〜約65%、約5%〜約60%、約5%〜約55%、約10%〜約50%、約15%〜約45%、約20%〜約40%、または約25%〜約35%のキャリアタンパク質のin vivoグリコシル化レベルまたはin vitroグリコシル化レベルをもたらすことができる。いくつかの実施形態では、組換えN-OSTは、少なくとも1%、少なくとも3%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、または少なくとも70%のキャリアタンパク質のin vivoグリコシル化レベルまたはin vitroグリコシル化レベルをもたらすことができる。
【0103】
いくつかの実施形態では、キャリアタンパク質は2つ以上のN-グリコシル化コンセンサス配列を含む。いくつかの実施形態では、組換えN-OSTは、キャリアタンパク質中の全てのN-グリコシル化コンセンサス配列をin vitroまたはin vivoでグリコシル化することができる。いくつかの実施形態では、組換えN-OSTは、キャリアタンパク質中の全てのN-グリコシル化コンセンサス配列の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%をグリコシル化することができる。いくつかの実施形態では、組換えN-OSTは、キャリアタンパク質中の全てのN-グリコシル化コンセンサス配列の約10%〜約70%、約20%〜約60%、または約30%〜約50%をin vitroまたはin vivoでグリコシル化することができる。
【0104】
いくつかの実施形態では、キャリアタンパク質は1つ以上のN-グリコシル化コンセンサス配列を含む。いくつかの実施形態では、キャリアタンパク質はキャリアタンパク質の集団である。いくつかの実施形態では、組換えN-OSTは、キャリアタンパク質の集団のキャリアタンパク質中の全てのN-グリコシル化コンセンサス配列の少なくとも1%、少なくとも3%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、または少なくとも70%をin vitroまたはin vivoでグリコシル化することができる。いくつかの実施形態では、組換えN-OSTは、キャリアタンパク質の集団のキャリアタンパク質中の全てのN-グリコシル化コンセンサス配列の約10%〜約70%、約20%〜約60%、または約30%〜約50%をin vitroまたはin vivoでグリコシル化することができる。
【0105】
組換えN-OSTは、N-OSTを有する任意の生物に由来し得る。いくつかの実施形態では、組換えN-OSTは真核生物に由来する。いくつかの実施形態では、組換えN-OSTは原核生物に由来する。いくつかの実施形態では、組換えN-OSTは、以下の生物に由来する:カンピロバクター・ジェジュニ(C. jejuni)、カンピロバクター・コリ(C. coli)、カンピロバクター・ラリ(C. lari)、カンピロバクター・ウプサリエンシス(C. upsaliensis)、カンピロバクター・カーバス(C. curvus)、カンピロバクター・コンサイサス(C. concisus)、カンピロバクター・ホミニス(C. hominis)、カンピロバクター・グラシリス(C. gracilis)、カンピロバクター・シュウアエ(C.showae)、スルフリモナス・オートトロフィカ(Sulfurimonas autotrophica(S. autotrophica))、スルフリモナス・デニトリフィカンス(S. denitrificans)、スルフロスピリラム・デレイアヌム(Sulfurospirillum deleyianum(S. deleyianum))、スルフリカルバム・クジエンス(Sulfuricurvum kujiense(S. kujiense))、ナウチリア・プロフンディコラ(Nautilia profundicola(N. profundicola))、スルフボラム属菌種(Sulfuvorum sp.) NBC37-1、ウォリネラ・サクシノゲネス(Wolinella succinogenes(W. succinogenes))、カミニバクター・メディアトランティカス(Caminibacter mediatlanticus(C. mediatlanticus))、ニトラティルプター属菌種(Nitratiruptor sp.)SB155-2、ヘリコバクター・プロラム(Helicobacter pullorum (H.pullorum))、ヘリコバクター・カナデンシス(H. Canadensis)、ヘリコバクター・ウィンガメンシス(Helicobacter winghamensis)、デスルフロバクテリウム・サーモリトル(Desulfurobacterium thermolithotr (D. thermolithotr))、デスルホミクロビウム・バキュラツム(Desulfomicrobium baculatum(D. baculatum))、デスルホビブリオ・ブルガリス(Desulfovibrio vulgaris (D. vulgaris))、デスルホビブリオ・アルカリフィルス(D. alkaliphilus)、デスルホハロビウム・レトバエンス(Desulfohalobium retbaense (D. retbaense))、デフェリバクター・デスルフリカンス(Deferribacter desulfuricans (D. desulfuricans))、デスルホビブリオ・サレキシゲネス(D. salexigenes)、デスルホビブリオ・ピゲル(D. piger)、デスルホビブリオ・エスポエンシス(D. aespoeensis)、Cand. プニセイスピリラム・マリナム(Puniceispirillum marinum)、カルディテリビブリオ・ニトロレデュセンス(Calditerrivibrio nitroreducens (C. nitroreducens))またはメタノサーマス・フェルビダス(Methanothermus fervidus (M. fervidus))。
【0106】
いくつかの実施形態では、組換えN-OSTは、カンピロバクター属からの原核生物に由来する。いくつかの実施形態では、組換えN-OSTは、カンピロバクター・ジェジュニまたはカンピロバクター・ラリ由来である(例えば、C.ジェジュニ由来のpglB遺伝子産物PglBであるPglBCj、またはC.ラリ由来のPglBCl)。
【0107】
いくつかの実施形態では、組換えN-OSTは、組換えPglBCj、組換えPglBCjホモログ、または天然のPglBCj変異体の組換え型である。PglBCjホモログは、例えば図4および図6に例示されるような、天然のPglBCjホモログ、および非天然のPglBCjホモログを含むことができる。PglBCjホモログは、配列番号1のPglBCjに対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するタンパク質を含むことができる。
【0108】
いくつかの実施形態では、組換えN-OSTは、組換えPglBCl、組換えPglBClホモログ、または天然のPglBCl変異体の組換え型である。PglBClホモログは、例えば図4に例示されるような、天然のPglBClホモログ、および非天然のPglBClホモログを含むことができる。PglBClホモログは、配列番号2のPglBClに対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するタンパク質を含むことができる。
【0109】
いくつかのアミノ酸位置は、系統発生的なN-OSTファミリーの異なるメンバーにおいて保存されている。例えば、図4を参照されたい。いくつかのアミノ酸位置は、系統発生的なN-OSTファミリーのメンバーの少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%において保存されている。いくつかの実施形態では、保存されたアミノ酸位置にあるアミノ酸は、本明細書で提供される組換えN-OSTにおいて改変される。
【0110】
いくつかの実施形態では、組換え改変型N-OSTは、PglB断片、例えばPglBCj断片またはPglBCl断片を含む。いくつかの実施形態では、PglB断片は、全長PglBの少なくとも100個、少なくとも150個、少なくとも200個、少なくとも250個、少なくとも300個、少なくとも350個、少なくとも400個、少なくとも450個、少なくとも500個、少なくとも550個、少なくとも600個、または少なくとも650個の連続したアミノ酸を含む。
【0111】
(a) PglBCjの改変
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の改変型N-OSTは、改変された野生型N-OST、例えば野生型PglBCjである。いくつかの実施形態では、野生型PglBCjは、配列番号1の野生型PglBCj、またはその天然の変異体である:
【0112】
いくつかの実施形態では、PglBCjのアミノ酸Y77、S80、S196、N311、Y462、H479、K522、G476もしくはG477の1つ以上、またはこれらの任意の組み合わせ、が改変される。
【0113】
いくつかの実施形態では、PglBCjのアミノ酸N311が改変される。いくつかの実施形態では、N311の改変は、N311VまたはN311I置換である。いくつかの実施形態では、N311の改変は、N311V置換である。
【0114】
いくつかの実施形態では、PglBCjのアミノ酸N311およびY77が改変される。いくつかの実施形態では、Y77の改変は、Y77H、Y77T、Y77W、Y77R、Y77K、Y77A、またはY77G置換である。いくつかの実施形態では、Y77の改変はY77H置換である。
【0115】
いくつかの実施形態では、PglBCjのアミノ酸N311およびS80が改変される。いくつかの実施形態では、S80の改変は、S80R置換またはS80H置換である。いくつかの実施形態では、S80の改変はS80R置換である。
【0116】
いくつかの実施形態では、組換えPglBCjは、PglBCjのQ287LKFYxxR294モチーフの少なくとも1個のアミノ酸の改変を含む。いくつかの実施形態では、PglBCjのQ287、L288またはK289の少なくとも1個のアミノ酸が改変される。いくつかの実施形態では、組換えPglBCjは、Q287P、Q287K、Q287R、L288M、L288F、L288I、L288C、K289R、K289N、K289QまたはR294K置換を含む。
【0117】
別の実施形態では、N311V置換を含む組換えPglBCjが本明細書で提供される。
別の実施形態では、N311V置換およびY77H置換を含む組換えPglBCjが本明細書で提供される。
別の実施形態では、N311V置換およびS80R置換を含む組換えPglBCjが本明細書で提供される。
【0118】
別の実施形態では、Y77H置換およびQ287P置換を含む組換えPglBCjが本明細書で提供される。
別の実施形態では、S80R置換およびQ287P置換を含む組換えPglBCjが本明細書で提供される。
【0119】
別の実施形態では、N311V置換、S80R置換およびQ287P置換を含む組換えPglBCjが本明細書で提供される。
別の実施形態では、N311V置換、Y77H置換およびQ287P置換を含む組換えPglBCjが本明細書で提供される。
別の実施形態では、N311V置換、Y77H置換、S80R置換およびQ287P置換を含む組換えPglBCjが本明細書で提供される。
別の実施形態では、N311V置換、Y77H置換、S80R置換、Q287P置換およびK289R置換を含む組換えPglBCjが本明細書で提供される。
【0120】
別の実施形態では、N311V置換およびA699V置換を含む組換えPglBCjが本明細書で提供される。
別の実施形態では、K482R置換およびD483H置換を含む組換えPglBCjが本明細書で提供される。
【0121】
いくつかの実施形態では、置換は保存的アミノ酸置換(例えば、ある塩基性アミノ酸から別の塩基性アミノ酸への置換)であり得る。いくつかの実施形態では、置換は非保存的アミノ酸置換(例えば、塩基性アミノ酸から酸性アミノ酸への置換)であり得る。
【0122】
(b) PglBClの改変
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の改変型N-OSTは、改変された野生型N-OST、例えば野生型PglBCl(カンピロバクター・ラリのPglB)である。いくつかの実施形態では、野生型PglBClは、配列番号2の野生型PglBCl、またはその天然の変異体である:
【0123】
いくつかの実施形態では、PglBClのアミノ酸Y79、S82、N314、K488もしくはD489の1個以上、またはこれらの任意の組み合わせ、が改変される。
いくつかの実施形態では、PglBClのアミノ酸N314が改変される。いくつかの実施形態では、N314の改変は、N314VまたはN314I置換である。いくつかの実施形態では、N314の改変はN314V置換である。
【0124】
いくつかの実施形態では、PglBClのアミノ酸N314およびY797が改変される。いくつかの実施形態では、Y79の改変は、Y79H、Y79T、Y79W、Y79R、Y79K、Y79AまたはY79G置換である。いくつかの実施形態では、Y79の改変はY79H置換である。
いくつかの実施形態では、PglBClのアミノ酸N314およびS82が改変される。いくつかの実施形態では、S82の改変は、S82R置換またはS82H置換である。いくつかの実施形態では、S82の改変はS82R置換である。
【0125】
いくつかの実施形態では、組換えPglBClは、PglBClのQLKFYxxRモチーフの少なくとも1個のアミノ酸の改変を含む。いくつかの実施形態では、アミノ酸Q289が改変される。いくつかの実施形態では、組換えPglBClは、Q289P、Q289KまたはQ289R置換を含む。
【0126】
別の実施形態では、N314V置換を含む組換えPglBClが本明細書で提供される。
別の実施形態では、N314V置換およびY79H置換を含む組換えPglBClが本明細書で提供される。
別の実施形態では、N314V置換およびS82R置換を含む組換えPglBClが本明細書で提供される。
【0127】
別の実施形態では、Y79H置換およびQ289P置換を含む組換えPglBClが本明細書で提供される。
別の実施形態では、S82R置換およびQ289P置換を含む組換えPglBClが本明細書で提供される。
【0128】
別の実施形態では、N314V置換、S82R置換およびQ289P置換を含む組換えPglBClが本明細書で提供される。
別の実施形態では、N314V置換、Y79H置換およびQ289P置換を含む組換えPglBClが本明細書で提供される。
別の実施形態では、N314V置換、Y79H置換、S82R置換およびQ289P置換を含む組換えPglBClが本明細書で提供される。
【0129】
いくつかの実施形態では、置換は保存的アミノ酸置換(例えば、ある塩基性アミノ酸から別の塩基性アミノ酸への置換)であり得る。いくつかの実施形態では、置換は非保存的アミノ酸置換(例えば、塩基性アミノ酸から酸性アミノ酸への置換)であり得る。
【0130】
6.2 スクリーニングの方法
別の態様においては、本明細書に記載の組換えN-OSTのライブラリーをスクリーニングする方法が本明細書で提供され、この方法は、組換えN-OSTのライブラリーの各メンバーを、キャリアタンパク質および還元末端にN-アセチル糖を欠くオリゴ糖または多糖と接触させて、バイオコンジュゲートを生成させることを含む。
いくつかの実施形態では、該バイオコンジュゲートはN-グリコシル化されたキャリアタンパク質である。
【0131】
前記オリゴ糖および多糖は、本明細書に記載の任意のオリゴ糖または多糖を含み得る。例えば、セクション6.4を参照されたい。
前記キャリアタンパク質は、本明細書に記載の任意のキャリアタンパク質を含み得る。例えば、セクション6.5を参照されたい。
【0132】
いくつかの実施形態では、前記接触はin vitroで起こる。いくつかの実施形態では、前記接触はin vivoで起こる。いくつかの実施形態では、前記接触は本明細書に記載の宿主細胞内で起こる。いくつかの実施形態では、宿主細胞は原核細胞である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は大腸菌細胞である。
【0133】
いくつかの実施形態では、前記組換えN-OSTのライブラリーは、本明細書に記載の1つ以上の組換えN-OSTを含む。いくつかの実施形態では、前記組換えN-OSTのライブラリーは、少なくとも2、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも50、少なくとも75、少なくとも100、少なくとも150、少なくとも200、少なくとも250、少なくとも500、少なくとも750、または少なくとも1,000の組換えN-OSTを含む。いくつかの実施形態では、前記組換えN-OSTのライブラリーは、約2〜約1,000、約10〜約800、約50〜約600、約100〜約400、または約100〜約200の組換えN-OSTを含む。
【0134】
いくつかの実施形態では、前記方法は、バイオコンジュゲートの生産速度または収量を測定することをさらに含む。いくつかの実施形態では、前記方法は、バイオコンジュゲートのコンジュゲーションレベル(例えば、グリコシル化キャリアタンパク質のパーセントでのグリコシル化レベル)を測定することをさらに含む。バイオコンジュゲートの生産速度もしくは収量、またはバイオコンジュゲートのコンジュゲーションレベルを測定するための方法は、当技術分野で公知である。例えば、セクション6.9、セクション6.10、セクション6.12、および実施例2〜3を参照されたい。
いくつかの実施形態では、前記方法は、組換えN-OSTのライブラリーから1つ以上の組換えN-OSTを選択することをさらに含む。
【0135】
いくつかの実施形態では、前記1つ以上の組換えN-OSTは、該組換えN-OSTが野生型N-OSTの速度よりも約2倍〜約100倍、約5倍〜約80倍、約10倍〜約60倍、約10倍〜約40倍、約10倍〜約30倍、または約10倍〜約20倍速い速度でバイオコンジュゲートを生成する場合に、選択される。いくつかの実施形態では、前記1つ以上の組換えN-OSTは、該組換えN-OSTが野生型N-OSTの速度よりも2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、6倍以上、7倍以上、8倍以上、9倍以上、10倍以上、11倍以上、12倍以上、13倍以上、14倍以上、15倍以上、17倍以上、20倍以上、25倍以上、30倍以上、35倍以上、40倍以上、45倍以上、50倍以上、60倍以上、70倍以上、80倍以上、90倍以上、または100倍以上速い速度でバイオコンジュゲートを生成する場合に、選択される。
【0136】
いくつかの実施形態では、前記1つ以上の組換えN-OSTは、該N-OST変異体が野生型N-OSTと比較して約2倍〜約100倍、約5倍〜約80倍、約10倍〜約60倍、約10倍〜約40倍、約10倍〜約30倍、または約10倍〜約20倍の量のバイオコンジュゲートを生成する場合に、選択される。いくつかの実施形態では、前記1つ以上のN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ変異体は、該N-OST変異体が野生型N-OSTと比較して2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、6倍以上、7倍以上、8倍以上、9倍以上、10倍以上、11倍以上、12倍以上、13倍以上、14倍以上、15倍以上、17倍以上、20倍以上、25倍以上、30倍以上、35倍以上、40倍以上、45倍以上、50倍以上、60倍以上、70倍以上、80倍以上、90倍以上、または100倍以上の量のバイオコンジュゲートを生成する場合に、選択される。
【0137】
いくつかの実施形態では、前記1つ以上の組換えN-OSTは、該組換えN-OSTがin vitro(例えば、反応容器内)またはin vivo (例えば、宿主細胞内)でキャリアタンパク質の約1%〜約70%、約3%〜約65%、約5%〜約60%、約10%〜約55%、約15%〜約50%、約20%〜約45%、約20%〜約40%、または約25%〜約35%をグリコシル化する場合に、選択される。いくつかの実施形態では、前記1つ以上の組換えN-OSTは、該組換えN-OSTがin vitro (例えば、反応容器内)またはin vivo (例えば、宿主細胞内)でキャリアタンパク質の少なくとも1%、少なくとも3%、5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、または少なくとも70%をグリコシル化する場合に、選択される。
【0138】
別の態様においては、組換えN-OSTの野生型形態と比較して、改変された基質選択性を有する本明細書で提供する組換えN-OSTを同定する方法が本明細書で提供され、この方法は、1個以上のアミノ酸(例えば、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、または10個以上のアミノ酸)を置換することを含んでなり、該アミノ酸は、その側鎖が、組換えN-OSTとN-グリコシル化キャリアタンパク質との複合体の構造モデルにおいて、結合したN-グリコシル化キャリアタンパク質のオリゴ糖または多糖成分の還元末端にある3つの末端単糖単位の1つから2.5〜4.0Åの距離内に位置するものである。
【0139】
いくつかの実施形態では、N-OST変異体は改変された基質選択性をin vitroで有する。いくつかの実施形態では、N-OST変異体は改変された基質選択性をin vivoで有する。
