特許第6850737号(P6850737)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6850737金属処理炉と組み合わせて使用される高速反応、ヒータ及び関連制御システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6850737
(24)【登録日】2021年3月10日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】金属処理炉と組み合わせて使用される高速反応、ヒータ及び関連制御システム
(51)【国際特許分類】
   C21D 9/56 20060101AFI20210322BHJP
   F27B 9/36 20060101ALI20210322BHJP
   F27B 9/40 20060101ALI20210322BHJP
   F27D 11/06 20060101ALI20210322BHJP
   F27D 13/00 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   C21D9/56 101C
   F27B9/36
   F27B9/40
   F27D11/06 Z
   F27D13/00 A
【請求項の数】20
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-565807(P2017-565807)
(86)(22)【出願日】2016年6月23日
(65)【公表番号】特表2018-524467(P2018-524467A)
(43)【公表日】2018年8月30日
(86)【国際出願番号】US2016038946
(87)【国際公開番号】WO2016210084
(87)【国際公開日】20161229
【審査請求日】2017年12月18日
【審判番号】不服2019-6951(P2019-6951/J1)
【審判請求日】2019年5月28日
(31)【優先権主張番号】62/183,810
(32)【優先日】2015年6月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506110243
【氏名又は名称】ノベリス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NOVELIS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100088801
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 宗雄
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド・マイケル・カスターズ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ブル
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・ホビス
【合議体】
【審判長】 池渕 立
【審判官】 中澤 登
【審判官】 平塚 政宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−27322(JP,A)
【文献】 特開昭60−70127(JP,A)
【文献】 特開2011−179035(JP,A)
【文献】 特開昭55−73831(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21D 9/52- 9/66
F27B 9/00- 9/40
F27D 7/00-15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動いている金属シートを受け入れるための炉入口を有する金属処理炉であって、前記金属処理炉内の雰囲気温度を測定するためのセンサーを備えた金属処理炉と、
前記金属シートを予熱するために前記炉入口に近接して配置可能な誘導ヒータを備えた高速反応ヒータと、
前記金属処理炉内の前記雰囲気温度を用いて前記高速反応ヒータの熱出力を自動的に制御するように、前記センサー及び前記高速反応ヒータに結合されたコントローラと、を備え、
前記金属処理炉は、前記金属処理炉内の前記動いている金属シートの温度を測定するための第2のセンサーをさらに備え、前記コントローラは、前記金属処理炉内の前記動いている金属シートの前記温度をさらに用いて前記高速反応ヒータの前記熱出力を自動的に制御するように、前記第2のセンサーにさらに結合され、
前記コントローラは、前記金属処理炉の前記雰囲気温度を用いて計算される前記金属処理炉のヒートヘッドを用いて前記高速反応ヒータの前記熱出力を自動的に制御するように構成される、金属処理システム。
【請求項2】
前記高速反応ヒータは連続的に動作される、請求項1に記載の金属処理システム。
【請求項3】
前記金属処理炉の前記雰囲気温度は、予め選択された温度の10パーセントの範囲内にとどまる、請求項に記載の金属処理システム。
【請求項4】
前記金属処理炉の前記雰囲気温度は、予め選択された温度の5パーセントの範囲内にとどまる、請求項に記載の金属処理システム。
【請求項5】
前記高速反応ヒータは前記金属処理炉の遷移中に動作される、請求項1に記載の金属処理システム。
【請求項6】
前記金属処理炉の前記遷移は、金属シートまたはプレートの厚さ、金属シートまたはプレートの処理速度、金属シートまたはプレートの合金、及び金属処理炉の目標温度の変更からなる群から選択される少なくとも1つの遷移を含む、請求項に記載の金属処理システム。
【請求項7】
前記高速反応ヒータは直接火炎衝突ヒータを備える、請求項1に記載の金属処理システム。
【請求項8】
前記高速反応ヒータは誘導ヒータ及び直接火炎衝突ヒータを備える、請求項1に記載の金属処理システム。
【請求項9】
前記金属シートの厚さを測定する厚さセンサーを備え、前記コントローラは、前記金属シートの前記厚さをさらに用いて前記高速反応ヒータの前記熱出力を自動的に制御するように、前記厚さセンサーにさらに結合される、請求項1に記載の金属処理システム。
【請求項10】