【0140】
6.3 構造モデル
本明細書に開示される組換えN-OSTを説明するために使用される構造モデルは、組換えN-OSTと、結合したN-グリコシル化キャリアタンパク質との複合体を含み、当業者に公知の任意の方法を用いて得ることができる。例えば、構造モデルは、X線結晶学または核磁気共鳴分光法(NMR)を用いて得ることができる。タンパク質複合体の構造モデルを得るための代表的な方法は、例えば、Bernhard Rupp, Biomolecular Crystallography: Principles, Practice, and Application to Structural Biology, Garland Science, 1 edition (October 20, 2009); Eaton E. Lattman and Patrick J. Loll; Protein Crystallography: A Concise Guide, Johns Hopkins University Press; 1 edition (March 26, 2008); Arthur G. Palmer III and Wayne J. Fairbrother; Protein NMR Spectroscopy, Second Edition: Principles and Practice; Academic Press, 2 edition (December 28, 2005)に記載される。構造モデルは、例えば、N-OSTと結合N-グリコシル化キャリアタンパク質との複合体のX線構造モデルまたはNMR構造モデルであり得る。いくつかの実施形態では、構造モデルは、組換えN-OSTと結合N-グリコシル化キャリアタンパク質との複合体のホモロジーモデルであり得る。例えば、実施例1および図2を参照されたい。N-グリコシル化キャリアタンパク質のオリゴ糖または多糖成分およびキャリアタンパク質成分は、生成物コンフォメーションまたは基質コンフォメーションでモデル化することができる。
【0141】
本明細書に開示される組換えN-OSTを説明するために使用される構造モデルは、本明細書に開示される任意のN-OST、任意のキャリアタンパク質、または任意のオリゴ糖もしくは多糖を含み得る。例えば、セクション6.1、6.4および6.5を参照されたい。
【0142】
構造モデルは、全長組換えN-OSTまたはその断片のモデルを含むことができる。構造モデルは、例えば、組換えN-OST、組換え野生型N-OST、またはN-OSTを発現する生物から精製されたN-OSTを用いて、構築され得る。いくつかの実施形態では、構造モデルはN-OSTの触媒部位を含む。構造モデルは、N-OSTを有する任意の生物由来のN-OSTをモデル化することができる。構造モデルは、本明細書に記載の任意の組換えN-OSTをモデル化することができる。例えば、図4を参照されたい。いくつかの実施形態では、構造モデルは、実験的に解決されたC.ラリPglB (PDBid 3RCE)の構造をテンプレートとして用いて作成されるホモロジーモデルである。例えば、実施例1を参照されたい。構造モデルは、本明細書に記載のオリゴ糖もしくは多糖および/またはキャリアタンパク質を用いて構築され得る。構造モデルを構築するために使用されるN-OST、キャリアタンパク質およびオリゴ糖または多糖成分は、全てが同じ生物に由来してもよく、2種または3種の異なる生物に由来してもよい。
【0143】
いくつかの実施形態では、結合したN-グリコシル化キャリアタンパク質は、天然のオリゴ糖または多糖成分(N-OSTと同じ生物に由来するオリゴ糖または多糖成分)を含む。いくつかの実施形態では、結合したN-グリコシル化キャリアタンパク質は、異種のオリゴ糖または多糖成分(N-OSTとは異なる生物に由来するオリゴ糖または多糖成分)を含む。いくつかの実施形態では、結合したN-グリコシル化キャリアタンパク質は、カンピロバクター・ジェジュニの天然オリゴ糖または多糖成分(C.ジェジュニ由来のオリゴ糖または多糖成分)を含む。いくつかの実施形態では、結合したN-グリコシル化キャリアタンパク質は、C.ジェジュニの異種オリゴ糖または多糖成分(C.ジェジュニ由来ではないオリゴ糖または多糖成分)を含む。
【0144】
構造モデルにおいて、物理的距離、例えば、特定のN-OSTアミノ酸側鎖と、結合したN-グリコシル化キャリアタンパク質のオリゴ糖または多糖成分の還元末端の単糖単位との間の物理的距離は、当業者に公知の方法またはソフトウェアツールを用いて測定することができる。例えば、Chang, G. et al., An internal coordinate Monte-Carlo Method for Searching Conformational Space. J. Am. Chem. Soc, 1989, 111, 4379; Saunders, M., et al., Conformations of cycloheptadecane: A Comparison of Methods for Conformational Searching. J. Am. Chem. Soc. 1990, 112, 1419を参照されたい。
【0145】
6.4 オリゴ糖および多糖
本明細書で提供される組換えN-OSTによってキャリアタンパク質に連結され得るオリゴ糖は、2〜100の単糖単位を有することができ、例えば、2、4、6、8、10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90または100の単糖単位を有する。本明細書で提供される組換えN-OSTによってキャリアタンパク質に連結され得る多糖は、100を超える単糖単位を有することができ、例えば、101、110、150、200、300、400、500、600、700、800、900、1,000の単糖単位またはそれ以上を有する。
【0146】
キャリアタンパク質またはN-OSTは、本明細書に開示される任意のN-OSTまたは任意のキャリアタンパク質を含み得る。例えばセクション6.1および6.5を参照されたい。
【0147】
いくつかの実施形態では、オリゴ糖または多糖の還元末端の糖は、ペントース、ヘキソース、またはヘプトースである。いくつかの実施形態では、オリゴ糖または多糖の還元末端の糖は、アルドペントースまたはケトペントースである。いくつかの実施形態では、ペントースはD-アラビノース、D-リキソース、D-リボース、D-キシロース、D-リブロースまたはD-キシルロースである。いくつかの実施形態では、オリゴ糖または多糖の還元末端の糖は、アルドヘキソースまたはケトヘキソースである。いくつかの実施形態では、ヘキソースは、例えば、D-アロース、D-アルトロース、D-グルコース、D-マンノース、D-グロース、D-イドース、D-ガラクトース、D-タロース、D-プシコース、D-フルクトース、D-ソルボースまたはD-タガトースである。いくつかの実施形態では、オリゴ糖または多糖の還元末端の糖は、デオキシ糖またはジデオキシ糖、例えば、ラムノース、フコースまたはアベクォースなどである。いくつかの実施形態では、オリゴ糖または多糖の還元末端の糖は、アルドヘプトースまたはケトヘプトースである。いくつかの実施形態では、ヘプトースはマンノヘプツロースである。
【0148】
本明細書に記載の組換えN-OSTによってキャリアタンパク質に連結され得るオリゴ糖および多糖は、任意の生物、例えば原核生物または真核生物、に由来し得る。いくつかの実施形態では、オリゴ糖または多糖は、病原性生物、例えばヒト病原体または動物(例えば、家畜またはペット)病原体に由来する。いくつかの実施形態では、オリゴ糖または多糖は、細菌生物に由来する。いくつかの実施形態では、オリゴ糖または多糖は、大腸菌、サルモネラ属菌種(例:S.エンテリカ亜種エンテリカ(S. enterica subsp. enterica)、S.エンテリカ亜種サラマエ(S. enterica subsp. salamae)、S.エンテリカ亜種アリゾナエ(S. enterica subsp. arizonae)、S.エンテリカ亜種ディアリゾナエ(S. enterica subsp. diarizonae)、S.エンテリカ亜種ホウテナエ(S. enterica subsp. houtenae)、S.ボンゴリ(S. bongori)、およびS.エンテリカ亜種インディカ(S. enterica subsp. indica))、シュードモナス属菌種(緑膿菌)、クレブシエラ属菌種(例:肺炎桿菌)、アシネトバクター属、クラミジア・トラコマチス、コレラ菌、リステリア属菌種(例:L.モノサイトゲネス(L. monocytogenes))、レジオネラ・ニューモフィラ、パラ百日咳菌、鼻疽菌および類鼻疽菌、野兎病菌、カンピロバクター属菌種(C.ジェジュニ)、クロストリジウム・ディフィシル、黄色ブドウ球菌、化膿レンサ球菌、大腸菌、アガラクチア菌、髄膜炎菌、カンジダ・アルビカンス、インフルエンザ菌、エンテロコッカス・フェカリス、ボレリア・ブルグドルフェリ、髄膜炎菌、インフルエンザ菌、リーシュマニア・メジャーに由来し得る。
【0149】
いくつかの実施形態では、オリゴ糖または多糖は、抗原、例えば、ヒトまたは動物(例えば、家畜またはペット)において免疫原性であるエピトープを含む。いくつかの実施形態では、オリゴ糖または多糖は、以下の抗原を含む:大腸菌のO抗原(例えば、O1、O2、O3、O4、O5、O6、O7、O8、O9、O10、O11、O12、O13、O14、O15、O16、O17、O18、O19、O20、O21、O22、O23、O24、O25、O26、O27、O28、O29、O30、O32、O33、O34、O35、O36、O37、O38、O39、O40、O41、O42、O43、O44、O45、O46、O48、O49、O50、O51、O52、O53、O54、O55、O56、O57、O58、O59、O60、O61、O62、O63、O64、O65、O66、O68、O69、O70、O71、O73、O74、O75、O76、O77、O78、O79、O80、O81、O82、O83、O84、O85、O86、O87、O88、O89、O90、O91、O92、O93、O95、O96、O97、O98、O99、O100、O101、O102、O103、O104、O105、O106、O107、O108、O109、O110、O111、O112、O113、O114、O115、O116、O117、O118、O119、O120、O121、O123、O124、O125、O126、O127、O128、O129、O130、O131、O132、O133、O134、O135、O136、O137、O138、O139、O140、O141、O142、O143、O144、O145、O146、O147、O148、O149、O150、O151、O152、O153、O154、O155、O156、O157、O158、O159、O160、O161、O162、O163、O164、O165、O166、O167、O168、O169、O170、O171、O172、O173、O174、O175、O176、O177、O178、O179、O180、O181、O182、O183、O184、O185、O186、O187)、サルモネラ属菌種(S.エンテリカ亜種エンテリカ、S.エンテリカ亜種サラマエ、S.エンテリカ亜種アリゾナエ、S.エンテリカ亜種ディアリゾナエ、S.エンテリカ亜種ホウテナエ、S.ボンゴリ、またはS.エンテリカ亜種インディカの抗原およびOタイプ1〜67、[44]に詳述される)、シュードモナス属菌種(緑膿菌O血清型1〜20 [45])、クレブシエラ属菌種(例えば、肺炎桿菌血清型O1、O2 (および亜血清型)、O3、O4、O5、O6、O7、O8、O9、O10、O11、O12、[46])、アシネトバクター属のO抗原(例えば、A.バウマニ(A. baumannii)のO抗原、[47]で同定)、クラミジア・トラコマチスのO抗原(血清型A、B、C、D、E、F、G、H、I、J、K、L1、L2、L3)、コレラ菌のO抗原O1〜155、リステリア属菌種、特にL.モノサイトゲネス(L. monocytogenes)タイプ1、2、3、4およびそれらの亜血清型、レジオネラ・ニューモフィラ血清型1〜15のO抗原、パラ百日咳菌のO抗原、鼻疽菌および類鼻疽菌のO抗原、野兎病菌、カンピロバクター属菌種(C.ジェジュニ);クロストリジウム・ディフィシル(血清型A、G、H、K、S1、S4、D、Cd-5、K Toma et al. 1988、およびウェルシュ菌(C. perfringens)血清型A、B、C、DおよびE)の莢膜多糖、黄色ブドウ球菌タイプ5および8、化膿レンサ球菌(B群レンサ球菌莢膜血清型多糖)、大腸菌、アガラクチア菌(A群レンサ球菌莢膜多糖)、髄膜炎菌(血清型A、B、C、W、Y、X)、カンジダ・アルビカンス、インフルエンザ菌、エンテロコッカス・フェカリス莢膜多糖タイプI〜V;ならびに他の表面多糖構造、例えば、ボレリア・ブルグドルフェリ糖脂質([48])、髄膜炎菌ピリンOグリカン[49, 50]およびリポオリゴ糖(LOS)、インフルエンザ菌LOS、リーシュマニア・メジャーのリポホスホグリカン[51, 52]、腫瘍関連糖鎖抗原(マラリアのグリコシルホスファチジルイノシトール、結核菌のアラビノマンナン[53]。
【0150】
いくつかの実施形態では、オリゴ糖または多糖は、黄色ブドウ球菌(S. aureus)またはサルモネラ・エンテリカ血清型株(S. enterica sv.)の多糖である。いくつかの実施形態では、多糖は、黄色ブドウ球菌のCP5多糖またはサルモネラ・エンテリカ血清型ティフィムリウムのLT2多糖である。
【0151】
いくつかの実施形態では、オリゴ糖または多糖は、その還元末端にN-アセチル糖を含む。いくつかの実施形態では、還元末端にN-アセチル糖を含むオリゴ糖または多糖は、例えば、以下を含むことができる:大腸菌のO抗原(例えば、O1、O2、O3、O4、O5、O6、O7、O8、O9、O10、O11、O12、O13、O14、O15、O16、O17、O18、O19、O20、O21、O22、O23、O24、O25、O26、O27、O28、O29、O30、O32、O33、O34、O35、O36、O37、O38、O39、O40、O41、O42、O43、O44、O45、O46、O48、O49、O50、O51、O52、O53、O54、O55、O56、O57、O58、O59、O60、O61、O62、O63、O64、O65、O66、O68、O69、O70、O71、O73、O74、O75、O76、O77、O78、O79、O80、O81、O82、O83、O84、O85、O86、O87、O88、O89、O90、O91、O92、O93、O95、O96、O97、O98、O99、O100、O101、O102、O103、O104、O105、O106、O107、O108、O109、O110、O111、O112、O113、O114、O115、O116、O117、O118、O119、O120、O121、O123、O124、O125、O126、O127、O128、O129、O130、O131、O132、O133、O134、O135、O136、O137、O138、O139、O140、O141、O142、O143、O144、O145、O146、O147、O148、O149、O150、O151、O152、O153、O154、O155、O156、O157、O158、O159、O160、O161、O162、O163、O164、O165、O166、O167、O168、O169、O170、O171、O172、O173、O174、O175、O176、O177、O178、O179、O180、O181、O182、O183、O184、O185、O186、O187)、黄色ブドウ球菌の莢膜多糖(例:CP5またはCP8)、野兎病菌Schu4の莢膜多糖、肺炎レンサ球菌(S. pneumoniae capsules)の莢膜多糖(例:CP1、4、5、12、25、38、44、45または46)、髄膜炎菌ピリンOグリカン[49, 50]、鼻疽菌および類鼻疽菌のO抗原、パラ百日咳菌のO抗原、レジオネラ・ニューモフィラ血清型1〜15のO抗原、リステリア属菌種のO抗原、特にL.モノサイトゲネスのタイプ1、2、3、4のO抗原、シュードモナス属菌種(緑膿菌O血清型1〜20 [45])のO抗原、クレブシエラ属菌種(例えば、肺炎桿菌血清型O1、O2 (および亜血清型)、O3、O4、O5、O6、O7、O8、O9、O10、O11、O12、[46])のO抗原、赤痢菌属菌種(例えば、志賀赤痢菌、ソンネ赤痢菌、フレキシネル赤痢菌、ボイド赤痢菌)のO抗原、アシネトバクター属のO抗原(例えば、A.バウマニのO抗原、[47]で同定)、またはリステリア属菌種のO抗原。
【0152】
N-アセチル糖は、糖の1個以上の炭素原子にアミノ-アセチル(N-アセチル)置換基を含むことができる。例えば、N-アセチル糖は、グルコース単位などの単糖単位のC2原子にN-アセチル置換基を含むことができる(N-アセチルグルコサミン)。
【0153】
いくつかの実施形態では、オリゴ糖または多糖は、N-アセチル化されていない糖を還元末端に含む。いくつかの実施形態では、非N-アセチル化糖を還元末端に含むオリゴ糖または多糖は、例えば、大腸菌O20、サルモネラ属菌種(例えば、S.エンテリカ亜種エンテリカ、S.エンテリカ亜種サラマエ、S.エンテリカ亜種アリゾナエ、S.エンテリカ亜種ディアリゾナエ、S.エンテリカ亜種ホウテナエ、S.ボンゴリ、もしくはS.エンテリカ亜種インディカ、またはチフス菌(S. typhi))の抗原、タイプ1〜67のO抗原、A群レンサ球菌(化膿レンサ球菌)の莢膜多糖、B群レンサ球菌の莢膜多糖、肺炎レンサ球菌CPS血清型株(それらの莢膜遺伝子クラスター中のwchA、wcjGまたはwcjHをコードする、すなわちCP1、4、5、12、25、38、44、45、46を除く全ての血清型)の莢膜多糖、またはサルモネラ・エンテリカ血清型株のO抗原を含むことができる。
【0154】
いくつかの実施形態では、オリゴ糖または多糖は、黄色ブドウ球菌のCP5多糖もしくはサルモネラ・エンテリカ血清型ティフィムリウムのLT2多糖、コレラ菌のO抗原(例:O1〜155)、またはリステリア属菌種のO抗原(例:L.モノサイトゲネスのタイプ1、2、3、4)を含む。
【0155】
いくつかの実施形態では、オリゴ糖または多糖は、例えば、黄色ブドウ球菌血清型5、8の莢膜多糖、または緑膿菌O抗原血清型O2、O5、O11、O16のように、その還元末端にD-N-アセチルフコサミン(D-FucNAc)残基を含む。
【0156】
いくつかの実施形態では、オリゴ糖または多糖は、例えば、肺炎レンサ球菌(血清型1など)、ソンネ赤痢菌のO抗原、またはプレシオモナス・シゲロイデス(Plesiomonas shigelloides)O17由来の特定のオリゴ糖または多糖のように、その還元末端に4-アミノ-d-N-アセチルフコサミン(D-FucNAc4N)残基を含む。
【0157】
いくつかの実施形態では、オリゴ糖または多糖は、緑膿菌O抗原血清型O6、O1、または野兎病菌血清型Schu4のように、その還元末端にD-N-アセチルキノサミン(D-QuiNAc)残基を含む。
いくつかの実施形態では、オリゴ糖または多糖は、例えば、S.エンテリカLT2のように、その還元末端にガラクトース残基を含む。
【0158】
いくつかの実施形態では、オリゴ糖または多糖は、肺炎レンサ球菌莢膜多糖血清型5、大腸菌O1、O2、クロノバクター・サカザキ(Cronobacter sakazakii)O5、すなわち、β配置でL-ラムノースに1-4結合した還元末端D-GlcNAcを有する多糖およびオリゴ糖を含む。
【0159】
6.5 キャリアタンパク質
キャリアタンパク質は、本明細書で提供される組換えN-OSTによってオリゴ糖または多糖に連結され得る。例えば、セクション6.1を参照されたい。
【0160】
キャリアタンパク質は、任意の天然キャリアタンパク質(N-OSTと同じ生物に由来する)または任意の異種キャリアタンパク質(N-OSTとは異なる生物に由来する)であり得る。いくつかの実施形態では、キャリアタンパク質は免疫原である。キャリアタンパク質は全長タンパク質またはその断片であり得る。例示的なキャリアタンパク質としては、限定するものではないが、緑膿菌のエキソトキシンA (EPA)、CRM197、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、黄色ブドウ球菌の無毒化ヘモリシンA、クランピング因子A、クランピング因子B、大腸菌FimH、大腸菌FimHC、大腸菌熱不安定性エンテロトキシン、大腸菌熱不安定性エンテロトキシンの無毒化変異体、コレラ毒素Bサブユニット(CTB)、コレラ毒素、コレラ毒素の無毒化変異体、大腸菌satタンパク質、大腸菌satタンパク質のパッセンジャードメイン、C.ジェジュニのAcrA、およびC.ジェジュニの天然の糖タンパク質が含まれる。いくつかの実施形態では、キャリアタンパク質は緑膿菌のエキソトキシンA (EPA)である。
【0161】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組換えN-OSTによってN-グリコシル化されるキャリアタンパク質は、改変され、例えば、該タンパク質が低毒性となるように、かつ/またはグリコシル化を受けやすくなるように、改変される。いくつかの実施形態では、キャリアタンパク質は、そのグリコシル化部位の数が、例えば免疫原性組成物中の、そのバイオコンジュゲート形態での該タンパク質のより低濃度の投与を可能にする形で最大化されるように、改変される。したがって、特定の実施形態では、本明細書に記載のキャリアタンパク質は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10のグリコシル化部位、または該キャリアタンパク質に通常付随する数よりも多い(例えば、その天然/自然の、例えば「野生型」の状態でのキャリアタンパク質に付随するグリコシル化部位の数と比較して多い)グリコシル化部位を含むように改変される。いくつかの実施形態では、グリコシル化部位の導入は、該タンパク質の一次構造のどこかにグリコシル化コンセンサス配列(例えば、(i)コンセンサス配列Asn-X-Ser(Thr)、ここでXはProを除く任意のアミノ酸から独立して選択される;または(ii)コンセンサス配列D/E-X-N-Z-S/T、ここでXおよびZはProを除く任意のアミノ酸から独立して選択される)を挿入することによって達成される。このようなグリコシル化部位の導入は、例えば、該タンパク質の一次構造に新しいアミノ酸を付加する(グリコシル化部位が完全にまたは部分的に付加される)ことによって、またはグリコシル化部位を生成するために該タンパク質中の既存のアミノ酸を改変する(アミノ酸は該タンパク質に付加されないが、該タンパク質の所定のアミノ酸がグリコシル化部位を形成するように変異される)ことによって、達成され得る。当業者は、タンパク質のアミノ酸配列が当技術分野で公知の手法、例えばタンパク質をコードする核酸配列の改変を含む組換え法、を用いて容易に改変され得る、ことを認識するであろう。特定の実施形態では、グリコシル化コンセンサス配列は、キャリアタンパク質の特定の領域、例えば該タンパク質の表面構造に、該タンパク質のN末端もしくはC末端に、および/または該タンパク質の底部にジスルフィド架橋によって安定化されたループに、導入される。特定の実施形態では、古典的な5アミノ酸のグリコシル化コンセンサス配列は、より効率的なグリコシル化のためにリシン残基で伸長させることができ、したがって、挿入されるコンセンサス配列は、挿入される必要があるかまたはアクセプタータンパク質のアミノ酸に取って代わる、5、6または7個のアミノ酸をコードし得る。
N-OSTは、本明細書に開示された任意のN-OSTを含むことができる。例えば、セクション6.1を参照されたい。
【0162】
いくつかの実施形態では、キャリアタンパク質は、キャリアタンパク質の単離および/または同定を可能にするアミノ酸の配列である「タグ」を含む。例えば、本明細書に記載のキャリアタンパク質にタグを付加することは、そのタンパク質の精製、それゆえにタグ付きキャリアタンパク質を含むコンジュゲートワクチンの精製に有用であり得る。ここで使用できる例示的なタグには、ヒスチジン(HIS)タグ(例えば、ヘキサヒスチジンタグ、つまり6×Hisタグ)、FLAG-TAGおよびHAタグが含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、ここで使用されるタグは除去可能であり、それらがもはや必要とされなくなると、例えば該タンパク質が精製された後に、例えば化学物質または酵素的手段により除去される。
【0163】
6.6 核酸
別の態様においては、本明細書(例えば、セクション6.1)に記載の組換えN-OSTをコードする核酸が本明細書で提供される。
【0164】
いくつかの実施形態では、核酸は、アミノ酸Y77、S80、S196、N311、Y462、H479、K522、G476またはG477の1つ以上が改変された組換えPglBCjをコードする。
いくつかの実施形態では、核酸は、PglBCjのアミノ酸N311が改変されたPglBCjをコードする。いくつかの実施形態では、N311の改変は、N311VまたはN311I置換である。いくつかの実施形態では、N311の改変は、N311V置換である。
【0165】
いくつかの実施形態では、核酸は、アミノ酸N311およびY77が改変された組換えPglBCjをコードする。いくつかの実施形態では、Y77の改変は、Y77H、Y77T、Y77W、Y77R、Y77K、Y77A、またはY77G置換である。いくつかの実施形態では、Y77の改変は、Y77H置換である。
いくつかの実施形態では、核酸は、PglBCjのアミノ酸N311およびS80が改変された組換えPglBCjをコードする。いくつかの実施形態では、S80の改変は、S80R置換またはS80H置換である。いくつかの実施形態では、S80の改変は、S80R置換である。
【0166】
いくつかの実施形態では、核酸は、PglBCjのQ287LKFYxxR294モチーフの少なくとも1個のアミノ酸の改変を含む組換えPglBCjをコードする。いくつかの実施形態では、核酸は、PglBCjのQ287、L288またはK289の少なくとも1個のアミノ酸が改変された組換えPglBCjをコードする。いくつかの実施形態では、組換えPglBCjは、Q287P、Q287K、Q287R、L288M、L288F、L288I、L288C、K289R、K289N、K289QまたはR294K置換を含む。
【0167】
別の実施形態では、N311V置換を含む組換えPglBCjをコードする核酸が本明細書で提供される。
別の実施形態では、N311V置換およびY77H置換を含む組換えPglBCjをコードする核酸が本明細書で提供される。
別の実施形態では、N311V置換およびS80R置換を含む組換えPglBCjをコードする核酸が本明細書で提供される。
【0168】
別の実施形態では、Y77H置換およびQ287P置換を含む組換えPglBCjをコードする核酸が本明細書で提供される。
別の実施形態では、S80R置換およびQ287P置換を含む組換えPglBCjをコードする核酸が本明細書で提供される。
【0169】
別の実施形態では、N311V置換、S80R置換およびQ287P置換を含む組換えPglBCjをコードする核酸が本明細書で提供される。
別の実施形態では、N311V置換、Y77H置換およびQ287P置換を含む組換えPglBCjをコードする核酸が本明細書で提供される。
別の実施形態では、N311V変異、Y77H置換、S80R置換およびQ287P置換を含む組換えPglBCjをコードする核酸が本明細書で提供される。
【0170】
別の実施形態では、N311V置換、Y77H置換、S80R置換、Q287P置換およびK289R置換を含む組換えPglBCjをコードする核酸が本明細書で提供される。
別の実施形態では、N311V置換およびA699V置換を含む組換えPglBCjをコードする核酸が本明細書で提供される。
別の実施形態では、K482R置換およびD483H置換を含む組換えPglBCjをコードする核酸が本明細書で提供される。
【0171】
6.7 宿主細胞
別の態様においては、本明細書に記載の組換えN-OSTを含む宿主細胞が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、該宿主細胞は、本明細書に記載の2つ以上の組換えN-OST(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の組換えN-OST)を含む。
【0172】
別の態様においては、本明細書に記載の(例えば、本明細書、例えばセクション6.1に記載の組換えN-OSTをコードする)核酸を含む宿主細胞が本明細書で提供される。例えば、セクション6.6を参照されたい。いくつかの実施形態では、該宿主細胞は、本明細書に記載の2種以上の核酸(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10種またはそれ以上の核酸)を含む。
【0173】
いくつかの実施形態では、前記宿主細胞は、バイオコンジュゲート生産またはキャリアタンパク質N-グリコシル化に有用な1つ以上のさらなる酵素(例えば、グリコシルトランスフェラーゼ)を含む。いくつかの実施形態では、バイオコンジュゲート生産に有用なさらなる酵素の少なくとも1つは、組換え酵素である。いくつかの実施形態では、前記宿主細胞は、バイオコンジュゲート生産に有用な2つ以上のさらなる酵素(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上のさらなる酵素)を含む。
【0174】
いくつかの実施形態では、前記宿主細胞は原核細胞である。いくつかの実施形態では、前記宿主細胞は大腸菌細胞である。いくつかの実施形態では、前記宿主細胞は、本明細書に記載の組換えN-OSTを含む。例えば、セクション6.1を参照されたい。いくつかの実施形態では、前記宿主細胞は、キャリアタンパク質および本明細書に記載の組換えN-OSTを含む。例えば、セクション6.1および6.5を参照されたい。いくつかの実施形態では、前記宿主細胞は、キャリアタンパク質、本明細書に記載の組換えN-OST、および組換えグリコシルトランスフェラーゼを含む。いくつかの実施形態では、組換えN-OSTは組換えPglBCjである。例えば、セクション6.1(a)を参照されたい。
【0175】
特定の実施形態では、本明細書に記載のバイオコンジュゲートを生産するために使用される宿主細胞は、異種核酸、例えば1つ以上のキャリアタンパク質をコードする異種核酸および/または1つ以上のタンパク質をコードする異種核酸、例えば1つ以上のタンパク質をコードする遺伝子、を含むように操作される。いくつかの実施形態では、グリコシル化経路(例えば、原核生物および/または真核生物のグリコシル化経路)に関与するタンパク質をコードする異種核酸が、本明細書に記載の宿主細胞に導入される。このような核酸は、オリゴサッカリルトランスフェラーゼおよび/またはグリコシルトランスフェラーゼを含むがこれに限定されない、タンパク質をコードし得る。異種核酸(例えば、キャリアタンパク質をコードする核酸および/または他のタンパク質、例えばグリコシル化に関与するタンパク質をコードする核酸)は、当業者に公知の任意の方法、例えば、エレクトロポレーション、ヒートショックによる化学的形質転換、自然形質転換、ファージ形質導入、および接合を用いて、本明細書に記載の宿主細胞に導入することができる。いくつかの実施形態では、異種核酸は、プラスミドを用いて本明細書に記載の宿主細胞に導入され、例えば、異種核酸は宿主細胞内でプラスミド(例えば、発現ベクター)により発現される。いくつかの実施形態では、異種核酸は、国際特許出願公開公報WO2014/057109に記載される挿入方法を用いて、本明細書に記載の宿主細胞に導入される。
【0176】
特定の実施形態では、本明細書に記載の宿主細胞にさらなる改変を(例えば、組換え技術を使用して)導入することができる。例えば、競合または干渉する可能性があるグリコシル化経路の一部を形成するタンパク質をコードする(例えば、宿主細胞に組換えにより導入されるグリコシル化に関与する1つ以上の異種遺伝子と競合または干渉する)宿主細胞核酸(例えば、遺伝子)は、それらを不活性/機能不全にするように宿主細胞のバックグラウンド(ゲノム)において欠失または改変され得る(すなわち、欠失/改変された宿主細胞核酸は、機能性タンパク質をコードしないか、またはタンパク質を全くコードしない)。特定の実施形態では、核酸が本明細書に記載の宿主細胞のゲノムから欠失される場合、それらは望ましい配列、例えば糖タンパク質生産に有用な配列で置き換えられる。
【0177】
宿主細胞において欠失させることができる(場合によっては、他の所望の核酸配列で置き換えることができる)例示的な遺伝子には、以下が含まれる:糖脂質生合成に関与する宿主細胞の遺伝子、例えばwaaL (例えば、Feldman et al., 2005, PNAS USA 102:3016-3021参照)、リピドAコア生合成クラスター(waa)、ガラクトースクラスター(gal)、アラビノースクラスター(ara)、コラン酸(colonic acid)クラスター(wc)、莢膜多糖クラスター、ウンデカプレノール-p生合成遺伝子(例:uppS、uppP)、und-Pリサイクリング遺伝子、ヌクレオチド活性化糖生合成に関与する代謝酵素、腸内細菌共通抗原クラスター、およびgtrABSクラスターのようなプロファージO抗原修飾クラスター。
【0178】
本明細書に記載の宿主細胞は、本明細書に記載のN-グリコシル化キャリアタンパク質を生産することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の宿主細胞によって生産されるN-グリコシル化キャリアタンパク質は抗原であり、例えば、ワクチンに使用することができるウイルスまたは細菌の抗原である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の宿主細胞によって生産されるN-グリコシル化キャリアタンパク質は、本明細書に記載の任意のキャリアタンパク質であってよく、該キャリアタンパク質は、1つ以上の有益な特性を保有するように本明細書に記載の宿主細胞によって改変される;例えば、該キャリアタンパク質はN-グリコシル化される。
【0179】
以下の実施例のいくつかは、グラム陰性大腸菌宿主細胞における本明細書に記載の方法の適用を記載する;しかし、N-グリコシル化キャリアタンパク質を生産するために、古細菌、大腸菌以外の原核宿主細胞、および真核宿主細胞を含めて、当業者に公知の任意の宿主細胞を使用することができる。
【0180】
本明細書に記載の方法に従って使用できる例示的な原核宿主細胞としては、限定するものではないが、以下が挙げられる:エシェリヒア属(Escherichia)菌種、シゲラ属(Shigella)菌種、クレブシエラ属(Klebsiella)菌種、キサントモナス属(Xhantomonas)菌種、サルモネラ属(Salmonella)菌種、エルシニア属(Yersinia)菌種、ラクトコッカス属(Lactococcus)菌種、ラクトバシラス属(Lactobacillus)菌種、シュードモナス属(Pseudomonas)菌種、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)菌種、ストレプトマイセス属(Streptomyces)菌種、ストレプトコッカス属(Streptococcus)菌種、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)菌種、バシラス属(Bacillus)菌種、およびクロストリジウム属(Clostridium)菌種。
【0181】
特定の実施形態では、本明細書に記載の宿主細胞は、1つ以上のDNA配列が導入されたゲノムを含み、該DNA配列は、タンパク質をコードするか、またはタンパク質のN-グリコシル化に関与するオペロン/遺伝子クラスターを含む。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の宿主細胞は、以下のDNAの1つ以上が挿入されたゲノムを含む:N-OSTをコードするDNA、グリコシルトランスフェラーゼをコードするDNA、キャリアタンパク質をコードするDNA、rfb遺伝子クラスターを含むDNA、莢膜多糖遺伝子クラスターを含むDNA、および/またはエピメラーゼをコードするDNA。
【0182】
宿主細胞は、本明細書に記載の組換えN-OSTまたは本明細書に記載の組換えN-OSTをコードする核酸を含むことができ、それにより組換えN-OSTは、真核生物または原核生物を含む、N-OSTを有する任意の生物に由来し得る。いくつかの実施形態では、N-OSTタンパク質またはN-OSTをコードする核酸は、カンピロバクター属由来である(例えば、C.ジェジュニ由来のpglB遺伝子)。
【0183】
本明細書に記載の宿主細胞は、当技術分野で公知のグリコシルトランスフェラーゼまたは当技術分野で公知のグリコシルトランスフェラーゼをコードする核酸配列を含むことができる。いくつかの実施形態では、グリコシルトランスフェラーゼは、国際特許出願公開公報WO 2011/138361に記載されたグリコシルトランスフェラーゼであり、その開示内容はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。いくつかの実施形態では、グリコシルトランスフェラーゼはグラム陽性細菌由来であり、例えば、グリコシルトランスフェラーゼは黄色ブドウ球菌由来である。いくつかの実施形態では、グリコシルトランスフェラーゼは黄色ブドウ球菌由来の莢膜多糖5である。いくつかの実施形態では、グリコシルトランスフェラーゼは黄色ブドウ球菌由来の莢膜多糖8である。いくつかの実施形態では、グリコシルトランスフェラーゼはグラム陰性細菌、例えば大腸菌由来である。いくつかの実施形態では、グリコシルトランスフェラーゼは真核生物に由来する。
【0184】
本明細書に記載の宿主細胞は、当技術分野で公知のキャリアタンパク質を含むかまたは生産することができ、あるいは当技術分野で公知のキャリアタンパク質をコードする核酸配列を含むことができる。本明細書に記載の宿主細胞によって生産されるキャリアタンパク質は、少なくとも1つのN-グリコシル化コンセンサス配列を含み、例えば、(i) Asn-X-Ser(Thr)(ここでXはProを除く任意のアミノ酸から独立して選択される);または(ii) D/E-X-N-Z-S/T (ここでXおよびZはProを除く任意のアミノ酸から独立して選択される)のいずれかのコンセンサス配列を含む。したがって、宿主細胞は、N-グリコシル化コンセンサス配列をコードするDNA配列を含むことができる。宿主細胞は、セクション5.5に記載されるキャリアタンパク質を含めて、当技術分野で公知の任意のキャリアタンパク質を含むことができる。いくつかの実施形態では、キャリアタンパク質は、緑膿菌のエキソトキシンA (EPA)であり、少なくとも1つのN-グリコシル化コンセンサス配列を含むように改変されたEPAを含む。いくつかの実施形態では、キャリアタンパク質はコレラ毒素Bである。いくつかの実施形態では、キャリアタンパク質はAcrAである。いくつかの実施形態では、キャリアタンパク質はHlAである。いくつかの実施形態では、キャリアタンパク質はClfAである。
【0185】
6.8 バイオコンジュゲート
本明細書に記載のバイオコンジュゲートは、宿主細胞内で生産されたタンパク質(例えば、本明細書に記載の任意のキャリアタンパク質;例えば、セクション6.5)とオリゴ糖または多糖(例えば、本明細書に記載の任意のオリゴ糖または多糖;例えば、セクション[00201])とのコンジュゲート(複合体)であり、この場合には、宿主細胞機構がオリゴ糖または多糖を該タンパク質に連結する(例えば、N-結合)。いくつかの実施形態では、オリゴ糖または多糖は抗原(例えば、本明細書に記載の任意の抗原;例えば、セクション6.4参照)である。糖コンジュゲートは、バイオコンジュゲートだけでなく、他の手段によって、例えばタンパク質と糖抗原の化学結合によって調製された糖抗原(例えば、オリゴ糖および多糖)-タンパク質コンジュゲートをも含むことができる。
【0186】
本明細書に記載の組換えN-OST(例えば、セクション6.1参照)を使用して、N-グリコシル化キャリアタンパク質を含むバイオコンジュゲートを生産する宿主細胞を作出することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗原(例えば、オリゴ糖または多糖)でN-グリコシル化されたキャリアタンパク質を含むバイオコンジュゲートが本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、該キャリアタンパク質はEPAである。本明細書に記載のバイオコンジュゲートは、例えば、限定するものではないが、本明細書に記載の任意のキャリアタンパク質を含むことができる。本明細書に記載のバイオコンジュゲートは、例えば、限定するものではないが、本明細書に記載の任意のオリゴ糖または多糖を含むことができる。
【0187】
いくつかの実施形態では、異種C.ジェジュニグリコシル化キャリアタンパク質は、緑膿菌エキソトキシン(EPA)-志賀赤痢菌O1 (EPA-O1)、EPA-黄色ブドウ球菌莢膜多糖タイプ5 (EPA-CP5)、またはEPA-サルモネラ・エンテリカ(S. enterica)LT2 (EPA-LT2)である。
いくつかの実施形態では、EPAと、1種以上の異なる本明細書に記載のオリゴ糖または多糖とを含むバイオコンジュゲートが本明細書で提供される。
【0188】
いくつかの実施形態では、大腸菌O1、O2、O4、O6、O7、O8、O11、O15、O16、O17、O18、O20、O22、O25、O73、O75および/またはO83の1つ以上にコンジュゲートされたキャリアタンパク質を含むバイオコンジュゲートが本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、キャリアタンパク質はEPAである。
【0189】
いくつかの実施形態では、1種以上の異なる緑膿菌多糖にコンジュゲートされたキャリアタンパク質を含むバイオコンジュゲートが本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、キャリアタンパク質はEPAである。
【0190】
いくつかの実施形態では、1種以上の異なる肺炎桿菌多糖にコンジュゲートされたキャリアタンパク質を含むバイオコンジュゲートが本明細書で提供される。特定の実施形態では、キャリアタンパク質はEPAである。
【0191】
6.9 バイオコンジュゲートの生産方法
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組換えN-OST(例えば、セクション6.1参照)は、糖コンジュゲートなどの本明細書に記載のバイオコンジュゲート(例えば、セクション6.8参照)を生産するために使用され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組換えN-OSTは、コンジュゲートワクチン、すなわち、オリゴ糖または多糖(例えば、セクション5.4参照)と病原体(これに対してワクチンが設計される)のタンパク質抗原とを含むワクチン、を製造するために使用され得る。
【0192】