前記金属シートのスループットを測定するスループットセンサーをさらに備え、前記コントローラは、前記金属シートの前記スループットをさらに用いて前記高速反応ヒータの前記熱出力を自動的に制御するように、前記スループットセンサーにさらに接続される、請求項1に記載の金属処理システム。
【請求項11】
前記高速反応ヒータは、前記金属シートの幅にわたって個々の部分に選択的に熱を加えるように、前記高速反応ヒータを横切って間隔を置かれた複数の個別加熱要素を含み、前記コントローラは、前記複数の個別加熱要素が前記金属シートの前記幅にわたって前記金属シートを選択的に予熱するように、前記複数の個別加熱要素の各々の熱出力を個別に制御するよう構成される、請求項1に記載の金属処理システム。
【請求項12】
請求項1に記載の金属処理システムにおいて金属を処理する方法であって、
前記高速反応ヒータ内で金属シートを予熱することと、
前記金属処理炉内の前記金属シートに熱を加えることと、
前記金属処理炉内の雰囲気温度を監視することと、
前記監視された雰囲気温度を用いて前記高速反応ヒータの熱出力を自動的に調整することと、を含み、
前記金属処理炉内の前記動いている金属シートの温度を監視することをさらに含み、前記高速反応ヒータの前記熱出力を自動的に調整することが、前記監視された雰囲気温度及び前記動いている金属シートの前記監視された温度を用いてヒートヘッドを計算することと、前記計算されたヒートヘッドに基づいて前記高速反応ヒータの前記熱出力を調整することと、を含む、方法。
【請求項13】
前記高速反応ヒータ内の前記金属シートを予熱することが連続的に生じる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記金属処理炉内の前記金属シートに熱を加えることは、前記金属処理炉を一定温度に維持することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記金属処理炉の前記雰囲気温度を第1の温度設定と第2の温度設定との間で遷移させることをさらに含み、前記高速反応ヒータの前記熱出力を自動的に調整することは、遷移中の前記金属処理炉の前記雰囲気温度への変更を補償するように前記熱出力を選択することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記高速反応ヒータは、直接火炎衝突ヒータを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記高速反応ヒータは、誘導ヒータ及び直接火炎衝突ヒータを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記金属シートの厚さを監視することをさらに含み、前記高速反応ヒータの前記熱出力を自動的に調整することは、前記監視された厚さを用いることを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記金属シートのスループット速度を監視することをさらに含み、前記高速反応ヒータの前記熱出力を自動的に調整することは、前記監視されたスループット速度を用いることを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記高速反応ヒータ内の前記金属シートを予熱することは、前記高速反応ヒータを横切って間隔を置いて配置された複数の個別加熱要素を用いて前記金属シートの幅にわたって熱を選択的に加えることを含み、前記高速反応ヒータの前記熱出力を自動的に調整することは、前記金属シートの前記幅にわたって前記選択的な加熱を制御するように、前記複数の個別加熱要素の各々を個別に制御することを含む、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、金属処理工程のための炉に関する。より具体的には、本開示は、伝統的な炉と組み合わせた高速反応ヒータの使用法、及び関連制御システムに関する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年6月24日に出願された米国仮特許出願第62/183,810号「FAST RESPONSE HEATERS AND ASSOCIATED CONTROL SYSTEMS USED IN COMBINATION WITH METAL TREATMENT FURNACES」の利益を主張し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
炉は、さらなる処理のために金属をアニール、硬化、熟成、予備熟成、処理または軟化するための金属の製造、及び処理に日常的に使用されている。いくつかの炉は、材料が炉の全長にわたって引き出されるとき、金属シートまたはプレートを連続的に処理するために使用されてもよい。
【0004】
今日では、金属シート及びプレートの需要が高まり、より高い材料品質に対する欲求、及び処理工程の複雑化と相まって、処理炉のサイズが大きくなってきている。炉は、より複雑な加熱工程、より高品質の製品、及びより速い処理速度を求めて、様々な温度について印加の長さと複数の加熱ゾーンを増加させながら開発されてきた。
【0005】
しかしながら、長い炉は高価であり、金属処理プラントにおいて貴重なスペースを使い尽くす。長い炉では、また、金属シートまたはプレートが炉の全長にわたって引き出されるときに、付加応力が金属シートまたはプレートに加わる。長い炉による付加応力は、金属シートまたはプレートの不安定性を引き起こし、引裂または材料欠陥につながる可能性がある。長い炉は、また、顕著な熱慣性を有し、それらの処理ゾーンの温度を上昇または低下させるためには比較的長い時間を必要とする。結果として、材料の組成、材料の厚さ、ライン速度、または材料処理工程の変更に対する反応が遅くなる可能性がある。伝統的な金属処理炉の遅い反応により、処理の遅延が長引くか、または次に廃棄物として廃棄しなければならない遷移材料を使用することが必要となる。
【発明の概要】
【0006】