別の態様においては、本明細書に記載の宿主細胞(例えば、セクション6.7参照)を細胞培養培地中で培養することを含む、バイオコンジュゲートの生産方法が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、本明細書に記載の組換え改変型N-OSTをコードする核酸を含む(例えば、セクション6.1およびセクション6.6参照)。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、本明細書に記載のキャリアタンパク質をコードする核酸を含む(例えば、セクション6.5およびセクション6.6参照)。いくつかの実施形態では、キャリアタンパク質は1つ以上のN-グリコシル化コンセンサス配列を有する。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、グリコシルトランスフェラーゼをコードする核酸を含む(例えば、セクション6.6およびセクション6.7参照)。
【0193】
いくつかの実施形態では、バイオコンジュゲートは、N-グリコシル化されたキャリアタンパク質である。N-グリコシル化キャリアタンパク質は、本明細書に記載の任意のオリゴ糖または多糖を含めて、オリゴ糖または多糖成分を含むことができる。例えば、セクション[00201]を参照されたい。N-グリコシル化キャリアタンパク質は、本明細書に記載の任意のキャリアタンパク質を含むことができる。例えば、セクション6.5を参照されたい。いくつかの実施形態では、バイオコンジュゲートは、天然のC.ジェジュニN-グリコシル化ポリペプチド(C.ジェジュニオリゴ糖または多糖成分とC.ジェジュニキャリアタンパク質を含む)である。いくつかの実施形態では、バイオコンジュゲートは、異種C.ジェジュニグリコシル化ポリペプチド(C.ジェジュニ由来ではない多糖成分および/またはキャリアタンパク質を含む)である。いくつかの実施形態では、グリコシル化ポリペプチドは、その還元末端にN-アセチル糖を有しない。いくつかの実施形態では、グリコシル化ポリペプチドは、その還元末端にガラクトースを有する。
【0194】
いくつかの実施形態では、本開示の組換えN-OSTを含む宿主細胞を使用する場合は、該組換えN-OSTの野生型形態を含む宿主細胞を使用する場合よりも、前記バイオコンジュゲートが約2倍〜約100倍、約5倍〜約80倍、約10倍〜約60倍、約10倍〜約20倍、または約20倍〜約40倍速い速度で生産される。いくつかの実施形態では、本開示の組換えN-OSTを含む宿主細胞を使用する場合は、該組換えN-OSTの野生型形態を含む宿主細胞を使用する場合よりも、前記バイオコンジュゲートが2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、6倍以上、7倍以上、8倍以上、9倍以上、10倍以上、11倍以上、12倍以上、13倍以上、14倍以上、15倍以上、17倍以上、20倍以上、25倍以上、30倍以上、35倍以上、40倍以上、45倍以上、50倍以上、60倍以上、70倍以上、80倍以上、90倍以上、または100倍以上速い速度で生産される。
【0195】
いくつかの実施形態では、本開示の組換えN-OSTを含む宿主細胞を使用する場合は、該組換えN-OSTの野生型形態を含む宿主細胞を使用する場合よりも、前記バイオコンジュゲートが約2倍〜約100倍、約5倍〜約80倍、約10倍〜約60倍、約10倍〜約20倍、または約20倍〜約40倍高い収量で生産される。いくつかの実施形態では、本開示の組換えN-OSTを含む宿主細胞を使用する場合は、該組換えN-OSTの野生型形態を含む宿主細胞を使用する場合よりも、前記バイオコンジュゲートが2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、6倍以上、7倍以上、8倍以上、9倍以上、10倍以上、11倍以上、12倍以上、13倍以上、14倍以上、15倍以上、17倍以上、20倍以上、25倍以上、30倍以上、35倍以上、40倍以上、45倍以上、50倍以上、60倍以上、70倍以上、80倍以上、90倍以上、または100倍以上高い収量で生産される。
【0196】
いくつかの実施形態では、宿主細胞中のキャリアタンパク質の約1%〜約70%、約3%〜約65%、約5%〜約60%、約10%〜約55%、約15%〜約50%、約20%〜約45%、約25%〜約40%、または約30%〜約35%がグリコシル化されてバイオコンジュゲートを形成する。
【0197】
いくつかの実施形態では、宿主細胞中のキャリアタンパク質の少なくとも1%、少なくとも3%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、または少なくとも70%がグリコシル化されてバイオコンジュゲートを形成する。
【0198】
いくつかの実施形態では、前記方法は、宿主細胞培養物からバイオコンジュゲートを精製することをさらに含む。宿主細胞培養物から、N-グリコシル化キャリアタンパク質のような、バイオコンジュゲートを精製するための方法は、当技術分野で公知である。例えば、Jan-Christer Janson, Protein Purification: Principles, High Resolution Methods, and Applications. Wiley; 3 edition (March 22, 2011)を参照されたい。
【0199】
6.10 分析方法
様々な方法を用いて、本明細書に記載のバイオコンジュゲートまたはN-グリコシル化キャリアタンパク質の構造組成および糖鎖長を分析することができる。
【0200】
一実施形態では、ヒドラジン分解(hydrazinolysis)を用いてグリカンを分析することができる。最初に、メーカーの使用説明書(Ludger Liberate Hydrazinolysis Glycan Release Kit, Oxfordshire, UK)に従ってヒドラジンとインキュベーションすることにより、多糖をそれらのキャリアタンパク質から放出させる。求核試薬ヒドラジンは、多糖とキャリアタンパク質との間のグリコシド結合を攻撃して、結合したグリカンの放出を可能にする。この処理中にN-アセチル基は失われ、再N-アセチル化によって再構成される必要がある。遊離グリカンを炭素カラムで精製し、続いて還元末端でフルオロフォア2-アミノベンズアミドにより標識する(Bigge JC, Patel TP, Bruce JA, Goulding PN, Charles SM, Parekh RB. Nonselective and efficient fluorescent labeling of glycans using 2-amino benzamide and anthranilic acid. Anal Biochem. 1995 Sep 20;230(2):229-38)。標識した多糖を、RoyleらのHPLCプロトコル(Royle L, Mattu TS, Hart E, Langridge JI, Merry AH, Murphy N, Harvey DJ, Dwek RA, Rudd PM. An analytical and structural database provides a strategy for sequencing O-glycans from microgram quantities of glycoproteins. Anal Biochem. 2002 May 1;304(1):70-90)に従って、GlycoSep-Nカラム(GL Sciences社)で分離する。得られた蛍光クロマトグラムは、多糖の長さおよび反復単位の数を示す。構造情報は、個々のピークを収集し、続いてMS/MS分析を行うことによって、集めることができる。これにより、単糖組成および反復単位の配列を確認することができ、さらに多糖組成の不均質性を確認することができる。低分子量の特定のピークはMALDI-MS/MSで分析することができ、その結果はグリカン配列を確認するために使用される。各ピークは、一定数の反復単位からなるポリマーおよびその断片に対応する。したがって、クロマトグラムから、ポリマーの長さ分布を測定することが可能である。溶出時間はポリマーの長さの指標であり、蛍光強度はそれぞれのポリマーのモル量(molar abundance)と相関する。
【0201】
別の実施形態では、SDS-PAGEまたはキャピラリーゲル電気泳動を用いてグリカンおよび糖コンジュゲートを評価することができる。ここで合成されるO抗原グリカンのポリマー長は、直鎖状に組み立てられた反復単位の数によって定義される。これは、典型的なラダー様パターンが、グリカンを構成する異なる反復単位の数の結果であることを意味する。したがって、SDS PAGEまたはサイズ別に分離する他の技術では、隣り合う2つのバンドは、単一の反復単位だけが異なる。こうした離散型差異は、糖タンパク質をグリカンサイズについて分析する場合に利用される。非グリコシル化キャリアタンパク質および異なるポリマー鎖長を有する糖コンジュゲートは、それらの電気泳動移動度に従って分離する。糖コンジュゲート上に存在する第1の検出可能な反復単位数(n1)および平均反復単位数(naverage)を測定する。これらのパラメータを用いて、バッチ間の一貫性(consistency)または多糖安定性を実証することができる。
別の実施形態では、完全な糖コンジュゲートのサイズを測定するために、高質量MSおよびサイズ排除HPLCを適用することができる。
【0202】
別の実施形態では、多糖の収量を測定するために、アントロン-硫酸アッセイを使用することができる(Leyva A, Quintana A, Sanchez M, Rodriguez EN, Cremata J, Sanchez JC. Rapid and sensitive anthrone-sulfuric acid assay in microplate format to quantify carbohydrate in biopharmaceutical products: method development and validation. Biologicals. 2008 Mar;36(2):134-41. Epub 2007 Nov 26)。
【0203】
(a) グリコシル化部位利用の変化
特定のタンパク質における該部位の利用が変化することを示すために、グリコシル化部位利用を定量化することができる。そうするための方法を以下に示す。
【0204】
糖ペプチドLC-MS/MS:糖コンジュゲートをプロテアーゼ(複数可)で消化し、適切なクロマトグラフィー法(C18、親水性相互作用HPLC HILIC、GlycoSepNカラム、SE HPLC、AE HPLC)によりペプチドを分離し、MS/MSを用いて異なるペプチドを同定する。この方法は、化学的方法(スミス分解)または酵素的方法による事前の糖鎖短縮化の有り無しにかかわらず、用いることができる。215〜280nmでのUV検出を用いた糖ペプチドピークの定量は、グリコシル化部位利用の相対的測定を可能にする。
サイズ排除HPLC:より高いグリコシル化部位の利用は、SE HPLCカラムからのより早い溶出時間に反映される。(a)も参照のこと。
【0205】
(b) 均質性
糖コンジュゲートの均質性(結合した糖残基の均質性)は、グリカンの長さおよび流体力学的半径を測定する方法を用いて評価することができる。
【0206】
6.11 利点
本明細書に記載の組換えN-OST(例えば、セクション5.1参照)および本明細書に記載の組換えN-OST(例えば、セクション6.1参照)を使用する本明細書に記載の方法(例えば、セクション6.2および6.9参照)は、高度に均質なバイオコンジュゲート調製物(例えば、糖コンジュゲート調製物またはコンジュゲートワクチン製剤)の迅速で高収量の、大規模かつ低コストの発酵を可能にするため、特に商業上重要でありかつ適切である。本明細書に記載の組換えN-OSTは、コンジュゲートワクチンのような商業上および治療上価値のあるバイオコンジュゲートの経済的に実施可能な生産を可能にする。本明細書に記載の組換えN-OSTを使用する酵素的生産プロセスは、一般的に使用される化学合成法よりも均質で、再現可能なバイオコンジュゲート調製物をもたらすと期待される。本明細書に記載の組換えN-OSTを使用する生物工学的バイオコンジュゲート生産方法の再現性およびロバスト性は、生産コストの低減に寄与すると期待される。特に生物学的薬剤であるコンジュゲートワクチンの均質性は、医薬品の臨床的安全性に影響を及ぼすと一般に考えられている。
【0207】
6.12 利点を試験するための分析方法
収量: 収量は、最適制御された条件下でバイオリアクター内で増殖させた細菌生産培養物1リットルから得られる炭水化物(carbohydrate)量として測定される。糖コンジュゲートの精製後、炭水化物の収量は、アントロンアッセイまたは炭水化物特異的抗血清を用いるELISAのいずれかによって、直接測定することができる。間接測定は、タンパク質の量(周知のBCA、ローリー(Lowry)、またはブラッドフォード(bardford)アッセイで測定)およびグリカンの長さと構造を用いてタンパク質1グラムあたりの理論炭水化物量を計算することによって可能である。さらに、収量は、揮発性緩衝液から糖タンパク質調製物を乾燥させ、はかりを使って重さを量ることにより、測定することもできる。
【0208】
均質性: 均質性は、グリカンの長さおよび場合によりグリコシル化部位の数の変動性を意味する。この目的のために上記の方法を使用することができる。SE-HPLCは流体力学的半径の測定を可能にする。グリコシル化部位が少ないキャリアタンパク質と比較して、キャリアタンパク質のグリコシル化部位の数が多いほど、流体力学的半径の変動はより大きくなる。しかしながら、単一のグリカン鎖を分析する場合、それらは、より制御された長さのために、より均質であり得る。グリカンの長さは、ヒドラジン分解、SDS PAGEおよびCGEによって測定される。さらに、均質性はまた、特定のグリコシル化部位利用パターンがより広い/より狭い範囲に変化することを意味し得る。これらの要因は、糖ペプチドLC-MS/MSによって測定することができる。
本発明は、以下のパラグラフでさらに説明される:
【0209】
1. 組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(N-OST)が、還元末端にN-アセチル糖を欠くオリゴ糖または多糖を、N-グリコシル化コンセンサス配列でキャリアタンパク質に検出可能に連結することができることを特徴とする、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0210】
2. 還元末端にN-アセチル糖を欠くオリゴ糖または多糖をN-グリコシル化配列でキャリアタンパク質に連結するN-OST活性が、ELISAにより検出される、パラグラフ1に記載の方法。
【0211】
3. N-OST活性を示すELISAシグナルが、ELISAバックグラウンドシグナルを超えて>2σまたは>3σである場合に検出可能である、パラグラフ1または2に記載の方法。
【0212】
4. キャリアタンパク質が、N-OSTと同じ生物に由来する天然のキャリアタンパク質である、パラグラフ1〜3のいずれか1つに記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0213】
5. キャリアタンパク質が、N-OSTとは異なる生物に由来する異種キャリアタンパク質である、パラグラフ1〜3のいずれか1つに記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0214】
6. キャリアタンパク質が、緑膿菌のエキソトキシンA (EPA)、CRM197、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、黄色ブドウ球菌の無毒化ヘモリシンA、クランピング因子A、クランピング因子B、大腸菌FimH、大腸菌FimHC、大腸菌熱不安定性エンテロトキシン、大腸菌熱不安定性エンテロトキシンの無毒化変異体、コレラ毒素Bサブユニット(CTB)、コレラ毒素、コレラ毒素の無毒化変異体、大腸菌satタンパク質、大腸菌satタンパク質のパッセンジャードメイン、C.ジェジュニのAcrA、およびC.ジェジュニの天然糖タンパク質からなる群より選択される、パラグラフ5に記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0215】
7. キャリアタンパク質が少なくとも1つのグリコシル化モチーフを有する、パラグラフ1〜6のいずれか1つに記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0216】
8. 少なくとも1つのグリコシル化モチーフがD/E-Y-N-X-S/T (X,Y≠P)を含む、パラグラフ7に記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0217】
9. 少なくとも1つのグリコシル化モチーフがAsn-X-Ser(Thr)を含み、ここでXはProを除く任意のアミノ酸であり得る、パラグラフ7に記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0218】
10. 還元末端にN-アセチル糖を欠くオリゴ糖または多糖が抗原を含む、パラグラフ1〜9のいずれか1つに記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0219】
11. 前記抗原が、大腸菌抗原、サルモネラ属菌種抗原、シュードモナス属菌種抗原、クレブシエラ属菌種抗原、アシネトバクターO抗原、クラミジア・トラコマチス抗原、コレラ菌抗原、リステリア属菌種抗原、レジオネラ・ニューモフィラ血清型1〜15抗原、パラ百日咳菌抗原、鼻疽菌もしくは類鼻疽菌抗原、野兎病菌抗原、カンピロバクター属菌種抗原、クロストリジウム・ディフィシル抗原、化膿レンサ球菌抗原、アガラクチア菌抗原、髄膜炎菌抗原、カンジダ・アルビカンス抗原、インフルエンザ菌抗原、エンテロコッカス・フェカリス抗原、ボレリア・ブルグドルフェリ抗原、髄膜炎菌抗原、インフルエンザ菌抗原、リーシュマニア・メジャー抗原、ソンネ赤痢菌、または肺炎レンサ球菌抗原を含む、パラグラフ10に記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0220】
12. 還元末端にN-アセチル糖を欠くオリゴ糖または多糖が、黄色ブドウ球菌またはサルモネラ・エンテリカ血清型株の多糖である、パラグラフ1〜10のいずれか1つに記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0221】
13. 還元末端にN-アセチル糖を欠くオリゴ糖または多糖が、黄色ブドウ球菌のCP5多糖またはサルモネラ・エンテリカ血清型ティフィムリウムのLT2多糖である、パラグラフ12に記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0222】
14. 組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼが、カンピロバクター・ジェジュニのPglB (PglBCj)またはカンピロバクター・ラリのPglB (PglBCl)である、パラグラフ1〜13のいずれか1つに記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0223】
15. 組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼが1個以上のアミノ酸の改変を含み、該アミノ酸は、その側鎖が、該組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼとN-グリコシル化キャリアタンパク質との複合体の構造モデルにおいて、結合したN-グリコシル化キャリアタンパク質のオリゴ糖または多糖成分の還元末端にある3つの末端単糖単位の1つから2.5〜4.0Åの距離内に位置するものである、前記パラグラフのいずれか1つに記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0224】
16. 前記1個以上のアミノ酸の改変がアミノ酸の置換である、パラグラフ3に記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0225】
17. 前記1個以上のアミノ酸が、N-オリゴサッカリルトランスフェラーゼの系統発生ファミリーにおける非保存アミノ酸であるアミノ酸を含む、パラグラフ3または16に記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0226】
18. 非保存アミノ酸が、N-オリゴサッカリルトランスフェラーゼの系統発生ファミリーのメンバーの90%未満、80%未満、70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、または10%未満において保存されている、パラグラフ17に記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0227】
19. 組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼが2個以上のアミノ酸の改変を含む、パラグラフ14〜18のいずれか1つに記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0228】