本開示の態様は、金属処理炉と組み合わせた高速反応ヒータの使用法、及びオプションの関連制御システムに関する。高速反応ヒータは、金属シートまたはプレートが主処理炉に入る前にそれを予熱するために使用される。高速反応ヒータは、入ってくる金属シートまたはプレートの温度を迅速に調整して、材料、材料の厚さ、ライン速度、または工程のタイプの急な変更に適応させることができる。高速反応ヒータは、材料または工程パラメータの変動を補償するために連続的に使用され、既存の金属処理炉を用いて材料の処理を高速化し、及び/または主処理炉をより低い温度で稼働させることができる。あるいは、主炉の熱慣性及び遅い反応時間を補償するために、金属処理炉の遷移中に高速反応ヒータを用いることができる。例えば、金属処理炉がより高い温度領域に遷移しているとき、高速反応ヒータは、金属ストリップまたはプレートを予熱することによって補償することができる。金属処理炉の温度が上昇するにつれて、高速反応ヒータは、適切な工程パラメータを維持するために予熱量を徐々に低下させることができる。
【0007】
高速反応ヒータは、手動で制御することができ、または能動ないしは受動制御システムを用いて、金属ストリップまたはプレートに加えられる予熱の量を変えることができる。制御システムは、測定及びフィードバック制御のための熱モデルまたはセンサーを含むことができる。例えば、制御システムは、炉温度、高速反応ヒータの前後の金属温度、材料の厚さの直接的または間接的な感知を含むことができ、及び/または処理前後の平坦性など材料の品質を定量化するセンサーを含むことができる。
【0008】
次の図面を参照して、本開示の例示的な実施形態を以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】金属処理炉の開口部またはその近くに配置された高速反応ヒータの概略側面図である。
図2】オプションの感知及び制御要素を備えた高速反応ヒータの概略側面図である。
図3】オプションの感知要素及び制御要素を備えた金属処理炉ゾーンの概略側面図である。
図4】オプションの感知要素及び制御要素を備えた金属処理炉ゾーンの概略側面図である。
図5】高速反応ヒータのためのオプションの制御システムの概略図である。
図6】金属処理炉で行われる金属処理に工程に関連して高速反応ヒータの出力を制御するための例示的な方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態の主題は、法的要件を満たすために明細書では具体的に記載されているが、この説明は必ずしも特許請求の範囲を限定するものではない。請求された主題は、他の方法で具現化されてもよく、異なる要素またはステップを含んでもよく、かつ、他の既存または将来の技術と共に使用されてもよい。この説明は、個々のステップの順序または要素の配置が明示的に記載されている場合を除いて、様々なステップまたは要素の中または間に特定の順序または配置を暗示するものと解釈されるべきではない。
【0011】
本開示の特定の態様及び特徴は、製造中に金属を処理するために使用される金属処理炉と組み合わせた高速反応ヒータ、及びオプションの制御システムの使用法に関する。高速反応ヒータは、材料がより大きな金属処理炉に入る前に、材料、一般には金属、の予熱を可能にする。高速反応ヒータは、金属処理炉よりも小さく、材料に加えられる熱量のはるかに速い動的変更を可能にし、その結果、材料の種類、材料の厚さ、ライン速度、及び/または材料の質量流量に変更があっても、材料温度のはるかに速い変更を可能にする。材料に与えられる熱及び温度の量を迅速に変更することができる限り、任意のタイプのヒータを使用することができるが、高速反応ヒータのいくつかの非限定的な例には、これに限定されないが、調整可能な電流周波数を有する誘導ヒータを含む誘導ヒータ、または直接火炎衝突ヒータが含まれる。高速反応ヒータは、熱出力を変化させるための制御システムと共に動作することができる。この制御システムは、センサー、熱モデル、パラメータのオペレータ入力、及び/または直接オペレータ制御、またはそれらの任意の組み合わせなど、任意の適切な入力に依存することができる。
【0012】
高速反応ヒータは、通常は、大量の金属処理工程を実施する、より大きな金属処理炉の前に配置される。そのような工程の例としては、限定されるものではないが、エイジング、予備エイジング、硬化、溶液加熱、アニーリングなどが挙げられる。金属処理炉の前に高速反応ヒータを追加することにより、高速反応ヒータは材料が金属処理炉に入る前に材料を予熱することができる。金属処理炉は、そのサイズが大きいため、ライン速度、工程タイプ、材料のタイプ、及び/または材料の質量流量の変化に適応させるように、その温度を迅速に変更することができない。しかしながら、高速反応ヒータは、ライン速度、質量流量、材料のタイプ、及び/または工程タイプの変動に対して予熱量を迅速に変えることにより、金属処理炉の遅い反応を補償することができる。高速反応ヒータは、材料に付加される全体的な熱を変化させるために使用されて、適切な工程パラメータを維持し、一方、金属処理炉は、全体的な工程が高速反応ヒータによって変更されている間、温度をゆっくりと変更し、または一定の温度を維持することができる。高速反応ヒータは、金属処理炉が一定の温度を維持する間、全体的な工程に必要な全ての変動を提供するために使用される、すなわち、高速反応ヒータは、処理工程全体に必要な変動を与え、金属処理炉の過渡的な挙動を補償するように継続的に調整することができる。本明細書で使用される場合、金属処理炉の一定温度は、予め選択された温度から約±10%以下だけ変動するものであってもよい。場合によっては、金属処理炉の一定温度は、予め選択された温度から約±5%以下だけ変動するものであってもよい。他の場合には、金属処理炉の一定温度は、予め選択された温度から約±2%以下だけ変動するものであってもよい。金属処理炉またはその個々のゾーンについては、特定の工程の必要性、または金属処理炉及び関連設備の能力に基づき、任意の温度を選択することができる。処理されている金属がアルミニウムであるようないくつかの場合、予め選択された温度は、通常は、金属処理炉またはその個々のゾーンのいずれか1つに対して摂氏約430〜630度の範囲であってもよい。
【0013】