20. 組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼが3個以上のアミノ酸の改変を含む、パラグラフ14〜18のいずれか1つに記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0229】
21. 組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼが4個以上のアミノ酸の改変を含む、パラグラフ14〜18のいずれか1つに記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0230】
22. 前記1個以上のアミノ酸の少なくとも1つが、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼの膜貫通ドメインのペリプラズムループに位置する、パラグラフ14〜21のいずれか1つに記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0231】
23. 膜貫通ドメインのペリプラズムループが大きな外部ループ5 (EL5)である、パラグラフ22に記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0232】
24. 組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼが、カンピロバクター・ジェジュニのPglB (PglBCj)またはカンピロバクター・ラリのPglB (PglBCl)であり、EL5がPglBCjまたはPglBClのEL5である、パラグラフ23に記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0233】
25. 組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼが、QLKFYxxRモチーフ中の1個以上のアミノ酸に変異をさらに含む、パラグラフ14〜24のいずれか1つに記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0234】
26. QLKFYxxRモチーフが、Q287LKFYxxR294モチーフである、パラグラフ25に記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0235】
27. Q287LKFYxxR294モチーフが、PglBCjのQ287LKFYxxR294モチーフである、パラグラフ26に記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0236】
28. 組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼが組換えPglBCjである、パラグラフ14〜27のいずれか1つに記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0237】
29. 結合したN-グリコシル化キャリアタンパク質のタンパク質成分が、C.ジェジュニのタンパク質である、パラグラフ14〜28のいずれか1つに記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0238】
30. 結合したN-グリコシル化キャリアタンパク質のタンパク質成分が、緑膿菌のエキソトキシンA (EPA)、CRM197、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、黄色ブドウ球菌の無毒化ヘモリシンA、クランピング因子A、クランピング因子B、大腸菌FimH、大腸菌FimHC、大腸菌熱不安定性エンテロトキシン、大腸菌熱不安定性エンテロトキシンの無毒化変異体、コレラ毒素Bサブユニット(CTB)、コレラ毒素、コレラ毒素の無毒化変異体、大腸菌satタンパク質、大腸菌satタンパク質のパッセンジャードメイン、C.ジェジュニのAcrA、およびC.ジェジュニの天然糖タンパク質からなる群より選択される、パラグラフ14〜28のいずれか1つに記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0239】
31. 結合したN-グリコシル化キャリアタンパク質のオリゴ糖または多糖成分が、その還元末端にガラクトース単糖を有する、パラグラフ28〜30のいずれか1つに記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0240】
32. PglBCjのY77、S80、S196、N311、Y462、H479、K482、D483、K522、G476およびG477からなる群より選択される1個以上のアミノ酸が改変されている、パラグラフ28〜31のいずれか1つに記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0241】
33. PglBCjのN311が改変されている、パラグラフ32に記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
34. 組換えPglBCjが置換N311Vまたは置換N311Iを含む、パラグラフ33に記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
35. 組換えPglBCjが置換N311Vを含む、パラグラフ34に記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0242】
36. 組換えPglBCjが、Y77およびS80からなる群より選択される1個以上のアミノ酸の改変をさらに含む、パラグラフ32に記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ変異体。
【0243】
37. 組換えPglBCjが、Y77H、Y77T、Y77W、Y77R、Y77K、Y77A、Y77G、S80RおよびS80Hからなる群より選択されるアミノ酸置換を含む、パラグラフ36に記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ変異体。
【0244】
38. 組換えPglBCjが、Y77HおよびS80Rからなる群より選択されるアミノ酸置換を含む、パラグラフ37に記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ変異体。
【0245】
39. 組換えPglBCjが、PglBCjのQ287LKFYxxR294モチーフの1個以上のアミノ酸のアミノ酸改変をさらに含む、パラグラフ28〜38のいずれか1つに記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ変異体。
【0246】
40. 組換えPglBCjが、Q287、L288、K289およびR294からなる群より選択される1個以上のアミノ酸のアミノ酸改変を含む、パラグラフ39に記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ変異体。
【0247】
41. 組換えPglBCjが、Q287P、Q287K、Q287R、L288M、L288F、L288I、L288C、K289R、K289N、K289QおよびR294Kからなる群より選択される1つ以上のアミノ酸置換を含む、パラグラフ40に記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ変異体。
【0248】
42. 組換えPglBCjがアミノ酸置換N311Vを含む、パラグラフ28〜31のいずれか1つに記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ変異体。
【0249】
43. 組換えPglBCjがアミノ酸置換Y77HおよびN311Vを含む、パラグラフ28〜31のいずれか1つに記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ変異体。
【0250】
44. 組換えPglBCjがアミノ酸置換S80RおよびN311Vを含む、パラグラフ28〜31のいずれか1つに記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ変異体。
【0251】
45. 組換えPglBCjがアミノ酸置換Q287PおよびY77HまたはQ287PおよびS80Rを含む、パラグラフ28〜31のいずれか1つに記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ変異体。
【0252】
46. 組換えPglBCjがアミノ酸置換S80R、Q287PおよびN311Vを含む、パラグラフ28〜31のいずれか1つに記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ変異体。
【0253】
47. 組換えPglBCjがアミノ酸置換Y77H、Q287PおよびN311Vを含む、パラグラフ28〜31のいずれか1つに記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ変異体。
【0254】
48. 組換えPglBCjがアミノ酸置換Y77H、S80R、Q287PおよびN311Vを含む、パラグラフ28〜31のいずれか1つに記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ変異体。
【0255】
49. 組換えPglBCjがアミノ酸置換Y77H、S80R、Q287P、K289RおよびN311Vを含む、パラグラフ28〜31のいずれか1つに記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ変異体。
【0256】
50. 組換えPglBCjがアミノ酸置換N311VおよびA699Vを含む、パラグラフ28に記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ変異体。
【0257】
51. 組換えPglBCjがアミノ酸置換K482RおよびD483Hを含む、パラグラフ28に記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ変異体。
【0258】
52. 組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼが、還元末端にN-アセチル糖を欠くオリゴ糖または多糖によるキャリアタンパク質のin vivo N-グリコシル化またはin vitro N-グリコシル化の収量を、N-グリコシル化キャリアタンパク質を検出するアッセイにおけるバックグラウンドレベルを超えて2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、6倍以上、7倍以上、8倍以上、9倍以上、10倍以上、11倍以上、12倍以上、13倍以上、14倍以上、15倍以上、17倍以上、20倍以上、25倍以上、30倍以上、35倍以上、40倍以上、45倍以上、50倍以上、60倍以上、70倍以上、80倍以上、90倍以上、または100倍以上のレベルに増加させることができる、前記パラグラフのいずれか1つに記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0259】
53. 組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼが、還元末端にN-アセチル糖を欠くオリゴ糖または多糖によるキャリアタンパク質のin vivo N-グリコシル化またはin vitro N-グリコシル化の速度を、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼの野生型形態と比較して2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、6倍以上、7倍以上、8倍以上、9倍以上、10倍以上、11倍以上、12倍以上、13倍以上、14倍以上、15倍以上、17倍以上、20倍以上、25倍以上、30倍以上、35倍以上、40倍以上、45倍以上、50倍以上、60倍以上、70倍以上、80倍以上、90倍以上、または100倍以上増加させることができる、前記パラグラフのいずれか1つに記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0260】
54. 組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ変異体が、還元末端にN-アセチル糖を欠く多糖を用いて、キャリアタンパク質の少なくとも1%、少なくとも3%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、または少なくとも70%をin vivoまたはin vitroでグリコシル化することができる、前記パラグラフのいずれか1つに記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0261】
55. 組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼとN-グリコシル化キャリアタンパク質との複合体の構造モデルにおいて、結合したN-グリコシル化キャリアタンパク質のオリゴ糖または多糖成分の還元末端にある3つの末端単糖単位の1つから2.5〜4.0Åの距離内にアミノ酸側鎖が位置する、1個以上のアミノ酸の改変を含む、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(N-OST)。
【0262】
56. 組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼが、カンピロバクター・ジェジュニのPglB (PglBCj)またはカンピロバクター・ラリのPglB (PglBCl)である、パラグラフ55に記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0263】
57. キャリアタンパク質が、緑膿菌のエキソトキシンA (EPA)、CRM197、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、黄色ブドウ球菌の無毒化ヘモリシンA、クランピング因子A、クランピング因子B、大腸菌FimH、大腸菌FimHC、大腸菌熱不安定性エンテロトキシン、大腸菌熱不安定性エンテロトキシンの無毒化変異体、コレラ毒素Bサブユニット(CTB)、コレラ毒素、コレラ毒素の無毒化変異体、大腸菌satタンパク質、大腸菌satタンパク質のパッセンジャードメイン、C.ジェジュニのAcrA、およびC.ジェジュニの天然糖タンパク質からなる群より選択される、パラグラフ55に記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
58. オリゴ糖または多糖成分が抗原を含む、パラグラフ55に記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0264】
59. 前記抗原が、大腸菌抗原、サルモネラ属菌種抗原、シュードモナス属菌種抗原、クレブシエラ属菌種抗原、アシネトバクターO抗原、クラミジア・トラコマチス抗原、コレラ菌抗原、リステリア属菌種抗原、レジオネラ・ニューモフィラ血清型1〜15抗原、パラ百日咳菌抗原、鼻疽菌もしくは類鼻疽菌抗原、野兎病菌抗原、カンピロバクター属菌種抗原、クロストリジウム・ディフィシル抗原、化膿レンサ球菌抗原、アガラクチア菌抗原、髄膜炎菌抗原、カンジダ・アルビカンス抗原、インフルエンザ菌抗原、エンテロコッカス・フェカリス抗原、ボレリア・ブルグドルフェリ抗原、髄膜炎菌抗原、インフルエンザ菌抗原、リーシュマニア・メジャー抗原、ソンネ赤痢菌、または肺炎レンサ球菌抗原を含む、パラグラフ58に記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0265】
60. 組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼが2個以上のアミノ酸の改変を含む、パラグラフ55〜59のいずれか1つに記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0266】
61. 組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼが3個以上のアミノ酸の改変を含む、パラグラフ55〜59のいずれか1つに記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0267】
62. 組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼが4個以上のアミノ酸の改変を含む、パラグラフ55〜59のいずれか1つに記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0268】
63. 前記1個以上のアミノ酸の少なくとも1つが、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼの膜貫通ドメインのペリプラズムループに位置する、パラグラフ55〜59のいずれか1つに記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0269】
64. 膜貫通ドメインのペリプラズムループが大きな外部ループ5 (EL5)である、パラグラフ63に記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0270】
65. 組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼが、カンピロバクター・ジェジュニのPglB (PglBCj)であり、EL5がPglBCjのEL5である、パラグラフ64に記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0271】
66. 組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼが、QLKFYxxRモチーフ中の1個以上のアミノ酸の改変をさらに含む、パラグラフ55〜59のいずれか1つに記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0272】
67. 組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼが、Q287LKFYxxR294モチーフ中の1個以上のアミノ酸の改変をさらに含む、パラグラフ66に記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0273】
68. QLKFYxxRモチーフがPglBCjのQ287LKFYxxR294モチーフである、パラグラフ66に記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
69. 前記改変がアミノ酸置換である、パラグラフ55〜68のいずれか1つに記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
70. アミノ酸置換が非保存アミノ酸の置換である、パラグラフ69に記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0274】
71. 結合したN-グリコシル化ポリペプチド産物が、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼと同じ生物に由来する天然のN-グリコシル化キャリアタンパク質である、パラグラフ55に記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0275】
72. N-グリコシル化キャリアタンパク質が異種N-グリコシル化キャリアタンパク質であり、その場合に、N-グリコシル化キャリアタンパク質のオリゴ糖もしくは多糖成分は、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼとは異なる生物に由来し、かつ/またはN-グリコシル化キャリアタンパク質のキャリアタンパク質成分は、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼとは異なる生物に由来する、パラグラフ55に記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0276】
73. 組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼが組換えPglBCjである、パラグラフ55に記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0277】
74. 結合したN-グリコシル化ポリペプチド産物が、天然C.ジェジュニグリコシル化キャリアタンパク質である、パラグラフ73に記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0278】
75. 結合したN-グリコシル化ポリペプチド産物が、異種C.ジェジュニグリコシル化キャリアタンパク質である、パラグラフ73に記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0279】