高速反応ヒータを使用すると、金属処理炉単独の使用に比べて多くの利点を提供することができる。高速反応ヒータは、金属処理炉の長さを短縮したり、生産ラインの他の部分で追加の加熱工程を必要としたりすることをなくすために使用することができる。高反応ヒータを使用することにより、金属処理工程全体にわたる生産速度の向上及び動的制御が可能になる。高速反応ヒータを用いて金属に加えられる熱量を急速に変更する能力により、金属処理炉は、金属処理炉の切替え中にダウンタイム、またはスクラップを発生せずに、工程または材料の遷移期間に、連続的に動作することが可能になる。精度と制御の向上は、また高品質の製品をもたらすことになる。
【0014】
処理中に金属の粒径を制御することが望ましい場合が多い。特に、処理工程の後に、より小さな粒径を有する金属シートまたはプレートを製造することが効果的であり得る。高速反応ヒータは金属シートまたはプレートを迅速に加熱して、金属処理炉のみで可能であるよりも急速に材料を再結晶化することができる。加熱速度が速くなると、金属シートまたはプレートにおける粒径が小さくなり、かつ、製品品質が改善されることになる。より一般的には、高速反応ヒータを用いて、加えられる熱量及び金属シートまたはプレートへの熱の印加速度を変え、最終製品の粒径を増減させることができる。例えば、シミュレーションによると、摂氏約400〜500度の温度でアニールされた冷間圧延された6000シリーズのアルミニウムシートは、高速反応ヒータを使用する場合に可能な、1秒当たり摂氏約120〜160度の加熱速度に晒されたときに、約20μm〜30μmの範囲の平均粒径を達成し得ることを示す。これは、平均して、金属処理炉単独についてごく典型的な速度である、1秒当たり摂氏約60〜80度の加熱速度で達成される粒径よりも約4μm小さい粒径が、高速反応ヒータを用いて達成できるということである。異なる金属、合金、及び/または処理工程は、上述したものとは異なるパラメータ、条件、及び/または設定値を必要とすることがあるが、より速い加熱速度を誘導し、工程条件の変更に応じてそれらの加熱速度を迅速に変動させる、高速反応ヒータの能力により、製造中の金属粒径及び一貫性をより細かく制御することができる。
【0015】
高速反応ヒータは、また、金属シートまたはプレートの幅にわたる加熱、及び温度の均一性について付加制御することにより、工程の安定性を改善することができる。本明細書で使用される場合、金属シートという用語は、金属シート、金属プレート、金属ストリップ、または他のものを含み得る。伝統な加熱方法では、金属シートまたはプレートが処理工程を通過するときに、金属シートまたはプレートの幅にわたって均一な温度勾配を作り出すことは、不可能ではないにしても、困難であることが多い。高速反応ヒータは、金属シートまたはプレートに加えられる熱量を迅速に変動させることができ、かつ、金属シートまたはプレートの幅全体にわたって選択的に加熱または冷却することによって制御の機会を提供することができるため、付加的な制御を提供することができる。
【0016】
誘導ヒータ、直接火炎衝突ヒータ、または他のヒータの1つ以上の任意の組み合わせを高速反応ヒータに使用することができる。場合によっては、高速反応ヒータは、複数のヒータ、すなわち、直接火炎衝突ヒータの場合には複数の火炎源を含むことができる。誘導ヒータを直接火炎衝突ヒータと組み合わせて、各熱源の様々な加熱特性を活用することも可能である。例えば、金属シートまたはプレートが高速反応ヒータを通過する際に加熱を開始するために誘導ヒータを使用することができる。最初の温度勾配が確立されると、直接火炎衝突ヒータを用いて、金属シートまたはプレートの幅にわたってより低い温度の領域を目標にすることができる。場合によっては、高速反応ヒータ内の金属シートまたはプレートの幅にわたる温度勾配は、スプレーまたはガスノズルで制御することができる。ターゲットスプレーまたはノズルは、冷却ガスまたは冷却ミストを噴霧して、金属シートまたはプレートのホットスポットを局所的に冷却し、または加熱されたガスまたはミストを噴霧してクールスポットを温めて、金属処理工程中の均一性を確保することができる。
【0017】
高速反応ヒータは、金属処理炉内の温度を上昇させる必要がある工程または材料の切替え中に使用することができる。しかしながら、高速反応ヒータは、また、金属処理炉内のより低い温度を必要とする工程への切替えがある場合に機能性を提供する。例えば、金属処理炉はより低い連続温度で稼働されてもよい。次いで、高速反応ヒータを用いて予熱を提供することができ、この予熱は、ライン速度、材料、質量流量の変動を吸収する働きをし、及び/または、金属処理炉がより低い(または一定の)温度で稼働している間に、全体の工程熱流を所望のレベルまで増加させる。次に、より低い温度を必要とする処理工程に切り替える必要がある場合、金属処理炉が一定温度のままである間に、高速反応ヒータは予熱のレベルを迅速に低下させるか、または完全に除去することができる。より低い温度、及び/または一定の温度で金属処理炉を操作する能力は、金属生産における付加的な柔軟性と、効率の向上及びランニングコストの低減の可能性とをもたらす。
【0018】
他の状況では、ある種の金属処理工程を行うのに非常に高いヒートヘッドで金属処理炉を稼動させることが望ましい場合がある。高速反応ヒータは、高いヒートヘッド条件下で金属処理炉を安全に稼働させる一方、全体的な処理工程において付加的な安全性及び柔軟性を提供することもできる。例えば、金属シートまたは金属プレートを高いヒートヘッド及び高い質量流量で金属処理炉を通り抜けさせることが望ましい場合がある。言い換えれば、金属シートまたはプレートは、より高い金属処理炉温度に晒されるが、金属シートまたはプレートが処理工程中に溶融しないことを確実にするために、より高速の処理工程で移動する。このような状況下でライン速度を変更すると、金属シートまたはプレートが金属処理炉内で溶融し、装置の損傷、生産性の低下、及び潜在的な安全上の障害物をもたらす危険または不安定な状態につながる可能性がある。しかしながら、金属処理炉に入る前に金属シートまたはプレートを予熱するために高速反応ヒータを使用する場合、危険な処理状態を避けるために処理全体を考慮し調整することができる。例えば、誤動作、オペレータエラー、またはプラント条件変更のいずれかにより、金属シートまたはプレートのスループット速度が予期せずに、または突然に低下した場合、高速反応ヒータは、金属シートまたはプレートが金属処理炉に入る前に、金属シートまたはプレートに加えられる熱量を迅速に低減することができる。金属シートまたはプレートから予熱を迅速に除去することにより、より低い温度で金属を金属処理炉に入り込ませ、溶融の危険性を低減しながらより遅い速度で通過させることができることが効果的である。
【0019】
高速反応ヒータが、金属処理炉を使用せずに金属シートまたはプレートを独立して処理することができる他の状況または情勢が存在し得る。これらの工程の間、高速反応ヒータは、その熱出力及びスループット速度を調整して、金属シートまたはプレートを必要な滞留時間のための所望の温度で処理することができる。
【0020】
図1は、金属処理炉10の開口部またはその近くに配置された高速反応ヒータ1の概略側面図である。金属処理炉10は複数のゾーン11を含み、ゾーンの各々は、様々な温度、圧力、大気組成、または他の工程特性またはパラメータを有することができる。高速反応ヒータ1は、金属2が金属処理炉10に入る前に金属2に熱を加えることができる金属処理炉10の入口またはその近くに配置される。いくつかの例では、金属2は、高速反応ヒータ1を通過するのに約2〜10秒を費やすことがある。しかしながら、金属2、金属処理炉10及び/または高速反応ヒータ1の特性により、高速反応ヒータ1における金属2の滞留時間は、特定の工程によって所望され、または必要とされる任意の適切な時間であってもよい。例えば、(ステンシルインクの乾燥または乾式潤滑剤の塗布など)流下塗布のためのプレエージング、またはストリップの暖かさを維持するために使用される再加熱塗布では、金属2は、高速反応ヒータ1を通過する時間が2秒未満であることがある。一例では、周囲温度よりも高い所望の最低ストリップ温度を維持するために、間隔をあけた流下距離で複数の高速反応ヒータを使用することができる。所望の最低ストリップ温度により、流下工程、または全工程ラインの一般的な性能において、効率または、成果を最大にするように設定することができる(例えば、最低のストリップ温度により、工程ラインにおける工程間の金属ストリップのより良好な潤滑分散及び/または操縦性を可能にすることができる)。別の実施例では、1つ以上の高速反応ヒータにより、より低い温度から所望の最低ストリップ温度までストリップ温度を迅速に上昇させることができる。
【0021】
高速反応ヒータ1の使用は、全処理工程の一部として、または金属処理炉10の一時的動作の期間中の金属処理工程の安定化を助けるために、連続的または間欠的であってもよい。場合によっては、高速反応ヒータ1の熱出力は、高速反応ヒータ1が金属2の工程、生産速度、または質量流量のあらゆる変化を補償してラインの安定性を維持する一方、金属処理炉10が一定温度で(すなわち、金属処理炉10の設定を変更せずに)稼働するのに十分なほど大きい。例えば、金属処理炉10を通る金属2の処理工程、材料、材料の形状または質量流量が、金属処理炉10内でより高い温度を必要とするように変更する場合、高速反応ヒータ1は、金属処理炉10が動作温度に達する遷移中に、金属2に熱を加えることによって補償することができる。
【0022】
高速反応ヒータ1は、誘導ヒータまたは直接火炎衝突ヒータなど、金属2に加えられる熱量を急速に増加または減少させることができるヒータである。より具体的には、交流電流の周波数の可変性を可能にする誘導ヒータは、金属2に与えられる熱エネルギーの量を制御する付加的な方法を有する点で特に有用である。高速反応ヒータ1は、金属2に加えられる熱量を比較的急速に調整することができるため、金属処理炉10がより遅い速度で新しい温度に調整している間、金属2に連続的に熱を加えることによって、金属処理炉10のより遅い反応速度を補償することができる。金属処理炉10が高温になると、高速反応ヒータ1は、金属2に加えられる予熱の量を徐々に減少させ、処理工程全体において金属に加えられる適切な熱量を維持することができる。従来の金属処理炉10への高速反応ヒータ1の付加は、金属に加えられる全体的な熱量の急速な変更が必要または望ましい、任意の処理工程を受ける任意形状の任意の金属と共に使用することができる。しかしながら、金属処理炉10に入る前に金属2を予熱するために高速反応ヒータ1を使用することは、プレートまたはシートとして処理されるアルミニウムまたはアルミニウム合金の製造に特に有用であり得る。
【0023】
場合によっては、高速反応ヒータ1を用いて、金属2が主金属処理炉10に入る前に金属2に1つ以上の付加的な処理ステップを提供することができる。しかしながら、いくつかの実施例では、高速反応ヒータ1を用いて既存の金属処理工程の効率を高めることができる。言い換えれば、そして一実施例として、高速反応ヒータ1を使用して、金属処理炉10の遅い反応を補償し、工程条件が変更される際に既存の金属処理工程を維持することができる。高速反応ヒータ1は、合金、プレートまたはシートの形状、質量流量、または、最終製品の品質または一貫性に影響を与える可能性のある他の工程パラメータの変更にもかかわらず、金属2に一貫した処理工程を施すことができる。
【0024】
図2は、オプションの制御ユニット30を有する高速反応ヒータ1の概略側面図である。制御ユニット30は、任意の数のセンサーを通じて工程パラメータのリアルタイム読み取りを行うことができる。例えば、制御ユニット30は、高速反応ヒータ1を通じてプレートまたはシートなどの金属2の進行速度を測定する速度センサー21から信号を受け取ることができる。温度センサー22は、高速反応ヒータ1に入る前に金属2の入来温度を判定するために用いることができる。温度センサー22を使用して金属の入来温度を判定することにより、天候またはプラント条件を計算に入れて、より正確な工程制御及び高速反応ヒータ1の調整が可能になる。制御システムは、金属2が高速反応ヒータ1に入るときに、金属2のゲージまたは形状を測定するための厚さセンサー23を組み込むこともできる。次に、厚さ測定値は、制御ユニット30によって使用されて、高速反応ヒータ要素40を調整し、異なるゲージの材料を補償し、かつ、速度センサー21からの速度の測定値と組み合わさって、高速反応ヒータ1を通る金属2の質量流量を決定することができる。高速反応ヒータ1を通る金属2の質量流量は、システムを通る材料の量に対する出力の必要レベルを決定するために制御ユニット30によって使用することができる。制御システムは、また、予熱後かつ主金属処理炉10(図示せず)に入る前の金属2の状態を監視する出口金属温度センサー24を組み込んでもよい。出口金属温度センサー24により、ヒータ要素40の出力を能動的に調整して、フィードバック型制御システムを使用可能にし、金属2が高速反応ヒータ1を離れるときに金属2の静的または動的な目標金属温度を達成することができる。