76. 異種C.ジェジュニグリコシル化キャリアタンパク質が、緑膿菌エキソトキシン(EPA)-志賀赤痢菌O1 (EPA-O1)、EPA-黄色ブドウ球菌莢膜多糖タイプ5 (EPA-CP5)、またはEPA-サルモネラ・エンテリカ(S. enterica)LT2 (EPA-LT2)である、パラグラフ75に記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0280】
77. 結合したN-グリコシル化キャリアタンパク質のオリゴ糖または多糖成分が、その還元末端にN-アセチル単糖を有しない、パラグラフ73に記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0281】
78. 結合したN-グリコシル化キャリアタンパク質のオリゴ糖または多糖成分が、その還元末端にガラクトース単糖を有する、パラグラフ73に記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0282】
79. PglBCjのY77、S80、S196、N311、Y462、H479、K482、D483、K522、G476およびG477からなる群より選択される1個以上のアミノ酸が改変されている、パラグラフ73〜78のいずれか1つに記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
80. PglBCjのN311が改変される、パラグラフ79に記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0283】
81. 組換えPglBCjが、N311VおよびN311Iからなる群より選択されるアミノ酸置換を含む、パラグラフ79に記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
82. 組換えPglBCjがアミノ酸置換N311Vを含む、パラグラフ81に記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0284】
83. PglBCjのY77およびS80からなる群より選択される1個以上のアミノ酸が改変されている、パラグラフ79に記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0285】
84. 組換えPglBCjが、Y77H、Y77T、Y77W、Y77R、Y77K、Y77A、Y77G、S80RおよびS80Hからなる群より選択されるアミノ酸置換を含む、パラグラフ83に記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0286】
85. 組換えPglBCjが、Y77HおよびS80Rからなる群より選択されるアミノ酸置換を含む、パラグラフ84に記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0287】
86. 組換えPglBCjが、PglBCjのQ287LKFYxxR294モチーフの1個以上のアミノ酸の改変をさらに含む、パラグラフ73〜86のいずれか1つに記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0288】
87. 組換えPglBCjが、Q287、L288およびK289からなる群より選択される1個以上のアミノ酸の改変を含む、パラグラフ86に記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0289】
88. 組換えPglBCjが、Q287P、Q287K、Q287R、L288M、L288F、L288I、L288C、K289R、K289N、K289QおよびR294Kからなる群より選択される置換を含む、パラグラフ87に記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
89. 組換えPglBCjが置換N311Vを含む、パラグラフ73〜78のいずれか1つに記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0290】
90. 組換えPglBCjが置換Y77Hおよび置換N311Vを含む、パラグラフ73〜78のいずれか1つに記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0291】
91. 組換えPglBCjが置換S80Rおよび置換N311Vを含む、パラグラフ73〜78のいずれか1つに記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0292】
92. 組換えPglBCjが置換Q287Pおよび置換Y77H、または置換Q287P変異および置換S80Rを含む、パラグラフ73〜78のいずれか1つに記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0293】
93. 組換えPglBCjが置換S80R、置換Q287Pおよび置換N311Vを含む、パラグラフ73〜78のいずれか1つに記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0294】
94. 組換えPglBCjが置換Y77H、置換Q287Pおよび置換N311Vを含む、パラグラフ73〜78のいずれか1つに記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0295】
95. 組換えPglBCjが置換Y77H、置換S80R、置換Q287Pおよび置換N311Vを含む、パラグラフ73〜78のいずれか1つに記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0296】
96. 組換えPglBCjが置換Y77H、置換S80R、置換Q287P、置換K289Rおよび置換N311Vを含む、パラグラフ73〜78のいずれか1つに記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0297】
97. 組換えPglBCjが置換N311Vおよび置換A699Vを含む、パラグラフ73〜78のいずれか1つに記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0298】
98. 組換えPglBCjが置換K482R変異および置換D483Hを含む、パラグラフ73〜78のいずれか1つに記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0299】
99. 組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼが、還元末端にN-アセチル糖を欠くオリゴ糖または多糖を、キャリアタンパク質に検出可能に連結することができる、パラグラフ55〜98のいずれか1つに記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0300】
100. 組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼが、還元末端にガラクトース単糖を有するオリゴ糖または多糖を、キャリアタンパク質に検出可能に連結することができる、パラグラフ99のいずれか1つに記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0301】
101. 前記オリゴ糖または多糖が、黄色ブドウ球菌またはサルモネラ・エンテリカ血清型株のオリゴ糖または多糖である、パラグラフ100に記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0302】
102. 前記オリゴ糖または多糖が、黄色ブドウ球菌CP5またはサルモネラ・エンテリカ血清型ティフィムリウムLT2のオリゴ糖もしくは多糖である、パラグラフ100に記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0303】
103. 組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼが、還元末端にN-アセチル糖を欠く多糖によるキャリアタンパク質のN-グリコシル化のin vivoまたはin vitro収量を、N-グリコシル化キャリアタンパク質を検出するアッセイにおけるバックグラウンドレベルを超えて2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、6倍以上、7倍以上、8倍以上、9倍以上、10倍以上、11倍以上、12倍以上、13倍以上、14倍以上、15倍以上、17倍以上、20倍以上、25倍以上、30倍以上、35倍以上、40倍以上、45倍以上、50倍以上、60倍以上、70倍以上、80倍以上、90倍以上、または100倍以上のレベルに増加させることができる、パラグラフ55〜102のいずれか1つに記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0304】
104. 組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼが、多糖によるキャリアタンパク質のN-グリコシル化のin vivoまたはin vitro収量を、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼの野生型形態と比較して2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、6倍以上、7倍以上、8倍以上、9倍以上、10倍以上、11倍以上、12倍以上、13倍以上、14倍以上、15倍以上、17倍以上、20倍以上、25倍以上、30倍以上、35倍以上、40倍以上、45倍以上、50倍以上、60倍以上、70倍以上、80倍以上、90倍以上、または100倍以上増加させることができる、パラグラフ55〜102のいずれか1つに記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0305】
105. 組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼが、少なくとも1%、少なくとも3%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、または少なくとも70%のキャリアタンパク質のin vivo N-グリコシル化レベルまたはin vitro グリコシル化レベルをもたらすことができる、パラグラフ55〜102のいずれか1つに記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。
【0306】
106. N311V置換を含む組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼPglBCj
107. N311V変異およびY77H置換を含む組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼPglBCj
108. N311V変異およびS80R置換を含む組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼPglBCj
【0307】
109. N311V変異およびY77H変異およびS80R置換を含む組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼPglBCj
110. N311V変異およびQ287P置換を含む組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼPglBCj
111. N311V変異、Y77H置換およびQ287P置換を含む組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼPglBCj
112. N311V変異、S80R置換およびQ287P置換を含む組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼPglBCj
113. N311V置換、Y77H置換、S80R置換およびQ287P置換を含む組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼPglBCj
114. N311V置換およびA669V置換を含む組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼPglBCj
【0308】
115. N311V置換、Y77H置換、S80R置換、Q287P置換およびK289R置換を含む組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼPglBCj
116. K482R置換およびD483H置換を含む組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼPglBCj
117. N311V置換およびA669V置換を含む組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼPglBCj
【0309】
118. N314V置換を含む組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼPglBCl (PglB C.lari)。
119. N314V変異およびY79H置換を含む組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼPglBCl
120. N314V変異およびS82R置換を含む組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼPglBCl
【0310】
121. N314V変異およびY79H変異およびS82R置換を含む組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼPglBCl
122. N314V変異およびQ289P置換を含む組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼPglBCl
123. N314V変異、Y79H置換およびQ289P置換を含む組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼPglBCl
124. N314V変異、S82R置換およびQ289P置換を含む組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼPglBCl
125. N314V置換、Y79H置換、S82R置換およびQ289P置換を含む組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼPglBCl
126. K488R置換およびD489H置換を含む組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼPglBCl
【0311】
127. パラグラフ1〜126のいずれか1つに記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼをコードする核酸。
128. パラグラフ1〜127のいずれか1つに記載の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼを含む宿主細胞。
129. 組換えグリコシルトランスフェラーゼをさらに含む、パラグラフ128に記載の宿主細胞。
130. パラグラフ128に記載の核酸を含む宿主細胞。
131. 宿主細胞が原核細胞である、前記パラグラフのいずれか1つに記載の宿主細胞。
132. 宿主細胞が大腸菌細胞である、パラグラフ131に記載の宿主細胞。
【0312】
133. 前記パラグラフのいずれか1つに記載の宿主細胞を細胞培養培地中で培養することを含む、バイオコンジュゲートの生産方法。
134. 宿主細胞がキャリアタンパク質および組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼを含む、パラグラフ133に記載の方法。
135. 宿主細胞が組換えグリコシルトランスフェラーゼをさらに含む、パラグラフ134に記載の方法。
136. 組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼが組換えPglBCjである、パラグラフ134に記載の方法。
【0313】
137. キャリアタンパク質が、緑膿菌のエキソトキシンA (EPA)、CRM197、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、黄色ブドウ球菌の無毒化ヘモリシンA、クランピング因子A、クランピング因子B、大腸菌FimH、大腸菌FimHC、大腸菌熱不安定性エンテロトキシン、大腸菌熱不安定性エンテロトキシンの無毒化変異体、コレラ毒素Bサブユニット(CTB)、コレラ毒素、コレラ毒素の無毒化変異体、大腸菌satタンパク質、大腸菌satタンパク質のパッセンジャードメイン、C.ジェジュニのAcrA、およびC.ジェジュニの天然糖タンパク質からなる群より選択される、パラグラフ134に記載の方法。
【0314】
138. バイオコンジュゲートがN-グリコシル化されたキャリアタンパク質である、パラグラフ134に記載の方法。
139. バイオコンジュゲートが天然C.ジェジュニN-グリコシル化キャリアタンパク質である、パラグラフ134に記載の方法。
140. バイオコンジュゲートが異種C.ジェジュニN-グリコシル化キャリアタンパク質である、パラグラフ134に記載の方法。
141. N-グリコシル化キャリアタンパク質が、そのオリゴ糖または多糖成分の還元末端にN-アセチル糖を有しない、パラグラフ138に記載の方法。
142. N-グリコシル化キャリアタンパク質が、そのオリゴ糖または多糖成分の還元末端にガラクトースを有する、パラグラフ141に記載の方法。
【0315】
143. 組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ変異体が、バイオコンジュゲートの生産速度を、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼの野生型形態により達成される速度と比較して2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、6倍以上、7倍以上、8倍以上、9倍以上、10倍以上、11倍以上、12倍以上、13倍以上、14倍以上、15倍以上、17倍以上、20倍以上、25倍以上、30倍以上、35倍以上、40倍以上、45倍以上、50倍以上、60倍以上、70倍以上、80倍以上、90倍以上、または100倍以上増加させることができる、前記パラグラフのいずれか1つに記載の方法。
【0316】
144. 組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ変異体が、バイオコンジュゲートの生産収量を、バイオコンジュゲート生産を測定するアッセイにおけるバックグラウンドレベルを超えて2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、6倍以上、7倍以上、8倍以上、9倍以上、10倍以上、11倍以上、12倍以上、13倍以上、14倍以上、15倍以上、17倍以上、20倍以上、25倍以上、30倍以上、35倍以上、40倍以上、45倍以上、50倍以上、60倍以上、70倍以上、80倍以上、90倍以上、または100倍以上のレベルに増加させることができる、前記パラグラフのいずれか1つに記載の方法。
【0317】
145. 宿主細胞中のキャリアタンパク質の少なくとも1%、少なくとも3%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、または少なくとも70%がグリコシル化されてバイオコンジュゲートを形成する、前記パラグラフのいずれか1つに記載の方法。
146. 宿主細胞培養物からバイオコンジュゲートを精製することをさらに含む、前記パラグラフのいずれか1つに記載の方法。
【0318】
147. 各組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼが1個以上のアミノ酸の改変を含む、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼのライブラリーをスクリーニングする方法であって、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼのライブラリーの各メンバーを、キャリアタンパク質および還元末端にN-アセチル糖を欠くオリゴ糖または多糖と接触させて、バイオコンジュゲートを生産することを含んでなる、方法。
【0319】
148. バイオコンジュゲートがN-グリコシル化されたキャリアタンパク質である、パラグラフ147に記載の方法。
149. 前記接触がin vitroで起こる、パラグラフ147または148に記載の方法。
150. 前記接触がin vivoで起こる、パラグラフ147または148に記載の方法。
151. 前記接触が宿主細胞内で起こる、パラグラフ150に記載の方法。
152. 宿主細胞が原核細胞である、パラグラフ151に記載の方法。
153. 宿主細胞が大腸菌細胞である、パラグラフ151に記載の方法。
【0320】
154. 組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼのライブラリーが、少なくとも2種、少なくとも5種、少なくとも10種、少なくとも15種、少なくとも20種、少なくとも25種、少なくとも50種、少なくとも75種、少なくとも100種、少なくとも150種、少なくとも200種、少なくとも250種、少なくとも500種、少なくとも750種、または少なくとも1,000種の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼを含む、パラグラフ147〜153のいずれか1つに記載の方法。
【0321】
155. 組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼのライブラリーが、パラグラフ1〜97のいずれか1つに記載の1つ以上の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼを含む、パラグラフ147に記載の方法。
【0322】
156. 組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼのライブラリーから1つ以上の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼを選択することをさらに含む、パラグラフ147に記載の方法。
【0323】
157. 組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼが、その野生型形態の速度よりも2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、6倍以上、7倍以上、8倍以上、9倍以上、10倍以上、11倍以上、12倍以上、13倍以上、14倍以上、15倍以上、17倍以上、20倍以上、25倍以上、30倍以上、35倍以上、40倍以上、45倍以上、50倍以上、60倍以上、70倍以上、80倍以上、90倍以上、または100倍以上速い速度でバイオコンジュゲートを生成する場合に、前記1つ以上の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼが選択される、パラグラフ156に記載の方法。
【0324】
158. N-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ変異体が、バイオコンジュゲートを検出するアッセイにおけるバックグラウンドレベルを超えて2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、6倍以上、7倍以上、8倍以上、9倍以上、10倍以上、11倍以上、12倍以上、13倍以上、14倍以上、15倍以上、17倍以上、20倍以上、25倍以上、30倍以上、35倍以上、40倍以上、45倍以上、50倍以上、60倍以上、70倍以上、80倍以上、90倍以上、または100倍以上高いレベルでバイオコンジュゲートを生成する場合に、前記1つ以上のN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼ変異体が選択される、パラグラフ156に記載の方法。
【0325】
159. 組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼが宿主細胞中のキャリアタンパク質の少なくとも1%、少なくとも3%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、または少なくとも70%をグリコシル化する場合に、前記1つ以上の組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼが選択される、パラグラフ156に記載の方法。
160. バイオコンジュゲートの生産速度または収量を分析することをさらに含む、パラグラフ133〜159のいずれか1つに記載の方法。
【0326】
161. N-オリゴサッカリルトランスフェラーゼの野生型形態と比較して、改変された基質特異性を有する組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼを同定する方法であって、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼとN-グリコシル化キャリアタンパク質との複合体の構造モデルにおいて、結合したN-グリコシル化キャリアタンパク質のオリゴ糖または多糖成分の還元末端にある3つの末端単糖単位の1つから2.5〜4.0Åの距離内にアミノ酸側鎖が位置する1個以上のアミノ酸を改変することを含んでなる、方法。
【0327】
162. 組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼの2個以上のアミノ酸を改変することを含む、パラグラフ161に記載の方法。
163. 組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼの3個以上のアミノ酸を改変することを含む、パラグラフ161に記載の方法。
164. 組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼの4個以上のアミノ酸を改変することを含む、パラグラフ161に記載の方法。
【0328】
165. 前記1個以上のアミノ酸の少なくとも1つが、組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼの膜貫通ドメインのペリプラズムループに位置する、パラグラフ161に記載の方法。
166. 膜貫通ドメインのペリプラズムループが大きな外部ループ5 (EL5)である、パラグラフ165に記載の方法。
【0329】
167. 組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼのQLKFYxxRモチーフ中の1個以上のアミノ酸を変異させることをさらに含む、パラグラフ161〜166のいずれか1つに記載の方法。
168. QLKFYxxRモチーフがQ287LKFYxxR294モチーフである、パラグラフ167に記載の方法。
【0330】
169. 結合したN-グリコシル化キャリアタンパク質が天然のN-グリコシル化キャリアタンパク質である、パラグラフ161〜168のいずれか1つに記載の方法。
【0331】
170. 結合したN-グリコシル化キャリアタンパク質が異種のN-グリコシル化キャリアタンパク質である、パラグラフ161〜168のいずれか1つに記載の方法。
171. 組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼが組換えPglBCjである、パラグラフ161に記載の方法。
【0332】
172. 結合したN-グリコシル化キャリアタンパク質が天然のC.ジェジュニN-グリコシル化キャリアタンパク質である、パラグラフ171に記載の方法。
【0333】
173. 結合したN-グリコシル化キャリアタンパク質が異種のC.ジェジュニN-グリコシル化キャリアタンパク質である、パラグラフ171に記載の方法。
【0334】
174. 結合したN-グリコシル化キャリアタンパク質のオリゴ糖または多糖成分が、その還元末端にN-アセチル単糖を有しない、パラグラフ171に記載の方法。
【0335】
175. 結合したN-グリコシル化キャリアタンパク質のオリゴ糖または多糖成分が、その還元末端にガラクトース単糖を有する、パラグラフ171に記載の方法。
【0336】
176. 組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼが、改変された基質選択性をin vitroで有する、前記パラグラフのいずれか1つに記載の方法。
【0337】
177. 組換えN-オリゴサッカリルトランスフェラーゼが、改変された基質選択性をin vivoで有する、前記パラグラフのいずれか1つに記載の方法。
【実施例】
【0338】
7. 実施例
7.1 実施例1:PglBCjおよびin silicoオリゴ糖結合のモデリング
C.ジェジュニPglBのホモロジーモデルのセットは、テンプレートとして実験的C.ラリ構造(PDBid 3RCE)を用いた異なるホモロジーモデリング法を用いて作成した。HHpredB法(Soeding J, Biegert A, Lupas AN. The HHpred interactive server for protein homology detection and structure prediction. Nucleic Acids Res. 2005:33, W244-8)で作成されたモデルが選択されたが、それは、その座標がQMEANモデル品質評価ツール(Benkert P, Biasini M, Schwede T. Toward the estimation of the absolute quality of individual protein structure models. Bioinformatics. 2011: 27:343-350)によってより良いスコアを付けられたためである。次に、Mg2+イオンおよびアクセプターペプチドをC.ラリ構造(PDBid 3RCE)から移した。細胞質膜中の該タンパク質の配向を可視化するために、リン脂質二重層モデルをC.ラリのOPMデータベースエントリーに従って誘導した(Lomize MA, Pogozheva ID, Joo H, Mosberg HI, Lomize AL. OPM database and PPM web server: resources for positioning of proteins in membranes. Nucleic Acids Res. 2012 40:D370-6)。C.ジェジュニの天然ヘプタサッカリドリガンドおよびS.エンテリカLT2多糖の第1反復単位を、電荷および互変異性体を考慮してパラメータ化し、低エネルギーコンフォメーションを作成させた(Shelley JC, Cholleti A, Frye LL, Greenwood JR, Timlin MR, Uchimaya M: J Comput Aided Mol Des. 2007, (12):681-91)。次いで、これらの低エネルギーコンフォメーションをモデルに入れて、立体構造的にサンプリングした(Kolossvary, I.; Guida, W. C. Low-mode Conformational Search Elucidated. Application to C39H80 and Flexible Docking of 9-Deazaguanine Inhibitors to PNP. J. Comput. Chem. 1999, 20, 1671)。サッカリドは自由に動く基礎構造と定義され、全てのタンパク質骨格原子と、OS周囲の半径6Åの全ての原子に位置制約(position constraint)を加えた。第1サッカリド単位とASP-Nとの間のCO-NおよびN-C1結合に距離拘束(distance constraint)を適用した。全原子水モデル(full atom water model)および35kcal mol-1ウィンドウを含むOPLS (Kaminski, G. A.; Friesner, R. A.; Tirado-Rives, J.; Jorgensen, W. J. J. Phys. Chem. B 2001, 105, 6474)を適用して、1000ステップのコンフォメーションサンプリングをセットアップし、可能性があるコンフォメーションをスクリーニングして、21kJ mol-1のより狭いエネルギーウィンドウを用いて同様のプロトコルによりリファインした。
【0339】
変異導入の標的としてのPglBCjの潜在的なオリゴ糖相互作用残基の選択は、ホモロジーモデルの作成を必要とし、該モデルは、テンプレートとしてC.ラリPglB (PDBid 3RCE)の実験的に解決された構造を用いて作成された。天然C.ジェジュニN-グリカン基質の、および異種S.エンテリカLT2多糖の第1反復単位の、PglBCjへの結合がシミュレートされた。この研究で分析された、天然オリゴ糖基質および2つの異種多糖の反復単位の単糖サブユニット組成を図1に示す。オリゴ糖構造は、アクセプターペプチド内のアスパラギン残基のアミド窒素に共有結合している間に立体構造的にサンプリングされた。該酵素およびそれ故にリガンドのコンフォメーションは、生成物様(product-like)である、すなわち活性部位からの放出の直前である、と仮定された。したがって、該構造モデルは、ウンデカプレニルピロリン酸結合オリゴ糖(OS)基質の初期結合の要因のいずれも考慮していない。図2Aには、C.ジェジュニOSおよびS.エンテリカLT2の第1反復単位について、予測されたコンフォメーションの例が示される。タンパク質残基との全体的な相互作用および結合部位における相対的な配向は、これら2つのオリゴ糖間でかなり異なっていた。熱力学的に好ましいコンフォメーションのスナップショットを図2Bおよび図2Cに示す。天然OS基質は、それ自体に、および野生型PglBCjの周囲の残基に、多数の水素結合パートナーを提供したが、LT2 O抗原の反復単位は同様の相互作用を欠いており、炭水化物基質の活性部位への乏しい結合が原因で低い転移効率がもたらされる機構モデルを支持している。LT2 O抗原の反復単位は、N-アセチル置換基を欠く4つのヘキソースから構成され(図1)、水素結合形成の可能性を制限している。
【0340】
PglBWT配列内の変異導入位置を選択するために、作成されたモデルを使用して天然C.ジェジュニN-グリカンまでに2.5〜4Åの距離に位置するアミノ酸側鎖を同定した。次の残基がこの基準に一致した:Y77、S80、S196、N311、Y462、H479およびK522 (図2B)。G476およびG477の場合には、ポリペプチド骨格のカルボニル酸素原子が最も内側の糖に近い距離にあると予測された(図2B)。
【0341】
7.2 実施例2:予測された糖相互作用残基の変異導入
本研究で使用した細菌株およびプラスミドを表1に記載する。大腸菌W3110 waaLを、in vivoグリコシル化実験でEPA-C.ジェジュニOSおよびEPA-赤痢菌O1糖コンジュゲート、ならびにEPA-CP5を生産させるための宿主株として使用した。LT2多糖を生産しかつ機能性waaL遺伝子を欠くS.エンテリカ血清型ティフィムリウムSGSC228をLT2-EPA生産のために使用した。ウルトラコンピテント大腸菌細胞を、構築されたプラスミドライブラリーおよび変異体の初期形質転換に使用した。大腸菌DH5αをプラスミドの生産および貯蔵のための標準宿主として使用した。
【0342】
【表1】
【0343】
コドン最適化したPglBは、低コピープラスミドpEXT21から発現させて、遺伝子合成サービス会社(Genescript社)から入手した。pglBライブラリー構築のためのテンプレートプラスミドは、pGVXN925からのコドン最適化pglB-HAを、制限部位KpnIおよびBamHIを用いて、pACT3KanにPCRサブクローニングし(pGVNX1049)、続いてQuikChangeによってHAペプチドタグをコードする配列の前にTAA停止コドンを挿入することによって構築した(pGVNX1050)。lacIリプレッサー遺伝子を欠くサイズ縮小したpACT3Kan由来のテンプレートプラスミドpGVXN1413 (PglBの半構成的発現)は、pGVXN1050のKpnI-BamHI断片(野生型PglBをコードする)をpGVXN1415のBamHI-KpnIベクター骨格断片にライゲーションすることによって構築した。第2ラウンドライブラリー用のサイズ縮小テンプレートプラスミドpGVXN1418 (PglB N311V)は、pGVXN1050のAscI-BamHI断片(wt pglB遺伝子の最後の3分の1)をpGVXN1415のBamHI-AscI断片にライゲーションすることによって構築した。全てのプラスミドをDNA配列決定によって検証した。
【0344】
プラスミドの維持を確実にするために、全ての増殖培地に適切な抗生物質を添加した(アンピシリン, Amp: 100mg L-1、クロラムフェニコール, Cm: 10mg L-1、カナマイシン, Kan: 30mg L-1、スペクチノマイシン(Spectimomycin), Sp: 80mg L-1、テトラサイクリン, Tet: 20mg L-1)。
【0345】
変異導入プライマーおよび配列決定サービスは、Microsynth社(Balgach, スイス)から入手した。PglB変異体およびライブラリーは、テンプレートとしてpGVXN1050、pGVXN1415またはpGVXN1418を用いてQuikChangeにより構築した。所望の変異を配列決定によって確認した。
【0346】
各プライマー対のフォワードプライマーの配列のみを得て、それぞれの逆相補配列をリバースプライマーのために使用した。変異させた位置(複数可)の縮重コドンには下線が引かれている。N311の飽和変異導入: 5'-GC TTC ATG TAC TTC AAC GTT NNK CAG ACG ATC CAA GAA GTG G-3' (配列番号3)、Y77の飽和変異導入: 5'-CAT CAG CCG AAC GAT CTG AGT NNK TAC GGT AGC TCT CTG TCC G-3' (配列番号4)、G476-G477の4アミノ酸(Ala, Ser, Cys, Gly)ランダム化: 5'-C GAT GTT AAA ACG CTG GTC GAC KST KST AAA CAC CTG GGC AAG G-3' (配列番号5)、S80の飽和変異導入: 5'-CG AAC GAT CTG AGT TAT TAC GGT NNK TCT CTG TCC GCG CTG ACC-3' (配列番号6)、Q287の飽和変異導入: 5'-GGT GTT GAT CCG ATT CTG TAC NNK CTG AAA TTT TAT ATC TTC CGC TCA G-3' (配列番号7)、L288の飽和変異導入: 5'-GTT GAT CCG ATT CTG TAC CAG NNK AAA TTT TAT ATC TTC CGC TCA GAT G-3' (配列番号8)、K289の飽和変異導入: 5'-GAT CCG ATT CTG TAC CAG CTG NNK TTT TAT ATC TTC CGC TCA GAT GAA TCG-3' (配列番号9)、F290の飽和変異導入: 5'-CCG ATT CTG TAC CAG CTG AAA NNK TAT ATC TTC CGC TCA GAT GAA TCG-3' (配列番号10)、Y291の飽和変異導入: 5'-CG ATT CTG TAC CAG CTG AAA TTT NNK ATC TTC CGC TCA GAT GAA TCG-3' (配列番号11)、R294の飽和変異導入: 5'-G TAC CAG CTG AAA TTT TAT ATC TTC NNK TCA GAT GAA TCG GCA AAC CTG-3' (配列番号12)。第1ラウンドライブラリーは、テンプレートとして野生型PglBプラスミドpGVXN1050またはpGVXN1413を用いて構築した。第2ラウンドライブラリーは、テンプレートとしてpGVXN1418 (PglB N311V)またはpGVXN1930 (PglB-HA N311V)を用いて構築した。初期の変異体ライブラリーは、テンプレートプラスミドとしてpGVXN1050に基づいていた。しかしながら、このようなライブラリーは、もとのpACT3配列中に存在する反復配列での組換え現象のために、2.1kbの小さいベクター骨格を有する変異体プラスミドを繰り返しもたらすことが分かった。サイズの低下はlacIリプレッサー遺伝子の欠損につながり、これがPglBの半構成的発現およびEPA-CP5レベルの2倍の増加を促した(他の場所で発表)。このような望ましくない組換えを回避するために、後のライブラリーのテンプレートとしてpGVXN1413、pGVXN1418およびpGVXN1930を使用した。
【0347】
中立的なおよびわずかに有益な第2ラウンド変異型のシャッフルされたライブラリーは、複数部位特異的変異導入(Multi Site-Directed Mutagenesis)キットをメーカー(Stratagene社)の説明書に従って用いて構築した。3つのオリゴヌクレオチドの混合物を使用した:Y77領域を標的とするプライマー5'-CAT CAG CCG AAC GAT CTG AGT YMT TAC GGT MGT TCT CTG TCC GCG CTG AC-3' (配列番号13)およびEL5領域を標的とするプライマー5'-C GGT GTT GAT CCG ATT CTG TAC MVG WTK MAK TTT TAT ATC TTC CGC TCA GAT GAA TCG -3'と5'-C GGT GTT GAT CCG ATT CTG TAC MVGWTK CGT TTT TAT ATC TTC CGC TCA GAT GAA TCG -3' (配列番号14)の4:1モル比混合物。改善されたPglB変異体N311V (pGVXN1418)をテンプレートとして使用した。
【0348】
野生型クローンが20%未満であるライブラリーのみをスクリーニングに使用した。プラスミドライブラリーは、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に少なくとも1000個のXL10-Goldコロニー(シャッフルされたライブラリーについては5000個のコロニー)を再懸濁し、続いて標準ミニプレップ(mini-prep)キットでプラスミドを精製することにより、作製した。標準的なエレクトロポレーション法を用いて、大腸菌およびS.エンテリカ発現株にプラスミドライブラリーを導入して形質転換した。
【0349】