【0025】
さらに図2を参照すると、制御ユニット30は、金属処理炉10(図1)内のセンサー読取状態から付加的な信号情報を受信することができる。高速反応ヒータ1が金属2を予熱して金属炉処理の遅い反応時間を補償する場合、制御ユニット30が1つ以上の金属処理炉ゾーン11の状態に関する信号情報を受け取ることが望ましい場合がある。例えば、制御ユニット30は、金属2の温度を示す(例えば、図3の炉ゾーン金属温度センサー25からの)炉ゾーン金属温度信号225、または金属処理炉10の炉ゾーン11内の雰囲気の温度を示す(例えば、図3の炉ゾーン空気/雰囲気温度センサー26からの)炉ゾーン空気または雰囲気温度信号226を受け取る。次に、これら2つの信号225、226の一方または両方を用いて、金属処理炉10の任意の特定のゾーン11におけるヒートヘッド(炉ゾーン雰囲気とそのゾーン内の金属との間の温度差)を計算することができる。次に、制御ユニット30は、炉ゾーン温度及びヒートヘッドを評価して、金属処理炉10内の金属2への熱伝達率を計算し、ヒータ要素40の出力を調整して、金属2に加えられる予熱の量を制御することができる。炉ゾーン温度及び各ゾーン内の金属2の温度に関する情報を用いて、金属処理炉10からの金属2への熱伝達量を計算することができる。この情報は、必要に応じて金属2に適切な熱量を伝達するように加熱素子40を連続的に調整するため制御ユニット30によって使用することができる。金属処理炉10が正しい定常動作温度に遷移すると、制御ユニット30は、状態が変化していることを感知し、それに応じて加熱素子40の出力を調整する。
【0026】
制御ユニット30は、任意数の付加的な制御戦略を使用して、高速反応ヒータ1のヒータ要素40を調整し、特定の金属及び処理のための特定の範囲内の工程パラメータを維持することができる。例えば、制御ユニット30は、上記のようなセンサー及びフィードバック情報を使用し、高速反応ヒータ1の出力を変動させることによって最適な工程状態を維持することができる。制御ユニット30は、また、例えば、過渡応答、非過渡応答であり得る熱モデル、または高速反応ヒータ1、金属処理炉10、及び/または金属2の様々なタイプ、形状、または厚さの他のタイプの熱モデルを使用して、高速反応ヒータ1の正しい出力を決定する。例えば、オペレータは、所望の金属処理炉10の状態、処理される金属2のタイプ、及び/または金属2の質量流量に関して、制御ユニット30に情報を入力することができる。次に、予めプログラムされていてもよい制御ユニット30は、熱モデルを使用して、高速反応ヒータ1の正しい出力を決定し、かつ、金属処理炉10が定常状態の動作を達成するにつれて、時間の経過と共に出力をどのように変更するかを決定することができる。制御ユニット30は、センサー、熱モデル、及び/またはオペレータ入力の任意の組み合わせを使用して、高速反応ヒータ1の正しい出力を決定し、変化している工程状態に対して補償することができる。さらに、制御ユニット30は、上述したセンサーの1つ、全て、または任意の組み合わせからの情報を使用してもよく、または専用の質量流量センサーのような上記に列挙されていない付加的なセンサーを組み込んでもよい。
【0027】
図3は、金属処理炉10のゾーン11を通過する金属2の概略側面図である。炉ゾーン11は、オプションの炉ゾーン金属温度センサー25と、オプションの炉ゾーン空気/雰囲気温度センサー26とを特徴とする。次に、これらのセンサー25、26は、制御ユニットが高速反応ヒータ(例えば、図2の高速反応ヒータ1)の熱出力を制御できるように、制御ユニット(例えば、図2の制御ユニット30)に信号(例えば、図2の信号225、226)を送る。
【0028】
図4は、金属処理炉10の最終ゾーン11を通過する金属2の概略側面図である。炉ゾーン11は、オプションの炉ゾーン金属温度センサー25と、オプションの炉ゾーン空気/雰囲気温度センサー26とを組み込んでいる。上記のように、これらのセンサーは、変化している状態下で最適な工程パラメータを維持するように、高速反応ヒータ(例えば、図2の高速反応ヒータ1)の出力を調整するために、制御ユニット(例えば、図2の制御ユニット30)によって使用される。金属処理炉10の端部またはその近くには、オプションの炉出口金属温度センサー27を設置することができる。このセンサー27は、制御ユニット(例えば、制御ユニット30)が、金属処理炉10の変化している工程状態または過渡的挙動を計算に入れて高速反応ヒータ(例えば、高速反応ヒータ1)の出力を調整することができるように、金属2が金属処理炉10を離れるときに金属2の温度に関する情報を中継することができる。オプションの平坦または品質センサー28を制御システムに組み込むこともできる。平坦度または品質センサー28は、金属の平坦度または一般的品質状態に関する情報を制御ユニットに中継することができる。制御ユニット(例えば、制御ユニット30)は、最終製品の品質を改善するために、高速反応ヒータ(例えば、高速反応ヒータ1)の出力を調整することができる。
【0029】
図5は、オプションの制御システムの一実施例を示す概略図である。制御ユニット30は、多数のセンサーまたはソースから情報を受け取ることができる。図示のように、制御ユニット30は、金属の入来温度22、金属の入来速度21、金属の厚さ23、高速反応ヒータ出口での金属温度24、金属処理炉ゾーン金属温度25、金属処理炉ゾーン空気/囲気温度26、金属処理炉金属出口温度27、及び/または平坦度または品質28を受け取ることができる。制御ユニット30は、また、オペレータからの入力、及び/または高速反応ヒータ1、金属2、または金属処理炉10の熱モデルを受け取ることもできる。次に、制御ユニット30は、これらの入力のうちの1つ以上を、高速反応ヒータ1のヒータ要素40に送られる出力信号を生成する制御アルゴリズムに組み込むことができる。いくつかの場合、熱モデル、他のモデル、または記憶された、ないしは所定のパラメータは、コントローラ30に結合された、またはコントローラ30に含まれるデータ記憶装置31(例えば、非一時的データ記憶媒体)に記憶してもよい。