変異体ライブラリーおよび個々の変異型プラスミドは、封入体の形成を減少させるために誘導時に添加されるIPTGの濃度を30μMに下げたことを除いて、以前に記載されたように96ディープウェルプレートでスクリーニングした。PglB変異型プラスミドは、化学的にコンピテントにした大腸菌DH5αへのプラスミド調製物の再形質転換およびカナマイシン耐性のみについての選択により、発現株から単離した。変異は、2つの重複するリードを用いて、精製したプラスミドのサンガー配列決定により特徴づけた。化学的または電気的コンピテントS.エンテリカSGSG228 (pGVXN150)、大腸菌St1717 (pGVXN150, pGVXN393)、および大腸菌W3110 waaL (pGVXN64, pGVXN150)を、それぞれLT2-EPA、CP5-EPAおよびO1-EPAのDWP-ELISAスクリーニングのための宿主株として使用した。
【0350】
振盪フラスコ実験におけるEPA-CP5、EPA-LT2およびEPA-O1生産のための宿主株は、DWP実験と同様であった。大腸菌W3110 waaL (pACYC(pglmut), pGVXN150)をEPA-Cj OS生産の宿主株として用いた。糖タンパク質形成の動態は、誘導後に一定の間隔でバイオマス標準化ペリプラズムタンパク質抽出物を調製し、続いてサンドイッチELISAを行うことにより記録した。LB培地(5g L-1 酵母エキス、10g L-1および5g L-1 NaCl)を含む3つ組の前培養チューブに、新鮮なストリークアウト(streak-out)または形質転換プレートからの個々の単一コロニーを接種し、37℃、160rpmで一晩インキュベートした。50%v/vのLB-M9培地(5g L-1酵母エキス、10g L-1 トリプトン、12.8g L-1 Na2HPO4・7H2O、3.0g L-1 KH2PO4、0.5g L-1 NaCl、1.0g L-1NH4Cl、2mM MgSO4・7H2Oおよび0.1mM CaCl2)を含む3つ組の三角フラスコに、チューブ前培養物から1:50で接種し、37℃、160rpmでインキュベートした。0.5のOD600において、誘導のために1mM IPTGおよび4g L-1 L-アラビノースを添加し、撹拌機の速度を100rpmに下げた。サルモネラ宿主株の場合には、一晩の誘導後にLB-M9振盪フラスコ培養物中にEPA/EPA-LT2分解が観察された。高濃度の複合培地(2YT、10g L-1 酵母エキス、14g L-1 トリプトン、M9塩類)を使用し、誘導時のOD600を0.3〜0.4に低下させ、誘導後に静的インキュベーション(完全嫌気性増殖)に切り替えることにより、分解を防止することができた。
【0351】
ペリプラズム抽出物を調製した。抽出物を、1%w/v粉ミルクを含むPBSで1000〜20,000倍に希釈し、サンドイッチELISAにより分析した。非飽和ELISAシグナル(450nmでの吸光度が1.0より小さい)を生じる希釈物のみをデータ解析に使用した。ヘキサヒスチジンタグ付きタンパク質の精製のために、3つ組の一晩振盪フラスコ培養物のペリプラズム抽出物をプールし、HiTrap FFカラム(GE Healthcare社)を用いた標準プロトコルに従ってNiアフィニティークロマトグラフィーを行った。SDS-PAGEおよびクマシー染色は標準方法を用いて実施した。EPA-LT2グリコフォームの相対的な結合強度は、ソフトウェアImageJ (imagej.nih.gov)を用いて定量した。
【0352】
ペリプラズムタンパク質の抽出物を適切に希釈し、96ウェルプレートでサンドイッチELISAにより分析した。全てのELISA分析のための捕捉抗体は、プロテインG精製済みのヤギ抗EPA抗血清であった。ウサギ抗黄色ブドウ球菌CP5、ウサギ抗サルモネラ菌O:5/O:4 (Staten Serum Institute社, デンマーク)、ウサギ抗赤痢菌O1およびウサギ抗C.ジェジュニをEPA結合型のオリゴ糖および多糖の検出に使用した。西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合ヤギ抗ウサギIgG (Bio-Rad社, Reinach, スイス)およびUltra-TMB基質(Thermo-Scientific/Pierce社)をELISAの発色に使用した。2M H2SO4の添加によりHRP反応を停止させ、450nmでの吸光度(ELISAシグナル)をプレートリーダーで空気に対して測定した。適切な発色時間を選択して、シグナル飽和を回避することができるようにした(最大吸光度450nm≦1.0)。シグナルは、PglBmutを発現する同質遺伝子対照株由来のサンプルの平均吸光度値を差し引くことによってバックグラウンド補正した。ペリプラズムタンパク質および全細胞タンパク質のウェスタンブロット分析を、以前に記載されたように行った。EPAおよびPglB-HAは、それぞれ、ウサギ抗EPA (Sigma-Aldrich社, Buchs, スイス)およびウサギ抗HA (Sigma-Aldrich社)一次抗体で検出した。EPAにコンジュゲートされたオリゴ糖および多糖は、ELISAに用いたのと同じ抗体を用いて検出した。
【0353】
C.ジェジュニOSを含むPglBCjモデルでは、N311のアミド基は、(還元末端から数えて)2番目の単糖、すなわちGalNAc、のC6ヒドロキシル基と直接水素結合を形成した(図2A)。N311が他の全ての19種のアミノ酸にランダムに変更されたpglBプラスミドを、LT2多糖および緑膿菌エキソトキシン(EPA)の非毒性形態を発現するサルモネラ菌株に導入して形質転換した。糖タンパク質特異的ELISAを用いて96ウェルプレートでスクリーニングすると、野生型PglBと比較して、大幅に改善されたグリコシル化効率を示した3個のクローンが得られた(図3A)。それらの全てにおいて、残基N311はバリンに変異していた(コドン: 2x GTT, 1x GTG)。
【0354】
次に、同じライブラリーを、黄色ブドウ球菌莢膜多糖タイプ5 (CP5)およびEPAを発現する大腸菌細胞に導入して形質転換した。ELISAによりCP5-EPA生産性を測定することによって、野生型PglBと比較して改善されたグリコシル化効率を示した7個のクローンが同定された(図3B)。それらのうち6個はアミノ酸置換N311V (コドンGTGおよびGTT)を有し、1個は変異N311I (コドンATT)を示した。活性クローンの高割合(約80%)は、N311が非常に変異耐性であることを示しており、このことは、相同N-OST配列におけるこの位置でのかなりの変動性と一致している(図4)。
【0355】
オリゴ糖結合部位にごく接近して局在する別のアミノ酸に上記のように変異を導入した。Y77は、膜貫通ドメインのペリプラズムループに存在し、我々のモデル(図2A)によると、水媒介水素結合および直接水素結合を介してオリゴ糖と相互作用し得る。この残基は高度に変異耐性であることが判明し(飽和変異導入ライブラリー中の80〜90%がCP5-EPA生産クローン);この場合も、相同タンパク質配列における高度の変動性に一致している(図4)。中立的なアミノ酸置換(Y77L、Y77F)のみが見出されたにすぎず、改善された変異体は同定されなかった。
【0356】
また、残基Y462、G476、G477およびH479も、PglBCjモデルにおいて結合した天然オリゴ糖に近い距離にあるようにモデル化された(図2A);しかし、それらは細菌性N-OSTにおいて高度に保存されている。天然アミノ酸置換への変化に制限したにもかかわらず、CP5-EPA糖コンジュゲートのシグナルは、中立的変異であることが判明したG476PおよびH479Nを明らかな例外として、Y462、G476、G477およびH479 PglBCj変異体において50〜90%減少した(図5)。G476-G477での小さなアミノ酸のアラニン、セリン、システインおよびグリシンのランダムな組み合わせは全て、CP5-EPA生産の減少または消失をもたらした。
【0357】
要約すると、PglBのオリゴ糖結合部位に近接したアミノ酸のこの第1ラウンド突然変異導入から、グリコシル化の収量を改善する上で最も大きな影響を与える位置としてN311が同定された。さらに、Y77も変異耐性であると同定された。
【0358】
7.3 実施例3:糖タンパク質形成速度に対するN311Vの効果
様々なオリゴ糖/多糖基質についてのin vivoグリコシル化速度に対するPglBCj変異体N311Vの効果を、振盪フラスコ培養で分析した(図6)。PglBCjN311VおよびPglBwtを低コピー数ベクターから発現させた。変異体N-OSTを発現する細胞は、一晩誘導後に8倍多くのLT2-EPAを生成した(図6A)。2時間および4時間の誘導後の改善倍率は、それぞれ22倍および11倍であった。CP5-EPA形成の初期速度は5.1倍増加した(図6B)。O1-EPA形成の初期速度も変異体N311Vにおいて2倍に増加した(図6C)が、ライブラリースクリーニングではこの多糖基質を使用しなかった。対照的に、PglBの天然C.ジェジュニOS基質によるEPAのin vivoグリコシル化では、有意な効果が見られなかった。ELISAシグナルの経時的増加およびN311Vの有益なまたは中立的な効果は、例示的ペリプラズムタンパク質サンプルについてのウェスタンブロットの結果に対応した(図7)。
【0359】
N311V生産の有益な効果の原因を分析するために、本発明者らは、C末端ヘマグルチニン(HA)ペプチドタグを有する野生型PglBおよびPglB N311V変異体を構築した。これは実験中にPglBの発現レベルを追跡することを可能にした。変異体に由来するバイオマス標準化全細胞タンパク質サンプル中のPglB-HA特異的バンドは、野生型PglBに由来するものよりも強度が低く、変動が多かった(図8A)。C末端ペリプラズムドメインにサイズが一致する分解産物が誘導後に現れたが、これは、この変異の不安定効果を示している。PglB安定性に対する明らかな負の効果にもかかわらず、ELISAで追跡したEPA-CP5生産は、再度、PglBCj N311Vを発現する細胞において顕著に増加した(図8B)。
【0360】
7.4 実施例4:さらなるラウンドの変異導入およびスクリーニング
反復的な飽和変異導入の原理に従って、PglBCj N311VをY77およびS80のランダム化のためのテンプレートとして使用した。後者の残基はまた、PglBホモログ間で変化し(図4)、外部ループEL1が膜から突き出ている位置のすぐ上でモデル化オリゴ糖基質結合部位に面している(図2)。Y77およびS80は両方とも非常に変異耐性であり、LT2-EPA生産についてスクリーニングしたとき70〜80%が活性クローンであることが見出された(表1)。最も高いELISAシグナルを示した10個のクローンの配列を決定したところ、Y77は多様なアミノ酸に変化したが、塩基性側鎖を有する残基に偏っていた(表2)。S80をランダム化するNNKライブラリーでは、変異体S80Rが上位パフォーマンスクローンの中で優勢であった(表2)。
【0361】
【表2】
【0362】
EL5のN末端部分内のPglBCj Q287LKFYxxR294モチーフは、カンピロバクター属菌種のPglB配列において高度に保存されているが、より遠縁の菌種のN-OSTではそうではない(図9)。カンピロバクター属菌種のN-結合型グリカンの最も内側の2つの糖サブユニットは類似しているという観察のために(第1の2,4-ジアセトアミド-2,4,6-トリデオキシヘキソース、第2のN-アセチルヘキソサミン)、カンピロバクター特異的Q287LKFYxxR294モチーフの残基がオリゴ糖特異性に影響を及ぼし得ると仮定された。改良型変異体N311Vをテンプレートとして用いて、これらの位置での飽和変異導入ライブラリーを作成した。LT2-EPA生産について宿主株でスクリーニングしたとき、該モチーフの第1部分と第2部分に明らかな差異が観察された(表2)。Q287、L288およびK289の飽和変異導入は60〜80%の活性クローンをもたらしたが、隣接する残基F290、Y291およびR294は高度に変異感受性であった。Q287、L288、およびK289ライブラリーの上位10個のクローンは、非ランダムなアミノ酸置換を示した(表2)。プロリンならびに正に荷電したアミノ酸のリシンおよびアルギニンは、Q287位で大きな割合を占めていた。L288では、代わりの疎水性残基(M、I、FまたはC)がもっぱら見られた。アミド(Q、N)または正に荷電した側鎖(R)のいずれかを有する残基への偏りがK289位で観察された(表2)。
【0363】
最後のステップでは、残基Y77、S80、Q287、L288およびK289について見出された中立的な変異とわずかに有益な変異がシャッフルされた。このライブラリーの720個のクローンをLT2-EPA生産についてスクリーニングすると、多数の正の外れ値が同定され、その一例が図10Aに示される。同じプレート上のテンプレート対照クローンの平均シグナルと比較して、少なくとも2.5倍増加したELISAシグナルを有するクローンの配列を決定した(n=14)。S80Rはこれらのクローンの79%(n=11)で、Q287Pは43%(n=6)で、そしてY77Hは29%(n=4)でそれぞれ検出された。二重変異体Y77H-N311VおよびS80R-N311Vは、それぞれ2回および4回見出された。Q287Pは、Y77HまたはS80Rとの組み合わせでのみ生じた。Y77S、L288I、L288F、K289RおよびK289Qは、より頻繁に観察された変異との組み合わせで1回または2回見出され、これらのアミノ酸置換が中立的であることを示した。
【0364】
代表的な改良型変異体プラスミドをEPA-LT2発現株に導入して再形質転換し、3つ組のDWP微量培養物(minicultures)で再スクリーニングした(図10B)。有意な相加的有益効果がY77H (N311Vに対して2.1倍)およびS80R (N311Vに対して1.8倍)の両方について確認された。S80R-N311Vと組み合わせた場合、Q287Pは、1.7倍のEPA-LT2 ELISAシグナルのさらなる増加をもたらし、一晩誘導したDWP培養物において野生型PglBと比較して15倍の総改善率という結果になった(図10B)。振盪フラスコ培養物からのNi-NTAアフィニティークロマトグラフィー精製した物質をSDS-PAGEおよびウェスタンブロットで分析した場合にも、EPA-LT2形成の相加的改善が観察された(図10C)。グリコフォームは、LT2多糖内の分岐したアベクォース糖およびそのO-アセチル化形態をそれぞれ検出する、サルモネラ血清型O:4およびO:5に特異的な抗体と結合した。画像定量化ソフトウェアを使用して、グリコフォームバンド(>80kDa)の結合強度は、PglBCj変異体N311VおよびS80R-Q287P-N311Vについてそれぞれ9倍および16倍に増加した。
【0365】
結論として、改変された基質特異性を有する組換えN-OSTが首尾よく同定されたことが実証された。具体的には、キャリアタンパク質を、オリゴ糖または多糖の非還元末端の単糖単位にN-アセチル基を欠くオリゴ糖または多糖とコンジュゲートさせることができる、N-OSTが同定された。有利には、同定されたN-OSTは、特定のアミノ酸置換を含み、野生型N-OSTと比較して増加した速度でかつ増加した収量を伴って、医学関連の糖質ワクチンの生産を可能にする。
【0366】
7.5 実施例5:PglB C.ジェジュニ残基K482およびD483の変異導入
保存されていないPglBCj残基K482およびD483を、フォワードオリゴヌクレオチドプライマー5'- GTA GAT GGT GGA AAG CAT TTW GGT NDT NDT AAT TTT TTC CCT TCT TTT GCT TTA AGC -3'およびリバースプライマー5'- GCT TAA AGC AAA AGA AGG GAA AAA ATT AHN AHN ACC WAA ATG CTT TCC ACC ATC TAC -3'(変異コドンには下線を引いた;N=A、T、GまたはC; D=A、TまたはG; W=AまたはT)を用いたQuikChangeによって、12種の重複なしの(non-redundant)、化学的に多様なアミノ酸(S、N、I、V、D、G、F、Y、C、L、H、R)に同時にランダム化した。C末端HAタグを有する野生型PglBの遺伝子配列をコードする、中程度のコピー数の、IPTG誘導プラスミドpGVXN407をテンプレートとして使用した。ライブラリーの品質は、無作為に選別した20個のクローンの配列を決定することによって確認した。全ての所望のヌクレオチドが変異コドンで検出され、野生型pglB配列を有するクローンの割合は15%以下であった。このライブラリー(Faと命名した)を大腸菌St1717 (pGVXN150, pGVXN393)発現株に導入して形質転換し、以前に記載されたように(Ihssen et al., 2012, BMC Biotechnolgy 12:67)、96ディープウェルプレートでスクリーニングした。全部で801個のクローンをスクリーニングし、例示的なスクリーニング結果を図10に示す。クローンFa8_G10 (図10に丸で囲った)は、8つのレプリケートウェルで再スクリーニングした場合、著しく増加した糖タンパク質特異的ELISAシグナルを示し、二重変異PglBCj K482R-D483Hを有することが判明した(表3)。アミノ酸変化K482R-D483HをQuikChangeにより低コピー数プラスミドpGVXN114の野生型pglB配列に導入し、プラスミドpGVXN635を得た。野生型および変異型プラスミドを大腸菌St1717 (pGVXN150, pGVXN393)発現株に導入して形質転換し、CP5-EPAの生産を、以前に記載されたように(Ihssen et al., 2012, BMC Biotechnolgy 12:67)、3つ組の振盪フラスコ実験で分析した。二重変異体PglBCjK482R-D483Hは、サンドイッチELISAで測定して、CP5-EPAレベルの1.2〜2.0倍の増加を促した(図11)。
【0367】
【表3】
【0368】
野生型PglBCjおよびK482R-D483H変異型プラスミドのpGVXN114およびpGVXN635をそれぞれ、人工的に操作されたグリコシル化部位を有する黄色ブドウ球菌α-ヘモリシン(Hla)を発現する大腸菌St2457 (pGVXN570, pGVXN393)発現株に導入して形質転換した。菌株を、1リットルのフラスコ培養液(SOB培地+クロラムフェニコール、アンピシリン、テトラサイクリンおよびスペクチノマイシン)中に一晩の前培養物から0.1のOD600になるまで接種し、振とうしながら37℃でインキュベートした。約1.0のOD600で、PglBおよびHlaの発現を、それぞれ1mMのIPTGおよび2g L-1のL-アラビノースを添加することによって誘導した。対照実験では、IPTGを省略した。誘導された培養物を採取まで37℃で一晩振とうしながらインキュベートした。総インキュベーション時間は約23時間であった。
【0369】
誘導を伴う実験では、両方の菌株について1200 ODを採取したが、PglB誘導を伴わない実験では、一晩培養物から合計1500 ODを採取した。ペレット化した細胞を0.9%NaClで1回洗浄した後、細胞を再懸濁緩衝液(25%スクロース、10mM EDTA、200mM Tris-HCl, pH8.5)中にOD600が50となるまで再懸濁した。その細胞懸濁液を20分間回転させた。次いで、細胞を遠心分離により分離し、浸透圧ショック緩衝液(10mM Tris-HCl, pH8.5)中にOD600が50となるまで再懸濁し、穏やかに攪拌しながら30分間インキュベートした。もう1回の遠心分離ステップの後、20mM MgCl2、0.5M NaCl、10mMイミダゾールおよび30mM Tris-HCl (pH8.0)を上清に添加した。Hisタグ付きHlaおよびCP5-Hlaを、標準的な手順に従って上清(=浸透圧ショック液)から精製した。4つ全ての実験のA280溶出ピークをカバーする画分(1mL)を、SDS-PAGE(クマシー染色)、抗CP5ウェスタンブロットおよび抗Hisウェスタンブロットによって分析した(図12)。CP5特異的バンド(破線のボックス)は、野生型PglBCj (pGVXN114)を発現する菌株よりも、PglBCj K482R-D483H (pGVXN635)を発現する菌株の場合により強かった。IPTG誘導した振盪フラスコ培養物と誘導しなかった該培養物の両方において、増強が見られた。分子量範囲50〜110kDaにおけるCP5特異的バンドの全体的強度をImageJソフトウェア(http://imagej.nih.gov/ij/)により定量した。局所バックグラウンドのグレー値(Grey value)を差し引いた。PglBCjK482R-D483Hを発現する菌株のHisTrap溶出液は、野生型PglBCjを発現する菌株のそれよりも2.0倍多いCP5-Hlaを含んでいた。
【0370】
本開示は、本明細書に記載の特定の実施形態によって範囲が限定されるものではない。実際に、記載された内容に加えて、本明細書で提供される主題の様々な改変が前述の説明および添付の図面から当業者には明らかになるであろう。そのような改変は添付の特許請求の範囲内に入ることが意図される。
様々な刊行物、特許および特許出願が本明細書中で引用されており、それらの開示内容はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0371】
参考文献
図1
図2A
図2B
図2C
図3A-B】
図4A
図4B
図5
図6A-B】
図6C-D】
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図9A-B】
図9C
図10
図11
図12
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]