【0030】
図6は、金属処理工程の変化しているパラメータ及び状態に関連して、高速反応ヒータ1の熱出力を制御するための1つのサンプル制御ループ600を示す図である。制御ユニット30は、ブロック601で金属処理炉ゾーン空気/雰囲気温度、及びブロック602で金属処理炉ゾーン金属温度を感知する。制御ユニット30は、ブロック601及び602で感知された2つの温度間の差を見出すことによって、ブロック603でその特定の金属処理炉ゾーンのヒートヘッドを計算する。次に、制御ユニット30は、ブロック604において、この計算されたヒートヘッドを所望のヒートヘッドと比較する。計算されたヒートヘッドが所望のヒートヘッドよりも低い場合、ブロック605で、制御ユニット30は高速反応ヒータ1の熱出力を上昇させる。計算されたヒートヘッドが所望のヒートヘッドを上回っている場合、ブロック606で、制御ユニット30は高速反応ヒータ1の熱出力を低下させる。計算されたヒートヘッドが所望のヒートヘッドの範囲内にある場合、制御ユニット30は、ブロック607で高速反応ヒータ1の熱出力を維持する。ブロック605、606、及び607で制御ユニット30が高速反応ヒータ1の出力を調整した後、制御ユニット30はブロック601に戻り、制御ループ600を再び通過する。いくつかの場合において、ブロック604で、測定されたヒートヘッドを必要なヒートヘッドと比較することにより、ブロック605でヒータ電力をいつ上げるか、ブロック606でいつヒータ電力を下げるか、またはブロック607でいつヒータ電力を維持するかを決定するために、ヒステリシスを使用することができる。ヒステリシスの量及び程度は、ブロック608〜615に示されるような任意の適切な入力に基づくことができる。
【0031】
さらに図6を参照すると、制御ユニット30はまた、サンプル制御ループ600への付加的な入力を感知または受け取って、高速反応ヒータ1の出力に対する調整の制御または精度を高めることができる。例えば、制御ユニット30は、ブロック608において金属2が高速反応ヒータ1に入るときに金属2の温度を感知することができる。制御ユニット30はまた、ブロック609で材料の厚さ、及び/またはブロック610で金属走行速度を感知することができる。制御ユニット30は、ブロック611で特定の材料、またはブロック612で所望の工程パラメータなどのオペレータ入力を受け取ることができる。この情報は、ブロック604において、実際の工程パラメータを所望のパラメータと比較するために使用することができる。
【0032】
出口パラメータは、付加的なフィードバックループがサンプル制御ループ600に加えられ得るように、制御ユニット30内で感知または入力することができる。例えば、制御システムは、ブロック613で高速反応ヒータ1を出るときの金属温度、ブロック614で金属処理炉10を出るときの金属の平坦度または品質、及び/またはブロック615での金属処理炉10における金属温度を感知することができる。次いで、これらの出口パラメータは、制御ループ600に類似した追加の制御ループの所望のパラメータと比較され得るか、または制御ループ600へのサブループもしくは追加の変数として追加され得る。
【0033】
サンプル制御ループ600は、1つまたは複数の金属処理炉ゾーン11に対して所望のヒートヘッド(または他のパラメータ)を達成するように制定されてもよい。制御ループ600は、全体として金属処理炉10のヒートヘッドを制御するために使用することもできる。同様の制御ループは、高速反応ヒータ1での所望の金属出口温度と測定された金属出口温度との比較など、高速反応ヒータ1と併用してのみ使用することもできる。制御ループを完全に排除することも可能である。高速反応ヒータ1は、高速反応ヒータ1の出力を制御するために、オペレータによって手動で制御され、またはユーザ入力に応答して、感知を必要とせず、ないしは感知を低減する必要もない熱モデルを使用してもよい。
【0034】
図示または記載されていないコンポーネント及びステップだけでなく、図面に示され、または上記に記載された、様々なコンポーネントの構成も可能である。同様に、いくつかの特徴及びサブコンビネーショが有用であり、他の特徴及びサブコンビネーションを参照することなく使用することができる。本発明の実施形態は、例示的かつ非制限的な目的で記載されており、代替の実施形態がこの特許の読者には明らかであろう。したがって、本発明は、上記に記載した、または図面に示した実施形態に限定されるものではなく、以下の特許請求の範囲から逸脱することなく、様々な実施形態及び改変を行うことができる。
【0035】
以下で使用されるように、一連の実施例に対する任意の言及は、これらの実施例の各々を分離して参照するものとして理解されるべきである(例えば、「実施例1〜4」は「実施例1、2、3、または4」と理解されるべきである)。
【0036】
実施例1は、動いている金属シートを受け入れるための炉入口を有する金属処理炉であって、金属処理炉内の雰囲気温度を測定するためのセンサーを備えた金属処理炉と、金属シートを予熱するために炉入口に近接して配置可能な高速反応ヒータと、金属処理炉内の雰囲気温度を用いて高速反応ヒータの熱出力を自動的に制御するように、センサー及び高速反応ヒータに結合されたコントローラと、を備える、金属処理システムである。
【0037】
実施例2は、金属処理炉が、金属処理炉内の動いている金属シートの温度を測定するための第2のセンサーをさらに備え、かつ、コントローラは、金属処理炉内の動いている金属シートの温度をさらに用いて高速反応ヒータの熱出力を自動的に制御するように、第2のセンサーにさらに結合される、実施例1に記載の金属処理システムである。
【0038】
実施例3は、高速反応ヒータが連続的に動作される、実施例1または実施例2に記載の金属処理システムである。
【0039】
実施例4は、金属処理炉の雰囲気温度が、予め選択された温度の約10パーセントの範囲内にとどまる、実施例1〜3に記載の金属処理システムである。
【0040】
実施例5は、金属処理炉の雰囲気温度が、予め選択された温度の約5パーセントの範囲内にとどまる、実施例1〜4に記載の金属処理システムである。
【0041】
実施例6は、高速反応ヒータが、金属処理炉の遷移中に動作される、実施例1〜5に記載の金属処理システムである。
【0042】
実施例7は、金属処理炉の遷移が、金属シートまたはプレートの厚さ、金属シートまたはプレートの処理速度、金属シートまたはプレートの合金、及び金属処理炉の目標温度の変更からなる群から選択される少なくとも1つの遷移を含む、実施例6に記載の金属処理システムである。
【0043】
実施例8は、高速反応ヒータが誘導ヒータを備える、実施例1〜7に記載の金属処理システムである。
【0044】
実施例9は、高速反応ヒータが直接火炎衝突ヒータを備える、実施例1〜7に記載の金属処理システムである。
【0045】
実施例10は、高速反応ヒータが誘導ヒータ及び直接火炎衝突ヒータを備える、実施例1〜7に記載の金属処理システムである。
【0046】
実施例11は、金属シートの厚さを測定する厚さセンサーを備え、コントローラが、金属シートの厚さをさらに用いて高速反応ヒータの熱出力を自動的に制御するように、厚さセンサーにさらに結合される、実施例1〜10に記載の金属処理システムである。
【0047】
実施例12は、金属シートのスループットを測定するスループットセンサーをさらに備え、コントローラが、金属シートのスループットをさらに用いて高速反応ヒータの熱出力を自動的に制御するように、スループットセンサーにさらに接続される、実施例1〜11に記載の金属処理システムである。
【0048】
実施例13は、さらに熱モデルを含むデータストアを備え、コントローラが、熱モデルをさらに用いて高速反応ヒータの熱出力を自動的に制御するように、データストアにさらに接続される、実施例1〜12に記載の金属処理システムである。
【0049】
実施例14は、熱モデルが、高速反応ヒータのパラメータ、金属処理炉のパラメータ、及び金属特性からなるグループから選択された少なくとも1つのパラメータを含む、実施例13に記載の金属処理システムである。
【0050】
実施例15は、高速反応ヒータが、金属シートの幅にわたって個々の部分に選択的に熱を加えるように、高速反応ヒータを横切って間隔を置かれた複数の個別加熱要素を含み、コントローラは、複数の個別加熱要素がシートの幅にわたって金属シートを選択的に予熱するように、複数の個別加熱要素の各々の熱出力を個別に制御するよう構成される、実施例1〜14に記載の金属処理システムである。
【0051】
実施例16は、コントローラが、金属処理炉の雰囲気温度を用いて計算される金属処理炉のヒートヘッドを用いて高速反応ヒータの熱出力を自動的に制御するように構成される、実施例1〜15に記載の金属処理システムである。
【0052】
実施例17は、高速反応ヒータ内の金属シートを予熱することと、金属処理炉内金属シートに熱を加えることと、金属処理炉内の前記雰囲気温度を監視することと、監視された雰囲気温度を用いて高速反応ヒータの熱出力を自動的に調整することと、を含む、金属を処理する方法である。
【0053】
実施例18は、金属処理炉内の動いている金属シートの温度を監視することをさらに含み、高速反応ヒータの熱出力を自動的に調整することが、監視された雰囲気温度及び動いている金属シートの監視された温度を用いて加ヒートヘッドを計算することと、計算されたヒートヘッドに基づいて高速反応ヒータの熱出力を調整することを含む、実施例17に記載の方法である。
【0054】
実施例19は、高速反応ヒータ内の金属シートを予熱することが連続的に行われる、実施例17または18に記載の方法である。
【0055】
実施例20は、金属処理炉内の金属シートに熱を加えることが、金属処理炉を一定温度に維持することを含む、実施例17〜19に記載の方法である。
【0056】
実施例21は、金属処理炉の雰囲気温度を第1の温度設定と第2の温度設定との間で遷移させることをさらに含み、高速反応ヒータの熱出力を自動的に調整することは、遷移中の金属処理炉の雰囲気温度への変更を補償するように熱出力を選択することを含む、実施例17〜20に記載の方法である。
【0057】
実施例22は、高速反応ヒータが誘導ヒータを含む、実施例17〜21に記載の方法である。
【0058】
実施例23は、高速反応ヒータが直接火炎衝突ヒータを含む、実施例17〜21に記載の方法である。
【0059】
実施例24は、高速反応ヒータが誘導ヒータ及び直接火炎衝突ヒータを含む、実施例17〜21に記載の方法である。
【0060】
実施25は、金属シートの厚さを監視することをさらに含み、高速反応ヒータの熱出力を自動的に調整することが、監視された厚さを用いることを含む、実施例17〜24に記載の方法である。
【0061】
実施例26は、金属シートのスループット速度を監視することをさらに含み、高速反応ヒータの熱出力を自動的に調整することが、監視されたスループット速度を用いることを含む、実施例17〜25に記載の方法である。
【0062】
実施例27は、高速反応ヒータの熱出力を自動的に調整することが、熱モデルを用いることを含む、実施例17〜26に記載の方法である。
【0063】
実施例28は、熱モデルが、高速反応ヒータのパラメータ、金属処理炉のパラメータ、及び金属特性からなるグループから選択された少なくとも1つのパラメータを含む、実施例27に記載の方法である。
【0064】
実施例29は、高速反応ヒータ内の金属シートを予熱することが、高速反応ヒータを横切って間隔を置いて配置された複数の個別加熱要素を用いて金属ストリップの幅にわたって選択的に熱を加えることを含み、かつ、高速反応ヒータの熱出力を自動的に調整することが、金属ストリップの金属ストリップの幅にわたって選択的な熱の印加を制御するように、複数の個別加熱要素の各々を個別に制御することを含む、実施例17〜28に記載の方法である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6